説明

有機半導体装置およびその製造方法

【課題】有機ゲート絶縁膜表面にダメージが入ることなくソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜を形成する、またはソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜を形成した後にダメージ層を修復することを可能にする。
【解決手段】表面が絶縁性を有する基板11上に離間して形成されたソース・ドレイン電極12、13と、前記ソース・ドレイン電極12、13の表面に形成された金属酸化物膜14、15と、前記基板11上に形成されていて前記金属酸化物膜14、15を被覆する有機半導体層16と、前記有機半導体層16上に形成されたゲート絶縁膜17と、前記ゲート絶縁膜17上に形成されたゲート電極18を備えた有機半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、有機TFT(Thin Film Transistor)はさまざまな電子機器への応用に向けて研究開発が盛んに行われている。特に、フレキシブルディスプレイのバックプレーンの応用技術に関心が高く、高精細な有機TFTを製造することが望まれている。
【0003】
有機TFTでは、ボトムコンタクト構造を用いることにより比較的チャネル長の短いTFTを作製することができ、高精細なバックプレーンを実現することができる。
【0004】
本来TFTは、チャネル長に反比例して、駆動能力が向上するが、ボトムコンタクト構造の有機TFTでは有機半導体と電極界面で形成される接触抵抗が比較的高いため、チャネル長に反比例した駆動能力の向上が得られなくなることがある。
特に、優れた特性を示す有機半導体を用いた場合にこの現象が顕著に起こるため、有機半導体と電極間の接触抵抗の低減は有機TFTにおいて大きな課題となっている。
【0005】
このような有機半導体と電極間の接触抵抗の低減方法に、酸化させた金属電極を用いる方法がある。金属電極を酸化することで、その表面に成長される有機半導体層が、酸化膜がない場合より、より成長しやすくなる。例えば、有機半導体層としてペンタセンを蒸着したときのグレインサイズは、酸化膜上のほうが金属電極上よりも大きくなる。このように、大きなサイズのグレインが成長されることによって、コンタクト抵抗が低減されるため、p型の有機半導体に対してキャリアの注入効率を向上させることができる。代表的なものでは、金(Au)電極を酸化させ事例が報告されており(例えば、非特許文献1参照。)、酸化しない金電極に比べて、酸化した金電極では2桁以上もの有機半導体と電極間の接触抵抗が低減しており、その効果が非常に大きいことが確認されている。
【0006】
しかしながら、有機TFTの製造工程に、ソース・ドレイン金属電極の表面を酸化する工程として、酸素(O2)アッシングによる酸化工程を行うと、チャネルとなる有機半導体層が形成される有機ゲート絶縁膜表面にダメージが入る。その結果、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生をといった問題が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】B.Stadlober et al., Adv. Funct. Mater. 2007, 17, 2687-2692
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、有機TFTの製造工程にソース・ドレイン金属電極の表面を酸化する酸化工程を取り入れると、チャネルとなる有機半導体層が形成される有機ゲート絶縁膜表面にダメージが入る。その結果、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題を生じる点である。
【0009】
本発明は、有機ゲート絶縁膜表面にダメージが入ることなくソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜を形成する、またはソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜を形成した後にダメージ層を修復することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有機半導体装置(第1有機半装置)は、表面が絶縁性を有する基板の表面上に離間して形成されたソース・ドレイン電極と、前記ソース・ドレイン電極の表面に形成された金属酸化物膜と、前記基板上に形成されていて前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を被覆する有機半導体層と、前記有機半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ソース・ドレイン電極間上方の前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極を備えたものである。
【0011】
本発明の第1有機半導体装置では、ソース・ドレイン電極の表面に形成された金属酸化物膜を被覆して有機半導体層が形成され、さらにゲート絶縁膜が形成されていることから、ゲート絶縁膜は金属酸化物膜より後に形成されていることがわかる。よって、ゲート絶縁膜を有機絶縁膜で形成したとしても、ゲート絶縁膜には金属酸化物膜を形成するときに生じるダメージ、例えばしきい値電圧(以下Vthという)シフトの原因となるダメージが入らない。
【0012】
本発明の有機半導体装置(第2有機半装置)は、表面が絶縁性を有する基板の表面上に形成されたゲート電極と、前記基板上に形成されていて前記ゲート電極を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜と、前記ゲート電極の上方両側の前記ゲート絶縁膜上に離間して形成されたソース・ドレイン電極と、前記ソース・ドレイン電極の表面に形成された金属酸化物膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されていて前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を被覆する有機半導体層を有し、前記ソース・ドレイン電極が形成されていない前記ゲート絶縁膜上にポリパラキシリレン膜が形成されているものである。
【0013】
本発明の第2有機半導体装置では、ソース・ドレイン電極が形成されていないゲート絶縁膜上にポリパラキシリレン膜が形成されている。これによって、ソース・ドレイン電極の表面に金属酸化物膜を形成したときに生じるゲート絶縁膜表面のダメージ、例えばVthシフトの原因となるダメージ層はポリパラキシリレン膜によって被覆される。よって、Vthシフトが抑制される。
【0014】
本発明の有機半導体装置の製造方法(第1製造方法)は、表面が絶縁性を有する基板の表面上に金属からなるソース・ドレイン電極を離間して形成する工程と、前記ソース・ドレイン電極の前記金属表面を酸化させて金属酸化物膜を形成する工程と、前記基板上に前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を被覆する有機半導体層を形成する工程と、前記有機半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ソース・ドレイン電極間上方の前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程を有する。
【0015】
本発明の有機半導体装置の第1製造方法では、ソース・ドレイン電極の前記金属表面を酸化させて金属酸化物膜を形成する工程の後、金属酸化物膜を被覆して有機半導体層が形成され、さらにゲート絶縁膜が形成される。したがって、ゲート絶縁膜は金属酸化物膜より後に形成されるので、ゲート絶縁膜を有機絶縁膜で形成したとしても、ゲート絶縁膜には金属酸化物膜を形成するときに生じるダメージ、例えばVthシフトの原因となるダメージが入らない。
【0016】
本発明の有機半導体装置の製造方法(第2製造方法)は、表面が絶縁性を有する基板上にゲート電極を形成する工程と、前記基板上に前記ゲート電極を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート電極の上方両側の前記ゲート絶縁膜上に金属からなるソース・ドレイン電極を離間して形成する工程と、前記ソース・ドレイン電極の表面を酸化させて金属酸化物膜を形成する工程と、前記ソース・ドレイン電極が形成されていない前記ゲート絶縁膜上の水酸基を処理する工程と、前記水酸基を処理した前記ゲート絶縁膜上に前記金属酸化物膜を被覆する有機半導体層を形成する工程を有する。
【0017】
本発明の有機半導体装置の第2製造方法では、ソース・ドレイン電極が形成されていないゲート絶縁膜上にポリパラキシリレン膜が形成されている。これによって、ソース・ドレイン電極の表面に金属酸化物膜を形成したときに生じるゲート絶縁膜表面のダメージ、例えばVthシフトの原因となるダメージ層はポリパラキシリレン膜によって被覆される。よって、Vthシフトが抑制される。
【0018】
本発明の有機半導体装置の製造方法(第3製造方法)は、表面が絶縁性を有する基板の表面上にゲート電極を形成する工程と、前記基板上に前記ゲート電極を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート電極の上方両側の前記ゲート絶縁膜上にソース・ドレイン電極が形成される領域に開口部を設けたレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクにした金属成膜により前記ゲート絶縁膜上に金属からなる前記ソース・ドレイン電極を形成する工程と、前記レジストパターンを形成した状態で前記ソース・ドレイン電極の表面を酸化させて金属酸化物膜を形成する工程と、前記金属成膜時に前記レジストパターン上に形成された金属膜とともに前記レジストパターンを除去する工程と、前記ゲート絶縁膜上に前記金属酸化物膜を被覆する有機半導体層を形成する工程を有する。
【0019】
本発明の有機半導体装置の第3製造方法では、ソース・ドレイン電極の表面に金属酸化物膜を形成したときに、ゲート絶縁膜上がレジストパターンで被覆されているので、ゲート絶縁膜表面のダメージ、例えばVthシフトの原因となるダメージは発生しない。よって、Vthシフトが抑制される。
【0020】
本発明の有機半導体装置の製造方法(第4製造方法)は、表面が絶縁性を有する基板上にゲート電極を形成する工程と、前記基板上に前記ゲート電極を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート電極の上方両側の前記ゲート絶縁膜上に表面を酸化させて金属酸化物膜を形成した金属からなるソース・ドレイン電極を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に前記金属酸化物膜を被覆する有機半導体層を形成する工程を有し、前記ゲート絶縁膜上に表面を酸化させて金属酸化物膜を形成した金属からなるソース・ドレイン電極を形成する工程は、第1支持基板上に金属からなるソース・ドレイン電極を離間して形成する工程と、前記ソース・ドレイン電極の表面を酸化させて金属酸化物膜を形成する工程と、前記金属酸化物膜表面に第2支持基板を押し付けて、前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を該第2支持基板に転写して、前記ソース・ドレイン電極より前記第1支持基板を外す工程と、前記第2支持基板より前記ゲート絶縁膜上に前記ソース・ドレイン電極を転写して、前記ソース・ドレイン電極より前記第2支持基板を外す工程を有する。
【0021】
本発明の有機半導体装置の第4製造方法では、ソース・ドレイン電極の表面に金属酸化物膜を形成したときにダメージを受けた第1支持基板は外される。そして、金属酸化物膜が形成されたソース・ドレイン電極のみがゲート絶縁膜上に転写されて形成されるので、ゲート絶縁膜表面にダメージ、例えばVthシフトの原因となるダメージが生じることはない。よって、Vthシフトが抑制される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1有機半導体装置は、ゲート絶縁膜表面にダメージを生じることなく、ソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜が形成されているので、Vthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できるという利点がある。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0023】
本発明の第2有機半導体装置は、ソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜が形成されて、かつゲート絶縁膜表面に生じたダメージ層が修復されているので、Vthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できるという利点がある。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0024】
本発明の有機半導体装置の第1製造方法は、ゲート絶縁膜表面にダメージが入ることなく、ソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜が形成されるので、Vthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できるという利点がある。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0025】
本発明の有機半導体装置の第2製造方法は、ソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜が形成され、ゲート絶縁膜表面に生じたダメージ層が修復されるので、Vthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できるという利点がある。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0026】
本発明の有機半導体装置の第3製造方法は、ソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜が形成され、レジストパターンによってゲート絶縁膜表面へのダメージが防止されるので、Vthシフトが抑制される。よって、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できるという利点がある。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0027】
本発明の有機半導体装置の第4製造方法は、ソース・ドレイン電極表面に金属酸化物膜が形成されて、かつゲート絶縁膜表面にダメージが生じないので、Vthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できるという利点がある。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る有機半導体装置の構成の第1例を示した概略構成断面図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係る有機半導体装置の構成の第2例を示した概略構成断面図である。
【図3】本発明の第3実施の形態に係る有機半導体装置の製造方法の第1例を示した製造工程断面図である。
【図4】本発明の第4実施の形態に係る有機半導体装置の製造方法の第2例を示した製造工程断面図である。
【図5】本発明の第5実施の形態に係る有機半導体装置の製造方法の第3例を示した製造工程断面図である。
【図6】本発明の第6実施の形態に係る有機半導体装置の製造方法の第4例を示した製造工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<1.第1の実施の形態>
[有機半導体装置の構成の第1例]
本発明の第1実施の形態に係る有機半導体装置の構成の第1例を、図1の概略構成断面図によって説明する。
【0030】
図1に示すように、表面が絶縁性を有する基板11上に金属からなるソース・ドレイン電極12、13が離間して形成されている。
上記基板11には、例えばガラス基板やプラスチック基板等を用いる。または、表面に酸化シリコン、窒化シリコン、有機絶縁膜等の絶縁膜で形成されている基板であってもよい。
上記ソース・ドレイン電極12、13は、例えば金(Au)で形成されている。
上記ソース・ドレイン電極12、13の表面には金属酸化物膜14、15が形成されている。上記ソース・ドレイン電極12、13が金で形成されている場合には、上記金属酸化物膜14、15は金酸化物となる。
また、上記ソース・ドレイン電極12、13には、例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)等を用いてもよい。これらの金属を用いた場合も、上記同様に、上記ソース・ドレイン電極12、13表面には当該金属の金属酸化物膜が形成されている。
また、上記ソース・ドレイン電極12、13は、上記金属酸化物膜で形成することもできる。
【0031】
上記基板11上には上記金属酸化物膜14、15を被覆する有機半導体層16が形成されている。
上記有機半導体層16には、例えば、ポリ(3ヘキシルチオフェン)[P3HT:poly(3-hexylthiophene)]を用いる。または、ペンタセン、ポルフィリン等の低分子材料、トリイソプロピルシリルエチニルペンタセン[TIPS−ペンタセン:triisopropylsilylethynyl pentacene]、ポリアリルアミン等の高分子材料を用いることができる。
【0032】
上記有機半導体層16上には、ゲート絶縁膜17が形成されている。
上記ゲート絶縁膜17は、例えば有機絶縁膜で形成されている。この有機絶縁膜材料には、例えばポリパラキシリレン(poly-para-Xylylene)を用いることができる。ポリパラキシリレンは、例えば熱CVD法によって成膜することができる。
また、上記有機半導体層16がTIPS−ペンタセンで形成されている場合には、上記ゲート絶縁膜17には、ポリパラキシリレンの他に、アモルファスフッ素樹脂(例えば、旭化成株式会社製のサイトップ(商品名))、フッ素系ポリマーを用いることができる。上記アモルファスフッ素樹脂、フッ素系ポリマーは、例えばスピンコートによって成膜することができる。
また、上記有機半導体層16がP3HTで形成されている場合には、上記ゲート絶縁膜17には、ポリパラキシリレンの他に、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いることができる。上記PVP、PMMAは、例えばスピンコートによって成膜することができる。
【0033】
上記ゲート絶縁膜17上には、ゲート電極18が形成されている。
上記ゲート電極18には、例えば、金(Au)を用いる。金を用いる場合には、密着層にクロム(Cr)を用いることが好ましい。
また、上記ゲート電極18を形成する金属膜には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)など一般的な電極材料を使用することができる。
このように、有機半導体装置1が構成されている。
【0034】
上記有機半導体装置1では、ソース・ドレイン電極12、13の表面に形成された金属酸化物膜14、15を被覆して有機半導体層16が形成され、さらにゲート絶縁膜17が形成されている。このことから、ゲート絶縁膜17は金属酸化物膜14、15より後に形成されていることがわかる。よって、ゲート絶縁膜17を有機絶縁膜で形成したとしても、ゲート絶縁膜17には金属酸化物膜14、15を形成するときに生じるダメージ、例えばVthシフトの原因となるゲート絶縁膜17上への水酸基の生成は生じない。
よって、ゲート絶縁膜17表面にダメージが入ることなく、ソース・ドレイン電極12、13表面に金属酸化物膜14、15が形成されているので、Vthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できる。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0035】
<2.第2の実施の形態>
[有機半導体装置の構成の第2例]
本発明の第2実施の形態に係る有機半導体装置の構成の第2例を、図2の概略構成断面図によって説明する。
【0036】
図2に示すように、表面が絶縁性を有する基板11上にゲート電極18が形成されている。
上記基板11には、例えばガラス基板やプラスチック基板等を用いる。または、表面に酸化シリコン、窒化シリコン、有機絶縁膜等の絶縁膜で形成されている基板であってもよい。
上記ゲート電極18には、例えば金(Au)で形成されている。金を用いる場合には、密着層にクロム(Cr)を用いることが好ましい。
また、上記ゲート電極18を形成する金属膜には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)など一般的な電極材料を使用することができる。
【0037】
上記基板11上には上記ゲート電極18を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜17が形成されている。
上記ゲート絶縁膜17は、例えば有機絶縁膜で形成されている。この有機絶縁膜材料には、例えばポリビニルフェノール(PVP)を用いる。または、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0038】
上記ゲート絶縁膜17上にはソース・ドレイン電極12、13が離間して形成されている。上記ソース・ドレイン電極12、13は、例えば金(Au)で形成されている。
上記ソース・ドレイン電極12、13の表面には金属酸化物膜14、15が形成されている。上記ソース・ドレイン電極12、13が金で形成されている場合には、上記金属酸化物膜14、15は金酸化物となる。
また、上記ソース・ドレイン電極12、13には、例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)等を用いてもよい。これらの金属を用いた場合も、上記同様に、上記ソース・ドレイン電極12、13表面には当該金属の金属酸化物膜が形成されている。
また、上記ソース・ドレイン電極12、13は、上記金属酸化物膜で形成することもできる。
【0039】
上記ソース・ドレイン電極12、13が形成されていない上記ゲート絶縁膜17上にポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)膜21が形成されている。
上記ポリパラキシリレン膜21の膜厚は1nm〜50nmが好ましい。より好ましくは、5nm〜10nmである。
【0040】
上記ゲート絶縁膜17上には、上記金属酸化物膜14、15を被覆する有機半導体層16が形成されている。
上記有機半導体層16には、例えば、ペンタセンを用いる。または、ポリ(3ヘキシルチオフェン)[P3HT:poly(3-hexylthiophene)]を用いる。
また、上記有機半導体層16には、ペンタセン、ポルフィリン等の低分子材料、トリイソプロピルシリルエチニルペンタセン[TIPS−ペンタセン:triisopropylsilylethynyl pentacene]、ポリアリルアミン等の高分子材料を用いることができる。
このように、有機半導体装置2が構成されている。
【0041】
上記有機半導体装置2では、ソース・ドレイン電極12、13が形成されていないゲート絶縁膜17上にポリパラキシリレン膜21が形成されている。これによって、ソース・ドレイン電極12、13の表面に金属酸化物膜14、15を形成したときに生じるゲート絶縁膜17表面のダメージ層25、例えばVthシフトの原因となるダメージ層25はポリパラキシリレン膜21によって被覆される。よって、Vthシフトが抑制される。
よって、ソース・ドレイン電極12、13表面に金属酸化物膜14、15が形成され、かつゲート絶縁膜17表面に生じたVthシフトの原因となるダメージ層25がポリパラキシリレン膜21によって修復されている。よって、Vthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できる。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0042】
<3.第3の実施の形態>
[有機半導体装置の製造方法の第1例]
本発明の第3実施の形態に係る有機半導体装置の製造方法の構成の第1例を、図3の製造工程断面図によって説明する。
【0043】
図3(1)に示すように、表面が絶縁性を有する基板11上に金属からなるソース・ドレイン電極12、13を離間して形成する。
上記基板11には、例えばガラス基板やプラスチック基板等を用いる。または、表面に酸化シリコン、窒化シリコン、有機絶縁膜等の絶縁膜で形成されている基板であってもよい。
そして、レジスト塗布およびフォトリソグラフィ技術によって、ソース・ドレイン電極を形成する領域に開口部を設けたレジストパターン(図示せず)を形成する。
その後、蒸着法により、上記基板11上に、例えば金(Au)を堆積する。このとき、上記レジストパターン上にも金が堆積される。
次に、上記レジストパターン上に堆積された金とともに上記レジストパターンを除去することで、基板11上に金からなるソース・ドレイン電極12、13が離間して形成される。
上記ソース・ドレイン電極12、13の形成方法は、例えば、上記基板11上に金属膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術によって金膜をパターニングすることで形成してもよい。また、通常の版印刷技術、インクジェット方式による印刷技術等の方法を用いて作製してもよい。
また、基板11上に、架橋できる有機ポリマー層を形成しておくことで、金の基板に対する密着性を高めることができる。上記架橋できる有機ポリマーとして、ポリビニルフェノール(PVP)、ノボラック系樹脂を挙げることができる。例えば、上記架橋できる有機ポリマー層のヒドロキシル基を架橋剤により架橋反応させることで、溶媒耐性が高まり、後のフォトリソグラフィ工程の問題なく行うことができる。
【0044】
次に、図3(2)に示すように、上記ソース・ドレイン電極12、13の上記金属表面を酸化させて金属酸化物膜14、15を形成する。上記ソース・ドレイン電極12、13が金で形成されている場合には、金酸化物の金属酸化物膜14、15が形成される。
例えば、酸素(O2)プラズマ処理を行い、上記ソース・ドレイン電極12、13の表面を酸化して、上記金属酸化物膜14、15を形成する。
酸素プラズマ処理は、例えば、パワーを200W、処理雰囲気の圧力を133Pa、処理時間を3分とした。
上記酸化工程は、UVオゾン処理を用いてもよい。
上記UVオゾン処理は、例えばUV光に波長が254nmの紫外光を用い、処理雰囲気の圧力を10kPa、処理時間を10分とした。波長が254nmの紫外光を発する光源として、例えば水銀ランプがある。なお、紫外線光源であれば、上記波長に限定されない。
また、上記ソース・ドレイン電極12、13には、例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)等を用いることもできる。これらの金属を用いた場合も、上記同様な酸化工程により、表面に当該金属の金属酸化物膜を形成することができる。
【0045】
次に、図3(3)に示すように、上記基板11上に上記金属酸化物膜14、15が形成された前記ソース・ドレイン電極12、13を被覆する有機半導体層16を形成する。
上記有機半導体層16の形成には、例えばインクジェット方式による印刷技術を用いる。成膜材料には、例えば、ポリ(3ヘキシルチオフェン)[P3HT:poly(3-hexylthiophene)]を用いる。また、成膜技術には、スピンコート、版印刷などを用いてもよい。
また、上記有機半導体層16には、ペンタセン、ポルフィリン等の低分子材料、トリイソプロピルシリルエチニルペンタセン[TIPS−ペンタセン:triisopropylsilylethynyl pentacene]、ポリアリルアミン等の高分子材料を用いることができる。
【0046】
上記有機半導体層16は、ソース・ドレイン電極12、13の表面が酸化されて形成された金属酸化物膜14、15(例えば金酸化物膜)表面のほうが、金属酸化物膜14、15がない金属膜(例えば金膜)上のソース・ドレイン電極表面より、成長しやすくなる。例えば、有機半導体層16としてペンタセンを蒸着したときの有機半導体層のグレインサイズは、金属酸化物膜14、15(例えば金酸化物膜)上のほうが金属膜(例えば金膜)上よりも大きくなる。このように、大きなサイズのグレインが成長されることによって、コンタクト抵抗が低減されるので、p型の有機半導体装置を動作させる場合、ソース・ドレイン電極12、13から有機半導体層16へのキャリアの注入効率が高まる。その結果として、ソース・ドレイン電極12、13と有機半導体層16との接触抵抗を低減することができる。
【0047】
次に、図3(4)に示すように、上記有機半導体層16上にゲート絶縁膜17を形成する。
上記ゲート絶縁膜17は、例えば有機絶縁膜で形成される。有機絶縁膜材料には、例えばポリパラキシリレン(poly-para-Xylylene)を用いる。その形成方法は、例えば熱CVD法を用いる。
また、上記有機半導体層16がTIPS−ペンタセンで形成されている場合には、上記ゲート絶縁膜17を、ポリパラキシリレンの他に、アモルファスフッ素樹脂(例えば、旭化成株式会社製のサイトップ(商品名))、フッ素系ポリマーで形成することもできる。上記アモルファスフッ素樹脂、フッ素系ポリマーは、例えばスピンコートによって成膜することができる。
また、上記有機半導体層16がP3HTで形成されている場合には、上記ゲート絶縁膜17を、ポリパラキシリレンの他に、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)で形成することができる。上記PVP、PMMAは、例えばスピンコートによって成膜することができる。
例えば、PVPの成膜では、PVPを塗布した後、150℃〜180℃で1時間のベーキングを行う。このとき、PVPに添加されている架橋剤により、PVPが架橋されるので、以後のフォトリソグラフィ工程が行えるようになる。
すなわち、架橋剤を用いた架橋反応によりポリビニルフェノール(PVP)中のヒドロキシル基を架橋させることで、その後に用いる有機溶剤耐性を高めることができる。
【0048】
次に、図3(5)に示すように、上記ゲート絶縁膜17上にゲート電極18を形成する。上記ゲート電極18は、例えば、上記ソース・ドレイン電極12、13間上のゲート絶縁膜17上に形成される。
上記ゲート電極18を形成するには、例えば、上記ゲート絶縁膜17上に金属膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術によって金属膜をパターニングすることで形成する。
上記金属膜には、例えば金(Au)を用いる。金を用いる場合には、密着層にクロム(Cr)を用いることが好ましい。
また、上記ゲート電極18を形成する金属膜には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)など一般的な電極材料を使用することができる。
また、形成方法には、リフトオフ法、版印刷法、インクジェット方式の印刷法等を用いてもよい。
【0049】
上記有機半導体装置の第1製造方法では、ソース・ドレイン電極12、13の上記金属表面を酸化させて金属酸化物膜14、15を形成する工程の後、金属酸化物膜14、15を被覆して有機半導体層16が形成され、さらにゲート絶縁膜17が形成される。したがって、ゲート絶縁膜17は金属酸化物膜14、15より後に形成されるので、ゲート絶縁膜17を有機絶縁膜で形成したとしても、ゲート絶縁膜17には金属酸化物膜14、15を形成するときにVthシフトの原因となるダメージを生じない。すなわち、ゲート絶縁膜17上へのVthシフトの原因となる水酸基の生成は生じない。
【0050】
したがって、ゲート絶縁膜17表面にダメージが入ることなく、ソース・ドレイン電極12、13表面に金属酸化物膜14、15が形成されるので、Vthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できるという利点がある。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0051】
さらに、ソース・ドレイン電極12、13を形成する工程でフォトレジストをパターニングする際にマスク工程を用いるが、このマスク工程は従来もソース・ドレイン電極を形成する際に用いられている工程である。よって、上記第1製造方法では、一般的にプロセス的負荷が大きくなり、コストも高くなるマスク工程の追加はない。
【0052】
<4.第4の実施の形態>
[有機半導体装置の製造方法の第2例]
本発明の第4実施の形態に係る有機半導体装置の製造方法の第2例を、図4の製造工程断面図によって説明する。
【0053】
図4(1)に示すように、表面が絶縁性を有する基板11上にゲート電極18を形成する。
上記基板11には、例えばガラス基板やプラスチック基板等を用いる。または、表面に酸化シリコン、窒化シリコン、有機絶縁膜等の絶縁膜で形成されている基板であってもよい。
上記ゲート電極18を形成するには、例えば、上記基板11上に金属膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術によって金属膜をパターニングすることで形成する。
上記金属膜には、例えば金(Au)を用いる。金を用いる場合には、密着層にクロム(Cr)を用いることが好ましい。
また、上記ゲート電極18を形成する金属膜には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)など一般的な電極材料を使用することができる。
また、上記ゲート電極18の形成方法には、リフトオフ法、版印刷法、インクジェット方式の印刷法等を用いてもよい。
【0054】
次に、図4(2)に示すように、上記基板11上に上記ゲート電極18を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜17を形成する。
上記ゲート絶縁膜17は、例えば有機絶縁膜で形成される。有機絶縁膜材料には、例えばポリビニルフェノール(PVP)を用いる。その形成方法は、例えばスピンコートを用いる。塗布後、150℃〜180℃で1時間のベーキングを行う。このとき、PVPに添加されている架橋剤により、PVPが架橋されるので、以後のフォトリソグラフィ工程が行えるようになる。
すなわち、架橋剤を用いた架橋反応により、ポリビニルフェノール(PVP)中のヒドロキシル基を架橋させることで、その後に用いる有機溶剤耐性を高めることができる。
上記有機絶縁膜材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等を使用することができる。
【0055】
次に、図4(3)に示すように、上記ゲート絶縁膜17上に金属からなるソース・ドレイン電極12、13を離間して形成する。例えば、上記ゲート電極18上方の両側に、上記ソース・ドレイン電極12、13は形成される。
レジスト塗布およびフォトリソグラフィ技術によって、上記ゲート絶縁膜17上にソース・ドレイン電極を形成する領域に開口部を設けたレジストパターン(図示せず)を形成する。
その後、蒸着法、例えば抵抗加熱蒸着法により、上記ゲート絶縁膜17上に、例えば金(Au)を、例えば50nmの厚さに堆積する。このとき、上記レジストパターン上にも金が堆積される。
次に、上記レジストパターン上に堆積された金とともに上記レジストパターンを除去することで、ゲート絶縁膜17上に金からなるソース・ドレイン電極12、13が離間して形成される。
上記ソース・ドレイン電極12、13の形成方法は、例えば、上記ゲート絶縁膜17上に金属膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術によって金膜をパターニングすることで形成してもよい。また、通常の版印刷技術、インクジェット方式による印刷技術等の方法を用いて作製してもよい。
【0056】
次に、図4(4)に示すように、上記ソース・ドレイン電極12、13の表面を酸化させて金属酸化物膜14、15を形成する。
例えば、酸素(O2)プラズマ処理を行い、上記ソース・ドレイン電極12、13の表面を酸化して、上記金属酸化物膜14、15を形成する。上記ソース・ドレイン電極12、13が金で形成されている場合には、金酸化物の金属酸化物膜14、15が形成される。
酸素プラズマ処理は、例えば、パワーを200W、処理雰囲気の圧力を133Pa、処理時間を3分とした。
上記酸化工程は、UVオゾン処理を用いてもよい。
上記UVオゾン処理は、例えばUV光に波長が254nmの紫外光を用い、処理雰囲気の圧力を10kPa、処理時間を10分とした。波長が254nmの紫外光を発する光源として、例えば水銀ランプがある。なお、紫外線光源であれば、上記波長に限定されない。
また、上記ソース・ドレイン電極12、13には、例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)等を用いることもできる。これらの金属を用いた場合も、上記同様な酸化工程により、表面に当該金属の金属酸化物膜を形成することができる。
【0057】
上記金属酸化物膜14、15を形成する際に、上記ゲート絶縁膜17表面が、酸素プラズマ等によってダメージを受け、ダメージ層25が生じる。例えば、ダメージ層25として、上記ゲート絶縁膜17表面に水酸基(OH基)を生じる。
【0058】
次に、図4(5)に示すように、上記ソース・ドレイン電極12、13が形成されていない上記ゲート絶縁膜17上のダメージ層25を処理する。
上記ダメージ層25を処理する工程は、例えば、上記ソース・ドレイン電極12、13が形成されていない上記ゲート絶縁膜17上に、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)膜21を選択的に形成する。
【0059】
上記ポリパラキシリレン膜21は、蒸着重合により形成される。このとき、有機絶縁膜である上記ゲート絶縁膜17上では上記ソース・ドレイン電極12、13上に比べてポリパラキシリレンの核形成速度が速い。このため、ポリパラキシリレン膜21の膜厚を選択成長に最適な膜厚に選択することで、上記ソース・ドレイン電極12、13上にはポリパラキシリレンを成長させることなく、上記ゲート絶縁膜17上にのみポリパラキシリレンを選択成長させることができる。
ポリパラキシリレンの選択成長は、原材料にジパラキシリレン(di-para-xylylene)を用い、成膜条件の一例として、基板温度を25℃、成膜レートを1nm/s、成長雰囲気の圧力を1Paに設定する。
このポリパラキシリレンの選択成長は、専用装置(図示せず)を用いて減圧下で行う。この専用装置は、例えば気化炉、分解炉、蒸着室の3部分から構成されている。上記蒸着室には対象物(ソース・ドレイン電極12、13が形成されたゲート絶縁膜17)を設置する。上記気化炉には成膜材料であるジパラキシリレン(例えば粉体)を設置する。装置内を減圧後、気化炉を昇温(120℃〜180℃)して、ジパラキシリレンを気化させる。このガスが真空ポンプに引かれて蒸着室側に流れ、高温(650℃〜700℃)の分解炉を通過すると、熱分解されてモノマーになる。このモノマーが室温の蒸着室内で対象物(ゲート絶縁膜17)に接触すると、熱が奪われて、その表面で重合し、高分子量ポリパラキシリレン膜が形成される。
上記ポリパラキシリレン膜21の膜厚は1nm〜50nmが好ましい。より好ましくは、5nm〜10nmである。
【0060】
上記金属酸化物膜14、15を形成する酸素プラズマ処理で、Vthシフトの原因となる上記ゲート絶縁膜17上のチャネルが形成される領域に生成された水酸基がポリパラキシリレン膜21に被覆される。これによって、Vthシフトが抑制された有機TFTデバイスを作製することができる。
【0061】
または、上記水酸基を処理する工程は、図示はしていないが、上記ソース・ドレイン電極12、13が形成されていない上記ゲート絶縁膜17上をシランカップリング剤により脱水処理する。これによって、上記ゲート絶縁膜17上のチャネルが形成される領域に生成された水酸基を低減する。
上記シランカップリグ処理に用いるシランカップリング剤には、例えば、オクタデシルトリクロロシラン(OTS:n-octadecyltrichlorosilane)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS:hexa methyl disilazane)などが用いられる。
上記シランカップリグ処理では、上記ソース・ドレイン電極12、13上には水酸基が存在しないため、シランカップリング反応は起こらない。一方、水酸基が存在する有機絶縁膜の上記ゲート絶縁膜17上ではシランカップリグ反応が起こる。つまり、上記ゲート絶縁膜17上に存在する水酸基の水素とシランカップリング剤の水酸基が結合してH2Oを生成するとともに、上記ゲート絶縁膜17上に存在する水酸基の酸素とシランカップリング剤のシリコン(Si)が結合してSi−O結合を生成する。これにより、しきい値電圧(Vth)シフトの原因となる上記ゲート絶縁膜17最表面の水酸基を排除することができる。
【0062】
次に、図4(6)に示すように、上記ゲート絶縁膜17上に上記金属酸化物膜14、15が形成された前記ソース・ドレイン電極12、13を被覆する有機半導体層16を形成する。
上記有機半導体層16は、例えば、抵抗加熱蒸着法によりペンタセンを蒸着して形成する。例えば、成膜速度を0.05nm/s(0.5Å/s)、成膜雰囲気の温度を60℃、成膜雰囲気の圧力を10-5Paに設定して、例えば50nmの厚さに形成する。この結果、C軸方向に配向したペンタセン多結晶薄膜を形成することできる。
または、上記有機半導体層16の成膜には、例えばインクジェット方式による印刷技術を用いる。成膜材料には、例えば、ポリ(3ヘキシルチオフェン)[P3HT:poly(3-hexylthiophene)]を用いる。また、成膜技術には、スピンコート、版印刷などを用いてもよい。また、上記有機半導体層16には、ペンタセン、ポルフィリン等の低分子材料、トリイソプロピルシリルエチニルペンタセン[TIPS−ペンタセン:triisopropylsilylethynyl pentacene]、ポリアリルアミン等の高分子材料を用いることができる。
【0063】
上記有機半導体層16は、ソース・ドレイン電極12、13の表面が酸化されて形成された金属酸化物膜14、15(例えば金酸化物膜)表面のほうが、金属酸化物膜14、15がない金属膜(例えば金膜)上のソース・ドレイン電極表面より、成長しやすくなる。例えば、有機半導体層16としてペンタセンを蒸着したときの有機半導体層のグレインサイズは、金属酸化物膜14、15(例えば金酸化物膜)上のほうが金属膜(例えば金膜)上よりも大きくなる。このように、大きなサイズのグレインが成長されることによって、コンタクト抵抗が低減されるので、p型の有機半導体装置を動作させる場合、ソース・ドレイン電極12、13から有機半導体層16へのキャリアの注入効率が高まる。その結果として、ソース・ドレイン電極12、13と有機半導体層16との接触抵抗を低減することができる。
【0064】
上記有機半導体装置の第2製造方法では、ソース・ドレイン電極12、13が形成されていないゲート絶縁膜17上にポリパラキシリレン膜21が形成されている。これによって、ソース・ドレイン電極12、13の表面に金属酸化物膜14、15を形成したときに生じるゲート絶縁膜17表面のダメージ層25、例えばVthシフトの原因となるダメージ層25はポリパラキシリレン膜21によって被覆され修復される。よって、Vthシフトが抑制される。
【0065】
または、シランカップリング処理をしたことにより、ソース・ドレイン電極12、13の表面に金属酸化物膜14、15を形成したときに生じるゲート絶縁膜17表面のダメージ層25、すなわちVthシフトの原因となる水酸基は排除される。よって、Vthシフトが抑制される。
【0066】
したがって、ソース・ドレイン電極12、13表面に金属酸化物膜14、15が形成されて、かつゲート絶縁膜17表面に生じたダメージ層25が修復されるので、Vthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できる。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0067】
<5.第5の実施の形態>
[有機半導体装置の製造方法の第3例]
本発明の第5実施の形態に係る有機半導体装置の製造方法の第3例を、図5の製造工程断面図によって説明する。
【0068】
図5(1)に示すように、表面が絶縁性を有する基板11上にゲート電極18を形成する。
上記基板11には、例えばガラス基板やプラスチック基板等を用いる。または、表面に酸化シリコン、窒化シリコン、有機絶縁膜等の絶縁膜で形成されている基板であってもよい。
上記ゲート電極18を形成するには、例えば、上記基板11上に金属膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術によって金属膜をパターニングすることで形成する。
上記金属膜には、例えば金(Au)を用いる。金を用いる場合には、密着層にクロム(Cr)を用いることが好ましい。
また、上記ゲート電極18を形成する金属膜には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)など一般的な電極材料を使用することができる。
また、上記ゲート電極18の形成方法には、リフトオフ法、版印刷法、インクジェット方式の印刷法等を用いてもよい。
【0069】
次に、図5(2)に示すように、上記基板11上に上記ゲート電極18を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜17を形成する。
上記ゲート絶縁膜17は、例えば有機絶縁膜で形成される。有機絶縁膜材料には、例えばポリビニルフェノール(PVP)を用いる。その形成方法は、例えばスピンコートを用いる。塗布後、150℃〜180℃で1時間のベーキングを行う。このとき、PVPに添加されている架橋剤により、PVPが架橋されるので、以後のフォトリソグラフィ工程が行えるようになる。
すなわち、架橋剤を用いた架橋反応により、ポリビニルフェノール(PVP)中のヒドロキシル基を架橋させることで、その後に用いる有機溶剤耐性を高めることができる。
上記有機絶縁膜材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等を使用することができる。
【0070】
次に、図5(3)に示すように、レジスト塗布およびフォトリソグラフィ技術によって、上記ゲート絶縁膜17上にソース・ドレイン電極を形成する領域に開口部32、33を設けたレジストパターン31を形成する。例えば、上記ゲート電極18上方の両側に、上記開口部32、33は形成される。上記レジストパターン31は逆テーパ形状に形成されることが好ましい。
その後、蒸着法により、上記ゲート絶縁膜17上に、例えば金(Au)を堆積する。このとき、上記レジストパターン31上にも金が堆積される。ここでは、蒸着法に、例えば抵抗加熱蒸着法を用いて、50nmの厚さに金を堆積した。
これによって、上記ゲート絶縁膜17上に金からなるソース・ドレイン電極12、13が離間して形成される。
このとき、上記レジストパターン31が逆テーパ形状に形成されていることにより、上記ソース・ドレイン電極12、13と上記レジストパターン31との間に隙間を生じて、上記ソース・ドレイン電極12、13は形成される。
【0071】
次に、図5(4)に示すように、上記レジストパターン31を形成した状態で上記ソース・ドレイン電極12、13の表面を酸化させて金属酸化物膜14、15を形成する。
上記ソース・ドレイン電極12、13の表面を酸化させる処理は、酸素プラズマ処理による。酸素プラズマ処理は、例えば、パワーを200W、処理雰囲気の圧力を133Pa、処理時間を3分とした。
上記酸化工程は、UVオゾン処理を用いてもよい。上記UVオゾン処理は、例えばUV光に波長が254nmの紫外光を用い、処理雰囲気の圧力を10kPa、処理時間を10分とした。波長が254nmの紫外光を発する光源として、例えば水銀ランプがある。なお、紫外線光源であれば、上記波長に限定されない。
また、上記ソース・ドレイン電極12、13には、例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)等を用いることもできる。これらの金属を用いた場合も、上記同様な酸化工程により、表面に当該金属の金属酸化物膜を形成することができる。
上記酸化工程では、上記ソース・ドレイン電極12、13と上記レジストパターン31との間に隙間を生じていることから、上記ソース・ドレイン電極12、13の側壁部分も酸化されて、上記ソース・ドレイン電極12、13を被覆するように上記金属酸化物膜14、15が形成される。
続いて、上記レジストパターン31上に堆積された金とともに上記レジストパターン31を除去(リフトオフ)することで、ゲート絶縁膜17上に金からなるソース・ドレイン電極12、13が離間して形成される。上記リフトオフには、例えばレジストを溶解する溶剤を用いる。例えばアセトンを用いる。
なお、図5(4)は、レジストパターンを除去する直前の状態を示した。
【0072】
次に、図5(5)に示すように、上記ゲート絶縁膜17上に上記金属酸化物膜14、15が形成された前記ソース・ドレイン電極12、13を被覆する有機半導体層16を形成する。
上記有機半導体層16は、例えば、抵抗加熱蒸着法によりペンタセンを蒸着して形成する。例えば、成膜速度を0.05nm/s(0.5Å/s)、成膜雰囲気の温度を60℃、成膜雰囲気の圧力を10-5Paに設定して、例えば50nmの厚さに形成する。この結果、C軸方向に配向したペンタセン多結晶薄膜を形成することできる。
または、上記有機半導体層16の成膜には、例えばインクジェット方式による印刷技術を用いる。成膜材料には、例えば、ポリ(3ヘキシルチオフェン)[P3HT:poly(3-hexylthiophene)]を用いる。また、成膜技術には、スピンコート、版印刷などを用いてもよい。また、上記有機半導体層16には、ペンタセン、ポルフィリン等の低分子材料、トリイソプロピルシリルエチニルペンタセン[TIPS−ペンタセン:triisopropylsilylethynyl pentacene]、ポリアリルアミン等の高分子材料を用いることができる。
【0073】
上記有機半導体層16は、ソース・ドレイン電極12、13の表面が酸化されて形成された金属酸化物膜14、15(例えば金酸化物膜)表面のほうが、金属酸化物膜14、15がない金属膜(例えば金膜)上のソース・ドレイン電極表面より、成長しやすくなる。例えば、有機半導体層16としてペンタセンを蒸着したときの有機半導体層のグレインサイズは、金属酸化物膜14、15(例えば金酸化物膜)上のほうが金属膜(例えば金膜)上よりも大きくなる。このように、大きなサイズのグレインが成長されることによって、コンタクト抵抗が低減されるので、p型の有機半導体装置を動作させる場合、ソース・ドレイン電極12、13から有機半導体層16へのキャリアの注入効率が高まる。その結果として、ソース・ドレイン電極12、13と有機半導体層16との接触抵抗を低減することができる。
【0074】
上記有機半導体装置の第3製造方法では、ソース・ドレイン電極12、13の表面に金属酸化物膜14、15を形成したときに、ゲート絶縁膜17上がレジストパターン31で被覆されている。このため、ゲート絶縁膜17表面には、ダメージ、例えばVthシフトの原因となるダメージは発生しないので、Vthシフトが抑制される。
よって、ソース・ドレイン電極12、13表面に金属酸化物膜14、15が形成されて、かつレジストパターン31によってゲート絶縁膜17表面へのダメージの発生が防止されるので、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できる。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
また、上記酸素プラズマ処理を行う領域がレジストパターン31によって制限されているため、高精細プロセスに対応できる。
さらに、ソース・ドレイン電極12、13を形成する際に用いたレジストパターン31をそのまま、金属酸化物膜14、15を形成する際のマスクパターンに用いるので、金属酸化物膜14、15を形成する際のマスクパターンを新たに形成する必要がない。よって、マスク枚数は増加しない。
【0075】
<6.第6の実施の形態>
[有機半導体装置の製造方法の第4例]
本発明の第6実施の形態に係る有機半導体装置の製造方法の第4例を、図6の製造工程断面図によって説明する。
【0076】
図6(1)に示すように、表面が絶縁性を有する基板11上にゲート電極18を形成する。
上記基板11には、例えばガラス基板やプラスチック基板等を用いる。または、表面に酸化シリコン、窒化シリコン、有機絶縁膜等の絶縁膜で形成されている基板であってもよい。
上記ゲート電極18を形成するには、例えば、上記基板11上に金属膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術によって金属膜をパターニングすることで形成する。
上記金属膜には、例えば金(Au)を用いる。金を用いる場合には、密着層にクロム(Cr)を用いることが好ましい。
また、上記ゲート電極18を形成する金属膜には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)など一般的な電極材料を使用することができる。
また、上記ゲート電極18の形成方法には、リフトオフ法、版印刷法、インクジェット方式の印刷法等を用いてもよい。
【0077】
次に、図6(2)に示すように、上記基板11上に上記ゲート電極18を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜17を形成する。
上記ゲート絶縁膜17は、例えば有機絶縁膜で形成される。有機絶縁膜材料には、例えばポリビニルフェノール(PVP)を用いる。その形成方法は、例えばスピンコートを用いる。塗布後、150℃〜180℃で1時間のベーキングを行う。このとき、PVPに添加されている架橋剤により、PVPが架橋されるので、以後のフォトリソグラフィ工程が行えるようになる。
すなわち、架橋剤を用いた架橋反応により、ポリビニルフェノール(PVP)中のヒドロキシル基を架橋させることで、その後に用いる有機溶剤耐性を高めることができる。
上記有機絶縁膜材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等を使用することができる。
【0078】
次に、図6(3)に示すように、上記ゲート絶縁膜17上に、表面を酸化させて金属酸化物膜14、15を形成した金属からなるソース・ドレイン電極12、13を転写して形成する。このとき、例えば、上記ゲート電極18上に上記ソース・ドレイン電極12、13間が位置するように、ソース・ドレイン電極12、13が転写される。
【0079】
次に、図6(4)に示すように、上記ゲート絶縁膜17上に上記金属酸化物膜14、15が形成された前記ソース・ドレイン電極12、13を被覆する有機半導体層16を形成する。
上記有機半導体層16は、例えば、抵抗加熱蒸着法によりペンタセンを蒸着して形成する。例えば、成膜速度を0.05nm/s(0.5Å/s)、成膜雰囲気の温度を60℃、成膜雰囲気の圧力を10-5Paに設定して、例えば50nmの厚さに形成する。この結果、C軸方向に配向したペンタセン多結晶薄膜を形成することできる。
または、上記有機半導体層16の成膜には、例えばインクジェット方式による印刷技術を用いる。成膜材料には、例えば、ポリ(3ヘキシルチオフェン)[P3HT:poly(3-hexylthiophene)]を用いる。また、成膜技術には、スピンコート、版印刷などを用いてもよい。また、上記有機半導体層16には、ペンタセン、ポルフィリン等の低分子材料、トリイソプロピルシリルエチニルペンタセン[TIPS−ペンタセン:triisopropylsilylethynyl pentacene]、ポリアリルアミン等の高分子材料を用いることができる。
【0080】
上記有機半導体層16は、ソース・ドレイン電極12、13の表面が酸化されて形成された金属酸化物膜14、15(例えば金酸化物膜)表面のほうが、金属酸化物膜14、15がない金属膜(例えば金膜)上のソース・ドレイン電極表面より、成長しやすくなる。例えば、有機半導体層16としてペンタセンを蒸着したときの有機半導体層のグレインサイズは、金属酸化物膜14、15(例えば金酸化物膜)上のほうが金属膜(例えば金膜)上よりも大きくなる。このように、大きなサイズのグレインが成長されることによって、コンタクト抵抗が低減されるので、p型の有機半導体装置を動作させる場合、ソース・ドレイン電極12、13から有機半導体層16へのキャリアの注入効率が高まる。その結果として、ソース・ドレイン電極12、13と有機半導体層16との接触抵抗を低減することができる。
【0081】
上記ゲート絶縁膜17上に表面を酸化させて金属酸化物膜14、15を形成した金属からなるソース・ドレイン電極12、13を形成する工程は、以下のようになる。
【0082】
図6(5)に示すように、第1支持基板41上に金属からなるソース・ドレイン電極12、13を離間して形成する。このソース・ドレイン電極12、13の間隔は、例えば上記ゲート電極18の幅を考慮して決定される。
上記第1支持基板41には、例えばガラス基板を用いる。
まず、抵抗加熱蒸着法により、上記第1支持基板41上に金属膜として、例えば金(Au)膜を一面に成膜する。
次いで、ソース・ドレイン電極となる領域以外の領域にポリジメチルシロキサン(PDMS:polydimethylsiloxane)が接触するようなポリジメチルシロキサンの版(以下、PDMS版という。)を用意する。このPDMS版を上記金膜に接触させることで、ソース・ドレイン電極が形成される領域以外の金膜をPDMS版で除去する。このとき、大気圧雰囲気で例えば5kPaの圧力をかけて、金膜を第1支持基板41側に30秒間、押圧する。PDMSと金膜との密着性が金膜とガラス基板である第1支持基板41との密着性より大きいために、第1支持基板41上より容易に金膜の不要な部分を除去することができる。
この結果、第1支持基板41上に金からなるソース・ドレイン電極12、13が離間して形成される。
【0083】
次に、図6(6)に示すように、上記ソース・ドレイン電極12、13の表面を酸化させて金属酸化物膜14、15を形成する。
酸素プラズマ処理によって、上記ソース・ドレイン電極12、13の表面を酸化させて、金酸化物からなる金属酸化物膜14、15を形成する。
第1支持基板41がガラス基板であるので、比較的強い酸素プラズマ処理条件であっても、問題なく酸化工程を行うことができる。例えば、パワーを200W、処理雰囲気の圧力を133Pa、処理時間を3分よりも強い酸化条件にも対応できる。
上記酸化工程は、UVオゾン処理を用いてもよい。上記UVオゾン処理は、例えばUV光に波長が254nmの紫外光を用い、処理雰囲気の圧力を10kPa、処理時間を10分とした。波長が254nmの紫外光を発する光源として、例えば水銀ランプがある。なお、紫外線光源であれば、上記波長に限定されない。
【0084】
次に、図6(7)に示すように、上記金属酸化物膜14、15表面に第2支持基板42を押し付けて、上記金属酸化物膜14、15が形成された上記ソース・ドレイン電極12、13を上記第2支持基板42に転写する。このとき、大気圧雰囲気で例えば5kPaの圧力をかけて、第2支持基板42を金属酸化物膜14、15側に30秒間、押圧する。上記第2支持基板42にはPDMS基板を用いる。
このとき、PDMS基板と金酸化物からなる金属酸化物膜14、15との密着性は、金膜とガラス基板の第1支持基板41との密着性より大きいために、金属酸化物膜14、15が形成されたソース・ドレイン電極12、13は第1支持基板41上より剥離する。
その結果、図6(8)に示すように、上記ソース・ドレイン電極12、13より上記第1支持基板41(前記図6(7)参照)が剥がれ、容易にPDMS基板の第2支持基板42側に上記ソース・ドレイン電極12、13が転写される。
このようにして、金属酸化物膜14、15で被覆されたソース・ドレイン電極12、13が形成された転写用の版が作製される。
【0085】
次に、図6(9)に示すように、版印刷により、上記ゲート絶縁膜17上に上記ソース・ドレイン電極12、13を形成する。すなわち、大気圧雰囲気で例えば5kPaの圧力をかけて、ソース・ドレイン電極12、13をゲート絶縁膜17側に30秒間、押圧する。上記第2支持基板42より上記ゲート絶縁膜17上に上記ソース・ドレイン電極12、13を転写して、上記ソース・ドレイン電極12、13より上記第2支持基板42を外す。このとき金酸化物の金属酸化物膜14、15とPDMSの第2支持基板42との密着性よりも、金酸化物の金属酸化物膜14、15と有機絶縁膜(例えばPVP)のゲート絶縁膜17との密着性の方が高いため、金からなるソース・ドレイン電極12、13は、有機絶縁膜のゲート絶縁膜17上に転写される。
【0086】
上記有機半導体装置の第4製造方法では、ソース・ドレイン電極12、13の表面に金属酸化物膜14、15を形成したときにダメージを受けた第1支持基板41は外される。そして、金属酸化物膜14、15が形成されたソース・ドレイン電極12、13のみがゲート絶縁膜17上に転写されて形成されるので、ゲート絶縁膜17表面にダメージ、例えばVthシフトの原因となるダメージが生じることはない。よって、Vthシフトが抑制される。
また、ソース・ドレイン電極12、13表面に金属酸化物膜14、15が形成されて、かつゲート絶縁膜17表面にダメージが生じないのでVthシフトが抑制され、駆動能力の低下、ヒステリシスの発生といった問題が回避できる。すなわち、駆動能力を向上させることができ、ヒステリシスの発生を防ぐことができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0087】
また、版印刷を用いるので、高精細、大面積プロセスに対応できる。さらに、第1支持基板41上でソース・ドレイン電極12、13の酸化工程を行うことができるので、プロセスマージンが大きい。例えば、強い酸化条件にも対応できる。
【0088】
上記第1実施の形態の有機半導体装置1、上記第2実施の形態の有機半導体装置2、および上記第3実施の形態〜第6実施の形態で作製された有機半導体装置は、各種電子機器に搭載されるトランジスタに用いることができる。例えば、ディスプレイのバックプレーン、RF−IDタグ、センサー、メモリー装置等の回路の一部を構成するトランジスタに用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
1…有機半導体装置、11…基板、12,13…ソース・ドレイン電極、14,15…金属酸化物膜、16…有機半導体層、17…ゲート絶縁膜、18…ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が絶縁性を有する基板の表面上に離間して形成されたソース・ドレイン電極と、
前記ソース・ドレイン電極の表面に形成された金属酸化物膜と、
前記基板上に形成されていて前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を被覆する有機半導体層と、
前記有機半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ソース・ドレイン電極間上方の前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極を備えた
有機半導体装置。
【請求項2】
前記ソース・ドレイン電極は金で形成され、
前記金属酸化物膜は金酸化物で形成されている
請求項1記載の有機半導体装置。
【請求項3】
前記ソース・ドレイン電極は金酸化物で形成され、
前記金属酸化物膜は金酸化物で形成されている
請求項1記載の有機半導体装置。
【請求項4】
表面が絶縁性を有する基板の表面上に形成されたゲート電極と、
前記基板上に形成されていて前記ゲート電極を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜と、
前記ゲート電極の上方両側の前記ゲート絶縁膜上に離間して形成されたソース・ドレイン電極と、
前記ソース・ドレイン電極の表面に形成された金属酸化物膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されていて前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を被覆する有機半導体層を有し、
前記ソース・ドレイン電極が形成されていない前記ゲート絶縁膜上にポリパラキシリレン膜が形成されている
有機半導体装置。
【請求項5】
前記ソース・ドレイン電極は金で形成され、
前記金属酸化物膜は金酸化物で形成されている
請求項4記載の有機半導体装置。
【請求項6】
前記ソース・ドレイン電極は金酸化物で形成され、
前記金属酸化物膜は金酸化物で形成されている
請求項4記載の有機半導体装置。
【請求項7】
表面が絶縁性を有する基板の表面上に金属からなるソース・ドレイン電極を離間して形成する工程と、
前記ソース・ドレイン電極の前記金属表面を酸化させて金属酸化物膜を形成する工程と、
前記基板上に前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を被覆する有機半導体層を形成する工程と、
前記有機半導体層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ソース・ドレイン電極間上方の前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程を有する
有機半導体装置の製造方法。
【請求項8】
表面が絶縁性を有する基板の表面上にゲート電極を形成する工程と、
前記基板上に前記ゲート電極を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート電極の上方両側の前記ゲート絶縁膜上に金属からなるソース・ドレイン電極を離間して形成する工程と、
前記ソース・ドレイン電極の表面を酸化させて金属酸化物膜を形成する工程と、
前記ソース・ドレイン電極が形成されていない前記ゲート絶縁膜表面のダメージ層を処理する工程と、
前記ダメージ層を処理した前記ゲート絶縁膜上に前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を被覆する有機半導体層を形成する工程を有する
有機半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ダメージ層を処理する工程は、前記ソース・ドレイン電極が形成されていない前記ゲート絶縁膜上にポリパラキシリレン膜を形成する
請求項8記載の有機半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ダメージ層を処理する工程は、前記ソース・ドレイン電極が形成されていない前記ゲート絶縁膜上をシランカップリング剤により脱水処理をする
請求項8記載の有機半導体装置の製造方法。
【請求項11】
表面が絶縁性を有する基板の表面上にゲート電極を形成する工程と、
前記基板上に前記ゲート電極を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート電極の上方両側の前記ゲート絶縁膜上にソース・ドレイン電極が形成される領域に開口部を設けたレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクにした金属成膜により前記ゲート絶縁膜上に金属からなる前記ソース・ドレイン電極を形成する工程と、
前記レジストパターンを形成した状態で前記ソース・ドレイン電極の表面を酸化させて金属酸化物膜を形成する工程と、
前記金属成膜時に前記レジストパターン上に形成された金属膜とともに前記レジストパターンを除去する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を被覆する有機半導体層を形成する工程を有する
有機半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記レジストパターンを逆テーパ形状に形成する
請求項11記載の有機半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記ソース・ドレイン電極の表面を酸化させる処理は、酸素プラズマ処理もしくはUVオゾン処理による
請求項11または請求項12記載の有機半導体装置の製造方法。
【請求項14】
表面が絶縁性を有する基板の表面上にゲート電極を形成する工程と、
前記基板上に前記ゲート電極を被覆する有機絶縁膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート電極の上方両側の前記ゲート絶縁膜上に表面を酸化させて金属酸化物膜を形成した金属からなるソース・ドレイン電極を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を被覆する有機半導体層を形成する工程を有し、
前記ゲート絶縁膜上に表面を酸化させて金属酸化物膜を形成した金属からなるソース・ドレイン電極を形成する工程は、
第1支持基板上に金属からなるソース・ドレイン電極を離間して形成する工程と、
前記ソース・ドレイン電極の表面を酸化させて金属酸化物膜を形成する工程と、
前記金属酸化物膜表面に第2支持基板を押し付けて、前記金属酸化物膜が形成された前記ソース・ドレイン電極を該第2支持基板に転写して、ソース・ドレイン電極より前記第1支持基板を外す工程と、
前記第2支持基板より前記ゲート絶縁膜上に前記ソース・ドレイン電極を転写して、前記ソース・ドレイン電極より前記第2支持基板を外す工程を有する
有機半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−171165(P2010−171165A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11690(P2009−11690)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】