説明

機能素子の寸法の測定方法、機能素子付き基板の製造方法、機能素子付き基板および電子装置

【課題】機能素子の寸法を精度よく求めることができ、精度よく機能素子の周波数特性を推定することのできる機能素子の寸法の測定方法を提供すること。
【解決手段】 機能素子の寸法の測定方法は、基板2と、基板2上に設けられた固定電極31および可動電極32を有する機能素子3とを有する機能素子付き基板1に対し、機能素子3の寸法を測定する方法であって、固定電極31の形成と同時に、固定電極31と同様の方法で第1の検査用膜41を形成する工程と、可動電極32の形成と同時に、可動電極32の形成と同様の方法で第2の検査用膜42を形成する工程と、第1の検査用膜41と第2の検査用膜42とからなる検査体4の所定の部位の寸法を測定する工程と、測定の結果から、機能素子3の所定の部位の寸法を求める工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能素子の寸法の測定方法、機能素子付き基板の製造方法、機能素子付き基板および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を利用し、半導体基板にMEMS素子を備えたセンサ、共振器、通信用デバイスなどの電子装置が注目されている。このような電子装置として、基板と、この基板上に形成された機能素子(MEMS素子)と、基板上に設けられ、機能素子が配置された空洞部を画成する素子周囲構造体とを有する電子装置が知られている(例えば、特許文献1)。
このような電子装置において、機能素子の周波数特性は、当該機能素子の寸法に依存し、特に、機能素子が有する可動板の形状、大きさ、形成位置等に大きく依存する。
【0003】
機能素子の寸法は、例えば、基板上に機能素子を形成した時点で測定することができる。しかしながら、可動板の寸法を測定する場合、例えば、可動板の境界が把握しづらく、正確に寸法を測定することが困難であった。また、部品ごとに寸法値や合わせ値を測定することで、機能素子の寸法値等を把握することも可能ではある。しかしながら、これらの値は機能素子から離れたところにある代表値を使ったもので、正確な測定値把握には向かない。
このように、機能素子の寸法を正確に測れないと、機能素子を実際に作動させるまで機能素子の周波数特性が把握できない。このため、基板上に形成された機能素子の周波数特性が分からないまま、所望の周波数特性を有していない機能素子についても電子装置を作ることとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−221435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、機能素子の寸法を精度よく求めることができ、精度よく機能素子の周波数特性を推定することのできる機能素子の寸法の測定方法、該機能素子付き基板の製造方法、該機能素子付き基板および電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の機能素子の寸法の測定方法は、基板と、前記基板上に設けられた固定電極および前記固定電極と空隙を隔てて対向配置された可動部を備える可動電極を有する機能素子とを有する機能素子付き基板に対し、前記機能素子の寸法を測定する方法であって、
前記固定電極の形成と同時に、前記基板上の前記固定電極と接触しない位置に、前記固定電極と同様の方法で第1の検査用膜を形成する工程と、
前記可動電極の形成と同時に、前記基板上の前記固定電極および前記可動電極と接触しない部位に、前記可動電極の形成と同様の方法で第2の検査用膜を形成する工程と、
前記第1の検査用膜と前記第2の検査用膜とからなる検査体の所定の部位の寸法を測定する工程と、
前記測定の結果から、前記機能素子の所定の部位の寸法を求める工程とを有することを特徴とする。
これにより、機能素子の寸法を精度よく求めることができ、精度よく機能素子の周波数特性を推定することのできる機能素子の寸法の測定方法を提供することができる。
【0007】
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記機能素子の寸法が求められる所定の部位の設計された寸法をA[μm]、前記検査体の測定される所定の部位の目的とする寸法をB[μm]としたとき、0.1≦A/B≦1000の関係を満足することが好ましい。
これにより、機能素子の寸法をより正確に把握することができる。
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記機能素子の寸法が求められる所定の部位の寸法の方向と平行に前記検査体の前記所定の部位の寸法を測定するものであり、
前記第1の検査用膜の一端と、前記第2の検査用膜の一端とを前記検査体の寸法の測定に用いることが好ましい。
これにより、固定電極に対応する第1の検査用膜と、可動電極に対応する第2の検査用膜の位置関係およびこれらの大きさ形状のずれが検査体の寸法の測定結果に反映され、機能素子の寸法をより精度よく求めることができる。
【0008】
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記検査体は、略長方形状の前記第1の検査用膜と略長方形状の前記第2の検査用膜とが直交しており、
前記第1の検査用膜の前記第2の検査用膜が重なっていない辺と、前記第1の検査用膜と重なっており、前記辺からより離れた前記第2の検査用膜の辺とが寸法の測定に用いられることが好ましい。
これにより、検査体の寸法の測定の基点が明確なものとなり、好適に検査体の寸法測定を行うことができる。
【0009】
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記第2の検査用膜は、前記第1の検査用膜と重なるようにして設けられ、前記第1の検査用膜の端部の少なくとも一部が露出するようにして形成された開口部を有し、
前記開口部から露出した前記第1の検査用膜の端部と、前記第2の検査用膜の外周部の一端とが寸法の測定に用いられることが好ましい。
これにより、機能素子の所定の部位における寸法の測定精度が向上する。
【0010】
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記可動電極は、前記固定電極を挟んで対向して設けられ、可動部を支持する一対の支持部と、前記各支持部と可動部とを連結する一対の連結部と有し、
前記第2の検査用膜は、前記第1の検査用膜と重なるようにして設けられ、前記第1の検査用膜の一端の少なくとも一部が露出するようにして形成された第1の開口部と、前記第1の検査用膜の前記一端と対向する他端の少なくとも一部とが露出するようにして形成された第2の開口部とを有し、
前記第1の開口部から露出した前記第1の検査用膜の前記一端と、前記第2の開口部から露出した前記第1の検査用膜の前記他端とが寸法の測定に用いられることが好ましい。
これにより、可動板が両持ち支持された機能素子の所定の部位における寸法を好適に求めることができる。
【0011】
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記基板上に、1つの前記機能素子につき前記検査体は2つ以上形成されるものであり、
前記2以上の検査体のうち、一対の前記検査体が、前記機能素子を介して対向するように形成されることが好ましい。
これにより、機能素子の所定の部位における寸法の測定精度が向上する。
【0012】
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、形成される前記検査体の前記所定の部位の目的とする寸法と、測定された寸法とを比較することにより、前記機能素子の所定の部位の寸法を求めることが好ましい。
これにより、機能素子の寸法を精度よく求めることができる。
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記第2の検査用膜の形成と同時に、前記第2の検査用膜付近に、前記第2の検査用膜と同様の方法で第3の検査用膜形成することが好ましい。
これにより、機能素子の所定の部位における寸法の測定精度が向上する。
【0013】
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記第1の検査用膜と前記固定電極とは、同じ材料によって構成されていることが好ましい。
これにより、固定電極で生じる形状、位置ずれ等の誤差が、第1の検査用膜で生じる誤差により同程度に反映されやすいものとなる。
本発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記第2の検査用膜と前記可動電極とは、同じ材料によって構成されていることが好ましい。
これにより、可動電極で生じる形状、位置ずれ等の誤差が、第2の検査用膜で生じる誤差により同程度に反映されやすいものとなる。
【0014】
発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記検査体は、前記機能素子との離間距離が0.1〜1000μmの位置に配置されることが好ましい。
これにより、検査体が機能素子の寸法の誤差(位置ずれ、機能素子の形状等による誤差)を反映しやすいものとなる。また、検査体が機能素子の周波数特性に影響を与えることが防止される。
【0015】
発明の機能素子の寸法の測定方法では、前記機能素子は、前記基板上に複数配置されるものであり、
前記基板上には、1つの前記機能素子につき1つ以上の前記検査体が形成されることが好ましい。
これにより、機能素子の所定の部位における寸法の測定精度が向上する。
発明の機能素子の寸法の測定方法では、2つの前記検査体において、各検査体における第1の検査用膜と前記第2の検査用膜との位置関係を比較することにより、前記可動電極の前記固定電極に対する配置角度を推定することが好ましい。
これにより、可動電極の固定電極に対する配置角度を推定することができる。
【0016】
本発明の機能素子付き基板の製造方法は、基板上に、固定電極と第1の検査用膜とを、同様の方法により形成する工程と、
前記基板上に、可動電極と第2の検査用膜とを、同様の方法により形成する工程と、
を有し、
前記固定電極および前記可動電極で構成される機能素子と前記第1の検査用膜および第2の検査用膜で構成される検査体とは接触しないように形成されており、
前記検査体は、所定の部位の寸法が測定されることにより、前記機能素子の所定の部位の寸法を求めるために用いられることを特徴とする。
これにより、機能素子の寸法を精度よく求めることができ、精度よく機能素子の周波数特性を推定することのできる機能素子付き基板の製造方法を提供することができる。
【0017】
本発明の機能素子付き基板は、基板と、
前記基板上に配置され、前記基板上に設けられた固定電極および前記固定電極と空隙を隔てて対向配置された可動部を備える可動電極を有する機能素子と、
所定の部位の寸法が測定されることにより、前記機能素子の所定の部位の寸法を求めるための検査体とを有し、
前記検査体は、前記基板上の前記機能素子と接触しない位置に、前記固定電極と同様の方法で形成された第1の検査用膜と、前記可動電極と同様の方法で形成された第2の検査用膜とを有することを特徴とする。
これにより、機能素子の寸法を精度よく求めることができ、精度よく機能素子の周波数特性を推定することのできる機能素子付き基板を提供することができる。
本発明の電子装置は、本発明の機能素子付き基板を有することを特徴とする。
これにより、備えられた機能素子の寸法を精度よく求めることができ、精度よく機能素子の周波数特性を推定することのできる電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る機能素子付き基板を示す平面図である。
【図2】図1に示す機能素子付き基板の断面図(x−x線断面図)および図1に示す機能素子の拡大平面図である。
【図3】図1の機能素子付き基板が備える検査体の拡大平面図である。
【図4】図1に示す機能素子付き基板の製造方法を示す断面図(図1の機能素子付き基板のy−y線断面図)である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る電子装置の断面図である。
【図6】図5に示す電子装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】図5に示す電子装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る機能素子付き基板が備える検査体を示す拡大平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る機能素子付き基板を示す平面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る機能素子付き基板を示す平面図である。
【図11】図10に示す機能素子付き基板の断面図(x’−x’線断面図)である。
【図12】図10の機能素子付き基板が備える検査体の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す各実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る機能素子付き基板を示す平面図、図2は、図1に示す機能素子付き基板の断面図(x−x線断面図)および図1に示す機能素子の拡大平面図、図3は、図1の機能素子付き基板が備える検査体の拡大平面図、図4は、図1に示す機能素子付き基板の製造方法を示す断面図(図1の機能素子付き基板のy−y線断面図)、図5は、本発明の第1実施形態に係る電子装置の断面図、図6、図7は、図5に示す電子装置の製造方法を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1〜図6の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0020】
まず、本発明の機能素子の寸法の測定方法、機能素子付き基板の製造方法の説明に先立ち、本発明の機能素子付き基板について説明する。
図1、図2に示す機能素子付き基板1は、基板2と、機能素子3と、検査体4と、半導体回路(図示せず)とを有している。以下これら各部について順次説明する。
基板2は、平面視形状が例えば、略円形状を有する板部材である。このような基板2は、半導体で構成された半導体基板21上に、絶縁膜22と、窒化膜23とをこの順に積層することにより構成されている。なお、基板2は、平面視形状が略正方形状や略長方形状、略楕円形状等の任意の他の形状であってもよい。
【0021】
機能素子3は、基板2上に形成された固定電極31と、可動電極32とを有している。
固定電極31は、平面視した際に略長方形となっており、一方の長辺の中央付近からは、他の回路と導通するための配線(図示せず)が配されている。
可動電極32は、平面視した際に略長方形となっており、その一方の長辺が固定電極31上に配されるように、一部が固定電極31と重複している。可動電極32は、基板2の窒化膜23上に形成された支持部321と、固定電極31と空隙を隔てて対向配置された可動板(可動部)322と、支持部321と可動板322とを連結する連結部323とを有している。可動板322は、連結部323を介して支持部321に片持ち支持されている。
【0022】
可動板322に、可動板322の固有振動数と同等の周波数を持つ高周波を印加すると、可動板322が振動(共振)し、容量変化がおきることで、固定電極31および可動板322間に電流が流れ、固定電極31から前記電流が出力(検出)される。
なお、機能素子3は、基板2上に複数配されているが、説明を簡略化するため、図示の構成では、基板2上に1つの機能素子3が配されている。
【0023】
図1、図3に示すように、検査体4は、基板2上の機能素子3と接触しない位置に設けられ、第1の検査用膜41と第2の検査用膜42とを有している。また、1つの機能素子3につき2つの検査体4が、可動電極32の可動板322にある長辺の方向と平行な方向に、機能素子3を介して対向して配置されている。なお、上記の2つの検査体4は、同一の構成となっている。
【0024】
検査体4は、後述するように、所定の部位の寸法を測定されることにより、機能素子3の所定の部位の寸法を推定するのに、および周波数特性を推定するのに用いられる。
また、検査体4は、機能素子3を直接測定するのに比べ、寸法の測定に適した形状をなしている。
また、検査体4は、検査体4の所定の部位の目的とする寸法からの誤差が十分に精度よく測定されるような大きさとなっており、機能素子3よりも平面視における面積が小さいものとなっている。
【0025】
また、検査体4は、機能素子3と所定の離間距離を置いて配置されている。このように検査体4と機能素子3とが所定の離間距離を隔てて配置されることにより、機能素子3の駆動時において検査体4が周波数特性に影響を与えるのを防止することができる。
また、本実施形態においては、検査体4と機能素子3との離間距離は、0.1〜10000μmであることが好ましい。このように、検査体4を十分に機能素子3から近い部位に配置することにより、検査体4が機能素子3の寸法の誤差(位置ずれ、機能素子3の形状等による誤差)を反映しやすいものとなる。また、検査体4が機能素子3の周波数特性に影響を与えることが防止される。
【0026】
また、上述したように、本実施形態では、1つの機能素子3につき2つの検査体4が配置されている。このため、基板2上に複数ある機能素子3毎について、検査体4による後述する寸法の推定が可能となり、機能素子3の所定の部位の寸法測定の精度が向上する。
図3に示すように、第1の検査用膜41は、略長方形をなしており、長辺方向が可動電極32の可動板322にある長辺の方向と垂直になるように配されている。また、第1の検査用膜41は、固定電極31と同様の材料で構成されており、固定電極31と同様の方法により形成されている。
【0027】
第2の検査用膜42は、略長方形をなしており、長辺方向が可動電極32の可動板322にある長辺の方向と平行になるように、かつ、第1の検査用膜41と直交して交差するように配されている。また、第2の検査用膜42は、可動電極32と同様の材料で構成されており、可動電極32と同様の方法により形成されている。
図1〜図3において、半導体基板21上およびその上方には、図示しない半導体回路が作り込まれている。この半導体回路は、必要に応じて形成されたMOSトランジスタ等の能動素子、コンデンサ、インダクタ、抵抗、ダイオード、配線(前記電極配線、配線層42、44を含む)等の回路要素を有している。
【0028】
上述したような、機能素子付き基板1は、後述するように、検査体4を用いることにより、精度よく機能素子3の所望の部位の寸法の設計された値からの誤差が推定でき、これから、精度よく機能素子3の前記部位の寸法および機能素子3の固有振動数等の周波数特性が容易に把握できるものである。
なお、上記の機能素子付き基板1は、第2の検査用膜42の周囲に後述する犠牲層220を有するが、説明を簡易化するために、図1、図3では省略した。
【0029】
次に、本発明の機能素子付き基板の製造方法、機能素子の寸法の測定方法について説明する。
また、本発明の機能素子付き基板の製造方法は、固定電極と第1の検査用膜とを、同時に、同様の方法により形成する固定電極形成工程(第1の検査用膜形成工程)と、前記基板上に、可動電極と第2の検査用膜とを、同様の方法により形成する可動電極形成工程(第2の検査用膜形成工程)とを備える。
【0030】
本発明の機能素子の寸法の測定方法は、基板上に、上述した第1の検査用膜形成工程(固定電極形成工程)と、第2の検査用膜形成工程(可動電極形成工程)とに加えて、前記第1の検査用膜と前記第2の検査用膜とからなる検査体の所定の部位の寸法を測定する検査体測定工程と、前記測定の結果から、前記機能素子の所定の部位の寸法を求める寸法測定工程とを有する。
【0031】
以下、各工程について順次説明する。
[基板準備工程]
第1の検査用膜形成工程に先立ち、基板2を準備する。
まず、図4(a)に示すように、シリコン基板等の半導体よりなる半導体基板100を用意する。なお、半導体基板100の代わりに、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、ダイヤモンド基板、合成樹脂基板等を用いてもよい。次いで、用意した半導体基板100の表面(上面)を熱酸化することによりシリコン酸化膜(絶縁膜)110を形成し、さらに、シリコン酸化膜110上にシリコン窒化膜120をスパッタリング法、CVD法等により形成する。これにより基板2が得られる。
【0032】
シリコン酸化膜110は、半導体基板100およびその上方に半導体回路を形成する際の素子間分離膜として機能する。また、シリコン窒化膜120は、後に行われるリリース工程において実施されるエッチングに対する耐久性を有しており、いわゆるエッチングストップ層として機能する。なお、シリコン窒化膜120は、パターニング処理によって、機能素子3および検査体4を形成する平面範囲を含む範囲に限定して形成する。これにより、半導体基板100およびその上方に半導体回路を形成する際の障害となることがなくなる。なお、シリコン窒化膜120は、必要に応じて、コンデンサ等の回路要素を形成するために、範囲を限定せずに形成することもできる。
【0033】
[第1の検査用膜形成工程(固定電極形成工程)]
次いで、図4(b)に示すように、シリコン窒化膜120上に、固定電極31および第1の検査用膜41を形成するためのシリコン膜200をスパッタリング法、CVD法等により形成し、このシリコン膜200にリンイオン、ボロン、ヒ素等の不純物イオンをドープして導電性を付与する。そして、シリコン膜200上にフォトレジストを塗布し、固定電極31および第1の検査用膜41の形状(平面視形状)にパターニングしフォトレジスト膜210を形成する。なお、シリコン膜200を構成するシリコンは、多結晶シリコンであってもよいし、非結晶シリコンであってもよい。
【0034】
次いで、図4(c)に示すように、パターニングしたフォトレジスト膜210をマスクとしてシリコン膜200をエッチングした後、フォトレジスト膜210を除去する。
次いで、図4(d)に示すように、固定電極31および第1の検査用膜41を覆うようにPSG(リンドープガラス)、シリコン酸化膜等からなる犠牲層220を熱酸化法、スパッタリング法、CVD法等により形成する。
これにより、固定電極31と第1の検査用膜41とが、同様の方法により同時に形成される。また、固定電極31と第1の検査用膜41とは、このように同様の方法により同時に形成されることで、同じ材料によって構成されるものとなる。
【0035】
[第2の検査用膜形成工程(可動電極形成工程)]
次いで、図4(e)に示すように、シリコン窒化膜120および犠牲層220上に、可動電極32および第2の検査用膜42を形成するためのシリコン膜230をスパッタリング法、CVD法等により形成し、形成したシリコン膜230にリンイオン、ボロン、ヒ素等の不純物イオンをドープして導電性を付与する。そして、シリコン膜230上からフォトレジストを塗布し、可動電極32の形状(平面視形状)および第2の検査用膜42の形状(平面視形状)にパターニングしフォトレジスト膜240を形成する。なお、シリコン膜230を構成するシリコンは、多結晶シリコンであってもよいし、非結晶シリコンであってもよい。
【0036】
次いで、図4(f)に示すように、フォトレジスト膜240をマスクとしてシリコン膜230をエッチングした後、フォトレジスト膜240を除去する。これにより、可動電極32および第2の検査用膜42が同様の方法により同時に形成される。なお、可動電極32は、支持部321、可動板322および連結部323が一体的に形成される。また、可動電極32と第2の検査用膜42とは、このように同様の方法により同時に形成されることで、同じ材料によって構成されるものとなる。
【0037】
そして、可動電極32と固定電極31との間にある犠牲層220を後述するようなリリース工程と同様の手法で除去すると、固定電極31および可動電極32を有する機能素子3と、第1の検査用膜41および第2の検査用膜42を有する検査体4とが形成される。
以上のような工程により、機能素子付き基板1を製造することができる。なお、機能素子付き基板1が有する半導体回路が有するMOSトランジスタ等の能動素子、コンデンサ、インダクタ、抵抗、ダイオード、配線等の回路要素は、上述した適宜の工程の途中において作り込んでおくことができる。例えば、シリコン酸化膜110とともに回路素子間分離膜を形成したり、固定電極31や可動電極32とともにゲート電極、容量電極、配線等を形成したり、犠牲層220とともにゲート絶縁膜、容量誘電体層、層間絶縁膜を形成したりすることができる。
【0038】
[検査体測定工程]
次に、製造された機能素子付き基板1について、検査体4の所定の部位の寸法を測定する。
検査体4の第1の検査用膜41は、固定電極31に対応するものであり、固定電極31についての位置、形状、大きさの理想の値からのずれに対応する同程度のずれ(誤差)を有していると仮定される。また、第2の検査用膜42は、可動電極32に対応するものであり、可動電極32についての位置、形状、大きさの理想の値からのずれに対応する同程度のずれ(誤差)を有していると仮定される。
【0039】
すなわち、検査体4と機能素子3とは同時に同様の方法で形成されたものであるため、例えば、パターニング時のマスク等のずれによって、固定電極31と可動電極32との位置ずれが起きた場合、その位置ずれの距離、方向は、第1の検査用膜41と第2の検査用膜42との間で起きた位置ずれの距離、方向とほぼ同様である。
同様に、例えば固定電極31が過度にエッチングされた場合、固定電極31が過度にエッチングされる度合いと、第1の検査用膜41が過度にエッチングされる度合いとはほぼ同じである。
【0040】
以上より、機能素子3と検査体4とは、その大きさ、形状の違いに関わらず、位置ずれ、エッチングの過不足による影響を同程度に受けている。特に第1の検査用膜41と固定電極31との構成材料が同じであり、第2の検査用膜42と可動電極32との構成材料が同一である場合、このような傾向は顕著になる。
このため、機能素子3の本来寸法を測定したい部位(以下、「希望測定部位」ともいう。)の代わりに、検査体4の所定の部位(以下、「実測部位」ともいう。)について寸法を測定することにより、後述するように、機能素子3の希望測定部位の寸法の目的とする値(設計値)からの誤差を推定することができ、機能素子3の希望測定部位の寸法を求めることができる。
【0041】
本工程では、まず、検査体4の実測部位の決定前に、対応する機能素子3の希望測定部位を決定する。機能素子3を平面視した際において、希望測定部位は、2点の基点を有する線分である。
機能素子3の希望測定部位としては、周波数特性に影響を与えやすい部位とすることが好ましい。このため、固定電極31と可動電極32との位置ずれ、可動電極32の振動部分(特に可動板322)の形状、大きさを総合的に判断する指標として、例えば、図2(a)、(b)中で、固定電極31の可動電極32側(図2左側)にある長辺を通る線を線A、可動電極32の固定電極31上にある長辺(図2右側の長辺)を通る線を線Bとしたとき、線A−線Bの距離を測定することが考えられ、本実施形態では、線Aを通る点A1と線Bを通る点B1との間を希望測定部位とする。このような希望測定部位において設計された寸法からの誤差が生じ、固定電極31と可動電極32との位置がずれたり、可動電極32が大きさが変化したりする場合、可動電極32の振動部分の質量および質量分布の変化が大きく、機能素子3の周波数特性に影響が大きい。
【0042】
次に、機能素子3の希望測定部位に対応する検査体4の実測部位を決定する。
本実施形態では、図3に示す機能素子3付近に設けられた検査体4について、実測部位として、第1の検査用膜41の一方の短辺411(図3中左側の短辺)と、第2の検査用膜42の短辺411とは反対側にある長辺421(図3中右側の長辺)との距離を測定することとし、短辺411上にある点Dと長辺421上にある点Eとを基点とする実測部位とする。係る実測部位は、上述した希望実測部位と平行な線分である。また、第1の検査用膜41と第2の検査用膜42とを測定に用いることから、実測部位で測定される寸法に、その実測部位の測定方向における、第1の検査用膜41と第2の検査用膜42との位置関係が反映されるとともに、第1の検査用膜41の大きさ、形状のずれ(形成時よるエッチング等のずれ)、第2の検査用膜42の大きさ、形状のずれ(形成時よるエッチング等のずれ)が反映される。また、上述した点Dは、第1の検査用膜41と基板2との境界にあり、点Eは、第2の検査用膜42と第1の検査用膜41との境界にあることから、これらの点は、明確に認識でき測定の基点として用いることができる。
【0043】
また、機能素子3の希望測定部位の設計された寸法をA[μm]、検査体4の実測部位の設計された寸法をB[μm]としたとき、0.1≦A/B≦1000の関係を満足することが好ましく、1.0≦A/B≦10の関係を満足することがより好ましい。これにより、検査体4の測定される寸法において、機能素子3の寸法の誤差をより正確に把握することができる。
【0044】
ところで、機能素子3自身について直接寸法を測定することも考えられる。
しかしながら、機能素子3を観察した場合、図2(b)中の点A1−点B1で線A−線Bの距離を測定する場合、点A1は、可動電極32が固定電極31を覆っているため位置が不明瞭となる。また、図2(b)中の線A上にある点A2と線B上にあり、可動電極32の角部と想定される点B2で線A−線Bの距離を測定する場合、通常エッチング等で形成された可動電極32は、可動電極32の角部が丸みを帯びてしまうため、可動電極32の長辺と短辺との交点である点B2が正確には把握しにくい。
【0045】
また、線Bの代わりに、可動電極32の連結部323によって形成される線Cと、線Aとで距離を測定することも考えられる。線Cは、犠牲層220を介して固定電極31上に形成された、可動電極32の支持部321と連結部323との境界である。このため、線Cは、固定電極31の位置を反映した位置に配されている。しかしながら、機能素子3における線Cは、しわのように観察され、明確な境界が判定できない。
【0046】
また、機能素子3の全体を観察して、機能素子3の形状、大きさを判断する方法も考えられるが、機能素子3の形状、大きさは、その周波数特性所定の範囲内とするために、狭い範囲の誤差しか許容されないため、誤差を測定することが困難な場合がある。例えば、このような場合、測定したい寸法の許容される誤差(例えば、±0.02μm以下)に対して、大きすぎるスケールレンジ(例えば、5μm)で観察することになり、誤差を測定しにくい。
なお、検査体4を観察する手段としては、各種電子顕微鏡、光学顕微鏡、CCDカメラ等の観察手段を用いることができる。
【0047】
[寸法測定工程]
次に、上記の測定の結果から、実測部位の目的とする寸法(設計された寸法)と、測定された寸法とを比較することにより、機能素子3の希望測定部位の寸法の設計された値からの誤差(寸法誤差)を推定し、さらに、機能素子3の希望測定部位の寸法を求める。
形成された検査体4の測定部位の目的とする(設計した)寸法(Si[μm])と、測定された寸法(Sa[μm])との比較は、例えば、誤差(Sa−Si[μm])を求めることにより行うことができる。
【0048】
また、本実施形態において、機能素子3の寸法誤差は、例えば、検査体4での誤差(Sa−Si[μm])とすることができる。
また、機能素子3の希望測定部位の寸法は、例えば、希望測定部位の設計された寸法に機能素子3の寸法誤差を加えることにより得られる。
機能素子3の周波数特性の推定は、希望測定部位の寸法と周波数特性とについての関数やデータベースを参照し、これらに対し機能素子3の求めれた寸法をあてはめることにより行うことができる。また、機能素子3の周波数特性の推定は、例えば、機能素子3の寸法誤差と周波数特性とについての関数やデータベースを参照し、これらに対し機能素子3の寸法誤差をあてはめて行うものであってもよい。
【0049】
また、本実施形態では、上述したように、一対の検査体4が、機能素子3を介して対向するように形成されている。このため、一対の検査体4において、各検査体4における第1の検査用膜41と第2の検査用膜42との位置関係を比較することにより、可動電極32の固定電極31に対する配置角度を推定することができる。これにより、より厳密な機能素子3の寸法管理が可能となる。
【0050】
具体的には、例えば、各検査体4の実測部位における誤差を算出する。そして、各検査体4の実測部位における誤差同士に差があった場合、第1の検査用膜41と第2の検査用膜42の位置関係が2つの各検査体4で異なることが推定されるため、可動電極32の固定電極31に対する配置角度について、例えば、可動電極32の長辺が固定電極31の長辺と平行であるかそうでないか、またどの程度の角度を有しているのか等を推定することができる。
【0051】
以上のように、機能素子3の寸法が反映され、寸法の測定が容易な検査体4の寸法を基準とすることにより、機能素子3の寸法を精度よく求めることができ、機能素子3の寸法の管理が容易となる。この結果、機能素子3の周波数特性を容易に把握することができるとともに、機能素子3の性能が十分に発揮されない場合に原因の解析を行うことができる。以上のような方法は、機能素子3の希望測定部位の設計される寸法と、希望測定部位の許容される寸法誤差の範囲とで、スケール(桁数)が大きく異なる場合には、特に有効である。
【0052】
また、特に、機能素子3の希望測定部位が測定しにくい部位であった場合でも、検査体4の対応する実測部位を測定することにより、希望測定部位の寸法が精度よく求められる。
なお、機能素子3の寸法が求める範囲内にない場合や、推定された周波数特性が所望の特性の範囲内でない場合、必要に応じて、例えば、機能素子3を作成しなおしたり、所望の周波数特性を有しない機能素子3を廃棄したり、機能素子3が所望の周波数特性を有するように機能素子3に対し調整を加えたりすることができる。調整方法の一例としては、可動板322の一部をレーザ照射等により除去して質量を減少させる方法、逆に、可動板322に重りを付与して重量を増大させる方法が挙げられる。可動板322の重量の増減の程度は、上記の求められた寸法から判断する。
【0053】
また、本実施形態では、機能素子付き基板1に対して、上記の検査体測定工程および誤差寸法推定工程を行ったが、犠牲層220を除去する前にこれらの工程を行ってもよい。犠牲層220は、酸化したシリコンで構成されており、かつ、非常に薄いため、光学的には透明であり、検査体4の寸法の測定に影響を与えず、機能素子3の希望測定部位の寸法の測定に影響を与えない。
【0054】
次に、本発明の電子装置について説明する。
図5に示すように、電子装置500は、機能素子付き基板1と、素子周囲構造体5とを有する。
素子周囲構造体5は、機能素子3が配置された空洞部6を画成するように形成されている。このような素子周囲構造体5は、基板2上に機能素子3を取り囲むように形成された層間絶縁膜51と、層間絶縁膜51上に形成された配線層52と、配線層52および層間絶縁膜53上に形成された層間絶縁膜53と、層間絶縁膜53上に形成され、複数の細孔(開孔)を備えた被覆層541を有する配線層54と、配線層54および層間絶縁膜53上に形成された表面保護膜55と、被覆層541上に設けられた封止層56とを有している。
【0055】
このような素子周囲構造体5において、図5に示すように検査体4は、素子周囲構造体5が画成した空洞部6の外部に設けられ、層間絶縁膜51と層間絶縁膜53とによって埋設されている。検査体4は、このように空洞部6の外部に配置されることによって、機能素子3について寄生容量となることが防止され、機能素子3が所望の周波数で振動しやすくなる。また、検査体4は、犠牲層220を第1の検査膜41と第2の検査用膜42との間に有している。
【0056】
また、このような構成の素子周囲構造体5には、一部欠損した図示しない開口部が形成されている。機能素子3の固定電極31および可動電極32には、それぞれ、電極配線(図示せず)が接続されており、これら配線は、前記開口部を介して素子周囲構造体5の外側へ引き出される。
また、電子装置500に不具合が生じた場合においては、必要に応じて、後述するリリース工程と同様の方法で層間絶縁膜51と層間絶縁膜53を取り除いて検査体4を露出させ、検査体4の所定の部位を測定することにより、機能素子3の寸法を求めることができ、電子装置500の不具合の原因を調査することができる。また、光学顕微鏡、CCDカメラ等の光学装置を測定に用いる場合には、検体を露出させなくとも測定することができる。
次に、上述したような電子装置500の製造方法について説明する。電子装置500は、以下のような各工程を行うことによって製造することができる。
【0057】
[絶縁膜形成工程]
まず、上述した機能素子付き基板1(但し、図4(f)にあるような犠牲層220を除去していないもの)を準備する。
次に、図6(a)に示すように、機能素子付き基板1のシリコン窒化膜120、機能素子3および検査体4上に、シリコン酸化膜等からなる層間絶縁膜300をスパッタリング法、CVD法等により形成する。また、層間絶縁膜300に、半導体基板100の平面視にて機能素子3を取り巻く環状の開口部301をパターニング処理(例えば、前述したようなフォトレジストを用いたパターニング処理)等により形成する。また、このとき、検査体4が、上記の環状の開口部301の外部となるように、パターニング処理を行う。なお、開口部301は、半導体基板100の平面視にて、環状をなしてなくてもよく、その一部が欠損していてもよい。
【0058】
次いで、図6(b)に示すように、層間絶縁膜300上に、例えばアルミニウムよりなる層をスパッタリング法、CVD法等により形成した後、パターニング処理することにより配線層310を形成する。配線層310は、開口部301に対応するように、半導体基板100の平面視にて環状をなしている。また、配線層310の一部は、開口部301を通して半導体基板100上およびその上方に形成された配線(図示しない半導体回路の一部を構成する配線)に電気的に接続される。なお、配線層310は、機能素子3を取り巻く部分にのみ存在するように形成されているが、一般的には、図示しない半導体回路の一部を構成する配線層の一部が、配線層310を構成している。
【0059】
次いで、図6(c)に示すように、層間絶縁膜300および配線層310上に、シリコン酸化膜等からなる層間絶縁膜320をスパッタリング法、CVD法等により形成する。また、層間絶縁膜320に、半導体基板100の平面視にて機能素子3を取り巻く環状の開口部324をパターニング処理等により形成する。また、このとき、検査体4が、上記の環状の開口部324の外部となるように、パターニング処理を行う。なお、開口部324は、開口部301と同様に、半導体基板100の平面視にて、環状をなしてなくてもよく、その一部が欠損していてもよい。
このような層間絶縁膜と配線層との積層構造は、通常のCMOSプロセスにより形成され、その積層数は、必要に応じて適宜に設定される。すなわち、必要に応じてさらに多くの配線層が層間絶縁膜を介して積層される場合もある。
【0060】
[被覆層形成工程]
図7(a)に示すように、層間絶縁膜320上に、例えばアルミニウムよりなる層をスパッタリング法、CVD法等により形成した後、パターニング処理することにより配線層330を形成する。この配線層330の一部は、開口部324を通して配線層310に電気的に接続される。また、配線層330の一部は、機能素子3の上方に位置し、複数の細孔332が形成された被覆層331を構成している。このような配線層330も、前述した配線層310と同様に、一般的には、図示しない半導体回路の一部を構成する配線層の一部で構成されている。
【0061】
次いで、図7(b)に示すように、配線層330および層間絶縁膜320上に、例えばシリコン窒化膜、レジストその他の樹脂材料よりなる表面保護膜340をスパッタリング法、CVD法等により形成する。また、この表面保護膜340は、被覆層331の細孔332を封止してしまわないように形成する。なお、表面保護膜340の構成材料としては、後述するリリース工程において行われるエッチング処理に対する耐性を有するものであれば、特に限定されない。
【0062】
[リリース工程]
図7(c)に示すように、被覆層331に形成された複数の細孔332を通して、機能素子3上にある層間絶縁膜300、320を除去するとともに、固定電極31と可動板322との間にある犠牲層220を除去する。これにより、機能素子3が配置された空洞部6が形成されるとともに、固定電極31と可動板322とが離間し、機能素子3が駆動し得る状態となる。
【0063】
層間絶縁膜300、320および犠牲層220の除去は、例えば、複数の細孔332からエッチング液としてのフッ酸、緩衝フッ酸等を供給するウェットエッチングや、複数の細孔332からエッチングガスとしてフッ化水素酸ガス等を供給するドライエッチングにより行うことができる。
なお空洞部6内の洗浄を行ってもよい。
【0064】
[封止工程]
最後に、図7(d)に示すように、配線層330上に、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、Al、W、Ti等の金属膜等からなる封止層350をスパッタリング法、CVD法等により形成し、各細孔332を封止する。
以上のような工程により、電子装置500を製造することができる。なお、電子装置500が有する半導体回路が有するMOSトランジスタ等の能動素子、コンデンサ、インダクタ、抵抗、ダイオード、配線等の回路要素は、上述した適宜の工程中(例えば、絶縁膜形成工程、被覆層形成工程、封止層形成工程)途中において作り込んでおくことができる。例えば、層間絶縁膜300、320とともにゲート絶縁膜、容量誘電体層、層間絶縁膜を形成したり、配線層310、330とともに回路内配線を形成したりすることができる。
また、このような電子装置500は、必要に応じて、ダイシング処理等によって、機能素子3毎の電子装置に切り分けられる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態に係る機能素子付き基板が備える検査体を示す拡大平面図である。
以下、本発明の第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第2実施形態では、検査体の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0066】
図8に示すように、機能素子付き基板1Aは、検査体4Aを有している。
検査体4Aは、第1の検査用膜41Aと、第2の検査用膜42Aと、第3の検査用膜43A、43Bとを有している。
第1の検査用膜41Aは、略長方形をなしており、長辺方向が可動電極32の可動板322にある長辺の方向と垂直になるように配されている。
【0067】
第2の検査用膜42Aは、略長方形をなしており、長辺方向が可動電極32の可動板322にある長辺の方向と平行になるように、かつ、第1の検査用膜41Aと直交するように配されている。
第3の検査用膜43A、43Bは、それぞれ第2の検査用膜42Aと同様の形状をなしており、第2の検査用膜42Aを介して対向して、第2の検査用膜42Aと平行となるように配置されている。第3の検査用膜43Aは、第2の検査用膜42Aの左側に配され、第1の検査用膜41と重複しないように、基板2上に直接設けられている。一方、第3の検査用膜43Bは、第2の検査用膜42Aの右側に設けられ、かつ、第1の検査用膜41Aと直交するように配されている。
【0068】
また、第3の検査用膜43A、43Bと第2の検査用膜42Aとは、機能素子付き基板1Aの製造におけるデザインルールに従って、所定の間隔が設けられている。
また、第3の検査用膜43A、43Bは、可動電極32および第2の検査用膜42Aと同様の材料で構成されており、可動電極32および第2の検査用膜42Aと同様の方法により形成されている。
【0069】
検査体4Aは、このような第3の検査用膜43A、43Bを有することにより、第2の検査用膜42A形成時における形状、大きさの誤差が、可動電極32の形成時における形状、大きさの誤差とより対応しやすいものとなる。例えば、第2の検査用膜42A形成時における第2の検査用膜42Aのエッチングによる誤差の影響と、可動電極32形成時のける可動電極32のエッチングによる誤差の影響が近いものとなる。この結果、機能素子3の希望測定部位の寸法の測定精度が向上する。
【0070】
なお、機能素子3の希望測定部位が第1実施形態と同様の部位である場合、検査体4Aにおける実測部位は、第1実施形態と同様に、第1の検査用膜41の一方の短辺411Aと、第2の検査用膜42Aの短辺411Aとは反対側の短辺に近い長辺421Aとの距離を測定することのできる短辺411A上の点Fと長辺421A上の点Gとを基点とすることができる。
以上のような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0071】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図9は、本発明の第3実施形態に係る機能素子付き基板を示す平面図である。
以下、本発明の第3実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0072】
本発明の第3実施形態では、検査体の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図9に示すように、機能素子付き基板1Bは、機能素子3を介して対向配置された2つの検査体4Bを有している。
検査体4Bは、第1の検査用膜41Bと、第2の検査用膜42Bとを有している。
【0073】
第1の検査用膜41Bは、固定電極31と略相似をなしており、略長方形をなし、その長辺が固定電極31の長辺と平行になるように配置されている。
第2の検査用膜42Bは、その外形が可動電極32と略相似をなしており、略長方形をなし、その長辺が可動電極32の長辺と平行になるように、かつ、右側の長辺421Bが第1の検査用膜41B上に配されるように、第1の検査用膜41Bと重なって配置されている。
【0074】
また、第2の検査用膜42Bは、開口部423Bを有している。開口部423Bは、その長辺が長辺421Bと平行な略長方形をなしている。そして、開口部423Bからは、第1の検査用膜41Bの左側の長辺412Bの一部が露出している。
このように、機能素子3の形状とより近い形状の検査体4Bを用いることにより、第1実施形態の検査体4を用いる場合と比較して、機能素子3の希望測定部位の寸法の測定精度が向上する。
【0075】
なお、機能素子3の希望測定部位が第1実施形態と同様の部位である場合、検査体4Bにおける実測部位は、開口部423Bから露出している第1の検査用膜41Aの長辺412Bと、第2の検査用膜42Bの長辺421Bとの距離を測定するために、長辺412B上の点Hと長辺421上の点Iとを基点とすることができる。なお、検査体4Bの実測部位である点H−点Iは、機能素子3の希望測定部位である点A1−点B1に対応する個所となる。
【0076】
また、検査体4Bが機能素子3の形状と同一の形状である場合には、実測部位の設定が困難であるが、検査体4Bに開口部423Bが設けられていることにより、好適に実測部位の設定ができる。
以上のような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0077】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図10は、本発明の第4実施形態に係る機能素子付き基板を示す平面図、図11は、図10に示す機能素子付き基板の断面図(x’−x’線断面図)、図12は、図10の機能素子付き基板が備える検査体の拡大平面図である。
【0078】
以下、本発明の第4実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第4実施形態では、機能素子および検査体の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0079】
機能素子付き基板1Cは、基板2上に形成された機能素子3Aと検査体4Cとを有している。
機能素子3Aは、基板2上に形成された固定電極31Aと、可動電極32Aとを有している。
固定電極31Aは、平面視した際に略長方形となっており、一方の短辺の中央付近からは、他の回路と導通するための配線(図示せず)が配されている。
可動電極32Aは、平面視した際に略長方形となっており、固定電極31Aと直交するように配されている。
【0080】
可動電極32Aは、その短辺付近で構成され、基板2の窒化膜23上に形成された一対の支持部321と、固定電極31Aと空隙を隔てて対向配置された可動板(可動部)322Aと、各支持部321Aと可動板322Aとを連結する2つの連結部323Aとを有している。可動板322Aは、各連結部323Aを介して各支持部321Aに両持ち支持されている。
【0081】
図10、図12に示すように、検査体4Cは、基板2上の機能素子3Aと接触しない位置に設けられ、第1の検査用膜41Cと第2の検査用膜42Cとを有している。また、1つの機能素子3Aにつき2つの検査体4Cが、可動電極32Aの短辺の方向と平行な方向に、機能素子3Aを介して対向して配置されている。なお、上記の2つの検査体4Cは、同一の構成となっている。
【0082】
第1の検査用膜41Cは、平面視した際に略長方形をなしており、その長辺が固定電極31Aの長辺と平行になるように配されている。また、第1の検査用膜41Cは、固定電極31Aとその外形が略相似である。
第2の検査用膜42Cは、平面視した際にその外形が略長方形をなしており、第1の検査用膜41Cと直交して重複するように配されている。また、第2の検査用膜42Cは、平面視でその外形が可動電極32Aと略相似である。
【0083】
また、第2の検査用膜42Cは、2つの開口部423Cを有している。開口部423Cは、それぞれ、その長辺が第1の検査用膜41Cの長辺411Cと平行な略長方形をなしている。また、左側の開口部423Cからは、第1の検査用膜41Cの長辺411Cが寸法の測定の基点として利用可能程度に露出している。右側の開口部423Cからは、第1の検査用膜41Cの長辺412Cが寸法の測定の基点として利用可能程度に露出している。
【0084】
このように、機能素子3Aの形状と近い形状の検査体Cを用いることにより、機能素子3Aの希望測定部位の寸法の測定精度を比較的高いものとすることができる。
なお、本実施形態においては、機能素子3Aの希望測定部位としては、例えば、固定電極31Aの長辺同士の距離を測定するために、固定電極31Aの左側の長辺上にある点Jと右側にある長辺上にある点Kとを基点とすることができる。第1実施形態で詳述したように、機能素子3Aは、固定電極31Aを形成し、固定電極31A上に犠牲層220を介して可動電極32Aを形成することにより、製造される。このため、機能素子3Aにおいては、固定電極31Aの点J−点K間の距離を測定することにより、固定電極31Aの幅が測定されるとともに、固定電極31Aの上に形成された可動電極32Aの可動板322Aの幅も間接的に測定される。これによって、可動電極32Aの重量、可動電極32Aと固定電極31Aとの重複面積とが、ある程度推定可能であり、機能素子3Aの周波数特性の傾向を推定することができると考えられる。
【0085】
また、上記の希望測定部位の寸法の測定に対応した検査体4Cの実測部位としては、例えば、第1の検査用膜41の長辺411Cと長辺412Cとの距離を測定することを目的として、長辺411C上の点Lと長辺412C上の点Mとを基点とすることができる。なお、検査体4Cの実測部位である点L−点Mは、相似する機能素子3の希望測定部位である点J−点Kに対応する個所である。
【0086】
以上のような第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
以上、本発明について図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や、工程が付加されていてもよい。また、本発明の電子装置の製造方法は、前記各実施形態のうち、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、例えば、前述した実施形態では、検査体は、1つの機能素子につき、2つ設けられるものとして説明したが、基板上に1以上の検査体があればよく、複数の機能素子につき1つの検査体を用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1、1A、1B、1C……機能素子付き基板 2……基板 21……半導体基板 22……絶縁膜 23……窒化膜 3、3A……機能素子 31、31A……固定電極 32、32A……可動電極 321、321A……支持部 322、322A……可動板 323、323A……連結部 4、4A、4B、4C……検査体 41、41A、41B、41C……第1の検査用膜 411、411A……短辺 412B、412C、411C……長辺 42、42A、42B、42C……第2の検査用膜 421、421A、421B……長辺 423B、423C……開口部 43A、43B……第3の検査用膜 5……素子周囲構造体 51、53……層間絶縁膜 52、54……配線層 541……被覆層 55……表面保護膜 56……封止層 6…空洞部 100……半導体基板 110……シリコン酸化膜 120……シリコン窒化膜 200、230……シリコン膜 210、240……フォトレジスト膜 220……犠牲層 300、320……層間絶縁膜 301、324……開口部 310、330……配線層 331……被覆層 332……細孔 340……表面保護膜 350……封止層 500……電子装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた固定電極および前記固定電極と空隙を隔てて対向配置された可動部を備える可動電極を有する機能素子とを有する機能素子付き基板に対し、前記機能素子の寸法を測定する方法であって、
前記固定電極の形成と同時に、前記基板上の前記固定電極と接触しない位置に、前記固定電極と同様の方法で第1の検査用膜を形成する工程と、
前記可動電極の形成と同時に、前記基板上の前記固定電極および前記可動電極と接触しない部位に、前記可動電極の形成と同様の方法で第2の検査用膜を形成する工程と、
前記第1の検査用膜と前記第2の検査用膜とからなる検査体の所定の部位の寸法を測定する工程と、
前記測定の結果から、前記機能素子の所定の部位の寸法を求める工程とを有することを特徴とする機能素子の寸法の測定方法。
【請求項2】
前記機能素子の寸法が求められる所定の部位の設計された寸法をA[μm]、前記検査体の測定される所定の部位の目的とする寸法をB[μm]としたとき、0.1≦A/B≦1000の関係を満足する請求項2に記載の機能素子の寸法の測定方法。
【請求項3】
前記機能素子の寸法が求められる所定の部位の寸法の方向と平行に前記検査体の前記所定の部位の寸法を測定するものであり、
前記第1の検査用膜の一端と、前記第2の検査用膜の一端とを前記検査体の寸法の測定に用いる請求項1または2に記載の機能素子の寸法の測定方法。
【請求項4】
前記検査体は、略長方形状の前記第1の検査用膜と略長方形状の前記第2の検査用膜とが直交しており、
前記第1の検査用膜の前記第2の検査用膜が重なっていない辺と、前記第1の検査用膜と重なっており、前記辺からより離れた前記第2の検査用膜の辺とが寸法の測定に用いられる請求項1ないし3のいずれかに記載の機能素子の寸法の測定方法。
【請求項5】
前記第2の検査用膜は、前記第1の検査用膜と重なるようにして設けられ、前記第1の検査用膜の端部の少なくとも一部が露出するようにして形成された開口部を有し、
前記開口部から露出した前記第1の検査用膜の端部と、前記第2の検査用膜の外周部の一端とが寸法の測定に用いられる請求項1ないし4のいずれかに記載の機能素子の寸法の測定方法。
【請求項6】
前記可動電極は、前記固定電極を挟んで対向して設けられ、可動部を支持する一対の支持部と、前記各支持部と可動部とを連結する一対の連結部と有し、
前記第2の検査用膜は、前記第1の検査用膜と重なるようにして設けられ、前記第1の検査用膜の一端の少なくとも一部が露出するようにして形成された第1の開口部と、前記第1の検査用膜の前記一端と対向する他端の少なくとも一部とが露出するようにして形成された第2の開口部とを有し、
前記第1の開口部から露出した前記第1の検査用膜の前記一端と、前記第2の開口部から露出した前記第1の検査用膜の前記他端とが寸法の測定に用いられる請求項1ないし5のいずれかに記載の機能素子の寸法の測定方法。
【請求項7】
前記基板上に、1つの前記機能素子につき前記検査体は2つ以上形成されるものであり、
前記2以上の検査体のうち、一対の前記検査体が、前記機能素子を介して対向するように形成される請求項1ないし6のいずれかに記載の機能素子の寸法の測定方法。
【請求項8】
基板上に、固定電極と第1の検査用膜とを、同様の方法により形成する工程と、
前記基板上に、可動電極と第2の検査用膜とを、同様の方法により形成する工程と、
を有し、
前記固定電極および前記可動電極で構成される機能素子と前記第1の検査用膜および第2の検査用膜で構成される検査体とは接触しないように形成されており、
前記検査体は、所定の部位の寸法が測定されることにより、前記機能素子の所定の部位の寸法を求めるために用いられることを特徴とする機能素子付き基板の製造方法。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に配置され、前記基板上に設けられた固定電極および前記固定電極と空隙を隔てて対向配置された可動部を備える可動電極を有する機能素子と、
所定の部位の寸法が測定されることにより、前記機能素子の所定の部位の寸法を求めるための検査体とを有し、
前記検査体は、前記基板上の前記機能素子と接触しない位置に、前記固定電極と同様の方法で形成された第1の検査用膜と、前記可動電極と同様の方法で形成された第2の検査用膜とを有することを特徴とする機能素子付き基板。
【請求項10】
請求項9に記載の機能素子付き基板を有する電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−221373(P2010−221373A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73819(P2009−73819)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】