説明

水晶振動子の恒温構造及びこれを用いた恒温型の水晶発振器

【課題】温度制御を容易にし、EMI対策を充分にした水晶振動子の恒温構造及び恒温型発振器を提供する。
【解決手段】金属ベースの外底面からリード線が導出して前記リード線と電気的に接続した水晶片を金属カバーによって密閉封入してなる水晶振動子1とともに、発熱用のチップ抵抗3aと温度感応素子3bとパワートランジスタとを熱遮断用の切り込み領域15が設けられた回路基板4に搭載し、前記水晶振動子1の動作温度を一定にする水晶振動子1の恒温構造において、前記チップ抵抗3aと温度感応素子3bとは前記切り込み領域15内として前記パワートランジスタは前記切り込み領域15外とし、前記チップ抵抗3aは前記切り込み領域15内に配置された前記リード線を取り囲んで複数個が幅方向に並べられて環状に配置され、前記チップ抵抗3aのうちの隣接するチップ抵抗3aは長辺方向の両端側の電極同士が接続して直列接続した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水晶振動子の恒温構造及びこれを用いた恒温型の水晶発振器(以下、恒温型発振器とする)を技術分野とし、特に、水晶振動子の動作温度を一定にする恒温構造に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
恒温型発振器は、水晶振動子の動作温度を一定に維持することから周波数安定度が高く(周波数偏差が概ね0.05ppm以下)、例えば光通信用とした基地局等の通信設備に使用される。このようなものの一つに、発熱用のチップ抵抗を用いて、例えばヒータ線を券回した恒温槽を用いたものに比較して簡素化した本出願人によるものがある(特許文献1及び2)。
【0003】
(従来技術の一例、特許文献1、2)
第7図乃至第9図は一従来例を説明する図で、第7図(a)は恒温型発振器の断面図、同図(b)は回路基板の平面図、第8図(a)は水晶振動子の断面図、同図(b)は水晶片の平面図、第9図は温度制御回路図である。
【0004】
恒温型発振器は水晶振動子1とともに発振回路を形成する発振用素子2と、水晶振動子1の動作温度を一定にする温度制御素子3とを回路基板4に配設する。回路基板4は金属ベース5のガラス6によって気密化されたリード線(気密端子)7に保持され、例えば抵抗溶接によって金属カバー8が接合される。リード線7は外底面から導出して電源、出力及びアース端子等とする。
【0005】
水晶振動子1は、金属ベース9に対して水晶片10を水平方向に保持し、前述同様に抵抗溶接によって金属カバー11を被せて密閉封入される。金属ベース9は、例えば互いに直交する方向の一組及び他組の両端部に4本のリード線(気密端子)12を有し、外底面から導出する。そして、外底面から導出した4本のリード線12が回路基板4に挿通して図示しない半田によって接続する。
【0006】
水晶片10は両主面に励振電極13aを有して一組の両端部に引出電極13bを延出し、これに対応した一組のリード線12(ab)に接続したサポータ14に電気的に接続して保持される。また、水晶片10の他組の両端部はこれに対応した他組のリード線12(cd)に接続したサポータ14に機械的にのみ接続する。これらの4点保持によって耐衝撃性を良好にする。
【0007】
温度制御素子3は少なくとも発熱用のチップ抵抗3a、水晶振動子1の動作温度を検出する温度感応素子3b、及びパワートランジスタ3cとを有し、温度変化に対する水晶振動子1の動作温度を一定にする。チップ抵抗3aは水晶振動子1の下面側としてリード線12を取り囲んで正方形の環状として、切り込み15aによる回路基板4の切り込み領域15内に配置される。
【0008】
この例では、チップ抵抗3aと水晶振動子1の底面との間には伝熱板16が設けられる。伝熱板16は中央領域に貫通孔を有し、外周にはチップ抵抗3aを収容する窪みを有する。温度感応素子3aは例えば2個のサーミスタからなり、伝熱板16の貫通孔内となる回路基板4上に配置される。パワートランジスタ3cは基本的に切り込み領域15内とし、水晶振動子1に接近して形成される。なお、符号17は熱伝導性の樹脂シート(伝熱シート)、同18はリード線7の挿通孔である。
【0009】
具体的には、オペアンプOPの一方の入力端には温度感応素子3bと抵抗Raによる温度感応電圧を、他方の入力端には抵抗Rb、Rcによる基準電圧を印加する。そして、基準電圧との差電圧をパワートランジスタ3cのベースに印加し、発熱用のチップ抵抗3aへ電源(直流電圧)DCから電力を供給する(第9図)。これにより、温度感応素子3bの温度に依存した抵抗値によってチップ抵抗3aへの電力を制御し、水晶振動子1の動作温度を一定にする。
【0010】
通常では、金属ベース5に金属カバー8を接合する前に、水晶振動子1の3次曲線となる周波数温度特性を個々に測定する。そして、水晶振動子1の動作温度とする高温側の極小値の温度が80℃の場合には、例えば温度制御回路の抵抗Raを調整して水晶振動子1の動作温度を80℃に設定する。さらに、発振回路の図示しない調整コンデンサによって発振周波数fを公称周波数に一致させる。このことから、抵抗Ra及び調整コンデンサ等の交換を要する調整素子2Aは、例えば回路基板4の上面外周上に配設される。
【特許文献1】特開2005−341191号公報
【特許文献2】2007−110698号公報
【特許文献3】2006−311496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の恒温型発振器では、パワートランジスタ3cを水晶振動子1に接近して配置して、パワートランジスタ3cを熱源として利用する。この場合、パワートランジスタ3cは温度感応素子3bの周囲温度に応答した抵抗値に基づいて出力が制御される。したがって、パワートランジスタ3cの発熱量が周囲温度に応じて変化するので、水晶振動子1に供給される熱量の制御が困難になる。
【0012】
また、発熱用のチップ抵抗3aは長辺方向が水晶振動子1のリード線12を取り囲んで正方形を周回する方向に沿って配置され、伝熱板16及び伝熱シート17を経て水晶振動子1の金属ベース9に伝熱される。したがって、水晶振動子1の金属ベース9(円形)と各チップ抵抗3aの例えば角部と中央部の対向面積は異なるものの、伝熱板16によって金属ベース9の外周に対する熱分布は均一化される。
【0013】
しかし、水晶片10の励振電極13aと電気的に接続したリード線12(ab)に対しては、チップ抵抗3aから伝熱板16を経て放熱される。したがって、水晶振動子1の動作温度となる励振電極13aに対する伝熱効果は低下する。また、チップ抵抗3aの配置される個数は長辺の長さに依存し、例えば短辺方向に並べた場合に比較して個数が少なくなる。これにより、チップ抵抗3aとした熱源の発熱量が充分に確保できなくなる。
【0014】
さらに、チップ抵抗3aは長辺方向に並べられて周回するので、これらを周回する電流から発生する磁界は回路基板4の表面から裏面(又は裏面から表面)への同一方向となる。したがって、例えば温度変化時には電流値も変化するので、電磁波の発生源となって所謂EMI(電磁波障害)を引き起こす問題があった。この場合、例えば恒温型発振器の発振周波数に対して低周波雑音となり、位相雑音特性を悪化させる。
【0015】
(発明の目的)
本発明は熱分布を均一にするとともにリード線に対する伝熱効果を高めて温度制御を容易にし、EMI対策を充分にして位相雑音特性を良好にする水晶振動子の恒温構造及びこれを用いた恒温型発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(水晶振動子の恒温構造)
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、金属ベースの外底面からリード線が導出して前記リード線と電気的に接続した水晶片を金属カバーによって密閉封入してなる水晶振動子とともに、発熱用のチップ抵抗と温度感応素子とパワートランジスタとを熱遮断用の切り込み領域が設けられた回路基板に搭載し、前記水晶振動子の動作温度を一定にする水晶振動子の恒温構造において、前記チップ抵抗と温度感応素子とは前記切り込み領域内として前記パワートランジスタは前記切り込み領域外とし、前記チップ抵抗は前記切り込み領域内に配置された前記リード線を取り囲んで複数個が幅方向に並べられて環状に配置され、前記チップ抵抗のうちの隣接するチップ抵抗は長辺方向の両端側の電極同士が接続して直列接続した構成とする。
【0017】
(恒温型発振器)
本発明の同請求項5では、請求項1の前記水晶振動子は発振回路及び温度制御回路とともに実装端子を有する容器内に収容されて恒温型の水晶発振器を構成する。
【発明の効果】
【0018】
(水晶振動子の恒温構造)
このような請求項1の構成であれば、発熱用のチップ抵抗と温度感応素子とは切り込み領域内としてパワートランジスタは切り込み領域外とする。したがって、パワートランジスタは熱源として利用せず、熱源はチップ抵抗のみとなる。これにより、温度変化時におけるパワートランジスタの発熱量の変動分を考慮せず、温度変化には依存しない発熱用のチップ抵抗の発熱量を制御すればよいので、水晶振動子の動作温度に対する温度制御を容易にする。
【0019】
また、発熱用のチップ抵抗は金属ベースのリード線を取り囲んで環状に配置される。したがって、チップ抵抗からの熱がリード線に対して直接的に放射されるので、従来例のように伝熱板を用いた場合よりも伝熱効果が高まる。この場合、リード線は水晶片の励振電極に電気的(熱的)に接続するので影響は大きい。
【0020】
そして、リード線を取り囲んで配置されるチップ抵抗は幅方向に並べられて環状に配置される。したがって、リード線を取り囲む領域(包囲領域)の形状に沿ってチップ抵抗を配置できる。この場合、チップ抵抗の幅が小さいほど、包囲領域の形状に沿って配置できる。そして、チップ抵抗の個数を多くして、熱源の発熱量を高められる。
【0021】
さらに、チップ抵抗は幅方向に並べられて隣接するチップ抵抗は両端側の電極同士が接続した直列接続とする。したがって、隣接するチップ抵抗に流れる電流は逆向きとなるので、これによって発生する磁界も逆向きとなって相殺される。したがって、温度変化によって制御電流が変化しても電磁波の発生を抑制するので、EMI対策を充分にする。そして、発振周波数の位相雑音特性を良好にする。
【0022】
(恒温型発振器)
また、請求項5の構成であれば、水晶振動子の恒温構造によって温度制御を容易にしてEMI対策を充分として位相雑音特性を良好とした恒温型発振器を得られる。
【0023】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、請求項1において、前記金属ベースは前記回路基板に対面して配置され、前記チップ抵抗と前記温度感応素子とは前記金属ベースの外周下面内に配置される。これにより、温度感応素子の主面全面が金属ベースに対面するので、伝熱効果を高められる。
【0024】
同請求項3では、請求項2において、前記金属ベースは円形状として、前記チップ抵抗は放射状に配置される。これにより、チップ抵抗は金属ベースの形状に倣って円形状に配置されるので、熱分布を均一にする。
【0025】
同請求項4では、請求項1において、前記金属ベースはフランジを有する矩形状として前記リード線は前記金属カバーの主面に対して直交方向に折曲した先端部を有し、前記金属カバーの主面を前記回路基板に対面し、前記チップ抵抗は前記金属ベースのフランジ及び前記リード線の先端部を取り囲んで配置される。この場合においても、金属ベースのフランジ及びリード線に効率よく伝熱される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1実施形態)
第1図は本発明の第1実施形態を説明する図で、同図(a)は水晶振動子の恒温構造示す断面図、同図(b)は回路基板の平面図、同図(c)は作用を説明する便宜的なチップ抵抗の一部拡大平面図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0027】
本実施形態における水晶振動子1の恒温構造は、水晶振動子1と温度制御素子3とを回路基板4に配置してなる。水晶振動子1は前述したように外底面からリード線12の導出した金属ベース9上に水晶片10を水平方向に保持してなる。リード線12は気密端子として互いに直交する一組及び他組の両端部に計4本が設けられる(前第8図参照)。
【0028】
そして、水晶片10の引出電極13bの延出した一組の両端部がこれに対応した一組のリード線12(ab)に設けたサポータ14に電気的に接続して固着される。また、水晶片10の他組の両端部はこれに対応した他組のリード線12(cd)に設けたサポータ14に機械的にのみ固着される。
【0029】
温度制御素子3は発熱用のチップ抵抗3a、温度感応素子3b及び第1、第2パワートランジスタ3c1、3c2を有し、さらに温度制御回路を形成するその他の回路素子からなる。そして、チップ抵抗3aは回路基板4の円状に設けられた切り込み15aによる切り込み領域15の内周に沿って放射状として配置される。すなわち、切り込み領域15の内周に沿ってチップ抵抗3aの幅方向に並べられる。
【0030】
この場合、隣接するチップ抵抗3aは長さ方向の両端側の電極19(ab)同士が配線路20によって電気的に接続して直列接続とする。ここでは、チップ抵抗3aは半周ずつがそれぞれ直列接続して、電源端子20(DC)及び第1と第2のパワートランジスタ3c1、3c2にそれぞれ接続する(第2図の温度制御回路を参照)。
【0031】
そして、チップ抵抗3a上には伝熱シート17を介在させて水晶振動子1の金属ベース9が密着する。但し、チップ抵抗3aは金属ベース9の下面内(底面内)とする。また、水晶振動子1の下面には図示しない熱伝導性の樹脂が塗布される。
【0032】
温度感応素子3bは2個の直列接続として、水晶振動子1の金属ベース9の中央下面となる回路基板4の切り込み領域15内に配置される。なお、温度感応素子3bは常温抵抗値を調整することから2個の直列とする。そして、温度感応素子3bの分割抵抗Raと接続する一端は水晶振動子1における他組のリード線12(cd)の一方又は両方と配線路によって接続する(前第2図参照)。
【0033】
第1と第2のパワートランジスタ3c1、3c2及びこれら以外の温度制御素子3は、切り込み領域15の外側として配置される。そして、これらの温度制御素子3は電源端子20(DC)とアース端子20(GND)との間に図示しない回路パターンによって電気的に接続する。
【0034】
このような水晶振動子1の恒温構造であれば、発明の効果の欄でも記載したように、従来では熱源としたパワートランジスタ3cを切り込み領域15外として、熱源をチップ抵抗3aのみとする。したがって、温度変化時におけるパワートランジスタ3cの発熱量の変動分を考慮せず、チップ抵抗3aによる温度変化には変動しない発熱量を制御すればよいので、水晶振動子1の温度制御を容易にする。さらに、ここでは、切り込み領域15内にはチップ抵抗3aと温度感応素子3bのみとするので、切り込み領域15内に対する他の回路素子による熱分布への影響もなく、設計を容易にできる。
【0035】
また、発熱用のチップ抵抗3aは金属ベース9のリード線12を取り囲んで環状として配置される。したがって、チップ抵抗3aからの熱がリード線12に対して直接的に放射されて水晶片10の励振電極13aに伝熱する。また、チップ抵抗3aは金属ベース9の下面内として全面的に伝熱される。したがって、チップ抵抗3aに対する水晶振動子1の熱応答性を良好にする。
【0036】
そして、リード線12を取り囲むチップ抵抗3aは幅方向として放射状に配置されるので、リード線12を取り囲む領域の形状に沿ってここでは円形状にチップ抵抗3aを配置できて熱分布を均一にする。この場合、チップ抵抗3aの幅が小さいほど、包囲領域の形状に沿って配置できて熱分布をさらに均一にする。そして、チップ抵抗3aの個数を多くして、発熱量を高められる。
【0037】
また、チップ抵抗3aは幅方向に並べられて隣接するチップ抵抗3aは両端側の電極19(ab)同士が接続した直列接続とする。したがって、隣接するチップ抵抗3aに流れる電流Iは逆向きとなるので、これによって発生する磁界も逆向きとなって相殺される(第1図(c))。したがって、温度変化によって制御電流が変化しても電磁波の発生を抑制するので、EMI対策を充分にする。そして、低周波雑音を小さくして発振周波数の位相雑音特性を良好にする。
【0038】
さらに、この実施形態では温度感応素子3bは水晶片10を機械的にのみ保持する他組のリード線12c(12d)に接続する。そして、他組のリード線12(cd)はサポータ14を経て水晶片10と直接的に接続するので、これと電気的に接続した言わば熱的に結合した温度感応素子3bは水晶片10の動作温度を直接的に検出できる。したがって、水晶振動子1の動作温度をリアルタイムに検出するので温度制御の応答性を向上する。
【0039】
また、発熱用のチップ抵抗3aは半周ずつを直列接続して第1と第2のパワートランジスタ3c1、3c2に接続する。したがって、全周のチップ抵抗3aを直列接続した場合よりも、各半周にチップ抵抗3aの抵抗値は小さくなる。したがって、各パワートランジスタ3c1、3c2電流も増加して発熱量も増加するので、温度変化に対する応答性を良好にする。
【0040】
なお、水晶振動子1のリード線12は互いに直交した両端部に設けた4本としたが、例えば120°間隔で配置した3本としてそのうちの2本は引出電極13bに接続して、1本のみが機械的にのみ接続した3端子の場合でも適用できる。
【0041】
(第1実施形態の適用)
そして、このような水晶振動子1の保持構造を適用して、第3図に示したように、例えば回路基板4の表面や裏面に発振用素子2を配置して、あるいは別個の回路基板4に発振用の回路素子を配置して2段構造とし、従来例と同様にリード線7を有する金属ベース5に保持して金属カバー8を接合すれば、高安定とした恒温型発振器を得られる。但し、金属ベース5に代えて、実装端子を有する絶縁ベースとして表面実装型とする場合でも適用できる。そして、切り込み領域15内には温度依存性の高い回路素子を配置することもできる。
【0042】
(第2実施形態)
第4図は本発明の第2実施形態を説明する図で、同図(a)は水晶振動子の恒温構造を示す断面図、同図(b)は水晶振動子1を除く平面図である。なお、前実施形態と同一部分の説明は簡略又は省略する。
【0043】
第2実施形態では、水晶振動子1は金属ベースに水晶片10を垂直方向として、図示しないサポータ14によって引出電極13bの延出した両端部が電気的に接続して、一対のリード線が導出した2端子構造とする。そして、リード線の先端部がカバーの主面に対して垂直方向に折曲した水晶振動子1を対象とした恒温構造の例である。
【0044】
水晶振動子1は金属ベース9のフランジ9a及びリード線12の折曲した先端部が図示しない切り込みに挿入されて、リード線12が半田付けされる。回路基板4は金属ベース9のフランジ9a及びリード線12の配置領域を周回する切り込み領域15が形成される。そして、切り込み領域15の内周に沿って発熱用のチップ抵抗3aが環状に配置されて、リード線12及びフランジ9aの配置領域を周回する。
【0045】
この場合でも、チップ抵抗3aは基本的に幅方向に並べられ、隣接するチップ抵抗3aは両端部の電極19が接続して直列接続とする。但し、この例ではフランジ9aの両側(図の上下)ではチップ抵抗3aの長さ方向に並べられる。そして、温度感応素子3bが切り込み領域15内で一対のリード線12の間となる回路基板4上に配置される。
【0046】
そして、回路基板4の切り込み領域15外には、前述同様にパワートランジスタ3cを含むその他の温度制御素子3が配置される。これらは図示しない配線路によって電源端子20(DC)とアース端子20(GND)との間に電気的に接続する。
【0047】
このような水晶振動子1の恒温構造であっても、第1実施形態と同様に、熱的に遮断する切り込み領域15内には発熱用のチップ抵抗3aと温度感応素子3bのみを配置して、温度変化によって発熱量も変化するパワートランジスタ3cを切り込み領域15外に配置する。したがって、温度変化に依存しないチップ抵抗3aのみを熱源とするので、水晶振動子1の温度制御を容易にできる。
【0048】
そして、チップ抵抗3aは両端部の電極19(ab)同士が接続して直列接続とするので、磁界が相殺されることから、EMI対策を充分にして低周波雑音を抑制し、位相雑音特性を良好にする。また、チップ抵抗3aは幅方向に並べられるので、個数も増えて熱分布を均一にする等の効果を奏する。
【0049】
なお、第2実施形態では、例えば第5図に示したように、水晶振動子1の金属カバー11に発熱用のチップ抵抗3aを導電シート17を介在させて密着させ、全体的に加熱することもできる。この場合、金属カバー11を周回する切り込みを設けて水晶振動子1全体を取り囲む切り込み領域15を形成することもできる。また、これらの場合でも、図示しない発振用素子2を配置すれば恒温型発振器を形成できることは勿論である。なお、第4図(a)では、例えば温度補償素子3の厚みを便宜的に小さく記載してある。
【0050】
(他の事項)
上記実施形態ではチップ抵抗3aは回路基板4の一主面のみに配置したが、例えば第1実施形態(第1図)に対応した第6図に示したように、発熱用のチップ抵抗3aを回路基板4の他主面にもリード線12を周回して環状(放射状)に配置したり、リード線12の中央にも配置したりしてもよい。このようにすれば、励振電極13aや水晶片10に直接に接続した4本のリード線12をさらに加熱するので、応答性をさらに良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施例の第1実施形態を説明する図で、同図(a)は水晶振動子の恒温構造示す断面図、同図(b)は回路基板の平面図、同図(c)は作用を説明する便宜的なチップ抵抗の一部拡大平面図である。
【図2】本実施例の第1実施形態で使用する温度制御回路の図である。
【図3】本実施例の一実施形態を適用した恒温型発振器の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を説明する図で、同図(a)は水晶振動子の恒温構造を示す断面図、同図(b)は水晶振動子1を除く平面図である。
【図5】本発明の他の例を説明する水晶振動子の恒温構造の断面図である。
【図6】本実施例のさらに他の例を説明する水晶振動子の保持構造の断面図である。
【図7】従来例を説明する図で、同図(a)は恒温型発振器の断面図、同図(b)は回路基板の平面図である。
【図8】従来例を説明する図で、同図第8図(a)は水晶振動子の断面図、同図(b)は水晶片の平面図である。
【図9】従来例を説明する温度制御回路図である。
【符号の説明】
【0052】
1 水晶振動子、2 発振用素子、3 温度制御素子、4 回路基板、5 金属ベース、6 ガラス、7、12 リード線、8、11 金属カバー、9 金属ベース、10 水晶片、13 励振及び引出電極、14 サポータ、15 切り込み領域、16 伝熱板、17 伝熱シート、18 挿通孔、19 電極 20 端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベースの外底面からリード線が導出して前記リード線と電気的に接続した水晶片を金属カバーによって密閉封入してなる水晶振動子とともに、発熱用のチップ抵抗と温度感応素子とパワートランジスタとを熱遮断用の切り込み領域が設けられた回路基板に搭載し、前記水晶振動子の動作温度を一定にする水晶振動子の恒温構造において、前記チップ抵抗と温度感応素子とは前記切り込み領域内として前記パワートランジスタは前記切り込み領域外とし、前記チップ抵抗は前記切り込み領域内に配置された前記水晶振動子のリード線を取り囲んで複数個が幅方向に並べられて環状に配置され、前記チップ抵抗のうちの隣接するチップ抵抗は長辺方向の両端側の電極同士が接続して直列接続したことを特徴とする水晶振動子の恒温構造。
【請求項2】
請求項1において、前記金属ベースは前記回路基板に対面して配置され、前記チップ抵抗と前記温度感応素子とは前記金属ベースの外周下面内に配置された水晶振動子の恒温構造。
【請求項3】
請求項2において、前記金属ベースは円形状として、前記チップ抵抗は放射状に配置された水晶振動子の恒温構造。
【請求項4】
請求項1において、前記金属ベースはフランジを有する矩形状として前記リード線は前記金属カバーの主面に対して直交方向に折曲した先端部を有し、前記金属カバーの主面を前記回路基板に対面し、前記チップ抵抗は前記金属ベースのフランジ及び前記リード線の先端部を取り囲んで配置された水晶振動子の恒温構造。
【請求項5】
請求項1の前記水晶振動子は発振回路及び温度制御回路とともに実装端子を有する容器内に収容されてなる恒温型の水晶発振器。

【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−200747(P2009−200747A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39280(P2008−39280)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】