説明

油圧バルブ

【課題】スペースを有効に使用可能で、部品点数を押さえることによりコストを削減することが可能な油圧バルブを提供する。
【解決手段】円筒状のケース体63内に流路を形成し、該流路に弁体65を摺動可能に配置して可変絞り54を構成し、該弁体65を円筒状に構成して弁体65内に流路を形成するとともに、該弁体65内に鋼球67と弾性体66を収納してチェック弁53を構成した。また、前記弁体65の一端に調整シャフト64を固定し、該調整シャフト64の他端にノブ64aを設け、ケース体63外部より弁体65を摺動操作可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの作業機昇降装置等に利用されるバルブに関するものであり、特に、チェック弁と可変絞りを一体化した油圧バルブの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トラクタの後部のミッションケース上に油圧ケースと油圧制御バルブ(コントロールバルブ)を配置し、該油圧ケース内に油圧アクチュエータとなる油圧リフトシリンダを収納し、該油圧シリンダによりリフトアームを回動可能とし、トラクタの後部に配置した作業機装着装置にロータリ耕耘装置等の作業機を装着し、前記リフトアームの回動により作業機を昇降可能としている。
昇降シリンダに送油する油圧回路については、作業機を上昇させる際には、チェック弁を介して油圧シリンダに送油することで逆流を防止し、作業機を下降させる際には可変絞りによって油圧シリンダからオイルタンクへと戻る作業油の流量を調節することにより、作業機の降下速度を調節する構成としている。
【特許文献1】特開2003−235307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術の構成では、チェック弁及び可変絞りをそれぞれ個別に設けておりそれぞれのスペースが必要となっていた。また、油圧回路に使用する部品点数も多くなるためコストがかかっていた。
そこで、本発明では斯かる課題に鑑み、スペースを有効に使用可能で、部品点数を押さえることによりコストを削減することが可能な油圧バルブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、円筒状のケース体内に流路を形成し、該流路に弁体を摺動可能に配置して可変絞りを構成し、該弁体を円筒状に構成して弁体内に流路を形成するとともに、該弁体内に鋼球と弾性体を収納してチェック弁を構成したものである。
【0006】
請求項2においては、前記弁体の一端に調整シャフトを固定し、該調整シャフトの他端にノブを設け、ケース体外部より弁体を摺動操作可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、チェック弁と可変絞りを一体的な構成とすることが可能となり、チェック弁と可変絞りを個別に設けた場合に比べてスペースを省くことが可能となる。また、一体化することにより、設計や配置が容易となる。また、一箇所にまとめることにより、メンテナンスが容易となり、部品点数の削減を図ることが可能となる。
【0009】
請求項2においては、流量調整のための操作が容易にできるようになる。また、円筒状のケース体及び弁体に調整シャフトを容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0011】
図1は本発明の一実施例に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図、図2は油圧バルブの斜視図、図3は油圧バルブの一部断面図、図4は昇降バルブユニットの斜視図、図5はトラクタの座席付近の側面図、図6は昇降制御用油圧経路を示した模式図である。
【0012】
先ず、図1を用いて本発明の油圧バルブを適用した作業車両の一例であるトラクタの概略構成について説明する。
図1中の1はトラクタで、機体の前後部に夫々前輪2・2と後輪3・3とを備え、ミッションケース4の後上部には油圧シリンダケース5を固着して設けている。
該油圧シリンダケース5内には、単動式油圧シリンダ6が設けられており、油圧シリンダケース5の左右両側には該油圧シリンダ6の伸縮により回動するリフトアーム7・7を配置している。また、機体の前部にはボンネット13が設けられ、該ボンネットの内部にはエンジン16が収納されている。前記ボンネットの後部にはステアリングハンドル17が配置され、該ステアリングハンドル17の後方に運転席19が配置されている。
【0013】
次に作業機昇降装置8について説明する。作業機昇降装置8は、トップリンク10、ロワーリンク11・11等から構成されており、前記作業機昇降装置8の後端部には、作業機の一例であるロータリ耕耘装置14がリフトアーム7・7にて昇降自在に連結されている。
したがって、上記単動式油圧シリンダ6を伸縮させることによって、リフトアーム7・7に連結されるロータリ耕耘装置14が上昇又は下降制御されることになる。但し、本実施例では、本機後部に作業機を装着しているが、本機前部に装着したり、前輪と後輪の間に配置したりすることも可能であり、それぞれ後述する昇降バルブユニットを設けて昇降操作することも可能である。
リフトアーム7・7とロワーリンク11・11との間にはリフトロッド15と傾倒シリンダ18が介装されている。
【0014】
また、傾倒シリンダ18は複動式とし、後述する制御弁の切換で伸縮され、ロータリ耕耘装置14をローリング方向(左右方向)に傾動させることが可能となり、ロータリ耕耘装置14の水平(姿勢)制御を行うことが可能となる。
【0015】
次にロータリ耕耘装置14について説明する。ロータリ耕耘装置14は、耕耘爪を回動して耕耘する耕耘部34と、耕耘部34の上方を覆う耕耘カバー35と、耕耘カバー35の後部にリヤカバー36を枢支し、該リヤカバー36の回動基部に、リヤカバー36の角度を検出して、後述する油圧操作リンクにリヤカバー36の回動量を伝達するプッシュプルワイヤ37の一端が取り付けられている。
なお、本実施例では作業機の一例としてロータリ耕耘装置を使用したが、その他、モア(芝刈り機)や肥料散布機などを連結することも可能である。
【0016】
次に油圧回路について図6を用いて説明する。
前記エンジン16により駆動される油圧ポンプ46からの圧油は昇降制御用油圧回路(昇降バルブユニット)47に送油される。該昇降制御用油圧回路47は図6に示すように、リリーフ弁51や昇降用メイン切換バルブ52、チェック弁53、可変絞り54、油圧シリンダ6などで構成され、油圧シリンダ6が伸縮することでリフトアーム7を回動する仕組みとなっている。メイン切換バルブ52は3ポート3位置切換のバルブで構成され、中立位置では二次側のシリンダポート52aをブロックして、一次側のポンプポート52cとドレンポート52bを連通し、油圧シリンダ6内の作動油がドレンしないようにして作業機を所望の高さに保持する。昇降操作手段となる昇降レバー71を上昇側に操作して、スプールを摺動してA位置に切り換えると、ポンプポート52cとシリンダポート52aが連通されて、油圧ポンプ46からの圧油はチェック弁53を介して油圧シリンダ6に送油されて、油圧シリンダ6を伸長させて、ロータリ耕耘装置14を上昇させる。
また、昇降レバー71を下降側に操作して、スプールを摺動してB位置に切り換えると、シリンダポート52aとドレンポート52bが連通されて、油圧シリンダ6内の作動油は可変絞り54により流量が制限されながら、オイルタンク(ミッションケース4)に戻され、ロータリ耕耘装置14は緩降下する。
【0017】
本発明においては、前記可変絞り54及び、チェック弁53を一体に形成し油圧バルブ60を構成している。以下油圧バルブ60について説明する。
油圧バルブ60は油圧シリンダ6からドレンする送油量を調節するものであり、円筒状のケース体63内に流路を形成し、該流路に弁体65を摺動可能に配置して可変絞り54を構成し、該弁体65を円筒状に構成して弁体65内に流路を形成するとともに、該弁体65内に鋼球67と弾性体66を収納してチェック弁53を構成し、前記弁体65の一端に調整シャフト64を固定し、該調整シャフト64の他端にノブ64aを設け、ケース体63外部より弁体65を摺動操作可能に構成している。
即ち、図2、図3、図7に示すように、油圧バルブ60は、ガイド61及びホルダ62から構成されるケース体63と、調整シャフト64、弁体65、弾性体66、鋼球67等から構成される。前記ホルダ62は略中空で外形が多角形柱状に構成されており、中心部は円柱形の孔が設けられている。該ホルダ62の上部には略中空で外形が多角形柱状に構成されており中心部は円柱形の孔が設けられた前記ガイド61が螺装嵌合されており、ガイド61の下部内面にはねじ溝(雌ネジ)が設けられている。前記ホルダ62の下部にはホルダ62の軸心方向と直交する油孔62aが貫通穿設されており、該油孔62aは油圧シリンダ6の吸入ポート47cと連通される。また、該ホルダの下端は油孔62bとして構成し、該油孔62bは前記メイン切換バルブ52のシリンダポート52aと連通される。
【0018】
一方、調整シャフト64は、一端(図3における上端)にノブ64aを固定し、長手方向中途部にねじ山(雄ネジ)がきられており、前記ガイド61に螺合されている。なお、調整シャフト64の上部には軸心方向と直角に貫通孔64bを穿設して、固くなってノブ64aを握って回すことができない場合等ではドライバ等を挿入して回動できるようにしている。前記弁体65は中空状の円筒部材で構成され、該弁体65の上部に前記シャフト64の下端が挿入され、両者にピン65aを貫通して固設している。該弁体65円筒内部にはバネ等で構成された弾性体66および鋼球67が収納され、該弁体65の円筒部の下端内部が弁座として形成され、該弁座に鋼球67を当接させることで閉じることを可能としている。そして、該鋼球67は前記弾性体66により下方へ付勢され、該円筒部下端を閉じるようにしてチェック弁53を形成している。また、該弁体65の下部における鋼球67の上部位置の側面には、弁体65の軸心(長手)方向と直交する油孔65bが貫通して設けられており、前記ホルダ62に設けられた油孔62aと連通するように配置し、油圧シリンダ6の吸入ポート47cと連通するように配設されている。
【0019】
また、前記油孔62aの下部のホルダ62内面に弁座62cが形成され、前記弁体65の下端が当接して、油孔62bが閉じられるように構成している。そして、前記調整シャフト64と弁体65はピン65aにより連結固設され、前記ノブ64aを握って回動すると、調整シャフト64がガイド61(ケース体63)に対して上下方向に摺動し、弁体65も一体となって上下方向に摺動する。すなわち、調整シャフト64を上下方向に摺動することにより、弁体65の下端外周とホルダ62の内壁に形成した弁座62cとの隙間を調節することが可能となり、油圧シリンダ6の吸入ポート47cと前記メイン切換バルブ52のシリンダポート52aとの間の流量を調整する可変絞り54を構成する。
【0020】
このような構成において、ロータリ耕耘装置14を上昇させるためにメイン切換バルブ52がA位置に切り換えられると、シリンダポート52aから圧油が油孔62bに流入し、下方に付勢されている鋼球67を押し上げて、弁体65に設けられた油孔65bからホルダ62に設けられた油孔62aを通って、吸入ポート47cから油圧シリンダ6へ送油される。
一方、ロータリ耕耘装置14を下降させるために、メイン切換バルブ52がB位置に切り換えられると、油圧シリンダ6内の作動油が吸入ポート47cから油孔62aに流入する。しかし、弁体65の内部は鋼球67が弾性体66により下方へ付勢されているため流入することはできず、弁体65の下部外壁とホルダ62下部の内壁の隙間から油孔62bへと送油されることとなる。該弁体65の下部外壁とホルダ62下部の内壁との隙間は調整シャフト64を上下に摺動することにより変更可能であるので、作動油の流量を調節することが可能となり、ロータリ耕耘装置14の降下速度を変更することができる。そして、作業機を上昇させた状態で、ノブ64aを回して締め付けて、弁体65の下部外壁とホルダ62下部の内壁との隙間をなくし閉じると、上昇位置で保持でき、ストップバルブとすることができる。
【0021】
以上のように構成することにより、油圧バルブ60は可変絞り54とチェック弁53が一つのケース体63内に一体的に収納され、かつ、近傍に配設されて、可変絞り54の弁体65はチェック弁53の鋼球67の収納体となって兼用でき、構造が簡単で部品点数を削減できるのである。
このように構成することにより、チェック弁と可変絞りを個別に設けた場合に比べてスペースを省くことが可能となる。また、ユニット化することにより、設計や配置が容易となる。
【0022】
次に昇降バルブユニット47の配置について説明する。
昇降バルブユニット47は、図4に示すように、バルブケース72内に前記油圧バルブ60及びメイン切換バルブ52、リリーフバルブ51を収納し、該バルブケース72より作業機を昇降操作するための昇降レバー71と、作業機の下降速度を調整したり、上昇位置でロック操作するためのノブ64aが突出されている。
即ち、図4、図5に示すように、矢印方向Fを前方とすると、バルブケース72の一側(前側)にメイン切換バルブ52を配置して、昇降レバー71を前上方に突出し、バルブケース72の後部に油圧バルブ60を配置し、ケース体63とノブ64aを上方に突出している。該ケース体63の側部より吸入ポート47cを側方に突出している。
また、バルブケース72の一側側面より油圧ポンプと接続するためのポンプポート47aを突出し、他側側面よりミッションケース4と接続するためのドレンポート47bを突出している。また、リリーフ弁51はバルブケース72の前面より着脱可能に構成している。
【0023】
このように構成することで、フェンダー80の下方に昇降バルブユニット47が配置されるため、フェンダー80と後輪3の間の空間を有効に利用することが可能となる。また、リンク機構を介することなく直接昇降レバー71で昇降バルブユニット47を操作できるので、構成が簡単になり、コスト低減化が図れる。また、作業機を前部や側部等に装着して増加する場合にも容易にバルブユニットを連設することが可能となる。そして、昇降バルブユニット47はフェンダー80の下方から容易に着脱でき、メンテナンスすることが可能となる。
【0024】
前記昇降バルブユニット47は、図5に示すように、運転席19側方のフェンダー80の内側下部に設けられている。つまり、後輪3の上端部とその上方を覆うフェンダー80との間には所定の空間が形成されており、この空間内に昇降バルブユニット47を配置している。そして、ノブ64a及び昇降レバー71は運転席19とフェンダー80上に設けたアシストバー80aとの間のフェンダー80上面に形成したレバーガイドから上方に突出して配置している。こうして、運転席19に座った状態でロータリ耕耘装置14の昇降及びロータリ耕耘装置14の降下速度を調節することが可能となる。
【0025】
このように構成することにより、従来のように運転席19側部に配置した昇降レバーと油圧ケース側部に配置した制御バルブをリンク等で連結する必要がなく、昇降バルブユニット47に配置した昇降レバー71を直接操作することができる。また、昇降バルブユニットのメンテナンスが容易となる。
なお、本実施例ではバルブケースを一つ使用しているが、二つ以上連結することも可能である。二つ以上連結して使用することにより、ロータリ耕耘装置を使用しつつ他の作業機(フロントローダー等)を使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【図2】油圧バルブの斜視図。
【図3】油圧バルブの一部断面図。
【図4】昇降バルブユニットの斜視図。
【図5】トラクタの座席付近の側面図。
【図6】昇降制御用油圧経路を示した模式図。
【符号の説明】
【0027】
1 トラクタ
6 油圧シリンダ
7 リフトアーム
14 ロータリ耕耘装置
47 昇降バルブユニット
60 油圧バルブ
71 昇降レバー
72 バルブケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケース体内に流路を形成し、該流路に弁体を摺動可能に配置して可変絞りを構成し、該弁体を円筒状に構成して弁体内に流路を形成するとともに、該弁体内に鋼球と弾性体を収納してチェック弁を構成したことを特徴とする油圧バルブ。
【請求項2】
前記弁体の一端に調整シャフトを固定し、該調整シャフトの他端にノブを設け、ケース体外部より弁体を摺動操作可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−247831(P2007−247831A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74214(P2006−74214)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】