説明

洗浄機

【課題】洗浄液やすすぎ液を昇温するためのエネルギ使用量を大幅に削減し、しかも二酸化炭素排出量の削減にも寄与することができる、洗浄機を提供する。
【解決手段】少なくとも上部が開口された略箱状の洗浄機本体2内に、搬送手段を介して順次搬送されてくる容器8に対し、加温された洗浄液による洗浄と、加温されたすすぎ液によるすすぎとを行い、さらに洗浄に使用された洗浄液と、すすぎに使用されたすすぎ液とを、洗浄機本体2の下方に配置されたタンク12内に戻すようにした洗浄機10であって、洗浄機本体2の上部開口を覆うように天蓋9の内部に、排熱回収装置20を設置し、箱状の洗浄機本体2内に充満する水蒸気を、排熱回収装置20に導入し、導入された水蒸気から熱交換により回収した余剰熱量を供給水に蓄熱し、蓄熱され温水となった供給水を再使用することを特徴とする洗浄機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄機に関し、詳しくは、洗浄物を洗浄する洗浄水あるいはすすぎ液などを加温するのに使用した余剰熱を有効利用することのできる洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラスチック製の運搬用容器(以下、コンテナともいう)を用いて電子部品や食品などを運搬する場合は、付着した塵埃、油脂、汚れなどを取り除く目的で洗浄してから使用されている。また、近年では、スーパーなどで使用されているプラスチック製の買い物用カゴおよび荷役用パレットさえも美観、衛生上の観点から洗浄される環境にある。
【0003】
このように運搬用のコンテナあるいは買い物用カゴ又はパレットなどの物品を洗浄するための洗浄機では、おおむね洗剤を含んだ洗浄液による洗浄を実施した後に、水道水などの清澄なすすぎ液によってすすぎが行なわれている。このような場合、洗浄液、すすぎ液共に適度な温度に加温されることが多い。具体的には、アルカリ性の洗剤を用いた洗浄液の場合は60℃、水道水などのすすぎ液の場合は80℃程度にまで昇温された状態で使用されている。
【0004】
このように、かなり高温で洗浄とすすぎとが行われる洗浄機では、洗浄液を貯留する洗浄液貯留タンク、あるいはすすぎ液を貯留するすすぎ液貯留タンク内に、それぞれ蒸気式ボイラから蒸気を送り込むことにより所定の温度に昇温させている。
【0005】
ところで、多量の洗浄を行う場合には、当然のことながら多くのエネルギが必要である。勿論、ボイラではなく電熱ヒータなど他の加熱手段を用いる場合も同様である。
しかしながら、運搬用容器などを工業的に洗浄するこの種の洗浄機では、加温を行うものの、排気熱の有効利用は行われていないのが実状である。すなわち、洗浄機で加温されたものの水蒸気内に含まれる熱量はそのまま廃棄されるのが一般的であった。その一方で、今日では、燃料代削減は勿論のこと、二酸化炭素排出量の削減も叫ばれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑み、洗浄液やすすぎ液を昇温するためのエネルギの消費量を大幅に削減し、しかも二酸化炭素排出量の削減に寄与することができる、洗浄機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る洗浄機は、
少なくとも上部が開口された略箱状の洗浄機本体内に、搬送手段を介して順次搬送されてくる容器に対し、加温された洗浄液による洗浄と、加温されたすすぎ液によるすすぎとを行い、さらに洗浄に使用された前記洗浄液と、すすぎに使用された前記すすぎ液とを、前記洗浄機本体の下方に配置されたタンク内に戻すようにした洗浄機であって、
前記洗浄機本体の上部開口を覆うように天蓋を設置するとともに、前記天蓋に排熱回収装置を設置し、前記箱状の前記洗浄機本体内に充満する水蒸気を、前記排熱回収装置に導入し、当該排熱回収装置に導入された水蒸気から熱交換により回収した余剰熱量を供給水に蓄熱し、蓄熱され温水となった供給水を前記タンク内に戻すようにしたことを特徴としている。
【0008】
このような構成の本願発明によれば、洗浄機本体内に充満する水蒸気から余剰の熱量を回収し、その回収した熱量を加温のために再使用することができる。
これにより、エネルギの消費量の削減に寄与するとともに、洗浄機から発生する二酸化炭素量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る洗浄機によれば、洗浄液やすすぎ液などの加温のために使用されたエネルギの余剰分を略密閉空間内に充満して存在する水蒸気から回収することにより、エネルギ全体の使用量を削減し、かつ二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本願発明の一実施例に係る洗浄機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る洗浄機10を示したものである。
この洗浄機10は、洗浄工場などに設置される一般的なもので、例えば、アングル材などで組まれた架台上に略箱形状で上部が開口して形成された横置型の洗浄機本体2と、その上部開口部を覆うように設置された天蓋(いわゆるフード)9とを有している。
【0012】
そして、この洗浄機10では、搬送の上流側に洗浄部4が、搬送の下流側にすすぎ部5が設置されているとともに、略箱形状の装置本体2内にチェーンコンベアなどの搬送手段6が設置され、洗浄機本体2内に外部から搬送されてきたコンテナ8などの被洗浄物がこの搬送手段6に受け渡されて洗浄機本体2内を矢印A方向に連続的に搬送される。
【0013】
洗浄機本体2の底面2aは上流側が低くされることにより洗浄機本体2のすすぎ部5側からも液体の一部が洗浄部4側に導かれるようになっていることが多い。
洗浄部4の下方には、洗浄液を貯留するための洗浄液貯留タンク12が設置され、この洗浄液貯留タンク12内に洗浄部4で使用された洗浄液と、すすぎ部5で使用されたすすぎ液の一部が回収されるようになっている。なお、すすぎ部5で使用されるすすぎ液は、すすぎ液貯留タンク14からポンプ7を介して連続的に供給されている。
【0014】
一方、本実施例の洗浄機10では、洗浄部4で使用される洗浄液とすすぎ部5で使用されるすすぎ液とを、適宜な温度に昇温するための加熱手段が具備されている。この加熱手段は、特に限定されるものではないが、一般には、蒸気により加熱するボイラが使用される場合が多い。この実施例の洗浄機10では、図示しないボイラから蒸気用配管19を介して洗浄液貯留タンク12およびすすぎ液貯留タンク14に高温の蒸気が供給されることにより、洗浄液貯留タンク12内の洗浄液およびすすぎ液貯留タンク14内のすすぎ液が所定の温度にまで昇温されている。
【0015】
なお、図1において、洗浄液貯留タンク12内あるいはすすぎ液貯留タンク14内の符号16はフロートを示したもので、このフロート16の高さを検知することにより、残量が所定量以下になった場合に洗浄液あるいはすすぎ液の給水が可能にされている。
【0016】
洗浄液貯留タンク12内に貯留された洗浄液は、フィルター22、ポンプ24を介して洗浄機本体2内の洗浄部4に供給され、洗浄部4に設置された噴出ノズル26により、コンテナ8に噴出される。
【0017】
また、すすぎ液貯留タンク14内に貯留されたすすぎ液は、フィルター3、ポンプ7を介して上方のすすぎ部5に供給され、このすすぎ部5に設置された噴出ノズル29から飛散されてコンテナ8の表面がすすがれる。上記洗浄液貯留タンク12内およびすすぎ液貯留タンク14内には、それぞれオーバーフロー32が具備され、これらのオーバーフロー32により、各タンク12,14内の貯水量が所定量を超えた場合に、その超過分が自動的に外部に排水されるように構成されている。
【0018】
さらに、本実施例の洗浄機10では、洗浄機本体2の上部開口部を覆うように天蓋(いわゆるフード)9が設置され、この天蓋9の上板部9aに形成された開口部9bの外側に、別途、略箱形状の装置27が設けられ、この略箱形状の装置27内に排熱回収装置20とシロッコファン31が設置されている。この排熱回収装置20は、高温の流体(例えば水蒸気)と、低温の流体(例えば水道水)との間で熱交換を行う熱交換器であり、本実施例では、開口部9bから排気されてきた高温の水蒸気が熱を奪われ、その熱が水道水に蓄熱されて、すすぎ液として使用されている。一方、ファン31は、略箱形状の装置27内の排気のために使用される。
【0019】
以下に、本実施例で採用された排熱回収装置20の概略について説明する。
この排熱回収装置20は、例えばアルカリ性の洗浄液に接しても腐食され難い細い銅製のパイプが短い間隔でS字状に折り返されることにより全体の流路が長く設定された流体通路21と、この流体通路21を構成する銅パイプの外周面に一体的に付設された多数の集熱板23とから構成されている。そして、流体通路21の一端は給水管18に接続され、流体通路21の他端は戻し配管25を介してすすぎ液貯留タンク14に接続されている。したがって、給水管18から排熱回収装置20に供給されてきた常温の水道水は、熱交換により高温にされた後、すすぎ液貯留タンク14に戻すことが可能にされている。
【0020】
このような構成の洗浄機10では、洗浄部4とすすぎ部5で高温の洗浄液(約60℃)と高温のすすぎ液(約80°)とが、ともに連続的に噴出されているので、天蓋9に囲まれた空間内は多量の水蒸気で満ちている。よって、小部屋27内のシロッコファン31が駆動されれば、開口部9bから水蒸気が積極的に排出され、排熱回収装置20に供給される。
【0021】
洗浄機10では、開口部9bに排気されてきた水蒸気は、排熱回収装置20の互いに隣接し合う多数の集熱板23、23間の間を通過し、その後、略箱形状の装置27の外方に排出されるが、その間に集熱板23により水蒸気に含まれる熱が奪われる。そして、その熱は流体通路21内の水道水に伝熱され、水道水の温度が昇温される。
【0022】
このように、この排熱回収装置20では、洗浄機本体2内に常に充満している水蒸気が集熱板23の間を通過する際に熱交換され、その熱交換により余分の熱が奪われた水蒸気は、略箱形状の装置27の外方に排出される。一方、熱交換により高温にされた流体通路21内の水道水は、戻し配管25を介してすすぎ液貯留タンク14に戻される。
【0023】
本実施例による洗浄機10は、上記のように構成されているが、以下に作用について説明する。
今、電子部品あるいは食品などの運搬に使用される多数のコンテナ8および荷役用パレットが、図示しない搬送手段により洗浄機10の手前側に搬送され、そのコンテナ8は洗浄機10内の搬送手段6に受け渡されて洗浄機本体2内に所定間隔置きに搬送される。洗浄機10の搬送手段6により洗浄機本体2内に所定間隔置きに搬送されてきたコンテナ8は、先ず上流側の洗浄部4に到達する。
【0024】
一方、洗浄機10内では、図示しないボイラからの蒸気により、洗浄部4においては洗浄液が例えば60℃程度に、すすぎ部5においてはすすぎ液が例えば80℃程度に昇温されている。そして、これら高温の洗浄液と高温のすすぎ液とが、それぞれ噴出ノズル26および噴出ノズル29から常時噴出されている。これにより、洗浄機本体2と天蓋9により略密閉された空間内は、高温の水蒸気が充満した状態になっている。
【0025】
この状態でコンテナ8が洗浄部4に到達すると、洗浄部4の噴出ノズル26から噴出されている洗浄液により、コンテナ8の内外面がくまなく洗浄される。これにより、コンテナ8の表面に付着していた塵埃、固形物などが剥離される。一方、洗浄に使用された洗浄液は、下方の洗浄液貯留タンク12内に、落下した塵埃などとともに収容される。
【0026】
さらに、洗浄機10の搬送手段6による搬送が進んで、コンテナ8が洗浄部下流のすすぎ部5に到達すると、そのコンテナ8は、噴出ノズル29からのすすぎ液により表面がすすがれる。なお、すすぎ液貯留タンク14内の貯留量が不足したことがフロート16による検出に基いて確認された場合は、給水管28から補給される。
【0027】
すすぎ部5で使用されたすすぎ液の一部は、洗浄機本体2の傾斜して形成された底面2aを介して上流側の洗浄液貯留タンク12内に戻される。
一方、天蓋9の上部に充満している高温の水蒸気は、シロッコファン31の駆動により、開口部9bから小部屋27内の排熱回収装置20に導入され、ここで上述したように熱交換される。そして、高温の水蒸気から奪われた熱は、流体通路21内を流れる水道水を加温した後、すすぎ液貯留タンク14内に温水として戻される。これにより、余剰熱の回収が行われる。
【0028】
このように本実施例では、これまで回収されることなく、外部に排出されていた高温の水蒸気に含まれる余剰熱を回収している。これにより、全体としての消費エネルギを少なくすることができる。また、エネルギコストの圧縮になり、ひいては二酸化炭素削減に寄与することができる。
【0029】
なお、本発明の効果を確認するために実験を行った。
すなわち、図1に示したような洗浄機10において、初期給水量が350リットル、運転中給水量が1200リットル/時間を必要とする洗浄機で、排熱回収装置20がある場合と無い場合との比較実験を行った。
【0030】
運転条件は、給水温度が15℃、運転温度は洗浄液60℃、すすぎ液80℃で、一日当たりの操業時間として8時間稼動した。
このとき、通常、必要となる熱量は、641,750Kcalである。これをA重油に換算すれば64リットル、灯油で73リットル、LPGガスでは27m3必要になる。
【0031】
本実施例の排熱回収装置20を設けた洗浄機の場合、給水温度を15℃から35℃に上昇させることが可能になった。上述の使用量で20℃(35℃−15℃)給水温度を上げるのに必要な熱量は192,000Kcalとなり、この分が約30%の節約になることが確認された。
【0032】
なお、この節約となる熱量は、A重油に換算すれば、19リットル、灯油で27リットル、LPGで8m3、都市ガス(13A)で18m3に相当する。
また、二酸化炭素の排出量はA重油で51Kg、灯油で68Kg、LPGで46Kg、都市ガス(13A)で36Kg相当を減らすことが確認された。
【0033】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、排熱回収装置20により熱交換された高温の水道水は戻し配管25を介してすすぎ液貯留タンク14内に戻されているが、この熱交換された高温の水道水を、水のフロー次第で洗浄液貯留タンク12に戻すように構成しても良い。
【0034】
また、上記実施例では、コンテナ8を洗浄する洗浄機に適用して説明したが、買い物用カゴおよび物流用パレットなどを洗浄する洗浄機に適用することも有効である。
また、上記実施例では、洗浄液あるいはすすぎ液の加熱手段としてボイラを採用しているが、この加熱手段はボイラに何ら限定されない。
【0035】
例えば、伝熱ヒータなどによって構成することもできる。
【符号の説明】
【0036】
2 洗浄機
2a 底面
4 洗浄部
6 すすぎ部
8 コンテナ
9 天蓋(フード)
10 洗浄機
12 洗浄液貯留タンク
13 濾過液取り出し口
14 すすぎ液貯留タンク
16 フロート
18 給水管
19 蒸気用配管
20 排熱回収装置
9b 開口部
21 流体通路
22 フィルター
23 集熱板
24 ポンプ
25 戻し配管
26 ノズル
28 給水管
29 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上部が開口された略箱状の洗浄機本体2内に、搬送手段を介して順次搬送されてくる容器8に対し、加温された洗浄液による洗浄と、加温されたすすぎ液によるすすぎとを行い、さらに洗浄に使用された洗浄液と、すすぎに使用されたすすぎ液とを、洗浄機本体2の下方に配置されたタンク内に戻すようにした洗浄機10であって、洗浄機本体2の上部開口を覆うように天蓋9を設置するとともに、天蓋9に排熱回収装置20を設置し、箱状の洗浄機本体2内に充満する水蒸気を、排熱回収装置20に導入し、当該排熱回収装置20に導入された水蒸気から熱交換により回収した余剰熱量を供給水に蓄熱し、蓄熱され温水となった供給水を前記タンク内に戻すようにしたことを特徴とする洗浄機。

【図1】
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【公開番号】特開2012−86160(P2012−86160A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235623(P2010−235623)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(305034889)株式会社キサミツ技研 (5)
【Fターム(参考)】