説明

比較回路

【課題】比較回路の自己発熱を抑制して、自己発熱対策に起因する当該比較回路の動作速
度の低下を防止できるようにする。
【解決手段】差動増幅部11,12にスイッチS1,S2をそれぞれ接続させる。スイッ
チS1をONにして差動増幅部11を動作させるときには、スイッチS2をOFFにして
差動増幅部12を停止させ、スイッチS2をONにして差動増幅部12を動作させるとき
には、スイッチS1をOFFにして差動増幅部11を停止させる。この結果、スイッチS
1,S2によって差動増幅部11,12が交互に動作するので、差動増幅部11,12の
動作による自己発熱を抑制することができ、自己発熱対策に起因する比較回路1の動作速
度の低下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号を比較する比較回路であって、自己発熱対策による動作速度の低下
を防止することができる比較回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
比較回路は、入力信号を比較して、その比較結果を出力信号として出力するものである
。近年、比較回路は、他の回路とIC(Integrated Circuit)内に形成されることが多い

【0003】
このようなIC内に形成される比較回路は、自己発熱を発生してオフセット電圧が発生
する。この自己発熱の対策をすると動作速度が低下してしまう。
【0004】
引用文献1には、極性反転回路を備えた比較回路が開示されている。この比較回路によ
れば、差動比較器の入力側と出力側とに極性反転回路をそれぞれ設け、2つの極性反転回
路の極性反転状態を同じにして、差動比較器の入力部を構成するトランジスタの熱時定数
よりも短い周期でランダムに極性を反転させるものである。
【0005】
図6は、従来の比較回路4の構成例を示す回路図である。図6に示すように、比較回路
4は、差動増幅部40、第1の抵抗(以下、抵抗R1という),第2の抵抗(以下、抵抗
R2という)、定電流源IEEで構成される。この比較回路4は、自己発熱対策を行って
いないものである。
【0006】
抵抗R1は、その一端が電源の高電位側(以下、電源VCCという)に接続され、その
他端が第1の出力端子(以下、出力端子Outnという)に接続される。抵抗R2は、そ
の一端が電源VCCに接続され、その他端が第2の出力端子(以下、出力端子Outpと
いう)に接続される。
【0007】
差動増幅部40は、一対のトランジスタT10,T11で構成される。トランジスタT
10,T11は、そのベースが第1の入力端子(以下、入力端子Inpという)及び第2
の入力端子(以下、入力端子Innという)にそれぞれ接続され、そのコレクタが出力端
子Outn,Outpにそれぞれ接続され、そのエミッタがバイアス接点P1にそれぞれ
共通に接続される。トランジスタT10,T11は、入力端子Inp,Innから出力さ
れた入力信号を比較して、その比較結果を出力信号として出力端子Outn,Outpに
出力する。定電流源IEEは、その一端がバイアス接点P1に接続され、その他端が電源
低の電位側(以下、電源VEEという)に接続される。
【0008】
差動増幅部40の入力容量Cin0は、トランジスタT10,T11のベース−エミッ
タ間容量Cπ0と、トランジスタT10,T11のベース−コレクタ間容量Cμ0と、遮
断周波数fT0と、比較器のゲインAvと、相互コンダクタンスgm0と、定電流源IE
Eに流れる動作電流Iと、電荷素量qと、ボルツマン定数kと、絶対温度Tとを用いて下
記の(1)式で表現される。
【0009】
【数1】

【0010】
比較回路4を高速に動作させるには、抵抗R1,R2を小さくする、若しくは、トラン
ジスタT10,T11のサイズを小さくして入力容量を小さくする必要がある。例えば、
抵抗R1,R2を小さくすると、ゲインAvを所定の値に保つために定電流源IEEの動
作電流Iを大きくしなければならない。動作電流Iが大きくなると、トランジスタT10
,T11の消費電力が増加して当該トランジスタT10,T11の自己発熱による発熱量
が増加してしまう。自己発熱によりトランジスタT10,T11のジャンクション温度が
上昇すると、ベース−エミッタ間電圧VBEが変化する。このベース−エミッタ間電圧V
BEの変化をオフセット電圧と称し、このオフセット電圧が大きいと、比較回路4の誤動
作の原因となる。
【0011】
比較回路の自己発熱は、比較回路を構成する差動増幅部を並列に接続することで防止で
きる。その一例を図7より説明する。図7は、従来の比較回路5の構成例を示す回路図で
ある。この比較回路5は、上述の差動増幅部40と同じサイズを有する差動増幅部を2つ
設けてそれらを並列に接続し、自己発熱対策を行ったものである。比較回路5の自己発熱
は、比較回路4の自己発熱に比べ1/2になる。
【0012】
図7に示すように、比較回路5は、抵抗R1,R2、第1の差動増幅部(以下、差動増
幅部51という)、第2の差動増幅部(以下、差動増幅部52という)及び定電流源IE
Eで構成される。
【0013】
抵抗R1は、その一端が電源VCCに接続され、その他端が出力端子Outnに接続さ
れる。抵抗R2は、その一端が電源VCCに接続され、その他端が出力端子Outpとい
う)に接続される。
【0014】
差動増幅部51は、一対のトランジスタT10,T11で構成される。トランジスタT
10,T11は、そのベースが入力端子Inp,Innにそれぞれ接続され、そのコレク
タが出力端子Outn,Outpにそれぞれ接続され、そのエミッタが第1のバイアス接
点(以下、バイアス接点P1という)にそれぞれ共通に接続される。トランジスタT10
,T11は、入力端子Inp,Innから出力された入力信号を比較して、その比較結果
を出力信号として出力端子Outn,Outpに出力する。
【0015】
差動増幅部52は、一対のトランジスタT20,T21で構成される。トランジスタT
20,T21は、そのベースが入力端子Inp,Innにそれぞれ接続され、そのコレク
タが出力端子Outn,Outpにそれぞれ接続され、そのエミッタが第2のバイアス接
点(以下、バイアス接点P2という)にそれぞれ共通に接続される。トランジスタT20
,T21は、入力端子Inp,Innから出力された入力信号を比較して、その比較結果
を出力信号として出力端子Outn,Outpに出力する。定電流源IEEは、その一端
がバイアス接点P1,P2に接続され、その他端が電源VEEに接続される。
【0016】
差動増幅部51と差動増幅部52の総入力容量Cin1は、トランジスタT10,T1
1のベース−エミッタ間容量Cπ1と、トランジスタT10,T11のベース−コレクタ
間容量Cμ1と、遮断周波数fT1と、比較器のゲインAvと、相互コンダクタンスgm
1と、定電流源IEEに流れる動作電流Iと、電荷素量qと、ボルツマン定数kと、絶対
温度Tとを用いて下記の(2)式で表現される。
【0017】
【数2】

【0018】
一般に、トランジスタの単位面積における動作電流が小さくなるほど遮断周波数は小さ
くなるため、(2)式の第1項にある遮断周波数fT1は、(1)式の第1項にある遮断
周波数fT0より小さい値となる。また、(2)式の第2項の値は、(1)式の第2項の
値に対し2倍となる。これにより、総入力容量Cin1は、入力容量Cin0より大きく
なる。入力容量が大きいと動作速度が低下するので、図7に示した自己発熱対策を実施す
ると比較回路の動作速度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2007−266798号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで、引用文献1は、入力信号の変化速度に起因するオフセット電圧の発生を防止
できるという優れた比較回路であるが、自己発熱に起因するオフセット電圧の発生を防止
することは困難である。また、図7で説明したような差動増幅部を並列に接続した従来の
比較回路では、自己発熱を防止できるが、その自己発熱対策に起因して動作速度が低下し
てしまうという問題がある。
【0021】
本発明は、このような課題を解決したものであって、比較回路の自己発熱を抑制して、
自己発熱対策に起因する当該比較回路の動作速度の低下を防止できるようにすることを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の課題を解決するために、請求項1に係る比較回路は、一端が電源の高電位側(V
CC)に接続され、他端が第1の出力端子(Outn)に接続される第1の抵抗(R1)
と、一端が電源の高電位側(VCC)に接続され、他端が第2の出力端子(Outp)に
接続される第2の抵抗(R2)と、一端が第1の出力端子(Outn)に接続され、制御
端が第1の入力端子(Inp)に接続される第1のトランジスタ(T10)と、一端が第
2の出力端子(Outp)に接続され、他端が第1のトランジスタ(T10)の他端に接
続され、制御端が第2の入力端子(Inn)に接続される第2のトランジスタ(T11)
と、一端が第1の出力端子(Outn)に接続され、制御端が第1の入力端子(Inp)
に接続される第3のトランジスタ(T20)と、一端が第2の出力端子(Outp)に接
続され、他端が第3のトランジスタ(T20)の他端に接続され、制御端が第2の入力端
子(Inn)に接続される第4のトランジスタ(T21)と、一端が第1のトランジスタ
(T10)の他端と第2のトランジスタ(T11)の他端とに接続される第1のスイッチ
(Q1)と、一端が第3のトランジスタ(T20)の他端と第4のトランジスタ(T21
)の他端とに接続される第2のスイッチ(Q2)と、一端が第1のスイッチ(Q1)の他
端と第2のスイッチの他端(Q2)に接続され、他端が電源の低電位側(VEE)に接続
される定電流源(IEE)とを備えることを特徴とするものである。
【0023】
請求項1に係る比較回路では、第1の抵抗(R1)は、一端が電源の高電位側(VCC
)に接続され、他端が第1の出力端子(Outn)に接続される。第2の抵抗(R2)は
、一端が電源の高電位側(VCC)に接続され、他端が第2の出力端子(Outp)に接
続される。第1のトランジスタ(T10)は、一端が第1の出力端子(Outn)に接続
され、制御端が第1の入力端子(Inp)に接続される。第2のトランジスタ(T11)
は、一端が第2の出力端子(Outp)に接続され、他端が第1のトランジスタ(T10
)の他端に接続され、制御端が第2の入力端子(Inn)に接続される。第3のトランジ
スタ(T20)は、一端が第1の出力端子(Outn)に接続され、制御端が第1の入力
端子(Inp)に接続される。第4のトランジスタ(T21)は、一端が第2の出力端子
(Outp)に接続され、他端が第3のトランジスタ(T20)の他端に接続され、制御
端が第2の入力端子(Inn)に接続される。第1のスイッチ(Q1)は、一端が第1の
トランジスタ(T10)の他端と第2のトランジスタ(T11)の他端とに接続される。
第2のスイッチ(Q2)は、一端が第3のトランジスタ(T20)の他端と第4のトラン
ジスタ(T21)の他端とに接続される。定電流源(IEE)は、一端が第1のスイッチ
(Q1)の他端と第2のスイッチ(Q2)の他端に接続され、他端が電源の低電位側(V
EE)に接続される。
【0024】
これにより、第1のスイッチ(Q1)をONにして第1のトランジスタ(T10)及び
第2のトランジスタ(T11)を動作させるときには、第2のスイッチ(Q2)をOFF
にして第3のトランジスタ(T20)及び第4のトランジスタ(T21)を停止させる。
また、第2のスイッチ(Q2)をONにして第2のスイッチ(Q2)をOFFにして第3
のトランジスタ(T20)及び第4のトランジスタ(T21)を動作させるときには、第
1のスイッチ(Q1)をOFFにして第1のトランジスタ(T10)及び第2のトランジ
スタ(T11)を停止させる。このように、第1のスイッチ(Q1)及び第2のスイッチ
(Q2)によって第1のトランジスタ(T10)及び第2のトランジスタ(T11)と第
3のトランジスタ(T20)及び第4のトランジスタ(T21)とが交互に動作するので
、当該比較回路の動作による自己発熱を抑制することができるようになる。
【0025】
請求項2に係る比較回路は、請求項1の記載において、第1のトランジスタ(T10)
、第2のトランジスタ(T11)、第3のトランジスタ(T20)及び第4のトランジス
タ(T21)は、バイポーラトランジスタ及び/又は電界効果トランジスタで構成される
ことを特徴とするものである。
【0026】
請求項2に係る比較回路では、バイポーラトランジスタ及び/又は電界効果トランジス
タで第1のトランジスタ(T10)、第2のトランジスタ(T11)、第3のトランジス
タ(T20)及び第4のトランジスタ(T21)が構成されるので、当該第1及び第2の
差動増幅部を容易に作製することができる。
【0027】
請求項3に係る比較回路は、請求項1の記載において、第1のスイッチ(Q1)及び第
2のスイッチ(Q2)は、バイポーラトランジスタ及び/又は電界効果トランジスタで構
成されることを特徴とするものである。
【0028】
請求項3に係る比較回路では、バイポーラトランジスタ及び/又は電界効果トランジス
タで第1のスイッチ(Q1)及び第2のスイッチ(Q2)が構成されるので、第1のトラ
ンジスタ(T10)、第2のトランジスタ(T11)、第3のトランジスタ(T20)及
び第4のトランジスタ(T21)と同時に作製でき、当該比較回路の製造コストが低減で
きる。
【0029】
請求項4に係る比較回路は、請求項3の記載において、第1のスイッチ(Q1)及び第
2のスイッチ(Q2)には、クロック信号が入力されることを特徴とするものである。
【0030】
請求項4に係る比較回路では、クロック信号が第1のスイッチ(Q1)及び第2のスイ
ッチ(Q2)に入力されるので、他の回路で使用される既存のクロック信号を用いて第1
のスイッチ(Q1)及び第2のスイッチ(Q2)を動作させることができる。これにより
、安価な比較回路を製造できる。
【0031】
請求項5に係る比較回路は、一端が電源の高電位側(VCC)に接続され、他端が第1
の出力端子(Outn)に接続される第1の抵抗(R1)と、一端が電源の高電位側(V
CC)に接続され、他端が第2の出力端子(Outp)に接続される第2の抵抗(R2)
と、一端が第1の出力端子(Outn)及び第2の出力端子(Outp)に接続され、制
御端が第1の入力端子(Inp)及び第2の入力端子(Inn)に接続され、第1の入力
端子(Inp)及び第2の入力端子(Inn)から入力された入力信号を比較して、その
比較結果を出力信号として第1の出力端子(Outn)及び第2の出力端子(Outp)
に出力するm個(m≧2)の差動増幅部(1m)と、一端がm個の差動増幅部(1m)の
うち1つの他端に接続されるm個のスイッチ(Qm)と、一端がm個のスイッチ(Qm)
の他端に接続され、他端が電源の低電位側(VEE)に接続される定電流源(IEE)と
を備えることを特徴とするものである。
【0032】
請求項5に係る比較回路では、m個のスイッチ(Qm)によってm個の差動増幅部(1
m)をそれぞれ切り替えて当該m個の差動増幅部(1m)を動作させるので、当該比較回
路の動作による発熱をより抑制することができるようになる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る比較回路によれば、当該比較回路の動作による自己発熱を抑制でき、自己
発熱対策に起因する当該比較回路の動作速度の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態に係る比較回路1の構成例を示す回路図である。
【図2】比較回路1の動作例を示すタイミングチャートである。
【図3】第1の実施例に係る比較回路2の構成例を示す回路図である。
【図4】第2の実施例に係る比較回路3の構成例を示す回路図である。
【図5】比較回路3の動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】従来の比較回路4の構成例を示す回路図である。
【図7】従来の比較回路5の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明に係る比較回路について説明する。図1に示すように
、本実施の形態に係る比較回路1は、抵抗R1,R2、第1の差動増幅部(以下、差動増
幅部11という)、第2の差動増幅部(以下、差動増幅部12という)、第1のスイッチ
(以下、スイッチS1という)、第2のスイッチ(以下、スイッチS2という)及び定電
流源IEEで構成される。
【0036】
抵抗R1は、その一端が電源の高電位側(以下、電源VCCという)に接続され、その
他端が第1の出力端子(以下、出力端子Outnという)に接続される。抵抗R2は、そ
の一端が電源VCCに接続され、その他端が第2の出力端子(以下、出力端子Outpと
いう)に接続される。
【0037】
差動増幅部11は、第1のトランジスタ(以下、トランジスタT10という)及び第2
のトランジスタ(以下、トランジスタT11という)で構成される。トランジスタT10
,T11は、その制御端であるベースが第1の入力端子(以下、入力端子Inpという)
及び第2の入力端子(以下、入力端子Innという)にそれぞれ接続され、そのコレクタ
が出力端子Outn,Outpにそれぞれ接続され、そのエミッタが第1のバイアス接点
(以下、バイアス接点B1という)にそれぞれ共通に接続される。トランジスタT10,
T11は、入力端子Inp,Innから出力された入力信号を比較して、その比較結果を
出力信号として出力端子Outn,Outpに出力する。
【0038】
差動増幅部12は、第3のトランジスタ(以下、トランジスタT20という)及び第4
のトランジスタ(以下、トランジスタT21という)で構成される。トランジスタT20
,T21は、その制御端であるベースが入力端子Inp,Innにそれぞれ接続され、そ
のコレクタが出力端子Outn,Outpにそれぞれ接続され、そのエミッタが第2のバ
イアス接点(以下、バイアス接点B2という)にそれぞれ共通に接続される。トランジス
タT20,T21は、入力端子Inp,Innから出力された入力信号を比較して、その
比較結果を出力信号として出力端子Outn,Outpに出力する。
【0039】
スイッチS1は、その一端がバイアス接点B1に接続される。スイッチS1には、端子
A1が接続され、当該端子A1からクロック信号φ1が出力される。スイッチS1は、ク
ロック信号φ1によってON/OFF動作する。クロック信号φ1は、他の回路で使用さ
れる既存のものである。
【0040】
スイッチS2は、その一端がバイアス接点B2に接続される。スイッチS2には、端子
A2が接続され、当該端子A2からクロック信号φ2が出力される。スイッチS2は、ク
ロック信号φ2によってON/OFF動作する。クロック信号φ2は、他の回路で使用さ
れる既存のものである。このように、既存の回路から発生されるクロック信号φ1,2を
用いてスイッチS1,S2をON/OFF動作させることができる。
【0041】
定電流源IEEは、その一端がスイッチS1,S2の他端に接続され、その他端が低電
位側の電源(以下、電源VEEという)に接続される。
【0042】
このような構成にすることにより、比較回路1は、スイッチS1,S2を交互にON/
OFF動作させることで、差動増幅部11,12を交互にON/OFF動作させることが
できる。また他の回路で使用される既存のクロック信号φ1,φ2を用いてスイッチS1
,S2を動作させることができるので、安価な比較回路1が製造できる。
【0043】
次に、本実施の形態に係る比較回路1が有する差動増幅部11,12の総入力容量Ci
n2と、従来の比較回路5が有する差動増幅部51,52の総入力容量Cin1及び比較
回路4が有する差動増幅部40の入力容量Cin0との比較から、比較回路1と比較回路
4,5との動作速度を比較する。
【0044】
スイッチS1がONになり、差動増幅部11が動作し、スイッチS2がOFFとなり、
差動増幅部12は動作していないことを前提とし、差動増幅部11,40,51はそれぞ
れ同じトランジスタT10,T11を有することを前提とする。
【0045】
差動増幅部11の動作電流Iは、図6で説明した差動増幅部40と同じになる。よって
、差動増幅部11の入力容量CONは、(1)式で示したCin0と同じになる。また、
差動増幅部12の入力容量COFFは、差動増幅部40の動作電流Iを0としたものであ
るので、AV・Cμ0となる。以上より、差動増幅部11と差動増幅部12の総入力容量
Cin2は、下記の(3)式で表現される。
【0046】
【数3】

【0047】
比較回路1と比較回路5を比較すると、トランジスタの単位面積における動作電流が小
さくなるほど遮断周波数は小さくなるため、(2)式の第1項にある遮断周波数fT1は
、(3)式の第1項にある遮断周波数fT0より小さい値となる。これにより、総入力容
量Cin2は、総入力容量Cin1より小さくなる。この結果、比較回路1は、従来の比
較回路5よりも入力容量が小さくなり、動作速度の低下が抑制される。
【0048】
比較回路1と比較回路4を比較すると、動作している差動増幅部11の消費電力は、差
動増幅部40の消費電力と同じである。差動増幅部11の動作時間は、差動増幅部40の
動作時間に比べ1/2になる。これにより、比較回路1の平均消費電力は、比較回路4の
平均消費電力に比べ1/2になる。比較回路5の自己発熱は、比較回路4の自己発熱に比
べ1/2になるので、比較回路1の自己発熱は、比較回路5の自己発熱と同じになる。こ
のように、比較回路1は、比較回路5と同じ自己発熱の抑制効果を有し、入力容量を低減
できるので、自己発熱対策により生じる動作速度の低下を抑制できる。
【0049】
次に、比較回路1の動作例について説明する。スイッチS1に接続された端子A1から
クロック信号φ1が出力され、スイッチS2に接続された端子A2からクロック信号φ2
が出力される。クロック信号φ1及びクロック信号φ2は、交互に発生されるパルス信号
である。例えば、クロック信号φ2は、クロック信号φ1をインバータ回路等に入力する
ことで生成できる。
【0050】
図2に示すように、時間t0から時間t1では、クロック信号φ1が有する「1」の信
号がスイッチS1に入力されて当該スイッチS1がONとなる。また、クロック信号φ2
が有する「0」の信号がスイッチS2に入力されて当該スイッチS2がOFFとなる。す
ると、差動増幅部11が駆動し、差動増幅部12が停止する。
【0051】
時間t1から時間t2では、クロック信号φ2が有する「1」の信号がスイッチS2に
入力されて当該スイッチS2がONとなる。また、クロック信号φ1が有する「0」の信
号がスイッチS1に入力されて当該スイッチS1がOFFとなる。すると、差動増幅部1
1が停止し、差動増幅部12が駆動する。このように、クロック信号φ1,φ2によって
スイッチS1,S2のON/OFFを制御することにより、差動増幅部11,12のON
/OFFを制御することができる。
【0052】
なお、クロック信号φ1,φ2が「1」のときに、スイッチS1,S2がONになり、
クロック信号φ1,φ2が「0」のときに、スイッチS1,S2がOFFになる構成を説
明したが、クロック信号φ1,φ2が「1」のときに、スイッチS1,S2がOFFにな
り、クロック信号φ1,φ2が「0」のときに、スイッチS1,S2がONになる構成で
も良い。
【0053】
このように、本実施の形態に係る比較回路1によれば、差動増幅部11,12にスイッ
チS1,S2をそれぞれ接続させる。スイッチS1をONにして差動増幅部11を動作さ
せるときには、スイッチS2をOFFにして差動増幅部12を停止させ、スイッチS2を
ONにして差動増幅部12を動作させるときには、スイッチS1をOFFにして差動増幅
部11を停止させる。この結果、スイッチS1,S2によって差動増幅部11,12が交
互に動作するので、比較回路1の動作による自己発熱を抑制することができるようになる
。この結果、比較回路1の動作による自己発熱を抑制でき、自己発熱対策に起因する比較
回路1の動作速度の低下を防止できる。
【0054】
なお、本実施の形態では、差動増幅部11,12を構成するトランジスタT10,T1
1,T20,T21は、バイポーラトランジスタで説明したが、電界効果トランジスタを
用いても構わない。
【実施例1】
【0055】
本実施例では、スイッチS1,S2をトランジスタQ1,Q2に置き換えた比較回路2
について説明する。前述の実施の形態と同じ名称及び符号のものは同じ機能を有するので
、その説明を省略する。
【0056】
図3に示すように、本実施例に係る比較回路2は、抵抗R1,R2、差動増幅部11,
12、第1のスイッチ用のトランジスタ(以下、トランジスタQ1という)、第2のスイ
ッチ用のトランジスタ(以下、トランジスタQ2という)及び定電流源IEEで構成され
る。
【0057】
抵抗R1,R2、差動増幅部11及び差動増幅部12の接続関係は、前述の実施の形態
と同じである。
【0058】
トランジスタQ1は、そのコレクタがバイアス接点B1に接続される。そのベースには
、端子A1に接続され、端子A1からクロック信号φ1が出力される。トランジスタQ1
は、クロック信号φ1によってコレクタ−エミッタ間の電流をON/OFFする。クロッ
ク信号φ1は、他の回路で使用される既存のものである。
【0059】
トランジスタQ2は、そのコレクタがバイアス接点B2に接続される。そのベースには
、端子A2に接続され、端子A2からクロック信号φ2が出力される。トランジスタQ2
は、クロック信号φ2によってコレクタ−エミッタ間の電流をON/OFFする。クロッ
ク信号φ2は、他の回路で使用される既存のものである。このように、既存の回路から発
生されるクロック信号φ1,2を用いてトランジスタQ1,Q2を動作させることができ
る。
【0060】
定電流源IEEは、その一端がトランジスタQ1,Q2のエミッタに接続され、その他
端が電源VEEに接続される。
【0061】
このような構成にすることにより、比較回路2は、トランジスタQ1,Q2を交互にO
N/OFF動作させることで、差動増幅部11,12を交互にON/OFF動作させるこ
とができる。
【0062】
このように、本実施例に係る比較回路2によれば、差動増幅部11,12に、スイッチ
S1,S2をトランジスタQ1,Q2で構成する。トランジスタQ1,Q2は、スイッチ
S1,S2と同様に差動増幅部11,12を交互に動作させるので、比較回路2の動作に
よる自己発熱を抑制することができるようになる。
【0063】
この結果、比較回路2の動作による自己発熱を抑制でき、自己発熱対策に起因する比較
回路2の動作速度の低下を防止できる。また、差動増幅部11,12と同時にトランジス
タQ1,Q2を作製できるので、比較回路2の製造コストが低減できる。
【0064】
なお、本実施例では、トランジスタQ1,Q2は、バイポーラトランジスタで説明した
が、電界効果トランジスタを用いても構わない。
【実施例2】
【0065】
本実施例では、差動増幅部をm個(m≧2)並列に接続させた比較回路3について説明
する。前述の実施の形態及び実施例と同じ名称及び符号のものは同じ機能を有するので、
その説明を省略する。
【0066】
図4に示すように、本実施例に係る比較回路3は、抵抗R1,R2、m個の差動増幅部
11〜1m、m個のトランジスタQ1〜Qm及び定電流源IEEで構成される。
【0067】
抵抗R1は、その一端が電源VCCに接続され、その他端が出力端子Outnに接続さ
れる。抵抗R2は、その一端が電源VCCに接続され、その他端が出力端子Outpとい
う)に接続される。
【0068】
差動増幅部11〜1mは、トランジスタT10,T11〜Tm0,Tm1で構成される
。トランジスタT10,T11〜Tm0,Tm1は、その制御端であるベースが入力端子
Inp,Innにそれぞれ共通に接続され、そのコレクタが出力端子Outn,Outp
にそれぞれ共通に接続され、そのエミッタがm個のバイアス接点B1〜Bmにそれぞれ接
続される。トランジスタT10,T11〜Tm0,Tm1は、入力端子Inp,Innか
ら出力された入力信号を比較して、その比較結果を出力信号として出力端子Outn,O
utpに出力する。
【0069】
トランジスタQ1〜Qmは、そのコレクタがバイアス接点B1〜Bmにそれぞれ接続さ
れる。そのベースには、端子A1〜Amがそれぞれ接続され、当該端子A1〜Amからク
ロック信号φ1〜φmがそれぞれ出力される。トランジスタQ1〜Qmは、クロック信号
φ1〜φmによってコレクタ−エミッタ間の電流をON/OFFする。クロック信号φ1
〜φmは、他の回路で使用される既存のものである。
【0070】
定電流源IEEは、その一端がトランジスタQ1〜Qmのエミッタに共通に接続され、
その他端が電源VEEに接続される。
【0071】
このような構成にすることにより、比較回路3は、トランジスタQ1〜Qmを順々に1
つずつON/OFF動作させることで、差動増幅部11〜1mを順々に1つずつON/O
FF動作させることができる。
【0072】
次に、比較回路3の動作例について説明する。トランジスタQ1〜Qmに接続された端
子A1〜Amからクロック信号φ1〜φmが出力される。クロック信号φ1〜φmは、時
間的に順々に発生されるパルス信号である。例えば、クロック信号φ1〜φmは、遅延回
路、ラッチ回路、シフトレジスタ等を用いて生成できる。
【0073】
図5に示すように、時間t0から時間t1では、トランジスタQ1のベースにクロック
信号φ1が有する「1」の信号が入力されて当該トランジスタQ1の動作がONとなる。
また、クロック信号φ2〜φmが有する「0」の信号がトランジスタQ1以外のトランジ
スタQ2〜Qmに入力されて当該トランジスタQ2〜Qmの動作はOFFとなる。すると
、差動増幅部11が駆動し、差動増幅部12〜1mが停止する。
【0074】
時間t1から時間t2では、クロック信号φ2が有する「1」の信号がトランジスタQ
2に入力されて当該トランジスタQ2の動作はONとなる。また、トランジスタQ1,Q
3〜Qmのベースにクロック信号φ1,φ3〜φmが有する「0」の信号が入力されて当
該トランジスタQ1,Q3〜Qmの動作がOFFとなる。すると、差動増幅部12が駆動
し、差動増幅部11,13〜1mが停止する。
【0075】
時間tm−1から時間tmでは、クロック信号φmが有する「1」の信号がトランジス
タQmに入力されて当該トランジスタQmの動作はONとなる。また、トランジスタQm
以外のトランジスタのベースにクロック信号φm以外のクロック信号が有する「0」の信
号が入力されてトランジスタQm以外のトランジスタの動作がOFFとなる。すると、差
動増幅部1mが駆動し、差動増幅部1m以外の差動増幅部が停止する。
【0076】
時間tmから時間tm+1では、トランジスタQ1のベースにクロック信号φ1が有す
る「1」の信号が入力されて当該トランジスタQ1の動作がONとなる。また、クロック
信号φ2〜φmが有する「0」の信号がトランジスタQ1以外のトランジスタQ2〜Qm
に入力されて当該トランジスタQ2〜Qmの動作はOFFとなる。すると、差動増幅部1
1が駆動し、差動増幅部12〜1mが停止する。このように、クロック信号φ1〜φmに
よってトランジスタQ1〜QmのON/OFFを制御することにより、差動増幅部11〜
1mのON/OFFを制御することができる。
【0077】
このように、本実施例に係る比較回路3によれば、m個の差動増幅部11〜1mにm個
のトランジスタQ1〜Qmをそれぞれ接続させる。トランジスタQ1〜Qmを順々に1つ
ずつ動作させることで、比較回路3の動作による自己発熱を抑制することができるように
なる。
【0078】
この結果、比較回路3の動作による自己発熱を抑制でき、自己発熱対策に起因する比較
回路3の動作速度の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0079】
1,2,3,4,5 比較回路
11,51 第1の差動増幅部
12,52 第2の差動増幅部
40 差動増幅部
IEE 定電流源
Q1 第1のスイッチ用のトランジスタ
Q2 第2のスイッチ用のトランジスタ
R1 第1の抵抗
R2 第2の抵抗
S1 第1のスイッチ
S2 第2のスイッチ
T10 第1のトランジスタ
T11 第2のトランジスタ
T20 第3のトランジスタ
T21 第4のトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が電源の高電位側(VCC)に接続され、他端が第1の出力端子(Outn)に接
続される第1の抵抗(R1)と、
一端が電源の高電位側(VCC)に接続され、他端が第2の出力端子(Outp)に接
続される第2の抵抗(R2)と、
一端が前記第1の出力端子(Outn)に接続され、制御端が第1の入力端子(Inp
)に接続される第1のトランジスタ(T10)と、
一端が前記第2の出力端子(Outp)に接続され、他端が前記第1のトランジスタ(
T10)の他端に接続され、制御端が第2の入力端子(Inn)に接続される第2のトラ
ンジスタ(T11)と、
一端が前記第1の出力端子(Outn)に接続され、制御端が前記第1の入力端子(I
np)に接続される第3のトランジスタ(T20)と、
一端が前記第2の出力端子(Outp)に接続され、他端が前記第3のトランジスタ(
T20)の他端に接続され、制御端が前記第2の入力端子(Inn)に接続される第4の
トランジスタ(T21)と、
一端が前記第1のトランジスタ(T10)の他端と前記第2のトランジスタ(T11)
の他端とに接続される第1のスイッチ(Q1)と、
一端が前記第3のトランジスタ(T20)の他端と前記第4のトランジスタ(T21)
の他端とに接続される第2のスイッチ(Q2)と、
一端が前記第1のスイッチ(Q1)の他端と前記第2のスイッチ(Q2)の他端に接続
され、他端が電源の低電位側(VEE)に接続される定電流源(IEE)とを備えること
を特徴とする比較回路。
【請求項2】
前記第1のトランジスタ(T10)、前記第2のトランジスタ(T11)、前記第3の
トランジスタ(T20)及び前記第4のトランジスタ(T21)は、
バイポーラトランジスタ及び/又は電界効果トランジスタで構成されることを特徴とす
る請求項1に記載の比較回路。
【請求項3】
前記第1のスイッチ(Q1)及び前記第2のスイッチ(Q2)は、
バイポーラトランジスタ及び/又は電界効果トランジスタで構成されることを特徴とす
る請求項1に記載の比較回路。
【請求項4】
前記第1のスイッチ(Q1)及び前記第2のスイッチ(Q2)には、
クロック信号が入力されることを特徴とする請求項3に記載の比較回路。
【請求項5】
一端が電源の高電位側(VCC)に接続され、他端が第1の出力端子(Outn)に接
続される第1の抵抗(R1)と、
一端が電源の高電位側(VCC)に接続され、他端が第2の出力端子(Outp)に接
続される第2の抵抗(R2)と、
一端が前記第1の出力端子(Outn)及び前記第2の出力端子(Outp)に接続さ
れ、制御端が第1の入力端子(Inp)及び第2の入力端子(Inn)に接続され、前記
第1の入力端子(Inp)及び第2の入力端子(Inn)から入力された入力信号を比較
して、その比較結果を出力信号として前記第1の出力端子(Outn)及び前記第2の出
力端子(Outp)に出力するm個(m≧2)の差動増幅部(1m)と、
一端が前記m個の差動増幅部(1m)のうち1つの他端に接続されるm個のスイッチ(
Qm)と、
一端が前記m個のスイッチ(Qm)の他端に接続され、他端が電源の低電位側(VEE
)に接続される定電流源(IEE)とを備えることを特徴とする比較回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−30044(P2011−30044A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175109(P2009−175109)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】