説明

樹脂部品

【課題】複数の取付箇所を要しても、構成部品を持たずに固定が容易になり、なおかつ、樹脂クリップの組み付け忘れを防止できる樹脂部品を提供すること。
【解決手段】樹脂部品20には、貫通孔54が形成されている。そして、この貫通孔54に差し込んだ樹脂クリップ60を被取付部材10に形成されている取付孔18に組み付けることで、樹脂部品20を被取付部材10に取り付けることができる。この樹脂クリップ60は、接続樹脂68を介して貫通孔54の近傍に一体成形されている。そして、樹脂クリップ60を貫通孔54に差し込んでいくと、接続樹脂68を境に樹脂クリップ60が離脱する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部品に関し、詳しくは、貫通孔が形成されており、この貫通孔に差し込んだ樹脂クリップを取付部材に形成されている取付孔に組み付けることで取付部材に取り付けられる樹脂部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の空力性能を向上させる観点から、車両ボデーの側面における下縁のうち、前後のタイヤハウス間の下縁(以下、単に、「車両ボデーの側面下縁」と記す)に樹脂部品であるロッカーモールを取り付ける技術が既に知られている。ここで、下記特許文献1には、樹脂クリップを組み付けてロッカーモールを取り付ける技術が開示されている。これにより、簡便な構造でロッカーモールを取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−85278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、複数の樹脂クリップを介してロッカーモールが取り付けられている場合、樹脂クリップの数が多いと、取付の際、クリップを一つ一つ取ったり、もしくは大量のクリップを手に持たなくてはならない為、取付工数増大の要因の一つになっていた。さらに、その一部の樹脂クリップを組み付け忘れるという問題が発生していた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、複数の取付箇所を要しても、構成部品を持たずに固定が容易になり、なおかつ、樹脂クリップの組み付け忘れを防止できる樹脂部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
第一の発明は、貫通孔が形成されており、この貫通孔に差し込んだ樹脂クリップを取付部材に形成されている取付孔に組み付けることで取付部材に取り付けられる樹脂部品であって、樹脂クリップは接続樹脂を介して貫通孔の近傍に一体成形されており、樹脂クリップを貫通孔に差し込んでいくと、接続樹脂を境に樹脂クリップが離脱することを特徴とする構成である。
この構成によれば、樹脂クリップを取付部材の取付孔に組み付けて樹脂部品を取付部材に取り付けることができる。このとき、取付部材の取付孔に組み付ける前の樹脂クリップは、樹脂部品から突出した状態に保持されている。そのため、樹脂クリップを別に用意せずに組み付けることが出来る為、樹脂部材、取付工具以外に手に持つことがなく、取付工数を減少することが出来る。さらに、複数の樹脂クリップのうち一部の樹脂クリップに組み付け忘れが生じている場合でも、目視によって、その組み付け忘れに容易に気付くことができる。したがって、この樹脂クリップの組み付け忘れを防止できる。
また、一体成形により、クリップと樹脂部材が同じ材料の為、リサイクル率を上げることが出来る。
【0007】
第二の発明は、第一の発明の樹脂部品であって、樹脂クリップとの接続樹脂は1つの樹脂クリップに対し、2接続以上であることが特徴である。
この構成によれば、第一の発明に於いて、樹脂クリップ頭部を取付部材の取付孔方向へ押す際、1接続ならば接続した箇所が中心として樹脂クリップが回転し、取付孔に嵌合せずに離脱するのを防ぐことができる。さらに接続数は2以上乃至8以下が望ましい。
8以上の場合は接続数が多いため、樹脂クリップを離脱するための押圧力が増大してしまうからである。
【0008】
第三の発明は、第一乃至第二の発明のいずれかの樹脂部品であって、樹脂クリップは、その軸心と貫通孔の軸心とが一致する状態で貫通孔の近傍に一体成形されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、樹脂クリップを取付部材の取付孔に組み付けるとき、樹脂部品と取付部材の取付孔を合わせて、樹脂クリップ頭部を取付部材の取付孔方向へ直線上に押すだけで、容易に組み付けることができる。
【0009】
第四の発明は、第一乃至三の発明のいずれかの樹脂部品であって、接続樹脂は樹脂クリップの基体もしくは撓み脚と貫通孔周縁に接続し、なおかつ接続樹脂の長さが樹脂クリップ嵌合時の両接続点の距離より短いことが特徴である。
この構成によれば、樹脂クリップが嵌合する際に接続樹脂が必ず破断し、なおかつ破断した接続樹脂が貫通孔の内側に入り込む。
接続樹脂が破断しなかったり、樹脂部材と樹脂クリップの間に接続樹脂が挟み込んだりする嵌合不具合や、樹脂クリップ頭体周縁に接続樹脂が残留して見栄えが悪く、さらに素手でさわって裂傷する危険を防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るロッカーモールの取り付け構造を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1のロッカーモールの拡大図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線断面図であり、ロッカーモールを取り付ける前の状態を示している。
【図4】図4は、図3において、ロッカーモールを取り付け後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜4を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、樹脂部品の例としてロッカーモール20を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、車両1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0012】
まず、図1〜3を参照して、本発明の実施例に係るロッカーモール20の構成を説明する。ロッカーモール20は、例えば、図1に示すように、車両ボデー10の側面下縁(車両ボデー10の側面における下縁のうち、前後のタイヤハウス間の下縁)にそれぞれ取り付けられる樹脂部品である。このロッカーモール20を取り付けると、車両1の空力性能を向上させることができるため、例えば、車両1の燃費を改善することができる。
【0013】
このロッカーモール20は、図1からも明らかなように、車両ボデー10の左右に対象を成すように形成されているため、以下の説明にあたって、右側のロッカーモール20の説明をすることで、左側のロッカーモール20の説明を省略することとする。
【0014】
図3、4に示すように、ロッカーモール20は、その縦断面が略L字状を成すように、縦壁体30と横壁体50とから構成されている。この縦壁体30の上縁には、適宜の間隔を隔てて複数(この例では、8個)の取付座32が形成されている。この複数の取付座32には、第1のクリップ40を取り付けるための貫通孔34がそれぞれ形成されている。
【0015】
この第1のクリップ40は、頭体42と基体44とから構成されている公知の樹脂クリップである。そして、この複数の貫通孔34には、第1のクリップ40がそれぞれ取り付けられている。
【0016】
一方、横壁体50も、適宜の間隔を隔てて複数(この例では、8個)の貫通孔54が形成されている。この複数の貫通孔54にも、第2のクリップ60を組み付けることができる。
【0017】
この第2のクリップ60も、頭体62と基体64と一対の撓み脚66、66とから構成されている公知の樹脂クリップである。そして、この複数の貫通孔54には、基体62と共に両撓み脚66、66をそれぞれ差し込み可能となっている。この第2のクリップ60が、特許請求の範囲に記載の「樹脂クリップ」に相当する。
【0018】
なお、図3からも明らかなように、この第2のクリップ60は、横壁体50に一体成形されている。詳しくは、この第2のクリップ60は、その基体64および両撓み脚66、66が貫通孔54に対して待ち受け状態となるように、その基体64の先端が左右に対を成す接続樹脂68、68を介して貫通孔54の周縁に接続された状態で横壁体50に対して一体成形されている。
【0019】
この記載が、特許請求の範囲に記載の「樹脂クリップは接続樹脂を介して貫通孔の近傍に一体成形されており」に相当する。このように一体成形されているため、第2のクリップ60は、その基体64および両撓み脚66、66を貫通孔54に差し込む前の状態では、貫通孔54の周縁から下方に突出した状態に保持されている(図3の状態)。なお、このように一体成形されていても、第2のクリップ60の単体(クリップそのもの)としての構成および機能は、上述した公知の樹脂クリップと同じである。
【0020】
また、両接続樹脂68、68は、細くて脆弱となるように形成されている。そのため、この第2のクリップ60は、その基体64および両撓み脚68、68が貫通孔54に差し込まれるように頭体62が押し込まれると、この両接続樹脂68、68を境に基体64が貫通孔54の周縁から離脱する構成となっている。この記載が、特許請求の範囲に記載の「樹脂クリップを貫通孔に差し込んでいくと、接続樹脂を境に樹脂クリップが離脱する」に相当する。
【0021】
なお、この両接続樹脂68、68は、その長さ(図3において、「距離L1」)が、基体64および両撓み脚66、66を貫通孔54に差し込んだときにおける撓み脚66の基端と、同差し込んだときにおける第2の取付座52側の接続樹脂68の端部との長さ(図4において、「距離L2」)より短くなるように設定されている。この記載が、特許請求の範囲に記載の「前記接続樹脂は樹脂クリップの基体もしくは撓み脚と貫通孔周縁に接続し、樹脂クリップが嵌合した際の樹脂クリップ及び貫通孔の両接続点の距離より短い長さである」に相当する。
【0022】
また、この第2のクリップ60は、その基体64の軸心と横壁体50の貫通孔54の軸心とが一致するように貫通孔54の周縁に一体成形されている。この記載が、特許請求の範囲に記載の「樹脂クリップは、その軸心と貫通孔の軸心とが一致する状態で貫通孔の近傍に一体成形されている」に相当する。ロッカーモール20は、これら縦壁体30と横壁体50とから剛性を有する合成樹脂によって一体的に成形されている。
【0023】
次に、図3を参照して、ロッカーモール20が取り付けられる車両ボデー10の側面下縁の構造を説明する。この側面下縁には、上述したロッカーモール20の縦壁体30と略向かい合う格好を成す縦壁面12と、同横壁体50と略向かい合う格好を成す横壁面16とが形成されている。
【0024】
この縦壁面12には、ロッカーモール20の縦壁体30の複数の貫通孔34にそれぞれ対応する複数の第1の取付孔14が形成されている。一方、この横壁面16にも、ロッカーモール20の横壁体50の複数の貫通孔54にそれぞれ対応する複数の第2の取付孔18が形成されている。車両ボデー10の側面下縁は、このような構造となっている。
【0025】
続いて、図3〜4を参照して、ロッカーモール20を車両ボデー10の側面下縁に取り付ける手順を説明する。まず、図3に示す状態から、第1のクリップ40を車両ボデー10の第1の取付孔14に組み付ける作業を行う。この作業を、全ての第1のクリップ40にて行う。これにより、ロッカーモール20の上縁が車両ボデー10の縦壁面12に取り付けられる。
【0026】
次に、この組み付け状態のままで、ロッカーモール20の各貫通孔54を車両ボデー10の各第2の取付孔18に位置あわせする作業を行う。
【0027】
その後、第2のクリップ60の頭体62を押し込み、この押し込みによって基体64および両撓み脚66、66を貫通孔54に差し込み、この差し込みによって両撓み脚66、66を貫通孔54に組み付ける作業を行う(図4参照)。この作業も全ての第2のクリップ60にて行う。これにより、ロッカーモール20の下縁が車両ボデー10の横壁面16に取り付けられる。
【0028】
このようにして、ロッカーモール20の上下の縁が車両ボデー10の縦壁面12と横壁面16とに取り付けられるため、ロッカーモール20を車両ボデー10の側面下縁に取り付けることができる。
【0029】
本発明の実施例に係るロッカーモール20は、上述したように構成されている。この構成によれば、第1のクリップ40および第2のクリップ60を車両ボデー10の両取付孔14、18に組み付けてロッカーモール20を車両ボデー10の側面下縁に取り付けることができる。このとき、車両ボデー10の取付孔18に組み付ける前の第2のクリップ60は、第2の取付座52の座面から下方に突出した状態に保持されている。そのため、複数の第2のクリップ60のうち一部の第2のクリップ60に組み付け忘れが生じている場合でも、目視によって、その組み付け忘れに容易に気付くことができる。したがって、この第2のクリップ60の組み付け忘れを防止できる。
【0030】
また、この構成によれば、接続樹脂68、68は対を成すように形成されている。そのため、接続樹脂68が1つの場合と比較すると、第2のクリップ60の頭体62を押し込んで基体64および両撓み脚66、66を貫通孔54に差し込むとき、この第2のクリップ60そのものが回転してしまい、基体64および両撓み脚66、66が貫通孔54に嵌合することなく第2のクリップ60が接続樹脂68から離脱してしまうことを防止できる。
【0031】
また、この構成によれば、第2のクリップ60は、その基体64の軸心と横壁体50の貫通孔54の軸心とが一致するように横壁体50に一体成形されている。そのため、第2のクリップ60を車両ボデー10の取付孔18に組み付けるとき、容易に組み付けることができる。
【0032】
また、この構成によれば、両接続樹脂68、68は、その長さ(図3において、「距離L1」)が、基体64および両撓み脚66、66を貫通孔54に差し込んだときにおける撓み脚66の基端と、同差し込んだときにおける第2の取付座52側の接続樹脂68の端部との長さ(図4において、「距離L2」)より短くなるように設定されている。そのため、第2のクリップ60が嵌合する際に両接続樹脂68、68が必ず破断し、なおかつ破断した両接続樹脂68、68が貫通孔54の内側に入り込む。したがって、両接続樹脂68、68が破断しなかったり、ロッカーモール20と第2のクリップ60の間に両接続樹脂68、68が挟み込んだりする嵌合不具合や、第2の樹脂クリップ60の頭体62周縁に両接続樹脂68、68が残留して見栄えが悪く、さらに素手でさわって裂傷する危険を防止する効果がある。
【0033】
また、この構成によれば、両接続樹脂68、68は、その長さが、基体64および両撓み脚66、66を貫通孔54に差し込むときの差し込みストローク(差込長)より短くなるように設定されている。
そのため、第2のクリップ60が嵌合する際に両接続樹脂68、68が必ず破断し、なおかつ破断した両接続樹脂68、68が貫通孔54の内側に入り込む。したがって、両接続樹脂68、68が破断しなかったり、ロッカーモール20と第2のクリップ60の間に両接続樹脂68、68が挟み込んだりする嵌合不具合や、第2の樹脂クリップ60の頭体62周縁に両接続樹脂68、68が残留して見栄えが悪く、さらに素手でさわって裂傷する危険を防止する効果がある。
【0034】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、樹脂部品の例として、車両外装品であるロッカーモール20を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、被取付部材に取り付けられる樹脂製の部材であれば、どのようなものでも構わない。
【符号の説明】
【0035】
10 車両ボデー(被取付部材)
18 第2の取付孔(取付孔)
20 ロッカーモール(樹脂部品)
54 貫通孔
60 第2のクリップ(樹脂クリップ)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成されており、この貫通孔に差し込んだ樹脂クリップを取付部材に形成されている取付孔に組み付けることで取付部材に取り付けられる樹脂部品であって、
樹脂クリップは接続樹脂を介して貫通孔の近傍に一体成形されており、
樹脂クリップを貫通孔に差し込んでいくと、接続樹脂を境に樹脂クリップが離脱することを特徴とする樹脂部品。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂部品であって、
接続樹脂は1つの樹脂クリップに対して、2接続以上であることを特徴とする樹脂部品。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の樹脂部品であって、
樹脂クリップは、その軸心と貫通孔の軸心とが一致する状態で貫通孔の近傍に一体成形されていることを特徴とする樹脂部品。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂部品であって、
前記接続樹脂は樹脂クリップの基体もしくは撓み脚と貫通孔周縁に接続し、樹脂クリップが嵌合した際の樹脂クリップ及び貫通孔の両接続点の距離より短い長さであることを特徴とする樹脂部品。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−196395(P2011−196395A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60745(P2010−60745)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(308031108)内浜化成株式会社 (18)
【Fターム(参考)】