説明

樹脂複合ホースの製造方法及び樹脂複合ホース

【課題】押出成形後において樹脂層とゴム層とが層間剥離するのを良好に防止でき、押出成形後の加工を容易に行うことができるとともに、簡単な工程で安価にホース製造を行うことのできる樹脂複合ホースの製造方法を提供する。
【解決手段】中間の樹脂層と内ゴム層と外ゴム層とを積層して成る樹脂複合ホースを製造するに際し、内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とをマンドレルを用いることなく中空状態で積層状態に長尺且つ直管状に連続押出成形するとともに、後工程でこれを熱風炉25に連続的に通して、そこで電子線照射を行ない、直管長尺ホース10Aの内部に供給した熱風と熱風炉25の熱風とによるホース内,外面からの加熱作用と電子線照射による加熱作用とによって連続的に半加硫を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を断面の中間に有する樹脂複合ホースの製造方法及び樹脂複合ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
流体輸送ホース、例えば自動車の燃料輸送ホースとして、従来振動吸収性,組付性が良好で耐燃料(ガソリン)透過性に優れたNBR+PVC(アクリロニトリル・ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド)等の一般的なゴムホースが用いられてきた。
しかしながら近年、自動車燃料の透過規制は地球環境保全の観点から厳しく、今後も耐燃料透過性に対する要求は益々強まることが予想される。
【0003】
そのための手段として、燃料に対する耐透過性に優れた樹脂層をバリア層として外ゴム層の内側に内面層として積層した樹脂複合ホースが開発され、用いられている。
しかしながらバリア層としての樹脂層は材質的にゴムよりも硬い硬質層であるため、これを外ゴム層の末端(ホース軸方向端)に到るまで積層形成すると、ホースを相手パイプに外挿状態に挿し込んだときに、相手パイプと内面の樹脂層との密着が悪く、シール性が不十分となってしまう。
またホースを相手パイプに外挿状態に挿し込む際に、内面の樹脂層が硬く変形抵抗が大きいために、挿込作業の際に大きな力を必要とし、ホースの接続作業性が悪化する問題を生ずる。
この問題の解決を目的としたものとして、下記特許文献1には図8に示すようなホースが開示されている。
【0004】
図において200は樹脂複合ホースで、202は外ゴム層、204はその内面に積層形成されたバリア層としての樹脂層である。
この樹脂複合ホース200では、金属製の相手パイプ206と接続される端部については樹脂層204を形成しないで、外ゴム層202の内面を露出させ、同内面を相手パイプ206に直接弾性接触状態に嵌合するようにしている。
【0005】
また内部を流通する燃料が、外ゴム層202の露出した内面と相手パイプ206との間に浸入し、更に樹脂層204の形成されていない外ゴム層202の端部を通じて外部に透過するのを防止するため、この樹脂複合ホース200では、樹脂層204の端部に環状の凹所208を形成して、そこにフッ素ゴム等から成る耐燃料透過性の高いリング状の弾性シール部材210を装着し、その弾性シール部材210の内面に相手パイプ206を弾性接触状態で嵌合させるようにしている。
【0006】
尚、212は相手パイプ206の先端部に径方向外方に環状に膨出する形態で設けられた膨出部であり、214は樹脂層204の形成されていない外ゴム層202の端部を外周面から縮径方向に締め付けて、相手パイプ206に固定するホースクランプである。
【0007】
この図8に示す樹脂複合ホース200では、ホース端部に樹脂層204が形成されておらず、樹脂複合ホース200を相手パイプ206に外挿状態に挿し込む際に、樹脂層204による抵抗が強く働かないことから、挿込作業を小さい力で容易に行うことが可能である。
また端部においては弾性を有する外ゴム層202の内面が直接相手パイプ206と接触するため、樹脂複合ホース200と相手パイプ206との嵌合部分のシール性を良好となすことができる。
【0008】
ところで燃料輸送ホースは(他の自動車用の流体輸送ホースも同様)、周辺部材との干渉を回避して配管する必要があることから、通常は所定の曲り形状をなしている。
一般的なゴムホースの場合、かかる曲り形状のホースを製造するには、下記特許文献2にも開示されているようにゴムホースを長尺の直管状に押出成形して、これを所定寸法に切断した後、未加硫(又は半加硫)の直管ホース216(図9参照)を、所定の曲り形状を有する金属製のマンドレル218に挿し込んで曲り形状に変形させ、その状態で所定時間の加熱を行って加硫処理し、そして加硫処理が済んだところで、曲りの付与されたホース220をマンドレル218から抜き取って製品とする。
【0009】
ところが図8に示す樹脂複合ホース200の場合、このような製造方法を採用することができず、そこで図8に示す樹脂複合ホースの場合、先ず外ゴム層202を単独でインジェクション成形して、その後に外ゴム層202の内面に沿った形状で樹脂層204を形成する。
樹脂層204を外ゴム層202の内面に沿った形状で形成する方法として、静電塗装の手法が好適に用いられる。
【0010】
この静電塗装では、噴出ノズルをホースの内部、詳しくは外ゴム層202の内部に挿入し、そして噴出ノズルから樹脂粉体をホース内面に向けて噴出し、静電塗装する。
この静電塗装では、樹脂粉体が負又は正に帯電(通常は負に帯電)させられ、噴出ノズルから噴出された樹脂粉末が静電場を対極(正極)となる外ゴム層202の内面に向かって飛翔し、同内面に付着して樹脂の塗膜を形成する。
【0011】
この静電塗装の工程では、目的とする厚みで樹脂層204を形成するために、通常複数回の静電塗装を施す。詳しくは樹脂粉体を外ゴム層202の内面に付着させた後、これを加熱して溶融及び冷却し、更に再びその上から静電塗装にて樹脂粉体を吹き付けて加熱溶融及び冷却を行い、目的とする厚みの樹脂層204を形成する。
この場合の全体的な製造工程は次のようなものとなる。
【0012】
即ち、先ずインジェクション成形にて外ゴム層202を得た後乾燥処理し、更に前処理としての洗浄及びその後の乾燥を行って、その後に静電塗装にて樹脂粉体を内面に付着させ、その後これを溶融及び冷却した後、2回目の樹脂粉体の静電塗装及び加熱溶融,冷却固化を行う。そしてこれを所要の回数繰り返して目的の厚みの樹脂層204を形成した後、耐燃料透過性のリング状の弾性シール部材210を軸端から嵌め込んで所定位置に装着する。
【0013】
以上のように図8に示す樹脂複合ホースを製造するには多数の工程が必要で、そのために必然的に樹脂複合ホース200の製造コストが高くなってしまう。
以上燃料輸送ホースを例にとって説明したが、こうした問題は輸送流体の透過を防止するために外ゴム層の内側に内面層として輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を有する樹脂複合ホースに共通の問題である。
【0014】
そこで本発明者らは、樹脂層の更に内側に内ゴム層を内面層として積層した形態の樹脂複合ホースを案出した。
この積層構造の樹脂複合ホースでは、樹脂層によって輸送流体に対する耐透過性(バリア性)を持たせることができ、また内面の内ゴム層によって、樹脂複合ホースを相手パイプに外挿状態に挿し込む際に内ゴム層の弾性変形によって小さな力で容易に挿込作業、即ちホース接続作業を行うことができる。
また内ゴム層を相手パイプに弾性接触させる状態に接続を行うことができるため、接続部におけるシール性も良好となすことができる。
【0015】
またこの積層構造の樹脂複合ホースでは、ホース軸方向端に到るまで樹脂層を形成しておくことができるため、図8に示すような輸送流体に対する高い耐透過性を有する高価なリング状のシール部材210の組込みも省略することができる。
加えてこの積層構造の樹脂複合ホースでは、ホース軸方向端に到るまで樹脂層を形成することができるため、図9に示すのと同様な製造方法で曲りホースを製造することが可能となる。
詳しくは、内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを順次積層状態に押出成形して、積層構造の直管形状の未加硫若しくは半加硫の直管ホースを製造し、そしてこれを所定の曲り形状をなすマンドレルに外挿状態に挿し込んで変形させ、その変形状態で加硫処理することによって、曲り形状の樹脂複合ホースを製造することが可能となる。
これにより樹脂複合ホースを従来に比べて大幅に安価に製造することが可能となる。
【0016】
しかしながら本発明者らがこのようにして樹脂複合ホースを製造し、試験したところ、次のような問題の生じることが判明した。
詳しくは、内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを順次積層する状態に長尺且つ直管状に押出成形すると、押出成形直後においては良好であったものが、時間の経過とともに樹脂層とゴム層、特に樹脂層と外ゴム層との密着が低下ないし失われ、樹脂層とゴム層とが層間剥離してしまう問題を生ずる。
【0017】
この層間剥離は、次のような理由によって生ずるものである。
押出成形された樹脂層は、その後に押出方向即ちホース軸方向に特に収縮を伴わないで冷えて固まる。
一方押出成形されたゴム層は、冷却によって押出方向(ホース軸方向)に収縮する動きを生ずる。このゴム層の収縮挙動に対して樹脂層は追従せず、そこで樹脂層とゴム層との密着が低下する。
ここでゴム層はホース軸方向に収縮したときに拡径しようとする。この場合、内ゴム層については拡径によって樹脂層に押しつけられる動きとなるが、外ゴム層については、このような拡径が生じると内側の樹脂層から、径方向外方に離れる方向の動きとなり、従って特に樹脂層と外ゴム層との間で層間剥離を生じてしまうのである。
而してこのように樹脂層とゴム層との間で層間剥離が生ずると、その後の加工が著しく困難となってしまう。
【0018】
その対策として、押出成形されたホースを半加硫処理して、樹脂層とゴム層との密着(仮接着)を確保しておくといったことが考えられる。
ところがこの半加硫処理自体大変複雑且つ面倒な工程である。
従来においてこの半加硫処理は次のようにして行っている。
即ち、芯体として樹脂製のマンドレルを用いて、その外側にゴムホースを積層状態に長尺且つ直管状に押出成形し、その後これをマンドレルごと所定寸法に切断して、切断後の未加硫のゴムホースを樹脂のマンドレルごと加硫缶に挿入し、所定時間かけて加熱することによって半加硫処理を行う。
そして半加硫されたゴムホースを樹脂マンドレルとともに取り出して、その後樹脂マンドレルを半加硫状態のゴムホースから抜き取り、その後に半加硫の直管のゴムホースを金属のマンドレルに外挿状態に挿し込んで、その状態で本加硫を行う。
【0019】
ここで樹脂のマンドレルをゴムホースの内部に挿入した状態で半加硫を行うのは、樹脂マンドレルなしでゴムホースを半加硫した場合、加熱によりゴムホースが柔らかくなることと相まって、ゴムホースが重力により扁平化し、その状態で半加硫されてしまうからである。
而してそのように扁平形状となった半加硫のゴムホースは、その後マンドレルに挿入して本加硫を行ったとしても、目的とする形状寸法に良好に成形されなくなってしまう。
【0020】
以上のようにして半加硫を行う場合、その半加硫の工程が別工程として必要で、しかもこの半加硫工程はバッチ処理工程となり、ホースの連続生産ラインにこの半加硫処理の工程をインラインで組み込むことができなくなり、ホースの生産性が低下するとともに、バッチ処理工程である半加硫工程が複雑な工程であることからホースの製造コストが高くなってしまう。
【0021】
【特許文献1】特開2002−54779号公報
【特許文献2】特開平11−90993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は以上のような事情を背景とし、押出成形後において樹脂層とゴム層とが層間剥離するのを良好に防止でき、押出成形後の加工を容易に行うことができるとともに、簡単な工程で安価にホース製造を行うことのできる樹脂複合ホースの製造方法及び樹脂複合ホースを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
而して請求項1は樹脂複合ホースの製造方法に関するもので、輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を有し、該樹脂層の内側の内面層としての内ゴム層と、該樹脂層の外側の外ゴム層とを該樹脂層に対し積層して成る樹脂複合ホースを製造するに際し、前記内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを、芯体としてのマンドレルを用いることなく中空状態で順次積層状態に長尺且つ直管状に連続押出成形するとともに、押出成形工程の後工程で未加硫の該直管長尺ホースを熱風炉に連続的に通し、該熱風炉内で該直管長尺ホースに対して電子線照射を行なって、該直管長尺ホースの内部に供給した熱風と該熱風炉の熱風とによるホース内,外面からの加熱作用と電子線照射による加熱作用とによって該直管長尺ホースを連続的に半加硫し、その後の工程で半加硫状態の直管長尺ホースを所定寸法に切断した上で、切断後の半加硫状態の直管ホースをマンドレルに外挿状態に挿し込んで本加硫処理を行うことを特徴とする。
【0024】
請求項2は樹脂複合ホースに関するもので、輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を有し、該樹脂層の内側の内面層としての内ゴム層と、該樹脂層の外側の外ゴム層とを該樹脂層に対し積層して成る樹脂複合ホースであって、前記内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを、芯体としてのマンドレルを用いることなく中空状態で順次積層状態に長尺且つ直管状に連続押出成形するとともに、押出成形工程の後工程で未加硫の該直管長尺ホースを熱風炉に連続的に通し、該熱風炉内で該直管長尺ホースに対して電子線照射を行なって、該直管長尺ホースの内部に供給した熱風と該熱風炉の熱風とによるホース内,外面からの加熱作用と電子線照射による加熱作用とによって該直管長尺ホースを連続的に半加硫し、その後の工程で半加硫状態の直管長尺ホースを所定寸法に切断した上で、切断後の半加硫状態の直管ホースをマンドレルに外挿状態に挿し込んで加硫処理して成ることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0025】
以上のように請求項1の樹脂複合ホースの製造方法は、内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを、芯体としてのマンドレルを用いることなく、中空状態で順次積層状態に長尺且つ直管状に連続押出成形し、そして押出成形工程の後工程で、これを熱風炉に連続的に通し、熱風炉内で未加硫の直管長尺ホースに対して電子線照射を行って、直管長尺ホースの内部に供給した熱風と熱風炉の熱風とによる、ホース内,外面からの加熱作用と、電子線照射による加熱作用とで直管長尺ホースを連続的に半加硫し、その後の工程でこれを所定寸法に切断した上で、マンドレルを用いて本加硫するものである。
【0026】
かかる本発明によれば、断面の中間に樹脂層を有する樹脂複合ホースを、押出成形後において樹脂層とゴム層、特に樹脂層と外ゴム層とが層間剥離するのを良好に防止し得てそれらを密着状態に保ち得、その後における加工を容易にならしめることができる。
【0027】
また本発明では、直管長尺ホースに対する半加硫処理を、ホースの連続生産ラインにインラインで組み込むことができる。
押出成形された直管長尺ホースを単に熱風炉に通して電子線照射するだけで、連続的にこれを半加硫処理することができるからであり、半加硫処理に際して従来の方法のように複雑な多数の工程を必要とせず、また作業者による人手作業も特に要しない。
【0028】
更に本発明では、半加硫処理に際して直管長尺ホースの内面からの熱風による加熱作用と、外面からの熱風による加熱作用、更に加えて電子線照射による直管長尺ホース自体の自己発熱作用とを併用して半加硫処理を行うため、短時間で加硫を終えることができる。
ここで直管長尺ホースの内面からの熱風による加熱を行い得るのは、本発明では内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを、芯体としてのマンドレルを用いないで、中空状態で順次積層状態に長尺且つ直管状に連続押出成形することによる。
【0029】
即ち、通常はマンドレルを用いてその外側に直管長尺ホースを連続押出しするが、この場合、半加硫処理に際して直管長尺ホースの内面からの加熱を行うことはできないばかりか、半加硫処理の際に加えた熱が、そのマンドレルに吸熱されてしまい、直管長尺ホースに対する加熱効率が悪くなって、半加硫処理のために長時間を要してしまう。
しかるに本発明では直管長尺ホースに対して内面からの加熱も併せて行うため、短時間で半加硫処理を終えることができるのである。
【0030】
本発明において、マンドレルを用いることなく直管長尺ホースを積層状態に連続押出成形することができるのは、中間の樹脂層をマンドレル代わりに巧みに利用していることによる。
即ち押出成形された樹脂層によって、同じく押出成形されたゴム層を形状保持させ、その形状保持機能を利用して、マンドレルなしで直管長尺ホースを中空状態に且つ積層状態に連続押出成形する。
これにより、半加硫処理に際して加えた熱がマンドレル加熱のために用いられてしまうことがなく、しかもホース内側からの加熱も可能となって、半加硫処理を短時間で効率高く行うことができるのである。
【0031】
かかる本発明によれば、ホース生産のための所要時間を大幅に短縮化することができ、しかも半加硫処理を自動化することができるため、生産性を高めることができるとともに生産コストを低減することが可能となる。
また本発明により得られた樹脂複合ホースは、樹脂層とゴム層とが強固に固着しており、良好な特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2において、10は自動車の燃料注入口から注入された燃料を燃料タンクに輸送する燃料輸送ホース(フィラーホース)等に用いて好適な流体輸送ホースとしての樹脂複合ホース(以下単にホースとする)で、輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層12と、樹脂層12の外側の外ゴム層14と、樹脂層12の内側の内面層としての内ゴム層16との積層構造をなしている。
ここで中間の樹脂層12は、ホース軸方向の一端から他端に至るまで形成されている。
【0033】
ホース10は全体として曲り形状をなしている。
詳しくは、ホース10はホース軸方向の所定部分が曲り部10-1,10-2,10-3とされており、またホース軸方向の両端部がホース軸方向にストレート形状を成すストレート形状部10-4,10-5とされ、更に曲り部10-1と10-2の間,10-2と10-3の間がそれぞれストレート形状部10-6,10-7とされている。
【0034】
本実施形態では、内ゴム層16としてNBRが、樹脂層12としてTHVが、また外ゴム層14としてNBR+PVCが用いられている。
ここで各層の密着強度は10N/25mm以上を超えており、互いに強固に接着をし、密着強度を測定したサンプルは層間界面での剥離ではなく母材破壊している。
内ゴム層16,樹脂層12,外ゴム層14は上記の材料の組合せを含めて以下のような材料で構成することができる。
詳しくは、内ゴム層16の材料としてNBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム:アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上),FKM(フッ素ゴム),H-NBR(水素添加NBR)等を好適に用いることができる。
またその肉厚は1.0〜2.5mm程度となしておくことができる。
【0035】
中間層の樹脂層12としては、THV(フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの少なくとも3元共重合体から成る熱可塑性フッ素樹脂),PVDF(ポリビニリデンフルオライド),ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンの共重合体),CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン),EVOH(エチレン−ビニルアルコール),PBN(ポリブチレンナフタレート) ,PBT(ポリブチレンテレフタレート) ,PPS(ポリフェニレンスルフィド)等を好適に用いることができる。
その肉厚は0.03〜0.3mm程度の肉厚となしておくことができる。
THVはEVOH、PVDFに比べ柔軟であり、樹脂ゴム積層ホースのバリア材として好適である。ETFE、THVはPTFE、EVOHに比べ、押出加工性が良くゴムとの積層化がし易く、またゴムとの接着性にも優れる。PBN、PBTはTHVに比べ剛直であるが耐燃料透過性が優れており、THVより薄肉化が可能なため、THVと同様に柔軟なホースが得られる。
【0036】
他方、外ゴム層14の材料としてはNBR+PVC,ECO(エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合ゴム),CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム),NBR+ACM(アクリルゴム),NBR+EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム),EPDM等の材料を好適に用いることができる。
またその肉厚は1.0〜3.0mm程度となしておくことができる。
【0037】
図3及び図4は、ホース10の製造方法の各工程を表している。
本例の製造方法では、先ず押出機18にて内ゴム層16をマンドレルを用いることなく中空状態に押出成形する。続いてその外側に押出機20にて樹脂層12を積層状態に連続押出成形し、そして更にその外側に押出機22にて外ゴム層14を積層状態に連続押出成形する。
【0038】
尚押出機20と22との間には外径測定器24が設けられている。この外径測定器24はレーザーによって外径測定するレーザー測定器である。
以上のようにして内ゴム層16,樹脂層12,外ゴム層14からなる積層構造のゴムホースを長尺且つ直管状に連続して押出成形する。図中10Aはその未加硫の直管長尺ホースを表している。
【0039】
図3において、25は熱風炉で電子線照射装置26が備えられている。ここで電子線照射装置26は、熱風炉25内部においてマイクロ波を放射する。
この実施形態では、押出成形された直管長尺ホース10Aが熱風炉25を連続的に通過させられ、熱風炉25内で半加硫される。
図5は熱風炉における熱風及び電子線照射によって直管長尺ホース10Aを半加硫する様子を模式的に表している。
図5に示しているようにこの熱風炉25では、これを通過する直管長尺ホース10Aに対し、電子線照射装置26から電子線(マイクロ波)が照射される。電子線照射された直管長尺ホース10Aは誘電加熱即ち自己発熱作用で加熱される。
【0040】
この直管長尺ホース10Aの内部には、上記押出機18の後方(図中左方)から図示を省略する熱風供給装置にて熱風が供給されており、未加硫の直管長尺ホース10Aは、熱風炉25内部において直管長尺ホース10Aの中空内部に供給された熱風により、内面側から加熱作用を受ける。
更に熱風炉25内の熱風により外面からも加熱作用を受ける。
即ち熱風炉25を通る直管長尺ホース10Aは、中空内部からと、外部からの熱風とによる加熱作用、更に電子線照射による加熱作用を受けて昇温し、熱風炉25を所定時間かけて通過する過程で連続的に半加硫処理される。
【0041】
以上のようにして半加硫処理された直管長尺ホース10Aは、続いて図3に示すように冷却槽28に通されてそこで水冷により冷却される。その後外径測定器24にて外径測定された後、切断機32にて所定寸法ごとの短尺の直管ホース10Bに切断される。
尚30は引取り機である。
【0042】
以上のようにして短尺の半加硫の直管ホース10Bを製造した後、図4に示しているようにドラム34の外周面状に植設された曲り形状のマンドレル36にこれを外挿状態に挿し込んで、マンドレル36に沿った形状にこれを曲げ変形させて、その状態に保持させる。
ここでマンドレル36は、図2に示す曲り形状のホース10に対応した曲り形状且つ外面形状をなしている。
【0043】
続いてこれをドラム34ごと加硫缶38の内部に挿入し、加硫缶38の蓋を閉じた状態で所定時間加熱して本加硫処理を行う。
その後ドラム34を加硫缶38から取り出し、更に本加硫された曲り形状のホース10をマンドレル36から抜き取って製品とする。
【0044】
以上のような本実施形態によれば、断面の中間に樹脂層12を有するホース10を押出成形した後において、樹脂層12とゴム層、特に樹脂層12と外ゴム層14との層間剥離を良好に防止し得てそれらを密着状態に保ち得、その後における加工を容易にならしめることができる。
【0045】
また本実施形態では、押出成形された直管長尺ホース10Aを単に熱風炉25に通して電子線照射するだけで、連続的にこれを半加硫処理することができ、半加硫処理に際して従来の方法のように複雑な多数の工程を必要とせず、また作業者による人手作業も特に要しないため、直管長尺ホース10Aに対する半加硫処理を、ホースの連続生産ラインにインラインで組み込むことができる。
【0046】
更に本実施形態では内ゴム層16と樹脂層12と外ゴム層14とを、芯体としてのマンドレルを用いないで中空状態で順次積層状態に長尺且つ直管状に連続押出成形しているため、半加硫処理に際して直管長尺ホース10Aの内面からの熱風による加熱作用と、外面からの熱風による加熱作用、更に加えて電子線照射による直管長尺ホース10A自体の自己発熱作用とを併用して半加硫処理を行うことができ、短時間で加硫を終えることができる。
【0047】
ここで本実施形態においてマンドレルを用いることなく直管長尺ホース10Aを積層状態に連続押出成形することができるのは、中間の樹脂層12をマンドレル代わりに巧みに利用していることによる。即ち押出成形された樹脂層12によって、同じく押出成形されたゴム層を形状保持させ、その形状保持機能を利用することで、マンドレルなしで直管長尺ホース10Aを中空状態に且つ積層状態に連続押出成形することができる。
これにより半加硫処理に際して加えた熱がマンドレルにより吸熱されてしまうことがなく、しかもホース10内側からの加熱も可能となって、半加硫処理を短時間で効率高く行うことができるのであり、本実施形態によれば、ホース10生産のための所要時間を大幅に短縮化することができ、しかも半加硫処理を自動化することができるため、生産性を高めることができるとともに、生産コストを低減することが可能となる。
また本実施形態により得られた樹脂複合ホース10は、樹脂層12と内ゴム層16及び外ゴム層14とが強固に接着しており、良好な特性を有する。各層の密着強度は10N/25mm以上を超え、各層が互いに強固に接着をし、密着強度を測定したサンプルは層間界面での剥離ではなく母材破壊している。
【0048】
以上の例ではホース10における内ゴム層16が単層とされているが、図6に示しているように内層16を、最内面の第1層16-1とその外側の第2層16-2との2層積層構造で構成することも可能である。
この4層積層構造のホースにおいてもまた、各層の密着強度は10N/25mm以上を超え、各層が互いに強固に接着をし、密着強度を測定したサンプルは層間界面での剥離ではなく母材破壊している。
この場合において、各層の材料の組合せを以下のような組合せとなすことができる。
即ち第1層16-1の材料としてFKM,NBR(アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上)を好適に用いることができる。
またその肉厚は0.2〜1mm程度となしておくことができる。
【0049】
一方第2層16-2の材料としてNBR(アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上)を好適に用いることができる。
その肉厚は1〜2mm程度となしておくことができる。
尚中間の樹脂層12,外ゴム層14については上記と同様である。
【0050】
より具体的には、図6に示す例において、第1層16−1の材料として低透過性ゴム、例えばFKMを用いることにより、パイプ等の相手部材に接続した際の締結部からの透過を効果的に抑制できる。すなわち、ホース全体は中間のバリア層12で内部流体の外部への透過を抑制し、さらに相手部材と直接接する第1層をFKMで構成することにより締結部分での透過を抑制することができる。
なお、締結部では相手部材との挿入性から内ゴム層は1mm以上の厚肉であることが好ましいが、FKMで厚肉を構成すると高価なものになってしまうので、第2層16−2をFKMより安価なNBR(アクリロニトリル量30質量%以上)または、NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上)を用いることがより好ましい。
【0051】
また、図7に示す例に示しているように樹脂層12と外ゴム層14との間に中間ゴム層13(外ゴム層の第1層と捉えることもでき、この場合には外ゴム層14は外ゴム層の第2層となる)を有する積層構造でホース10を構成することもできる。
この4層積層構造のホース10においてもまた、各層の密着強度は10N/25mm以上を越え、各層が互いに強固に接着をし、密着強度を測定したサンプルは層間界面での剥離ではなく母材破壊している。
この場合において、各層の材料を以下のような組合せとすることができる。
すなわち、内ゴム層16の材料としてFKM、NBR(アクリロニトリル量30質量%以上)又はNBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上)を好適に用いることができる。
またその肉厚は0.2〜1mm程度とすることができる。
中間の樹脂層12の材料としては,THV,PVDF,ETFEなどのフッ素系樹脂、PA6,PA66,PA11,PA12などのナイロン樹脂を好適に用いることができる。
その肉厚は0.03〜0.3mm程度とすることができる。
一方、中間ゴム層13の材料としてNBR(アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上),ECO,CSM,NBR+ACM,NBR+EPDM,IIR(ブチルゴム),EPDM+IIR、EPDMを好適に用いることができる。
その肉厚は0.2〜2mm程度とすることができる。
外ゴム層14の材料としては、NBR(アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上),ECO,CSM,NBR+ACM,NBR+EPDM,IIR,EPDM+IIR、EPDMを好適に用いることができる。
その肉厚は1〜3mm程度とすることができる。
なお、肉厚の総計、すなわち図7のホース10の肉厚は、2.5〜6mm程度が適切である。ホース10の肉厚が2.5mmを下回れば、耐ガソリン透過性が不十分となるし、ホース10の肉厚が6mmを上回れば、可撓性が不足する。
【0052】
ここで、外ゴム層14(外ゴム層の第2層)や中間ゴム層13(外ゴム層の第1層)にIIR又はEPDM+IIRを用いると、IIR及びEPDM+IIRは耐アルコール性を有しているので、外ゴム層14、中間ゴム層13はガソリン燃料耐透過性を有し、バリア層として機能する。したがって、樹脂層12を薄く形成し、ホース10の可撓性又は柔軟性を高めても、ホース10のガソリン燃料耐透過性が不十分となることはない。また、樹脂層12に、耐ガソリン透過性に優れたフッ素系樹脂ではなく、安価なナイロン樹脂を用いても、ホース10のガソリン燃料耐透過性が不十分とならないようにできる。
【0053】
次に、中間ゴム層にIIRを用いたホースを耐ガソリン燃料透過性に関して評価した。評価結果は表1に示されている。
評価は次のようにして行われた。まず、内径が24.4mm、肉厚が4mm及び長さが300mmの4種類のホース試料又は試験片(A)、(B)、(C)、(D)を作成した。ホース試料(A)は、NBRの内ゴム層、THV(Dyneon社THV815)の樹脂層及びNBR+PVCの外ゴム層の3層構造、ホース試料(B)は、NBRの内ゴム層、THV815の樹脂層(肉厚0.11mm)、IIRの中間ゴム層(外ゴム層の第1層)及びNBR+PVCの外ゴム層(外ゴム層の第2層)の4層構造、ホース試料(C)は、NBRの内ゴム層、THV815の樹脂層(肉厚0.08mm)、IIRの中間ゴム層(外ゴム層の第1層)及びNBR+PVCの外ゴム層(外ゴム層の第2層)の4層構造、ホース試料(D)は、NBRの内ゴム層、PA11の樹脂層、IIRの中間ゴム層(外ゴム層の第1層)及びNBR+PVCの外ゴム層(外ゴム層の第2層)の4層構造を備えている。ただし、表1の試験片及び厚みの欄には、樹脂層及び中間ゴム層(ホース試料(A)では樹脂層及び外ゴム層)の材料及び厚みのみが示されている。それぞれのホース試料(A)、(B)、(C)、(D)の両端部に、R処理した外径25.4mm(最大外径27.4mmのバルジ加工部が2個所に形成されている)の金属製パイプを圧入した。そして、それぞれのホース試料(A)、(B)、(C)、(D)で、一方の金属パイプに密栓を装着し、他方の金属製パイプから、ホース試料(A)、(B)、(C)、(D)内に試験液(FuelC+エタノール10容量%)を供給した後、他方の金属製パイプにネジ式の密栓を装着し、試験液を各ホース試料(A)、(B)、(C)、(D)に封入した。それぞれのホース試料(A)、(B)、(C)、(D)を、40℃で3000時間保持した。(ただし、試験液は168時間後に交換)そして、SHED法 CARB−DBLパターンで、3日間HC(炭化水素)の透過量を測定し、それぞれのホース試料(A)、(B)、(C)、(D)について、HCの透過量が最大であった日のHCの透過量を求めて透過量とした。
【0054】
【表1】

【0055】
このようにホース10の積層数を4層とし、また各材料の組合せを上記の中から適宜選定することで、輸送流体に対する耐透過性をより一層高めることができ、或いはまた燃料輸送ホースにおいて耐サワーガソリン性をより高めることができ、或いは耐熱性,耐アルコールガソリン性を向上させることができる。
また上記実施形態は一方の端部が他方の端部に対して大径を成すホースについての例であるが、本発明は一方の端部と他方の端部とが同径を成すホースに対して適用することも可能である。
【0056】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた対応で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態の樹脂複合ホースの一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】同実施形態の樹脂複合ホースの全体図である。
【図3】樹脂複合ホースの製造方法の各工程の説明図である。
【図4】図3に続く工程説明図である。
【図5】図3の熱風炉による加熱の作用を模式的に示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態の樹脂複合ホースの図である。
【図7】本発明の別の実施形態の樹脂複合ホースの図である。
【図8】従来の樹脂複合ホースの一例を示す図である。
【図9】従来の曲り形状のホースの一般的な製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10 樹脂複合ホース
10A 直管長尺ホース
10B 直管ホース
12 樹脂層
14 外ゴム層
12 内ゴム層
25 熱風炉
26 電子線照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を有し、該樹脂層の内側の内面層としての内ゴム層と、該樹脂層の外側の外ゴム層とを該樹脂層に対し積層して成る樹脂複合ホースを製造するに際し
前記内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを、芯体としてのマンドレルを用いることなく中空状態で順次積層状態に長尺且つ直管状に連続押出成形するとともに、押出成形工程の後工程で未加硫の該直管長尺ホースを熱風炉に連続的に通し、該熱風炉内で該直管長尺ホースに対して電子線照射を行なって、該直管長尺ホースの内部に供給した熱風と該熱風炉の熱風とによるホース内,外面からの加熱作用と電子線照射による加熱作用とによって該直管長尺ホースを連続的に半加硫し、その後の工程で半加硫状態の直管長尺ホースを所定寸法に切断した上で、切断後の半加硫状態の直管ホースをマンドレルに外挿状態に挿し込んで本加硫処理を行うことを特徴とする樹脂複合ホースの製造方法。
【請求項2】
輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を有し、該樹脂層の内側の内面層としての内ゴム層と、該樹脂層の外側の外ゴム層とを該樹脂層に対し積層して成る樹脂複合ホースであって、
前記内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを、芯体としてのマンドレルを用いることなく中空状態で順次積層状態に長尺且つ直管状に連続押出成形するとともに、押出成形工程の後工程で未加硫の該直管長尺ホースを熱風炉に連続的に通し、該熱風炉内で該直管長尺ホースに対して電子線照射を行なって、該直管長尺ホースの内部に供給した熱風と該熱風炉の熱風とによるホース内,外面からの加熱作用と電子線照射による加熱作用とによって該直管長尺ホースを連続的に半加硫し、その後の工程で半加硫状態の直管長尺ホースを所定寸法に切断した上で、切断後の半加硫状態の直管ホースをマンドレルに外挿状態に挿し込んで加硫処理して成る樹脂複合ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−290372(P2007−290372A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75975(P2007−75975)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】