説明

油圧サーボ装置

【課題】 プレス機等の工作機械のほか、種々の産業用油圧機械等に適用できる油圧サーボ装置を提供する。ワークの種類にかかわらず油圧シリンダのストローク位置の制御を高精度に行う。
【解決手段】シリンダ11を鉛直方向に配置し、シリンダロッド21の自重により発生するチューブ側の圧力を圧力を油圧ポンプ14に導く。このパイロット圧は、油圧ポンプ13の容量切換用として使用する。油圧ポンプ13の容量を切り換えるための圧力は、シリンダ11のチューブ側またはロッド側の圧力のいずれか高い方を使用する。パイロット圧は、電磁切換弁16の切り換えにより行う。電磁切換弁16の切り換えは、シリンダロッド21のストロークに従う。シリンダロッド21のストロークは、位置センサ14により検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレス機等の工作機械のほか、種々の産業用油圧機械等に適用される油圧サーボ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダを用いた塑性加工装置(プレス機)等では、その作動を制御するために次のような油圧サーボ装置が採用されている。
【0003】
図2は、プレス機に採用されている油圧サーボ装置の一例を示すものである(例えば、特許文献1参照。)。この油圧サーボ装置では、サーボモータ1が回転して二方向吐出型の油圧ポンプ2が駆動されると、油圧シリンダ3のチューブ側ポート4に圧油が供給され、シリンダロッド5が所定の初期位置から下死点位置まで伸長する。これによりダイ6が所定のプレス位置まで下降し、ワーク7がプレス加工される。その後、サーボモータ1が逆回転することによりシリンダロッド5が下死点位置から初期位置まで縮短する。なお、サーボモータ1は、所定の制御装置によってその回転が制御されている。
【0004】
このようなプレス機等では、高精度なプレス加工を行うために油圧シリンダ3の作動(シリンダロッド5のストローク)を正確に制御する必要がある。すなわち、シリンダロッド5は、初期位置からダイ6がワーク7に接触する程度の位置までは速やかに伸長し、プレスの段階ではシリンダロッド5の下死点位置をダイ6が所定のプレス位置となる位置に精密に合致させる必要がある。また、下死点位置から初期位置までは速やかに戻る必要がある。
【0005】
かかる制御を行うために、同図に示すような可変容量型の油圧ポンプ2が採用されており、ダイ6がワーク7に接触する程度までは吐出量を大きくしてシリンダロッド5を高速で伸長させ、その後下死点位置までは吐出量を小さくしてシリンダロッド5のストローク速度を低下させてその位置を精密に制御している。また、プレス位置から初期位置へ戻る際には、再び吐出量を大きくして高速で戻るようにしている。
【0006】
なお、油圧ポンプ2はパイロット式可変容量型のものであって、油圧シリンダ3のチューブ側圧力をパイロット圧として油圧ポンプ2に導き、このパイロット圧が大きくなると吐出量が小さくなるように設定されている。
【特許文献1】特開平10−166199号公報(第9図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、油圧ポンプ2の容量の切り換え(傾転量の切り換え)が油圧シリンダ3のチューブ側圧力に依存することから、次のような問題がある。
【0008】
すなわち、ワーク7の塑性加工に大きなプレス力を必要としない場合や、加工していないときに無負荷で微少上昇または微少下降させたい場合(無負荷運転)には、油圧シリンダ3のチューブ側圧力が上がらず、そのため、油圧ポンプ2の容量の切り換えを行うことができない。その結果、シリンダロッド5の下死点位置をダイ6のプレス位置に精密に対応させることができないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、ワークの種類にかかわらず油圧シリンダのストローク位置の制御を高精度に行うことのできる油圧サーボ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本願発明者は、油圧ポンプの容量の切り換えを確実に行うことができれば油圧シリンダのストローク位置を高精度に制御できることから、従来のように油圧ポンプの容量の切り換えを油圧シリンダの圧力を検知して間接的に行うのではなく、油圧シリンダのストロークを直接検出し、これに基づいて強制的に油圧ポンプの容量を切り換えることで上記目的を達成することができると考えた。
【0011】
(2) そこで、本願に係る油圧サーボ装置は、容量切換用パイロット圧によって容量を変えることができる二方向吐出型の油圧ポンプと、シリンダロッドが鉛直方向に沿って伸縮するように配置され、油圧ポンプの2つの吐出口がチューブ側ポートおよびシリンダロッド側ポートにそれぞれ油圧的に接続された油圧シリンダと、上記シリンダロッドが所定のストロークを行ったときにこれを検出してストローク信号を発信する位置センサと、少なくともシリンダロッド側ポートの圧力を上記容量切換用パイロット圧として油圧ポンプに導くパイロットラインと、パイロットラインを開閉する電磁切換弁と、上記ストローク信号を受信し、これに基づいて電磁切換弁を開く信号を発信する制御装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
プレス機等においては、通常、油圧シリンダは鉛直方向に配置されるから、軽負荷または無負荷状態であっても、シリンダロッド、ダイおよび金型等の自重によってシリンダロッド側ポートに一定の圧力が発生する。この圧力はパイロットラインによって油圧ポンプに導かれるが、パイロットラインは電磁切換弁によって開閉されるから、電磁切換弁が閉のときはシリンダロッド側ポート圧力は油圧ポンプに導かれず、開の状態で導かれる。つまり、電磁切換弁を切り換えることによって確実に容量切換用パイロット圧を油圧ポンプに導くことができる。
【0013】
ここで、電磁切換弁の切り換えのタイミングは、位置センサによってシリンダロッドのストロークを検出し、そのときの検出信号(ストローク信号)に基づいて行う。すなわち、この油圧サーボ装置が適用されるプレス機等の工作機械の用途・機能に応じてシリンダロッドの所要のストロークを予め設定し、当該ストロークを位置センサで検出する。そして、上記ストローク信号は、制御装置により受信され、制御装置はこれに基づいて信号を発信する。電磁切換弁は、この信号に基づいてパイロットラインを開く。
【0014】
(3) 上記パイロットラインには、油圧ポンプの上記チューブ側ポートに接続された吐出口の圧力および上記シリンダロッド側ポートの圧力のうちいずれか高圧側を上記容量切換用パイロット圧として油圧ポンプに導くための高圧選択弁を設けることもできる。このようにすれば、油圧ポンプの容量を切り換えるためのパイロット圧をより確実に得ることができるという利点がある。
【0015】
また、油圧シリンダのシリンダロッド側ポートに、カウンタバランス弁を設けることもできる。これにより、必要に応じてブレーキをかけた状態でシリンダロッドを伸長させることができ、シリンダロッドが予め設定された下死点位置で正確に停止するようにストロークを制御することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、位置センサによってシリンダロッドのストロークを検知することにより、電磁切換弁を開位置に操作して、シリンダロッドの自重により発生する圧力がパイロットラインを介して油圧ポンプに導かれるから、所要時に確実に油圧ポンプの容量を切り換えることができる。したがって、ワークの種類にかかわらず油圧シリンダのストローク位置の制御を高精度に行うことができる(請求項1に係る発明)。
【0017】
また、上記パイロットラインに、油圧ポンプの上記チューブ側ポートに接続された吐出口の圧力および上記シリンダロッド側ポートの圧力のうちいずれか高圧側を上記容量切換用パイロット圧として油圧ポンプに導くことにより、油圧ポンプの容量を切り換えるためのパイロット圧をより確実に得ることができ、ワークの種類にかかわらず油圧シリンダのストローク位置の制御を確実且つ高精度に行うことができる(請求項2に係る発明)。
【0018】
特に、油圧シリンダのシリンダロッド側ポートにカウンタバランス弁を設けることにより、いわゆるシリンダのオーバーシュートを防止して油圧シリンダのストローク位置の制御をより一層確実且つ高精度に行うことができる。また制御装置の故障時や停電時にシリンダロッドおよびダイが落下することを防止する安全対策手段としても有効である(請求項3に係る発明)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る油圧サーボ装置の構成を示す系統図である。この油圧サーボ装置10は、本実施形態ではワークを塑性加工するプレス機に適用されており、精密なプレス加工を行うためにプレス用油圧シリンダ(以下、単に「シリンダ」という。)11のストロークを精密に制御する。この油圧サーボ装置10は、プレス機に限定されることはなく、種々の工作機械の他、一般産業用機械等にも適用することができる。
【0021】
油圧サーボ装置10の構成について説明する。油圧サーボ装置10は、サーボモータ12によって駆動される二方向吐出型可変容量油圧ポンプ(以下、単に「油圧ポンプ」という。)13と、油圧ポンプ13から圧油の供給を受けて作動するシリンダ11と、シリンダ11のストロークを監視する位置センサ14と、油圧ポンプ13の容量を切り換えるためのパイロット圧を油圧ポンプ13に導くためのパイロットライン15と、パイロットライン15を開閉するための電磁切換弁16と、電磁切換弁16の作動のほか油圧サーボ装置10全体の動作を制御する制御装置17とを備えている。
【0022】
また、本実施形態では、油圧ポンプ13が二方向吐出型のものであって、シリンダ11の作動時にはシリンダチューブ側とシリンダロッド側の作動油が循環するようになっているが、シリンダ11の作動をより良好なものとするために、作動油調整回路18が備えられている。
【0023】
以下、各部について詳しく説明する。
【0024】
(1) 油圧ポンプ
油圧ポンプ13は、大容量と小容量とに切換可能な斜板ポンプである。当該油圧ポンプ13では、容量の切り換えを、外部パイロット圧によって斜板の傾転角を変化させることによって行っている。当該油圧ポンプ13は容量制御のための調節器29を備えており、この調節器29はパイロットポート19と設定圧力調整用ばね20とを備えている。このばね20のバネ力を調整することにより、油圧ポンプ13の容量切り換えの設定圧力を変えることができる。また、シリンダロッド側ポート圧力に対応して、このばね20のバネ定数を従来技術より小さくして、容量切り換えをきわめてレスポンスの高いものとすることができる。なお、この油圧ポンプ13を駆動するためのサーボモータ12は、上記制御装置17によってその作動が制御されている。
【0025】
油圧ポンプ13の主軸が正転されると作動油がシリンダロッド側から吸油されて圧油がシリンダチューブ側へ供給される。また、主軸が逆転されると作動油がシリンダチューブ側から吸油されて圧油がシリンダロッド側へ供給される。このような油圧ポンプ13とシリンダ11とを連結した油圧回路は、理論的には閉じているが、実際には内部で多少の作動油の漏れが起こる。このように漏れた作動油は図示しないドレン回路によってドレンされるのであるが、場合によっては、油圧回路内での作動油量が不足してキャビテーションが発生することもある。また、シリンダ11は片ロッド複動型であるので、シリンダロッド21のストロークの際にシリンダチューブ22側を流れる作動油量とシリンダロッド21側を流れる作動油量とは異なる。その一方、油圧ポンプ13の吸油量と吐出量とは等しい。そのため、シリンダロッド21の伸長時に油圧回路内の作動油量が不足し、またシリンダロッド21の縮短時にはシリンダロッド側の作動油量が過多となって異常圧力になるおそれがある。
【0026】
(2) 作動油調整回路
上述の作動油調整回路18は、かかる不都合を回避するために設けられている。具体的には、内部にチェック弁23aとパイロットチェック弁23bが配設されており、このチェック弁23aとパイロットチェック弁23bとはプレス機に備えられたオイルタンク24に接続されている。
【0027】
この作動油調整回路18によれば、油圧ポンプ13が正転して作動油がシリンダロッド21側から吸油されててシリンダチューブ22側に供給されると、電磁切換弁35が励磁されている場合は油圧回路内の不足分油量がタンク24からパイロットチェック弁23bを通って補充される。また、電磁切換弁35が非励磁の場合はカウンタバランス弁27によってシリンダチューブ側の圧力が上昇するのでパイロットチェック弁23bが閉じている。そのため、チェック弁23aから不足分油量を吸い込んで補充する。その結果、油圧回路内の作動油量が不足しても、オイルタンク24から作動油が吸い上げられて不足分を補う。
【0028】
一方、油圧ポンプ13が逆転して作動油がシリンダチューブ22側から吸油されてシリンダロッド21側に供給されると、同様にまずシリンダロッド21側の圧力が上昇し、これにより、パイロットチェック弁23bが開く。その結果、油圧回路内の作動油量が過多となっても、その分をオイルタンク24に戻すことができる。なお、作動油調整回路18は、かかるチェック弁23aとパイロットチェック弁23bとを用いたものに限定されることなく、その他公知の構造を採用することができる。
【0029】
(3) シリンダおよび位置センサ
シリンダ11は、上述したようにシリンダチューブ22とシリンダロッド21とを備えた片ロッド複動型のものである。本実施形態に係る油圧サーボ装置10をプレス機に採用した場合、このシリンダ11は鉛直方向に沿って配置されている。また、シリンダ11は、シリンダロッド21の先端にダイ25を備えており、且つシリンダロッド側ポート26にカウンタバランス弁27が配設されている。
【0030】
ダイ25は、ワーク28をプレスするためのものであり、ワーク28を所要の形状に塑性加工するために必要な外形形状を有している。また、カウンタバランス弁27を設けることによって、シリンダロッド21が伸長する際にブレーキをかけて急激な伸長(落下)を防止している。
【0031】
位置センサ14は、上下方向(すなわちシリンダロッド21の伸縮方向)に沿って設置されており、当該位置に対応した信号S1を出力してシリンダロッド21のストロークを検出することができる。
【0032】
(4) パイロットラインおよび電磁切換弁
パイロットライン15は、シリンダチューブ側ポート31の圧力またはシリンダロッド側ポート26の圧力のうち高い方をパイロット圧として油圧ポンプ13のパイロットポート19に導くためのものである。このため、パイロットライン15には高圧選択弁32が設けられており、この高圧選択弁32の両ポートは、それぞれシリンダチューブ側ポート31およびシリンダロッド側ポート26に接続されている。
【0033】
また、パイロットライン15の途中には電磁切換弁16が設けられており、これが切り換わることによってパイロットライン15が開閉されるようになっている。すなわち、電磁切換弁16は通常閉位置となるように設定されており(図に示す状態)、パイロット圧が油圧ポンプ13のパイロットポート19に導かれていないが、電磁切換弁16を電気的に切り換え開位置とすることによりパイロットライン15がパイロットポート19と連通し、パイロット圧が油圧ポンプ13のパイロットポート19に導かれるようになっている。なお、この電磁切換弁16の切り換えのタイミングは、制御装置17からの指令によるものとなっている。
【0034】
(5) 制御装置
制御装置17は、メモリ34とCPU33とを備えている。メモリ34には、サーボモータ12を予め設定された速度、回転方向等に制御するためのプログラムが記憶されている。そして、それにしたがってCPU33がサーボモータ12を運転する信号(指令信号S4と位置センサ14の検出信号S1との偏差信号)S2を出力するようになっている。
【0035】
また、メモリ34には、上記位置センサ14によって検出されるべきシリンダロッド21の2つの所定位置が信号として記憶されている。一つは、電磁切換弁16を切り換えるタイミングに対応した位置であって、具体的には、シリンダロッド21に設けられたダイ25がワーク28に接触して押圧し始める位置である。もう一つは、ダイ25がワーク28を完全にプレスした位置であって、この位置を正確に検出することが高精度なプレス作業をするために重要である。
【0036】
そして、CPU33は、位置センサ14が出力する検出信号S1を受信し、この検出信号S1と上記記憶された1つ目の所定位置信号とを比較して、一致すれば電磁切換弁16のソレノイドを駆動する信号S3を出力し、電磁切換弁16は、パイロットラインを開の状態に切り換える。また、検出信号S1と上記記憶された2つ目の所定位置信号とが一致すればサーボモータ12が停止して、シリンダロッドは所定位置で停止する。
【0037】
(6) 油圧サーボ装置の動作
次に、本実施形態に係るプレス機の動作について、油圧サーボ装置10の作用効果と共に説明する。
【0038】
上述した油圧サーボ装置10を採用したことによる最大のメリットは、プレス機によって薄肉の鋼板等を加工する場合、すなわち、シリンダ11内に高い圧力が発生しない軽負荷の場合であっても、正確なプレス加工を行うことができる点である。
【0039】
詳述すると、まず常態において油圧ポンプ13は大容量に設定されており、油圧ポンプ13が正転されると大量の作動油がシリンダチューブ22側に供給され、シリンダロッド22は急速に下降する。
【0040】
シリンダロッド21のストロークは位置センサ14により監視されており、シリンダロッド21が伸長してダイ25がワーク28を押圧し始めると、位置センサ14および制御装置17がこれを感知して信号S3が発信される。この信号に基づいて電磁切換弁16が切り換えられ、パイロットライン15が開かれる。
【0041】
このとき、仮にシリンダ11が軽負荷または無負荷であっても、シリンダロッド21側には、シリンダロッド21およびダイ25の自重によって一定の圧力が発生する。この圧力は高圧選択弁32に導かれる。一方、シリンダ11が軽負荷または無負荷のときはシリンダチューブ22側にはほとんど圧力が発生しない。このため、パイロットライン15は、シリンダロッド21側の圧力をパイロット圧として油圧ポンプ13のパイロットポート19に導くことになり、この圧力によって、油圧ポンプ13の容量が切り換えられて小容量となる。これにより、シリンダ11は低速で駆動され、シリンダロッド21のストロークを高精度に制御することが可能となり、シリンダロッド21の予め設定された下死点位置、すなわち、ダイ25がワーク28を完全にプレスした位置を正確に検出することができる。
【0042】
このように本実施形態では、シリンダロッド21等の自重により発生する圧力を油圧ポンプ13の容量制御のための調節器29のパイロット圧として導くから、ワーク28の種類にかかわらず(シリンダ11の負荷の大小にかかわらず)シリンダ11のストローク制御を精密に行い、精度の高いプレス作業をすることができる。
【0043】
さらに、油圧ポンプ13の設定圧力調整用バネ20を操作して容量切換用のパイロット圧を低圧に設定することができる。これにより、油圧ポンプ13の容量の切換をきわめてレスポンスの高いものとすることができるという利点がある。
【0044】
また、シリンダロッド21の下死点位置を位置センサ14が検出したときは、制御装置17から信号S2が出力され、サーボモータ12が逆回転される。上記信号S2の出力と共に電磁切換弁16を再び切り換えてパイロットラインを閉じる信号を出力させることもできる。このようにすれば、油圧ポンプ13の容量を大きくして、シリンダ11の縮短を高速で行うことができる。
【0045】
特に本実施形態では、パイロットライン15には高圧選択弁32が設けられているから、シリンダチューブ22側に発生する圧力およびシリンダロッド21側に発生する圧力のうち、いずれか高圧側を上記容量切換用のパイロット圧として導くことができる。これにより、シリンダ11の負荷の大小にかかわらず、油圧ポンプ13の容量を切り換えるためのパイロット圧をより確実に得ることができる。
【0046】
しかも、本実施形態では、シリンダ11にカウンタバランス弁27が設けられている。ワーク28をプレスする際、電磁切換弁35を励磁して上記カウンタバランス弁27を機能させて、シリンダ11にブレーキをかけた状態となる。これにより、シリンダ11のオーバーシュートを確実に避けることができ、一層精度の高いプレス作業が可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、上述のようにシリンダ11のストロークを基準にしてシリンダロッド21側の圧力をパイロット圧として導くようにしたが、これと共に、シリンダチューブ22側の圧力を基準にしてこの圧力をパイロット圧として導く従来の構造を併せ持たせることもできる。
【0048】
すなわち、たとえば、厚肉の鋼板等を加工する場合のように、シリンダ11内に高い圧力が発生する場合は、シリンダチューブ側ポート31に発生する圧力によりシリンダロッド21が伸長してダイ25がワーク28を押圧し始める位置を検出することができる。したがって、そのときのシリンダチューブ22側の圧力を所要の圧力センサにより検出し、その検出信号に基づいて電磁切換弁16を切り換える。これにより、油圧ポンプ13を小容量となし、シリンダ11を低速駆動してシリンダロッド21の予め設定された下死点位置(すなわちダイ25がワーク28を完全にプレスする位置)の精度を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
ワークの種類にかかわらず油圧シリンダのストローク位置の制御を高精度に行うことが不可欠な用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧サーボ装置の構成を示す系統図である。
【図2】従来のプレス機に採用されている油圧サーボ装置の構成を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0051】
10 油圧サーボ装置
11 シリンダ
12 サーボモータ
13 油圧ポンプ
14 位置センサ
15 パイロットライン
16 電磁切換弁
17 制御装置
19 パイロットポート
21 シリンダロッド
22 シリンダチューブ
26 シリンダロッド側ポート
27 カウンタバランス弁
28 ワーク
31 シリンダチューブ側ポート
32 高圧選択弁
35 電磁切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量切換用パイロット圧によって容量を変えることができる二方向吐出型の油圧ポンプと、
シリンダロッドが鉛直方向に沿って伸縮するように配置され、油圧ポンプの2つの吐出口がチューブ側ポートおよびシリンダロッド側ポートにそれぞれ油圧的に接続された油圧シリンダと、
上記シリンダロッドが所定のストロークを行ったときにこれを検出してストローク信号を発信する位置センサと、
少なくともシリンダロッド側ポートの圧力を上記容量切換用パイロット圧として油圧ポンプに導くパイロットラインと、
パイロットラインを開閉する電磁切換弁と、
上記ストローク信号を受信し、これに基づいて電磁切換弁を開く信号を発信する制御装置とを備えたことを特徴とする油圧サーボ装置。
【請求項2】
請求項1記載の油圧サーボ装置において、
上記パイロットラインは、油圧ポンプの上記チューブ側ポートに接続された吐出口の圧力および上記シリンダロッド側ポートの圧力のうちいずれか高圧側を上記容量切換用パイロット圧として油圧ポンプに導くための高圧選択弁を備えていることを特徴とする油圧サーボ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の油圧サーボ装置において、
油圧シリンダのシリンダロッド側ポートに、カウンタバランス弁が設けられていることを特徴とする油圧サーボ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−300187(P2006−300187A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121369(P2005−121369)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(592216188)株式会社カワサキプレシジョンマシナリ (67)
【Fターム(参考)】