説明

欠陥検出方法および欠陥検出装置

【課題】明欠陥と暗欠陥とが混在する場合にも被検査物の欠陥検出の感度を向上することができる欠陥検出方法及び欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】欠陥検出方法は、撮像画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程と、欠陥を検出する欠陥検出工程とを有している。欠陥強調処理工程ST2は、明欠陥と暗欠陥の一方の欠陥成分にマスク処理を行う欠陥マスク処理工程ST21と検査対象画素を選定する検査対象画素選定工程ST22と、検査対象画素の周囲に比較対象画素を設定する比較対象画素群設定工程ST23と、検査対象画素と比較対象画素との輝度差データを求め、最小輝度差を求める最小輝度差算出工程と、各比較対象画素群に対して算出された最小輝度差の値が最大値を欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程ST33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物を撮像した画像を処理することで、被検査物の傷やシミ等によって前記撮像画像に低コントラストで表示される欠陥を、精度よくかつ自動的に検出する欠陥検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板の配線封止面の異物や傷の欠陥検出では、画像処理手法の1つであるフィルタ処理を用いて欠陥検出を行っている。すなわち、異物や傷のある被検査物を撮像すると、その撮像画像において異物や傷の部分は周囲に比べて輝度が異なる。但し、その輝度差は小さいため、つまり、低コントラストであるため、フィルタを用いて輝度差を強調して欠陥検出を行っていた。
【0003】
このような欠陥検出方法として、対象画素から等距離離れた比較画素を2箇所選択し、その内側の輝度差と外側の輝度差と対象画素の輝度データを比較して欠陥の有無を判断していた(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−14580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された方法においては、欠陥画素が、正常画素より明るくなる明欠陥画素のみが存在する場合や、正常画素より暗くなる暗欠陥画素のみ存在する場合には、特に問題は発生しない。しかしながら、暗欠陥および明欠陥が混在している場合では、例えば明欠陥を検出する際、検査対象画素が正常であっても、この検査対象画素の周囲を取り囲むように設定した比較画素のうちいずれかに、暗欠陥が存在していれば、検査対象画素に対して画素群の輝度が暗くなるため、相対的に検査対象画素の輝度が明るいと判断され、明欠陥として誤検出してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、明欠陥と暗欠陥とが混在する場合にも被検査物の欠陥検出の精度を向上することができる欠陥検出方法及び欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の欠陥検出方法は、被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程と、前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出工程と、を有し、前記欠陥強調処理工程は、前記撮像画像の明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方の欠陥成分の領域にマスク処理を行う欠陥マスク処理工程と前記撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程と、選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定工程と、前記比較対象画素群に含まれる各比較対象画素のうち、前記欠陥マスク処理工程でマスク処理されなかった比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出工程と、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
なお、検査対象画素および比較対象画素は、例えば、被検査物を撮像したCCDカメラの撮像画素単位で設定すればよい。
本発明によれば、欠陥強調処理工程では、まず、明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方の欠陥成分の領域にマスク処理を実施する欠陥マスク処理工程を実施する。ここでマスク処理される領域とは、当該欠陥検出方法により暗欠陥を検出する場合では、明欠陥であり、当該欠陥検出方法により明欠陥を検出する場合では、暗欠陥である。そして、最小輝度差算出工程では、検査対象画素選定工程で選定された検査対象画素の輝度値と、比較対象画素群設定工程において設定された比較対象画素群の各比較対象画素の輝度値との差分を演算する。このとき、最小輝度差算出工程では、これらの検査対象画素および比較対象画素のうちいずれか一方が、欠陥マスク処理工程においてマスク処理された領域に含まれる場合、すなわち検査対象画素または比較対象画素がマスク画素である場合、輝度差の算出を実施しない。したがって、最小輝度差算出工程では、マスク画素以外の画素を対象として輝度差が演算され、各比較対象画素群における輝度差のうち最小値が求められる。
そして、欠陥強調値算出工程では、これら各比較対象画素群のそれぞれに対して算出された最小輝度差のうち、最大値を選択し、検査対象画素の欠陥強調値とする。
このような本発明の欠陥検出方法では、明欠陥と暗欠陥が混在するような撮像画像に対して、明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方をマスクすることで、マスクされていない他方の欠陥を精度良く検出することが可能となる。すなわち、欠陥マスク処理工程を実施しない場合、例えば、明欠陥の検出において、比較対象画素に暗欠陥があり、検査対象画素が正常な輝度値である場合では、比較対象画素と検査対象画素の輝度値の差が大きくなるため、検査対象画素が明欠陥であると検出される不都合がある。これに対して、本発明では、上記のように、欠陥マスク処理工程により暗欠陥がマスク処理されるため、比較対象画素群に暗欠陥を無視して検査対象画素と比較対象画素との輝度差データを算出することができる。したがって、暗欠陥が混在することによる精度低下を回避することができ、精度のよい欠陥検出を実施することができる。暗欠陥を検出する場合も同様であり、明欠陥をマスク処理することにより、明欠陥を無視した暗欠陥検出処理を実施することができ、測定精度を向上させることができる。
【0009】
また、欠陥強調値を算出することで、検査対象画素を含み、かつ、比較対象画素は含まない欠陥、例えば面状のシミ欠陥を検出できる。
すなわち、検査対象画素部分に欠陥がなく、周囲の画素と輝度差が無い場合には、前記最小輝度差は非常に小さい値になる。また、検査対象画素に欠陥があっても、その欠陥がいずれかの比較対象画素部分まで広がっている場合には、その欠陥部分に含まれる検査対象画素および比較対象画素の輝度差は殆ど無いため、前記最小輝度差も非常に小さい値になる。
一方、検査対象画素に欠陥が存在し、かつ、周囲の比較対象画素には欠陥が無い場合、つまりシミ欠陥が比較対象画素で囲まれるエリア内に納まっている場合には、検査対象画素の輝度値は、いずれの比較対象画素の輝度値とも差があるため、最小輝度差も比較的大きな値になる。これにより、比較対象画素で囲まれるエリア内に納まる大きさのシミ欠陥が存在する場合に、最小輝度差は比較的大きな値となり、欠陥が強調されることになる。
また、本発明では、前記複数の比較対象画素を、複数の比較対象画素群に分けているので、シミ欠陥のほかに線欠陥も検出できる。すなわち、複数の比較対象画素の少なくとも一つと、検出対象画素と重なる線欠陥がある場合、その線欠陥上の各画素の輝度値の差は小さいため、前記最小輝度差も小さな値となり、欠陥を検出することができない。
一方、本発明のように、複数の比較対象画素を、複数の比較対象画素群に分け、各比較対象画素群毎に最小輝度差を算出している場合、各比較対象画素の位置が異なるため、一方の比較対象画素群の比較対象画素に線欠陥が重なってその線欠陥を検出できなくても、他の比較対象画素群の比較対象画素は前記線欠陥と重ならず、その線欠陥を検出できる。
このため、複数の比較対象画素群で算出された各最小輝度差の最大値を、検査対象画素の欠陥強調値とすれば、シミ欠陥および線欠陥の両方の欠陥を強調できる。特に、線欠陥は、いずれかの比較対象画素群で検出できなくても、他の比較対象画素群で検出できるため、線欠陥の角度による検出感度のムラは生じず、検出感度を向上することができる。
また、本発明では、シミ欠陥および線欠陥の両方を同時に検出できるため、シミ欠陥検出フィルタと線欠陥検出フィルタとを別々に用意して検出する場合に比べて、欠陥検出時間も短縮できる。
【0010】
本発明の欠陥検出方法では、前記比較対象画素群設定工程により設定された各比較対象画素群に含まれる前記比較対象画素のうち、前記欠陥マスク処理工程においてマスク処理されたマスク画素の数をカウントする計数工程を備え、前記最小輝度差算出工程は、前記計数工程によりカウントされる前記マスク画素の数が、所定閾値未満である場合、この比較対象画素群に対する前記最小輝度差を算出することが好ましい。
【0011】
この発明によれば、計数工程によりカウントされるマスク画素数が所定閾値以上となる場合、この比較対象画素群に対して最小値算出工程による最小値の算出を実施しない。すなわち、最小値算出工程では、マスク処理されていない複数の比較対象画素と検査対象画素との輝度差を算出し、算出された複数の輝度値から最小値となるものを選択する。このとき、比較対象画素にマスク画素が閾値以上に含まれる場合、算出される輝度差データ数が減少し、測定精度が低下する。例えば、明欠陥を検出する際、比較対象画素群に含まれる4つの比較対象画素のうち、3つがマスク画素であった場合、残りの1つの比較対象画素のみで欠陥を判断することとなり、測定信頼度が低下し、場合によっては誤検出の原因となる場合もある。これに対して、本発明では、最小値算出工程において、比較対象画素群におけるマスク画素数所定閾値以上となる場合には、最小値を算出せず、マスク画素数が所定閾値よりも小さくなる場合のみ最小値を算出する。このような手法を採る事で、上記のような測定精度の低下を回避することができ、信頼性の高い最小値のみを出力することが可能となる。したがって、欠陥検出における誤検出を防止することができ、測定精度を向上させることができる。
【0012】
本発明の欠陥検出方法では、全ての前記比較対象画素群に対して前記マスク画素数が、前記閾値以上である場合、前記比較対象画素設定工程にて設定された前記比較対象画素群とは異なる画素位置の比較対象画素を複数配置した比較対象画素群を設定する比較対象画素再設定工程を備えることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、全ての比較対象画素群に対して最小輝度差が算出されなかった場合に、比較対象画素群設定工程により先に設定された比較対象画素とは異なる画素を含む比較対象画素群を新たに設定し、この設定した比較対象画素群に基づいて再度最小値算出工程を実施して最小輝度を算出する。
この比較画素群に含まれる比較対象画素としては、例えば、検査対象画素からの距離が、比較対象画素設定工程にて設定された比較対象画素とは異なる距離に位置する画素を選択するなどすればよい。これには、例えば、検査対象画素に対する比較対象画素の位置を設定するためのフィルタを複数用意し、比較対象画素再設定工程では、比較対象画素設定工程において選択されたフィルタ以外のフィルタを選択することで、容易に比較対象画素群を設定することができる。
このような欠陥検出方法では、上記のように、各比較対象画素群におけるマスク数が所定閾値以上となった場合でも、異なる比較対象画素を設定することで、測定精度の低下などの不都合を防止することができ、測定精度の更なる向上を図ることができる。
【0014】
本発明の欠陥検出方法では、前記欠陥マスク処理工程は、当該欠陥検出方法に検出された明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方に対してマスク処理を実施することが好ましい。
【0015】
上記した欠陥マスク処理工程では、マスク処理の対象画素を予め検出する予備検出処理が必要となる。このような予備検出処理としては、特に高精度な検出を実施する必要がなく、大凡の欠陥位置が分かればよいため、例えば従来の欠陥検出方法を用いることができる。
一方、当該欠陥検出方法において、明欠陥および暗欠陥の双方を検出する場合、明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方を先に検出し、その後他方を検出することとなる。このとき、本発明では、先に暗欠陥および明欠陥のいずれか一方の検出が完了すると、他方の欠陥検出処理の際、先に出された検出結果に基づいて欠陥マスク処理工程を実施する。
例えば、本発明の欠陥検出方法により、暗欠陥を検出した後、明欠陥を検出する場合、まず、従来の方法を用いて明欠陥を予備検出し、欠陥マスク処理工程では、検出された明欠陥に対してマスク処理を実施し、上述した各工程により精度良く暗欠陥を検出する。その後、明欠陥を検出する際、欠陥マスク処理工程では、先に検出した暗欠陥に対してマスク処理を実施し、上述した各工程により精度良く明欠陥を検出する。このような欠陥検出方法では、後に実施される欠陥検出処理(上記例では、明欠陥検出処理時)において、先に実施した欠陥検出の検出結果を利用することができるため、予備欠陥検出処理が不要となる。このため、処理時間を短縮することができ、処理負荷の低減も図ることができる。
【0016】
本発明の欠陥検出方法では、前記比較対象画素群設定工程は、前記複数の比較対象画素として、4×n個(nは2以上の整数)の比較対象画素を選定し、これらの比較対象画素を、検査対象画素を中心とする円周方向において90度間隔で配置された4個の比較対象画素毎に選択して各比較対象画素群を設定することが好ましい。
【0017】
なお、4×n個の比較対象画素の具体的な個数は、検査対象画素および比較対象画素間の距離に基づいて設定すればよく、通常は、8個、12個、16個のいずれかに設定すればよい。
【0018】
さらに、比較対象画素は、検査対象画素の周囲に円周上にかつ等間隔に配置することが好ましい。すなわち、各比較対象画素および検査対象画素を結ぶ線分と、その比較対象画素に隣接する他の比較対象画素および検査対象画素を結ぶ線分とがなす角度が、各比較対象画素において同一であることが好ましい。
従って、例えば、8個の比較対象画素が設けられている場合には、検査対象画素を中心とする円周方向に45度間隔で配置すればよい。この場合、検査対象画素を中心とする円周方向に1つおきに選択した4つの検査対象画素つまり90度間隔で配置された4つの検査対象画素により第1比較対象画素群を構成し、これらの第1比較対象画素群に含まれない他の4つの検査対象画素により第2比較対象画素群を構成すればよい。
同様に、12個の比較対象画素が設けられている場合には、検査対象画素を中心とする円周方向に30度間隔で配置すればよい。この場合、検査対象画素を中心とする円周方向に2つおきに選択した4つの検査対象画素つまり90度間隔で配置された4つの検査対象画素により第1〜3の比較対象画素群をそれぞれ構成すればよい。
同様に、16個の比較対象画素が設けられている場合には、検査対象画素を中心とする円周方向に22.5度間隔で配置すればよい。この場合、検査対象画素を中心とする円周方向に3つおきに選択した4つの検査対象画素つまり90度間隔で配置された4つの検査対象画素により第1〜4の比較対象画素群をそれぞれ構成すればよい。
【0019】
検査対象画素を中心とする円周方向に90度間隔に配置された4つの比較対象画素により各比較対象画素群を構成しているので、最小限の数の比較対象画素でシミ欠陥の有無を検出できるとともに、ある比較対象画素群において検査対象画素を挟んで点対称位置に配置された2つの比較対象画素を通る線欠陥があり、その線欠陥を検出できない場合でも、他の比較対象画素群によって前記線欠陥を確実に検出することができる。
【0020】
本発明の欠陥検出方法では、前記比較対象画素群設定工程は、前記複数の比較対象画素として、検査対象画素を中心とする円周方向において45度間隔で配置された8個の比較対象画素を選定し、これらの8個の比較対象画素を、検査対象画素を中心とする円周方向において90度間隔で配置された4個の比較対象画素毎に選択して第1比較対象画素群および第2比較対象画素群を設定してもよい。
【0021】
例えば、検査対象画素を挟んで上下および左右に設けられた4つの比較対象画素によって第1比較対象画素群を構成し、検査対象画素を挟んで右斜め上、右斜め下、左斜め上、左斜め下に設けられた4つの比較対象画素によって第2比較対象画素群を構成すればよい。
4個の比較対象画素を備える2つの比較対象画素群を設定すれば、最小限の比較対象画素によってシミ欠陥および線欠陥を検出できる。このため、フィルタによる欠陥検出処理も短時間で行うことができる。
【0022】
本発明の欠陥検出方法では、前記最小輝度差算出工程は、欠陥部分の輝度が、周囲の輝度よりも高くなる明欠陥を検出する場合には、前記検査対象画素の輝度値から比較対象画素の輝度値を引いて輝度差データを求め、それらの輝度差データの最小輝度差を求め、欠陥部分の輝度が、周囲の輝度よりも低くなる暗欠陥を検出する場合には、前記比較対象画素の輝度値から検査対象画素の輝度値を引いて輝度差データを求め、それらの輝度差データの最小輝度差を求めることが好ましい。
【0023】
本発明においては、検査対象画素の輝度値から比較対象画素の輝度値を引いて求めた各輝度差データの最小値を前記検査対象画素の明欠陥用の欠陥強調値とし、比較対象画素の輝度値から検査対象画素の輝度値を引いて求めた各輝度差データの最小値を前記検査対象画素の暗欠陥用の欠陥強調値としているので、検査対象画素が欠陥である場合に欠陥強調値が正の値となり、明欠陥および暗欠陥を精度良く検出できる。
【0024】
本発明の欠陥検出方法において、前記欠陥検出工程は、前記検査対象画素での欠陥強調値を所定の閾値と比較して欠陥候補画素を抽出し、その欠陥候補画素によって構成される欠陥候補領域の特徴量から欠陥内容を判別することを特徴とする。
【0025】
本発明においては、欠陥部分の面積や、平均輝度、最大輝度等の特徴量によって欠陥内容を評価判別しているので、欠陥を客観的に評価でき、例えば欠陥のランク付けも容易に行うことができ、不良品を容易に判定できる。
【0026】
本発明の欠陥検出装置において、被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理手段と、前記欠陥強調処理手段で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出手段と、を有し、前記欠陥強調処理手段は、前記撮像画像の明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方の欠陥成分の領域にマスク処理を行う欠陥マスク処理手段と前記撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定手段と、選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定手段と、前記比較対象画素群に含まれる各比較対象画素のうち、前記欠陥マスク処理工程でマスク処理されなかった比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出手段と、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出手段と、を備えることを特徴とする。
この欠陥検出装置においても前記欠陥検出方法と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は本発明の実施の形態による欠陥検出装置であるコンピューター装置の構成図。
本実施形態の欠陥検出装置は、フレキシブル基板や、液晶パネル(TFTパネル)、半導体ウェハなどの被検査物1の欠陥を検出するものである。被検査物1は、XYステージ2上に載置され、平面的に移動可能に構成されている。
欠陥検出装置は、顕微鏡4、CCDカメラ5、コンピューター装置6、表示装置7を備えていえる。
【0028】
顕微鏡4は、被検査物1を拡大してCCDカメラ5で撮影するために設けられており、被検査物1の欠陥を検出するために十分な倍率を有するものが用いられている。
CCDカメラ5は、顕微鏡4を介して被検査物1を撮影する撮像手段である。
コンピューター装置6は、CCDカメラ5を制御し、被検査物1を検出する画像処理手段である。表示装置7は、コンピューター装置6に接続された液晶ディスプレイなどの表示装置である。
【0029】
コンピューター装置6は、画像入力手段60と、欠陥強調処理手段61と、欠陥抽出手段62と、欠陥判別手段63とから構成されている。なお、欠陥抽出手段62および欠陥判別手段63により本発明の欠陥検出手段が構成される。
【0030】
コンピューター装置6の画像入力手段60には、CCDカメラ5で撮像された取込画像の画像データが入力される。その取込画像は図示しない記憶手段に記憶される。従って、画像入力手段60によってCCDカメラ5を用いて検査対象を撮像する画像取得工程(撮像工程)が実施される。
【0031】
欠陥強調処理手段61は、取得した画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程を実施するものであり、欠陥マスク処理手段である欠陥マスク領域設定手段615と、検査対象画素選定手段611と、比較対象画素群設定手段612と、計数手段616と、最小輝度差算出手段613と、欠陥強調値算出手段614とを備える。
【0032】
欠陥マスク領域設定手段615は、撮像画像において欠陥のある領域にマスク処理を施す欠陥マスク領域設定処理を実施する。
すなわち、欠陥マスク領域設定手段615は、明欠陥、暗欠陥の混在する撮像画像においてフィルタ処理による誤検出を低減させるため、所定条件を満たす画素に対してフィルタ処理を行わないようにマスクを設定する。
具体的には、欠陥マスク領域設定手段615は、撮像画像内の明欠陥を検出する場合、撮像画像から暗欠陥成分の存在する領域における輝度データをマスク値で置き換え、マスク画素とする。マスク値としては、マスク画素として認識可能な値であれば特に限定されないが、実施形態では「−1」を採用する。なお、マスク値としては、「−1」に限られず、マスク画素であると容易に認識可能な値であれば、いかなる値に設定されていてもよい。例えば、CCDカメラでは通常、画像の輝度を0から255までの値を数値化するが、カメラによっては0の値は出力されないため、この「0」値をマスク値としてもよい。また、マスクされている画素と、マスクされていない画素の差が明確になればよいため、例えば、マスク専用の画素を用意して、その画素でマスク位置を管理する構成としても良い。
【0033】
検査対象画素選定手段611は、撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程を実施するものである。
【0034】
比較対象画素群設定手段612は、選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定工程を実施するものである。
具体的には、比較対象画素群設定手段612は、図5に示すような欠陥強調フィルタを用いて、比較対象画素を設定する。この図5は、撮像画像における検査対象画素に対して設定される比較対象画素の配置位置を示す欠陥強調フィルタの一例を示す図である。このような欠陥強調フィルタは、図示しない記憶手段に予め記憶されているものであり、比較対象画素群設定手段612により適宜読み出されて撮像データに適用される。
また、欠陥強調フィルタとして、図5には、検査対象画素からの比較対象画素までの距離が7画素である欠陥強調フィルタの例を示すが、検査対象画素から比較対象画素までの距離が6画素以内である欠陥強調フィルタや、検査対象画素から比較対象画素までの距離が8画素以上離れている欠陥強調フィルタなどが複数記憶手段に記憶されている。そして、比較対象画素群設定手段612は、比較対象画素群に欠陥マスク領域設定手段615によりマスク処理されたマスク画素が所定閾値以上含まれている場合、記憶手段から現在選択されている欠陥強調フィルタとは異なる他の欠陥強調フィルタを読み出し、撮像データに適用して比較対象画素群を設定する。
【0035】
計数手段は616、比較対象画素群の中でマスク領域の中に入っている比較画素数すなわちマスク画素数をカウントする。
最小輝度差算出手段613は、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出工程を実施するものである。
欠陥強調値算出手段614は、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程を実施するものである。
【0036】
なお、欠陥には、他の画素部分に対して輝度値が高い明欠陥と、輝度値が低い暗欠陥とがある。このため、本実施形態の欠陥強調値算出手段614は、明欠陥用の欠陥強調値と、暗欠陥用の欠陥強調値とをそれぞれ別々に算出するように構成されている。
【0037】
欠陥抽出手段62は、欠陥強調処理手段61で処理された結果を所定の閾値と比較して欠陥候補を抽出する。なお、閾値としては、明欠陥閾値と、暗欠陥閾値とが設定され、明欠陥強調結果を明欠陥閾値と比較することで明欠陥領域が抽出され、暗欠陥強調結果を暗欠陥閾値と比較することで暗欠陥領域が抽出される。
また、欠陥強調処理手段61で処理された画像に対し、メディアンフィルタなどを適用してノイズ除去処理を行ってから、欠陥抽出手段62による欠陥候補抽出処理を実行してもよい。
【0038】
欠陥判別手段63は、抽出した各欠陥領域の面積、平均輝度、最大輝度などに基づいて欠陥のランクを評価し、今回の検査対象がどの欠陥ランクに該当するかを分類する欠陥判別処理を実行する。
【0039】
〔欠陥検出装置の動作〕
次に、本発明の実施の形態による欠陥検出装置の動作について説明する。
図2はこの実施の形態の欠陥検出装置の動作を説明するためのフローチャートである。図2に示す動作はコンピューター装置6上で実行されるプログラムにより実現されている。
【0040】
まず、被検査物1がXYステージ2にセットされると、コンピューター装置6の画像入力手段60は、被検査物1の画像をCCDカメラ5で撮影し、その撮影データの画像を取り込む画像取得工程(撮像工程)を行う(ST1)。このとき撮影データは、図示しないA/D変換器により、例えば、4096階調(12ビット)のデジタルデータとして、コンピューター装置6に取り込まれる。
なお、被検査物1が液晶パネルなどの表示パネルの場合、表示パネル上に特定の画像パターンを表示させ、欠陥を検出しやすいようにしてもよい。例えば、暗欠陥を検出しやすいように全画面を白表示する全白画面パターン、明欠陥を検出しやすいように全画面を黒表示する全黒画面パターン、中間調の画面パターン等があり、検出したい欠陥種類に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
次に、欠陥強調処理手段61は、取得された撮像データに対して、欠陥を強調する欠陥強調処理工程を実施する(ST2)。この欠陥強調処理工程ST2は、低コントラストの欠陥はそのままでは検出が難しいために、画像の中の欠陥のみを強調する処理を行うものである。欠陥強調処理工程ST2は、図3に示す処理フローで実施される。
【0042】
すなわち、欠陥強調処理手段61は、図3に示すように、まず、欠陥マスク領域設定手段615により、取得した撮像データの欠陥にマスクを施す欠陥マスク領域設定工程を実施する(ST21)。
この欠陥マスク領域設定工程では、明欠陥を検出する場合は予め暗欠陥にマスクを施し、暗欠陥を検出する場合は予め明欠陥にマスクを施す。なお、本実施形態では、まず、暗欠陥を検出する暗欠陥検出処理を実施し、暗欠陥検出処理の後に明欠陥検出処理を実施するものとする。したがって、欠陥マスク領域設定工程において、まず、明欠陥に対してマスクを施す処理を実施する。
この欠陥マスク領域設定工程では、マスク処理を実施するための画素を検出する予備欠陥検出工程を実施した後、検出された欠陥に対してマスク処理を実施する欠陥マスク処理工程を実施する。ここで、予備欠陥検出工程としては、従来の明欠陥検出方法を利用することができるが、本実施形態では、図4に示すST211〜ST218による予備欠陥検出工程を実施する。
【0043】
すなわち、予備欠陥検出工程では、まず、コンピューター装置6の欠陥強調処理手段61は、検査対象となる検査対象画素を選定し、検査対象画素選定工程を実行する(ST211)。
本実施形態では、CCDカメラ5の各撮像画素単位で対象画素を選定するようにされている。
【0044】
次に、欠陥強調処理手段61は、比較対象画素群設定工程を実行する(ST212)。
すなわち、欠陥強調処理手段61は、図5に示すような欠陥強調フィルタを撮像データに適用し、検査対象画素Oを中心とする円周方向に8個の比較対象画素S1〜S8を設定し、さらに、これらの比較対象画素S1〜S8を2つの比較対象画素群に分けて設定する。
【0045】
本実施形態では、各比較対象画素S1〜S8は、検査対象画素Oを中心とする円周方向に45度間隔で配置される。
具体的には、検査対象画素Oを挟んで上下(縦方向)に比較対象画素S1,S5が配置され、検査対象画素Oを挟んで左右(横方向)に比較対象画素S7,S3が配置されている。また、検査対象画素Oを挟んで斜め方向(右斜め上から左斜め下方向)に比較対象画素S2,S6が配置され、検査対象画素Oを挟んで斜め方向(左斜め上から右斜め下方向)に比較対象画素S8,S4が配置されている。
そして、各比較対象画素S1およびS5、比較対象画素S2およびS6、比較対象画素S3およびS7、比較対象画素S4およびS8は、検査対象画素Oを中心とした点対称位置に設定されている。
【0046】
そして、比較対象画素群選定工程ST212では、これらの比較対象画素S1〜S8を、2つの比較対象画素群に分けて設定する。すなわち、円周方向に1つおきとなる比較対象画素S1,S3,S5,S7により第1の比較対象画素群を設定し、残りの比較対象画素S2,S4,S6,S8により第2の比較対象画素群を設定する。
【0047】
次に、欠陥強調処理手段61は、最小輝度差算出手段613により、各比較対象画素群ごとに比較対象画素S1〜S8を1画素ずつ選択し、選択した画素の輝度値と検査対象画素Oの輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を求める最小輝度差算出工程を実行する(ST213)。
【0048】
具体的には、最小輝度差算出工程ST213では、最小輝度差算出手段613は、まず第1の比較対象画素群の各画素を順次1画素ずつ選択しながら、検査対象画素Oの輝度値から各比較対象画素S1,S3,S5,S7の輝度値を引いて輝度差データFを求める。すなわち、検査対象画素Oの輝度値を「O」、比較対象画素S1,S3,S5,S7の各輝度値を「S1,S3,S5,S7」とした際に、以下の式1〜4を用いて輝度差データF1,F3,F5,F7を算出する。
【0049】
F1=O−S1 (式1)
F3=O−S3 (式2)
F5=O−S5 (式3)
F7=O−S7 (式4)
【0050】
次に、最小輝度差算出手段613は、以下の式5を用いて、第1の比較対象画素群の各輝度差データF1,F3,F5,F7のうち、値が最小となる最小輝度差D1を求める。
D1=Min(F1,F3,F5,F7) (式5)
【0051】
次に、最小輝度差算出手段613は、第2の比較対象画素群の各画素を順次1画素ずつ選択しながら、検査対象画素Oの輝度値から各比較対象画素S2,S4,S6,S8の輝度値を引いて輝度差データFを求める。すなわち、検査対象画素Oの輝度値を「O」、比較対象画素S2,S4,S6,S8の各輝度値を「S2,S4,S6,S8」とした際に、以下の式6〜9を用いて輝度差データF2,F4,F6,F8を算出する。
さらに、最小輝度差算出手段613は、以下の式10を用いて、第2の比較対象画素群の各輝度差データF2,F4,F6,F8のうち、値が最小となる最小輝度差D2を求める。
【0052】
F2=O−S2 (式6)
F4=O−S4 (式7)
F6=O−S6 (式8)
F8=O−S8 (式9)
D2=Min(F2,F4,F6,F8) (式10)
【0053】
次に、欠陥強調処理手段61は、欠陥強調値算出手段614により、第1および第2の比較対象画素群ごとに算出した最小輝度差D1,D2のうち、値が大きいものを検査対象画素Oの位置の欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程を実行する(ST214)。
【0054】
なお、本実施形態では、暗欠陥を先に検出するために、予備欠陥検出工程において、上記の式1〜4,式6〜9を用いて、検査対象画素Oの輝度値から比較対象画素S1〜S8の輝度値S1〜S8を引いて輝度差データF1〜F8を求めて明欠陥候補を検出するが、例えば、明欠陥を先に検出する場合、予備欠陥検出工程では、暗欠陥候補を検出する必要があり、この場合には、比較対象画素S1〜S8の輝度値S1〜S8から検査対象画素Oの輝度値を引いて輝度差データF1〜F8を求めればよい。具体的には次の式11〜18を用いて輝度差データF1〜F8を求めればよい。
【0055】
F1=S1−O (式11)
F3=S3−O (式12)
F5=S5−O (式13)
F7=S7−O (式14)
F2=S2−O (式15)
F4=S4−O (式16)
F6=S6−O (式17)
F8=S8−O (式18)
【0056】
この後、欠陥強調処理手段61は、図4に示すように、取得した画像の全体にわたって欠陥強調処理が済んだか否かを判断し(ST215)、処理済みでない場合には、検査対象画素Oを移動させて別の検査対象画素Oを選定し(ST211)、比較対象画素群設定工程ST212、最小輝度差算出工程ST213、欠陥強調値算出工程ST214を行う。すなわち、検査対象画素OをCCDカメラ5の撮像画素単位に設定しているため、検査対象画素Oを撮像画素毎に順次移動して各工程ST211〜214を順次行えばよい。
【0057】
一方、ST215において処理済みであった場合には、欠陥強調処理手段61は、各画素毎に算出した欠陥強調値による欠陥強調画像を生成する(ST216)。なお、本実施形態では、明欠陥用の欠陥強調値により明欠陥強調画像を生成するが、上記したように、まず予備欠陥検出工程において、暗欠陥を検出する場合には、暗欠陥用の欠陥強調値により暗欠陥強調画像を生成する。
【0058】
この後、欠陥強調処理手段61の欠陥抽出手段62は、欠陥強調画像に対して、欠陥を切り出す閾値を設定し、欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出工程を実行する(ST217)。
すなわち、欠陥抽出手段62は、明欠陥強調画像における明欠陥を切り出す閾値を設定し、明欠陥候補の領域を切り出す。この際、欠陥抽出手段62は、明欠陥強調結果に対しては明欠陥閾値以上の領域を明欠陥領域として検出する。
ここで、各閾値は、画像の状況に合わせて最適な値を設定すればよい。例えば、欠陥強調画像の平均値と、その標準偏差を求め、以下の式で閾値を設定してもよい。
【0059】
明欠陥閾値 wslevel=avr(明)+α1・σ(明)+β1
【0060】
ここで、avr(明)は各欠陥強調画像の平均値、σ(明)は各欠陥強調画像の標準偏差、α1,α2,β1,β2は任意の数で検査対象となる画像の状況で適宜決定される。
【0061】
この後、欠陥マスク領域設定手段615は、検出された明欠陥候補領域の各画素に対して、マスク処理を実施し、マスク画像を生成する(ST218)。すなわち、欠陥マスク領域設定手段615は、ST217において検出された明欠陥候補領域の各画素の輝度値として、マスク値である「−1」を設定したマスク画像を生成する。ここで、欠陥マスク領域設定手段615は、マスク値として−1を設定する例を示すが、上述したように、例えば「0」に設定するなどしてもよく、明確にマスク値である旨が認識可能な値であればいかなる値に設定してもよい。
【0062】
上記ST211ないしST218による欠陥マスク領域設定工程の後、図3に示すように、欠陥強調処理手段61は、検査対象画素選定手段611により、検査対象となる検査対象画素を選定する検査対象画素選定工程を実行する(ST22)。この検査対象画素選定工程ST22は、上記したST211と同様の処理により、検査対象画素を選定する。
【0063】
次に、欠陥強調処理手段61は、ST212と同様、比較対象画素群設定手段612により、比較対象画素群設定工程を実行し、円周方向に1つおきとなる比較対象画素S1,S3,S5,S7により第1の比較対象画素群を設定し、残りの比較対象画素S2,S4,S6,S8により第2の比較対象画素群を設定する(ST23)。
【0064】
次に、欠陥強調処理手段61は、計数手段616により、第1および第2の比較画素群に含まれる比較画素から、ST218により設定されたマスク画素の数をカウントする計数工程を実行する(ST24)。
ここで、計数手段616は、第1の比較対象画素群に含まれるでマスク画素の数(第1マスク数)をカウントする第1計数工程と、第2の比較対象画素群に含まれるマスク画素の数(第2マスク数)をカウントする第2計数工程を実施する。
【0065】
この後、欠陥強調処理手段61は、計数工程ST24によりカウントされた第1マスク数が、所定閾値(本実施形態では、2)以上であるか否かを判断する(ST25)。このST25の処理で、第1マスク数が2以上であると判断された場合、欠陥強調処理手段61は、第1最小輝度差D1として0を設定する(ST26)。
【0066】
一方、ST25において、第一マスク数が2未満であると判断された場合、欠陥強調処理手段61は、最小輝度差算出手段613により、各比較対象画素群ごとに比較対象画素S1,S3,S5,S7を1画素ずつ選択し、選択した画素の輝度値と検査対象画素Oの輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を求める最小輝度差算出工程を実行する(ST27)。
【0067】
具体的には、ST213と同様に、最小輝度差算出手段613は、第1の比較対象画素群の各画素を順次1画素ずつ選択しながら、検査対象画素Oの輝度値から各比較対象画素S1,S3,S5,S7の輝度値を引いて輝度差データFを求める。すなわち、検査対象画素Oの輝度値を「O」、比較対象画素S1,S3,S5,S7の各輝度値を「S1,S3,S5,S7」とした際に、以下の式19〜22を用いて輝度差データF1,F3,F5,F7を算出する。
【0068】
F1=S1−O (式19)
F3=S3−O (式20)
F5=S5−O (式21)
F7=S7−O (式22)
【0069】
ここで、検査対象画素Oおよび比較対象画素S1,S3,S5,S7の輝度値のうち、いずれか一方の輝度値がマスク画素である旨の「−1」が設定されている場合、その式による輝度差の算出を実施しない。例えば、式19において、検査対象画素Oおよび比較対象画素S1のうちいずれか一方がマスク画素である場合、差分値F1を算出しない。
【0070】
次に、最小輝度差算出手段613は、以下の式23を用いて、第1の比較対象画素群の各輝度差データF1,F3,F5,F7のうち、値が最小となる第1最小輝度差D1を求める。
D1=Min(F1,F3,F5,F7) (式23)
【0071】
ここで、検査対象画素Oがマスク画素であった場合、差分値F1,F3,F5,F7はいずれも算出されないため、第1最小輝度差D1として0が設定される。
【0072】
次に、ST26またはST27の後、欠陥強調処理手段61は、計数工程ST24によりカウントされた第2マスク数が、所定閾値(本実施形態では、2)以上であるか否かを判断する(ST28)。このST28において、第2マスク数が2未満であると判断された場合、欠陥強調処理手段61は、最小輝度差算出手段613により、各比較対象画素群ごとに比較対象画素S2、S4,S6,S8を1画素ずつ選択し、選択した画素の輝度値と検査対象画素Oの輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を求める最小輝度差算出工程を実行する(ST29)。
【0073】
具体的には、ST27と略同様であり、最小輝度差算出手段613は、第2の比較対象画素群の各画素を順次1画素ずつ選択しながら、検査対象画素Oの輝度値から各比較対象画素S2,S4,S6,S8の輝度値を引いて輝度差データFを求める。すなわち、検査対象画素Oの輝度値を「O」、比較対象画素S2,S4,S6,S8の各輝度値を「S2,S4,S6,S8」とした際に、以下の式24〜27を用いて輝度差データF1,F3,F5,F7を算出する。
【0074】
F2=S2−O (式24)
F4=S4−O (式25)
F6=S6−O (式26)
F8=S8−O (式27)
【0075】
ここでも、ST27と同様、検査対象画素Oおよび比較対象画素S2,S4,S6,S8の輝度値のうち、いずれか一方の輝度値がマスク画素である旨の「−1」である場合、その式による輝度差の算出を実施しない。例えば、式24において、検査対象画素Oおよび比較対象画素S2のうちいずれか一方がマスク画素である場合、差分値F2を算出しない。
【0076】
次に、最小輝度差算出手段613は、以下の式28を用いて、第1の比較対象画素群の各輝度差データF2,F4,F6,F8のうち、値が最小となる第2最小輝度差D2を求める。
D2=Min(F2,F4,F6,F8) (式28)
【0077】
ここで、検査対象画素Oがマスク画素であった場合、差分値F2,F4,F6,F8はいずれも算出されないため、第2最小輝度差D2として0を設定する。
【0078】
一方、ST28において、第2マスク数が2以上であると判断された場合、欠陥強調処理手段61は、ST25ないしST27の処理において求められた第1最小輝度差D1が0であるか否かを判断する(ST30)。このST30において、第1最小輝度差D1=0と判断された場合、欠陥強調処理手段61は、第2最小輝度差D2として0を設定する(ST31)。
【0079】
また、ST30において、第1最小輝度差D1=0と判断された場合、欠陥強調処理手段61は、比較対象画素群設定手段612により、再度比較対象画素群を設定させる処理(比較対象画素群再設定工程)を実施する。すなわち、比較対象画素群設定手段612は、検査対象画素から比較対象画素までの距離が、先に設定されていた欠陥強調フィルタとは異なる別の欠陥強調フィルタを記憶手段から読み出し、この読み出した欠陥強調フィルタを撮像データに適用して比較対象画素群を再設定する(ST32)。なお、このST32において、欠陥強調処理手段61は、検査対象画素Oがマスク画素であるか否かをも判断する。そして、検査対象画素Oがマスク画素である場合、上記のようにフィルタ交換を実施したとしても、最小輝度値D1,D2として0が算出されるため、この場合は、最小輝度値D1,D2の値を0として設定する。なお、検査対象画素Oがマスク画素である場合、明欠陥である可能性が高いが、ここでは暗欠陥を検出する処理を実施するため、特別な処理を実施しない。
また、このST32の後、欠陥強調処理手段61は、再び計数工程ST24から、最小輝度差算出処理(ST25〜ST32)を実施する。
【0080】
上記ST32の処理により、検査対象画素Oと比較対象画素S1〜S8の距離が、検出対象となるシミ欠陥の大きさに応じて設定されることとなる。すなわち、検査対象画素Oと比較対象画素S1〜S8との輝度差で欠陥を強調するため、シミ欠陥は比較対象画素S1〜S8で囲まれるエリア内に納まる大きさでなければ検出できないが、上記ST32により欠陥強調フィルタを適宜変更することにより、適切な欠陥強調フィルタを用いた精度により欠陥検出を実施することが可能となる。
【0081】
次に、欠陥強調処理手段61は、欠陥強調値算出手段614により、第1および第2の比較対象画素群ごとに算出した最小輝度差D1,D2のうち、値が大きいものを検査対象画素Oの位置の欠陥強調値とする欠陥強調処理工程を実行する(ST33)。
【0082】
欠陥強調処理手段61は、図3に示すように、取得した画像の全体にわたって欠陥強調処理が済んだか否かを判断し(ST34)、処理済みでない場合には、検査対象画素Oを移動させて別の検査対象画素Oを選定し(ST22)、比較対象画素群設定工程ST23、計数工程ST24、最小輝度差算出工程ST25〜ST32、欠陥強調値算出工程ST33を行う。すなわち、検査対象画素OをCCDカメラ5の撮像画素単位に設定しているため、検査対象画素Oを撮像画素毎に順次移動して各工程ST22〜33を順次行えばよい。
【0083】
一方、ST34において処理済みであった場合には、欠陥強調処理手段61は、各画素毎に算出した欠陥強調値による欠陥強調画像を生成する(ST35)。すなわち、暗欠陥用の欠陥強調値により暗欠陥強調画像を生成する。なお、上記において、暗欠陥を検出する場合を例示したが、明欠陥を検出する場合は、明欠陥強調画像を生成する。
以上により欠陥強調処理工程ST2が終了する。
【0084】
欠陥強調処理工程ST2が終了すると、図2に示すように、欠陥強調処理手段61の欠陥抽出手段62は、欠陥強調処理工程ST2で得られた欠陥強調画像に対して、欠陥を切り出す閾値を設定し、欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出工程を実行する(ST3)。
この欠陥候補抽出工程では、上述したST217と略同様の処理により、欠陥候補を抽出することができる。
【0085】
暗欠陥閾値 bslevel=avr(暗)+α2・σ(暗)+β2
【0086】
ここで、avr(暗)は各欠陥強調画像の平均値、σ(暗)は各欠陥強調画像の標準偏差、α1,α2,β1,β2は任意の数で検査対象となる画像の状況で適宜決定される。
【0087】
次に、欠陥判別手段63は、強調画像から抽出された暗欠陥抽出画像に対し、Blob処理を行い、欠陥候補として切り出した領域の面積と、平均輝度、最大輝度を求め、これらの特徴量から欠陥のランクを分類する欠陥判別工程を実施する(ST4)。
欠陥判別手段63で求められた欠陥ランクは、表示装置7に表示され、検査員は被検査物1の欠陥ランクを容易に把握することができる。
【0088】
また、上記において、暗欠陥の検出方法を例示したが、明欠陥に対しても上記と略同様の方法により検出することができる。上記ST1〜ST4により暗欠陥を検出した後、明欠陥を検出する場合、さらに、検出方法をより簡略化することが可能となる。
すなわち、上記ST1〜ST4により暗欠陥が検出されている場合では、明欠陥検出時に、ST211〜217の予備欠陥検出工程を実施する必要がなく、ST1〜ST4により検出された暗欠陥に対して、ST218の処理、すなわち暗欠陥をマスク処理してマスク画素とすることができ、処理の迅速化を計ることができる。
【0089】
〔本実施形態の作用効果〕
本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)コンピューター装置6において、欠陥強調処理手段61の欠陥マスク領域設定手段615は、明欠陥および暗欠陥のうち、検査対象となる欠陥以外の画素、例えば暗欠陥を検出する際には、明欠陥を、明欠陥を検出する際には暗欠陥をマスク処理してマスク画素とする。そして、検査対象画素選定手段611は、検査対象画素Oを選択する。また、比較対象画素群設定手段612は、検査対象画素Oの周囲に複数の上記比較対象画素S1〜S8を配置し、かつ、これらの上記比較対象画素S1〜S8を2つの比較対象画素群に分けて設定する。さらに、最小輝度差算出手段613は、各比較対象画素群のうち、マスク画素でない比較対象画素S1〜S8と、前記検査対象画素Oの輝度値との輝度値との差を求め、比較対象画素群ごとに輝度差データが最も小さい最小輝度差D1,D2を算出する。そして、欠陥強調値算出手段614は、これらの最小輝度差D1,D2のうち、値が大きいものを検査対象画素Oの欠陥強調値としている。
このため、撮像データ内に、明欠陥および暗欠陥が混在している場合でも、検査対象以外の欠陥をマスク処理することで、通常画素が欠陥と見なされる誤検出などを防止でき、欠陥検出精度を向上させることができる。また、明欠陥と暗欠陥とが混在しないため、欠陥強調値の絶対値のみにより、明欠陥候補を容易に検出することができる。
これに加え、各比較対象画素群において最小輝度差を求めることで、各比較対象画素群において、前記検査対象画素Oを含み、かつ、比較対象画素で囲まれる領域内にあるシミ欠陥と、各検査対象画素Oおよびいずれかの比較対象画素を通る線欠陥以外の線欠陥とを強調することができる。また、各比較対象画素群は、比較対象画素の位置が互いに異なるため、一方の比較対象画素群では強調できない線欠陥も、他方の比較対象画素群において強調できるため、各比較対象画素群の最小輝度差のうち、値が大きいものを検査対象画素Oの欠陥強調値とすることで、シミ欠陥および線欠陥を強調して検出することができる。
【0090】
(2)欠陥強調処理手段61は、計数手段616を備え、計数手段616により、各比較対象画素群に含まれるマスク画素の数をカウントする。そして、最小輝度差算出手段613は、計数手段616によりカウントされた第1マスク数および第2マスク数がそれぞれ所定閾値(本実施形態では2)以上である場合、最小輝度差D1,D2を算出せず、第1マスク数および第2マスク数がそれぞれ所定閾値より小さい場合にのみ最小輝度差D1,D2を算出する。
比較対象画素にマスク画素が多い場合、最小輝度差D1,D2を求めるための輝度差データの数が減少し、測定精度や信頼性が悪化する。これに対して、上記実施形態では、このような場合、最小輝度差D1,D2を求めず、0に設定することで、測定精度や信頼性の低下を防止することができる。
【0091】
(3)欠陥強調処理手段61の比較対象画素群設定手段612は、第1比較対象画素群および第2比較対象画素群に対して算出される最小輝度差D1,D2の双方が0である場合、検査対象画素から欠陥対象画素までの距離が異なる別の欠陥強調フィルタを選択して撮像データに適用し、新たな比較対象画素群を再設定する。これにより、検査対象画素に対して適切な比較対象画素を設定することができ、測定精度の向上を図ることができる。
また、上記したように、シミ欠陥がある場合においても、シミ欠陥の面積に応じた適切な欠陥強調フィルタを選択することができ、シミ欠陥に対する測定精度を向上させることができる。
【0092】
(4)本実施形態では、暗欠陥をST1〜ST4の処理により検出した後、明欠陥を検出する際に、ST218において、上記ST1〜ST4で検出された暗欠陥に対してマスク処理を実施する。
このため、ST211〜ST217の予備欠陥検出工程を省略することができ、処理の迅速化を図ることができる。
【0093】
(5)ST32において、欠陥強調処理手段61は、検査対象画素Oがマスク画素であるか否かを判断し、検査対象画素Oがマスク画素である場合は、最小輝度差D1,D2として0を設定する。
すなわち、検査対象画素Oがマスク画素である場合は、どのようなフィルタに変更した場合でも、上記式19〜27による計算が実施されず、0が出力される。このような場合、欠陥強調フィルタを複数回変更することは、処理時間の無駄となる。これに対して、本実施形態では、検査対象画素Oがマスク画素である場合には、ST32のフィルタ変更処理を実施せず、最小輝度値D1,D2として0を出力するので、処理の迅速化を図ることができる。
(6)本実施形態では、欠陥強調値は、検査対象画素Oの輝度値と、比較対象画素S1〜S8の輝度値との差で算出され、検査対象画素Oおよび比較対象画素S1〜S8間にある点の輝度値は利用されていない。このため、シミ欠陥が、比較対象画素S1〜S8で囲まれるエリアよりも小さく、かつ検査対象画素Oを含むものであれば、欠陥のサイズがある程度変化しても、従来の検査員の目視による判定と同様に欠陥を検出できる。このため、検査対象画素Oおよび比較対象画素S1〜S8の距離サイズはあまり細かく設定する必要が無く、容易に設定できる。
【0094】
(7)各比較対象画素群における最小輝度差D1,D2を求めて欠陥強調値とし、この欠陥強調値が所定の閾値以上の場合に、欠陥候補と認定しているので、欠陥の誤検出を低減することができる。
【0095】
(8)さらに、最小輝度差算出手段613においては、明欠陥強調値を算出する式と、暗欠陥を算出する式とをそれぞれ別々に設定しているので、明欠陥や暗欠陥の欠陥部分をそれぞれ精度良く強調することができ、欠陥抽出手段62で明欠陥用の閾値と、暗欠陥用の閾値とでそれぞれ抽出することで、明欠陥および暗欠陥の両方を簡単にかつ精度良く検出することができる。このため、各種の欠陥を簡単な処理で効率的に検出することができる。
【0096】
(9)欠陥判別手段63により、抽出された欠陥のランクを分類できるので、欠陥の客観的なランク付けを短時間に行うことができ、検査者は欠陥の度合いを容易に判断でき、良品かどうかの判定を短時間で容易にすることができる。
【0097】
なお、本発明は、前記実施形態に限らない。
例えば、欠陥を強調するための欠陥強調フィルタにおける検査対象画素Oと比較対象画素S1〜S8との距離は、上述したように、いかなる距離に設定されていてもよく、検出対象となるシミ欠陥の大きさに応じて設定すればよい。
【0098】
また、欠陥強調フィルタとして、検査対象画素Oから各比較対象画素までの距離が等距離(例えば7画素)に設定された例を示したが、これに限定されない。例えば、検査対象画素Oからの距離が7画素である複数の比較対象画素、検査対象画素Oからの距離が15画素である複数の比較対象画素を設定した欠陥強調フィルタを用いる構成などとしてもよい。
さらに、比較対象画素が円周方向に沿って配置される欠陥強調フィルタ例を示したが、例えば、楕円形状に沿って比較対象画素が配置される欠陥強調フィルタや、矩形形状に沿って比較対象画素が配置される欠陥強調フィルタなど、比較対象画素がランダム配置された欠陥強調フィルタなどを用いてもよい。
【0099】
さらに、前記実施形態では、8個の比較対象画素S1〜S8を設け、これらの比較対象画素S1〜S8を2つの比較対象画素群に分けて設定していたが、欠陥強調フィルタとしては、前記実施形態のものに限らない。
例えば、図6に示すように、12個の比較対象画素S11〜S14,S21〜S24,S31〜S34を設け、検査対象画素Oを中心とする円周方向において90度間隔で配置された各比較対象画素S11〜S14,S21〜S24,S31〜S34毎に比較対象画素群を構成して、3つの比較対象画素群を設けた欠陥強調フィルタを用いてもよい。
【0100】
さらに、図7に示すように、16個の比較対象画素S11〜S14,S21〜S24,S31〜S34,S41〜S44を設け、検査対象画素Oを中心とする円周方向において90度間隔で配置された各比較対象画素S11〜S14,S21〜S24,S31〜S34,S41〜S44毎に比較対象画素群を構成して、4つの比較対象画素群を設けた欠陥強調フィルタを用いてもよい。
【0101】
また、前記実施形態や図6,7に示す変形例では、各比較対象画素群には4つの比較対象画素を配置し、これらの比較対象画素は互いに円周方向に90度間隔で配置されていたが、各比較対象画素の間隔は90度間隔のものに限定されない。但し、4つの比較対象画素を設けて90度間隔に配置すれば、各比較対象画素を等間隔に配置でき、欠陥を効率的に検出できる。
【0102】
さらに、前記実施形態や図6,7に示す変形例では、各比較対象画素群には4つの比較対象画素を配置していたが、図8に示すように、16個の比較対象画素S11〜S18,S21〜S28を設け、検査対象画素Oを中心とする円周方向において1つおきに配置された各比較対象画素S11〜S18,S21〜S28毎に比較対象画素群を構成し、それぞれ8個の比較対象画素を有する2つの比較対象画素群を設定してもよい。
この場合、各比較対象画素群において各比較対象画素S11〜S18、S21〜S28は45度間隔で配置されるため、90度間隔で配置される前記実施形態などに比べると、検出できる線欠陥の幅寸法が小さくなる。つまり、線欠陥を検出する場合には、線欠陥が各比較対象画素間の隙間を通る必要がある。このため、45度間隔で比較対象画素が配置されると、それらの隙間を通る線欠陥の幅寸法も小さくなる。従って、検出する線欠陥の幅寸法を制限する場合には、図8のようなフィルタを利用すればよい。
【0103】
また、前記実施形態では、欠陥判別手段63で欠陥部分の面積などに基づいて欠陥ランクを判別していたが、他の方法・手順で欠陥を判別してもよい。要するに、欠陥判別手段63は、欠陥強調処理手段61で強調された欠陥に基づいてそれが欠陥に該当するか否かを判断できるものであればよい。
【0104】
本発明は、被検査物1の撮像画像に、周囲と輝度差がある部分があれば検出できる。このため、本発明は、フレキシブル基板などにおける異物欠陥検出や、被検査物表面の傷や汚れの検出や、各種表示装置の輝度シミ欠陥や色シミ欠陥の検出等に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の形態による欠陥検出装置であるコンピューター装置の構成図。
【図2】欠陥検出装置の欠陥検出処理を示すフローチャート。
【図3】欠陥検出処理における欠陥強調処理工程を示すフローチャート。
【図4】欠陥強調処理工程における欠陥マスク領域設定工程を示す図。
【図5】撮像画像における検査対象画素に対して設定される比較対象画素の配置位置を示す欠陥強調フィルタの一例を示す図。
【図6】欠陥強調フィルタの変形例を示す図。
【図7】欠陥強調フィルタの他の変形例を示す図。
【図8】欠陥強調フィルタの他の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0106】
6…欠陥検出装置であるコンピューター装置、61…欠陥強調処理手段、62…欠陥検出手段を構成する欠陥抽出手段、63…欠陥検出手段を構成する欠陥判別手段、611…検査対象画素選定手段、612…比較対象画素群設定手段、613…最小輝度差算出手段、614…欠陥強調値算出手段、615…欠陥マスク領域設定手段、616…計数手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程と、
前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出工程と、を有し、
前記欠陥強調処理工程は、前記撮像画像の明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方の欠陥成分の領域にマスク処理を行う欠陥マスク処理工程と
前記撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程と、
選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定工程と、
前記比較対象画素群に含まれる各比較対象画素のうち、前記欠陥マスク処理工程でマスク処理されなかった比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出工程と、
比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程と、
を備えることを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検出方法において
前記比較対象画素群設定工程により設定された各比較対象画素群に含まれる前記比較対象画素のうち、前記欠陥マスク処理工程においてマスク処理されたマスク画素の数をカウントする計数工程を備え、
前記最小輝度差算出工程は、前記計数工程によりカウントされる前記マスク画素の数が、所定閾値未満である場合、この比較対象画素群に対する前記最小輝度差を算出する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の欠陥検出方法において、
全ての前記比較対象画素群に対して前記マスク画素数が、前記閾値以上である場合、前記比較対象画素設定工程にて設定された前記比較対象画素群とは異なる画素位置の比較対象画素を複数配置した比較対象画素群を設定する比較対象画素再設定工程を備える
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の欠陥検出方法において、
前記欠陥マスク処理工程は、当該欠陥検出方法に検出された明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方に対してマスク処理を実施する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の欠陥検出方法において、
前記比較対象画素群設定工程は、
前記複数の比較対象画素として、4×n個(nは2以上の整数)の比較対象画素を選定し、
これらの比較対象画素を、検査対象画素を中心とする円周方向において90度間隔で配置された4個の比較対象画素毎に選択して各比較対象画素群を設定する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の欠陥検出方法において、
前記比較対象画素群設定工程は、
前記複数の比較対象画素として、検査対象画素を中心とする円周方向において45度間隔で配置された8個の比較対象画素を選定し、
これらの8個の比較対象画素を、検査対象画素を中心とする円周方向において90度間隔で配置された4個の比較対象画素毎に選択して第1比較対象画素群および第2比較対象画素群を設定する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の欠陥検出方法において、
前記最小輝度差算出工程は、
欠陥部分の輝度が、周囲の輝度よりも高くなる明欠陥を検出する場合には、前記検査対象画素の輝度値から比較対象画素の輝度値を引いて輝度差データを求め、それらの輝度差データの最小輝度差を求め、
欠陥部分の輝度が、周囲の輝度よりも低くなる暗欠陥を検出する場合には、前記比較対象画素の輝度値から検査対象画素の輝度値を引いて輝度差データを求め、それらの輝度差データの最小輝度差を求めることを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の欠陥検出方法において、
前記欠陥検出工程は、前記検査対象画素での欠陥強調値を所定の閾値と比較して欠陥候補画素を抽出し、その欠陥候補画素によって構成される欠陥候補領域の特徴量から欠陥内容を判別することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項9】
被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調処理を行う欠陥強調処理手段と、
前記欠陥強調処理手段で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出手段と、を有し、
前記欠陥強調処理手段は、前記撮像画像の明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方の欠陥成分の領域にマスク処理を行う欠陥マスク処理手段と
前記撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定手段と、
選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定手段と、
前記比較対象画素群に含まれる各比較対象画素のうち、前記欠陥マスク処理工程でマスク処理されなかった比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出手段と、
比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出手段と、
を備えることを特徴とする欠陥検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−151762(P2010−151762A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333091(P2008−333091)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】