説明

水性グラビアインキ用顔料分散体、水性グラビアインキ及びその製造方法

【課題】 各種の希釈用樹脂との相溶性に優れる水性グラビアインキ用顔料分散体及び該分散体を含有する水性グラビアインキを提供する。
【解決手段】 顔料、及び、水溶性樹脂を含有する水性グラビアインキ用顔料分散体であって、該水溶性樹脂が、特定のカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60質量%及び該カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95質量%を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和して得られる酸価60〜200を有する水溶性樹脂を含有することを特徴とする水性グラビアインキ用顔料分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の顔料分散用水溶性樹脂を含有する、希釈用樹脂との相溶性に優れる水性グラビアインキ用顔料分散体、該水性グラビアインキ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性グラビアインキは、主に、色材としての顔料成分、バインダーとしての樹脂成分及び水系の溶剤成分から成っている。インキの生産性、顔料分散性のバランスから、一般に、特定の樹脂を用いて、高顔料濃度の顔料分散体を錬肉によって調製し、その後、紙用、フィルム表刷り用、フィルム裏刷り用等、各種インキに求められる機能に応じて、各種の希釈用樹脂、水系溶剤及び必要に応じ添加剤を添加混合することによりインキを調製している。
【0003】
水性グラビアインキの種類は、前記したような各用途、また同用途であっても、被印刷基材の各種素材、表面処理等をはじめ、多岐にわたるため、顔料分散体用の樹脂が多種類の希釈用樹脂と相溶性を有することが望まれる。顔料分散体用にも用いられ、水性塗料等に用いられる高分子材料として、特定のカルボキシル基含有不飽和化合物を乳化重合させて得られる乳化重合体組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、各種の希釈用樹脂との相溶性が十分でなく、グラビアインキとしての印刷物の光沢、色濃度が満足できるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平6−345825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各種の希釈用樹脂との相溶性に優れる水性グラビアインキ用顔料分散体及び該分散体を含有する水性グラビアインキを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水性グラビアインキ用顔料分散体を調製する際に、特定のカルボキシル基含有不飽和化合物を用いて得られる樹脂の酸価を特定の範囲に調整した水溶性樹脂を使用することで、インキ製造時の希釈用樹脂との相溶性に優れる顔料分散体を得られ、該顔料分散体を用いた水性グラビアインキは従来のインキと同等乃至はより優れる色濃度、光沢の印刷物を得られることが判明し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は第一に、顔料、及び、水溶性樹脂を含有する水性グラビアインキ用顔料分散体であって、該水溶性樹脂が、一般式(1)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60質量%及び該カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95質量%を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和して得られる酸価60〜200を有する水溶性樹脂(A)を含有することを特徴とする水性グラビアインキ用顔料分散体を提供する。
【0008】
【化1】

「但し、式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜18の置換もしくは無置換アルキレン基であり、nは1〜10の整数である。」
【0009】
本発明は第二に、顔料、及び、水溶性樹脂を含有する水性グラビアインキであって、該水溶性樹脂が、一般式(1)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60質量%及び該カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95質量%を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和して得られる酸価60〜200を有する水溶性樹脂(A)を含有することを特徴とする水性グラビアインキを提供する。
【0010】
本発明は第三に、前記した水溶性樹脂(A)、顔料及び水系溶剤を顔料濃度30〜80質量%の条件で混錬して、水性グラビアインキ用顔料分散体を調製する工程、該顔料分散体と希釈用樹脂及び水系溶剤を混合する工程を有することを特徴とする水性グラビアインキの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、インキ製造時に各種の希釈用樹脂との相溶性に優れる顔料分散体が得られる。また、該顔料分散体を用いて製造された各種の水性グラビアインキは従来のインキと同等乃至は優れた色濃度、光沢の印刷物を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の水性グラビアインキ用顔料分散体は、顔料、及び、水溶性樹脂を含有する水性グラビアインキ用顔料分散体であって、該水溶性樹脂が、前記した一般式(1)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60質量%及び該カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95質量%を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和して得られる酸価60〜200を有する水溶性樹脂(A)を含有することを特徴としている。
【0013】
本発明の水性グラビアインキ用顔料分散体に用いる顔料としては、各種の有機顔料、無機顔料を用いることができる。好ましく用いられる有機顔料としては、アゾレーキ系、不溶性アゾ系、フタロシアニン系、ナフトール系等の各種顔料が挙げられる。好ましく用いられる無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、炭酸カリウム、硫酸バリウム等各種顔料が挙げられる。顔料分散体中の顔料の含有割合は、有機顔料の場合、30〜50質量%が好ましく、より好ましくは35〜45質量%程度である。無機顔料の場合、40〜80質量%が好ましく、より好ましくは45〜75質量%程度である。
【0014】
顔料と水溶性樹脂(A)との比率は、無機顔料の場合、顔料100質量部に対して水溶性樹脂(A)5〜30質量部程度が好ましい。有機顔料の場合、顔料100質量部に対して水溶性樹脂(A)10〜50質量部程度が好ましい。
【0015】
本発明の水性グラビアインキ用顔料分散体に特徴的に用いる水溶性樹脂は、前記した一般式(1)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60質量%及び該カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95質量%を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和して得られる酸価60〜200を有する水溶性樹脂(A)である。
【0016】
一般式(1)で表されるカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体は、例えば、(a)ω−ヒドロキシカルボン酸とカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とを反応させる方法、(b)α,ω−ポリエステルジカルボン酸とヒドロキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とを反応させる方法、(c)酸無水物とカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とエポキシ化合物とを反応させる方法および(d)特公平3−21536号公報に示されているようなカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とラクトンとを酸性触媒の存在下で反応させる方法等の、当業者に周知の方法で製造されるものである。しかしながら、前記(a)〜(c)の方法では、ラジカル重合性官能基が全くないもの、あるいは2個入ったものなどが副生成物として多量に生じることから、ラジカル重合性官能基を必ず1個含むカプロラクトンポリエステル不飽和単量体が得られる(d)の方法で長鎖カルボキシル基含有単量体を製造することが好ましい。
【0017】
特に(d)の方法では、1分子中のε−カプロラクトン単位数が1〜5なる長鎖カルボキシル基含有単量体であるα−ハイドロ−ω−((1−オキソ−2−プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル))が主に得られる。1分子中のε−カプロラクトン単位数については、塗料の塗膜の外観を考慮すれば、1〜10の範囲内が好ましく、更には1以上5以下がより好ましい。具体的には、1分子中のε−カプロラクトン単位の平均数が2なる商品名アロニクスM−5300(東亜合成化学工業(株))を好適に用いることができる。
【0018】
前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸エステル類;
【0019】
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;
【0020】
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;
【0021】
メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有単量体;
【0022】
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノn−ブチル、イタコン酸モノn−ブチル、クロトン酸等の、一般式(1)に表されるカルボキシル基含有単量体以外のカルボキシル基含有単量体;
【0023】
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸(2−ヒドロキシメチル)エチル、アクリル酸(2−ヒドロキシメチル)ブチル、(メタ)アクリル酸(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類;アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き水酸基を含有するアリル化合物;
【0024】
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基を含有するビニルエーテル化合物;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールクロトン酸アミドの如き水酸基を有する不飽和カルボン酸アミド化合物;
【0025】
リシノール酸等の水酸基含有不飽和脂肪酸類;リシノール酸アルキル等の水酸基含有不飽和脂肪酸エステル類;
【0026】
水酸基含有モノマーをエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの如きアルキレンオキサイドと付加反応せしめて得られる単量体等;
【0027】
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等の3級アミノ基含有単量体;
【0028】
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体類;
【0029】
フタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、アクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の1分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体類などが挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と、これと共重合可能なラジカル重合性単量体との共重合比率は、5/95〜60/40(質量比)となるような範囲が好ましく、10/90〜50/50の範囲がより好ましい。この範囲であれば、水溶性樹脂を水に容易に溶解させることができ、且つ水溶性樹脂の水溶液の粘度を低くより保つことができる。
【0031】
また、水溶性樹脂組成物中の水溶性樹脂の酸価は、60〜200の範囲が好ましく、80〜150の範囲がより好ましい。この範囲であれば、水溶性樹脂を水に容易に溶解させることができ、且つ水溶性樹脂の水溶液の粘度を低く維持することができる。
【0032】
水溶性樹脂に使用することのできる、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体、及び前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体を用いて得られる共重合体の重合方法は、得られる共重合体の重合反応操作及び分子量調節が容易であることから、例えば、乳化重合法、有機溶剤を用いた溶剤重合法及び塊状重合法等のラジカル重合開始剤を用いた方法が挙げられる。特に、有機溶剤量を削減できる観点、操作性の観点から、乳化重合法が好ましい。
【0033】
共重合体の製造方法である乳化重合法は、乳化剤を添加した水中でモノマーを添加、撹拌しながら乳化分散させ、重合反応させる方法である。例えば、水又は必要に応じてアルコールなどのような有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を添加し、加熱撹拌の下、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体、前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体及びラジカル重合開始剤等を一括仕込み、連続滴下又は分割添加し、重合反応させる方法である。このとき、乳化剤と水とを用いて予め乳化させた各種ラジカル重合性単量体を同様に滴下してもよい。
【0034】
乳化重合法で使用することのできる乳化剤としては、一般的な乳化重合に用いられているものであれば、アニオン性、カチオン性及びノニオン性のいずれの乳化剤でも特に制限なく使用することができる。
【0035】
特に、アニオン性乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、ジアルキルサクシネートスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0036】
また、カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0037】
またノニオン性乳化剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
また、一般的に、反応性乳化剤と称されるラジカル重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤も使用することができる。それらのうち特に代表的なものとしては、例えばスルホン酸基またはその塩を有する「ラテムルS−180A」[花王(株)製]または「エレミノールJS−2」[三洋化成(株)製]、硫酸基またはその塩を有する「アクアロンKH−1025」[第一工業製薬(株)製]または「アデカリアソープSR−10」[旭電化工業(株)製]、リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」[第一工業製薬(株)製]等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。しかし、一般式(1)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体のカルボキシル基を中和させたものを、反応性乳化剤として使用する方が、乳化剤の使用量を減らすことができるためより好ましい。
【0039】
乳化剤の使用量は、一般的に乳化重合法において使用されているような量、すなわち、水溶性樹脂に使用するカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体及び前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体の合計100質量部に対し、0.1〜10質量部なる範囲内が好ましく、0.2〜5質量部なる範囲内がより好ましい。
【0040】
共重合体の製造方法である乳化重合法の重合条件のうち、反応温度は、使用するラジカル重合開始剤のラジカル発生方法によって決定されるものであり、例えば熱分解反応でラジカルを発生させる場合は60〜90℃であり、過硫酸系・過酸化物系開始剤と還元剤との組み合わせたレドックス反応の場合では30〜70℃であること好ましい。また、反応時間は、1〜10時間であることが好ましい。
【0041】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリルまたはその塩酸塩、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドあるいは過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。また、これらのラジカル重合開始剤と共に、還元剤を併用することも可能であり、例えば、ナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸等を使用することができる。
【0042】
ラジカル重合開始剤の使用量は、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体及び前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して、0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜2質量%がより好ましい。
【0043】
ラジカル重合開始剤と併用可能な還元剤としては、例えば、ナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸などが挙げられる。
【0044】
水溶性樹脂に使用する共重合体の分子量を調整するために、連鎖移動剤を使用することができる。それらのうち代表的なものとしては、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ヘキサデシルメルカプタンなどのような各種のアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンなどのような各種のアルキルベンジルメルカプタン類;チオグリコール酸、チオリンゴ酸などのような各種のチオカルボン酸類あるいはその塩類;n−ブチルチオグリコネート、ドデシル−3−メルカプトプロピオネートなどのような各種のチオカルボン酸アルキルエステル類;モノエタノールアミンチオグリコレートのような、各種の含窒素チオール類;トリメトキシシリルプロピルメルカプタンなどに代表されるような各種の反応性官能基含有メルカプタン類;α−メチルスチレンダイマーなどのような各種のダイマー型連鎖移動剤などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用することができる。
【0045】
また、共重合体の製造方法である乳化重合法としては、前記した乳化重合法に加えて、例えば無乳化剤乳化重合法、シード乳化重合法、マイクロエマルション重合法、パワーフィード法、ショットグロース法などのような種々の方法を適用することも可能である。
【0046】
次に、得られた共重合体の酸基の一部又は全部を中和させるのに使用する塩基性化合物について説明する。
【0047】
本発明に使用することのできる塩基化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのような各種の無機塩基;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、イソブチルアミン、またはジプロピルアミンのような各種のアルキルアミンなどをはじめ、さらには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような各種のアミノアルコール類、またはモルホリンなどのような各種の有機アミン類;あるいはアンモニアなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物で使用することができる。
【0048】
特に、塩基性化合物としてアンモニアを使用すると、本発明の水溶性樹脂組成物中に有機溶剤を全く含まないものとすることができることから好ましい。
【0049】
塩基性化合物の添加量は、水溶性樹脂の酸価に対して0.5〜1.5当量となる範囲内で用いることが好ましく、0.8〜1.2当量の範囲で用いることがより好ましい。
【0050】
かくして得られる水溶性樹脂の重量平均分子量は、5,000〜50,000となるような範囲が好ましく、5,000〜30,000となる範囲がより好ましい。この範囲であれば、水溶性樹脂を水に容易に溶解させることができ、且つ水溶性樹脂の水溶液の粘度を低く維持することができる。
【0051】
水溶性樹脂の濃度が25〜50質量%である水溶性樹脂組成物のJIS K7105に基づいて測定した光線透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。かかる範囲の光線透過率を有する水溶性樹脂組成物を用いることで、光沢及び外観の優れた塗膜を得ることができる。
【0052】
ここで光線透過率とは、水溶性樹脂の濃度が25〜50質量%であるとき、村上色彩技術研究所製の変角全光線透過率計「HG−200」で、JIS K7105に関する液状サンプルの測定方法に基づき、全光線透過率および拡散透過率を算出し、その全光線透過率と拡散透過率の差である平行光線透過率のことである。
【0053】
水溶性樹脂の濃度が25〜50質量%であるときの水溶性樹脂組成物の粘度は、10〜2,000mPa・sの範囲が好ましく、10〜1,000の範囲がより好ましい。前記した水溶性樹脂は、水に溶解しているものの、その水溶液の粘度は、著しく増粘せず、作業性に優れた水溶性樹脂組成物を得ることができる。
【0054】
本発明の水溶性樹脂組成物には、その用途に応じて顔料、造膜助剤、分散剤、潤滑剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、増粘剤などの添加剤を添加することができる。
【0055】
本発明の水性グラビアインキ用顔料分散体は、以下の方法で製造することができる。フタロシアニンブルーに代表される有機顔料については、配合比率は、例えば、水溶性樹脂(A)15〜50部と水35〜50部、有機顔料30〜50部程度を配合することができる。好ましくは、水溶性樹脂(A)18〜30部、水38〜45部、顔料35〜45部を配合した後各種の撹拌機を用いて混合する。続いて通常、グラビア、フレキソ用印刷インキの製造時に使用されるアトライター、サンドミル、ビーズミル、ボールミル、高速攪拌機等で練肉することによって調製できる。
【0056】
酸化チタンや炭酸カルシウムに代表される無機顔料については、配合比率は、例えば、水溶性樹脂(A)15〜50部と水35〜50部、有機顔料30〜50部程度を配合することができる。好ましくは水溶性樹脂(A)10〜20部、水10〜35部、顔料50〜80部配合した後各種の撹拌機を用いて混合する。
【0057】
本発明の水性グラビアインキは、顔料、及び、前記した水溶性樹脂(A)を含有することを特徴とするが、紙印刷用途、フィルム印刷用途等の各種用途、また各種素材に応じて、それぞれ好ましい希釈用樹脂としての水溶性樹脂を含有することができる。
【0058】
希釈用樹脂としては、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂等の水溶性樹脂が挙げられ、顔料100質量部に対して、50〜500質量部を配合することが好ましい。より好ましくは、100〜250質量部である。
【0059】
顔料としては、前述の水性グラビアインキ用顔料分散体に用いる顔料を用いることができる。
【0060】
本発明の水性グラビアインキに用いる水系溶剤は、水を基本として、他に水系の溶剤として、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールを併用しても良い。
【0061】
本発明の水性グラビアインキには、他に、分散剤、消泡剤、レベリング剤、潤滑剤、抗菌剤、防黴剤、防腐剤、ワックス類等の添加剤を用いることができる。
【0062】
本発明の水性グラビアインキは、上記の、顔料、水溶性樹脂(A)、水性溶剤及び必要に応じて希釈用水溶性樹脂、前記添加剤を最終インキ組成として配合し、各種の撹拌機を用いて混錬することによって調製できる。しかしながら、顔料分散体の汎用性の観点から、前記した水溶性樹脂(A)、顔料及び水系溶剤を顔料濃度30〜80質量%の条件で混錬して、水性グラビアインキ用顔料分散体を調製する工程、該顔料分散体と希釈用樹脂及び水系溶剤を混合する工程を経て製造することが好ましい。
【0063】
顔料分散体と希釈用樹脂及び水系溶剤を混合する工程は、例えば、通常、グラビア、フレキソ用印刷インキの製造時に使用されるアトライター、サンドミル、ビーズミル、ボールミル、高速攪拌機等で練肉し、所定の粘度になるように調整することによりなされる。得られた水性グラビアインキは印刷時に適正粘度になるよう更に希釈して、プラスチックフィルム、紙等に印刷される。希釈液は水とメタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールを任意に配合したもの、又は1種類を用いることができる。
【0064】
本発明の水性グラビアインキ用顔料分散体を用いて、紙用途、フィルム裏刷り用途、段ボール用途等、各種用途向けに応じて、相応しい希釈用樹脂、水系溶剤、添加剤とを混合して、各種水性グラビアインキを調製することができ、生産性の向上を図ることができる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定するものではない。部及び%は特に断らない限り質量部、質量%を表すものとする。
【0066】
(水溶性樹脂(A)の調製)
アロニクスM5300(東亞合成化学製、以下M5300と略記)75部、メタクリル酸(以下MAAと略記)24部、スチレン(以下STと略記)60部、メタクリル酸メチル(以下MMAと略記)105部、アクリル酸ブチル(以下BAと略記)36部、n−ラウリルメルカプタン(以下LSHと略記)9部を混合しラジカル重合性単量体混合液(a1)とした。
【0067】
しかるのち、攪拌機、温度計、冷却器および滴下漏斗を取り付けた2リットル反応容器にイオン交換水620部と、ニューコール707SF(日本乳化剤(株)製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム、有効成分=約30%)9部を仕込み、窒素ガスを送り込みつつ攪拌しながら釜内温度を80℃に昇温した。昇温後、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム1.5部を添加し、次いで前記したラジカル重合性単量体混合液(a1)の滴下を開始した。2時間で滴下し、滴下終了後80℃で1時間攪拌した。その後、25℃まで冷却し、アンモニア水によって中和することにより、水溶性樹脂組成物を得た。上記の水溶性樹脂組成物は、下記の性状を示した。固形分、30.2%、粘度、112mPa・s、pH、8.0であった。前記水溶性樹脂組成物中の水溶性樹脂(A−1)の酸価は105.0、重量平均分子量は11,300であった。固形分を25%に調整した場合の光線透過率は90%であった。
【0068】
(比較用水溶性樹脂の調製)
アロニクスM5300(東亞合成化学製、以下M5300と略記)9部、メタクリル酸(以下MAAと略記)27部、スチレン(以下STと略記)60部、メタクリル酸メチル(以下MMAと略記)150部、アクリル酸ブチル(以下BAと略記)54部、n−ラウリルメルカプタン(以下LSHと略記)9部を混合しラジカル重合性単量体混合液(a2)とした。
【0069】
しかるのち、攪拌機、温度計、冷却器および滴下漏斗を取り付けた2リットル反応容器にイオン交換水620部と、ニューコール707SF(日本乳化剤(株)製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム、有効成分=約30%)9部を仕込み、窒素ガスを送り込みつつ攪拌しながら釜内温度を80℃に昇温した。昇温後、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム1.5部を添加し、次いで前記したラジカル重合性単量体混合液(a2)の滴下を開始した。2時間で滴下し、滴下終了後80℃で1時間攪拌した。その後、25℃まで冷却し、アンモニア水によって中和することにより、水溶性樹脂組成物を得た。上記の水溶性樹脂組成物は、下記の性状を示した。固形分、30.2%、粘度、45mPa・s、pH、8.7であった。前記水溶性樹脂組成物中の水溶性樹脂(A−2)の酸価は71.9、重量平均分子量は11,000であった。固形分を25%に調整した場合の光線透過率は31%であった。
【0070】
(水性グラビアインキ用顔料分散体の製造)
前記で調製した水溶性樹脂(A−1)28.5部、水49.0部、イソプロピルアルコール2.5部、フタロシアニンブルー40部を分散攪拌機で1000rpm1時間プレミキシングした後、ビーズミルで6時間練肉し、水性グラビアインキ用顔料分散体(B−1)を製造した。
【0071】
(比較用水性グラビアインキ用顔料分散体の製造)
前記で調製した水溶性樹脂(A−2)28.5部、水49.0部、イソプロピルアルコール2.5部、フタロシアニンブルー40部を分散攪拌機で1000rpm1時間プレミキシングした後、ビーズミルで6時間練肉し、比較用の水性グラビアインキ用顔料分散体(B−2)を製造した。
【0072】
以下に、紙用、フィルム裏刷り用、段ボール用等の希釈用樹脂の調製例を示す。
【0073】
(紙用途向け、希釈用水性アクリル樹脂の調製)
攪拌機、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、イソプロピルアルコール600部を仕込んで、攪拌を開始し、窒素気流中で80℃まで昇温した。
【0074】
次いで、ここへ予め調製した、アクリル酸48部、メタクリル酸メチル420部、アクリル酸n−ブチル132部、および、アゾビスブチロ二トリル12部の混合乳化液を3時間に亘って滴下した。
【0075】
この際反応温度は常時80℃±3℃に保持した。滴下終了後も、同温度の範囲内に2時間保持した後、アゾビスブチロ二トリルを12部加え、さらに、2時間保持して、攪拌下に反応を継続させた。
【0076】
反応終了後は、40℃にまで冷却してから、ジメチルエタノールアミン46部加えることによって水溶化せしめた。
【0077】
次いで、得られた透明なる反応生成物より、減圧下において、60℃でイソプロピルアルコールを除去してから、イオン交換水を加えて、濃度を調整し、水溶性のアクリル樹脂(L−1)を得た。
【0078】
(フィルム裏刷り用途向け、希釈用水溶性ポリウレタン樹脂の調製)
攪拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、1リットルの四ツ口フラスコに、分子量2,000のネオペンチルグリコールとアジピン酸との縮合物171部と、分子量2,000のネオペンチルグリコールとポリプロピレングリコールの混合物を151部、ジメチロールプロピオン酸20部仕込み、窒素ガスを流し、撹拌しながら70℃に昇温した。
【0079】
続いてイソホロンジイソシアネート77部を加え、イソシアネート基の残存率であるNCO%が3.4に達するまで90℃で反応し、両末端にイソシアネート基を有する線状ウレタンプレポリマーを得た。
【0080】
続いて攪拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、4リットルの四ッ口フラスコに酢酸エチル157部、イソプロピルアルコール400部、アセトン496部、次にイソホロンジアミン30部、ジノルマルブチルアミン1.6部を加え、40℃迄昇温した。
【0081】
次に、線状ウレタンプレポリマー419部を加え、40℃で4時間反応してポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。次に28%アンモニア水10部を含む脱イオン水900部を加え、中和することにより水性化し、脱溶剤を行い固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂(L−2)を得た。上記の水溶性ポリウレタン樹脂は、下記の性状を示した。固形分、35.0%、粘度、120mPa・s、pH、7.9、酸価は15.0、重量平均分子量は100,000であった。
【0082】
(段ボール用途向け、希釈用水溶性スチレンマレイン酸樹脂の調製)
攪拌機、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、イソプロピルアルコール600部を仕込んで、攪拌を開始し、窒素気流中で80℃まで昇温した。
【0083】
次いで、ここへ予め調製した、スチレン30部、メタクリル酸メチル10部、マレイン酸イソブチル62部の混合乳化液を3時間に亘って滴下した。
【0084】
この際反応温度は常時80℃±3℃に保持した。滴下終了後も、同温度の範囲内に2時間保持した後、アゾビスブチロ二トリルを12部加え、さらに、2時間保持して、攪拌下に反応を継続させた。反応終了後は、40℃にまで冷却してから、28%アンモニア水を加えた。
【0085】
次いで、得られた透明なる反応生成物より、減圧下において、60℃でイソプロピルアルコールを除去してから、イオン交換水を加えて、濃度を調整し、水溶性のスチレンマレイン酸樹脂(L−3)を得た。上記の水溶性スチレンマレイン酸樹脂は、下記の性状を示した。固形分、28.0%、粘度、1600mPa・s、pH、7.9、酸価は200.0、重量平均分子量は15,000であった。
【0086】
実施例1(紙用途)
前記した水性グラビアインキ用顔料分散体(B−1)30部と、前記した水溶性アクリル樹脂(L−1)40部、エタノール20部、水5部を混合し、高速攪拌機で30分攪拌して、紙用水性グラビアインキを得た。得られた水性グラビアインキ100部に対し、水/IPA=50/50の希釈溶剤を40部配合し攪拌し適正粘度に調整した。
【0087】
実施例2(裏刷り用途)
前記した水性グラビアインキ用顔料分散体(B−1)28部と、前記した水溶性ポリウレタン樹脂(L−2)50部、エタノール17部、水5部を混合し、高速攪拌機で30分攪拌して、裏刷り用水性グラビアインキを得た。得られた水性グラビアインキ100部に対し、水/IPA=50/50の希釈溶剤を40部配合し攪拌し適正粘度に調整した。
【0088】
実施例3(段ボール用途)
前記した水性グラビアインキ用顔料分散体(B−1)17.3部と、前記した水溶性スチレンマレイン酸樹脂(L−3)28.0部、水4.7部を混合し、高速攪拌機で30分攪拌して、段ボール用水性グラビアインキを得た。得られた水性グラビアインキ100部に対し、水を10部配合し攪拌し適正粘度に調整した。
【0089】
比較例1(紙用途)
前記した水性グラビアインキ用顔料分散体(B−2)30部と、前記した水性アクリル樹脂(L−1)40部、エタノール20部、水5部を混合し、高速攪拌機で30分攪拌して、紙用水性グラビアインキを得た。得られた水性グラビアインキ100部に対し、水/IPA=50/50の希釈溶剤を40部配合し攪拌し適正粘度に調整した。
【0090】
比較例2(裏刷り用途)
前記した水性グラビアインキ用顔料分散体(B−2)28部と、前記した水溶性ポリウレタン樹脂(L−2)50部、エタノール17部、水5部を混合し、高速攪拌機で30分攪拌して、裏刷り用水性グラビアインキを得た。得られた水性グラビアインキ100部に対し、水/IPA=50/50の希釈溶剤を40部配合し攪拌し適正粘度に調整した。
【0091】
比較例3(段ボール用途)
前記した水性グラビアインキ用顔料分散体(B−2)17.3部と、前記した水溶性スチレンマレイン酸樹脂(L−3)28.0部、水4.7部を混合し、高速攪拌機で30分攪拌して、段ボール用水性グラビアインキを得た。得られた水性グラビアインキ100部に対し、水10部配合し攪拌し適正粘度に調整した。
【0092】
以下に、水性グラビアインキの評価方法を説明する。
【0093】
(展色方法)
(1)紙用途
実施例インキと比較例インキをバーコーター7番で白色ボール紙に2本引きし乾燥させる。
(2)フィルム裏刷り用途
実施例インキと比較例インキをバーコーター7番で、20μm厚のOPPフィルム(サントックス株式会社製OPPフィルム:商品名PA20)に2本引きし乾燥させる。
(3)段ボール用途
実施例インキと比較例インキをハンドプルーファーで2本引きし乾燥させる。
【0094】
(色濃度評価方法)
上記で得られた展色物をX-Rite530,Status T(X-Rite社製分光濃度測定機)で測定し、藍濃度を評価した。
【0095】
(光沢評価方法)
上記で得られた紙および段ボールの展色物をmicro-TRI-gloss(BYK Gardner社製光沢測定機)にて60度反射光沢を測定した。尚、裏刷り用途では、インキを直接評価することが無く、フィルム側から曇度を測定する。
【0096】
(曇度測定)
上記で得られたフィルム裏刷り展色物をヘイズメーター(東京電色社製TC−H3CP)で測定した。
【0097】
評価結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
本発明により、同一の顔料分散体から希釈用樹脂を変えるだけで各用途において、必要な色濃度、光沢、透明性をバランス良く有する水性グラビアインキを提供することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、汎用性を向上させた顔料分散体に関するものであり、各種水性グラビアインキの製造に展開が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、及び、水溶性樹脂を含有する水性グラビアインキ用顔料分散体であって、該水溶性樹脂が、一般式(1)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60質量%及び該カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95質量%を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和して得られる酸価60〜200を有する水溶性樹脂(A)を含有することを特徴とする水性グラビアインキ用顔料分散体。
【化1】

「但し、式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜18の置換もしくは無置換アルキレン基であり、nは1〜10の整数である。」
【請求項2】
顔料と前記した水溶性樹脂(A)の比率が100:5〜50の範囲である請求項1に記載の水性グラビアインキ用顔料分散体。
【請求項3】
顔料、及び、水溶性樹脂を含有する水性グラビアインキであって、該水溶性樹脂が、一般式(1)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60質量%及び該カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95質量%を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和して得られる酸価60〜200を有する水溶性樹脂(A)を含有することを特徴とする水性グラビアインキ。
【化2】

「但し、式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜18の置換もしくは無置換アルキレン基であり、nは1〜10の整数である。」
【請求項4】
前記した水溶性樹脂が、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂なる群から選ばれる1種以上の水溶性樹脂を含有する請求項3に記載の水性グラビアインキ。
【請求項5】
一般式(1)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60質量%及び該カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95質量%を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和して得られる酸価60〜200を有する水溶性樹脂(A)、顔料及び水系溶剤を顔料濃度30〜80質量%の条件で混錬して、水性グラビアインキ用顔料分散体を調製する工程、および、該顔料分散体と希釈用樹脂及び水系溶剤を混合する工程を有することを特徴とする水性グラビアインキの製造方法。
【化3】

「但し、式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜18の置換もしくは無置換アルキレン基であり、nは1〜10の整数である。」

【公開番号】特開2006−131791(P2006−131791A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323505(P2004−323505)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】