説明

洗浄用ローラおよび洗浄装置

【課題】異物の除去効率の低下を防止することができる洗浄用ローラおよびこの洗浄用ローラを備えた洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄用ローラ1は、円柱状のロール体11と、このロール体11の外周面に設けられた複数の突起部12とを有する。各突起部12は、平面楕円形状である。複数の突起部12は、前記楕円の長軸が、ロール体11の中央部を通り、円柱状のロール体11の中心軸Bと直交する軸線Aに対し一方向に傾斜するとともに、千鳥状に配置された第一の突起部群13と、軸線Aに対し、前記一方向とは異なる他の一方向に沿って前記楕円の長軸が傾斜するとともに、千鳥状に配置された第二の突起部群14とで構成されている。第一の突起部群13の傾斜方向と、および第二の突起部群14の傾斜方向とは、軸線Aを挟んで対称である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用ローラおよび洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造工程では、半導体ウェハの表裏面に異物が付着することがある。例えば、半導体装置のCMP工程では、スラリーや、研磨くず、研磨パッドの粉等の異物が半導体ウェハの表面に付着することがある。
次の製造工程に異物を持ち込まないためには、半導体ウェハの表面を洗浄する必要がある。
従来の半導体ウェハの洗浄装置として、様々な装置が使用されている(特許文献1〜4)。
図4には、特許文献1に開示された洗浄装置900のローラ901を示す。
このローラ901は、円柱状ブラシ本体902と、この円柱状ブラシ本体902の外周面に螺旋状に形成された洗浄毛903を有する。洗浄毛903は、円柱状ブラシ本体902の外周面中央から端部に向かって螺旋状に形成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−150377号公報
【特許文献2】特開2000−246187号公報
【特許文献3】特開平10−34091号公報
【特許文献4】特開平11−347499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では以下のような課題がある。
特許文献1に記載されたローラ901では、洗浄毛903は、円柱状ブラシ本体902の外周面中央において、半導体ウェハW側に向かった角部903Aを有している。このような角部903Aは半導体ウェハWの洗浄を繰り返すうちに、つぶれてしまうことがある。これにより、半導体ウェハWの中央において異物の除去効率が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、円柱状のロール体と、このロール体の外周面に設けられた複数の突起部とを有する洗浄用ローラであって、前記突起部は、平面楕円形状であり、複数の前記突起部は、前記楕円の長軸が、前記ロール体の中央部を通り、前記円柱状のロール体の中心軸と直交する軸線に対し一方向に傾斜するとともに、千鳥状に配置された第一の突起部群と、前記軸線に対し、前記一方向とは異なる他の一方向に沿って前記楕円の長軸が傾斜するとともに、千鳥状に配置された第二の突起部群とで構成され、前記第一の突起部群の傾斜方向である前記一方向と、および第二の突起部群の傾斜方向である前記他の一方向とが、前記軸線を挟んで対称である洗浄用ローラが提供される。
【0006】
この発明の洗浄用ローラは、被洗浄物、例えば、半導体ウェハの表面に対し、ロール体の中心軸が半導体ウェハ表面と平行になるように配置される。
本発明の洗浄用ローラは、ロール体の中央部を通り円柱状のロール体の中心軸と直交する軸線に対し、楕円の長軸が一方向に傾斜する突起部を有する第一の突起部群と、前記軸線に対し前記一方向とは異なる他の一方向に沿って、前記楕円の長軸が傾斜する突起部を有する第二の突起部群とを有している。そして、第一の突起部群と、第二の突起部群とは前記軸線を挟んで対称に配置されている。
そのため、本発明の洗浄用ローラを用いて、半導体ウェハ表面を洗浄した際には、半導体ウェハ表面の異物は、第一の突起部群あるいは、第二の突起部群の突起部の傾斜に沿って半導体ウェハ中央部側から外周部側へと、移動することとなる。すなわち、第一の突起部群、第二の突起部群それぞれには、長軸の傾斜方向に沿った突起部の列間に、異物が移動するための通路が形成されることとなる。
【0007】
本発明では、洗浄用ローラの突起部の形状を平面楕円形状としており、角部を有しない形状としているため、半導体ウェハの洗浄による角部の劣化が発生しない。
これにより、異物の除去効率の低下を抑制することができる。
さらに、本発明では、第一の突起部群、第二の突起部群の突起部の配置を千鳥状としているため、異物が突起部間に留まってしまうことを防止できる。これにより、異物の除去効率を向上させることができる。
また、本発明では、ロール体の外周面に複数の突起部を点在させている。そのため、被洗浄物、例えば、半導体ウェハに反りが生じているような場合であっても、各突起部が反りに応じて、変形することが可能となる。これにより、被洗浄物を確実に洗浄することができる。
さらに、本発明によれば、上述した洗浄ロールを有する洗浄装置を提供することができる。すなわち、本発明によれば、半導体ウェハを回転駆動する回転駆動部と、回転駆動部により回転駆動される半導体ウェハの表面側、および裏面側に対向配置される一対の洗浄用ローラとを備えた洗浄装置であって、前記一対の洗浄用ローラは、前述した洗浄用ローラである洗浄装置が提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異物の除去効率の低下を防止することができる洗浄用ローラおよびこの洗浄用ローラを備えた洗浄装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
(第一実施形態)
まず、図1,2を参照して、本実施形態の洗浄装置2の洗浄用ローラ1の概要について説明する。
この洗浄用ローラ1は、円柱状のロール体11と、このロール体11の外周面に設けられた複数の突起部12とを有する。
各突起部12は、平面楕円形状である。
複数の突起部12は、前記楕円の長軸が、ロール体11の中央部を通り、円柱状のロール体11の中心軸Bと直交する軸線Aに対し一方向に傾斜するとともに、千鳥状に配置された第一の突起部群13と、
軸線Aに対し、前記一方向とは異なる他の一方向に沿って前記楕円の長軸が傾斜するとともに、千鳥状に配置された第二の突起部群14とで構成されている。
第一の突起部群13の傾斜方向である前記一方向と、第二の突起部群14の傾斜方向である前記他の一方向とは、前記軸線Aを挟んで対称である。
ここで、第一の突起部群13の突起部12の傾斜方向である一方向と、第二の突起部群14の突起部12の傾斜方向である他の一方向とが、円柱状のロール体11の中心軸Bと直交する軸線Aを挟んで対称であるとは、完全に対称であることのみならず、たとえば、軸線Aに対する第一の突起部群13の傾斜方向である一方向と、軸線Aに対する第二の突起部群14の傾斜方向である他の一方向との傾斜角度の差が15°以下であってもよい。
また、各突起部群13,14において、各突起部12の楕円の長軸の傾斜は10°程度ずれていてもよい。
【0010】
次に、洗浄装置2および洗浄用ローラ1の構造について詳細に説明する。
洗浄装置2は、被洗浄物となる半導体ウェハWの表裏面の洗浄を行うものであり、図1,2に示すように一対の洗浄用ローラ1と、半導体ウェハWを回転駆動する図示しない回転駆動部とを有するものである。一対の洗浄用ローラ1間に半導体ウェハWを挟み、半導体ウェハW、一対の洗浄用ローラ1を回転させて、半導体ウェハW表裏面を洗浄する。一対の洗浄用ローラ1は、互いに反対方向に回転している(図1矢印参照)。
半導体ウェハWを洗浄する際には、図示しないノズルから半導体ウェハW表裏面に洗浄液が供給される。例えば、半導体ウェハW中央部に洗浄液が供給される。
【0011】
洗浄用ローラ1は、前述したように、円柱状のロール体11を有する。
このロール体11は、内部が中空になっており、内部に図示しない回転軸が挿入される。
ロール体11の外周面には、複数の突起部12が所定の間隔を開けて設けられている。
【0012】
突起部12は、ロール体11の外周面から、ロール体11の中心軸Bに対し垂直に突出している。突起部12は、弾性を有する多孔質体で構成されており、たとえば、ポリビニルアセタール系の多孔質体(いわゆるスポンジ)で構成されている。突起部12を、弾性を有する多孔質体で構成することで、突起部12を弾性変形させて、半導体ウェハWの表裏面に追従させ、半導体ウェハWの異物を除去することができる。
突起部12は、楕円柱であり、中心軸Bに対し直交する方向から見た際に、平面楕円形状であり、角部を有しない平面形状となっている。突起部12の楕円の長軸の長さは、楕円の短軸の長さの2倍以下、たとえば、1.5倍である。
ロール体11の外周面に対する突起部12の割合は、20%以上、95%以下である。突起部12の割合を20%以上とすることで、異物を確実に除去することができる。また、突起部12の割合を95%以下とすることで、異物の移動効率を高めることができる。
突起部12の高さ寸法は、例えば、1.0mm以上、4.0mm以下、突起部12の短軸の長さは、2.0mm以上、6.0mm以下、長軸の長さ寸法は、3.0mm以上、8.0mm以下であることが好ましい。
【0013】
このような複数の突起部12は、楕円の長軸が、軸線Aに対し一方向に傾斜する第一の突起部群13と、軸線Aに対し、前記一方向とは異なる他の一方向に沿って前記楕円の長軸が傾斜する第二の突起部群14とで構成されている。
ここで、理解を容易にするために、第一の突起部群13の突起部12を、突起部12Aと表示し、第二の突起部群14の突起部12を突起部12Bと表示する。
第一の突起部群13の突起部12Aの傾斜方向と、第二の突起部群14の突起部12Bの傾斜方向とは、軸線Aを挟んで対称である。
ここで、第一の突起部群13は、図2上側の洗浄用ローラ1では、軸線Aの左側にあり、図2下側の洗浄用ローラ1では、軸線Aの右側に配置されている。第二の突起部群14は、図2上側の洗浄用ローラ1では、軸線Aの右側にあり、図2下側の洗浄用ローラ1では、軸線Aの左側に配置されている。すなわち、一対の洗浄用ローラ1の突起部12は、傾斜方向が、半導体ウェハWを挟んで対称になるように配置されている。
また、第一の突起部群13、第二の突起部群14それぞれにおいて、突起部12A,12Bは千鳥状に配置されている。また、第一の突起部群13の突起部12Aの楕円の長軸、第二の突起部群14の突起部12Bの楕円の長軸は、軸線Aに対し10°以上、45°以下の傾斜を有する。
【0014】
ロール体11の中央部では第一の突起部群13の突起部12Aと、第二の突起部群14の突起部12Bとが隣接して配置されている。そして、隣接する第一の突起部群13の突起部12Aと、第二の突起部群14の突起部12Bとの間の領域に隣接して、第一の突起部群13の突起部12Aまたは、第二の突起部群14の突起部12Bが配置されている。
【0015】
第一の突起部群13では、突起部12Aが千鳥状に配置されているので、一つの突起部12Aの周囲に六角形を描くように6つの突起部12Aが隣接して配置される。そして、一つの突起部12Aを中心にして、最小の六角形(本実施形態では正六角形)を構成するようにして隣接する突起部12Aの平面中心を結んで構成される三本の配列軸C1,C2,C3のうち、2本の配列軸C1,C2は、それぞれ、ロール体11の中心軸Bに対し傾斜して配置されている。
ここで、本実施形態では、配列軸C1は、突起部12Aの長軸に沿った配列軸であり、配列軸C2は、突起部12Aの短軸に沿った配列軸である。すなわち、本実施形態では、突起部12Aの楕円の長軸の傾斜と、配列軸の傾斜とが一致している。
一方、配列軸C1,C2に交差する配列軸C3は、ロール体11の中心軸Bと略平行となっている。
なお、隣接する突起部12Aを結んだ配列軸C4は、中心軸Bに対し交差している。
【0016】
第二の突起部群14においても、第一の突起部群13と同様に、一つの突起部12Bの周囲には、六角形を描くように6つの突起部12Bが隣接して配置される。そして、配列軸C1,C2は、ロール体の中心軸Bに対し傾斜している。また、配列軸C1,C2に交差する配列軸C3は、ロール体11の中心軸Bと略平行となっている。
【0017】
次に、このような洗浄用ローラ1を用いた洗浄について説明する。
半導体ウェハWを回転駆動部により回転駆動するとともに、一対の洗浄用ローラ1を回転する。一対の洗浄用ローラ1の回転方向は、互いに異なる方向であり、図2の洗浄装置を図2右側から見た場合、図2上側の洗浄用ローラ1は、反時計回りに回転し、図2下側の洗浄用ローラ1は時計回りに回転する。なお、半導体ウェハW表裏面には、洗浄液、水等の液体を供給する。
半導体ウェハWの中心部を除く領域に付着した異物は、洗浄用ローラ1の突起部12に接触する。半導体ウェハWの回転および洗浄用ローラ1の回転により、前記異物は突起部12の傾斜に従って、半導体ウェハW中央部から半導体ウェハW外周部へと掃き出される。
一方、半導体ウェハWの中心部付近に付着した異物は、洗浄用ローラ1の中央部の第一の突起部群13の突起部12Aあるいは、第二の突起部群14の突起部12Bにより、半導体ウェハW中心部から外周部側に移動される。そして、突起部12(12A,12B)の傾斜した配列に従って、半導体ウェハW外周部へと掃き出される。
【0018】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
洗浄用ローラ1は、ロール体11の軸線Aに対し、楕円の長軸が一方向に傾斜する突起部12Aを有する第一の突起部群13と、軸線Aに対し、前記一方向とは異なる他の一方向に沿って、前記楕円の長軸が傾斜する突起部12Bを有する第二の突起部群14とを有している。そして、第一の突起部群13と、第二の突起部群14とは軸線Aを挟んで対称に配置されている。
そのため、この洗浄用ローラ1を用いて、回転する半導体ウェハW表面を洗浄した際には、半導体ウェハW表面の異物は、第一の突起部群13あるいは、第二の突起部群14の傾斜に沿って半導体ウェハWの中心部から外周部側へと、移動することとなる。すなわち、第一の突起部群13、第二の突起部群14それぞれには、長軸の傾斜方向に沿った突起部12A,12Bの列間に、異物が移動するための通路が形成されることとなる。
これにより、半導体ウェハW上の異物の除去を確実に行うことができる。
なお、一方向に傾斜した突起部のみをロール体の外周部に設けた場合には、半導体ウェハW外周部から半導体ウェハW中心部に向かって異物が移動してしまうことがある。
これに対し、本実施形態では、軸線Aを挟んで対称に傾斜する第一の突起部群13と、第二の突起部群14とをロール体11の外周面に設けているので、半導体ウェハW外周部から半導体ウェハW中心部に向かって異物が移動してしまうことを防止できる。
【0019】
また、本実施形態では、ロール体11の中央部では、第一の突起部群13の突起部12Aと、第二の突起部群14の突起部12Bとが隣接して配置され、隣接する前記第一の突起部群13の突起部12Aと、第二の突起部群14の突起部12Bとの間の領域に隣接して、前記第一の突起部群13の突起部12Aまたは、前記第二の突起部群14の突起部12Bが配置されている。これにより、半導体ウェハWの中心部に付着した異物は、第一の突起部群13の突起部12Aあるいは、第二の突起部群14の突起部12Bの少なくともいずれかに接触し、第一の突起部群13側、第二の突起部群14側に移動することとなる。
これにより、半導体ウェハW中心部の異物の除去も確実に行うことができる。
【0020】
さらに、本実施形態では、洗浄用ローラ1の突起部12を平面楕円形状としており、角部を有しない形状としている。そのため、半導体ウェハWの洗浄による角部の劣化が発生しない。
これにより、異物の除去効率の低下を抑制することができる。
【0021】
また、突起部12を平面楕円形状とし、傾斜して配置することで、円形形状とする場合に比べ、洗浄用ローラ1回転方向(ロール体11の軸線A方向)に沿ったロール体11との接触面積を大きくすることができる。これにより、洗浄用ローラ1回転方向から突起部12に作用する力に対する強度を高めることができる。
さらに、突起部12の長軸の長さを短軸の長さの2倍以下とすることで、洗浄用ローラ1回転方向から作用する力、洗浄用ローラ1回転方向に直交する方向から作用する力に対する強度のバランスを保つことができる。
以上により、突起部12のロール体11からの脱落を防止することができる。
【0022】
第一の突起部群13の突起部12A、第二の突起部群14の突起部12Bの配置を千鳥状としているため、異物が突起部12A間、突起部12B間に留まってしまうことを防止できる。これにより、異物の除去効率を向上させることができる。
【0023】
さらに、本実施形態では、ロール体11の外周面に複数の突起部12を点在させている。そのため、被洗浄物、例えば、半導体ウェハWに反りが生じているような場合であっても、各突起部12が反りに応じて弾性変形する。これにより、半導体ウェハWを確実に洗浄することができる。
また、複数の突起部12をロール体11の外周面に点在させることで、半導体ウェハWに供給される洗浄液の水はけをよくすることができる。
【0024】
さらに、突起部12の楕円の長軸は、軸線Aに対し10°以上の傾斜を有する。これにより、半導体ウェハW上の異物を効率よく、半導体ウェハ外周部に移動させることができる。
また、突起部12の楕円の長軸は、軸線Aに対し45°以下の傾斜を有する。これにより、洗浄用ローラ1回転方向に直交する方向から作用する力により、突起部12が脱落してしまうことを防止できる。
【0025】
(第二実施形態)
図3を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。
前記実施形態では、第一の突起部群13,第二の突起部群14の突起部12の配列軸C1,C2,C3、C4のうち、配列軸C3は、洗浄用ローラ1のロール体11の中心軸Bと略平行となっていた。
これに対し、本実施形態の洗浄用ローラ3では、配列軸C3は、ロール体11の中心軸Bに対し傾斜しており、中心軸Bに交差している。他の点は、前記実施形態と同様である。
配列軸C1と、ロール体11の中心軸Bとがなす角度のうち、小さい方の角度をθ1、配列軸C2と、ロール体11の中心軸Bとがなす角度のうち、小さい方の角度をθ2、配列軸C3と、ロール体11の中心軸Bとがなす角度のうち、小さい方の角度をθ3とした場合、θ1〜θ3のうち、最も小さい角度は、5°以上、30°以下である。また、θ1〜θ3のうち、最も小さい角度は、5°以上であり、また、20°以下であることが好ましい。さらには、θ1〜θ3のうち、最も小さい角度は、10°以上、15°以下であることが特に好ましい。
なお、本実施形態では、θ1〜θ3のうち、最も小さい角度はθ3である。
【0026】
このような本実施形態によれば、前記実施形態と同様の効果を奏することができるうえ、以下の効果を奏することができる。
前記実施形態の洗浄用ローラ1では、配列軸C3がロール体11の中心軸Bと平行であるため、配列軸C3に沿って配置された複数の突起部12がロール体11の回転に伴い一度に半導体ウェハWから離れることとなる。
半導体ウェハWから複数の突起部12が離れる瞬間に、半導体ウェハWと洗浄用ローラ1との間で発生する静電気量が大きくなる。
ここで、メタルの埋め込みを行った半導体ウェハWを洗浄する際には、洗浄中の静電気によりメタルの溶解、析出といった欠陥が発生することがある。
これに対し、本実施形態では、ロール体11の中心軸Bに対し、突起部12の配列軸C1〜C3が傾斜しているため、前記実施形態の洗浄用ローラ1に比べ、一度に多数の突起部12が半導体ウェハW表面から離れることがない。特に、θ1〜θ3のうち、最も小さい角度であるθ3が5°以上となっているので、一度に多数の突起部12が半導体ウェハW表面から離れることを確実に防止できる。これにより、半導体ウェハWと洗浄用ローラ1との間で発生する静電気量を小さく抑えることができる。従って、メタルの溶解、析出といった欠陥の発生を抑制することができる。
【0027】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、洗浄装置の一対の洗浄用ローラ1の回転方向を互いに異なる方向としたが、これに限らず、一対の洗浄用ローラの回転方向を同じ方向としてもよい。この場合には、一対の洗浄用ローラの第一の突起部群同士、第二の突起部群同士は、半導体ウェハWを挟んで対向することとなる。
さらに、前記各実施形態では、ロール体11の外周面に対する突起部12の割合は、20%以上、95%以下であるとしたが、これに限られるものではない。ロール体11の外周面に対する突起部12の割合は20%未満であってもよく、また、95%を超えるものであってもよい。
【0028】
また、前記各実施形態では、突起部12の楕円の長軸の長さは、楕円の短軸の長さの2倍以下であるとしたが、これに限られるものではない。
また、突起部12の楕円の長軸は、軸線Aに対し10°以上、45°以下であるとしたが、これに限られるものではない。
さらに、前記各実施形態では、洗浄装置2において、半導体ウェハWを洗浄する際には、図示しないノズルから半導体ウェハWに対し洗浄液が供給されるとしたが、これに限らず、たとえば、各洗浄用ローラから洗浄液が半導体ウェハに対し供給される構成としてもよい。
また、前記各実施形態では、突起部12の長軸の傾斜方向と、突起部12の配列軸のうち、一つの配列軸C1とが一致していたが、これに限らず、突起部12の長軸の傾斜方向と突起部12の配列軸とが一致していなくてもよい。
ただし、前記各実施形態のように、突起部12の長軸の傾斜方向と、突起部12の配列軸C1とを一致させれば、より効率的に異物を除去することができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
第一実施形態と略同様の洗浄用ローラを製造した。
突起部は、PVAt系多孔質体で構成した。突起部の高さ寸法は、3.0mm、短軸の長さ寸法は、4.0mm、長軸の長さ寸法は、7.0mmとした。ロール体の径は、50mmである。突起部の楕円の長軸は、円柱状のロール体の中心軸に直交する軸線に対し45°傾斜している。
また、突起部の配列軸C1,C2,C3のロール体の中心軸に対する傾斜角度θ1,θ2,θ3は、60°、60°、0°である。
【0030】
(実施例2)
第二実施形態と同様の洗浄用ローラを製造した。配列軸C1,C2,C3のロール体の中心軸に対する傾斜角度θ1,θ2,θ3はそれぞれ55°、40°、10°である。その他の点は、実施例1と同じである。
【0031】
(比較例1)
図4に示した従来の洗浄用ローラを製造した。突起部は、高分子繊維からなる洗浄毛で構成した。他の点は、実施例1と同じである。
【0032】
(比較例2)
突起部の形状を円柱形状とした。突起部の径は6.0mmである。他の点は、実施例1と同じである。
【0033】
(比較例3)
突起部の形状を特許文献3と同様に長円形状とした。そして、突起部を一方向のみに沿って傾斜するように、ロール体の外周面に傾斜して配置した。
【0034】
(評価)
実施例1,2、比較例1,2,3で製造した洗浄用ローラを用いて、半導体ウェハの洗浄を行った。
洗浄装置では、一対の洗浄用ローラを第一実施形態と同様に対向配置させ、一対の洗浄用ローラの回転方向を異なるものとした。
各実施例、比較例の洗浄用ローラを用いて、半導体ウェハを15000枚洗浄したところ、比較例1では、洗浄効率の低下が確認された。また、比較例2では、突起部の脱落が観察され、半導体ウェハの洗浄効率の低下が確認された。比較例3では、半導体ウェハ上に異物が多く残存してしまった。
これに対し、実施例1,2では、半導体ウェハ上の異物が確実に除去されるとともに、洗浄効率が低下することがなかった。
これに加え、実施例2では、メタルの溶解、析出といった欠陥の発生を確実に抑制することができた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる洗浄装置を示す模式図である。
【図2】洗浄装置の正面図である。
【図3】本発明の第二実施形態にかかる洗浄装置の正面図である。
【図4】従来の洗浄装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 洗浄用ローラ
2 洗浄装置
3 洗浄用ローラ
11 ロール体
12 突起部
12A 突起部
12B 突起部
13 第一の突起部群
14 第二の突起部群
900 洗浄装置
901 ローラ
902 円柱状ブラシ本体
903 洗浄毛
903A 角部
A 軸線
B 中心軸
C1,C2,C3,C4 配列軸
W 半導体ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のロール体と、
このロール体の外周面に設けられた複数の突起部とを有する洗浄用ローラであって、
前記突起部は、平面楕円形状であり、
複数の前記突起部は、
前記楕円の長軸が、前記ロール体の中央部を通り、前記円柱状のロール体の中心軸と直交する軸線に対し一方向に傾斜するとともに、千鳥状に配置された第一の突起部群と、
前記軸線に対し、前記一方向とは異なる他の一方向に沿って前記楕円の長軸が傾斜するとともに、千鳥状に配置された第二の突起部群とで構成され、
前記第一の突起部群の傾斜方向である前記一方向と、および前記第二の突起部群の傾斜方向である前記他の一方向とが、前記軸線を挟んで対称である洗浄用ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄用ローラにおいて、
前記ロール体の中央部では、前記第一の突起部群の突起部と、前記第二の突起部群の突起部とが隣接して配置され、
隣接する前記第一の突起部群の突起部と、前記第二の突起部群の突起部との間の領域に隣接して、前記第一の突起部群の突起部または、前記第二の突起部群の突起部が配置されている洗浄用ローラ。
【請求項3】
請求項2に記載の洗浄用ローラにおいて、
前記第一の突起部群の隣接する突起部を結んで構成される配列軸および前記第二の突起部群の隣接する突起部を結んで構成される配列軸は、前記ロール体の中心軸に対し交差する洗浄用ローラ。
【請求項4】
請求項3に記載の洗浄用ローラにおいて、
前記配列軸のうち、前記ロール体の中心軸に対する角度が最も小さい配列軸の前記ロール体の中心軸に対する角度が、5°以上である洗浄用ローラ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の洗浄用ローラにおいて、
前記突起部の楕円の長軸の長さは、楕円の短軸の長さの2倍以下である洗浄用ローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の洗浄用ローラにおいて、
前記突起部の楕円の長軸は、前記軸線に対し10°以上、45°以下の傾斜を有する洗浄用ローラ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の洗浄用ローラにおいて、
前記突起部は、弾性を有する多孔質体である洗浄用ローラ。
【請求項8】
半導体ウェハを回転駆動する回転駆動部と、
前記回転駆動部により回転駆動される前記半導体ウェハの表面側、および裏面側に対向配置される一対の洗浄用ローラとを備えた洗浄装置であって、
前記一対の洗浄用ローラは、請求項1乃至7のいずれかに記載の洗浄用ローラである洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−66527(P2009−66527A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237795(P2007−237795)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】