説明

樹脂組成物

【課題】 粒子径の小さなシリカフィラーを高い配合割合で配合し、流動性が高く、耐熱性、耐吸湿性に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 樹脂組成物を、平均粒子径0.1μm以上5μm以下、かつ、真球度0.8以上の球状シリカ粒子と、平均粒子径1nm以上50nm以下のシリカナノ粒子と、熱または光により硬化する硬化性樹脂、熱可塑性樹脂から選ばれる一種以上の樹脂と、を含むよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の封止等に使用される樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化、高機能化、小型軽量化に伴い、搭載される半導体パッケージの形態も、高集積化、小型化、薄型化が進んでいる。このような半導体パッケージの実用化には、ICチップの開発とともに、封止材の開発が必要不可欠となる。封止材には、半導体素子の各種信頼性を確保するため、接着性、耐熱性、耐湿性等が要求される。現在では、封止材として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が多く用いられている。また、マトリックスとなるエポキシ樹脂に、シリカフィラーを配合した樹脂組成物も開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−063630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、フリップチップ実装では、ICチップと基板との隙間等に液状の封止材(アンダーフィル材)が充填される。つまり、極めて小さな隙間に、封止材を浸入させる必要がある。よって、封止材には高い流動性が要求される。一方、封止材の熱膨張係数や吸湿率を低下させ、耐熱性、耐吸湿性を向上させるためには、樹脂にフィラーをできるだけ多量に配合することが望ましい。しかし、フィラーの配合量を増加させると流動性が低下する。また、最近の挟ピッチ化に伴い、封止材中のフィラーの粒子径をより小さくすることが求められる。フィラーの粒子径を小さくすると、樹脂中への高密度の配合は難しくなる。例えば、上記特許文献1に記載されているシリカフィラーの配合量は、最大で80重量%である。このように、現状では、樹脂中に粒子径の小さなフィラーを高密度に配合することは難しい。
【0004】
本発明は、このような実状を鑑みてなされたものであり、粒子径の小さなシリカフィラーを高い配合割合で配合し、流動性が高く、耐熱性、耐吸湿性に優れた樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の樹脂組成物は、平均粒子径0.1μm以上5μm以下、かつ、真球度0.8以上の球状シリカ粒子と、平均粒子径1nm以上50nm以下のシリカナノ粒子と、熱または光により硬化する硬化性樹脂、熱可塑性樹脂から選ばれる一種以上の樹脂と、を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の樹脂組成物には、平均粒子径の大小異なる少なくとも二種類のシリカ(SiO2)フィラーが混合して配合される。その一つである球状シリカ粒子は、真球度0.8以上の略真球状の形状をなす。本明細書では、「真球度」を「粒子の最大径に対する最小径の比」と定義する。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の結果、観測される最大径に対する最小径の比が0.8以上であればよい。
【0007】
このように、粒子形状が略真球状で、平均粒子径0.1μm以上5μm以下の球状シリカ粒子に、平均粒子径1nm以上50nm以下のシリカナノ粒子を混合することで、樹脂中に粒子径の小さなシリカフィラーを高い配合割合で分散させることができる。これは、球状シリカ粒子の粒子形状、および球状シリカ粒子とシリカナノ粒子との粒子径の違いにより、樹脂中でシリカフィラーの最密充填状態が形成されるためと考えられる。また、粒子形状が略真球状の球状シリカ粒子を配合することで、樹脂組成物の粘性を低く抑えることができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、粒子径の小さなシリカフィラーを高い配合割合で配合することができ、流動性が高く、耐熱性、耐吸湿性に優れる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物によれば、樹脂中に粒子径の小さなシリカフィラーを高い配合割合で配合することができる。このため、本発明の樹脂組成物は、ICチップと基板との隙間等を封止する封止材として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の樹脂組成物の実施形態について詳しく説明する。なお、本発明の樹脂組成物は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0010】
〈球状シリカ粒子〉
本発明の樹脂組成物を構成する球状シリカ粒子の平均粒子径は、0.1μm以上5μm以下である。配合するフィラーの粒子径をできるだけ小さくするという観点から、球状シリカ粒子の平均粒子径を3μm以下とすると好適である。また、球状シリカ粒子の真球度は0.8以上とする。本発明の樹脂組成物の流動性や樹脂中における分散性を向上させるとともに、シリカフィラーをより最密充填状態に近づけるという観点から、真球度を0.9以上とするとよい。球状シリカ粒子を後述する樹脂に配合する場合、上記範囲内の平均粒子径を持ち、真球度0.8以上の球状シリカ粒子の粉体を一種類だけ配合してもよく、また、二種類以上を混合して配合してもよい。なお、必要に応じて、5μm以上、3μm以上等の粗粒を除去することが望ましい。
【0011】
球状シリカ粒子の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、VMC(Vap-erized Metal Combustion)法により、シリコン粉末を燃焼して製造することが望ましい。VMC法とは、酸素を含む雰囲気中でバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に目的とする酸化物粒子の一部を構成する金属粉末を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こさせて酸化物粒子を得る方法である。
【0012】
VMC法の作用について説明すれば以下のようになる。まず、容器中に反応ガスである酸素を含有するガスを充満させ、この反応ガス中化学炎を形成する。次いで、この化学炎に金属粉末を投入し高濃度(500g/m3以上)の粉塵雲を形成する。すると、化学炎により金属粉末表面に熱エネルギが与えられ、金属粉末の表面温度が上昇し、金属粉末表面から金属の蒸気が周囲に広がる。この金属蒸気が酸素ガスと反応して発火し火炎を生じる。この火炎により生じた熱は、さらに金属粉末の気化を促進し、生じた金属蒸気と反応ガスが混合され、連鎖的に発火伝播する。このとき金属粉末自体も破壊して飛散し、火炎伝播を促す。燃焼後に生成ガスが自然冷却されることにより、酸化物粒子の雲ができる。得られた酸化物粒子は、電気集塵器等により帯電させて捕獲される。
【0013】
VMC法は粉塵爆発の原理を利用するものである。VMC法によれば、瞬時に大量の酸化物粒子が得られる。得られる酸化物粒子は、略真球状の形状をなす。例えば、シリカ粒子を得る場合にはシリコン粉末を投入すればよい。投入するシリコン粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られる酸化物粒子の粒子径を調整することが可能である。
【0014】
〈シリカナノ粒子〉
本発明の樹脂組成物を構成するシリカナノ粒子は、平均粒子径1nm以上50nm以下である。最密充填状態を形成し易くするという観点から、シリカナノ粒子の平均粒子径を5nm以上30nm以下とするとよい。シリカナノ粒子の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、乾式法として、上記VMC法やPVS(Physical Vapor Synthesis)法等の燃焼法が挙げられる。また、湿式法として、沈降法やゲル法が挙げられる。
【0015】
〈表面処理〉
球状シリカ粒子およびシリカナノ粒子は、後述する樹脂との密着性を向上させるため、表面処理が施されていることが望ましい。表面処理は、例えば、シラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコネート系の各種カップリング剤、カチオン、アニオン、両性、中性の各種界面活性剤、フェノール樹脂等の極性基を有する樹脂等を用いて行うことができる。例えば、シランカップリング剤による表面処理は、球状シリカ粒子、シリカナノ粒子からなる被処理粉体を処理容器に収容し、この被処理粉体を攪拌しながら気化させたシランカップリング剤と反応させればよい。
【0016】
表面処理に用いる処理剤の重量は、被処理粉体の重量を100重量%とした場合の10重量%以下とすることが望ましい。10重量%より多くすると、本発明の樹脂組成物の特性に影響を及ぼすおそれがあるからである。6重量%以下とするとより好適である。また、表面処理の効果を充分に発揮させるためには、処理剤の重量を、被処理粉体の重量の0.05重量%以上とすることが望ましい。
【0017】
〈樹脂〉
本発明の樹脂組成物を構成する樹脂は、熱または光により硬化する硬化性樹脂、熱可塑性樹脂から選ばれる一種以上とする。ここで、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂(メタクリル樹脂)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリイミド、ポリアミド樹脂(ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等)、ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル等)、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0018】
本発明の樹脂組成物を、電子部品の封止材として用いる場合には、樹脂としてエポキシ樹脂、あるいはアクリル樹脂を採用するとよい。エポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するオリゴマー、ポリマーが好適である。例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち一つを単独で、あるいは複数を混合して用いればよい。
【0019】
また、アクリル樹脂としては、光重合性を有するモノマーを重合して得られるオリゴマー、ポリマーが好適である。光重合性モノマーとしては、例えば、以下(a)〜(e)に示すモノマーが挙げられる。(a)〜(e)に示したモノマーの一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて重合し、得られたオリゴマー、ポリマーを用いればよい。
(a)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、およびこれらの無水物、ハーフエステル化物。
(b)メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート等のα,β−不飽和カルボン酸エステル。
(c)スチレン、α−メチルスチレン、p−ビニルトルエン等のスチレン類。
(d)ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の、アクリル酸と炭素数1〜10のグリコールとのモノエステル化物、およびエポキシエステル化合物等のヒドロキシル基含有モノマー。
(e)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート。
【0020】
〈樹脂組成物の調製〉
球状シリカ粒子およびシリカナノ粒子を樹脂に配合して、本発明の樹脂組成物を調製する。この際、樹脂中にシリカナノ粒子を均一に分散させるため、予め、シリカナノ粒子を有機溶媒に分散させたスラリーを調製し、このスラリーに樹脂と球状シリカ粒子とを混合するとよい。例えば、シリカナノ粒子の粉体を使用する場合には、まず、シリカナノ粒子の粉体を有機溶媒に分散させてスラリーを調製する。次に、該スラリーに樹脂を混合し、有機溶媒を除去した後、球状シリカ粒子を混合すればよい。また、湿式法で製造されたシリカナノ粒子の分散液を使用する場合には、必要に応じて該分散液の溶媒置換を行い、それに樹脂を混合して溶媒を除去した後、球状シリカ粒子を混合すればよい。
【0021】
シリカナノ粒子を分散させる有機溶媒には、メチルエチルケトン(MEK)、N−メチル−2ピロリドン(NMP)、アセトン、メチルセロソルブ、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、シクロヘキサノン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロピルアルコール(IPA)、エーテル、塩化メチレン、キシレン等を用いればよい。
【0022】
このように、樹脂にシリカナノ粒子を分散させた後、球状シリカ粒子を加え、熱ロール、ニーダー等で溶融混練して、本発明の樹脂組成物とすればよい。本発明の樹脂組成物を用い、トランスファーモールド法、インジェクションモールド法、滴下封止法等により、ICチップ等の電子部品を封止することができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物におけるシリカフィラーの配合量、つまり、球状シリカ粒子およびシリカナノ粒子の合計配合量は、耐熱性、耐吸湿性を向上させるという観点から多い方が望ましい。例えば、球状シリカ粒子およびシリカナノ粒子の合計配合量を、樹脂組成物の全体重量を100重量%とした場合の85重量%以上とするとよい。両者の合計配合量を87重量%以上、さらには90重量%以上とするとより好適である。
【0024】
ここで、シリカナノ粒子の配合量は、球状シリカ粒子の配合量の1重量%以上40重量%以下とすることが望ましい。1重量%未満および40重量%を超える場合には、樹脂中でシリカフィラーの最密充填状態を形成し難いからである。5重量%以上25重量%以下とするとより好適である。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、球状シリカ粒子、シリカナノ粒子、樹脂に加え、さらに硬化剤、硬化触媒を含む態様が望ましい。硬化剤には、既に公知の硬化剤を用いればよく、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリアミドポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン等のアミン系硬化剤、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の無水物系硬化剤、ο−クレゾール、p−クレゾール、t−ブチルフェノール、クミルフェノール等のフェノール系硬化剤等が挙げられる。硬化触媒には、既に公知の硬化触媒を用いればよく、例えば、三級アミン、四級アンモニウム塩、イミゾダール化合物、ホウ素化合物、有機金属錯塩等が挙げられる。さらにまた、必要に応じて、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、シリコーンオイル、イオン補足剤、難燃剤、反応性希釈剤、ゴム等の低応力添加剤等の種々の添加剤を配合してもよい。
【実施例】
【0026】
上記実施形態に基づいて、本発明の樹脂組成物を調製した。また、比較のため、シリカナノ粒子を含まない樹脂組成物をも調製した。以下、実施例と比較例と対比しながら説明する。
【0027】
(1)実施例1
まず、シリカ粉体(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL−50」、比表面積50m2/g、平均粒子径30nm)に表面処理を施して、シリカナノ粒子の粉体とした。表面処理は、シランカップリング剤のエポキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−403」、以下同様。)を用いて行った。使用したエポキシシラン量は、シリカ粉体の5重量%とした。
【0028】
次に、得られたシリカナノ粒子の粉体をMEKに分散させて、シリカナノ粒子の固形分が10重量%のスラリーを調製した。調製したスラリーを連続式ミルで攪拌し、シリカナノ粒子を一次粒子の状態に分散させた。このスラリー100重量部に、液状エポキシ樹脂(東都化成株式会社製「ZX−1059」)10重量部を加えた。そして、攪拌しながら120℃に加熱し、真空引きすることによりMEKを除去し、シリカナノ粒子の固形分が50重量%の液状組成物を得た。
【0029】
次に、VMC法で製造されたシリカ粉体(株式会社アドマテックス製「アドマファインSC6200−SEB」、平均粒子径2μm、真球度0.95)に表面処理を施して、第一の球状シリカ粒子の粉体とした。また、VMC法で製造されたシリカ粉体(株式会社アドマテックス製「アドマファインSC1050−SEP」、平均粒子径0.2μm、真球度0.95)に表面処理を施して、第二の球状シリカ粒子の粉体とした。表面処理は、いずれもエポキシシランを用いて行った。使用したエポキシシラン量は、第一の粉体ではシリカ粉体の0.2重量%、第二の粉体ではシリカ粉体の1.6重量%とした。
【0030】
そして、得られた上記液状組成物100重量部に、第一の球状シリカ粒子の粉体328重量部と、第二の球状シリカ粒子の粉体72重量部と、硬化触媒の2−PHZ(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)2.5重量部とを混合し、60℃に加熱して、三本ロールで分散させた。すると、流動性のある樹脂組成物が得られた。得られた樹脂組成物の灰分測定を行ったところ、シリカフィラー固形分は89.2重量%であった。シリカフィラー中、シリカナノ粒子の配合量は、球状シリカ粒子の配合量の11.9重量%である。この樹脂組成物を120℃で3時間、さらに150℃で1時間保持すると硬化し、樹脂成形物が得られた。
【0031】
(2)比較例1
実施例1で使用した液状エポキシ樹脂(東都化成株式会社製「ZX−1059」)100重量部と、第一の球状シリカ粒子の粉体601重量部と、第二の球状シリカ粒子の粉体132重量部と、硬化触媒の2−PHZ5重量部とを混合し、60℃に加熱して、三本ロールで分散させた。しかし、ロールは全く通らず、樹脂組成物を得ることはできなかった。本比較例1におけるシリカフィラー配合量は87.5重量%である。
【0032】
(3)実施例2
VMC法で製造されたシリカ粉体(株式会社アドマテックス製「アドマファインSC2500−SEF」、平均粒子径0.5μm、真球度0.95)に表面処理を施して、第三の球状シリカ粒子の粉体とした。表面処理は、エポキシシランを用いて行った。使用したエポキシシラン量は、シリカ粉体の0.6重量%とした。
【0033】
実施例1で調製したシリカナノ粒子を50重量%含む液状組成物100重量部に、第三の球状シリカ粒子の粉体358重量部と、硬化触媒の2−PHZ5重量部とを混合し、60℃に加熱して、三本ロールで分散させた。すると、流動性のある樹脂組成物が得られた。得られた樹脂組成物の灰分測定を行ったところ、シリカフィラー固形分は87.8重量%であった。シリカフィラー中、シリカナノ粒子の配合量は、球状シリカ粒子の配合量の13.3重量%である。この樹脂組成物を120℃で3時間、さらに150℃で1時間保持すると硬化し、樹脂成形物が得られた。
【0034】
(4)比較例2
実施例1で使用した液状エポキシ樹脂(東都化成株式会社製「ZX−1059」)100重量部と、実施例2で使用した第三の球状シリカ粒子の粉体614重量部と、硬化触媒の2−PHZ5重量部とを混合し、60℃に加熱して、三本ロールで分散させた。しかし、ロールは全く通らず、樹脂組成物を得ることはできなかった。本比較例2におけるシリカフィラー配合量は85.4重量%である。
【0035】
(5)実施例3
湿式法で得られたシリカゾルを溶媒置換し、さらにその溶媒をエポキシ樹脂で置換した液状組成物(hanse chenie社製「NANOPOX XP 0525」、シリカナノ粒子の固形分40重量%)100重量部に、実施例1で使用した第一の球状シリカ粒子の粉体328重量部と、第二の球状シリカ粒子の粉体72重量部と、硬化触媒の2−PHZ2.5重量部とを混合し、60℃に加熱して、三本ロールで分散させた。すると、流動性のある樹脂組成物が得られた。得られた樹脂組成物の灰分測定を行ったところ、シリカフィラー固形分は87.2重量%であった。シリカフィラー中、シリカナノ粒子の配合量は、球状シリカ粒子の配合量の10.0重量%である。この樹脂組成物を120℃で3時間、さらに150℃で1時間保持すると硬化し、樹脂成形物が得られた。
【0036】
(6)比較例3
実施例3で使用した液状組成物(hanse chenie社製「NANOPOX XP 0525」)と同等の液状エポキシ樹脂(東都化成株式会社製「YDF−8170C」、BisFタイプ)100重量部と、実施例1で使用した第一の球状シリカ粒子の粉体601重量部と、第二の球状シリカ粒子の粉体132重量部と、硬化触媒の2−PHZ5重量部とを混合し、60℃に加熱して、三本ロールで分散させた。しかし、ロールは全く通らず、樹脂組成物を得ることはできなかった。本比較例3におけるシリカフィラー配合量は87.5重量%である。
【0037】
(7)実施例4
湿式法で得られたシリカゾルを溶媒置換し、さらにその溶媒をモノマー(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)で置換した液状組成物(hanse chenie社製「NANOPOX XP 0746」、シリカナノ粒子の固形分50重量%)100重量部に、実施例1で使用した第一の球状シリカ粒子の粉体328重量部と、第二の球状シリカ粒子の粉体72重量部とを混合し、60℃に加熱して、三本ロールで分散させた。すると、流動性のある樹脂組成物が得られた。得られた樹脂組成物の灰分測定を行ったところ、シリカフィラー固形分は89.6重量%であった。シリカフィラー中、シリカナノ粒子の配合量は、球状シリカ粒子の配合量の12.5重量%である。
【0038】
(8)比較例4
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(関東化学株式会社製)100重量部と、実施例1で使用した第一の球状シリカ粒子の粉体601重量部と、第二の球状シリカ粒子の粉体132重量部とを混合し、60℃に加熱して、三本ロールで分散させた。しかし、ロールは全く通らず、樹脂組成物を得ることはできなかった。本比較例4におけるシリカフィラー配合量は88.0重量%である。
【0039】
(9)まとめ
以上、実施例1〜4に示したように、本発明の樹脂組成物は、シリカフィラーを87重量%以上と多量に配合しても流動性を有し、かつ、良好な樹脂成形物を成形できることが確認された。一方、比較例1〜4に示したように、シリカナノ粒子を配合しない場合には、シリカフィラーを多量に配合した樹脂組成物を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径0.1μm以上5μm以下、かつ、真球度0.8以上の球状シリカ粒子と、
平均粒子径1nm以上50nm以下のシリカナノ粒子と、
熱または光により硬化する硬化性樹脂、熱可塑性樹脂から選ばれる一種以上の樹脂と、
を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記球状シリカ粒子は、シリコン粉末を燃焼して製造されたものである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記球状シリカ粒子および前記シリカナノ粒子の合計配合量は、当該樹脂組成物の全体重量を100重量%とした場合の85重量%以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリカナノ粒子の配合量は、前記球状シリカ粒子の配合量の1重量%以上40重量%以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂は、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、硬化剤、硬化触媒を含む請求項1に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−36915(P2006−36915A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218703(P2004−218703)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(501402730)株式会社アドマテックス (82)
【Fターム(参考)】