説明

放電装置およびそれを製造する方法

【課題】処理可能な被処理物が制限されることなく、処理効率を向上させることができる放電装置およびそれを製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】誘電体1の容量結合によって誘電体1に配設された2極の電極2,3間で放電させるために、放電側とは逆側の誘電体1の面に電極2,3をともに配設して構成する。放電側とは逆側の誘電体1の面に電極2,3をともに配設するので、従来のように電極を互いに対向させて放電させずに、電極2,3から誘電体1側へと放電する。したがって、従来のように互いに対向した電極間にワークを置く必要がなく、処理可能なワークWが制限されることがない。また、従来のように互いに対向した電極間にワークを置く必要がないので、両電極2,3を配設した誘電体1にワークWを近接させることができ、処理効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2極の電極間で放電させる放電装置およびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電装置として、例えばプラズマ放電によってプラズマを発生させるプラズマ発生装置や、酸素中の放電によってオゾン(O)を発生させるオゾン発生装置などがある。また、放電を利用した所定の処理として、例えばプラズマ放電によって発生したプラズマを利用したプラズマ処理や、酸素中の放電によって発生したオゾンを利用したオゾン処理などがある。プラズマ放電を利用したプラズマ処理を例に採って説明する。
【0003】
プラズマ処理として、例えばプラズマ中に被処理物(ワーク)を置いてワークに対してエッチングを行うプラズマエッチングや、蒸着させたい物質をプラズマ化してワークに蒸着させて堆積させるプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)や、ワークの濡れ性を向上させるためにワークに対して洗浄を行うプラズマ洗浄などがある。
【0004】
プラズマ処理装置としては、図11に示すように、チャンバーC内を真空にする、あるいはアルゴン(Ar)やヘリウム(He)などの希ガスを減圧させてチャンバーCに入れた状態で電極Eからの放電によってプラズマPMを発生させる装置が一般的である。プラズマ処理を行う場合には、チャンバーC内にワークWを置いてワークWに対して処理を施す。
【0005】
図11に示すようなかかる装置では、電極Eに印加する電源は、2.45GHzなどに代表されるマイクロ波や13.56MHzのRF(Radio Frequency)波のような高周波電源が必要である。マイクロ波の場合には導波管が、RF波の場合にはマッチング回路がそれぞれ必要である。したがって、コストもかかり、装置としてもおおがかりになってしまう。
【0006】
そこで、図12に示すように、互いに対向した2極の電極E間に誘電体バリアDを配設した装置が提示されている(例えば、特許文献1〜7参照)。この誘電体バリアDを配設することで、誘電体バリアDが容量結合されて、2極の電極E間で放電させることが可能になる。
【0007】
プラズマ処理を行う場合には、図12(a)のように誘電体バリアD間にワークWを置いてワークWに対して処理を施す、あるいは図12(b)のように希ガスあるいは窒素ガスGASを流入させて流入側とは逆側からプラズマPMを噴射させてワークWに作用させる。この図12のような装置では、図11のような高周波電源が必要でなく、1kHz〜100kHz程度の交流電源でよい。また、大気圧下でプラズマ放電させることが可能である。
【特許文献1】特開2006−120739号公報(第1−8頁、図1−4)
【特許文献2】特開2006−092813号公報(第1−9頁、図1)
【特許文献3】特開2005−093344号公報(第1−10頁、図1−6)
【特許文献4】特開2004−311256号公報(第1−9頁、図1−5)
【特許文献5】特開2004−103251号公報(第1,3−7頁、図1)
【特許文献6】特開2003−347099号公報(第1−5頁、図1,2)
【特許文献7】特開2003−024771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電極間の距離は最大でも5mm程度なので、5mmを超して電極間の距離を形成すると、プラズマ処理が行えなくなる。したがって、図12(a)のような装置では、最大でも5mm程度である電極E間の距離よりも厚みのあるワークWに対して処理することができずに、処理可能なワークが制限される。図12(b)のような装置の場合には、ワークWの厚みによらずプラズマ処理を行うことができるが、ポイントでしか処理することができず、図12(a)と比較すると処理効率が低くなる。また、窒素ガスの場合にはプラズマPMの噴射口からワークWまでの作用距離が5mm程度であるので、効率良く処理することができない。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、処理可能な被処理物が制限されることなく、処理効率を向上させることができる放電装置およびそれを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、誘電体の容量結合によって前記誘電体に配設された2極の電極間で放電させる放電装置であって、放電側とは逆側の誘電体の面に前記2極の電極をともに配設することを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、誘電体の容量結合によって誘電体に配設された2極の電極間で放電させるために、放電側とは逆側の誘電体の面に上述した2極の電極をともに配設して構成する。放電側とは逆側の誘電体の面に2極の電極をともに配設するので、従来のように電極を互いに対向させて放電させずに、2極の電極から誘電体側へと放電する。したがって、従来のように互いに対向した電極間に被処理物を置く必要がなく、処理可能な被処理物が制限されることがない。また、従来のように互いに対向した電極間に被処理物を置く必要がないので、両電極を配設した誘電体に被処理物を近接させることができ、処理効率を向上させることができる。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、誘電体の容量結合によって前記誘電体に配設された2極の電極間で放電させる放電装置を製造する方法であって、放電側とは逆側の誘電体の面に前記2極の電極をともに配設して放電装置を製造することを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]請求項7に記載の発明によれば、放電側とは逆側の誘電体の面に2極の電極をともに配設して放電装置を製造するので、従来のように電極を互いに対向させて放電させずに、2極の電極から誘電体側へと放電する放電装置を実現することができる。その結果、処理可能な被処理物が制限されることなく、処理効率を向上させることができる放電装置を実現することができる。
【0014】
上述したこれらの発明において、2極の電極の少なくとも1つを絶縁体で覆うのが好ましい(請求項2に記載の発明)。具体的には、2極の電極の少なくとも1つを絶縁体で覆うように、2極の電極を配設した誘電体上に積層して放電装置を製造するのが好ましい(請求項8に記載の発明)。2極の電極の少なくとも1つを絶縁体で覆うことで、両電極間に絶縁体が介在することになって、誘電体の放電側とは逆側(すなわち電極側)の面に放電するのを防止することができる。
【0015】
2極の電極の少なくとも1つを絶縁体で覆う一例は、2極の電極の少なくとも1つをモールド封止することである(請求項3に記載の発明)。具体的には、2極の電極を配設した誘電体上に液体状のモールドを封入して固化させることで、2極の電極の少なくとも1つをモールド封止して誘電体上にモールド材からなる絶縁体を積層して放電装置を製造することである(請求項9に記載の発明)。もちろん、2極の電極の少なくとも1つを絶縁体で覆う例は、請求項3,9に記載の発明に限定されない。陶磁器・ガラス・セメントなどに代表される、無機物質を原料として焼結された焼結物(例えば炭素ケイ素や窒化ケイ素)に導電粒子を埋め込んで、導電粒子を電極とするとともに焼結物を絶縁体として構成してもよい。
【0016】
上述したこれらの発明では、真空中で放電させてもよいし、気体を通して放電させてもよい。気体を通して放電させる場合には、誘電体の放電側とは逆側から放電側に気体を通すように構成する(請求項4に記載の発明)。具体的には、気体を通す貫通孔を誘電体に設け、放電側とは逆側の誘電体の面に2極の電極をともに配設して放電装置を製造する(請求項10に記載の発明)。気体としては、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)などに代表される希ガス、窒素ガスや空気などがある。
【0017】
誘電体に貫通孔を設ける場合には、上述した請求項9に記載の発明と同様に、モールド材を用いて製造することが可能である。すなわち、上述した貫通孔に合わせて仕切りを誘電体上に設け、2極の電極を配設した誘電体上に液体状のモールドを上述した仕切りに沿って封入して固化させることで、2極の電極の少なくとも1つをモールド封止して、貫通孔以外の箇所で誘電体上にモールド材からなる絶縁体を積層して放電装置を製造することが可能である(請求項11に記載の発明)。
【0018】
放電はプラズマ放電であって、プラズマ放電によってプラズマを発生させるタイプ(請求項5に記載の発明)でもよいし、放電は酸素中での放電であって、酸素中の放電によってオゾンを発生させるタイプ(請求項6に記載の発明)でもよい。したがって、前者のタイプの場合には、放電装置として、プラズマ放電によってプラズマを発生させるプラズマ発生装置や、プラズマ放電によって発生したプラズマを利用したプラズマ処理を行うプラズマ処理装置に適用することができる。後者のタイプの場合には、放電装置として、酸素中の放電によってオゾンを発生させるオゾン発生装置や、酸素中の放電によって発生したオゾンを利用したオゾン処理を行うオゾン処理装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る放電装置およびそれを製造する方法によれば、誘電体の容量結合によって誘電体に配設された2極の電極間で放電させるために、放電側とは逆側の誘電体の面に上述した2極の電極をともに配設するので、従来のように電極を互いに対向させて放電させずに、2極の電極から誘電体側へと放電する。したがって、処理可能な被処理物が制限されることがなく、処理効率を向上させることができる。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るプラズマ処理装置の概略平面図であり、図2は、図1のA−Aの矢視断面図であり、図3は、実施例に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理の一態様を示す概略断面図である。なお、本実施例では、放電を利用した所定の処理として、プラズマ放電によって発生したプラズマを利用したプラズマ処理を例に採って説明するとともに、放電装置として、そのプラズマ処理を行うプラズマ処理装置を例に採って説明する。また、図1では、モールド材の図示を省略している。
【0021】
本実施例では、プラズマ処理装置は、図2の断面図に示すように、誘電体1を備えており、放電側とは逆側の誘電体1の面に2極の電極2,3をともに配設している。本実施例では、誘電体1を、アルミナ(酸化アルミニウム)基板、あるいは陶磁器・ガラス・セメントなどに代表される、無機物質を原料として焼結された焼結物(例えば炭素ケイ素や窒化ケイ素)で形成された基板で形成している。また、電極2,3を、銀(Ag)あるいは白金(Pt)メッキが施された導体で形成している。誘電体1は、本発明における誘電体に相当し、電極2,3は、本発明における2極の電極に相当する。
【0022】
本実施例では、電極2,3をともに絶縁体で覆うように、電極2,3を配設した誘電体1上にモールド材4を積層している。本実施例では、このモールド材4を、シリコーン系のゴムや樹脂で形成しており、10kV/mm以上(〜20kV/mm)の耐電圧材料で形成するのが好ましい。モールド材4は、本発明における絶縁体に相当し、本発明におけるモールド材にも相当する。
【0023】
本実施例では、図1の平面図および図2の断面図に示すように、電極2,3部分以外の箇所で誘電体1に貫通孔5を設けている。この貫通孔5は、誘電体1の放電側とは逆側(すなわち電極2,3側)から放電側に気体(図2、図3では「GAS」)を通すための孔である。この貫通孔5は、図2に示すように、誘電体1のみならず、それに積層されたモールド材4にわたって貫通している。貫通孔5を介して、誘電体1の放電側とは逆側(すなわち電極2,3側)から放電側に通す気体としては、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)などに代表される希ガス、窒素ガスや空気などである。気体については大気圧であってもよいし、減圧させてもよい。空気の大気圧であっても2.74kV/mmである。耐電圧の差によって、グロー放電を開始しプラズマが発生する。なお、減圧環境、希ガス使用時等では、上述した2.74kV/mmよりも耐電圧が低下するので、より放電しやすくプラズマを容易に発生させることができる。貫通孔5は、本発明における貫通孔に相当する。
【0024】
電極2,3を、図1、図2に示すように、1kHz〜100kHzで電圧振幅が15kV程度の交流電源6に電気的に接続している。2極の電極2,3を一対としたときに、本実施例では、図1に示すように、各々の電極2,3が誘電体1の基板全面にわたって配設されるように複数対の電極2,3を設けている。各々の電極2を電極7に電気的に接続するとともに、電極7を交流電源6に電気的に接続することで、電極7を介して電極2を交流電源6に電気的に接続している。また、各々の電極3を電極8に電気的に接続するとともに、電極8を交流電源6に電気的に接続することで、電極8を介して電極3を交流電源6に電気的に接続している。なお、交流電源6は、図4に示すようなパルス波を出力するパルス波電源であってもよいし、図5に示すようなサイン波(正弦波)を出力するサイン波電源であってもよい。
【0025】
このようなプラズマ処理装置では、図3に示すように、誘電体1の放電側に被処理物(ワーク)Wを近接させて、放電側に気体を通した状態で放電させる。具体的には、貫通孔5を介して、誘電体1の放電側とは逆側から放電側に気体を通す。このとき、ワークWは誘電体1の放電側に近接しているので、誘電体1とワークWとの間に気体空間、いわゆる「エアカーテン」ができる。そのエアカーテンの状態で各々の電極2,3に交流電源6から電圧を印加する。各々の電極2,3に電圧が印加することでプラズマ放電して、そのプラズマ放電によってプラズマPMが発生する。そして、ワークWに対してプラズマ処理を施す。
【0026】
プラズマ処理については、特に限定されない。例えば、プラズマPM中にワークWを置いてワークWに対してエッチングを行うプラズマエッチングにも適用できるし、蒸着させたい物質をプラズマ化してワークWに蒸着させて堆積させるプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)にも適用できるし、ワークWの濡れ性を向上させるためにワークWに対して洗浄を行うプラズマ洗浄に適用してもよい。その他にも、レジストなどの不要になった膜をプラズマPMにより灰化(Ashing)することにより除去するプラズマアッシングに適用してもよい。
【0027】
次に、本実施例に係るプラズマ処理装置の具体的な製造方法について、図6を参照して説明する。図6は、実施例に係るプラズマ処理装置の製造工程の概略断面図である。
【0028】
上述したアルミナ基板あるいは炭素ケイ素や窒化ケイ素基板で形成された誘電体1に、フォトリソグラフィ技術や印刷塗布技術等によって、図1に示すような電極2,3をパターン形成する。そして、図6(a)に示すように、電極2,3部分以外の箇所に誘電体1に、気体を通す貫通孔5を設ける。なお、先に、貫通孔5を誘電体1に設け、その後に、電極2,3をパターン形成してもよい。
【0029】
図6(b)に示すように基板の両端部分に仕切り11を設けるとともに、貫通孔5に合わせて中空状の円筒形の仕切り12を誘電体1上に設ける。なお、先に、仕切り11,12を設け、その後に、電極2,3をパターン形成して、貫通孔5を誘電体1に設けてもよい。その誘電体1上に液体状のシリコーン系のゴムあるいは樹脂を仕切り11,12に沿って封入して固化させる。このように固化させることで、図6(c)に示すように、2極の電極2,3をともにモールド封止して、貫通孔5以外の箇所で誘電体1上にモールド材4からなる絶縁体を積層する。仕切り11,12のうち仕切り12は、本発明における仕切りに相当する。
【0030】
固化後、図6(d)に示すように、仕切り11,12を取り外すことで、本実施例に係るプラズマ処理装置が製造される。なお、仕切り板11,12を必ずしも取り外す必要はなく、仕切り板11,12をプラズマ処理装置の一部構成としてもよい。
【0031】
上述の構成を備えた本実施例に係るプラズマ処理装置によれば、誘電体1の容量結合によって誘電体1に配設された2極の電極2,3間で放電させるために、放電側とは逆側の誘電体1の面に上述した2極の電極2,3をともに配設して構成する。放電側とは逆側の誘電体1の面に2極の電極2,3をともに配設するので、従来のように電極を互いに対向させて放電させずに、図2、図3に示すように、2極の電極2,3から誘電体1側へと放電する。したがって、従来のように互いに対向した電極間にワークを置く必要がなく、処理可能なワークWが制限されることがない。また、従来のように互いに対向した電極間にワークを置く必要がないので、両電極2,3を配設した誘電体1にワークWを近接させることができ、処理効率を向上させることができる。
【0032】
また、誘電体1が面状になっておりプラズマPMを広範囲にわたって発生させることができる。したがって、従来のような図12(b)のような装置でポイントでしか処理できないということもなく、広範囲にわたってプラズマ処理を行うことができ、処理効率を向上させることができるという効果をも奏する。また、従来のような対向した電極や誘電体が必要でないので、実施例のように誘電体1が1つのみで済むという効果をも奏する。
【0033】
本実施例では、2極の電極2,3をともに絶縁体で覆っている。具体的には、電極2,3をともに覆うように、電極2,3を配設した誘電体1上にモールド材4を積層している。このように、2極の電極2,3を絶縁体で覆うことで、図2、図3に示すように、両電極2,3に絶縁体が介在することになって、誘電体1の放電側とは逆側(すなわち電極2,3側)に放電するのを防止することができる。
【0034】
本実施例では、電極2,3を絶縁体で覆うためにモールド封止している。具体的には、電極2,3を配設した誘電体1に液体状のモールド(本実施例ではシリコーン系のゴムあるいは樹脂)を封入して固化させることで、電極2,3をモールド封止して誘電体1上にモールド材4からなる絶縁体を積層している。
【0035】
特に、本実施例では、気体を通して放電させるために、誘電体1の放電側とは逆側から放電側に気体を通すように構成している。具体的には、気体を通す貫通孔5を誘電体1に設け、放電側とは逆側の誘電体1の面に電極2,3をともに配設している。誘電体1のみならず、モールド材4にもわたって貫通孔5を貫通させるために、貫通孔5に合わせて中空状の円筒形の仕切り12を誘電体1上に設け、電極2,3を配設した誘電体1上に液体状のモールド(本実施例ではシリコーン系のゴムあるいは樹脂)を上述した仕切り12に沿って封入して固化させることで、電極2,3をモールド封止して、貫通孔5以外の箇所で誘電体1上にモールド材4からなる絶縁体を積層している。
【0036】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0037】
(1)上述した実施例では、放電装置として、プラズマ処理装置を例に採って説明したが、ワークを置かずに、プラズマを発生させるプラズマ発生装置にも適用することができる。
【0038】
(2)上述した実施例では、放電装置は、プラズマ放電によってプラズマを発生させるタイプであったが、酸素中の放電によってオゾン(O)を発生させるタイプでもよい。したがって、放電装置として、酸素中の放電によってオゾンを発生させるオゾン発生装置(オゾン発生用リアクタ)や、酸素中の放電によって発生したオゾンを利用したオゾン処理を行うオゾン処理装置に適用することができる。例えば、図7に示すように、純水が貯留されたタンク21の上に電極2,3を配設した誘電体1を搭載し、貫通孔5を介して酸素(O)を通した状態で放電することでオゾンが発生して、タンク21に貯留された純水と反応させてオゾン水を精製してもよい。その他にも、通常に用いられるオゾン処理であれば、例えば消臭や殺菌や漂白や酸化などにも適用することができる。なお、プラズマ放電や酸素中の放電以外にも、放電を利用した所定の処理を行う装置などに適用することができる。
【0039】
(3)上述した実施例では、誘電体1の放電側とは逆側(すなわち電極2,3側)に放電するのを防止するために電極2,3を絶縁体で覆ったが、必ずしも電極2,3を絶縁体で覆う必要はない。誘電体1の電極2,3側の放電が小さければ、電極2,3を絶縁体で覆わなくてもよい。ただ、実施例のように電極2,3を絶縁体で覆うのがより好ましい。
【0040】
(4)上述した実施例では、2極の電極2,3をともに絶縁体で覆ったが、2極の電極2,3の少なくとも1つを絶縁体で覆うのであれば、電極2,3のいずれか一方を絶縁体で覆う必要はない。すなわち、図8に示すように、電極2,3のいずれか一方が絶縁体(図8ではモールド材4)で覆われなくても、両電極2,3に絶縁体が介在することになる。したがって、実施例と同様に、誘電体1の電極2,3側に放電するのを防止することができる。
【0041】
(5)上述した実施例では、電極2,3を絶縁体で覆うためにモールド封止したが、これに限定されない。例えば、図9に示すように、陶磁器・ガラス・セメントなどに代表される、無機物質を原料として焼結された焼結物(例えば炭素ケイ素や窒化ケイ素)31に導電粒子32を埋め込んで、導電粒子32を電極2,3とするとともに焼結物31を絶縁体として構成してもよい。導電粒子32から見て焼結物31の薄い側で放電して、焼結物31の厚い側で放電しにくくなる。また、焼結物31の薄い側が実施例での誘電体1の機能をも果たす。したがって、図9の場合には、図面の下側でプラズマあるいはオゾンなどが発生するように焼結物31および導電粒子32を構成する。また、図10に示すように、誘電体1上に図9に示す焼結物31を積層して組み合わせてもよい。
【0042】
(6)上述した実施例では、気体を通して放電させたが、真空中で放電してもよい。その場合には、上述した貫通孔は必ずしも必要でない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例に係るプラズマ処理装置の概略平面図である。
【図2】図1のA−Aの矢視断面図である。
【図3】実施例に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理の一態様を示す概略断面図である。
【図4】パルス波の出力に関する概略図である。
【図5】サイン波(正弦波)の出力に関する概略図である。
【図6】(a)〜(d)は、実施例に係るプラズマ処理装置の製造工程の概略断面図である。
【図7】変形例に係る放電装置(オゾン処理装置)の概略図である。
【図8】変形例に係る絶縁物(モールド材)の概略断面図である。
【図9】変形例に係る絶縁物(焼結物)の概略断面図である。
【図10】さらなる変形例に係る絶縁物(焼結物)および誘電体を組み合わせた概略断面図である。
【図11】従来のプラズマ処理装置の概略図である。
【図12】(a)(b)は、図11とは別の従来のプラズマ処理装置の概略図である。
【符号の説明】
【0044】
1 … 誘電体
2,3 … 電極
4 … モールド材
5 … 貫通孔
12 … 仕切り
PM … プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体の容量結合によって前記誘電体に配設された2極の電極間で放電させる放電装置であって、放電側とは逆側の誘電体の面に前記2極の電極をともに配設することを特徴とする放電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放電装置において、前記2極の電極の少なくとも1つを絶縁体で覆うことを特徴とする放電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放電装置において、前記絶縁体はモールド材であって、前記2極の電極の少なくとも1つをモールド封止することを特徴とする放電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の放電装置において、前記誘電体の放電側とは逆側から放電側に気体を通すように構成することを特徴とする放電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の放電装置において、放電はプラズマ放電であって、プラズマ放電によってプラズマを発生させることを特徴とする放電装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の放電装置において、放電は酸素中での放電であって、酸素中の放電によってオゾンを発生させることを特徴とする放電装置。
【請求項7】
誘電体の容量結合によって前記誘電体に配設された2極の電極間で放電させる放電装置を製造する方法であって、放電側とは逆側の誘電体の面に前記2極の電極をともに配設して放電装置を製造することを特徴とする放電装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の放電装置の製造方法において、前記2極の電極の少なくとも1つを絶縁体で覆うように、2極の電極を配設した前記誘電体上に積層して放電装置を製造することを特徴とする放電装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の放電装置の製造方法において、前記絶縁体はモールド材であって、前記2極の電極を配設した前記誘電体上に液体状のモールドを封入して固化させることで、2極の電極の少なくとも1つをモールド封止して誘電体上にモールド材からなる絶縁体を積層して放電装置を製造することを特徴とする放電装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれかに記載の放電装置の製造方法において、気体を通す貫通孔を前記誘電体に設け、放電側とは逆側の誘電体の面に前記2極の電極をともに配設して放電装置を製造することを特徴とする放電装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の放電装置の製造方法において、前記貫通孔に合わせて仕切りを前記誘電体上に設け、前記2極の電極を配設した誘電体上に液体状のモールドを前記仕切りに沿って封入して固化させることで、2極の電極の少なくとも1つをモールド封止して、貫通孔以外の箇所で誘電体上にモールド材からなる絶縁体を積層して放電装置を製造することを特徴とする放電装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−186832(P2008−186832A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16460(P2007−16460)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(593030923)株式会社ニッシン (14)
【Fターム(参考)】