説明

有機物の除去方法及び有機物の除去装置

【課題】低ダメージで低コストなレジストの除去方法及び除去装置を提供する。
【解決手段】基板上の有機物を除去するための有機物の除去方法であって、触媒反応部内に、HガスとOガス又はHガスを導入し、HガスとOガス又はHガスを触媒と接触させることにより生成したHOガスを触媒反応部から噴出させ、噴出したHOガスにより基板上の有機物を除去することを特徴とする有機物の除去方法を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物の除去方法に関するものであり、特に、半導体製造プロセスにおける半導体基板の表面に付着したフォトレジスト等の有機物の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、通常フォトリソグラフィ工程を行なうことによりパターン等の形成が行なわれる。このフォトリソグラフィ工程は、半導体基板の表面に高分子材料により構成される感光性樹脂からなるフォトレジストを塗布し、プリベークを行なった後、露光装置により露光、現像を行ない、レジストパターンを形成する。このように形成されたレジストパターンは、エッチングやイオン注入等におけるマスクとして用いられる。
【0003】
エッチングやイオン注入等を行なった後においては、レジストパターンは除去する必要があり、一般には、酸素プラズマを用いたアッシングにより、レジストパターンが除去される。
このアッシングは、酸素プラズマ中の酸素ラジカル(酸素原子)によりレジスト等の有機物を酸化して除去するものである。
【0004】
しかしながら、通常のアッシングを行なうだけでは、レジストパターンを十分に除去することができず、特許文献1〜4、非特許文献1においては、レジスト残りを減少させたアッシング方法、プラズマダメージの少ないアッシング方法等が開示されている。
【特許文献1】特開2004−119539号公報
【特許文献2】特開2005−142418号公報
【特許文献3】特開2006−5181号公報
【特許文献4】特開2000−100800号公報
【非特許文献1】原子状水素を用いたレジスト除去,第5回Cat−CVD研究会講演予稿集,pp45−50,2008(発行年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各種プロセスを経た後のレジストパターン、特に、イオン注入等を行なった後のレジストパターンは、アッシングによって完全に除去することは困難であり、また、プラズマを用いるアッシングはプラズマを発生させるための機器や大量のエネルギーを必要とするため、高コストになりやすい。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みたものであり、プラズマを用いることなく、レジストパターン等の有機物を効率よく除去するための有機物の除去方法及び有機物の除去装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板上の有機物を除去するための有機物の除去方法であって、触媒反応部内に、HガスとOガス又はHガスを導入し、前記Hガスと前記Oガス又は前記Hガスを触媒と接触させることにより生成したHOガスを触媒反応部から噴出させ、噴出した前記HOガスにより前記基板上の前記有機物を除去することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、前記Hガス及び前記Oガスを導入する導入工程と、前記導入されたHガス及びOガスの導入を停止する停止工程と、を含み、前記導入工程、前記停止工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、前記Hガス及び前記Oガスの流量を増やす工程と、前記流量の増えたHガス及びOガスの流量を低下させる工程と、を含み、前記流量を増やす工程、前記流量を低下させる工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、前記Oガスを導入する導入工程と、前記Oガスの導入を停止する停止工程と、を含み、前記導入工程、前記停止工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、前記Oガスの流量を増やす工程と、前記Oガスの流量を減らす工程と、を含み、前記流量を増やす工程、前記流量を低下させる工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、前記触媒反応部内における前記Oガスの分圧を高くする工程と、前記触媒反応部内における前記Oガスの分圧を低くする工程と、を含み、前記Oガスの分圧を高くする工程、前記Oガスの分圧を低くする工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記Hガス及び前記Oガスを導入する導入工程は、前記触媒反応部にHガスの導入を開始する水素導入工程と、前記水素導入工程の後に、前記触媒反応部にOガスの導入を開始する酸素導入工程と、からなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記導入されたHガス及びOガスの導入を停止する停止工程は、前記触媒反応部にOガスの導入を停止する酸素停止工程と、前記酸素停止工程の後に、前記触媒反応部にHガスの導入を停止する水素停止工程と、からなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記繰り返しは、1Hz〜1kHzであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記有機物は、フォトレジストであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記有機物は、ドライエッチング工程後又は、イオン注入工程後のフォトレジストであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記触媒反応部は複数設けられており、前記基板に対向して二次元的に配列されているものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記触媒は、平均粒径0.05〜2.0mmの粒子状の担体に、平均粒径1〜10nmの微粒子成分を担持させたものであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記触媒は、酸化物セラミックスからなる粒子状の担体に、白金、ルテニウム、イリジウム又は銅のうち、少なくとも一つの金属の微粒子成分を担持させたものであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、反応室と、前記反応室内に設けられた基板を支持するための基板支持部と、HガスとOガス又はHガスを導入し、前記Hガスと前記Oガス又は前記Hガスを触媒と接触させることにより生成したHOガスを前記反応室内に噴出させる触媒反応部と、を有し、前記基板に付着している有機物に対し、前記HOガスを噴出することにより、前記有機物の除去を行なうことを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、反応室と、前記反応室内に設けられた基板を支持するための基板支持部と、HガスとOガスとを独立して導入し、前記Hガスと前記Oガスとを触媒と接触させることにより生成したHOガスを前記反応室内に噴出させる触媒反応部と、前記Hガス及び前記Oガスの導入を制御するため各々に設けられた制御バルブと、前記制御バルブを制御する制御手段と、を有し、前記基板に付着している有機物に対し、前記HOガスを噴出することにより、前記有機物の除去を行なうことを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記触媒反応部は、反応ガスを噴出するための先端部が漏斗状に開口した噴出口を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記噴出口のから噴出した反応ガスのうちエネルギーの高い反応ガスを選択するため先端部が開口した円錐状又は長円の錐状の選択壁が設けられていることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、前記噴出口と選択壁の間の領域を排気するための真空ポンプが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、プラズマを用いることなく、レジストパターン等の有機物を効率よく除去するための有機物の除去方法及び有機物の除去装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、以下に説明する。尚、本願における有機物の除去方法は、基板処理方法の一種に含まれるものである。
【0028】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態は、本発明に係る有機物の除去方法及び装置に関するものである。本実施の形態について、発明に至った経緯等を含め説明する。
【0029】
レジストパターン等の有機物を除去するためにアッシング技術は、長年に広く利用されている技術である。しかしながら、アッシングを行なった後であっても、図1(a)に示されるように、パターン301上の中央部にライン状に残るレジストの残渣302、図1(b)に示されるようにパターン301上にランダムに残るレジストの残渣303、図1(c)に示されるように曲がったパターン301のエッジ部分の上に残るレジストの残渣304が生じてしまう。
【0030】
これらレジストの残渣302〜304は、特に、ドライエッチングや高ドーズ量のイオン注入の後において発生しやすい傾向にあり、溶剤等を用いた洗浄工程を追加して行なうことにより、これらレジストの残渣302〜304を除去している。
【0031】
このような、レジストの残渣302〜304は、洗浄工程を追加することにより除去することは可能であるが、このような追加工程はコストアップにつながり、低価格化が求められる半導体素子の製造方法としては好ましくはない。即ち、フォトリソグラフィ工程を行なう度に、このような洗浄工程を追加した場合、例えば、半導体素子の製造にフォトリソグラフィ工程を30回以上行なう場合では、洗浄工程の追加も30回以上必要となり、この分の費用と時間が半導体素子の製造コストとして加算されてしまう。よって、半導体素子の製造コストの観点から、このような追加した洗浄工程を行なう必要のない製造プロセスが望ましい。
【0032】
次に、このようなレジストの残渣302〜304が生じるメカニズムについて説明する。レジストパターンを形成した後、このレジストパターンをマスクとして、イオン注入やドライエッチングを行なうと、レジストパターンもダメージを受け、レジストパターンを構成する材料が変質してしまい、通常のアッシング等では完全には除去することができず、レジストの残渣302〜304として残ってしまう。また、ドライエッチング工程においては、エッチングされた基板等を構成する材料がレジストパターンの側面等に再付着してしまい、これら再付着した材料はアッシングでは容易に除去することができないため、特に図1(c)に示すようなレジストの残渣304として残ってしまう。
【0033】
このようなレジストの残渣302〜304を除去するためには、フッ素や水素を用いる方法もあるが、腐食性の問題やコンタミネーションの問題から、半導体素子の製造プロセスとしては十分満足のいくものではない。
【0034】
このような観点から、半導体素子の製造プロセスにおいては、完全にレジストの残渣が除去されること、金属配線等を腐食する腐食性の強いガスを使わないこと、装置のコストや製造コストが低コストであることが必要となる。
【0035】
本実施の形態は、発明者による上記検討の結果見出したものである。即ち、HガスとOガスとを触媒表面で反応させることにより、高温のHOガスを発生させ、この高温のHOガスを噴出させることにより、基板上のレジストパターンを高速に酸化させて、完全に除去することが可能であることを見出したのである。
【0036】
次に、図2及び図3に基づき本実施の形態における有機物の除去方法に用いる装置について説明する。図2は、有機物の除去装置の全体構成図であり、図3は、この装置の触媒反応部の構成図である。
【0037】
この装置は、減圧可能なチャンバー320内に、HOガス原料供給部317に接続されたHOガス原料となるガス導入口313及び反応ガス(HOガス)噴出口314を有する触媒反応部310及び基板322を支持する基板ホルダー321を配置したものである。チャンバー320は、排気管323を介してターボ分子ポンプ324及びロータリーポンプ325に接続されている。
【0038】
触媒反応部310は、例えばステンレス鋼などの金属により構成された円筒状の触媒容器ジャケット311内に、セラミックス又は金属等の材料により構成された触媒反応容器315を収納し、噴出口314を設けた構成のものである。
【0039】
触媒反応部310内には、微粒子状の担体に超微粒子状の触媒成分を担持させた触媒312が配置される。触媒反応部310は、HOガス原料を導入するためのガス導入口313を介してHOガス原料供給部317に接続されており、また、噴出口314の前段には、触媒312を押さえるために金属メッシュ316が配置されている。
【0040】
本実施の形態において、触媒312としては、平均粒径0.05〜2.0mmの微粒子状の担体に、平均粒径1〜10nmの超微粒子状の触媒成分を担持したものや、平均粒径が0.1mm〜0.5mm程度の、白金、ルテニウム、イリジウム、銅等の金属粉末等を使用することができる。担体としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物の微粒子、即ち、酸化物セラミックスの微粒子を使用することができる。好ましい触媒としては、例えば酸化アルミニウム担体上に白金ナノ粒子を担持させたもの、特に多孔質γ−アルミナを500〜1200℃で加熱処理してその表面構造を維持したままα−アルミナ結晶相に変換した担体に1〜20重量%程度の白金を担持させたもの(例えば、10wt%Pt/γ−Al触媒)、等が挙げられる。具体的には、触媒として微粒子状のアルミナに白金超微粒子を担持させたものを使用することが好ましい。
【0041】
本実施の形態では、上記のように、触媒反応部310内の触媒312に金属酸化物薄膜の酸素源となるHガスとOガスの混合ガス又はHガスを各々のガス導入口313より導入し、微粒子状の触媒312と接触させて得られた高エネルギーのHOガス327を触媒反応部310の先端に設けられた反応ガス(HOガス)噴出口314から噴出させることによって、大量の電気エネルギーを必要とすることなく、各種の基板上に低コストで効率良く、高温のHOガスを供給することができる。このような、大量の発熱を伴う化学反応は、酸素源として特定のガスを選択し、触媒を使用することによって実現することができる。尚、担体の形状は、スポンジ状等の多くの孔を有する形状や、ハニカム状等の貫通孔を有する形状等のバルク形状であってもよい。また、担体に担持される白金、ルテニウム、イリジウム、銅等の触媒物質の形状は、微粒子状に限られず、例えば、膜状であっても良い。具体的には、触媒物質の表面積を大きくしたものであれば、本実施の形態における効果が得られるため、例えば、上述の担体の表面に触媒物質の膜を形成したものであれば、触媒物質の表面積を大きくすることができ、微粒子状の場合と同様の効果を得ることができるからである。
【0042】
この触媒反応部310内に、HOガス原料供給部317に接続されたHOガス原料のガス導入口313から、HガスとOガスの混合ガス又はHガスからなるHOガス原料を導入すると、微粒子状の触媒312によりHガスとOガスとの化合反応、又はHガスの分解反応が行われる。これらの反応は大量の発熱を伴うものであり、この反応熱により加熱された高温のHOガス327が、反応ガス噴出口314から基板ホルダー321に保持された基板322に向かって勢いよく噴出する。この噴出した高温のHOガス327は、基板322上に形成されているレジストパターンを酸化して除去する。尚、本実施の形態においては、触媒反応部310の噴出口314と基板322との距離は数cmである。
【0043】
本実施の形態における有機物の除去方法は、レジストパターンの除去以外にも、基板等に付着した各種有機物の除去に適用可能である。
【0044】
本実施の形態について、より具体的に説明する。
【0045】
平均粒径0.3mmのγ−Al担体に1.0gの塩化白金酸六水和物0.27gを含浸担持した後、大気中450℃において4時間焼成することにより、触媒312となる10wt%Pt/γ−Al触媒を得た。この触媒312を触媒反応部310内に、約0.02g充填し、金属メッシュ316により覆った後、チャンバー320内に設置する。
【0046】
有機物の除去を行なう試料は、例えば図4に示すようにSi基板331上に露光光となるKrFの波長に対応したポジ型レジストを塗布することによりポジ型レジスト膜332を形成したものに、Asを60keV、ドーズ量が5×1015cm−2でイオン注入したものである。
【0047】
この後、試料をチャンバー320内の基板322の位置に設置し、減圧した後室温で、触媒反応部310のHOガス原料導入口313にHガスとOガスとの混合ガスを導入した。このときのガス流量比は、H:O=2:1であり、チャンバー320内の圧力が10Torrとなるように調整する。
【0048】
ガスとOガスとの混合ガスの全流量が100sccmにおいて、上記Si基板331上におけるポジ型レジスト膜32の除去を行う。
【0049】
また、図5に示すような試料を作製し、上記と同様に有機物の除去を行なう。具体的には、Si基板333上に、膜厚6nmのSiOからなるゲート酸化膜334、SiOからなる素子分離領域335を形成した後、基板温度600℃に設定し、SiHガスを用いた減圧CVD法により、多結晶シリコン膜336を100nm成膜する。この多結晶シリコン膜336上にフォトレジストを塗布し、プリベーク、露光装置による露光、現像を行ない、レジストパターン337を形成し、この後、ClとHBrガスを用いてドライエッチングによりレジストパターン337の形成されていない領域の多結晶シリコン膜336を除去することにより試料を作製する。
【0050】
この試料をチャンバー320内の基板322の位置に設置し、上記と同様の方法によりレジストパターンの除去を行う。
【0051】
本実施の形態における有機物の除去方法は、腐食性のガス等を用いることなく、製造コストや装置コストを低く抑えることができ、更には、基板等にプラズマダメージを与えることがない。
【0052】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、HガスとOガスとを分離して供給する触媒反応部を有する装置を用いた基板処理方法である。
【0053】
本実施の形態の基板処理方法に用いる装置を図6に示す。この装置における触媒反応部410は、例えばステンレス鋼などの金属により構成された円筒状の触媒容器ジャケット411内に、セラミックス又は金属等の材料により構成された触媒反応容器415を収納し、噴出口414を設けた構成のものである。触媒反応部410内に、微粒子状の担体に超微粒子状の触媒成分を担持させた触媒412が配置されている。触媒反応部410に接続されているHガス導入口403とOガス導入口413は、制御バルブ433、443を介し、不図示のHガス供給部及びOガス供給部に接続されており、また、触媒412を押さえるために金属メッシュ416が配置されている。また、制御バルブ433及び443の開閉及び流量は制御手段468により制御される。
【0054】
この触媒反応部410内に、Hガス導入口403と、Oガス導入口413より、HガスとOガスを導入する。これにより、微粒子状の触媒412によりHガスとOガスとの化合反応が行われる。これらの反応は大量の発熱を伴うものであり、この反応熱により加熱された高温のHOガス427が、反応ガス噴出口414から不図示の基板ホルダーに保持された基板422に向かって勢いよく噴出する。この噴出したHOガスにより、第1の実施の形態における有機物の除去に用いることができる。
【0055】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、複数の触媒反応部を有する装置を用いた基板処理方法である。図7に基づき本実施の形態に用いられる装置の構造について説明する。
【0056】
本実施の形態に用いられる装置は、大面積の基板等の基板処理に対応すべく、触媒反応部となる触媒反応容器511が複数設けられている。各々の触媒反応容器511内には、触媒512が設置されており、ガス導入口513より、HガスとOガスとの混合ガス等が供給される。ガス導入口513より導入されたHガスとOガスとの混合ガスにより、触媒反応容器511内の触媒512において大量の発熱を伴った化学反応が行なわれ、高温のHOガスが生成される。また、触媒反応容器511の触媒512を介したガス導入口513と反対側には、噴出口514が設けられており、触媒512により生成された高温のHOガスがチャンバー520内に勢いよく噴出する。噴出口514は、先端部が漏斗状、即ち、先端になるに従い口径が広がるような形状で形成されている。尚、チャンバー520内には、ステージ521上に基板522が設置されており、この基板522に向けてHOガスが噴出される。尚、チャンバー520内は、排気口523より不図示の真空ポンプにより矢印aに示す方向に排気されている。
【0057】
本実施の形態の基板処理方法に用いる装置は、噴出口514から噴出される高温のHOガスのうち高エネルギーの高温のHOガスがチャンバー520内に供給されるように、先端部が開口した円錐状(漏斗状)の選択壁517が設けられており、選択壁517の開口部518より、高エネルギーの高温のHOガスが選択されて供給される。
【0058】
選択壁517により除去された高温のHOガスは低エネルギーであるものと考えられるため、触媒反応容器511の側面に設けられた排気口524より、不図示の真空ポンプにより矢印bに示す方向に排気される。
【0059】
本実施の形態における基板処理方法に用いられる装置は、第1の実施の形態に対応して用いることができ、大面積な基板においても均一な処理が可能である。
【0060】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第3の実施の形態に用いられる装置において、選択壁が設けられていない構成の装置を用いた基板処理方法である。
【0061】
図8に基づき本実施の形態に用いられる装置について説明する。この装置は、大面積の基板等に対応した装置であり、触媒反応部となる触媒反応容器611内に、複数の触媒612が設置されており、ガス導入口613より、HガスとOガスとの混合ガス等が供給される。ガス導入口613より導入されたHガスとOガスとの混合ガスにより、触媒612において大量の発熱を伴った化学反応が行なわれ、高温のHOガスが生成される。また、触媒612を介したガス導入口613と反対側には、噴出口614が設けられており、触媒612により生成された高温のHOガスがチャンバー620内に勢いよく噴出する。噴出口614は、先端部が漏斗状に形成されている。即ち、従い口径が広がるような形状で形成されている。チャンバー620内では、ステージ621上に基板622が設置されており、この基板622に向けてHOガスが噴出される。尚、チャンバー620内は、排気口623より不図示の真空ポンプにより矢印aに示す方向に排気されている。
【0062】
次に、本実施の形態に用いられる別の構成の装置について説明する。
【0063】
図9に示す装置は、各々の触媒612からチャンバー620内に噴出されるHOガスの噴出口614が複数設けられている構成の装置である。このように、複数の噴出口614を設けることにより、より均一な処理が可能となる。
【0064】
また、図10に示す装置は、各々の触媒612からチャンバー620内に噴出されるHOガスの噴出口614を複数設けると共に、さらに、噴出口614の形状を大きくした構成の装置である。
【0065】
ここで、図11及び図12に基づき、噴出口の形状と効能について説明する。図11は、第1の実施の形態において説明した装置における噴出口314であり、図12は、本実施の形態において説明した装置における噴出口614である。
【0066】
図11に示す噴出口314は、高い熱エネルギーのHOガスが低速で飛び出す構造のものであり、図12に示す噴出口614は、低い熱エネルギーのHOガスが高速で飛び出す構造のものである。よって、図12に示す噴出口614の形状とすることにより、噴出するHOガスの熱エネルギーを並進エネルギーに変換することができ、噴出するHOガスの速度を上げることができる。
【0067】
これにより、基板表面のプリカーサー衝突エネルギーを上げることができる。また、基板表面のプリカーサー分圧を相対的に上げることができる。また、熱エネルギーの高い分子が基板に衝突すると脱離しやすいため、熱エネルギーを低くすることにより、表面への付着しやすくすることができる。また、並進エネルギーを高くすることにより、クラスター状のプリカーサーを基板に衝突させることが可能となる。よって、基板処理のプロセスにあわせて最適な噴出口の形状を選択することにより、最適な基板処理を行なうことができる。更に、選択壁を設けた構成を含め、これらの中から選択することにより、より一層最適な基板処理をおこなうことができる。
【0068】
本実施の形態における基板処理方法に用いられる装置は、第1の実施の形態に対応して用いることができ、大面積な基板においても均一な処理が可能である。
【0069】
〔第5の実施の形態〕
第5の実施の形態は、特にHガスとOガスを分離して供給する場合において、間欠的に供給する基板処理方法である。
【0070】
図13に基づき本実施の形態における基板処理方法の原理について説明する。
【0071】
最初に、図13(a)に示すように、最初にHガスを導入する。これにより、本実施の形態において用いられる触媒であるPt触媒212の表面に吸着している物質を還元しクリーニングを行なうと共に、Pt触媒212表面にH原子を化学結合させる。
【0072】
ここで、図13(b)に示すように、Hガスの圧力が低下するとPt触媒212表面に付着したH原子の一部は脱離してしまうが、残りの一部はPt触媒212表面に留まる。
【0073】
次に、図13(c)に示すように、Oガスを導入する。
【0074】
ガスを導入することにより、図13(d)に示すように、O原子がPt触媒212に化学吸着し、O原子、H原子はともにPt触媒表面でマイグレーションする。
【0075】
この後、図13(e)に示すように、O原子とH原子とが化学反応し、HOとなりPt触媒212表面から脱離する。この化学反応は発熱反応であり、この反応により、Pt触媒212が1700℃程度まで温度上昇し、この熱エネルギーにより後述する成膜ガスとの気相反応がなされる。
【0076】
尚、Pt触媒212の表面からHOが脱離した後は、Pt触媒212の表面の脱離した領域に、再びO原子とH原子が吸着しHOを生成する触媒反応が繰り返される。
【0077】
即ち、PtとOとの結合エネルギーは、PtとHとの結合エネルギーよりも強く、Pt表面をOが完全に覆ってしまうと、触媒反応は進まなくなってしまう。このような現象は、OガスをHガスよりも早く導入することにより生じるものであることから、HガスをOガスよりも早く導入するか、少なくとも同時に導入することにより解消することが可能である。本実施の形態は、上記の知見に基づいたものである。
【0078】
次に、本実施の形態における基板処理方法について説明する。本実施の形態における成膜方法は、図6に示す成膜装置を用いて、図14に示すタイミングでOガス、Hガスを導入する。
【0079】
図14に示すように、最初に、Hガスを導入し、その後、Oガスを導入する。これにより、触媒反応部410内で高温のHOガスが生成される。
【0080】
この後、Hガス及びOガスの供給を停止する。
【0081】
この工程を繰返し行なうことにより、生成された高温のHOガス427が基板422に向けて噴射される。
【0082】
このプロセスでは、Oガスの供給を停止することにより触媒反応部410内において、触媒412の表面に付着しているO原子が減少し、触媒412の表面にH原子が付着しやすくなることにより、高温のHOガス427が効率よく生成される。
【0083】
更に理想的には、図15に示すように、最初に、Hガスを導入し、次に、Oガスを導入し、この後、Oガスの供給を停止し、次に、Hガスの供給を停止する。このように、最後にHガスの供給を停止することにより、触媒Ptの表面へのO原子の付着をより防ぐことが可能となり、より効率よく高温のHOガス427を生成することができる。
【0084】
上記のガスの間欠供給は、1Hzから1kHzの範囲で行なうことが好ましい。1Hz以下では、生産効率上問題があり、1kHz以上では、高温のHOガスを生成するための制御が困難となるからである。
【0085】
また、本実施の形態における基板処理方法では、Hガスは流したままの状態で、Oガスの制御を行なうことによっても同様の効果を得ることができ、更に、HガスとOガスとの分圧比を変化させることによっても同様の効果を得ることができる。
【0086】
また、本実施の形態における基板処理方法は、Hガスよりも先にOガスが供給されると、触媒反応が進まなくなることを防止するものであることから、図16に示されるように、HガスとOガスとがほぼ同時に供給される場合であっても、本実施の形態における基板処理方法による効果と同様の効果を得ることが可能である。また、HガスとOガスとが一定の分圧比で全圧を変動させた場合も同様の効果を得ることができる。
【0087】
尚、HガスとOガスとを全圧が一定で、一定の分圧比で継続して供給した場合であっても、高温のHOガスを生成することは可能であるが、高温のHOガスの生成効率の観点から、Oガスや成膜ガスを間欠的に供給することが好ましい。
【0088】
本実施の形態においては、Hガス及びOガスの間欠的に供給とは、Hガス又はOガスが供給されていない状態であってあっても、微量のHガス又はOガスが供給されている状態を含む概念である。
【0089】
本実施の形態における基板処理方法は、第1の実施の形態における有機物除去方法に適用可能である。
【0090】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】レジストの残渣の状況図
【図2】第1の実施の形態に用いられる基板処理装置の構成図
【図3】第1の実施の形態に用いられる触媒反応部の構成図
【図4】第1の実施の形態において処理される試料の構成図(1)
【図5】第1の実施の形態において処理される試料の構成図(2)
【図6】第2の実施の形態に用いられる基板処理装置の断面図
【図7】第3の実施の形態に用いられる基板処理装置の断面図
【図8】第4の実施の形態に用いられる基板処理装置の断面図
【図9】第4の実施の形態に用いられる別の基板処理装置の断面図(1)
【図10】第4の実施の形態に用いられる別の基板処理装置の断面図(2)
【図11】第1の実施の形態における噴出口部分の概要図
【図12】第4の実施の形態における噴出口部分の概要図
【図13】第5の実施の形態における処理プロセス説明図
【図14】第5の実施の形態における処理プロセスのタイミングチャート
【図15】第5の実施の形態における別の処理プロセスのタイミングチャート(1)
【図16】第5の実施の形態における別の成膜プロセスのタイミングチャート(2)
【符号の説明】
【0092】
310 触媒反応部
311 触媒容器ジャケット
312 触媒
313 ガス導入口
314 噴出口
317 HOガス原料供給部
320 チャンバー
321 ステージ
322 基板
323 排気管
324 ターボ分子ポンプ
325 ロータリーポンプ
327 高温のHOガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の有機物を除去するための有機物の除去方法であって、
触媒反応部内に、HガスとOガス又はHガスを導入し、前記Hガスと前記Oガス又は前記Hガスを触媒と接触させることにより生成したHOガスを触媒反応部から噴出させ、
噴出した前記HOガスにより前記基板上の前記有機物を除去することを特徴とする有機物の除去方法。
【請求項2】
前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、
前記Hガス及び前記Oガスを導入する導入工程と、
前記導入されたHガス及びOガスの導入を停止する停止工程と、
を含み、
前記導入工程、前記停止工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする請求項1に記載の有機物の除去方法。
【請求項3】
前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、
前記Hガス及び前記Oガスの流量を増やす工程と、
前記流量の増えたHガス及びOガスの流量を低下させる工程と、
を含み、
前記流量を増やす工程、前記流量を低下させる工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする請求項1に記載の有機物の除去方法。
【請求項4】
前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、
前記Oガスを導入する導入工程と、
前記Oガスの導入を停止する停止工程と、
を含み、前記導入工程、前記停止工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする請求項1に記載の有機物の除去方法。
【請求項5】
前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、
前記Oガスの流量を増やす工程と、
前記Oガスの流量を減らす工程と、
を含み、
前記流量を増やす工程、前記流量を低下させる工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする請求項1に記載の有機物の除去方法。
【請求項6】
前記触媒反応部内に、HガスとOガスとを独立して導入する有機物の除去方法であって、
前記触媒反応部内における前記Oガスの分圧を高くする工程と、
前記触媒反応部内における前記Oガスの分圧を低くする工程と、
を含み、
前記Oガスの分圧を高くする工程、前記Oガスの分圧を低くする工程を繰り返すことにより有機物の除去を行なうことを特徴とする請求項1に記載の有機物の除去方法。
【請求項7】
前記Hガス及び前記Oガスを導入する導入工程は、
前記触媒反応部にHガスの導入を開始する水素導入工程と、
前記水素導入工程の後に、前記触媒反応部にOガスの導入を開始する酸素導入工程と、
からなることを特徴とする請求項2に記載の有機物の除去方法。
【請求項8】
前記導入されたHガス及びOガスの導入を停止する停止工程は、
前記触媒反応部にOガスの導入を停止する酸素停止工程と、
前記酸素停止工程の後に、前記触媒反応部にHガスの導入を停止する水素停止工程と、
からなることを特徴とする請求項2または7に記載の有機物の除去方法。
【請求項9】
前記繰り返しは、1Hz〜1kHzであることを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載の有機物の除去方法。
【請求項10】
前記有機物は、フォトレジストであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の有機物の除去方法。
【請求項11】
前記有機物は、ドライエッチング工程後又は、イオン注入工程後のフォトレジストであることを特徴とする請求項10に記載の有機物の除去方法。
【請求項12】
前記触媒反応部は複数設けられており、前記基板に対向して二次元的に配列されているものであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載された有機物の除去方法。
【請求項13】
前記触媒は、平均粒径0.05〜2.0mmの粒子状の担体に、平均粒径1〜10nmの微粒子成分を担持させたものであることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の有機物の除去方法。
【請求項14】
前記触媒は、酸化物セラミックスからなる粒子状の担体に、白金、ルテニウム、イリジウム又は銅のうち、少なくとも一つの金属の微粒子成分を担持させたものであることを特徴とする請求項13に記載の有機物の除去方法。
【請求項15】
反応室と、
前記反応室内に設けられた基板を支持するための基板支持部と、
ガスとOガス又はHガスを導入し、前記Hガスと前記Oガス又は前記Hガスを触媒と接触させることにより生成したHOガスを前記反応室内に噴出させる触媒反応部と、
を有し、前記基板に付着している有機物に対し、前記HOガスを噴出することにより、前記有機物の除去を行なうことを特徴とする有機物の除去装置。
【請求項16】
反応室と、
前記反応室内に設けられた基板を支持するための基板支持部と、
ガスとOガスとを独立して導入し、前記Hガスと前記Oガスとを触媒と接触させることにより生成したHOガスを前記反応室内に噴出させる触媒反応部と、
前記Hガス及び前記Oガスの導入を制御するため各々に設けられた制御バルブと、
前記制御バルブを制御する制御手段と、
を有し、前記基板に付着している有機物に対し、前記HOガスを噴出することにより、前記有機物の除去を行なうことを特徴とする有機物の除去装置。
【請求項17】
前記触媒反応部は、反応ガスを噴出するための先端部が漏斗状に開口した噴出口を有することを特徴とする請求項15または16に記載の有機物の除去装置。
【請求項18】
前記噴出口のから噴出した反応ガスのうちエネルギーの高い反応ガスを選択するため先端部が開口した円錐状又は長円の錐状の選択壁が設けられていることを特徴とする請求項17に記載の有機物の除去装置。
【請求項19】
前記噴出口と選択壁の間の領域を排気するための真空ポンプが設けられていることを特徴とする請求項19に記載の有機物の除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−123853(P2010−123853A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297905(P2008−297905)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】