有機半導体材料分子を用いた薄膜形成方法
【課題】OSCM分子からなる活性薄膜を高品質に且つ再現性の高い状態で成膜制御することにより、有機電子デバイス及び光電子工学デバイスの性能を向上させることが出来ると共に、前記薄膜をウエハー基板の直径が200mm〜300mm程度の大口径ウエーハにおいて成膜可能とし、工業的な規模での適用が可能な成膜形成を容易かつ低コストで実現することが出来る薄膜形成方法。
【構成】ステップa)薄膜形成の為に、一定量のOSCM分子を融解状態でキャリア表面に供給するステップ、及び
b)薄膜を凝固する為に、一定の温度プロファイルに基づいて冷却を行うステップ
からなり、
ステップa)を実施の際、キャリア表面の温度はOSCM分子の融点と一致するか、あるいは融点より高いことを特徴とし、
またステップb)は、以下の第1のパートと第2のパートからなる温度プロファイルに基づいて実施されることを特徴とするOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
−OSCM分子が冷却されて再結晶温度に近い温度となり、該OSCM分子における冷却速度は、融解状態の薄膜中に1つの種結晶のみが出現するのに十分な程度遅く設定される、OSCM分子の徐冷制御に対応する第1のパート、及び
−前記1つの種結晶を発端として少なくとも1つの単結晶領域が成長し、最終的には単結晶薄膜が得られる、OSCM分子の冷却制御に対応する第2のパート。
【構成】ステップa)薄膜形成の為に、一定量のOSCM分子を融解状態でキャリア表面に供給するステップ、及び
b)薄膜を凝固する為に、一定の温度プロファイルに基づいて冷却を行うステップ
からなり、
ステップa)を実施の際、キャリア表面の温度はOSCM分子の融点と一致するか、あるいは融点より高いことを特徴とし、
またステップb)は、以下の第1のパートと第2のパートからなる温度プロファイルに基づいて実施されることを特徴とするOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
−OSCM分子が冷却されて再結晶温度に近い温度となり、該OSCM分子における冷却速度は、融解状態の薄膜中に1つの種結晶のみが出現するのに十分な程度遅く設定される、OSCM分子の徐冷制御に対応する第1のパート、及び
−前記1つの種結晶を発端として少なくとも1つの単結晶領域が成長し、最終的には単結晶薄膜が得られる、OSCM分子の冷却制御に対応する第2のパート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機半導体材料(OSCM;organic
semiconductor material)分子を用いて薄膜を形成する方法に関し、該膜は電子工学あるいは光電子工学分野に適用されるデバイスに搭載されることを目的とする。したがって前記適用を促進する為に、前記有機半導体材料は構造組織、すなわちアモルファス(非晶質)と結晶との中間状態を有するのが好ましい。
【背景技術】
【0002】
有機半導体(π共役分子及びマクロ分子)は80年代中頃から、有機発光ダイオード(有機EL)(OLED;organic light emitting diodes)やポリマー発光ダイオード(PLED;polymer light-emitting
diodes)を例とするダイオード、有機電界効果トランジスタ(OFETS;organic field effect transistors)、ポリマー有機電界効果トランジスタ(PFETS;polymer organic field effect transistors)や有機半導体からなる単結晶を活性層として利用する有機電界効果トランジスタ(SCOFETS;single
crystal organic field effect transistors)を例とする電界効果トランジスタ、あるいは有機太陽電池や有機レーザーのような多様な電子部品の製造に用いられる活性層として使用されてきた。
【0003】
前記OSCMからなる薄膜は、ウェットプロセス、すなわち前記材料を溶液、分散液、インキ等の溶媒に溶解して用いるプロセスにより形成されることは周知である。
【0004】
しかしながら、上記ウェットプロセスはポリマー半導体に特化したものであることを考慮すると、単結晶有機半導体材料からなる薄膜形成に用いることは出来ない。
【0005】
さらに、溶媒の使用により毒性、揮発、引火、汚染等の作用を誘発するという問題が付随する。
【0006】
前記材料の薄膜形成には、真空蒸着法(ドライプロセス)が用いられることもまた周知である。
【0007】
上記の成膜方法は蒸発性の半導体分子にのみ用いられる。該分子に該当するのは複雑な構造を持たない比較的小規模な分子であり、それゆえほとんどのポリマーがこれに当てはまらない。特に、ある分子を蒸着させ結晶領域を得るためには、該分子が特定の基板上でディウェッティング(dewetting)することが条件となる。これに当てはまるOSCM分子としては、例えばルブレンとも呼ばれる5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンが挙げられる。
【0008】
さらに前記真空蒸着法は大量の真空を要する為、限定的でありまたコストがかかる。
【0009】
加えて、蒸着法により得られた有機半導体材料の薄膜がウェットプロセスにより得られた薄膜よりも良質な構造を有するとしても、いずれにせよ大量の材料を無駄にすることなく大規模な単結晶薄膜を形成するのは非常に困難である。
【0010】
またウェットプロセスにより薄膜を形成する場合にも、同じ問題が生じる。
【0011】
さらに前記2つの従来技術においては、最終的に得られる薄膜組織が及ぶ範囲(成膜される範囲)を正確に制御することが難しいという別の問題も生じる。
【0012】
しかしながら、デバイスの電子輸送特性及び電子輸送能力レベルを決定するという観点から、前記薄膜の構造品質を制御することは重要なポイントである。
【0013】
特許文献1(WO 2005/104265)及び非特許文献1“Organic thin-film electronics from vitreous solution-processed
rubrene hypereutectics” (N. Stingelin-Stutzmann et al, in Nature Materials,
Vol. 4, August 2005) の記載内容から、多結晶OSCMからなる薄膜の形成方法が理解出来る。該形成方法とは、まずOSCMを含む組織を融解させ、その後該液化した組織を冷却することにより薄膜材料を多結晶体として凝固させることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO 2005/104265公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】“Organicthin-film electronics from vitreous solution-processed rubrene hypereutectics”(N. Stingelin-Stutzmann et al, in Nature Materials, Vol. 4, August 2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来技術と比較すると、本発明における第1の目的は、OSCM分子からなる活性薄膜の成膜範囲を制御することにより有機電子デバイス及び光電子工学デバイスの性能を向上させることである。
【0017】
本発明における第2の目的は、前記薄膜を高品質に制御された状態及び再現性の高い状態で形成することである。
【0018】
本発明における第3の目的は、前記薄膜を大きな表面積(ウエハー基板の直径;200mm〜300mm)において形成することである。
【0019】
本発明における第4の目的は、工業的な規模での適用が可能なように、前記薄膜を容易な方法かつ低コストで形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の諸目的を達成する為に、第1の観点に従い、本発明はOSCM分子を用いて薄膜を形成する方法を提案する。該薄膜は電子工学あるいは光電子工学分野に適用されるデバイスに搭載されることを目的とし、該薄膜の形成方法は以下のステップからなる。
a)薄膜形成の為に、一定量のOSCM分子を融解(融点([Mp];melting point)
よりも高い温度にある)状態でキャリア表面に供給するステップ。
b)薄膜を凝固する為に、一定の温度プロファイルに基づいて冷却を行うステップ。
【0021】
ステップa)を実施の際、キャリア表面の温度はOSCM分子の融点と一致するか、あるいは融点より高いことが特徴となる。
【0022】
また、ステップb)は、以下の温度プロファイルに基づいて実施されることを特徴とする。
−OSCM分子における徐冷制御に対応する第1のパート。該パートによりOSCM分子は冷却されて(後記種結晶が生成される)再結晶温度に近い温度となり、該OSCM分子における冷却速度は、OSCM分子が融解状態にある薄液膜中に1つの種結晶のみが出現するのに十分な程度遅く設定される。
−OSCM分子における冷却制御に対応する第2のパート。該パートにより前記1つの種結晶を発端として少なくとも1つの単結晶領域が成長し、最終的には単結晶薄膜が得られる。
【0023】
本形成方法のさらなる特徴として以下の点が挙げられる。
−本方法は不活性雰囲気下で実施される。
−本方法はステップa)の前に、前記OSCM分子を固形状態で提供し、融点より高い温度まで加熱する工程を含む。
−ステップb)は、キャリア表面上に融解状態のOSCM分子が薄液膜状態で分布するように、好ましくは該OSCM分子の表面に加圧する工程を含む。
−ステップa)は以下の工程を含む。
・前記キャリアを加熱炉の受容装置内に形成する。
・融解状態のOSCM分子をキャリア上に拡散させる。
・キャリア表面上に均一厚で薄液膜が分布するように、融解状態のOSCM分子の表面に圧力を加える。
−ステップb)の実施中、薄液膜に直接接触し、炉温調節システムによってサーボ制御される温度制御手段によって、冷却が制御される。
【0024】
−OSCM分子は以下の群から選択可能である。
−第1の群は化合物(3)、(4)、(5)及び(6)から構成される。
Mwは分子量を表し、nは好ましくは2〜20の間の整数である。
・(3)及び(4)に示す第1のパターンにおいて、X1=X2=X3=X4=Cであり、あるいは(3)においてはCをCHで置換してもよい。該パターンは例としてビフェニル(n=2)、テルフェニル(n=3)、クオターフェニル(n=4)、キンクフェニル(n=5)あるいはセキシフェニル(n=6)を定義する。
・(5)及び(6)に示す第2のパターンにおいて、Y1=S、Y2=Y3=Cであり、あるいは(5)においてはCをCHで置換してもよい。該パターンは例としてα−ビチエニル(n=2)、α−テルチエニル(n=3)、α−クオターチエニル(n=4)、α−キンクチエニル(n=5)あるいはα−セキシチエニル(n=6)を定義する。
上記第1の群において、R1、R2、R3及びR4は好ましくは水素原子、フェニルあるいはベンジル等のアラルキルのうちいずれか1のラジカルであり、1〜6の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和結合を含む直鎖あるいは分岐鎖のラジカルとして定義される。
【0025】
−第2の群は化合物(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)及び(16)から構成される。
nは好ましくは2〜20の間の整数である。
・(9)、(10)、(13)、(14)に示す第1のパターンにおいて、X1=X2=X3=X4=Cであり、あるいは(9)及び(13)においてはCをCHで置換してもよい。該パターンは繰り返し単位nに応じて、例としてオリゴ(1,4−フェニレンビニレン)あるいはオリゴ(1,4−フェニレンエチニレン)を定義する。
・(11)、(12)、(15)、(16)に示す第2のパターンにおいて、Y1=S、Y2=Y3=Cであり、あるいは(11)及び(15)においてはCをCHで置換してもよい。該パターンは例としてオリゴ(2,5−チエニレンビニレン)あるいはオリゴ(2,5−チエニレンエチニレン)を定義する。
上記第2の群において、R1、R2、R3及びR4は好ましくは水素原子、フェニルあるいはベンジル等のアラルキルのうちいずれか1のラジカルであり、1〜6の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和結合を含む直鎖あるいは分岐鎖のラジカルとして定義される。
【0026】
−第3の群は化合物(17)、(18)、(19)及び(20)から構成される。
nは好ましくは0〜20の間の整数である。
・(17)に示す第1のパターンは、例としてナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセンあるいはヘキサセンを定義する。
・(18)に示す第2のパターンにおいて、R5=R10=フェニル基であり、繰り返し単位nに応じて、例えば9,10−ジフェニルアントラセン、5,12−ジフェニルナフタセンあるいはルブレンとも呼ばれる5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンが定義される。
・(19)に示す第3のパターンは、ピレン、1,3,6,8−テトラフェニルピレン、1,3,6,8−テトラチエニルピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、あるいはC60、C70、C76、C78、C84フラーレンを定義する。
・(20)に示す第4のパターンは、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミド及びペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミドを定義する。
上記第3の群において、R1〜R10は好ましくは水素原子、フェニルあるいはベンジル等のアラルキルのうちいずれか1のラジカルであり、1〜6の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和結合を含む直鎖あるいは分岐鎖のラジカルとして定義される。
【0027】
−さらに、OSCM分子は以下の置換基のうち1以上からも構成可能である。
・後述の基礎パターンM1を有するアリール基。該M1パターンにおいては、X1=X2=X3=X4=Cである。
・基礎パターンM1を有するヘテロアリール基。該M1パターンにおいて、X1、X2、X3及びX4にはC、O、S、N、P及びBのうちいずれか1以上が選択されるが、その際好ましくはC、NあるいはPのいずれか1以上が、特に好ましくはCあるいはNのいずれかが選択される。
・後述の基礎パターンM2を有するヘテロ環式基。該M2パターンにおいて、Y1=O、S、N、PあるいはBのいずれか1であるが、その際好ましくはO、SあるいはNのいずれか1以上が、特に好ましくはSが選択される。さらにY2およびY3にはC、O、S、N、P及びBのうちいずれか1以上が選択されるが、その際好ましくはC、NあるいはPのいずれか1以上が、特に好ましくはCあるいはNのいずれかが選択される。
【0028】
第2の観点に従い、本発明はOFET等の有機電界効果トランジスタの形成方法を提案する。該形成方法は以下のステップからなることを特徴とする。
a)前もってパターニングしたプレパターン基板を供給するステップ。該プレパターン基板はゲート誘電体、ソース電極及びドレイン電極をそなえる。
b)本発明に従って単結晶性OSCM分子から薄膜を形成するステップ。該ステップにおいて前記プレパターン基板は前記キャリアとなり、また前記薄膜はトランジスタの活性層となる。
【0029】
本発明のさらなる特徴、目的及び利点は、添付の図面及び以下に非限定例として記載する実施形態より導き出すことができる。
【発明の効果】
【0030】
以上記載したように本発明によれば、OSCM分子からなる活性薄膜を高品質に且つ再現性の高い状態で成膜制御することにより、有機電子デバイス及び光電子工学デバイスの性能を向上させることが出来ると共に、前記薄膜をウエハー基板の直径が200mm〜300mm程度の大口径ウエハーにおいて成膜可能とし、工業的な規模での適用が可能な成膜形成を容易かつ低コストで実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1Aから図1Fは、本発明によるOFETの形成方法における諸工程を示す。
【図2A】交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査(POTM;cross-polarizedoptical thermo-microscopy)の反射モードにおける撮像画像を示す。該画像はOFETにおいて形成過程にある、本発明におけるルブレンによる単結晶薄膜である。
【図2B】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2C】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2D】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2E】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2F】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2G】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2H】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2I】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2J】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2K】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2L】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2M】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2N】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図3】図3Aから図3Gは、POTMの透過モードにおける撮像画像を示す。該画像はガラス基板表面に形成された本発明におけるα−テルチエニルによる単結晶薄膜である。
【図4】図4はPOTMの反射モードにおける撮像画像を示す。該画像は本発明に従ってOFET内に形成されたルブレンによる単結晶活性層である。
【図5】図5はOFETにおけるドレイン電流(ID[nA])−ドレイン電圧(VD[V])間特性を示したグラフである。
【図6】図6は、図4に示したOFETの飽和領域における電荷キャリアの移動度(μsat[cm2.V.−1.s−1])と、ゲート電圧(VG[V])との関係を示したグラフである。この際、ドレイン電圧(VD[V])の値は−30Vである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
使用されるOSCM分子は粉体であり、粒径の大きさは小さくても大きくてもよい。また他の固形状でもよい。
【0033】
OSCM分子は「小規模な分子」からなるOSCMである。ここで用いられる「小規模」とは、すなわち分子の周期構造が1D、擬1D、2D、3Dであり、分子量(Mw;molecular weight)が5,000g.mol-1と同等かそれより少ないという定義である。前記小規模分子における繰り返し単位nの数は20程度であり、さらには20と同等かそれより少ないn重体(例:オリゴマー)となるのが好ましい。
さらに前記小規模分子の特性として、好ましくは融点にて一致融解を示す。
また、高分子構造(n>20)を有する有機半導体ポリマー(OSCPs;organic
Semiconductor Polymers)、高分子構造(n>20)を有する有機半導体共重合体(OSCCs;organic Semiconductor Copolymers)及びメソ構造有機半導体材料(MOSCMs;Mesomorphous organic Semiconductor Materials)は本発明の範囲から除外する。
【0034】
OSCM分子には、半導体特性を持つ前記以外のいずれの有機素材も採用可能である。該有機素材は、少なくとも炭素及び1重か2重の炭素−炭素結合を複数有し、さらには水素及び複数の炭素−水素結合を有するのが好ましい。
【0035】
例として、OSCM分子は基礎パターンである以下のM1及びM2を含み、さらに続く第1〜3群より選択可能である。
好ましくはX1、X2、X3及びX4にはC、NあるいはPの中から、特に好ましくはCあるいはNのいずれかが選択される。
同様にY2及びY3にも、好ましくはC、NあるいはPの中から、特に好ましくはCあるいはNのいずれかが選択される。
【0036】
直鎖構造のOSCMであり、基礎パターンM1及びM2を含む第1群を以下に示す。該第1群は1Dあるいは擬1Dのオリゴマー(3)及び(5)、あるいは該オリゴマーの置換誘導体(4)及び(6)からなる。置換基R1、R2、R3、及びR4の定義は後述する通りである。
nは好ましくは2〜20の間の整数である。
【0037】
直鎖分岐混合構造のOSCMであり、基礎パターンM1及びM2を含む第2群を以下に示す。該第2群は1Dあるいは擬1Dの直鎖分岐混合コオリゴマー(9)、(11)、(13)及び(15)、あるいは該直鎖分岐混合コオリゴマーの置換誘導体(10)、(12)、(14)及び(16)からなる。置換基R1、R2、R3、及びR4の定義は後述する通りである。
nは好ましくは2〜20の間の整数である。
【0038】
擬1D/2D、及び2D−3D(1Dと2D間はスラッシュで「あるいは」という「意味であり、2Dと3Dの間はハイフンで、2Dと3Dとの間の分子構造も含む」構造の有機半導体材料であり、X1=X2=X3=X4=Cである基礎パターンM1、及びM2(段落0035参照)を含む第3群を以下に示す。該第3群は多環式/ヘテロ環式構造(ヘテロ環式構造についてはここでは説明を省略する)を有する縮合環化合物(17)、さらには擬1D/2D及び2D−3D構造を有する前記縮合環化合物の置換誘導体(18)、(19)及び(19)からなる。
nは好ましくは0〜20の間の整数である。R1〜R10の定義は後述する通りである。
【0039】
本発明のOSCM分子は、アリール基(X1=X2=X3=X4=Cである基礎パターンM1)及び/あるいはヘテロアリール基(X1、X2、X3及びX4がC、O、S、N、P及びBのうちいずれか1以上、好ましくはC、NあるいはPのいずれか1以上、特に好ましくはCあるいはNのいずれかである基礎パターンM1)及び/あるいはヘテロ環式基(Y1=O、S、N、PあるいはBのうちいずれか1、好ましくはO、SあるいはNのいずれか1、特に好ましくはSであり、Y2及びY3がC、O、S、N、P及びBのいずれか、好ましくはC、NあるいはPのいずれか1、特に好ましくはCあるいはNのいずれかである基礎パターンM2)からなる。
上記の置換基からはX1及び/あるいはX2及び/あるいはX3及び/あるいはX4=Oの場合、さらにY2及び/あるいはY3=Oの場合が除外される。
【0040】
ここで用いられるアリールとは縮合ヘテロ環構造を含み、該構造は少なくとも1つの完全芳香環を含み、該芳香環はR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10のうちいずれか1以上で任意的に置換された化合物のことである。前記芳香環上に置換されるR1〜R10の官能基は、例として以下のうちいずれか1以上を指す。
シアノ、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、フェニル、ヒドロキシ、スルホ、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、エステル(例:−CO2−Ra:Raは非置換のC1−20アルキル、アルケニル、アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれか)、アルキルエステル(例:−Rb1−CO2−Ra1:Ra1はRaと同じ定義であり、Rb1はC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれか)、C1−20アルコキシ、アミド(例:−CONRbRc:Rb及びRcは夫々水素原子、非置換のC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれかを独立して選択)、アルキニルアリール(例:−CC−aryl−Rc1:Rc1は水素原子、非置換のC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれか)。
【0041】
好ましくは、置換基R1〜R10は夫々水素原子、フェニル、ベンジル等のアラルキルのうちいずれかの中から独立して選択され、1〜6の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和結合を含む直鎖あるいは分岐鎖構造を有する。
【0042】
ここで用いられるヘテロアリールとは芳香族性あるいは非芳香族性を有する芳香環あるいは非芳香環を含み、該環が多環式あるいは単環式構造である化合物を指す。
さらに、該化合物は前記環内に窒素、硫黄、酸素などの少なくとも1つのヘテロ原子、あるいは該ヘテロ原子の組み合わせを含んでヘテロ環を形成し、該ヘテロ環のうち少なくとも1つは芳香性を有する。
前記ヘテロ原子を含む少なくとも1つの環は3、4、5、6、7または8員環の場合もある。
ここで用いられるヘテロアリールとは芳香環に加えて、部分的または完全な飽和環を有する化合物を含むことを意図している。
ヘテロ原子は部分的または完全な飽和環の中に、あるいは芳香環の中に位置することができる。
【0043】
ここで用いられるヘテロアラルキルとは、ピラゾリルメチル等のヘテロアリールで置換されたC1−20アルキルを指す。
【0044】
さらにヘテロアリール化合物は、アルキル、アルカリルあるいは先に定義したアリール、あるいは特に以下に挙げる官能基のうちいずれか1以上によっても任意的に置換可能である。
シアノ、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、フェニル、ヒドロキシ、スルホ、チオール、エステル(例:−CO2−Rd:Rdは非置換のC1−6アルキル、アルケニル、アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれか)、アミド(例:−CONReRf:Re及びRfは夫々水素原子、非置換のC1−6アルキル、C1−6アルケニル、C1−6アルキニル及び本明細書で定義したC1−6アラルキルのいずれかを独立して選択)。
【0045】
ここで用いられるアルキルとは、直鎖及び分岐鎖構造を有し、アルキル基形成の為3以上の炭素原子を含む。また該アルキルにはシクロアルキルも含まれる。
直鎖アルキルは、例としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルを含む。
分岐鎖アルキルは、例としてイソプロピル、イソブチル、ターシャルブチルを含む。
シクロアルキルは、例としてシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0046】
本発明によると、好ましい構成のアルキル基は1〜20の、さらに好ましくは2〜15の炭素原子を含み、さらには4〜12の炭素原子を含むのが理想的である。
アルキル基がメチルの場合、オルト位あるいはメタ位をアリールあるいはヘテロアリール基で置換するのが好ましい。またアルキル基形成の為には、3以上の炭素原子を含み、分岐鎖構造の異性体であることが好ましい。
【0047】
さらにアルキル基は、フェニル等のアリール基、アラルキル基及び/あるいは以下に挙げる官能基のうちいずれか1以上によっても任意的に置換可能である。
シアノ、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、ヒドロキシ、スルホ、チオール、エステル(例:−CO2−Rg:RgはC1−6アルキル、C1−6アルケニル、非置換のC1−6アルキニル、及びいずれも本明細書で定義したアラルキル及びアリールのいずれか)、C1−6アルコキシ、アミド(例:−CONRhRi:Rh及びRiは夫々水素原子、C1−6アルキル、C1−6アルケニル、非置換のC1−6アルキニル、及びいずれも本明細書で定義したアラルキル及びアリールのいずれかを独立して選択)。
アルキル基はアルキル鎖で置換可能であり、該アルキル鎖は1以上のヘテロ原子を含み、該ヘテロ原子はO、S及びNから1以上選択される。
【0048】
ここで用いられるアルケニル及びアルキニルは、先に述べたアルキルと同様に定義される。但し該アルケニル及びアルキニルは夫々2以上の炭素原子を含み、炭素‐炭素間の2重結合あるいは3重結合を1以上、好ましくは1含む点がアルキルと異なる。
【0049】
ここで用いられるアラルキルとは、ベンジル等のアリール基で置換されたC10−20アルキルを指す。
【0050】
OCSMは、好ましくは例としてナフタセン、ジベンゾナフタセン、テトラベンゾナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン及びクオテリレン等のポリアセンを含む。さらに前記OCSMは以下の官能基のうちいずれか1以上によってポリアセンの炭素原子を置換した、ポリアセン誘導体を含む。
カルボニル基、テトラカルボン酸ジイミド(例:ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド)及びアントラセンテトラカルボン酸ジイミド(例:アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミド)等のカルボキシル基、C60、C70、C76、C78及びC84のうちいずれかの構造を有するフラーレン、カーボンナノチューブ(例:シングルウォールナノチューブ(SWNTs;Single-Walled Carbon Nanotubes))及び縮合多環式化合物。
前記ポリアセン誘導体は、ポリアセンの炭素原子をN、S及びO原子のいずれか1以上で置換したものでもよい。
尚、前記縮合多環式化合物のさらなる例については特開平11−195790号公報(特許第3387832号公報)に詳しい記述がある。
【0051】
OSCMとして好ましいのは、例としてナフタセン、ジベンゾナフタセン、テトラベンゾナフタセン、フラーレン、縮合環構造を有する縮合環テトラカルボン酸ジイミド及び20−金属フタロシアニン等の縮合多環芳香族化合物である。
【0052】
本発明の一実施形態では、有機半導体材料は縮合多環式構造を有する。
【0053】
該縮合多環式構造は以下に挙げる基のうちいずれか1以上によって任意的に置換可能である。
アリール、アルキニルアリール、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20アラルキル、C1−20アルコキシ、−CCh−Ri。
尚、Riは非置換のC1−20アルキル、非置換のC2−20アルケニル、非置換のC2−20アルキニル、アラルキル、前記1以上のアリール、及び/あるいは前記1以上のアルキニルアリール及び/あるいは前記1以上のアラルキルのいずれかである。
また該Riの芳香環上に置換される基としては、以下に挙げる基からいずれか1以上を任意的に選択可能である。
フェニル、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C1−20アラルキル、C1−20アルコキシ、−CO2−Rk。
尚、Rkは非置換のC1−20アルキルで置換したC1−20アルケニル及び非置換のC1−20アルキルで置換したC2−20アルキニルのいずれかである。
【0054】
前記縮合多環式構造におけるさらなる任意置換基は、以下の基を含む。
シアノ、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、ヒドロキシ、スルホ、チオール、アミド(例:−CONRlRm:Rl及びRmは夫々水素原子、非置換のC1−6アルキルで置換したアルケニル、非置換のC1−6アルキルで置換したアルキニル、及びアリール、アラルキルのいずれかを独立して選択)。
【0055】
本発明の一実施形態では、有機半導体材料は縮合多環式構造からなり、該構造は2〜12の、好ましくは4〜10の、さらに理想的には6〜8の芳香環を含む。該芳香環は本明細書で定義するように任意的に置換される。
【0056】
好ましくは、前記芳香環はC6型であり、例えばフェニル環である。
【0057】
本発明の一実施形態では、有機半導体材料(OSCM)は以下の式(18)を有する縮合多環式構造からなる。
nは好ましくは0〜20の間の整数であり、好ましくは1〜6である。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10には以下に挙げる物質からなる基のうちいずれかを独立して選択する。
水素原子、アリール、アルキニルアリール、C1−20アルキル、非置換のアルキルで置換したC1−20アルケニル、非置換のアルキルで置換したC2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20アラルキル、C1−20アルコキシ、−CO2−RO。
尚、ROは非置換のアルキルで置換したC1−20アルケニル、あるいは非置換のアルキルで置換したC2−20アルケニル、非置換のアルキルで置換したC2−20アルキニル、非置換のアルキルで置換したC1−20アラルキル、非置換のアルキルで置換したC1−20アルコキシのいずれかである。
【0058】
好ましくは、R5及びR10は夫々水素原子及びアリールのいずれかから独立して選択され、その際該アリールはC1−20アルキル、好ましくはC2−10アルキルで任意的に置換される。
さらに、前記アリールはフェニルであるのが好ましい。
【0059】
本発明の一実施形態では、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8及びR9は全て水素原子であり、R5及びR10は、水素原子、アリール、アルキニルアリールのいずれかから独立して選択される。その際該アリール及びアルキニルアリールは1以上のC1−20アルキル、好ましくはC2−10アルキルで任意的に置換される。
さらに好ましくは、R5及びR10はアリール及び/あるいはC2−4アルキニルアリールである。
さらに詳しくは、前記アリールはフェニルであるのが好ましい。
【0060】
n>1の場合、置換基R5及びR10は夫々同じでも異なってもよい。有機半導体材料は以下に挙げる縮合多環式化合物のうちいずれかであるのが有利である。
1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したジフェニルアントラセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したヘキサフェニルナフタセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したテトラフェニルナフタセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したビス(フェニルエチニル)ナフタセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したヘキサフェニルペンタセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したジフェニルナフタセン。
好ましい一実施形態では、アルキルはC4−12型である。
【0061】
多環式化合物は1〜4位を、さらに好ましくは2〜3位を置換するのが好ましい。加えて該置換位置は非縮合の芳香環中にあるのがよい。
【0062】
本発明の好ましい一実施形態では、有機半導体材料は5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン(21)(ルブレン)、5,12−ジフェニルナフタセン(22)、及び9,10−ジフェニルアントラセン(23)のいずれかである。これらの化合物は非縮合芳香環の各位を数個のC1−20アルキル、好ましくはC4−12アルキルで任意的に置換される。
【0063】
本発明の一実施形態では、有機半導体材料は5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン(21)(ルブレン)及び5,11−ビス−(4−ターシャルブチルフェニル)−6,12−ジフェニルナフタセン(24)である。化合物(21)及び(23)は商業的に入手可能である。
あるいは、化合物(21)はF.H. Allen and L. Gilman (J. Am. Chem. Soc. 58 (1936) 937) に記載の方法で合成することも可能である。F.H. Allen and L. Gilmanに記載の合成方法を修正することで、先に挙げた誘導体の生成が可能であり、その場合例えば非置換アリール化合物ではなく、代わりに好適な置換アリール化合物が用いられる。
【0064】
以下に示すのは前記好ましい置換化合物の例である(25)、(26)及び(27)である。
R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、及びR6aはそれぞれ水素原子及びC1−20アルキルのいずれかから独立して選択される。該アルキルは好ましくはC2−15アルキル、さらに好ましくはC4−12アルキルである。
【0065】
本発明における成膜方法の第1実施形態において、(粉体である)OSCM分子はまずタンク内に配置され、完全に融解した後装置に移送される。すなわち該半導体融液の一定量が、該融液を付着させるOSCM分子レシーバ表面(受け面)をそなえた受容装置に移送される。
【0066】
本発明における成膜方法の第2実施形態において、粉体であるOSCM分子は前記レシーバ表面に直接配置された後、融解される。
【0067】
前記レシーバ表面とはプレパターン基板の上表面であり、たとえばOFETの基板あるいはゲート誘電体表面である。
【0068】
配置するOSCM分子の種類により、前記レシーバ表面の湿潤性を改善することが可能である。例えば該前記レシーバ表面が酸化物(例:SiO2、Al2O3、Ta2O5…)の場合、該前記レシーバ表面はシラン化(シランカップリング)剤(例:SiO2と反応するトリアルコキシクロロシラン群誘導体)との反応による化学吸着により機能化される。
【0069】
すべての成膜方法の場合において、OSCM分子は融点(Mp)より高い温度に加熱される。さらに前記レシーバ表面は該融点よりも高い温度であることが好ましい。
【0070】
OSCM分子からなる薄膜が融解状態となるとすぐに、本発明にしたがって成膜化の範囲を制御する工程が行われる。
【0071】
前記成膜化における範囲制御は、用いられるOSCM分子における相転移に関する知識(融点(Mp)、結晶化温度(Tc)等)に基づく。
【0072】
上記相転移に関するデータを踏まえ、前記レシーバ表面とOSCM分子からなるアセンブリの冷却速度を制御することにより、OSCM分子からなる薄膜成膜化を制御する。
【0073】
アモルファス薄膜を形成する為には、アニーリングが行われる場合がある。該アニーリングとは、融点から周辺温度にまで急速に冷却することで、OSCM分子融液が凝固した状態において発生する欠陥を修正することである。
【0074】
一方で単結晶薄膜を形成する為には、好ましくは前記レシーバ表面とOSCM分子からなるアセンブリにおける温度下降を制御しながら行う(化学反応速度は温度プロファイル及び熱工程における滞留時間に依存する)。該制御された温度下降はOSCMの結晶化温度(Tc)領域に達するまで行われる。該温度下降の速度は、以下に挙げる現象を誘発可能なように十分に遅く設定される。
−第1の段階における、有限数の、あるいは単一の種結晶の出現。
−その後の第2の段階における、前記有限数の種結晶を発端とする単結晶領域の累進的な成長。結晶化の制御は特にOSCM分子の化学構造及び冷却プロトコルと関連している。
−好適な冷却プロファイルを用いた、前記レシーバ表面と単結晶OSCM分子からなるアセンブリにおける周辺温度への復帰。
【0075】
OSCM分子の(例えば酸化、架橋あるいは加水分解挙動等による)劣化・分解が発生するのを防ぐ為、上記の成膜方法は好ましくは窒素(N2)及び/あるいはアルゴン(Ar)等の不活性雰囲気下で実施されるべき点に注意が必要である。該注意点を考慮して方法を実施することにより、OSCM分子の完全性に加え、化学安定性が得られる。
【0076】
アモルファス状態と単結晶状態の間に定義される中間的構造組織体は、前記アニーリングと結晶化の中間にある温度プロファイルを適用することで得られる。
【0077】
以上のような方法で、望ましい構造組織を有する薄膜が形成可能である。
【0078】
最後に、OSCM分子からなる薄膜は前記レシーバ表面あるいは基板によって運搬され、受容装置から移出される。
【0079】
図1Aから図1Fは、本発明によるOSCM分子の単結晶薄膜を含む部品の製造方法における諸工程を示す。
【0080】
本成膜方法は、発明者が試験に基づき確認済である。
【0081】
図1Aによると、プレパターン基板10が提供される。該基板は1あるいは複数の部品15を構成可能なように、前もってパターニングされ得る。例えば、部品15はそれぞれトランジスタ構造を有し、該トランジスタはドープされたシリコン基板(バックゲート端子)から製造される。該基板上には、熱処理によってシリコン酸化物層(SiO2からなるゲート絶縁膜)が形成され、該ゲート絶縁膜上にTi/Au合金からなるソース端子及びドレイン端子が蒸着される。したがって上記構成は「ボトムコンタクト」をそなえた「バックゲート」構造であり、該構造においてソース−ドレイン間のギャップ距離はおよそ4μm〜数重μmである。
【0082】
前記基板10は受容装置内に収容される。該基板全体は、例としてマルチゾーン炉のような電磁誘導、マイクロ波あるいは電気加熱炉内に配置される。
【0083】
前記加熱炉は機械的加圧手段をそなえ、該加圧手段により受容装置の内容物(例:基板10)を垂直方向に、すなわち水平方向にある受容装置に対して垂直方向に配置させることが可能である。
【0084】
図1Bによると、OSCM分子は例として粉体20のように細かい、あるいは粗い粒子の粉体として用意される。尚、該粉体は例として周辺温度下における相である。
【0085】
図1C及び図1Dによると、粉体20は前記機械的加圧手段により、基板10に押しつけられるように圧迫される。
【0086】
この際、薄板30として図示された加圧手段の端面が粉体20と接触に至る。該薄板は例としてガラス(石英ガラス)からなる。
【0087】
図1Eによると、加熱炉内で中性ガス(例:N2及び/あるいはAr)下における熱処理が行われ、炉内温度がOSCM分子の融点まで上昇する。その結果OSCM分子は融体20´に変化する。
【0088】
図1Fによると、本発明の好適な温度プロファイルにしたがって、周辺温度までの冷却が行われる。さらにOSCM分子の結晶化温度(Tc)にまで降温すれば、構造組織が制御された状態の単結晶薄膜20´´が得られる。
【0089】
温度プロファイルを制御するためには、薄板30はサーボ制御された温度調節システムをそなえる必要がある。例えば該薄板30の温度を、例えば炉内で行われた温度測定と関連させて調節することにより、OSCM分子の温度に作用することが可能である。該調節手段により、OSCM分子20´の温度及び冷却速度を正確に制御することが出来る。
【0090】
上記の方法例により、OSCM分子20´からなる単結晶薄膜を活性層としてそなえるOFET型の有機電子デバイスが最終的に得られる。
【0091】
本成膜方法における他の例においては、粉体20のみが隔離された状態にて融解され、その後加熱炉内に運搬される。該運搬の手段としては、例えば軸方向ダクトが挙げられる。該軸方向ダクトは機械的加圧手段にそなえられ、ダクトの開口部はバルブ制御される。
加圧手段としては、射出あるいは押出し成形に用いられるようなシングルあるいはツインスクリューが適用可能である。
この方法を用いる場合、好ましくは加熱炉の温度を融点と同等に調節しておくことにより、基板10も同温度に維持される。その結果、OSCM分子融体が基板への到達時に熱ショックを経験し、その後高品質な構造の形成に至らないという事態を防ぐことが出来る。
該成膜方法における一例を適用すると、OSCM分子の質量制御が他の例と比較してより容易になる。
【0092】
図2Aから図2Nにおいて、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査(POTM)の反射モードにおける撮像画像を示す。該画像はルブレン(オリゴ(アセン)類OSCM分子)からなる単結晶薄膜20の本発明における形成諸工程を示し、該単結晶薄膜はOFETのプレパターン基板10上に配置されている。
【0093】
図2Aは周辺温度下において基板20上に配置された粉体を示す。
【0094】
図2Bは融点が334℃であるルブレンが、345.3℃にて融解状態にあることを示す。この際ルブレン融液が光学熱顕微鏡検査(POTM)の反射モードにおいて不透過の状態にある為、基板10が不可視化していることが分かる。
【0095】
図2Cから図2Lは、温度が345.3℃から329.2℃にまで5℃/秒の速度で下降したことを示す。夫々の画像は該制限値間の異なる温度における構造状態を示す。該夫々の画像において、純粋なOSCM分子に添加物を加えることなく、単結晶が出現し、経時及び降温にともない成長していく様が見て取れる。この際単結晶ルブレンは、POTMの反射モードにおいて複屈折を示す。したがって薄膜が単結晶領域を形成した時、基板10は再び可視化する。
発明者によると、図2B及び図2Cを分析すると単結晶領域が最初に確認されるのは図2Cである為、345.3℃から333.9℃の間で出現する種結晶は1つのみであると推論される。
【0096】
図2M及び図2Nは、温度が周辺温度である30℃にまで5℃/秒の速度で下降したことを示す。
図2Mは303℃における薄膜20の状態を示す。単結晶領域は透明状態ではっきりと確認可能であり、薄膜の厚みにより暗色線によって画定されている。
【0097】
図2Nによると、ルブレンからなる単結晶の活性薄膜をそなえる稼働可能なOFETが得られたことが分かる。
【0098】
図3Aから図3Fは、POTMの透過モードにおける撮像画像を示す。該画像はα−テルチエニル(オリゴ(チオフェン)類OSCM分子)からなる単結晶薄膜20の本発明における形成諸工程を示し、該単結晶薄膜はガラス面上に配置されている。
【0099】
α−テルチエニルはまず融点である94℃と同等に加熱される。
【0100】
図3Aから図3Eにより、温度が融点にまで上昇する経過を示す。夫々の画像は、異なる冷却段階における構造状態を示す。該夫々の画像において、単結晶領域である明色部(暗色部はα−テルチエニル融液からなる)が出現し、経時にともない成長していく様子が見て取れる。
【0101】
図3Fは、温度が周辺温度である30℃にまで2.5℃/秒の速度で下降したことを示す。これにより、絶縁体上に形成したα−テルチエニルからなる(オンインシュレータ型の)単結晶薄膜が得られたことが分かる。この場合、絶縁体とはガラス面を指す。
【0102】
POTMによる画像はX線回折法(XRD;X-ray
Diffraction)及び原子間力顕微鏡法(AFM;Atomic
Force Microscopy)による特性評価によって補足される。該測定法によると以下の作業が可能となる。
−領域における単結晶特性の、メゾスコピックあるいはマクロスコピックな確認(XRDによる測定)。
−基板の種類に依存する、結晶における配向型の測定(AFM及びXRDによる測定)。
【0103】
[本発明による有機電界効果トランジスタの性能レベル]
図4はPOTMによるOFET装置の撮像画像であり、該OFET装置はソース17とドレイン18の間にギャップ16をそなえる。該ギャップは幅30μm、長さ1000μmであり、厚さ100nmのゲート酸化物で被膜されている。該ゲート酸化物はさらに単結晶領域(直線部21)で部分的に被膜されている。該単結晶領域は夫々ほぼ同方向に配向するルブレンの薄膜からなり、本発明による単結晶領域の初期成長の間に形成される。
【0104】
基板10と有機層20間の熱勾配は冷却過程においても依然として高く、その結果ソース17とドレイン18間のギャップ16全体を被覆することはできない。そのため冷却過程において、単結晶膜は初期成長時よりも小さなシングル領域に分裂する。
【0105】
したがって下記に示す電気特性は、本発明のデバイスにおいては信頼性が低い。該電気特性とは、図5に示すドレイン電流(ID[nA])−ドレイン電圧(VD[V])間特性、及び図6に示す、ドレイン電圧(VD[V])−30V時における、飽和領域における電荷キャリアの移動度(μsat[cm2.V.−1.s−1])−ゲート電圧(VG[V])間特性を示す。
【0106】
上述のように電気特性は重要視されないものの、一方で図5及び図6から算出される性能レベルは非常に信頼性が高い。該信頼性は例えばアモルファスシリコンからなる活性層をそなえる電界効果トランジスタにおける信頼性と同等である。
【0107】
図5において特に注意すべきは、デバイスはオン状態にあり、さらにゲート酸化物の厚さが100nmあることにより、比較的低い電圧を伝導している点である。
【0108】
図6に示す、飽和領域において計測された実効移動度は、ゲート電圧(VG)がおよそ25Vの場合におよそ1.0cm2.V-1.s-1で飽和値に達する。該移動度はID1/2−(VG)間特性(不図示)の勾配から求められる。
【0109】
前記移動度は、ソース−ドレイン間ギャップ16が完全に被覆されないにも関わらず、薄膜OFETにおいて特に高い。
【0110】
したがって前記分裂状態のOFETにおいて計測された実測移動度は、薄膜が非分裂状態のOFETにおける移動度をはるかに下回る。ルブレンからなる単結晶薄膜の場合、大規模な単結晶活性層の成長を最適化すること、あるいは電極の配置を減少させることにより、およそ数10cm2.V-1.s-1の移動度(μ)レベルに達するのが妥当であると推測される。
【0111】
マイクロエレクトロニクスあるいはナノエレクトロニクスデバイスへの工業的適用を行う場合、ソース−ドレイン電極による被覆表面積が上記分裂状態薄膜の例よりさらに狭くなることが特にあり得る。
【0112】
単結晶ルブレンの薄膜をそなえる有機電界効果トランジスタ(OFET)を本発明にしたがって形成することにより、高い電気的性能レベルへの到達が可能となる。
【0113】
ルブレンは熱安定性を有し、成膜時における酸素混入効果の影響を殆ど受けることなく移動度の記録値を得ることが出来る為、非常に魅力的な素材である。しかしながら一方で、該ルブレンは、従来技術を用いた場合には、高度に成膜化された単結晶薄膜として得るのが依然として非常に困難なOSCM分子である。この2点を考慮すると、前述した諸結果は一層興味深い。
【0114】
また発明者は、α−テルチエニル、α−セキシチエニル及びピレンのような他のOSCM分子からの単結晶薄膜形成にも成功している。
【0115】
さらに、OSCM分子からなる単結晶薄膜の本発明における形成技術は、融点にて一致融解を示すあらゆるOSCM分子に適用可能という点で、包括的であると指摘され得る。
【0116】
また、本発明における成膜方法の実施は技術的に容易であり、さらにプラスチック加工技術と類似している為、従来のマイクロ/ナノエレクトロニクス機器の製造方法と比較して生産ラインの低コスト化という発展の見通しを示すことが出来る。
【0117】
加えて、本発明における成膜方法によると、構造の成膜範囲を制御した状態の薄膜により大表面を被覆可能であると推測される。尚、該構造組織は場合によりアモルファス層から単結晶層までの幅広い範囲を網羅する。さらに該構造組織の形成には、プラスチック加工と類似の技術を用いた有機電子デバイス及び光電子工学デバイスの製造方法と関連した低コストの形成方法が適用される。
【符号の説明】
【0118】
基板 10
構成部品 15
OSCM分子(粉体) 20
薄板 30
OSCM分子(融体) 20´
OSCM分子(結晶体) 20´´
【技術分野】
【0001】
本発明は有機半導体材料(OSCM;organic
semiconductor material)分子を用いて薄膜を形成する方法に関し、該膜は電子工学あるいは光電子工学分野に適用されるデバイスに搭載されることを目的とする。したがって前記適用を促進する為に、前記有機半導体材料は構造組織、すなわちアモルファス(非晶質)と結晶との中間状態を有するのが好ましい。
【背景技術】
【0002】
有機半導体(π共役分子及びマクロ分子)は80年代中頃から、有機発光ダイオード(有機EL)(OLED;organic light emitting diodes)やポリマー発光ダイオード(PLED;polymer light-emitting
diodes)を例とするダイオード、有機電界効果トランジスタ(OFETS;organic field effect transistors)、ポリマー有機電界効果トランジスタ(PFETS;polymer organic field effect transistors)や有機半導体からなる単結晶を活性層として利用する有機電界効果トランジスタ(SCOFETS;single
crystal organic field effect transistors)を例とする電界効果トランジスタ、あるいは有機太陽電池や有機レーザーのような多様な電子部品の製造に用いられる活性層として使用されてきた。
【0003】
前記OSCMからなる薄膜は、ウェットプロセス、すなわち前記材料を溶液、分散液、インキ等の溶媒に溶解して用いるプロセスにより形成されることは周知である。
【0004】
しかしながら、上記ウェットプロセスはポリマー半導体に特化したものであることを考慮すると、単結晶有機半導体材料からなる薄膜形成に用いることは出来ない。
【0005】
さらに、溶媒の使用により毒性、揮発、引火、汚染等の作用を誘発するという問題が付随する。
【0006】
前記材料の薄膜形成には、真空蒸着法(ドライプロセス)が用いられることもまた周知である。
【0007】
上記の成膜方法は蒸発性の半導体分子にのみ用いられる。該分子に該当するのは複雑な構造を持たない比較的小規模な分子であり、それゆえほとんどのポリマーがこれに当てはまらない。特に、ある分子を蒸着させ結晶領域を得るためには、該分子が特定の基板上でディウェッティング(dewetting)することが条件となる。これに当てはまるOSCM分子としては、例えばルブレンとも呼ばれる5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンが挙げられる。
【0008】
さらに前記真空蒸着法は大量の真空を要する為、限定的でありまたコストがかかる。
【0009】
加えて、蒸着法により得られた有機半導体材料の薄膜がウェットプロセスにより得られた薄膜よりも良質な構造を有するとしても、いずれにせよ大量の材料を無駄にすることなく大規模な単結晶薄膜を形成するのは非常に困難である。
【0010】
またウェットプロセスにより薄膜を形成する場合にも、同じ問題が生じる。
【0011】
さらに前記2つの従来技術においては、最終的に得られる薄膜組織が及ぶ範囲(成膜される範囲)を正確に制御することが難しいという別の問題も生じる。
【0012】
しかしながら、デバイスの電子輸送特性及び電子輸送能力レベルを決定するという観点から、前記薄膜の構造品質を制御することは重要なポイントである。
【0013】
特許文献1(WO 2005/104265)及び非特許文献1“Organic thin-film electronics from vitreous solution-processed
rubrene hypereutectics” (N. Stingelin-Stutzmann et al, in Nature Materials,
Vol. 4, August 2005) の記載内容から、多結晶OSCMからなる薄膜の形成方法が理解出来る。該形成方法とは、まずOSCMを含む組織を融解させ、その後該液化した組織を冷却することにより薄膜材料を多結晶体として凝固させることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO 2005/104265公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】“Organicthin-film electronics from vitreous solution-processed rubrene hypereutectics”(N. Stingelin-Stutzmann et al, in Nature Materials, Vol. 4, August 2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来技術と比較すると、本発明における第1の目的は、OSCM分子からなる活性薄膜の成膜範囲を制御することにより有機電子デバイス及び光電子工学デバイスの性能を向上させることである。
【0017】
本発明における第2の目的は、前記薄膜を高品質に制御された状態及び再現性の高い状態で形成することである。
【0018】
本発明における第3の目的は、前記薄膜を大きな表面積(ウエハー基板の直径;200mm〜300mm)において形成することである。
【0019】
本発明における第4の目的は、工業的な規模での適用が可能なように、前記薄膜を容易な方法かつ低コストで形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の諸目的を達成する為に、第1の観点に従い、本発明はOSCM分子を用いて薄膜を形成する方法を提案する。該薄膜は電子工学あるいは光電子工学分野に適用されるデバイスに搭載されることを目的とし、該薄膜の形成方法は以下のステップからなる。
a)薄膜形成の為に、一定量のOSCM分子を融解(融点([Mp];melting point)
よりも高い温度にある)状態でキャリア表面に供給するステップ。
b)薄膜を凝固する為に、一定の温度プロファイルに基づいて冷却を行うステップ。
【0021】
ステップa)を実施の際、キャリア表面の温度はOSCM分子の融点と一致するか、あるいは融点より高いことが特徴となる。
【0022】
また、ステップb)は、以下の温度プロファイルに基づいて実施されることを特徴とする。
−OSCM分子における徐冷制御に対応する第1のパート。該パートによりOSCM分子は冷却されて(後記種結晶が生成される)再結晶温度に近い温度となり、該OSCM分子における冷却速度は、OSCM分子が融解状態にある薄液膜中に1つの種結晶のみが出現するのに十分な程度遅く設定される。
−OSCM分子における冷却制御に対応する第2のパート。該パートにより前記1つの種結晶を発端として少なくとも1つの単結晶領域が成長し、最終的には単結晶薄膜が得られる。
【0023】
本形成方法のさらなる特徴として以下の点が挙げられる。
−本方法は不活性雰囲気下で実施される。
−本方法はステップa)の前に、前記OSCM分子を固形状態で提供し、融点より高い温度まで加熱する工程を含む。
−ステップb)は、キャリア表面上に融解状態のOSCM分子が薄液膜状態で分布するように、好ましくは該OSCM分子の表面に加圧する工程を含む。
−ステップa)は以下の工程を含む。
・前記キャリアを加熱炉の受容装置内に形成する。
・融解状態のOSCM分子をキャリア上に拡散させる。
・キャリア表面上に均一厚で薄液膜が分布するように、融解状態のOSCM分子の表面に圧力を加える。
−ステップb)の実施中、薄液膜に直接接触し、炉温調節システムによってサーボ制御される温度制御手段によって、冷却が制御される。
【0024】
−OSCM分子は以下の群から選択可能である。
−第1の群は化合物(3)、(4)、(5)及び(6)から構成される。
Mwは分子量を表し、nは好ましくは2〜20の間の整数である。
・(3)及び(4)に示す第1のパターンにおいて、X1=X2=X3=X4=Cであり、あるいは(3)においてはCをCHで置換してもよい。該パターンは例としてビフェニル(n=2)、テルフェニル(n=3)、クオターフェニル(n=4)、キンクフェニル(n=5)あるいはセキシフェニル(n=6)を定義する。
・(5)及び(6)に示す第2のパターンにおいて、Y1=S、Y2=Y3=Cであり、あるいは(5)においてはCをCHで置換してもよい。該パターンは例としてα−ビチエニル(n=2)、α−テルチエニル(n=3)、α−クオターチエニル(n=4)、α−キンクチエニル(n=5)あるいはα−セキシチエニル(n=6)を定義する。
上記第1の群において、R1、R2、R3及びR4は好ましくは水素原子、フェニルあるいはベンジル等のアラルキルのうちいずれか1のラジカルであり、1〜6の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和結合を含む直鎖あるいは分岐鎖のラジカルとして定義される。
【0025】
−第2の群は化合物(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)及び(16)から構成される。
nは好ましくは2〜20の間の整数である。
・(9)、(10)、(13)、(14)に示す第1のパターンにおいて、X1=X2=X3=X4=Cであり、あるいは(9)及び(13)においてはCをCHで置換してもよい。該パターンは繰り返し単位nに応じて、例としてオリゴ(1,4−フェニレンビニレン)あるいはオリゴ(1,4−フェニレンエチニレン)を定義する。
・(11)、(12)、(15)、(16)に示す第2のパターンにおいて、Y1=S、Y2=Y3=Cであり、あるいは(11)及び(15)においてはCをCHで置換してもよい。該パターンは例としてオリゴ(2,5−チエニレンビニレン)あるいはオリゴ(2,5−チエニレンエチニレン)を定義する。
上記第2の群において、R1、R2、R3及びR4は好ましくは水素原子、フェニルあるいはベンジル等のアラルキルのうちいずれか1のラジカルであり、1〜6の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和結合を含む直鎖あるいは分岐鎖のラジカルとして定義される。
【0026】
−第3の群は化合物(17)、(18)、(19)及び(20)から構成される。
nは好ましくは0〜20の間の整数である。
・(17)に示す第1のパターンは、例としてナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセンあるいはヘキサセンを定義する。
・(18)に示す第2のパターンにおいて、R5=R10=フェニル基であり、繰り返し単位nに応じて、例えば9,10−ジフェニルアントラセン、5,12−ジフェニルナフタセンあるいはルブレンとも呼ばれる5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンが定義される。
・(19)に示す第3のパターンは、ピレン、1,3,6,8−テトラフェニルピレン、1,3,6,8−テトラチエニルピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、あるいはC60、C70、C76、C78、C84フラーレンを定義する。
・(20)に示す第4のパターンは、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミド及びペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミドを定義する。
上記第3の群において、R1〜R10は好ましくは水素原子、フェニルあるいはベンジル等のアラルキルのうちいずれか1のラジカルであり、1〜6の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和結合を含む直鎖あるいは分岐鎖のラジカルとして定義される。
【0027】
−さらに、OSCM分子は以下の置換基のうち1以上からも構成可能である。
・後述の基礎パターンM1を有するアリール基。該M1パターンにおいては、X1=X2=X3=X4=Cである。
・基礎パターンM1を有するヘテロアリール基。該M1パターンにおいて、X1、X2、X3及びX4にはC、O、S、N、P及びBのうちいずれか1以上が選択されるが、その際好ましくはC、NあるいはPのいずれか1以上が、特に好ましくはCあるいはNのいずれかが選択される。
・後述の基礎パターンM2を有するヘテロ環式基。該M2パターンにおいて、Y1=O、S、N、PあるいはBのいずれか1であるが、その際好ましくはO、SあるいはNのいずれか1以上が、特に好ましくはSが選択される。さらにY2およびY3にはC、O、S、N、P及びBのうちいずれか1以上が選択されるが、その際好ましくはC、NあるいはPのいずれか1以上が、特に好ましくはCあるいはNのいずれかが選択される。
【0028】
第2の観点に従い、本発明はOFET等の有機電界効果トランジスタの形成方法を提案する。該形成方法は以下のステップからなることを特徴とする。
a)前もってパターニングしたプレパターン基板を供給するステップ。該プレパターン基板はゲート誘電体、ソース電極及びドレイン電極をそなえる。
b)本発明に従って単結晶性OSCM分子から薄膜を形成するステップ。該ステップにおいて前記プレパターン基板は前記キャリアとなり、また前記薄膜はトランジスタの活性層となる。
【0029】
本発明のさらなる特徴、目的及び利点は、添付の図面及び以下に非限定例として記載する実施形態より導き出すことができる。
【発明の効果】
【0030】
以上記載したように本発明によれば、OSCM分子からなる活性薄膜を高品質に且つ再現性の高い状態で成膜制御することにより、有機電子デバイス及び光電子工学デバイスの性能を向上させることが出来ると共に、前記薄膜をウエハー基板の直径が200mm〜300mm程度の大口径ウエハーにおいて成膜可能とし、工業的な規模での適用が可能な成膜形成を容易かつ低コストで実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1Aから図1Fは、本発明によるOFETの形成方法における諸工程を示す。
【図2A】交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査(POTM;cross-polarizedoptical thermo-microscopy)の反射モードにおける撮像画像を示す。該画像はOFETにおいて形成過程にある、本発明におけるルブレンによる単結晶薄膜である。
【図2B】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2C】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2D】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2E】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2F】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2G】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2H】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2I】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2J】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2K】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2L】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2M】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図2N】図2Aと同様、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査の反射モードにおける撮像画像を示す。
【図3】図3Aから図3Gは、POTMの透過モードにおける撮像画像を示す。該画像はガラス基板表面に形成された本発明におけるα−テルチエニルによる単結晶薄膜である。
【図4】図4はPOTMの反射モードにおける撮像画像を示す。該画像は本発明に従ってOFET内に形成されたルブレンによる単結晶活性層である。
【図5】図5はOFETにおけるドレイン電流(ID[nA])−ドレイン電圧(VD[V])間特性を示したグラフである。
【図6】図6は、図4に示したOFETの飽和領域における電荷キャリアの移動度(μsat[cm2.V.−1.s−1])と、ゲート電圧(VG[V])との関係を示したグラフである。この際、ドレイン電圧(VD[V])の値は−30Vである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
使用されるOSCM分子は粉体であり、粒径の大きさは小さくても大きくてもよい。また他の固形状でもよい。
【0033】
OSCM分子は「小規模な分子」からなるOSCMである。ここで用いられる「小規模」とは、すなわち分子の周期構造が1D、擬1D、2D、3Dであり、分子量(Mw;molecular weight)が5,000g.mol-1と同等かそれより少ないという定義である。前記小規模分子における繰り返し単位nの数は20程度であり、さらには20と同等かそれより少ないn重体(例:オリゴマー)となるのが好ましい。
さらに前記小規模分子の特性として、好ましくは融点にて一致融解を示す。
また、高分子構造(n>20)を有する有機半導体ポリマー(OSCPs;organic
Semiconductor Polymers)、高分子構造(n>20)を有する有機半導体共重合体(OSCCs;organic Semiconductor Copolymers)及びメソ構造有機半導体材料(MOSCMs;Mesomorphous organic Semiconductor Materials)は本発明の範囲から除外する。
【0034】
OSCM分子には、半導体特性を持つ前記以外のいずれの有機素材も採用可能である。該有機素材は、少なくとも炭素及び1重か2重の炭素−炭素結合を複数有し、さらには水素及び複数の炭素−水素結合を有するのが好ましい。
【0035】
例として、OSCM分子は基礎パターンである以下のM1及びM2を含み、さらに続く第1〜3群より選択可能である。
好ましくはX1、X2、X3及びX4にはC、NあるいはPの中から、特に好ましくはCあるいはNのいずれかが選択される。
同様にY2及びY3にも、好ましくはC、NあるいはPの中から、特に好ましくはCあるいはNのいずれかが選択される。
【0036】
直鎖構造のOSCMであり、基礎パターンM1及びM2を含む第1群を以下に示す。該第1群は1Dあるいは擬1Dのオリゴマー(3)及び(5)、あるいは該オリゴマーの置換誘導体(4)及び(6)からなる。置換基R1、R2、R3、及びR4の定義は後述する通りである。
nは好ましくは2〜20の間の整数である。
【0037】
直鎖分岐混合構造のOSCMであり、基礎パターンM1及びM2を含む第2群を以下に示す。該第2群は1Dあるいは擬1Dの直鎖分岐混合コオリゴマー(9)、(11)、(13)及び(15)、あるいは該直鎖分岐混合コオリゴマーの置換誘導体(10)、(12)、(14)及び(16)からなる。置換基R1、R2、R3、及びR4の定義は後述する通りである。
nは好ましくは2〜20の間の整数である。
【0038】
擬1D/2D、及び2D−3D(1Dと2D間はスラッシュで「あるいは」という「意味であり、2Dと3Dの間はハイフンで、2Dと3Dとの間の分子構造も含む」構造の有機半導体材料であり、X1=X2=X3=X4=Cである基礎パターンM1、及びM2(段落0035参照)を含む第3群を以下に示す。該第3群は多環式/ヘテロ環式構造(ヘテロ環式構造についてはここでは説明を省略する)を有する縮合環化合物(17)、さらには擬1D/2D及び2D−3D構造を有する前記縮合環化合物の置換誘導体(18)、(19)及び(19)からなる。
nは好ましくは0〜20の間の整数である。R1〜R10の定義は後述する通りである。
【0039】
本発明のOSCM分子は、アリール基(X1=X2=X3=X4=Cである基礎パターンM1)及び/あるいはヘテロアリール基(X1、X2、X3及びX4がC、O、S、N、P及びBのうちいずれか1以上、好ましくはC、NあるいはPのいずれか1以上、特に好ましくはCあるいはNのいずれかである基礎パターンM1)及び/あるいはヘテロ環式基(Y1=O、S、N、PあるいはBのうちいずれか1、好ましくはO、SあるいはNのいずれか1、特に好ましくはSであり、Y2及びY3がC、O、S、N、P及びBのいずれか、好ましくはC、NあるいはPのいずれか1、特に好ましくはCあるいはNのいずれかである基礎パターンM2)からなる。
上記の置換基からはX1及び/あるいはX2及び/あるいはX3及び/あるいはX4=Oの場合、さらにY2及び/あるいはY3=Oの場合が除外される。
【0040】
ここで用いられるアリールとは縮合ヘテロ環構造を含み、該構造は少なくとも1つの完全芳香環を含み、該芳香環はR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10のうちいずれか1以上で任意的に置換された化合物のことである。前記芳香環上に置換されるR1〜R10の官能基は、例として以下のうちいずれか1以上を指す。
シアノ、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、フェニル、ヒドロキシ、スルホ、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、エステル(例:−CO2−Ra:Raは非置換のC1−20アルキル、アルケニル、アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれか)、アルキルエステル(例:−Rb1−CO2−Ra1:Ra1はRaと同じ定義であり、Rb1はC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれか)、C1−20アルコキシ、アミド(例:−CONRbRc:Rb及びRcは夫々水素原子、非置換のC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれかを独立して選択)、アルキニルアリール(例:−CC−aryl−Rc1:Rc1は水素原子、非置換のC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれか)。
【0041】
好ましくは、置換基R1〜R10は夫々水素原子、フェニル、ベンジル等のアラルキルのうちいずれかの中から独立して選択され、1〜6の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和結合を含む直鎖あるいは分岐鎖構造を有する。
【0042】
ここで用いられるヘテロアリールとは芳香族性あるいは非芳香族性を有する芳香環あるいは非芳香環を含み、該環が多環式あるいは単環式構造である化合物を指す。
さらに、該化合物は前記環内に窒素、硫黄、酸素などの少なくとも1つのヘテロ原子、あるいは該ヘテロ原子の組み合わせを含んでヘテロ環を形成し、該ヘテロ環のうち少なくとも1つは芳香性を有する。
前記ヘテロ原子を含む少なくとも1つの環は3、4、5、6、7または8員環の場合もある。
ここで用いられるヘテロアリールとは芳香環に加えて、部分的または完全な飽和環を有する化合物を含むことを意図している。
ヘテロ原子は部分的または完全な飽和環の中に、あるいは芳香環の中に位置することができる。
【0043】
ここで用いられるヘテロアラルキルとは、ピラゾリルメチル等のヘテロアリールで置換されたC1−20アルキルを指す。
【0044】
さらにヘテロアリール化合物は、アルキル、アルカリルあるいは先に定義したアリール、あるいは特に以下に挙げる官能基のうちいずれか1以上によっても任意的に置換可能である。
シアノ、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、フェニル、ヒドロキシ、スルホ、チオール、エステル(例:−CO2−Rd:Rdは非置換のC1−6アルキル、アルケニル、アルキニル及び本明細書で定義したアラルキルのいずれか)、アミド(例:−CONReRf:Re及びRfは夫々水素原子、非置換のC1−6アルキル、C1−6アルケニル、C1−6アルキニル及び本明細書で定義したC1−6アラルキルのいずれかを独立して選択)。
【0045】
ここで用いられるアルキルとは、直鎖及び分岐鎖構造を有し、アルキル基形成の為3以上の炭素原子を含む。また該アルキルにはシクロアルキルも含まれる。
直鎖アルキルは、例としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルを含む。
分岐鎖アルキルは、例としてイソプロピル、イソブチル、ターシャルブチルを含む。
シクロアルキルは、例としてシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0046】
本発明によると、好ましい構成のアルキル基は1〜20の、さらに好ましくは2〜15の炭素原子を含み、さらには4〜12の炭素原子を含むのが理想的である。
アルキル基がメチルの場合、オルト位あるいはメタ位をアリールあるいはヘテロアリール基で置換するのが好ましい。またアルキル基形成の為には、3以上の炭素原子を含み、分岐鎖構造の異性体であることが好ましい。
【0047】
さらにアルキル基は、フェニル等のアリール基、アラルキル基及び/あるいは以下に挙げる官能基のうちいずれか1以上によっても任意的に置換可能である。
シアノ、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、ヒドロキシ、スルホ、チオール、エステル(例:−CO2−Rg:RgはC1−6アルキル、C1−6アルケニル、非置換のC1−6アルキニル、及びいずれも本明細書で定義したアラルキル及びアリールのいずれか)、C1−6アルコキシ、アミド(例:−CONRhRi:Rh及びRiは夫々水素原子、C1−6アルキル、C1−6アルケニル、非置換のC1−6アルキニル、及びいずれも本明細書で定義したアラルキル及びアリールのいずれかを独立して選択)。
アルキル基はアルキル鎖で置換可能であり、該アルキル鎖は1以上のヘテロ原子を含み、該ヘテロ原子はO、S及びNから1以上選択される。
【0048】
ここで用いられるアルケニル及びアルキニルは、先に述べたアルキルと同様に定義される。但し該アルケニル及びアルキニルは夫々2以上の炭素原子を含み、炭素‐炭素間の2重結合あるいは3重結合を1以上、好ましくは1含む点がアルキルと異なる。
【0049】
ここで用いられるアラルキルとは、ベンジル等のアリール基で置換されたC10−20アルキルを指す。
【0050】
OCSMは、好ましくは例としてナフタセン、ジベンゾナフタセン、テトラベンゾナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン及びクオテリレン等のポリアセンを含む。さらに前記OCSMは以下の官能基のうちいずれか1以上によってポリアセンの炭素原子を置換した、ポリアセン誘導体を含む。
カルボニル基、テトラカルボン酸ジイミド(例:ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド)及びアントラセンテトラカルボン酸ジイミド(例:アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミド)等のカルボキシル基、C60、C70、C76、C78及びC84のうちいずれかの構造を有するフラーレン、カーボンナノチューブ(例:シングルウォールナノチューブ(SWNTs;Single-Walled Carbon Nanotubes))及び縮合多環式化合物。
前記ポリアセン誘導体は、ポリアセンの炭素原子をN、S及びO原子のいずれか1以上で置換したものでもよい。
尚、前記縮合多環式化合物のさらなる例については特開平11−195790号公報(特許第3387832号公報)に詳しい記述がある。
【0051】
OSCMとして好ましいのは、例としてナフタセン、ジベンゾナフタセン、テトラベンゾナフタセン、フラーレン、縮合環構造を有する縮合環テトラカルボン酸ジイミド及び20−金属フタロシアニン等の縮合多環芳香族化合物である。
【0052】
本発明の一実施形態では、有機半導体材料は縮合多環式構造を有する。
【0053】
該縮合多環式構造は以下に挙げる基のうちいずれか1以上によって任意的に置換可能である。
アリール、アルキニルアリール、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20アラルキル、C1−20アルコキシ、−CCh−Ri。
尚、Riは非置換のC1−20アルキル、非置換のC2−20アルケニル、非置換のC2−20アルキニル、アラルキル、前記1以上のアリール、及び/あるいは前記1以上のアルキニルアリール及び/あるいは前記1以上のアラルキルのいずれかである。
また該Riの芳香環上に置換される基としては、以下に挙げる基からいずれか1以上を任意的に選択可能である。
フェニル、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C1−20アラルキル、C1−20アルコキシ、−CO2−Rk。
尚、Rkは非置換のC1−20アルキルで置換したC1−20アルケニル及び非置換のC1−20アルキルで置換したC2−20アルキニルのいずれかである。
【0054】
前記縮合多環式構造におけるさらなる任意置換基は、以下の基を含む。
シアノ、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、ヒドロキシ、スルホ、チオール、アミド(例:−CONRlRm:Rl及びRmは夫々水素原子、非置換のC1−6アルキルで置換したアルケニル、非置換のC1−6アルキルで置換したアルキニル、及びアリール、アラルキルのいずれかを独立して選択)。
【0055】
本発明の一実施形態では、有機半導体材料は縮合多環式構造からなり、該構造は2〜12の、好ましくは4〜10の、さらに理想的には6〜8の芳香環を含む。該芳香環は本明細書で定義するように任意的に置換される。
【0056】
好ましくは、前記芳香環はC6型であり、例えばフェニル環である。
【0057】
本発明の一実施形態では、有機半導体材料(OSCM)は以下の式(18)を有する縮合多環式構造からなる。
nは好ましくは0〜20の間の整数であり、好ましくは1〜6である。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10には以下に挙げる物質からなる基のうちいずれかを独立して選択する。
水素原子、アリール、アルキニルアリール、C1−20アルキル、非置換のアルキルで置換したC1−20アルケニル、非置換のアルキルで置換したC2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20アラルキル、C1−20アルコキシ、−CO2−RO。
尚、ROは非置換のアルキルで置換したC1−20アルケニル、あるいは非置換のアルキルで置換したC2−20アルケニル、非置換のアルキルで置換したC2−20アルキニル、非置換のアルキルで置換したC1−20アラルキル、非置換のアルキルで置換したC1−20アルコキシのいずれかである。
【0058】
好ましくは、R5及びR10は夫々水素原子及びアリールのいずれかから独立して選択され、その際該アリールはC1−20アルキル、好ましくはC2−10アルキルで任意的に置換される。
さらに、前記アリールはフェニルであるのが好ましい。
【0059】
本発明の一実施形態では、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8及びR9は全て水素原子であり、R5及びR10は、水素原子、アリール、アルキニルアリールのいずれかから独立して選択される。その際該アリール及びアルキニルアリールは1以上のC1−20アルキル、好ましくはC2−10アルキルで任意的に置換される。
さらに好ましくは、R5及びR10はアリール及び/あるいはC2−4アルキニルアリールである。
さらに詳しくは、前記アリールはフェニルであるのが好ましい。
【0060】
n>1の場合、置換基R5及びR10は夫々同じでも異なってもよい。有機半導体材料は以下に挙げる縮合多環式化合物のうちいずれかであるのが有利である。
1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したジフェニルアントラセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したヘキサフェニルナフタセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したテトラフェニルナフタセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したビス(フェニルエチニル)ナフタセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したヘキサフェニルペンタセン、1以上のC1−20アルキルで(好ましくは非縮合芳香環上のいずれかの位を)任意的に置換したジフェニルナフタセン。
好ましい一実施形態では、アルキルはC4−12型である。
【0061】
多環式化合物は1〜4位を、さらに好ましくは2〜3位を置換するのが好ましい。加えて該置換位置は非縮合の芳香環中にあるのがよい。
【0062】
本発明の好ましい一実施形態では、有機半導体材料は5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン(21)(ルブレン)、5,12−ジフェニルナフタセン(22)、及び9,10−ジフェニルアントラセン(23)のいずれかである。これらの化合物は非縮合芳香環の各位を数個のC1−20アルキル、好ましくはC4−12アルキルで任意的に置換される。
【0063】
本発明の一実施形態では、有機半導体材料は5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン(21)(ルブレン)及び5,11−ビス−(4−ターシャルブチルフェニル)−6,12−ジフェニルナフタセン(24)である。化合物(21)及び(23)は商業的に入手可能である。
あるいは、化合物(21)はF.H. Allen and L. Gilman (J. Am. Chem. Soc. 58 (1936) 937) に記載の方法で合成することも可能である。F.H. Allen and L. Gilmanに記載の合成方法を修正することで、先に挙げた誘導体の生成が可能であり、その場合例えば非置換アリール化合物ではなく、代わりに好適な置換アリール化合物が用いられる。
【0064】
以下に示すのは前記好ましい置換化合物の例である(25)、(26)及び(27)である。
R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、及びR6aはそれぞれ水素原子及びC1−20アルキルのいずれかから独立して選択される。該アルキルは好ましくはC2−15アルキル、さらに好ましくはC4−12アルキルである。
【0065】
本発明における成膜方法の第1実施形態において、(粉体である)OSCM分子はまずタンク内に配置され、完全に融解した後装置に移送される。すなわち該半導体融液の一定量が、該融液を付着させるOSCM分子レシーバ表面(受け面)をそなえた受容装置に移送される。
【0066】
本発明における成膜方法の第2実施形態において、粉体であるOSCM分子は前記レシーバ表面に直接配置された後、融解される。
【0067】
前記レシーバ表面とはプレパターン基板の上表面であり、たとえばOFETの基板あるいはゲート誘電体表面である。
【0068】
配置するOSCM分子の種類により、前記レシーバ表面の湿潤性を改善することが可能である。例えば該前記レシーバ表面が酸化物(例:SiO2、Al2O3、Ta2O5…)の場合、該前記レシーバ表面はシラン化(シランカップリング)剤(例:SiO2と反応するトリアルコキシクロロシラン群誘導体)との反応による化学吸着により機能化される。
【0069】
すべての成膜方法の場合において、OSCM分子は融点(Mp)より高い温度に加熱される。さらに前記レシーバ表面は該融点よりも高い温度であることが好ましい。
【0070】
OSCM分子からなる薄膜が融解状態となるとすぐに、本発明にしたがって成膜化の範囲を制御する工程が行われる。
【0071】
前記成膜化における範囲制御は、用いられるOSCM分子における相転移に関する知識(融点(Mp)、結晶化温度(Tc)等)に基づく。
【0072】
上記相転移に関するデータを踏まえ、前記レシーバ表面とOSCM分子からなるアセンブリの冷却速度を制御することにより、OSCM分子からなる薄膜成膜化を制御する。
【0073】
アモルファス薄膜を形成する為には、アニーリングが行われる場合がある。該アニーリングとは、融点から周辺温度にまで急速に冷却することで、OSCM分子融液が凝固した状態において発生する欠陥を修正することである。
【0074】
一方で単結晶薄膜を形成する為には、好ましくは前記レシーバ表面とOSCM分子からなるアセンブリにおける温度下降を制御しながら行う(化学反応速度は温度プロファイル及び熱工程における滞留時間に依存する)。該制御された温度下降はOSCMの結晶化温度(Tc)領域に達するまで行われる。該温度下降の速度は、以下に挙げる現象を誘発可能なように十分に遅く設定される。
−第1の段階における、有限数の、あるいは単一の種結晶の出現。
−その後の第2の段階における、前記有限数の種結晶を発端とする単結晶領域の累進的な成長。結晶化の制御は特にOSCM分子の化学構造及び冷却プロトコルと関連している。
−好適な冷却プロファイルを用いた、前記レシーバ表面と単結晶OSCM分子からなるアセンブリにおける周辺温度への復帰。
【0075】
OSCM分子の(例えば酸化、架橋あるいは加水分解挙動等による)劣化・分解が発生するのを防ぐ為、上記の成膜方法は好ましくは窒素(N2)及び/あるいはアルゴン(Ar)等の不活性雰囲気下で実施されるべき点に注意が必要である。該注意点を考慮して方法を実施することにより、OSCM分子の完全性に加え、化学安定性が得られる。
【0076】
アモルファス状態と単結晶状態の間に定義される中間的構造組織体は、前記アニーリングと結晶化の中間にある温度プロファイルを適用することで得られる。
【0077】
以上のような方法で、望ましい構造組織を有する薄膜が形成可能である。
【0078】
最後に、OSCM分子からなる薄膜は前記レシーバ表面あるいは基板によって運搬され、受容装置から移出される。
【0079】
図1Aから図1Fは、本発明によるOSCM分子の単結晶薄膜を含む部品の製造方法における諸工程を示す。
【0080】
本成膜方法は、発明者が試験に基づき確認済である。
【0081】
図1Aによると、プレパターン基板10が提供される。該基板は1あるいは複数の部品15を構成可能なように、前もってパターニングされ得る。例えば、部品15はそれぞれトランジスタ構造を有し、該トランジスタはドープされたシリコン基板(バックゲート端子)から製造される。該基板上には、熱処理によってシリコン酸化物層(SiO2からなるゲート絶縁膜)が形成され、該ゲート絶縁膜上にTi/Au合金からなるソース端子及びドレイン端子が蒸着される。したがって上記構成は「ボトムコンタクト」をそなえた「バックゲート」構造であり、該構造においてソース−ドレイン間のギャップ距離はおよそ4μm〜数重μmである。
【0082】
前記基板10は受容装置内に収容される。該基板全体は、例としてマルチゾーン炉のような電磁誘導、マイクロ波あるいは電気加熱炉内に配置される。
【0083】
前記加熱炉は機械的加圧手段をそなえ、該加圧手段により受容装置の内容物(例:基板10)を垂直方向に、すなわち水平方向にある受容装置に対して垂直方向に配置させることが可能である。
【0084】
図1Bによると、OSCM分子は例として粉体20のように細かい、あるいは粗い粒子の粉体として用意される。尚、該粉体は例として周辺温度下における相である。
【0085】
図1C及び図1Dによると、粉体20は前記機械的加圧手段により、基板10に押しつけられるように圧迫される。
【0086】
この際、薄板30として図示された加圧手段の端面が粉体20と接触に至る。該薄板は例としてガラス(石英ガラス)からなる。
【0087】
図1Eによると、加熱炉内で中性ガス(例:N2及び/あるいはAr)下における熱処理が行われ、炉内温度がOSCM分子の融点まで上昇する。その結果OSCM分子は融体20´に変化する。
【0088】
図1Fによると、本発明の好適な温度プロファイルにしたがって、周辺温度までの冷却が行われる。さらにOSCM分子の結晶化温度(Tc)にまで降温すれば、構造組織が制御された状態の単結晶薄膜20´´が得られる。
【0089】
温度プロファイルを制御するためには、薄板30はサーボ制御された温度調節システムをそなえる必要がある。例えば該薄板30の温度を、例えば炉内で行われた温度測定と関連させて調節することにより、OSCM分子の温度に作用することが可能である。該調節手段により、OSCM分子20´の温度及び冷却速度を正確に制御することが出来る。
【0090】
上記の方法例により、OSCM分子20´からなる単結晶薄膜を活性層としてそなえるOFET型の有機電子デバイスが最終的に得られる。
【0091】
本成膜方法における他の例においては、粉体20のみが隔離された状態にて融解され、その後加熱炉内に運搬される。該運搬の手段としては、例えば軸方向ダクトが挙げられる。該軸方向ダクトは機械的加圧手段にそなえられ、ダクトの開口部はバルブ制御される。
加圧手段としては、射出あるいは押出し成形に用いられるようなシングルあるいはツインスクリューが適用可能である。
この方法を用いる場合、好ましくは加熱炉の温度を融点と同等に調節しておくことにより、基板10も同温度に維持される。その結果、OSCM分子融体が基板への到達時に熱ショックを経験し、その後高品質な構造の形成に至らないという事態を防ぐことが出来る。
該成膜方法における一例を適用すると、OSCM分子の質量制御が他の例と比較してより容易になる。
【0092】
図2Aから図2Nにおいて、交差偏光を用いた光学熱顕微鏡検査(POTM)の反射モードにおける撮像画像を示す。該画像はルブレン(オリゴ(アセン)類OSCM分子)からなる単結晶薄膜20の本発明における形成諸工程を示し、該単結晶薄膜はOFETのプレパターン基板10上に配置されている。
【0093】
図2Aは周辺温度下において基板20上に配置された粉体を示す。
【0094】
図2Bは融点が334℃であるルブレンが、345.3℃にて融解状態にあることを示す。この際ルブレン融液が光学熱顕微鏡検査(POTM)の反射モードにおいて不透過の状態にある為、基板10が不可視化していることが分かる。
【0095】
図2Cから図2Lは、温度が345.3℃から329.2℃にまで5℃/秒の速度で下降したことを示す。夫々の画像は該制限値間の異なる温度における構造状態を示す。該夫々の画像において、純粋なOSCM分子に添加物を加えることなく、単結晶が出現し、経時及び降温にともない成長していく様が見て取れる。この際単結晶ルブレンは、POTMの反射モードにおいて複屈折を示す。したがって薄膜が単結晶領域を形成した時、基板10は再び可視化する。
発明者によると、図2B及び図2Cを分析すると単結晶領域が最初に確認されるのは図2Cである為、345.3℃から333.9℃の間で出現する種結晶は1つのみであると推論される。
【0096】
図2M及び図2Nは、温度が周辺温度である30℃にまで5℃/秒の速度で下降したことを示す。
図2Mは303℃における薄膜20の状態を示す。単結晶領域は透明状態ではっきりと確認可能であり、薄膜の厚みにより暗色線によって画定されている。
【0097】
図2Nによると、ルブレンからなる単結晶の活性薄膜をそなえる稼働可能なOFETが得られたことが分かる。
【0098】
図3Aから図3Fは、POTMの透過モードにおける撮像画像を示す。該画像はα−テルチエニル(オリゴ(チオフェン)類OSCM分子)からなる単結晶薄膜20の本発明における形成諸工程を示し、該単結晶薄膜はガラス面上に配置されている。
【0099】
α−テルチエニルはまず融点である94℃と同等に加熱される。
【0100】
図3Aから図3Eにより、温度が融点にまで上昇する経過を示す。夫々の画像は、異なる冷却段階における構造状態を示す。該夫々の画像において、単結晶領域である明色部(暗色部はα−テルチエニル融液からなる)が出現し、経時にともない成長していく様子が見て取れる。
【0101】
図3Fは、温度が周辺温度である30℃にまで2.5℃/秒の速度で下降したことを示す。これにより、絶縁体上に形成したα−テルチエニルからなる(オンインシュレータ型の)単結晶薄膜が得られたことが分かる。この場合、絶縁体とはガラス面を指す。
【0102】
POTMによる画像はX線回折法(XRD;X-ray
Diffraction)及び原子間力顕微鏡法(AFM;Atomic
Force Microscopy)による特性評価によって補足される。該測定法によると以下の作業が可能となる。
−領域における単結晶特性の、メゾスコピックあるいはマクロスコピックな確認(XRDによる測定)。
−基板の種類に依存する、結晶における配向型の測定(AFM及びXRDによる測定)。
【0103】
[本発明による有機電界効果トランジスタの性能レベル]
図4はPOTMによるOFET装置の撮像画像であり、該OFET装置はソース17とドレイン18の間にギャップ16をそなえる。該ギャップは幅30μm、長さ1000μmであり、厚さ100nmのゲート酸化物で被膜されている。該ゲート酸化物はさらに単結晶領域(直線部21)で部分的に被膜されている。該単結晶領域は夫々ほぼ同方向に配向するルブレンの薄膜からなり、本発明による単結晶領域の初期成長の間に形成される。
【0104】
基板10と有機層20間の熱勾配は冷却過程においても依然として高く、その結果ソース17とドレイン18間のギャップ16全体を被覆することはできない。そのため冷却過程において、単結晶膜は初期成長時よりも小さなシングル領域に分裂する。
【0105】
したがって下記に示す電気特性は、本発明のデバイスにおいては信頼性が低い。該電気特性とは、図5に示すドレイン電流(ID[nA])−ドレイン電圧(VD[V])間特性、及び図6に示す、ドレイン電圧(VD[V])−30V時における、飽和領域における電荷キャリアの移動度(μsat[cm2.V.−1.s−1])−ゲート電圧(VG[V])間特性を示す。
【0106】
上述のように電気特性は重要視されないものの、一方で図5及び図6から算出される性能レベルは非常に信頼性が高い。該信頼性は例えばアモルファスシリコンからなる活性層をそなえる電界効果トランジスタにおける信頼性と同等である。
【0107】
図5において特に注意すべきは、デバイスはオン状態にあり、さらにゲート酸化物の厚さが100nmあることにより、比較的低い電圧を伝導している点である。
【0108】
図6に示す、飽和領域において計測された実効移動度は、ゲート電圧(VG)がおよそ25Vの場合におよそ1.0cm2.V-1.s-1で飽和値に達する。該移動度はID1/2−(VG)間特性(不図示)の勾配から求められる。
【0109】
前記移動度は、ソース−ドレイン間ギャップ16が完全に被覆されないにも関わらず、薄膜OFETにおいて特に高い。
【0110】
したがって前記分裂状態のOFETにおいて計測された実測移動度は、薄膜が非分裂状態のOFETにおける移動度をはるかに下回る。ルブレンからなる単結晶薄膜の場合、大規模な単結晶活性層の成長を最適化すること、あるいは電極の配置を減少させることにより、およそ数10cm2.V-1.s-1の移動度(μ)レベルに達するのが妥当であると推測される。
【0111】
マイクロエレクトロニクスあるいはナノエレクトロニクスデバイスへの工業的適用を行う場合、ソース−ドレイン電極による被覆表面積が上記分裂状態薄膜の例よりさらに狭くなることが特にあり得る。
【0112】
単結晶ルブレンの薄膜をそなえる有機電界効果トランジスタ(OFET)を本発明にしたがって形成することにより、高い電気的性能レベルへの到達が可能となる。
【0113】
ルブレンは熱安定性を有し、成膜時における酸素混入効果の影響を殆ど受けることなく移動度の記録値を得ることが出来る為、非常に魅力的な素材である。しかしながら一方で、該ルブレンは、従来技術を用いた場合には、高度に成膜化された単結晶薄膜として得るのが依然として非常に困難なOSCM分子である。この2点を考慮すると、前述した諸結果は一層興味深い。
【0114】
また発明者は、α−テルチエニル、α−セキシチエニル及びピレンのような他のOSCM分子からの単結晶薄膜形成にも成功している。
【0115】
さらに、OSCM分子からなる単結晶薄膜の本発明における形成技術は、融点にて一致融解を示すあらゆるOSCM分子に適用可能という点で、包括的であると指摘され得る。
【0116】
また、本発明における成膜方法の実施は技術的に容易であり、さらにプラスチック加工技術と類似している為、従来のマイクロ/ナノエレクトロニクス機器の製造方法と比較して生産ラインの低コスト化という発展の見通しを示すことが出来る。
【0117】
加えて、本発明における成膜方法によると、構造の成膜範囲を制御した状態の薄膜により大表面を被覆可能であると推測される。尚、該構造組織は場合によりアモルファス層から単結晶層までの幅広い範囲を網羅する。さらに該構造組織の形成には、プラスチック加工と類似の技術を用いた有機電子デバイス及び光電子工学デバイスの製造方法と関連した低コストの形成方法が適用される。
【符号の説明】
【0118】
基板 10
構成部品 15
OSCM分子(粉体) 20
薄板 30
OSCM分子(融体) 20´
OSCM分子(結晶体) 20´´
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子工学あるいは光電子工学分野に適用されるデバイスへの搭載を目的とした薄膜を有機半導体材料(OSCM)分子を用いて形成する方法において、
該形成方法は以下のステップ
a)薄膜形成の為に、一定量のOSCM分子を融解状態でキャリア表面に供給するステップ、及び
b)薄膜を凝固する為に、一定の温度プロファイルに基づいて冷却を行うステップ
からなり、
ステップa)を実施の際、キャリア表面の温度はOSCM分子の融点と一致するか、あるいは融点より高いことを特徴とし、
またステップb)は、以下の第1のパートと第2のパートからなる温度プロファイルに基づいて実施されることを特徴とするOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
−OSCM分子が冷却されて再結晶温度に近い温度となり、該OSCM分子における冷却速度は、融解状態の薄膜中に1つの種結晶のみが出現するのに十分な程度遅く設定される、OSCM分子の徐冷制御に対応する第1のパート、及び
−前記1つの種結晶を発端として少なくとも1つの単結晶領域が成長し、最終的には単結晶薄膜が得られる、OSCM分子の冷却制御に対応する第2のパート。
【請求項2】
不活性雰囲気下で実施されることを特徴とする請求項1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
【請求項3】
前記ステップa)の前に、前記OSCM分子を固形状態で提供し、融点より高い温度まで加熱する工程を含むことを特徴とする請求項1または2のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
【請求項4】
前記ステップb)は、キャリア表面上に融解状態のOSCM分子が薄膜状に分布するように、該融解状態のOSCM分子の表面に加圧する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
【請求項5】
前記ステップa)は以下の工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
−前記キャリアを加熱炉の受容装置内に形成する。
−融解状態のOSCM分子をキャリア上に拡散させる。
−キャリア表面上において均一厚の薄膜状態で分布するように、融解状態のOSCM分子の表面に圧力を加える。
【請求項6】
前記ステップb)の実施中、薄膜に直接接触し、炉温調節システムによってサーボ制御される温度制御手段によって冷却が制御されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
【請求項7】
前記OSCM分子は以下の分子群から選択可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
・第1のパターンを(3)及び(4)に示す。該パターンにおいてX1=X2=X3=X4=Cであり、例としてビフェニル(n=2)、テルフェニル(n=3)、クオターフェニル(n=4)、キンクフェニル(n=5)あるいはセキシフェニル(n=6)が定義される。
・第2のパターンを(5)及び(6)に示す。該パターンにおいてY1=S、Y2=Y3=Cであり、例としてα−ビチエニル(n=2)、α−テルチエニル(n=3)、α−クオターチエニル(n=4)、α−キンクチエニル(n=5)あるいはα−セキシチエニル(n=6)が定義される。
【請求項8】
前記OSCM分子は以下の分子群から選択可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
・第1のパターンを(9)、(10)、(13)、(14)に示す。該パターンにおいてX1=X2=X3=X4=Cであり、繰り返し単位nに応じて、例としてオリゴ(1,4−フェニレンビニレン)あるいはオリゴ(1,4−フェニレンエチニレン)が定義される。
・第2のパターンを(11)、(12)、(15)、(16)に示す。該パターンにおいてY1=S、Y2=Y3=Cであり、例としてオリゴ(2,5−チエニレンビニレン)あるいはオリゴ(2,5−チエニレンエチニレン)が定義される。
【請求項9】
前記OSCM分子は以下の分子群から選択可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
・第1のパターンを(17)に示す。該パターンは例としてナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセンあるいはヘキサセンを定義する。
・第2のパターンを(18)に示す。該パターンにおいてR5=R10=フェニル基であり、繰り返し単位nに応じて、例として9,10−ジフェニルアントラセン、5,12−ジフェニルナフタセンあるいはルブレンとも呼ばれる5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンが定義される。
・第3のパターンを(19)に示す。該パターンはピレン、1,3,6,8−テトラフェニルピレン、1,3,6,8−テトラチエニルピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、あるいはC60、C70、C76、C78、C84フラーレンを定義する。
・第4のパターンを(20)に示す。該パターンはナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミド及びペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミドを定義する。
【請求項10】
前記OSCM分子は以下の置換基のうち1以上から構成可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
・基礎パターンM1を有するアリール基。該M1パターンにおいては、X1=X2=X3=X4=Cである。
・基礎パターンM1を有するヘテロアリール基。該M1パターンにおいて、X1、X2、X3及びX4にはC、O、S、N、P及びBのいずれか1以上が選択される。
・基礎パターンM2を有するヘテロ環式基。該M2パターンにおいて、Y1=O、S、N、PあるいはBのうちいずれか1であるが、その際好ましくはO、SあるいはNのいずれか1が選択される。さらにY2およびY3にはC、O、S、N、P及びBのいずれか1以上が選択される。
【請求項11】
以下のステップからなることを特徴とするOFETを例とする有機電界効果トランジスタの形成方法。
a)ゲート誘電体、ソース電極及びドレイン電極をそなえたプレパターン基板を供給するステップ。
b)請求項1乃至10のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法を用いてOSCM分子からなる単結晶薄膜を形成するステップ。該ステップにおいて前記プレパターン基板は前記キャリアとなり、また前記薄膜はトランジスタの活性層となる。
【請求項1】
電子工学あるいは光電子工学分野に適用されるデバイスへの搭載を目的とした薄膜を有機半導体材料(OSCM)分子を用いて形成する方法において、
該形成方法は以下のステップ
a)薄膜形成の為に、一定量のOSCM分子を融解状態でキャリア表面に供給するステップ、及び
b)薄膜を凝固する為に、一定の温度プロファイルに基づいて冷却を行うステップ
からなり、
ステップa)を実施の際、キャリア表面の温度はOSCM分子の融点と一致するか、あるいは融点より高いことを特徴とし、
またステップb)は、以下の第1のパートと第2のパートからなる温度プロファイルに基づいて実施されることを特徴とするOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
−OSCM分子が冷却されて再結晶温度に近い温度となり、該OSCM分子における冷却速度は、融解状態の薄膜中に1つの種結晶のみが出現するのに十分な程度遅く設定される、OSCM分子の徐冷制御に対応する第1のパート、及び
−前記1つの種結晶を発端として少なくとも1つの単結晶領域が成長し、最終的には単結晶薄膜が得られる、OSCM分子の冷却制御に対応する第2のパート。
【請求項2】
不活性雰囲気下で実施されることを特徴とする請求項1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
【請求項3】
前記ステップa)の前に、前記OSCM分子を固形状態で提供し、融点より高い温度まで加熱する工程を含むことを特徴とする請求項1または2のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
【請求項4】
前記ステップb)は、キャリア表面上に融解状態のOSCM分子が薄膜状に分布するように、該融解状態のOSCM分子の表面に加圧する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
【請求項5】
前記ステップa)は以下の工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
−前記キャリアを加熱炉の受容装置内に形成する。
−融解状態のOSCM分子をキャリア上に拡散させる。
−キャリア表面上において均一厚の薄膜状態で分布するように、融解状態のOSCM分子の表面に圧力を加える。
【請求項6】
前記ステップb)の実施中、薄膜に直接接触し、炉温調節システムによってサーボ制御される温度制御手段によって冷却が制御されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
【請求項7】
前記OSCM分子は以下の分子群から選択可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
・第1のパターンを(3)及び(4)に示す。該パターンにおいてX1=X2=X3=X4=Cであり、例としてビフェニル(n=2)、テルフェニル(n=3)、クオターフェニル(n=4)、キンクフェニル(n=5)あるいはセキシフェニル(n=6)が定義される。
・第2のパターンを(5)及び(6)に示す。該パターンにおいてY1=S、Y2=Y3=Cであり、例としてα−ビチエニル(n=2)、α−テルチエニル(n=3)、α−クオターチエニル(n=4)、α−キンクチエニル(n=5)あるいはα−セキシチエニル(n=6)が定義される。
【請求項8】
前記OSCM分子は以下の分子群から選択可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
・第1のパターンを(9)、(10)、(13)、(14)に示す。該パターンにおいてX1=X2=X3=X4=Cであり、繰り返し単位nに応じて、例としてオリゴ(1,4−フェニレンビニレン)あるいはオリゴ(1,4−フェニレンエチニレン)が定義される。
・第2のパターンを(11)、(12)、(15)、(16)に示す。該パターンにおいてY1=S、Y2=Y3=Cであり、例としてオリゴ(2,5−チエニレンビニレン)あるいはオリゴ(2,5−チエニレンエチニレン)が定義される。
【請求項9】
前記OSCM分子は以下の分子群から選択可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
・第1のパターンを(17)に示す。該パターンは例としてナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセンあるいはヘキサセンを定義する。
・第2のパターンを(18)に示す。該パターンにおいてR5=R10=フェニル基であり、繰り返し単位nに応じて、例として9,10−ジフェニルアントラセン、5,12−ジフェニルナフタセンあるいはルブレンとも呼ばれる5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンが定義される。
・第3のパターンを(19)に示す。該パターンはピレン、1,3,6,8−テトラフェニルピレン、1,3,6,8−テトラチエニルピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、あるいはC60、C70、C76、C78、C84フラーレンを定義する。
・第4のパターンを(20)に示す。該パターンはナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミド及びペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミドを定義する。
【請求項10】
前記OSCM分子は以下の置換基のうち1以上から構成可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法。
・基礎パターンM1を有するアリール基。該M1パターンにおいては、X1=X2=X3=X4=Cである。
・基礎パターンM1を有するヘテロアリール基。該M1パターンにおいて、X1、X2、X3及びX4にはC、O、S、N、P及びBのいずれか1以上が選択される。
・基礎パターンM2を有するヘテロ環式基。該M2パターンにおいて、Y1=O、S、N、PあるいはBのうちいずれか1であるが、その際好ましくはO、SあるいはNのいずれか1が選択される。さらにY2およびY3にはC、O、S、N、P及びBのいずれか1以上が選択される。
【請求項11】
以下のステップからなることを特徴とするOFETを例とする有機電界効果トランジスタの形成方法。
a)ゲート誘電体、ソース電極及びドレイン電極をそなえたプレパターン基板を供給するステップ。
b)請求項1乃至10のいずれか1に記載のOSCM分子を用いた薄膜の形成方法を用いてOSCM分子からなる単結晶薄膜を形成するステップ。該ステップにおいて前記プレパターン基板は前記キャリアとなり、また前記薄膜はトランジスタの活性層となる。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2011−504652(P2011−504652A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530475(P2010−530475)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064476
【国際公開番号】WO2009/053473
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064476
【国際公開番号】WO2009/053473
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]