説明

有機材料層を基板上に形成する方法

インライン堆積システムにおいて有機材料層を基板上に形成する方法であって、有機材料は、所定の一定でない堆積レートプロファイルで堆積される。該プロファイルは、所定の第1平均堆積レートで有機材料層の少なくとも第1単分子層を堆積するために用意した所定の第1堆積レート範囲と、所定の第2平均堆積レートで有機材料層の少なくとも第2単分子層を堆積するために用意した所定の第2堆積レート範囲とを含む。インジェクタの開口を経由した有機材料の注入は、所定の堆積レートプロファイルを実現するために制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インライン(in-line)堆積システムにおいて有機材料層を基板上に形成する方法、およびこうした得られた有機材料層に関する。さらに、本発明は、有機薄膜トランジスタを形成するプロセスにおけるこうした方法の使用、こうしたインライン堆積システムで使用されるインジェクタおよび、こうした方法で使用されるインライン堆積システムに関する。
【背景技術】
【0002】
小さな有機半導体分子をベースとしたデバイスおよび回路の工業生産は、こうした膜を成長させるための高いスループットの堆積技術の利用可能性を必要とする。高いスループットは、大量の有機材料を大面積の基板上に堆積しつつ、良好な光学的及び/又は電気的性質および堆積した膜の良好な均一性を確保するのを可能にするテクニックを必要とする。こうした目標に到達するには、一般に提案されている手法がリール・ツゥ・リール式(reel-to-reel)(またはロール・ツゥ・ロール式(roll-to-roll))プロセスであり、小さな有機半導体分子が、連続的に移動する基板の上に、直線的で細長いソースによって供給される。
【0003】
リール・ツゥ・リール条件で小さな有機分子をベースとした薄膜の成長では、2つのテクニックが提案されており、インライン有機分子線蒸着法(OMBD、真空熱蒸着(Vacuum Thermal Evaporation)とも称される)と、インライン有機気相成長法(OVPD)とがある。
【0004】
インラインOMBDは、有機分子が細長いソースから加熱蒸発する高真空プロセスである。蒸発した分子は、温度制御された基板に向かって分子流状態で走行し、基板上で凝縮して薄膜を形成する。基板および細長いソースは、ソースの長手方向に対して垂直な方向に相対移動する。細長いソースは、典型的には複数のアパーチャを有する蓋構造で封止され、それらのサイズ、形状および間隔は、均一性の条件を満足するように調整可能であり、例えば、米国公開第2007/0163497号に記載されている。
【0005】
OVPDプロセスは、不活性キャリアガスを用いて、ホットウォール式(hot-walled)の低圧チャンバ内で有機分子をソースセルから冷却基板上に輸送する。キャリアガスは、有機分子をソースから温度制御された基板に向けて対流輸送し、基板上において有機分子が凝縮して薄膜を形成する。OVPDは、投入したキャリアガスが細長いインジェクタによって基板上に供給されるインラインシステムにおいて実施できる。基板および細長いインジェクタは、インジェクタの長手方向に対して垂直な方向に相対移動する。細長いインジェクタについて幾つかの配置形状が提案されている。最も便利なものはシャワーヘッドであり、複数の開口またはアパーチャを備えたプレートからなり、それを通じてキャリアガスが基板に向けて流れる。インラインOVPD堆積システムは、例えば、米国特許第6337102号および米国公開第2005/0109281号で参照される。
【0006】
静的な有機層堆積システムからリール・ツゥ・リール配置を備えたインラインシステムへの拡張は、有機層の堆積レートプロファイルに影響を与える。堆積レートプロファイルは、基板上の所定場所での堆積プロセス時の時間の関数としての堆積レートで定義できる。静的な処理システムでは、ソースにおいて一定の材料蒸発レートを確保することによって、堆積プロセス全体で堆積レートを一定に維持することは容易である。この方法は、堆積なしから堆積ありへおよび堆積ありから堆積なしへの急激な移行を伴い、堆積中は一定の堆積レートである矩形状の堆積レートプロファイルを生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インライン配置では、基板と細長い有機分子インジェクタ(例えば、シャワーヘッド)との間の相対移動は、堆積レート変動の原因である。インジェクタから遠く離れた、基板上のある場所では、堆積レートはゼロである。インジェクタの前方に位置する、基板上のある場所では、堆積レートは最大である。これらの場所の間では、堆積レートは堆積レートプロファイルに従って変化する。静的なシステムで得られる堆積レートプロファイルを再現するためには、一般に、堆積レートプロファイルが可能な限り矩形状になるように、インライン堆積システムの種々の部分が設計される。
【0008】
高いスループットのリール・ツゥ・リール式処理ツールが、例えば、1m/分またはそれ以上の一定速度(「基板速度」と称される)で移動する基板を連続的にコートすることが可能であろう。インラインシステム、例えば、リール・ツゥ・リール式システムを用いた層の堆積の場合、リニア堆積速度は、特徴付けパラメータとして使用できる。リニア堆積速度は、堆積する厚さと基板速度の積として定義できる。それは、マイクロメータ/sで表される。例えば、30nm厚の有機層を基板上に堆積するために、1m/分の基板速度を持つインライン生産ツールを使用した場合、30nm×1m/分=500マイクロメータ/sのリニア堆積速度が必要である。基板上の所定ポイントでのリニア堆積速度は、基板速度と、堆積全体期間に渡る堆積レートプロファイルの積分との積に等しいことが判る。
【0009】
リール・ツゥ・リール配置の利点は、均一な有機膜の高いスループット生産、例えば、OLED(有機発光デバイス)の製造を可能にする。リール・ツゥ・リール式システムは、1m/分超の基板速度で移動する基板を連続的にコートすることが可能である場合、高いスループットシステムと考えられる。しかしながら、高い堆積レートは、電気的特性が貧弱な有機膜をもたらす。こうした膜をOTFT(有機薄膜トランジスタ)を製造するために用いた場合、低い電荷キャリア移動度で貧弱な特性を持つデバイスをもたらす。例えば、文献("Pentacene-based organic field-effect transistors", M. Kitamura et al., Journal of Physics: Condensed Matter 20 (2008) 184011)は、熱蒸発で堆積したペンタセン(pentacene)薄膜の粒径は、堆積レートの増加とともに減少することを報告している。ペンタセン膜の粒径は、膜内のキャリア輸送に影響を与える。移動度は、粒径とともに単調増加する。文献("Influence of grain sizes on the mobility of organic thin film transistors", Applied Physics Letters 86, 263501, 2005, A. Di Carlo et al.)は、所定の基板温度では、粒径は、より低い堆積レートで大きくなることを報告している。高い堆積レートは、極めて小さな粒を生じさせる。また、粒径に対する移動度の強い依存性が報告されている。電界効果抽出による移動度は、2マイクロメータ未満の粒径では急激に低下することが示されている。従って、最良のトランジスタ特性は、通常、かなり低い堆積レート(および大きな粒径)で堆積した膜を用いて得られる。
【0010】
静的なOMBDシステムでは、最良の有機薄膜トランジスタ(OTFT)は、0.25Å/s未満の堆積レートで成長した膜を用いて作成される。これは、30nm厚の膜で1200sの総合堆積時間となる。こうした長い堆積時間は、OTFTを含む有機回路の工業スケールでの製造を目的とした場合、実用的でない。こうした静的なOVPDを用いて、最大で9.5Å/sの堆積レートを用いた良好なペンタセンOTFTが報告されている(文献:C. Rolin et al, "Pentacene devices and logic gates fabricated by organic vapor phase deposition", Applied Physics Letters 89, 203502 (2006))。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(定義)
インライン堆積システム:材料層を基板上に堆積するためのシステム。材料は、直線状の細長いインジェクタによって供給され、基板および直線状の細長いインジェクタは相対移動する。
【0012】
基板速度:インジェクタに対する基板の速度。
直線状の細長いインジェクタの長手方向:基板移動方向に対してほぼ直交する方向。
直線状の細長いインジェクタの長さ:インジェクタの長手方向でのインジェクタのサイズ。
直線状の細長いインジェクタの幅:インジェクタの面内で、長手方向に対してほぼ直交する方向でのインジェクタのサイズ。
直線状の細長いインジェクタの厚さ:インジェクタの面内に対してほぼ直交する方向でのインジェクタのサイズ。
直線状の細長いインジェクタの前端および後端:基板移動方向に対してほぼ直交するインジェクタの側面。前端は、移動する基板の所定ポイントが、インジェクタ下方にある堆積ゾーンに進入する際のエッジである。後端は、移動する基板の所定ポイントが、インジェクタ下方にある堆積ゾーンを退く際のエッジである。
インジェクタの前端と後端との間の距離:インジェクタの幅。
対称インジェクタ:2つの部分が互いに同じ鏡像であるインジェクタ。対称軸は、インジェクタの長手方向に沿って配向する。
非対称インジェクタ:その長手方向に沿って、互いに同じ鏡像である2つの部分に分割できないインジェクタ。
堆積レートプロファイル:基板上の所定場所での堆積プロセス時の時間の関数としての堆積レート。典型的な堆積レートプロファイルは、立上りエッジ、最大堆積レートを持つ期間、および立下りエッジを示す。立上りエッジは、ゼロから最大値への堆積レートの増加によって特徴付けられる。立下りエッジは、最大値からゼロへの堆積レートの減少によって特徴付けられる。立上りエッジと立下りエッジとの間では、堆積レートは一定にでき、あるいは可変でもよい。対称堆積レートプロファイルは、2つの部分が同じ鏡像であるプロファイルである。例えば、対称堆積レートプロファイルでは、立下りエッジは、立上りエッジの鏡像である。非対称堆積レートプロファイルは、互いに同じ鏡像である2つの部分に分割できない堆積レートプロファイルである。
基板の所定ポイントでのインライン堆積システムのリニア堆積速度:基板速度と、基板の該ポイントで堆積した層または膜の(最終)厚さとの積。基板上の所定ポイントでのリニア堆積速度は、基板速度と、堆積全体期間に渡る堆積レートプロファイルの積分との積に等しい。それは、マイクロメータ/sで表される。
基板上の所定ポイントでのインライン堆積システムの平均堆積レート:基板の該ポイントでの、ある期間についての堆積レートの平均。
材料利用効率:基板上に堆積した材料量(単位モル)と、ソースから蒸発した材料量(単位モル)との比率。この効率が高いほど、プロセス時に廃棄される材料は少ない。
シャワーヘッド:複数の開口またはアパーチャを備えたプレート。それを通じてキャリアガスが基板に向けて流れる。
【0013】
(発明の開示)
本発明の目的は、有機層を堆積するためのより効率的な方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、インライン堆積システム、およびこうした方法で使用されるインジェクタを提供することである。
【0015】
これらの目的は、独立請求項の主題によって達成される。
【0016】
本発明の方法は、良好な均一性、好ましくは所望の有機層厚の±1%より優れた均一性で、良好な電気的特性、好ましくは0.5cm/Vsより高い電荷キャリア移動度を有し、高いスループット、好ましくは500マイクロメータ/sより大きいリニア堆積速度で、良好な材料利用効率、好ましくは50%〜75%効率の範囲、より好ましくは60%〜75%の材料利用効率で、有機層を堆積することができる。本発明の方法は、例えば、有機薄膜トランジスタまたはこうしたトランジスタを含む有機回路の高いスループットの製造、例えば、リール・ツゥ・リール式の製造のために使用できる。
【0017】
先行技術において、インライン堆積システムで基板上に有機材料層を堆積するための知られた方法は、一般に、堆積レートプロファイルが可能な限り矩形状になるように、即ち、有機材料層を一定の堆積レートプロファイルで堆積するように設計される。しかしながら、例えば、0.5cm/VSより高い電荷キャリア移動度を有する良好な電気的特性を持つ有機材料層を得るためには、有機材料層は低い堆積レートで堆積する必要がある。その結果、先行技術で知られている方法は、有機材料層を高いスループット、例えば500マイクロメータ/sより大きいリニア堆積速度で、良好な電気的特性で堆積することはできない。
【0018】
驚くべきことに、良好な電気的特性を持つ有機材料層を得るためには、少なくとも第1単分子層(monolayer)の結晶形態(morphology)が全体の有機材料層の品質にとって重要であり、最適化する必要があることを本発明者は見出した。実際、良好な電気的特性を持つ有機材料層を得るには、有機材料層の少なくとも第1単分子層は良好な電気的特性を有する必要がある。好ましくは少なくとも2つの第1単分子層、好ましくは少なくとも4つの第1単分子層が良好な電気的特性を有する必要がある。良好な電気的特性を持つ有機材料層を得るには、インライン堆積システムは、後続の層と比較してより低い平均堆積レートで、少なくとも第1単分子層、好ましくは少なくとも2つ、3つまたは4つの第1単分子層を成長できることが必要である。
【0019】
さらに、本発明は、インライン堆積システムにおいて、ある材料厚の有機材料層を基板上に形成する方法を提供する。有機材料は、一定でない堆積レートプロファイルで堆積される。該プロファイルは、基板上に、所定の第1平均堆積レートで有機材料層の少なくとも1つの第1単分子層を堆積するために用意した所定の第1堆積レート範囲と、基板上に設けられた少なくとも1つの第1単分子層の上に、所定の第2平均堆積レートで有機材料層の少なくとも1つの第2単分子層を堆積するために用意した所定の第2堆積レート範囲とを含み、第1平均堆積レートは第2平均堆積レートより小さい。インジェクタの開口を経由して基板に向かう有機材料の注入は、所定の堆積レートプロファイルを実現するために制御される。
【0020】
第1単分子層のみ、好ましくは少なくとも数個の第1単分子層は、小さい平均堆積レートで堆積する必要があり、続く単分子層は、より大きな平均堆積レートで堆積して、良好な電気的特性を持つ有機材料層を得ることができるため、本発明に係る方法は、大きなリニア堆積レートで全体の有機材料層を堆積することが可能である。さらに、全体の有機材料層の電気的特性は、特に、少なくとも第1単分子層、好ましくは少なくとも数個の第1単分子層の電気的特性によって決定されることを本発明者が見出したため、本発明に係る方法は、良好な電気的特性を持つ有機材料層を堆積することが可能である。要するに、本発明に係る方法は、既存の方法と比較して、同じ電気的特性で、より大きなリニア堆積速度で有機材料層を堆積することが可能である。
【0021】
好ましくは、所定の第1堆積レート範囲は、所定の第1平均堆積レートが少なくとも第1単分子層そして全体の有機材料層の良好な電気的特性を確保できるように選択される。所定の第1平均堆積レートの数値は、それが使用される用途に依存することになる。好ましくは、所定の第1平均堆積レートは0.1nm/s未満、より好ましくは0.025nm/s未満になるであろう。
【0022】
好ましくは、所定の第2堆積レート範囲は、所定の第2平均堆積レートが全体の有機材料層の大きなリニア堆積レートを確保できるように選択される。さらに、所定の第2平均堆積レートは、好ましくは1nm/sより大きく、より好ましくは5nm/sより大きい。
【0023】
本発明に係る方法の所定の一定でない堆積レートプロファイルは、対称または非対称の堆積レートプロファイルであってもよい。
【0024】
本発明に係る方法の第1実施形態において、所定の堆積レートプロファイルは、対称で一定でない堆積レートプロファイルであり、立上りエッジは立下りエッジの鏡像である。堆積レートは、ゼロから最大堆積レートへ連続的に上昇し、そして再びゼロに減少する。堆積レートプロファイルの立上りエッジは、第1単分子層、好ましくは数個の第1単分子層の良好な電気的特性および所定の低い第1平均堆積レートが確保できるように選択される。
【0025】
本発明者は、可能な限り一定の堆積レートプロファイルを得ることを目的とした既存の堆積方法において、堆積レートプロファイルの立上りエッジは、少なくとも第1単分子層の良好な制御を確保するには急峻すぎることを見出した。その結果、既存の方法は、良好な電気的特性、即ち、低い堆積レートの少なくとも第1単分子層、好ましくは少なくとも数個の第1単分子層を堆積することができないことになる。
【0026】
本発明に係る方法の他の実施形態では、所定の堆積レートプロファイルは、非対称堆積レートプロファイルであり、立上りエッジは立下りエッジの鏡像ではない。堆積レートプロファイルの立上りエッジは、第1単分子層、好ましくは数個の第1単分子層の良好な電気的特性および所定の低い第1平均堆積レートが確保できるように選択される。立下りエッジは、好ましくは立上りエッジより実質的に急峻であるように選択され、後続の単分子層の高速な成長、そして全体の有機材料層の高いリニア堆積速度を可能にする。従って、非対称堆積レートプロファイルは、対称堆積レートプロファイルと比較して、等しい電気的特性を備え、有機材料層のより高いリニア堆積速度をもたらす。
【0027】
インジェクタの開口を経由して基板に向かう有機材料の注入は、所定の堆積レートプロファイルを実現するために制御される。
【0028】
所定の堆積レートプロファイルは、例えば、インジェクタの複数の開口の少なくとも一部のパラメータ、例えば、これに限定されないが、複数の開口の少なくとも一部のサイズ、形状、向き、深さ及び/又は場所、または複数の開口の少なくとも一部の間の距離、を適合させることによって得ることができる。
【0029】
層は、例えば、リール・ツゥ・リール配置形状、例えば、リール・ツゥ・リール式OVPDシステムまたはリール・ツゥ・リール式OMBDシステムを備えたインラインシステムにおいて、移動基板上に成長できる。
【0030】
OVPDシステムの場合、インジェクタの開口を経由した有機材料の注入は、キャリアガスのガスフローを制御することによって制御される。基板に向かうガスフローを制御することは、例えば、基板移動方向でのインジェクタと基板との間の距離を適合させることによって、または基板表面とインジェクタ表面との間の角度を適合させることによって得られる。所定の堆積レートプロファイルを用意するため、例えば、インラインシステムのプロセスチャンバの配置形状パラメータを適合させるため、例えば、ポンプポートの位置などを適合させるために、他の方法を使用してもよい。異なる方法を組み合わせてもよい。
【0031】
本発明の方法は、有機薄膜トランジスタを形成するためのプロセス、または有機薄膜トランジスタを含む有機回路を形成するためのプロセスにおいて使用してもよい。
【0032】
本発明はさらに、インライン堆積システムで使用されるインジェクタ、および本発明に従って基板上の有機材料層の所定の堆積レートプロファイルを提供するように適合したインライン堆積システムに関する。
【0033】
発明とみなされる主題は、本文書の終わりにある請求項の欄において明示し、明確に請求している。しかしながら、添付図面とともに読んだ場合、本発明は、構成、動作方法に関して、その特徴および利点とともに、下記の詳細な説明の参照によって最もよく理解されるであろう、
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、下記の説明および添付図面を用いてさらに説明する。
【0035】
【図1】有機薄膜トランジスタの構造を概略的に示す。
【図2】リール・ツゥ・リール式OVPDシステムの概略図である。
【図3】いろいろな堆積レートプロファイルを示す。
【図4】本発明の一実施形態に係るシャワーヘッドの平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るシャワーヘッドの平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るシャワーヘッドの断面図および平面図である。
【図7】シャワーヘッドの表面が基板の表面に対して平行でないように位置決めされた構成を示す。
【図8】階段状シャワーヘッドを示す。
【図9】非対称堆積レートプロファイルを提供するために使用可能なポンプポート位置の一例を示す。
【図10】1つの孔列を含むシャワーヘッドを備えたインライン堆積システムについてシミュレーションを行った堆積レートプロファイルを示す。
【図11】いろいろな数の孔列を備えた対称シャワーヘッドについてシミュレーションを行った堆積レートプロファイルを示す。
【図12】3つの孔列を備え、前列と中央列との間の距離が変化したシャワーヘッドについてシミュレーションを行った堆積レートプロファイルを示す。
【図13】3つの孔列を備え、異なる列で孔径が変化したシャワーヘッドについてシミュレーションを行った堆積レートプロファイルを示す。
【図14】3つの孔列を備え、孔の深さが変化したシャワーヘッドについてシミュレーションを行った堆積レートプロファイルを示す。
【図15】3つの孔列を備え、前列の孔の向きが変化したシャワーヘッドについてシミュレーションを行った堆積レートプロファイルを示す。
【図16】前列の孔の中心軸がシャワーヘッド表面の直交線に対して非ゼロの角度を形成しているシャワーヘッドの断面図および平面図である。
【図17】シャワーヘッドと基板との間の距離変化についてシミュレーションを行った堆積レートプロファイルを示す。
【図18】ポンプポートの異なる位置についてシミュレーションを行った堆積レートプロファイルを示す。
【図19】堆積レートプロファイルに対するシャワーヘッドプレートと基板との間の角度変化の影響を示す。
【図20】ポイント蒸発源に対する基板上の位置の関数としての層厚分布を示す。
【図21】インラインOMBD堆積システムのアパーチャ配置形状を示す。
【図22】本発明に係る方法によって形成した、インラインOVPDで堆積したペンタセン薄膜をベースとした典型的なトップコンタクト型OTFTの特性であって、(a)出力カーブ、(b)飽和状態で測定した伝達(transfer)カーブを示す。
【図23】本発明に係る方法によって形成した、インラインOVPDで堆積したペンタセン薄膜からなる85個のサンプルについて測定した、飽和移動度−リニア堆積速度の関係を示す
【図24】910マイクロメータ/sのリニア堆積速度で堆積したペンタセン膜を備えた同じウエハで測定した7個のトランジスタの重畳伝達カーブを示す。
【図25】部分的に重畳した2つの堆積レートプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、特定の実施形態について、特定の図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されず、請求項によってのみ限定される。記載した図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のため、誇張してスケールどおり描いていないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実施態様に対応していない。
【0037】
さらに、説明での用語「第1」「第2」「第3」などは、類似の要素を区別するために使用しており、必ずしも時間的、空間的、等級的または他の方法での順番を記述するためではない。これらの用語は、適切な状況下で交換可能であり、ここで本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能であると理解すべきである。
【0038】
さらに、説明での用語「上(top)」、「下(bottom)」、「の上に(over)」、「の下に(under)」等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、適切な状況下で交換可能であって、ここで説明した本発明の実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能であると理解すべきである。
【0039】
請求項で用いた用語「備える、含む(comprising)」は、それ以降に列挙された手段に限定されるものと解釈すべきでなく、他の要素またはステップを除外していないことに留意すべきである。記述した特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を、参照したように特定するように解釈する必要があるが、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素、あるいはこれらのグループの存在または追加を除外していない。そして「手段A,Bを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A,Bだけからなるデバイスに限定すべきでない。本発明に関して、デバイスの関連した構成要素だけがAとBであることを意味する。
【0040】
本明細書を通じて「一実施形態」または「実施形態」への参照は、実施形態との関連で記載した特定の特徴、構造または特性は、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれる。そして、本明細書中の各所で「一実施形態では」または「実施形態では」の文言は、必ずしも全て同じ実施形態を参照していないが、その場合もあり得る。さらに、特定の特徴、構造または特性は、本開示から当業者に明らかなように、1つ又はそれ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせてもよい。
【0041】
同様に、本発明の例示の実施形態の説明において、開示を合理化し、1つ又はそれ以上の種々の発明態様の理解を助ける目的で、本発明の種々の特徴が時には1つの実施形態またはその説明においてグループ化されていると理解すべきである。しかしながら、この開示方法は、請求項の発明は、各請求項で明記されたものより多くの特徴を要求する意図を反映したものと解釈すべきでない。むしろ下記請求項が反映するように、発明態様が、1つの前述の開示した実施形態の全ての特徴より少ないところにある。こうして詳細な説明に続く請求項は、この詳細な説明に明示的に組み込まれており、各請求項は、本発明の別個の実施形態として自立している。
【0042】
さらに、ここで説明した幾つかの実施形態は、他の実施形態に含まれる幾つかの他の特徴を含むとともに、異なる実施形態の特徴の組合せは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内にあって、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、下記請求項において、請求された実施形態の何れかが任意の組合せで使用できる。
【0043】
ここで提示した説明では、多数の特定の詳細を述べている。しかしながら、
本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしで実施可能であると理解すべきである。例えば、周知の方法、構造および技法は、本説明の理解を曖昧にしないために詳細には示していない。
【0044】
本発明は、本発明の幾つかの実施形態の詳細な説明によって説明する。本発明の他の実施形態は、本発明の真の精神または技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って構成でき、本発明は、添付した請求項の用語によってのみ限定されることは明らかである。
【0045】
本発明は、所定の堆積レートプロファイルで有機層を堆積する方法を提供する。それは、良好な均一性(例えば、所望の有機層厚の±1%より優れた均一性)で、良好な電気的特性(例えば、n型材料では0.1cm/Vsより高い電荷キャリア移動度、ペンタセンでは0.5cm/Vsより高い電荷キャリア移動度を有する)を持つ有機層を高いスループットで堆積することができ、有機層を高い堆積速度(例えば、500マイクロメータ/sより大きいリニア堆積速度)で堆積できる。
【0046】
本発明の方法は、例えば、1m/分超の基板速度を持つ、リール・ツゥ・リール式ツールなどのインラインツールにおいて実施できる。本発明の方法は、例えば、高いスループット、例えば、リール・ツゥ・リール式での有機デバイスまたは有機回路の製造に使用できる。
【0047】
本発明は、有機層がインラインOVPDシステムを用いて堆積され、細長いインジェクタがシャワーヘッドである実施形態について詳細に説明している。しかしながら、他のインラインシステム、例えば、インラインOMBDシステムを有機層を堆積するために使用してもよく、他のタイプの細長いインジェクタを使用してもよい。
【0048】
本発明の方法は、OTFT(有機電界効果トランジスタ)の有機層を堆積することについて説明しており、好ましい堆積レートプロファイルは、有機層の第1単分子層が低い堆積レートで成長し、第1単分子層の残りの部分が高い堆積レートで成長するプロファイルである。しかしながら、本発明の方法は、これに限定されず、例えば、有機太陽電池、OLED(有機発光デバイス)または有機レーザなど、他のデバイスの有機層を堆積するために使用できる。本発明の方法はまた、他の所定の堆積レートプロファイルで有機層を堆積するために使用できる。
【0049】
本発明の方法は、広範囲の材料を堆積するために使用できる。本発明の方法を用いて堆積できる材料の例は、オリゴアセン(ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ルブレン)およびこれらの誘導体(NTCDI、官能性NTCDI、Me2−ペンタセン、TIPS−ペンタセン、F−ペンタセン、PTCBI、PTCDI(またはPDI)、官能性PTCDI、PDIF−CN2);オリゴチオフェン(セキシチオフェン、クアテルチオフェン)およびこれらの誘導体(DH−4T,DH−6T,Et−6T,bis−BDT,bis−TDT,DFH−4T,DFH−6T,DFHCO−4T,DFHPCO−4T,DFHCO−4TCO,T3CN,DCMT);オリゴフェニレン(ヘキサフェニル、テルフェニル)およびこれらの誘導体(DPh−BDX(X=S,Se,Te)、スピロ−化合物、グラフェン);トリアリールアミン(TPD,CBP,NPB,mCP);フタロシアニン オリゴマー(Cu−Pc,H2−Pc,Zn−Pc,Sub−Pc,Ti−Pc)およびこれらの誘導体(フッ素化フタロシアニン、例えば、F−CuPc);フラーレン(C60,C70,C84)およびこれらの誘導体(PCBM);有機金属キレート(Alq3)および、IrおよびRuベースの他のタイプの金属錯体;テトラチアフルバレン(TTF,BEDT−TTF,DN−TTF);TCNQおよびこれらの誘導体(F4−TCNQ);バトクプロイン(BCP);および上記ファミリーの誘導体の任意の組合せ:DPh−BDX,Dec−(TPhT)2−Dec,ATD,ATD−TIPS,DH−PPTPP,CF−PTZ,FTTTTF,Cl4−Ph2NTTF,Cl2−PhNTTF、などである。この材料リストは、限定的であることは意図しておらず、例を提示しただけに過ぎない。
【0050】
典型的な層厚は、5nm〜1マイクロメータの範囲、例えば、30nm〜200nmの範囲である。しかしながら、他の層厚も可能である。1つの単分子層は、典型的には15Åの厚さである。
【0051】
本発明の実施形態において、用語「基板」は、使用可能な下地材料または複数の下地材料を含んでもよく、あるいは、その上に有機層またはデバイスを本発明の実施形態に従って形成してもよい。用語「基板」は、ある層または関心のある部分の下地となる層のための要素を一般に定義するために用いられる。基板は、剛性基板または可撓性基板でもよい。剛性基板の例は、プラスチック、ガラス、鋼、アルミニウム、半導体の基板、例えば、Si,GaAsまたはSiC基板などである。使用可能な可撓性基板は、例えば、PEN箔、PET箔、紙などである。基板の列挙は、限定的なものでなく、例を提示しているに過ぎない。
【0052】
本発明の実施形態において、インライン、例えば、リール・ツゥ・リール式堆積システムでの所定の堆積レートプロファイルが、例えば、こうした所定の堆積レートプロファイルを、シャワーヘッドに対して相対移動する基板上に供給するように適応したシャワーヘッドを提供することによって得られる。シャワーヘッドは、例えば、プロセスガスが通過して基板に流れる開口のサイズ及び/又は間隔及び/又は深さ及び/又は向きを適応させることによって、所定の堆積レートプロファイルを供給するように適応できる。
【0053】
所定の堆積レートプロファイルは、例えば、シャワーヘッドと基板との間の基板移動方向での距離を変化させることでも得られる。所定の堆積レートプロファイルを提供するために他の方法を使用してもよく、例えば、インラインシステムのプロセスチャンバ、例えば、OVPDプロセスチャンバの配置形状パラメータを適応させたり、例えば、ポンプポートの位置を適応させてもよい。使用可能な他の方法は、異なる堆積レートを備えた連続的なインジェクタを提供することを含む。異なる堆積レートを備えた連続的なインジェクタの使用は、より高いツールコスト、より大きなツールサイズ、および堆積レートプロファイル形状でのより低い柔軟性のため、あまり好ましくない手法であろう。異なる方法が所定の堆積レートプロファイルを得るように組み合わせてもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、有機層が、一定でない堆積レートで所定の堆積レートプロファイルで成長しており、有機層の第1副層(sublayer)(例えば、数個の単分子層)は、低い堆積レート、例えば、0.1nm/s未満、例えば、0.025nm/s未満の堆積レートで成長し、有機層の後続の副層は、高い堆積レート、例えば、1nm/s超、例えば、5nm/s超の堆積レートで成長して、高い堆積速度をもたらす。層は、リール・ツゥ・リール式OVPDシステムにおいて一定速度で移動する基板上に成長してもよく、所定の堆積レートプロファイルで、例えば、基板移動方向で漸進的増加の堆積レートを持つ一定でない堆積レートを提供するように適応したシャワーヘッドが設けられる。
【0055】
本発明に係る方法は、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、即ち、図1に概略的に示す構造を形成するためのプロセスにおいて特に好適である。OTFTにおいて、ゲート電極11での電圧が、誘電体層12と活性有機層15との間の界面において電荷蓄積を誘発する。これらの蓄積電荷は、ソース電極13とドレイン電極14との間の電位差に起因して横方向に流れることができる。誘電体層と活性有機層との間の界面での極めて薄い2次元領域におけるこの電荷蓄積に起因して、電荷キャリア輸送の大部分がこの蓄積領域内、即ち、活性有機層15の数個の第1単分子層(例えば、最大2nmまで厚さを持つ領域)において発生する。従って、主として、これらの第1単分子層の結晶形態(morphology)が重要であり、良好なトランジスタ特性を得るために最適化する必要がある。例えば、有機p型回路の応用において、良好な品質の有機半導体薄膜が、好ましくは、高い電荷キャリア移動度(例えば、0.5cm/Vs超の飽和薄膜移動度)、0V〜1Vの範囲内の小さな正の閾値電圧、および電気的特性の良好な均一性(0.15V標準偏差より低い閾値電圧の広がり)を有する。
【0056】
良好な結晶形態(morphology)を得るためには、第1単分子層は、好ましくは、2Dモードで成長し、相互の上部に連続層を形成する。これらの単分子層は多結晶であり、好ましくは、良好な結晶粒内(intragrain)品質を有し、好ましくは、高い結晶品質と、低密度の固有欠陥および外因性(化学的)欠陥を有する。結晶粒内品質は、例えば、超純粋なソース材料および極めて低い粗さ基板を用いて、基板前処理プロセスを最適化することによって制御できる。好ましくは、粒界密度は低く、即ち、大きな結晶粒が好ましい。粒界密度は、例えば、基板温度を増加させたり、堆積フラックス(flux)を減少させることによって低減できる。
【0057】
有機半導体層の次の成長(例えば、ペンタセントランジスタでは最大30nm厚)は、例えば、3Dモードで発生し、これにより粒界での間隙を充填し、活性領域の幾らかの保護を提供する。薄膜トランジスタチャネルの活性領域は、通常のトランジスタ動作時に電荷の90%以上が蓄積される領域として定義される。それは、通常、薄膜の2つの第1単分子層に限定される。高い堆積レートであっても、続いて成長する層の結晶形態は、数個の第1単分子層のパターンに密接に追従するであろう。従って、良好なトランジスタを得るためには、数個の第1単分子層の成長または堆積に関して極めて良好な制御が必要になる。次の副層の堆積は、あまり厳密でない成長条件下、例えば、数個の第1単分子層よりも高い堆積レートで行うことができる。
【0058】
図2は、リール・ツゥ・リール式OVPDシステムの概略図である。図面は、基板移動方向(図2中の矢印で示す)に沿って切断したインラインOVPDシステムの断面を示す。図示した例において、大面積で可撓性の基板20が左側で巻き解かれ、良好に制御された一定の基板速度でシステムの右側へ直線的に移動し、そこで再び巻き取られる。システムは、デバイスを製造するのに必要な種々のコーティングおよび処理のための幾つかの製造ステージを含むことができる。製造ステージの少なくとも1つが、例えば、OVPDステージ(図2に示す)にできる。
【0059】
図2に示すOVPDステージは、有機ソース材料の昇華温度にほぼ等しい温度(例えば、200℃〜450℃の範囲)に加熱された加熱炉30(破線部)を備える。加熱炉30の内部には、複数の材料ソースを設置できる。図2では、こうした2つのソース40,50を示している。個々のソースの入口41,51および出口42,52は、弁43,44,53,54によって開閉可能である。加熱炉30には、希釈ライン56が設けられ、全体のキャリアガスフローをソースフローとは独立に設定することができる。キャリアガス、例えば、ヘリウム、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスが、ソースセルを通過し、昇華した有機分子が運ばれる。低いキャリアガスフローレートまたは高いソース圧力では、熱力学的平衡が確立し、有機分子の分圧はその炉温度での平衡蒸気圧に等しい。高いフローまたは低いソース圧力では、動力学機構が確立し、有機分子の分圧は一定で、その炉温度での平衡蒸気圧より低い。
【0060】
有機分子を運ぶキャリアガス(プロセスガスとも称する)は、複数の開口または孔を備えた底部プレート、例えば、シャワーヘッド58を有する混合チャンバ57の中に入る。図2において、3列の孔を備えたシャワーヘッド58を概略的に示している。シャワーヘッド58の役割は、有機分子を運ぶキャリアガスをプロセスチャンバ60の中に注入し、直線移動する基板20の上に制御された方法でそれを供給することである。
【0061】
基板20の温度は、当業者に周知である任意の適切な方法で制御される。基板20の温度は、例えば、40℃〜90℃の範囲、例えば、60℃〜75℃の範囲にできる。最後に、キャリアガスは、プロセスチャンバ60からポンプポート61を通じてポンプ排出される。図2に示した例では、ポンプポート61は、シャワーヘッド58の開口の中央列に対して対向配置される。しかしながら、ポンプポート61の他の位置も可能であり、及び/又は、1つより多くのポンプポート61が存在してもよい。
【0062】
図3は、シャワーヘッドの長手方向に対して垂直な方向に移動する基板上で、図2のインライン堆積システムを用いて実現できる堆積レートプロファイルの4つの例を示す。堆積レートプロファイルは、時間の関数として、直線移動する基板上の所定ポイントでの堆積レートとして定義される。基板上に堆積した有機層の最終厚さは、堆積レートプロファイルの時間積分、即ち、堆積プロファイルカーブ下の面積に比例する。この面積は、図3に示す3つのプロファイルについて同じである。
【0063】
図3中の破線は、矩形状の堆積レートプロファイルを示す。堆積レートプロファイルの立上りエッジでは、基板上の所定ポイントでの堆積レートはゼロから、最大で一定の堆積レート値へ急激に増加し、その後、堆積レートプロファイルの立下りエッジでは、再びゼロへ急激に低下する。こうした堆積レートプロファイルは、一定の堆積レートで薄い層を堆積するのに適している。先行技術で知られた方法は、一般に、こうした堆積レートプロファイルを得るために設計されている。
【0064】
図3に示す間隙付ドットは、対称の直線シャワーヘッドおよび、シャワーヘッド中央に対向配置されたポンプポートを用いた場合に得られるより現実的な堆積レートプロファイルを示す。ここで、堆積レートは、ゼロから最大堆積レートまで連続的に増加する。そして、対称な方法、即ち、堆積レートプロファイルが対称プロファイルであるように、再びゼロに減少する。このことは、基板がシャワーヘッド下方を移動する場合、初期層の成長は、常に比較的低い堆積レートで発生することを意味する。後続の層では、成長レートは最大値まで上昇し、そして再びゼロに減少する。このプロファイルの変形が可能であり、例えば、堆積レートは、より長い期間その最大値で留まってもよい。しかしながら、基板が高速に移動する場合(基板は1m/分超の速度で移動する生産ツールの場合)、堆積レートプロファイルの立上りエッジは、プロセスパラメータおよびツール配置形状に依存するが、数個の第1単分子層の成長について良好な制御を確保するのには急峻すぎるであろう。
【0065】
図3中の「ダブル矩形」一点鎖線は、本発明に係る方法で使用される理論的な所定の堆積レートプロファイルを示す。所定の堆積レートプロファイルは、基板上に、所定の第1一定堆積レートで有機材料層の少なくとも1つの第1単分子層を堆積するために用意した所定の第1堆積レート範囲と、少なくとも1つの第1単分子層の上に、所定の第2一定堆積レートで有機材料層の少なくとも1つの第2単分子層を堆積するために用意した所定の第2堆積レート範囲とを含む。所定の第1堆積レート範囲および所定の第1堆積レートは、少なくとも1つの第1単分子層が良好な電気的特性で堆積されるように選択される。所定の第2堆積レート範囲および所定の第2堆積レートは、後続の単分子層が高いリニア堆積レートで堆積できるように選択される。
【0066】
図3中の接近ドットは、本発明に係る方法でOTFT応用での有機薄膜成長によく適合し得る現実的な非対称堆積レートプロファイルを示す。ここで、堆積レートプロファイルの立上りエッジは、ゼロから最大堆積レートへの連続的な増加の堆積レートを示す。しかしながら、この増加は、図3に示す対称な場合(間隙付ドット)よりかなり緩慢であり、従って、最大堆積レートに到達するのにより長い時間がかかる。堆積レートプロファイルの立下りエッジでの堆積レートの減少は、かなり高速であり、対称シャワーヘッドの場合の立下りエッジでの堆積レートプロファイルに接近している。このプロファイルの変形が可能であり、例えば、堆積レートは、より長い期間その最大値で留まってもよい。
【0067】
インラインOVPDシステムにおいて、所定の堆積レートプロファイルが、基板上に有機分子を運ぶキャリアガスの広がりを制御することによって、例えば、適切なシャワーヘッドおよび堆積チャンバ配置形状を用意することによって獲得できる。
【0068】
本発明の例示の一実施形態として、最大堆積レートまでゆっくり上昇する堆積レートで、続いて比較的速く降下する堆積レートを持つ所定の堆積レートプロファイルを(シャワーヘッドの長手方向に対して垂直な方向に、シャワーヘッド下方で移動する基板上において)生じさせる細長いシャワーヘッドについてさらに説明する。こうした堆積レートプロファイルが、数個の第1単分子層についての低速な成長と、続いて後続の層についての高速な成長を可能にする。本発明の実施形態によれば、この堆積レートプロファイルは、シャワーヘッドの前端において有機分子を運ぶキャリアガスが基板に達する量が少なくなり、シャワーヘッドの後端において有機分子を運ぶキャリアガスが基板に達する量が多くなる配置形状を持つシャワーヘッドを用意することによって得られる。
【0069】
検討した例では、シャワーヘッドが、ガス混合チャンバ57とプロセスチャンバ60との間に配置されたプレートを備える。ガス混合チャンバは、加熱炉の上側ステージから到来する、有機分子を運ぶキャリアガスで連続的に充填されている。シャワーヘッドプレートは、複数の孔または開口を備え、これを通じてガスが混合チャンバからプロセスチャンバへ注入される。混合チャンバは、プロセスガス分圧が全体の混合チャンバ内部で同じであるように設計される。これは、シャワーヘッドプレートの個々の孔において、ほぼ同じプロセスガス分圧をもたらす点で好ましい。各孔の位置決めおよび形状は、ガスがプロセスチャンバ内へ注入される方法を精密に制御するように最適化できる。
【0070】
適用可能なパラメータの1つは、孔の形状である。例えば、孔は、円柱形状を有し(即ち、シャワーヘッドプレートの面内で円形断面を持つ)、シャワーヘッドプレートの厚さ全体を貫通することができ、厚さはシャワーヘッドプレート面に対してほぼ直交する方向のサイズである。孔は、直交する位置にあり、即ち、プレート表面に対して直交する円柱の中心軸を備える。円柱の直径および深さは、各孔を通過するガス量を制御するために変化できる。これは、例えば、2つの異なる直径を持つ円柱孔を形成することを含んでもよく、即ち、シャワーヘッドの入口(上側)において、ガスフローに対する影響が皆無または殆ど無い大きな直径と、シャワーヘッドの出口(下側)における小さい直径である。このより小さな直径は、ガスがチャンバ内へ注入される方法に対して最大の影響を有する。円柱孔の直交する位置の代わりに、孔は、円柱の中心軸がプレート表面の直交線に対して非ゼロの角度を形成するように形成できる。
【0071】
円柱形状以外の他の形状も可能であり、例えば、シャワーヘッドプレート面内での孔断面は、円形、楕円形、長円形、四角形、三角形、直線的または湾曲したエッジを持つ多角形などでもよい。孔の断面は、一定でもよく、あるいはプレート表面に対して直交する方向に変化してもよく、例えば、円形断面を持つ孔の直径はプレート表面に対して直交する方向に変化して、円錐孔を形成してもよい。プレート上では、全ての孔が同一でもよく、あるいは異なってもよく、例えば、シャワーヘッドプレート上の全ての個々の孔の形状またはサイズが異なってもよい。
【0072】
シャワーヘッドプレートの孔または開口は、長手方向の列に沿って配置でき、即ち、シャワーヘッドの長手方向に対して平行な直線ラインに沿って分布してもよい。しかしながら、孔はまた、長手方向とは異なる方向を有する列またはラインに沿って配置できる。シャワーヘッドが、幾つかの列を備えてもよい。種々の列は、互いに平行でもよく、あるいは非平行でもよく、例えば、互いに交差してもよい。隣接する列の間の距離は、シャワーヘッドプレート全体に渡って同じでもよく、あるいはシャワーヘッドプレート全体に渡って変化してもよい。
【0073】
平行な列の場合、「シフト」距離を列同士に設けてもよく、シフト距離とは、1つの列の孔が、隣接する列の孔に対して列方向に沿って変位する距離である。列あたりの孔の数は、各列で同じでもよく、あるいは列同士で変化してもよい。シャワーヘッドプレートを通過する孔の総数は、プレートの全体開口面積を決定する。プレートの全体開口面積は、シャワーヘッドを通る圧力降下を決定する。列において、連続孔の間の距離は、同じでも変化してもよい。
【0074】
列内部の孔および孔自体の編成は、堆積膜の厚さ均一性、システムの材料利用効率、基板の所定ポイントでの堆積レートプロファイルを制御するように最適化できる。
【0075】
本発明に係るインライン堆積システムで使用されるインジェクタは、インライン堆積システム内に固定してもよく、取り替え可能なものにしてもよい。
【0076】
図4、図5、図6は、本発明に係る非対称シャワーヘッドの3つの異なる実施形態を示す。基板移動方向は、矢印で示す。図4は、ほぼ平行な孔列を持つシャワーヘッドを示し、列はシャワーヘッドの長手方向にある。図示した例では、全ての孔がほぼ同じサイズを有し、各列の内部では孔間の距離がほぼ等しい。しかしながら、第1列(前端)において、各列内部での孔間の距離が後続の列のものより大きい。さらに、列間の距離は、後端よりもシャワーヘッドの前端で大きい。図4に示す設計の変形も使用可能であり、孔列間の間隔が変化したり、列上の孔数が変化したり、列上の孔分布が変化したりしてもよい。円形孔だけを図4に示したが、他の孔形状も使用でき、あるいは異なる孔形状が組合せ可能である。
【0077】
図5は、ほぼ平行な孔列を持つ実施形態を示し、列はシャワーヘッドの長手方向にあり、列間の距離および列内部の孔間の距離が固定されている。本実施形態では、孔直径は列同士で変化している。最小の孔は、シャワーヘッドの前端に設置される。また、本実施形態では、他の孔形状が使用可能であり、あるいは異なる孔形状が組合せ可能である。
【0078】
図6は、ほぼ平行な孔列を持つ非対称シャワーヘッドを示し、列はシャワーヘッドの長手方向にあり、列間の距離、列内部の孔間の距離、およびシャワーヘッド表面に対して平行な面内での孔サイズが固定されている。本実施形態では、孔の深さが変化し、即ち、シャワーヘッド表面に対してほぼ直交する方向での孔サイズが変化している。他の変形例は、シャワーヘッド表面に対してほぼ直交する方向での孔の形状を変化させることを含む。
【0079】
図16は、ほぼ平行な孔列を持つ非対称シャワーヘッドを示し、列はシャワーヘッドの長手方向にあり、列間の距離、列内部の孔間の距離、およびシャワーヘッド表面に対して平行な面内での孔サイズが固定されている。本実施形態では、孔の方向が変化しており、シャワーヘッド面の直交する方向に対してある角度がなす。
【0080】
本発明の実施形態において、図4〜図6および図16に示した特徴の組合せが使用可能である。
【0081】
本発明の実施形態において、OVPDプロセスチャンバの配置形状パラメータを適応させることによって、所定の堆積レートプロファイルを実現できる。OVPD堆積システムにおいて、シャワーヘッドを通じてプロセスチャンバ内に注入されたプロセスガスは、基板に到達し、その上でプロセスガスの有機分子が凝縮する。キャリアガス内での有機分子の輸送は、2つの連続したステージに切り離すことができる。第1ステージは、シャワーヘッド出口から、ガスがプロセスチャンバ内に注入されると直ぐに形成される境界層(後で定義する)上部への対流輸送を含む。対流輸送では、キャリアガスの移動が運ばれる有機分子の移動を強く決定し、即ち、対流輸送の場合、有機分子は、キャリアガスの流線にしっかりと追従する。従って、プロセスチャンバの設計は、好ましくは、分子を必要な場所へ運ぶキャリアガスのフラックスを精密に制御することが可能なものである。
【0082】
第2ステージは、境界層を経由した有機分子の拡散輸送を含む。不活性キャリアガスは、冷えた基板の上部に境界層を形成する。これは、キャリアガス速度が、基板からさらに遠い場所よりもほぼ低くなる領域である。キャリアガス中に存在する有機分子は、基板上で凝縮する。従って、境界層では、有機分子の濃度勾配が存在する。境界層の上部には、ガスフローで対流輸送された有機分子が到着し、境界層の底部、即ち、気相と固体基板との間の界面において、有機分子の濃度がゼロに接近する。この濃度勾配は、境界層を経由した有機分子の拡散プロセスを促進する。
【0083】
境界層内では、有機分子の拡散輸送が優勢になる。境界層の厚さは、堆積レートに対して影響を有する。境界層が薄いほど、より多くの有機分子が境界層を通じて拡散することができ、得られる堆積レートが高くなる。従って、プロセスチャンバ(およびシャワーヘッド)の設計は、好ましくは、境界層の形成が精密に制御できるものである。
【0084】
プロセスチャンバ内部では、複数の配置形状パラメータが変更できる。主要な配置形状パラメータは、下記のものである。
【0085】
・シャワーヘッドと基板との間の距離。この距離が増加すると、均一性を改善し、堆積レートプロファイルを広くするが、材料利用効率を大きく減少させる。
【0086】
・シャワーヘッドと基板との間の角度。例えば、シャワーヘッド58は、その表面が基板20の表面に対して平行でなく、基板の表面に対してある角度になるように位置決めでき、例えば、シャワーヘッド58と基板20との間の距離(a)がシャワーヘッド前端でシャワーヘッド後端より大きくなるようにできる。こうした構成を図7に概略的に示している。矢印は、基板移動方向を示す。
【0087】
・シャワーヘッドプレートの形状は非平面にできる。例えば、「階段状」リニアシャワーヘッドが、孔列である段差の各々に沿って設置できる。この場合、シャワーヘッド58と基板20との間の距離(a,b,c)が基板移動方向に段差状に変化している。階段状シャワーヘッドを図8に示している。矢印は、基板移動方向を示す。
【0088】
・ポンプポート位置。主として、基板移動方向に沿ったポンプポート位置は、堆積レートプロファイルに影響を与える。非対称堆積レートプロファイルを提供するために使用できるポンプポート位置の一例を図9に示す。矢印は、基板移動方向を示す。
【0089】
・他の要素が、基板表面上でのガスの広がりを制御するために適応または提供できる。例えば、シャワーヘッド表面と基板表面に極めて近い位置との間に延びる、所定の配置形状の壁を追加し、基板と壁下端との間に極めて小さな隙間を残す。こうした1つの壁がシャワーヘッドの前端に沿って配置できる。こうした他の壁が後端に沿って配置できる。
【0090】
本発明の実施形態では、異なる特徴、チャンバ配置形状、シャワーヘッド変形の組合せが使用できる。
【0091】
インラインOVPDシステムの堆積レートプロファイルのシミュレーションを実施して、シャワーヘッドの設計およびOVPDプロセスチャンバについての多数の配置形状パラメータの影響を説明した。COMSOL社Multiphysicsソフトウエアを用いた有限要素解析によって計算を実行した。キャリアガスの流体力学を非圧縮性ナビエ・ストークス(Navier-Stokes)モデルを用いて考慮した。キャリアガス温度は、伝導および対流モデルをベースとした熱輸送を用いて計算した。キャリアガスフローへの有機分子の注入を、希釈した相の輸送についての伝導および対流モデルを用いてモデル化した。モデルの物理的特性は、全てのシミュレーションを通じて一定に維持した。より詳細には、ガス温度および壁温度を一定に維持し、ガス入口質量フローおよび出口圧力は一定であると仮定し、入口での有機分子フラックス、これらの拡散係数および基板上でのこれらの凝縮レートを一定に維持した。モデルの配置形状だけを変更し、堆積レートプロファイルに対する配置形状変化の影響を調査した。堆積レートプロファイルは、基板上で凝縮する有機分子の総法線(normal)フラックスを材料密度で除算することによって、シミュレーション結果から抽出した。
【0092】
モデルの配置形状は、混合チャンバを含んでおり、その上部にガス入口があり、その下部にシャワーヘッドプレートがある。シャワーヘッドプレートには、円柱形状を有すると仮定した多数の平行な孔列が設けられ、その列はシャワーヘッドの長手方向に配向している。プロセスガスは、孔を通って基板上に注入される。基板移動方向に対応した方向での基板のサイズは、システムの他の寸法と比べて大きいと仮定している。これは、リール・ツゥ・リール式システムで典型的な、無限に長い基板についてシミュレーションを行う。堆積レートは、静止基板に沿った位置(シャワーヘッドの長手方向に直交する方向)の関数として計算し、堆積レートプロファイルの画像を供給した。実用的な用途で一定の基板速度を仮定すると、静止基板上での空間的堆積レートプロファイルと、移動基板上での時間的堆積レートプロファイルとの間には直接の関係がある。
【0093】
図10は、対称システムにおいて1つの孔列を含むシャワーヘッドの場合の堆積レートプロファイルを示す。この堆積レートプロファイルのピークは、衝突広がり現象について典型的な分布関数であるローレンツ(Lorentzian)フィッティング関数と最もよく一致する。図10に示す結果は、基準として考えることができる。実際、シャワーヘッドでの各孔列が、図10に示したものと類似したピークを生じさせる。従って、全体の堆積レートプロファイルは、、図10に示したものと類似した個々の堆積レートプロファイルの重ね合わせとして考えることができる。
【0094】
図11は、増加する数(1列から5列まで)の平行な孔列を備えた対称シャワーヘッドについての堆積レートプロファイルを示す。孔列の数が増加すると、堆積ピークが広がって、最大堆積ピークが減少することが判る。このシミュレーションでは、シャワーヘッドの合計アパーチャ面積を一定に維持し、シャワーヘッドで一定の圧力降下を維持している。これは、1列の場合での孔は、5列の場合より大きな直径を有することを意味する。
【0095】
図12は、3つの平行な孔列を備えたシャワーヘッドについて、前側孔列(即ち、シャワーヘッドの前端に最も近くに配置された孔列)と中央孔列との間の距離の増加による堆積レートプロファイルへの影響を示す。カーブは、5mmから65mmまで10mmステップで変化した距離について示している。中央孔列と後側孔列(即ち、シャワーヘッドの後端に最も近い孔列)との間の距離は、5mmと仮定している。前列に対する個々の堆積レートピークは、前列と中央列との間の距離が増加するにつれて移動することが判る。
【0096】
図13は、3つの平行な孔列を備え、孔径が変化しているシャワーヘッドについてシミュレーションを行った堆積レートプロファイルを示す。赤色カーブは、全ての孔が同じ直径(2mm)を有する対称な場合を示す。次に続くカーブは、前列の孔の直径は減少し(1.75mmから0.5mmまでの範囲)、後列の孔の直径は増加している(2.25mmから3.5mmまでの範囲)プロファイルの非対称な変形を示す。中央列の孔の直径は2mmと仮定し、列間の距離は12mmである。前列でより小さな孔を備え、後列でより大きな孔を備えたシャワーヘッドが、立下りエッジよりも急峻でない立上りエッジを有する非対称堆積レートプロファイルをもたらすことが判る。
【0097】
図14は、3つの孔列を備えたシャワーヘッドの孔深さの変化による堆積レートプロファイルへの影響を示す。赤色カーブは、3列の全ての孔が同じ直径(5mm)を有する対称な場合を示す。次に続く列の間隔は、比較的大きく、即ち、20mmと仮定している。これは、3つの個々のピーク(3つの孔列に対応)の存在をより明確にしている。図14において、次に続くカーブは、最初の2列の孔の深さが増加した場合に何が起こるかを示す。前列の孔の深さが5mmの連続増分で増加しつつ、中央列の孔の深さが2.5mmの増分で増加している。後列の孔の深さは、全ての場合で5mmと仮定している。孔の深さが増加すると、その孔またはアパーチャを通るフローを低下させる。従って、より深い孔の下方での堆積レートは、減少する傾向がある。しかしながら、一定の総質量フローの場合(シミュレーションで仮定したように)、浅い孔を持つ孔を通るフローは増加する。これは、図14において、その孔の深さが同じであっても後列に対して個々のピークが増加する理由である。基板移動方向で孔深さが減少したシャワーヘッドが、立下りエッジよりも急峻でない立上りエッジを有する非対称堆積レートプロファイルをもたらすことが判る。
【0098】
図15は、3つの孔列を備え、前列の孔の中心軸がシャワーヘッドプレート表面の直交線に対して非ゼロの角度をなすシャワーヘッドについて堆積レートプロファイルを示す。こうしたシャワーヘッドの平面図および断面図を図16に示す。矢印は、基板移動方向を示す。図15において0°カーブは、全ての孔がシャワーヘッドプレート表面に対して直交する中心軸を有する対称な場合を示す。次に続くカーブは、前列の孔の中心軸がシャワーヘッドプレート表面に直交する方向に対して非ゼロの角度(15°〜60°)を形成している場合の堆積レートプロファイルを示す。孔がシャワーヘッドの長手方向に対して平行な軸の周りに、基板移動方向とは反対方向に回転していると仮定している。こうした角度では、ガスは、到来する基板に向けて注入される。図15に示す結果から、こうした回転が堆積レートプロファイルの立上りエッジの広がりを生じさせ、肩部が立上りエッジで出現すると結論できる。
【0099】
図17は、シャワーヘッドと基板との間の距離が10mmから50mmまで5mmステップで変化した場合の堆積レートプロファイルの発展を示す。シャワーヘッドは、3つの孔列を備えた対称型であると仮定している。シャワーヘッドと基板との間の距離が増加すると、堆積レートプロファイルの広がりをもたらす。さらに、その距離が充分に短くなると、各列に対する個々のピークは明確に見えるようになる。最後に、各プロファイル下方の面積で判定すると、シャワーヘッドと基板との間の距離が減少した場合、材料利用効率は増加する。
【0100】
図18は、単一のポンプポートがシャワーヘッド中心に対向する場所からシャワーヘッド前端に向けて移動した場合の堆積レートプロファイルへの影響を示す。赤色カーブは、対称な場合を示し、ポンプポートは対称シャワーヘッドの中央列に対向配置される。次に続くカーブは、ポンプポートをシャワーヘッド前端へ移動すると、堆積レートプロファイルに対して大きく影響を及ぼし、よりいっそう非対称になることを示す。この影響の理由は、プロセスチャンバ内のキャリアガスフローラインの変更である。従って、ポンプポート方向のガス層流がシャワーヘッド前端に向けて偏向する。対流輸送される有機分子は、同じ経路および偏向に追従する。ポンプポートの位置に関して、多くの選択肢がある。一般に、堆積レートプロファイルの非対称を増加させるために、ポンプポートは、好ましくは、キャリアガスフローがシャワーヘッド前端に向けて偏向するように配置される。しかしながら、これは、幅広の基板(即ち、基板移動方向に対して垂直な方向の大きなサイズのもの)の場合に幾つかの課題を提示するであろう。その場合は、基板の幅全体に沿って同じ偏向の層流を維持することが困難であるからである。
【0101】
図19は、シャワーヘッドプレートと基板との間にある角度変化についての堆積レートプロファイルへの影響を示す。赤色カーブは、シャワーヘッド表面が基板表面と平行である場合についての堆積レートプロファイルを示す。他のカーブは、シャワーヘッド表面と基板表面との間の非ゼロ角度(15°と30°)である場合での堆積レートプロファイルを示す。この角度が増加すると、非対称堆積レートプロファイルをもたらすことが判る。
【0102】
有機層を堆積するために使用可能な代替の薄膜堆積手法は、真空熱蒸着またはOMBDである。この手法は、細長い蒸発ソースに対してほぼ直交する方向に直線移動する基板を用いたインラインシステム配置にうまく適応できる。OVPDとの主な相違点は、輸送される有機種(species)の移動に大きく影響するキャリアガスの不在の場合である。OVPDでは、プロセスガスは連続体として考えることができ、そのフローがナビエ・ストークス(Navier-Stokes)方程式を用いてモデル化できる。OMBDでは、有機分子の長い平均自由行程のため、有機ガスは、連続体として取り扱うことができない。そのフローは、分子力学の原理を用いて解ける。これにもかかわらず、インラインOMBDシステムでの堆積レートプロファイルを予め決定することも可能である。
【0103】
OMBDプロセスにおいて、蒸発ソースの機能は、2つのステージに分割でき、即ち、ソース材料の昇華による蒸気発生と、堆積チャンバ内へのこの蒸気の放出である。これらの2つのステージの継続を編成するために種々の方法がある。
【0104】
・両方のステージが同時に生じ、即ち、蒸気は、堆積チャンバ内へ直接発生できる。
【0105】
・両方のステージが互いに直接追従できる。この場合、蒸気は、アパーチャが開けられたプレートによって主要な堆積チャンバから分離した放出チャンバ内で発生する。蒸気は、これらのアパーチャを通じて堆積チャンバ中に注入される。
【0106】
・両方のステージは物理的に分離できる。蒸気は、蒸発チャンバ内で発生できる。それは、この蒸発チャンバから、アパーチャ付きプレートによって主要な堆積チャンバから分離した放出チャンバへ拡散する。蒸気は、これらのアパーチャを通じて堆積チャンバ中に注入される。蒸発チャンバと放出チャンバとの間の経路は、簡単なバッフル(baffle)とすることができ、あるいは、それはより複雑な配置形状を有してもよい。
【0107】
こうしたシステムでの堆積レートプロファイルを制御することは、蒸気が発生する方法とは直接関係せず、むしろ有機分子が堆積チャンバ中に注入される方法に関係する。従って、放出チャンバを主要な堆積チャンバから分離しているアパーチャ付きプレートの配置形状だけについてここでは検討する。放出チャンバは、ソース材料の蒸気で均一に充填されており、それが発生する方法とは独立している。
【0108】
真空蒸発を記述する余弦放出則の結論は、ポイント蒸発ソースに対する基板上の位置の関数として、ラジアル層厚(d)分布の数学的記述である。
【0109】
【数1】

【0110】
ここで、lはポイントソースからのラジアル距離、hはポイントソースからの垂直距離、dはポイントソース下方、即ち、ポイントソースからゼロのラジアル距離(l=0)での厚さである。この関係および検討した配置形状の概略図を図20に示す。堆積レートrは最終厚さdに正比例し、この関係は空間的堆積レートプロファイルr(x)を規定する。ポイントソースセルを用いると、l/h>2の場合、基板上の所定位置での堆積レートは、ポイントソース下方の基板上の位置でのレートの10%未満である。
【0111】
実際の蒸発ソースにおいて、放出チャンバを堆積チャンバから分離しているプレートの各アパーチャは、並んで配置された複数のポイントソースとして考えられる。そして、最終の堆積厚さは、各ポイントソースセルの重ね合わせ効果である。従って、最終の空間的堆積レートr(x)は、各ポイントソースで発生するプロファイルの重ね合わせである。
【0112】
その結果、アパーチャの配置形状およびプレートと基板との間の距離hを慎重に選択することによって、空間的堆積レートプロファイルr(x)の形状を制御することが可能になる。
【0113】
図21は、非対称堆積レートプロファイルを提供するように設計されたアパーチャ配置形状の断面を示す。図示した例では、アパーチャのエッジは、前端では角度α<90°、後端では角度β>90°で切断されている。このカットは、分子フローが到達できる最大横方向距離に渡って正確な制御を可能にする。lF,maxは、プロファイルの前端で到達可能な最大距離であり、lT,maxは、プロファイルの後端で到達可能な最大距離である。これらは、図21において図形的に定義される。下記の式が示される。
【0114】
【数2】

【0115】
ここで、tはプレート厚、oはアパーチャ下部開口である。
【0116】
図20から判るように、漸進的に増加する非対称堆積レートプロファイルが、大きなlF,max/(h+t)によって定義される。これは、大きなo、小さなt、小さなαを用いて得られる。後端での堆積レートの急激な低下が小さなlT,max/(h+t)に対応している。これは、小さなo、大きなt、大きなβを用いて得られる。
【0117】
対応する空間的堆積レートプロファイルr(x)を図22に概略的に示しており、このアパーチャ形状がこうした非対称堆積レートプロファイルをどのように提供できるかを説明する。実際のプロファイルは、限界l,lの展開を位置とともに考慮して、ポイントソースの式をアパーチャの下部開口に沿って積分することによって得られる。基板を、図21の左(前側)から右(後側)へ一定速度で移動することによって、空間的堆積レートプロファイルr(x)は、同等な形状を持つ時間的堆積レートプロファイルr(t)に変更できる。
【0118】
図21は、インラインOMBD堆積システムでの堆積レートプロファイルを制御するために使用できる配置形状の一例を示す。アパーチャ付きプレートおよび堆積チャンバの他の配置形状が、同じ目標に到達する、即ち、所定の堆積レートプロファイルを実現するために使用できる。例えば、図21において、アパーチャ付きプレートは、基板の面に対して平行である。しかしながら、プレートと基板との間に非ゼロの角度を設けることによって、チャンバ高さhを変化させることが可能である。代替または追加で、アパーチャ付きプレートは、より薄いアパーチャ付きプレートの重ね合わせで置換できる。連続したプレート間の距離、アパーチャ形状、およびこれらのプレート間の相対位置は、慎重に管理でき、図21に関連して説明したものと同様な効果が得られる。
【0119】
本説明では、細長いソースの長手エッジ(長手方向)に沿った第3の寸法について考慮しなかった。この方向に沿ったアパーチャの設計は、堆積レートプロファイルに影響しないであろう。それは、その長手方向に沿った厚さ均一性に影響するだけである。従って、それは、他の制約、例えば、放出チャンバが発生した蒸気で充填される方法に従って設計してもよい。
【0120】
(実験例)
図22(a)と図22(b)は、インラインOVPDで堆積したペンタセン薄膜をベースとした典型的なトップコンタクト型OTFTについて測定した出力カーブおよび伝達(transfer)カーブを示す。堆積レートプロファイルは、始め(立上りエッジ)での堆積レートの緩慢な増加と、終わり(立下りエッジ)での緩慢な減少とを備えた対称プロファイルであり、さらに対称なシャワーヘッドを使用し、シャワーヘッドと基板との間の距離を増加させ、堆積プロファイル(図17に示すように)を広げた。トランジスタ特性は、0Vに近いVONを示す。急峻なサブスレショルドスロープ(<0.4V/dec)および無視できるヒステリシスは、高い純度と低いトラップ密度を示す。このデバイスの飽和移動度は、1.01cm/Vsである。
【0121】
こうしてOTFT特性が、本発明に係るインラインOVPDを用いて準備した大部分のペンタセン膜で観測され、これらはペンタセン膜のリニア堆積速度とは全く独立していると思われる。これは、図23で観察でき、85個の異なるサンプルについて測定した、これらのペンタセン薄膜のリニア堆積速度に対するトップコンタクト型TFT飽和移動度を示す。全ての移動度が、0.6〜1.5cm/Vsの範囲である。この広がりは、主として他の堆積条件、例えば、基板温度およびチャンバ圧力など(全ての実験で等しくはない)の影響によって説明できる。図23で判るように、トランジスタ特性は、最高の成長速度でも優秀なままである。
【0122】
図24は、1つの基板上に用意した7個の異なるトランジスタについて測定した重畳伝達カーブを示すもので、ペンタセン膜を91A/sの平均堆積レートに対応した910μm/sのリニア堆積速度で成長した。これらは、移動度μ=1.11±0.07cm/Vs、閾値V=−4.6±0.2V、オンセット電圧VON=0.8±0.6Vを有する。小さな標準偏差は、極めて高い速度で成長したペンタセンでコートされた同じウエハ上で製造したOFETの良好な再現性を示す。これらの特性は、本発明に係るインラインOVPDシステムを用いて堆積したペンタセン薄膜が、有機回路を製造するための要求に適合することを示す。この観測結果は、直観で分かるものではない。この分野では、堆積レートの増加は、一般に電気的特性の悪化を伴うことが広く認識されているためである。実際、堆積レートの増加は、誘電体上での第1ペンタセン単分子層の形成の際、より高い結晶粒核形成密度を生じさせる。このことは、この単分子層の好ましくない結晶形態(morphology)をもたらすものであり、これはOFETでの電荷キャリアの輸送にとって本質的である。本発明に係る方法において、これらの第1単分子層は、低い堆積レートで形成される。第1単分子層のこの低速形成は、極めて高い速度で成長した場合でも、本発明に係る方法に従って成長したペンタセン膜の良好な電気的性能にとって要点である。
【0123】
本発明の実施形態において、2つ(又はそれ以上)の直線状シャワーヘッドを基板移動方向に連続的に設置することができ、第1材料が第1シャワーヘッドによって供給され、第2材料(例えば、第1材料とは異なるもの)が第2シャワーヘッドによって供給される。連続的なシャワーヘッド及び/又はチャンバの特性を適応させることによって、部分的に重なる2つの連続的な堆積レートプロファイルを得ることができる。これは、図25に概略的に示す。
【0124】
こうした手法が、例えば、OLEDの製造プロセスで好都合に使用できる。OLED構造において、再結合ゾーン(両方の電荷キャリアが発光再結合する場所)は、極めて狭くでき、例えば、正孔輸送層(HTL)と発光層(EL)との間の鋭い界面に配置される。低分子量有機半導体をベースとしたOLEDの特性を改善するために、再結合ゾーンは、例えば、この鋭い界面を、再結合ゾーンに隣接した2つの材料の混合物を含む領域で置換することによって広げることができる。この手法は、OLEDの効率および寿命を大きく増加できることが判った。
【0125】
例えば、文献(F. Lindla et al in "Layer cross-fading at organic/organic interfaces in OVPD-processed red phosphorescent organic light emitting diodes as a new concept to increase current and luminous efficacy", Mater. Res. Soc. Symp. Proc. Vol. 1154, 2009)では、より幅広の再結合ゾーンがOVPDを用いて形成できることが報告されている。より詳細には、第1材料の濃度が減少しつつ、第2材料の濃度が増加するクロスフェード(cross-fade)ゾーンが形成できる。こうしたクロスフェードゾーンを含むOLED構造を用いて、デバイス効率の大きな増加を実証した。OLED構造を製造するために、1つのシャワーヘッドを装着した静的なOVPDシステムを使用した。クロスフェードゾーンを実現するために、堆積すべき材料パウダーを収納した個々のソースセルにより流れるキャリアガスの量を微細に調整することによって、プロセスガス中の個々の濃度を徐々に変更しながら、必要な材料を共堆積(co-deposit)した。この手法は、極めて安定した有機フラックスおよび優れたガスフロー制御を必要とする。
【0126】
本発明の実施形態において、インラインOVPDシステム反応器には2つの連続したシャワーヘッドを装着可能であり、例えば、各シャワーヘッドは、緩慢な立上りエッジおよび緩慢な立下りエッジを持つ堆積レートプロファイルを提供する。第1材料について第1堆積レートプロファイルr1をもたらす第1シャワーヘッドにより第1材料が供給可能であり、第2材料について第2堆積レートプロファイルr2をもたらす第2シャワーヘッドにより第2材料が供給可能である。シャワーヘッドの構成及び/又はチャンバ配置形状は、図25に示すように、各シャワーヘッドの個々の堆積レートプロファイルr1,r2の部分重なり(重ね合わせ)が存在するように慎重に選択できる。
【0127】
連続したシャワーヘッドの下方で一定速度で移動する基板が、こうした堆積レートプロファイルを提供し、クロスフェード界面を有する二重層構造でコートされるであろう。さらに、より多くのシャワーヘッドをプロセスラインに沿った上流側及び/又は下流側に追加することによって、その構造の上に層を追加できる。そして、各シャワーヘッドが、1つの材料(または、2つの材料の一定混合物)のみを供給する。この手法は、クロスフェードゾーンを持つOLED構造を形成するために好都合に形成できる。この手法により、複雑な多層構造の再現性のある構築が可能になる。さらに、それは、完全にロール・ツゥ・ロール式と互換であり、ウエハでの熱負荷の問題およびソース間の交差汚染の問題を低減する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インライン堆積システムにおいて、ある層厚の有機材料層を基板上に形成する方法であって、
有機材料は、インジェクタの複数の開口を経由して所定の堆積レートプロファイルで基板上に堆積され、インジェクタは基板に対して相対移動しており、
堆積レートプロファイルは、基板上に、所定の第1平均堆積レートで有機材料層の少なくとも1つの第1単分子層を堆積するために用意した所定の第1堆積レート範囲と、基板上に設けられた少なくとも1つの第1単分子層の上に、所定の第2平均堆積レートで有機材料層の少なくとも1つの第2単分子層を堆積するために用意した所定の第2堆積レート範囲とを含む、一定でない堆積レートプロファイルであり、
第1平均堆積レートは第2平均堆積レートより小さく、
インジェクタの開口を経由して基板に向かう有機材料の注入は、所定の堆積レートプロファイルを実現するために制御されることを特徴とする方法。
【請求項2】
所定の堆積レートプロファイルは、0.1nm/s未満の所定の第1平均堆積レート、および1nm/sより大きい所定の第2平均堆積レートで特徴付けられる請求項1記載の方法。
【請求項3】
所定の堆積レートプロファイルは、非対称の堆積レートプロファイルであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
所定の堆積レートプロファイルは、立上りエッジおよび立下りエッジを有し、立下りエッジは、立上りエッジより実質的に急峻である請求項3記載の方法。
【請求項5】
有機材料を運ぶガスが、インジェクタの複数の開口を経由して供給され、
インジェクタの開口を経由した有機材料の注入は、運ぶガスのガスフローを制御することによって制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
インジェクタによる有機材料の注入を制御することは、インジェクタの複数の開口の少なくとも一部のパラメータを適合させることを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
パラメータを適合させることは、複数の開口の少なくとも一部のサイズ、形状、向き、深さ及び/又は場所を適合させることを含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
パラメータを適合させることは、複数の開口の少なくとも一部の間の距離を適合させることを含むことを特徴とする請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
基板に向かうガスフローを制御することは、インライン堆積システムのプロセスチャンバの配置形状パラメータを適合させることを含むことを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
配置形状パラメータを適合させることは、インジェクタと基板との間の距離を適合させることを含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
配置形状パラメータを適合させることは、基板表面とインジェクタ表面との間の角度を適合させることを含むことを特徴とする請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
配置形状パラメータを適合させることは、ポンプポートの位置を適合させることを含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
有機材料は、有機半導体材料であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
有機薄膜トランジスタを形成するためのプロセスにおける、請求項1〜13のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項15】
インライン堆積システムで使用されるインジェクタであって、
インジェクタは、少なくとも第1孔列および第2孔列を備え、
該列は、インジェクタの長手方向に互いに平行に設けられ、
第1列は、第2孔列よりもインジェクタの前端に接近しており、
インジェクタには、請求項1に係る所定の堆積レートプロファイルに従って、第1孔列および第2孔列による注入を制御するための制御機構が設けられているインジェクタ。
【請求項16】
制御機構は、第2列の孔間の距離と比べて、第1列の孔間でより大きな距離を有することを特徴とする請求項15記載のインジェクタ。
【請求項17】
制御機構は、第2列の孔のサイズと比べて、第1列の孔のより小さなサイズを有することを特徴とする請求項15または16記載のインジェクタ。
【請求項18】
制御機構は、第2列の孔の深さと比べて、第1列の孔のより大きな深さを有することを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載のインジェクタ。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに記載のインジェクタを備え、
請求項1〜13のいずれかに従って、ある層厚の有機材料層を基板上に形成するためのインライン堆積システム。
【請求項20】
インジェクタは、インライン堆積システムに対して取り外し可能に装着されている請求項19記載のインライン堆積システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22(a)】
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【図22(b)】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2012−528245(P2012−528245A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512218(P2012−512218)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063342
【国際公開番号】WO2010/136082
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(504346525)
【出願人】(501045098)ユニヴェルシテ・カトリーク・ドゥ・ルーヴァン (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE CATHOLIQUE DE LOUVAIN
【Fターム(参考)】