説明

気相成長装置

【課題】 基板を保持する基板ホルダー、及び該基板ホルダーを回転自在に保持し外周に外部からの回転駆動力の伝達を受ける歯車部を有するサセプタが備えられた気相成長装置であって、歯車部等に破損が生じたとしてもサセプタ全体を交換することを要せず、温度むらを原因とした熱応力によるサセプタの破損を抑制できる気相成長装置を提供することである。
【解決手段】 サセプタの歯車部がサセプタ本体から自由自在に分離できる構成、好ましくは円盤状部材とその外側に設けられたリング状部材からなるサセプタ本体及び歯車部からなる構成、あるいは歯車部が複数の円弧状部材からなる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板ホルダーを回転自在に保持し外周に外部からの回転駆動力の伝達を受ける歯車部を有するサセプタが備えられた気相成長装置に関し、特に歯車部のみを新規なものと交換することができ、また温度むらを原因とした熱応力によるサセプタの破損を抑制できる気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶膜を、基板上に成長する方法には、化学的気相成長(CVD)法等の方法があり、基板加熱を伴うCVD法には熱CVD法等が知られている。近年、高温条件(例えば1000℃以上)で基板を加熱して行なう気相成長工程が増加しており、青色若しくは紫外LEDまたは青色若しくは紫外レーザーダイオードを製作するためのIII族窒化物半導体の気相成長工程もその一つである。例えば、III族窒化物半導体結晶膜の成長は、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、またはトリメチルアルミニウム等の有機金属ガスをIII族金属源として、アンモニアを窒素源として用い、1000℃以上の高温に加熱されたシリコン(Si)、サファイア(Al)または窒化ガリウム(GaN)等の基板上に結晶膜を気相成長する熱CVD法により行われることがある。
【0003】
気相成長装置には、基板の結晶成長面を上向きに配置するもの(フェイスアップ型)、基板の結晶成長面を下向きに配置するもの(フェイスダウン型)がある。また、1バッチ当たり1枚の基板上に結晶膜を成長させる気相成長装置があるが、生産性を向上するために1バッチあたり複数枚の基板上に結晶膜を成長させる気相成長装置も知られている。
気相成長装置の構成としては、特許文献1〜4に示すように、基板を保持し、あるいは基板を保持する基板ホルダーを回転自在に保持し、外周に外部からの回転駆動力の伝達を受ける歯車部を有するサセプタを備えた構成がある。
【0004】
このような気相成長装置において、均一な膜厚及び膜質を得るには、サセプタを回転させながら基板上に結晶膜を成長させることが有効である。サセプタの回転は、サセプタを回転自在に保持し、サセプタの外周に設けられた歯車部に伝達される回転駆動力により行われることがある。また、1バッチあたり複数枚の基板上に結晶膜を成長させる場合には、サセプタの回転により基板を公転させ、基板ホルダーの回転により基板を自転させることにより、各基板間及び同一基板面内において、均一な膜厚及び膜質を得ることもできる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−175992号公報
【特許文献2】特開2007−96280号公報
【特許文献3】特開2010−219225号公報
【特許文献4】特開2010−232624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の気相成長装置において、気相成長装置の反応炉内に用いられる部材は、反応性の原料ガスに高温下で接触することにより腐食や劣化の進行が早まることが多い。また、サセプタを回転させる回転駆動力の伝達を受ける歯車部は、摩耗や応力の影響も受け易いため、特に破損を生じる虞が大きい部分である。
また、歯車部が設けられるサセプタの外周部は、基板を加熱するヒータによる加熱領域と非加熱領域との境界付近に位置することが多く、その結果、半径方向の温度むらによる熱応力により変形や割れ等が発生し易くなる。そのため、歯車部がサセプタ本体に一体となった従来から使用されているサセプタにおいては、歯車部に破損が生じた場合に、その破損が一部だけであってもサセプタ全体を交換しなくてはならないという問題があった。
【0007】
さらに、前述の気相成長装置においては、半径方向の温度むらのほか、サセプタの上面と下面では熱伝達や放熱の程度に違いが生じることが多く、厚さ方向の温度むらにより生じる熱応力によりサセプタに変形や割れ等が発生し易いことがわかった。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、前述のような気相成長装置において、歯車部等に破損が生じたとしてもサセプタ全体を交換することを要せず、温度むらを原因とした熱応力によるサセプタの破損を抑制できる気相成長装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、前述のような気相成長装置のサセプタの構成を、サセプタの歯車部がサセプタ本体から自由自在に分離できる構成、好ましくは円盤状部材とその外側に設けられたリング状部材からなるサセプタ本体及び歯車部からなる構成、あるいは歯車部が複数の円弧状部材からなる構成とすることにより、前述の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、基板を保持する基板ホルダー、及び該基板ホルダーを回転自在に保持し外周に外部からの回転駆動力の伝達を受ける歯車部を有するサセプタが備えられた気相成長装置であって、サセプタの歯車部がサセプタ本体から分離できる構成を備えてなることを特徴とする気相成長装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気相成長装置は、サセプタの歯車部がサセプタ本体から容易に分離できる構成なので、歯車部等に破損が生じたとしてもサセプタ全体を交換する必要がない。また、歯車部の材質を、容易にサセプタ本体より熱伝導性が低い材質とすることができるので、サセプタ本体の温度均一性が向上し、温度むらを原因とした熱応力によるサセプタの破損を抑制できる。
さらに、本発明の気相成長装置において、サセプタの構成を、円盤状部材とその外側に設けられたリング状部材からなるサセプタ本体及び歯車部からなる構成、あるいは歯車部が複数の円弧状部材からなる構成とすることにより、前記の歯車部のみを交換できる効果、サセプタの破損を抑制できる効果がより効率よく得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、基板を保持する基板ホルダー、及び該基板ホルダーを回転自在に保持し外周に外部からの回転駆動力の伝達を受ける歯車部を有するサセプタが備えられた気相成長装置に適用される。以下、本発明の気相成長装置を、図1〜図5に基づいて詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。尚、図1は、本発明の気相成長装置の一例を示す垂直断面構成図であり、図2は、図1に示した気相成長装置の部分拡大図(A部)であり、図3は、図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面B−B)であり、図4は、図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面C−C)であり、図5は、本発明の気相成長装置において使用されるサセプタの一例を示す水平断面構成図であり、図6は、リング状部材及びサセプタの歯車部の一例を示す斜視図である。
【0012】
本発明の気相成長装置は、図1に示すように、基板1を保持する基板ホルダー2、及び該基板ホルダー2を回転自在に保持し外周に外部からの回転駆動力の伝達を受ける歯車部を有するサセプタ3が備えられた気相成長装置であって、図4に示すように、サセプタの歯車部22がサセプタ本体(21、23)から分離できる構成を備えてなる気相成長装置である。
本発明の気相成長装置は、サセプタの構成が、図4に示すように、円盤状部材21とその外側に設けられたリング状部材23からなるサセプタ本体、及び歯車部22からなる構成、あるいは歯車部が複数(図4においては4個)の円弧状部材からなる構成であることが好ましい。
【0013】
尚、本発明において、サセプタの歯車部がサセプタ本体から分離できる構成とは、一般的に使用されている治具により、容易にサセプタの歯車部がサセプタ本体から取り外せる状態を示し、例えば、これらが、螺旋、ボルトとナット、ピン、嵌め合せにより結合されている構成を示すものである。本発明においては、円盤状部材、リング状部材、及び歯車部を各々分離できる構成とすることができ、また円盤状部材をサセプタ本体とし、図6に示すように、リング状部材23を含めて歯車部22とし、これをサセプタ本体から分離する構成とすることもできる。さらに、リング状部材を用いない構成とすることもできる。また、本発明におけるサセプタの円盤状部材は、基板ホルダーを挿入するための孔、あるいは中央部の孔を有することができる。
【0014】
以下、本発明の気相成長装置の細部について説明する。
図1の気相成長装置において、基板1は、成長面を下向きにした状態で基板ホルダー2により保持されている。基板ホルダー2は、直径が2インチ、3インチ、4インチ、または6インチの基板を1枚保持できるが、特にこれらの大きさの基板に限定されない。ここで、ヒータ5からの熱を基板1へ均一に伝達するために、均熱板16を設けてもよい。サセプタ3は、サセプタの対面4とともに反応炉6を形成し、反応炉6は、反応容器19に収められ密封されている。サセプタ3は、6〜15個の基板ホルダー2を保持できることが好ましいが、特に限定されない。反応炉6において、サセプタ3とサセプタの対面4の間隙は、8mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましいが、特にこれらの大きさの間隙に限定されない。
【0015】
サセプタ3は、円盤状部材21およびリング状部材23から構成されるサセプタ本体並びに歯車部22から構成され、すべての基板ホルダー2は、回転が自在にできるように円盤状部材21により保持されている。サセプタ本体は、図2に示すように、円盤状部材21の外周上部に設けた突出部の下面とリング状部材23の内周下部に設けた突出部の上面を重ねあわせることにより、円盤状部材21をリング状部材23に嵌合して形成される。サセプタ3は、リング状部材23の外周下部に設けた突出部の上面と歯車部22の内周上部に設けた突出部の下面を重ねあわせることにより、サセプタ本体を歯車部22に嵌合して形成される。尚、サセプタ3は、リング状部材23の下面及び基台20の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリング17を介して基台20により回転自在に保持される。
【0016】
円盤状部材21は、直径300〜1000mm(突出部を除く)、厚さ5〜30mmの円盤状であることが好ましいが、特に限定されることはない。リング状部材23の内周円の半径は、円盤状部材21の半径より5〜30mm(突出部を除く)大きいことが好ましく、リング状部材23のリングの半径方向の幅は、10〜50mm(突出部を除く)であることが好ましく、円盤状部材21と同等の厚さであることが好ましい。歯車部22の内周円の半径は、リング状部材23の外周円の半径より5〜40mm(突出部を除く)大きいことが好ましく、歯車部22のリングの半径方向の幅は、10〜50mm(突出部を除く)であることが好ましく、リング状部材23と同等の厚さであることが好ましい。
【0017】
前記の各突出部は、任意の箇所で均等に半径方向に5〜30mm突出し、厚さ2〜15mmであることが好ましいが、この大きさ及び厚さに限定されることはない。サセプタ本体を歯車部22に嵌合したときに、リング状部材23と歯車部22の間には半径方向の隙間が形成されることがより好ましく、その隙間の大きさは、任意の場所において均等に1〜10mmがより好ましいが、この大きさに限定されることはない。リング状部材23および歯車部22を、気相成長中に互いに外れることがないように螺旋26により固定してもよいが、温度むらを原因とした熱応力によって螺旋が破損することがないように、螺旋と螺旋穴の間に隙間を設ける等の処置をすることが好ましい。尚、ベアリング17は、直径3〜10mmの球形であることが好ましい。ベアリング溝18の鉛直方向の断面は、半円形、三角形または四角形であることが好ましいが、特に限定されない。
【0018】
また、歯車部22は、サセプタの半径方向に分割形成される複数の円弧状部材24から構成されることが好ましい。円弧状部材24は、歯車部22を半径方向に分割することにより形成される。円弧状部材24は、歯車部22を角度30°、45°、60°、72°、90°、120°、または180°の間隔で分割することにより形成されることが好ましいが、これらの角度に限定されることはない。各円弧状部材24は、その上面及び下面がそれぞれ面一となるように歯車部22を形成することが好ましい。各円弧状部材24同士の間には隙間を設けることが好ましく、その隙間の大きさは、任意の場所において均等に1〜10mmが好ましいが、この大きさに限定されることはない。
【0019】
サセプタ回転駆動器13からの回転駆動力は、磁性流体シールを用いて反応容器19に対して回転自在に封止されたサセプタ回転駆動軸14に伝達される。サセプタ回転板15はサセプタ回転駆動軸14のサセプタ側先端に固定され、サセプタ回転板15の外周に設けられた歯車部とサセプタ3の歯車部22が噛み合わさることによりサセプタ3に回転駆動力が伝達される。これによりサセプタ3が回転し、サセプタ3上に配置された基板ホルダー2は公転する。気相成長反応中は、基板ホルダー2を常時公転させることが好ましい。サセプタ回転駆動軸14は、直径10〜50mmの円柱状であることが好ましいが、特に限定されない。サセプタ回転板15は、直径50〜200mm、厚さ3〜20mmの円盤状を有することが好ましいが、特に限定されることはない。尚、サセプタ回転板15の歯車部およびサセプタ3の歯車部22は、平歯車構造を有することが好ましいが、特に限定されることはない。
【0020】
基板1は公転に加えて自転によって回転されてもよい。基板ホルダー2は、基板ホルダー2の下面及び円盤状部材21の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリング17を介して、円盤状部材21の上に回転自在に保持される。基板ホルダー回転駆動器9からの回転駆動力は、まず、磁性流体シールを用いて反応容器19に対して回転自在に封止された基板ホルダー回転駆動軸10に伝達される。基板ホルダー回転駆動軸10の基板ホルダー回転板側の先端には複数本のツメ11が設けられており、ツメ11が、基板ホルダー回転板12の上面に設けられた差込口25に差し込まれることにより脱着可能に噛み合わさり、回転駆動力が基板ホルダー回転板12に伝達される。
【0021】
基板ホルダー回転板12は、基板ホルダー回転板12の下面及び円盤状部材21の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリング17を介して、円盤状部材21により回転自在に保持されている。基板ホルダー2は、原料ガス導入部7の周囲に設けられており、基板ホルダー回転板12の外周に設けられた歯車部と各基板ホルダー2の外周に設けられた歯車部が噛み合わさることにより各基板ホルダー2に回転駆動力が伝達され、各基板ホルダー2は回転(自転)する。基板ホルダー回転板12は、直径100〜500mm、厚さ3〜20mmの円盤状であることが好ましいが、特に限定されない。基板ホルダー回転駆動軸10は、直径10〜50mmの円柱状であることが好ましいが、特に限定されない。尚、基板ホルダー回転板12の歯車部および基板ホルダー2の歯車部は、平歯車構造を有することが好ましいが、特に限定されることはない。
【0022】
反応炉6の中心部には原料ガス導入部7が設けられ、原料ガスは、原料ガス導入部7から放射状に吹き出し、基板1の成長面に対して水平に供給される。気相成長反応は、反応炉6において、ヒータ5により基板1を加熱しながら、原料ガス導入部7から原料ガスを供給することにより行われ、基板1の成長面には結晶膜が形成される。気相成長反応に用いられた原料ガスは、そのまま反応ガスとして反応ガス排出部8から排出される。気相成長反応中、基板ホルダー2は、サセプタ3の回転により常時公転させることが好ましく、サセプタ3及び基板ホルダー2の回転により常時自転及び公転させることがより好ましい。サセプタ3及び基板ホルダー2の回転方向及び回転速度は、それぞれ、サセプタ回転駆動器13及び基板ホルダー回転駆動器9の回転方向及び回転速度を変化させることにより、任意に設定することができる。各基板間において均一な膜厚及び膜質を得るためには、各基板ホルダー2を反応炉の中心に対して同一円周上に配置して、原料ガス導入部からの距離を等しくすることが好ましいが、特に限定されない。
【0023】
基板ホルダー2、基板ホルダー回転板12、サセプタ回転板15、円盤状部材21、歯車部22、及びリング状部材23は、カーボン系材料またはカーボン系材料をセラミック材料でコーティングしたものが好ましいが、特に限定されない。しかし、歯車部、リング状部材は、サセプタ本体より熱伝導性が低い材質であることが好ましい。このような材料を選択することにより、サセプタ本体から熱が拡散することを防止し、サセプタ本体の温度均一性を向上させ、温度むらを原因とした熱応力によるサセプタの破損を抑制することができる。
【0024】
基板ホルダー回転駆動軸10、ツメ11及びサセプタ回転駆動軸14は、金属、合金、金属酸化物、カーボン系材料、セラミック系材料、カーボン系材料をセラミック材料でコーティングしたもの、またはこれらの組み合わせが好ましいが、特に限定されない。ベアリング17は、セラミック材料であることが好ましいが、特に限定されない。ここで、合金の例には、ステンレスまたはインコネルがあるが、特に限定されない。カーボン系材料の例には、カーボン、パイオロリティックグラファイト(PG)、グラッシカーボン(GC)等があるが、特に限定されない。セラミックス系材料の例には、アルミナ、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)等があるが、特に限定されない。
【0025】
特に、基板ホルダー2、基板ホルダー回転板12、サセプタ回転板15、円盤状部材21、歯車部22及びリング状部材23は、SiCコートカーボン、ベアリング17は、アルミナであることが好ましく、特に、歯車部22及びリング状部材23は、熱伝導性が低い材質、例えばアルミナ、窒化ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)等であることが好ましいが、特に限定されることはない。基板ホルダー回転駆動軸10は、基板ホルダー回転駆動器側部分をインコネル製とし、基板ホルダー回転板側部分をSiCコートカーボン製とし、螺旋等で両者を固定することにより一体化したものが好ましく、ツメ11は、SiCコートカーボン製で、基板ホルダー回転駆動軸の基板ホルダー回転板側部分の端面にあらかじめ一体として形成されていることが好ましい。サセプタ回転駆動軸14は、ステンレス製であることが好ましい。
尚、図1〜6においては、本発明の気相成長装置の一例(フェイスダウン型)を示したが、本発明は、フェイスアップ型の気相成長装置にも適用することができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
(気相成長装置の製作)
【0028】
図1〜図4に示すような気相成長装置を製作した。直径3インチのサファイア基板を1枚保持可能である基板ホルダー2(SiCコートカーボン製)8個と、基板ホルダー回転板12(SiCコートカーボン製、直径200mm、厚さ15mm)を、円盤状部材21(SiCコートカーボン製、直径600mm(突出部を除く)、厚さ20mm、3インチの基板を8枚保持可能)により、ベアリング17を介して保持し、基板ホルダー2と基板ホルダー回転板12の平歯車部を噛み合わせた。円盤状部材の熱伝導率は120Wm−1−1であった。
【0029】
円盤状部材21の外周上部には、任意の場所で均等に半径方向に15mm、厚さ10mmの突出部を設けた。リング状部材23は、Si製(熱伝導率:30Wm−1−1)で、内周円の直径が615mm(突出部を除く)、外周円の直径が635mm(突出部を除く)、厚さが20mmのリング状とした。リング状部材23の内周下部及び外周下部には、それぞれ、任意の場所で均等に半径方向に15mm、厚さ10mmの突出部を設けた。円盤状部材21の外周上部に設けた突出部の下面とリング状部材23の内周下部に設けた突出部の上面を重ねあわせることにより、円盤状部材21をリング状部材23に嵌合してサセプタ本体を形成した。
【0030】
歯車部22は、Si製(熱伝導率:28Wm−1−1)で、内周円の直径が655mm(突出部を除く)、外周円の直径675mm(突出部を除く)、厚さが20mmのリング状とした。歯車部22の内周上部には、任意の場所で均等に半径方向に15mm、厚さ10mmの突出部を設けた。歯車部22を、角度90°の間隔で半径方向に分割形成される4個の円弧状部材24から構成した。歯車部22を形成するときに隣り合う円弧状部材24同士の間に5mmの隙間が生じるように、各分割面を2.5mm切削した。各円弧状部材24に、直径8mmの螺旋穴を角度30°の間隔で3個ずつ設け、直径5mmのカーボン製の雄螺旋をこの螺旋穴に通してから、リング状部材23に設けた雌螺旋に固定することにより、各円弧状部材24をリング状部材23に固定して、歯車部22を形成した。このようにして、リング状部材23の外周下部に設けた突出部の上面と歯車部22の内周上部に設けた突出部の下面を重ね合せることによりサセプタ3を形成した。このとき、リング状部材23と歯車部22の間の任意の場所で均等に、半径方向に5mmの隙間が形成され、隣り合う円弧状部材24同士の間の任意の場所で均等に5mmの隙間が形成された。
【0031】
サセプタ回転駆動軸14は、直径20mm、長さ300mmのステンレス製とし、サセプタ回転板15は、直径100mm、厚さ20mmのSiCコートカーボン製とし、カーボン製の固定螺旋でサセプタ回転駆動軸14のサセプタ側先端に固定した。また、サセプタの対面4、及び基台20はカーボン製とし、反応容器19はステンレス製とした。
【0032】
(温度むら測定実験)
このような気相成長装置を用いて、基板の表面に窒化ガリウム(GaN)の成長を行なうことを想定して、基板の温度を1050℃まで昇温させ、サセプタの温度むらを測定した。まず、基板ホルダーに基板(直径3インチ、サファイア)基板をセットし、基板ホルダー回転駆動器及びサセプタ回転駆動器を稼働させて、基板の自転(10rpm)及び公転(1rpm)を開始した。次に、原料ガス導入部から窒素を流しながら基板の温度を1050℃まで昇温させ、充分な時間が経過した後、サセプタ(円盤状部材)の最高温度と最低温度の差を測定した結果、温度差は4℃であった。
【0033】
[比較例1]
(気相成長装置の製作)
直径が675mmの円盤状で外周に平歯車構造からなる歯車部が設けられたサセプタ(SiCコートカーボン製)を一体として製作して使用したほかは、実施例1と同様の気相成長装置を製作した。このサセプタの熱伝導率は、実施例1の円盤状部材と同様に120Wm−1−1であった。
【0034】
(温度むら測定実験)
このような気相成長装置を用いて、実施例1と同様の温度むら測定実験を行なった。その結果、最高温度と最低温度の差は9℃であった。
以上のように、本発明の気相成長装置は、歯車部等に破損が生じたとしてもサセプタ全体を交換する必要がなく、また歯車部の材質を容易にサセプタ本体より熱伝導性が低い材質とすることができるので、サセプタ本体の温度均一性が向上し、温度むらを原因とした熱応力によるサセプタの破損を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、熱CVD法等のための気相成長装置として好適であり、例えば、青色または紫外の発光ダイオードまたはレーザーダイオード等の製造に用いられるIII族窒化物半導体の気相成長装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の気相成長装置の一例を示す垂直断面構成図
【図2】図1に示した気相成長装置の部分拡大図(A部)
【図3】図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面B−B)
【図4】図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面C−C)
【図5】本発明の気相成長装置において使用されるサセプタの一例を示す水平断面構成図
【図6】リング状部材及び歯車部の一例を示す斜視図
【符号の説明】
【0037】
1 基板
2 基板ホルダー
3 サセプタ
4 サセプタの対面
5 ヒータ
6 反応炉
7 原料ガス導入部
8 反応ガス排出部
9 基板ホルダー回転駆動器
10 基板ホルダー回転駆動軸
11 ツメ
12 基板ホルダー回転板
13 サセプタ回転駆動器
14 サセプタ回転駆動軸
15 サセプタ回転板
16 均熱板
17 ベアリング
18 ベアリング溝
19 反応容器
20 基台
21 円盤状部材
22 歯車部
23 リング状部材
24 円弧状部材
25 差込口
26 螺旋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板ホルダー、及び該基板ホルダーを回転自在に保持し外周に外部からの回転駆動力の伝達を受ける歯車部を有するサセプタが備えられた気相成長装置であって、サセプタの歯車部がサセプタ本体から分離できる構成を備えてなることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
サセプタの構成が、円盤状部材とその外側に設けられたリング状部材からなるサセプタ本体、及び歯車部からなる請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
歯車部が複数の円弧状部材からなる請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項4】
リング状部材と歯車部が、螺旋により結合された請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項5】
円盤状部材とリング状部材が、螺旋により結合された請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項6】
歯車部がサセプタ本体より熱伝導性が低い材質で構成された請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項7】
リング状部材がサセプタ本体より熱伝導性が低い材質で構成された請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項8】
複数の円弧状部材同士の間に、隙間が設けられた請求項3に記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−4730(P2013−4730A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134226(P2011−134226)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000229601)日本パイオニクス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】