説明

洗浄装置及び洗浄方法

【課題】微細な回路が形成されたテープ状物やスペーサテープに付着した異物を洗浄除去するために好適に用いられる洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】被洗浄体の移動経路上で被洗浄体を洗浄する洗浄装置であって、被洗浄体を移動させる被洗浄体搬送手段、先端に設けた水供給ノズルから水を噴出して被洗浄体の表面に水膜を形成させる水供給手段、及び、先端に設けた過熱水蒸気供給ノズルから水膜の温度よりも高い温度の過熱水蒸気を噴出して水膜に当てる加熱水蒸気供給手段を備える洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置及び洗浄装置に関し、特に微細な回路が形成されたテープ状物やスペーサテープに付着した異物を洗浄除去するために好適に用いられる洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示装置やプラズマ表示装置に使用されるCOFテープ(chip on film テープ)は高精細化が進行し、付着異物が歩留まりに大きく影響するために、付着異物を洗浄除去する必要が増大している。そのため、洗浄方法としては、ドライ方式の高圧ブローを行い、付着異物を吸引する装置が使用されている。
【0003】
また、ウエット方式の洗浄装置については、特許文献1に、クリーニング液を微粒化して吹き付ける方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−109112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ドライ方式のものは、圧縮空気を付着異物に当てて、吹き飛ばすものであり、洗浄性が十分とは言い難い。
ウエット方式のものは、ドライ方式よりは洗浄性が向上するが、付着異物が粘着性有機異物であると、十分に除去することができない。
【0005】
本発明は、除去することが困難であった、粘着性有機異物を効果的に除去することが可能な洗浄装置を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のものに関する。
(1)被洗浄体の移動経路上で被洗浄体を洗浄する洗浄装置であって、
被洗浄体を移動させる被洗浄体搬送手段、
先端に設けた水供給ノズルから水を噴出して被洗浄体の表面に水膜を形成させる水供給手段、及び、
先端に設けた過熱水蒸気供給ノズルから水膜の温度よりも高い温度の過熱水蒸気を噴出して水膜に当てる加熱水蒸気供給手段
を備えることを特徴とする洗浄装置。
【0007】
(2)水供給手段が、水膜の厚みを5〜1000μmに調整する水量調整機器を備えるものである項(1)に記載の洗浄装置。
(3)水膜の温度と過熱水蒸気との温度差が、100℃以上である項(1)又は(2)に記載の洗浄装置。
【0008】
(4)水供給手段が、加圧水を供給する加圧水供給部及び圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給部と、供給された加圧水と圧縮エアーを混合して噴出させる水供給ノズルとを有し、過熱水蒸気供給手段が、過熱水蒸気を製造して供給する過熱水蒸気製造機構部と、供給された過熱水蒸気を噴出させる過熱水蒸気ノズルとを有するものである項(1)〜(3)いずれかに記載の洗浄装置。
【0009】
(5)被洗浄体が長尺のテープ状物であり、被洗浄体搬送手段が、長尺のテープ状物である被洗浄体を被洗浄体の長手方向に移動させるものであり、過熱水蒸気供給手段が、過熱水蒸気を製造して供給する過熱水蒸気製造機構部と、供給された過熱水蒸気を噴出させる過熱水蒸気ノズルとを有し、過熱水蒸気ノズルがスリット状の噴出口を有するスリット状ノズルである項(1)〜(4)いずれかに記載の洗浄装置。
【0010】
(6)過熱水蒸気を当てられた水膜を有する被洗浄体に洗浄水を吹き付ける洗浄水供給手段、及び、
洗浄水を吹き付けられた基板を乾燥する乾燥手段
を更に有する項(1)〜(5)いずれかに記載の洗浄装置。
【0011】
(7)洗浄水供給手段が、加圧洗浄水を供給する加圧洗浄水供給部及び圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給部と、供給された加圧洗浄水と圧縮エアーを混合して噴出させる洗浄用噴霧ノズルとを有するものであり、乾燥手段が、洗浄水を吹き付けられた基板に気体を吹き付けるエアナイフと、気体吹き付け後に基板に熱風を吹き付ける熱風エアナイフを有するものである項(5)に記載の洗浄装置。
【0012】
(8)水供給ノズルから水を噴出して被洗浄体の表面に水膜を形成させ、次いで、過熱水蒸気供給ノズルから水膜の温度よりも高い温度の過熱水蒸気を噴出して水膜に当てることを特徴とする洗浄方法。
【0013】
(9)被洗浄体表面に形成される水膜の厚みが5〜1000μmである項(8)に記載の洗浄方法。
(10)水膜の温度と過熱水蒸気との温度差が、100℃以上である項(8)又は(9)に記載の洗浄方法。
【0014】
(11)被洗浄体表面の水膜に過熱水蒸気を当てた後、被洗浄体に洗浄水を吹き付け、次いで乾燥する項(8)〜(9)いずれかに記載の洗浄方法。
(12)被洗浄体が長尺のテープ状物であり、長尺のテープ状物である被洗浄体を被洗浄体の長手方向に移動させる移動経路上で洗浄を行う項(8)〜(11)いずれかに記載の洗浄方法。
【0015】
(13)洗浄水を吹き付けられた基板に気体を吹き付け、次いで熱風を吹き付けることにより乾燥を行う項(11)に記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、過熱水蒸気を用いることにより、粘着性有機異物を効率的に除去することが可能であり、水膜が形成されていることから、一旦除去した粘着性有機異物が、再付着することを阻止することができる。
水膜の厚みが5〜1000μmである場合は、一旦除去した粘着性有機異物が再付着しないことは勿論、過熱水蒸気を粘着性有機異物に当てやすくなる。水膜の厚みが5μm未満であると、徐々に粘着性有機異物が再付着しやすくなり、1000μmを超えると、過熱水蒸気の圧力を高めて被洗浄体に当てる必要が強まる。
水膜の温度と過熱水蒸気との温度差が、100℃以上である場合は、この温度差により、より一層除去性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で洗浄する被洗浄体は、加熱水蒸気及び水により損傷をうけないものであれば、材質、形状等に特に制限はなく、塊状物、板状物、シート状物、テープ状物等を洗浄することができる。特に好適なものは長尺のテープ状物であり、例えば、長尺のテープ状物を移動させつつ連続的に洗浄することにより、洗浄を効率的に行うことができる。長尺のテープ状物としては、スペーサテープ、表面に微細な回路が形成されたテープ状物、例えばCOFテープ(chip on film tape)、TABテープ(tape automated bonding tape)等が挙げられる。TABテープ、COFテープ等のテープ状物は、可撓性のあるプラスチックフィルム、例えばポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の片面又は両面に、銅、錫等の導体からなる微細な回路が、テープの長手方向に所定の間隔で複数形成されており、厚みは通常25〜90μm、幅は通常35〜105ミリである。テープ状物の両側縁部には、複数のスプロケットホールが一定間隔で設けられていてもよい。スペーサテープとしては、例えば、可撓性のあるプラスチックフィルム、例えばポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられ、厚みは通常50〜100μmである。
【0018】
被洗浄体を移動させる被洗浄体搬送手段は、洗浄を効率的に行うためには、被洗浄体が塊状物、板状物、枚葉化されたシート状物である場合には、複数の被洗浄体を連続して移動させるものが好ましい。例えば、並列配列した回転する複数対のローラー間で移動させて搬送するロール搬送、コンベアベルト又は並列配列した回転する複数のローラー上で移動させて搬送するコンベア搬送などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
被洗浄体が長尺のテープ状物である場合には、テープ状物をその長手方向に連続的に移動させる被洗浄体搬送手段であることが好ましく、例えば、ロール状に巻回されたテープ状物をその長手方向に繰り出す繰出しリール等の繰出し部と、洗浄後のテープ状物を巻き取る巻取りリール等の巻取り部を有するものが好適である。繰出し部と巻取り部のみを用いてその間の移動経路上で洗浄を行ってもよいし、必要に応じて繰出し部と巻取り部との間に1又は2個以上のガイドローラーを配置してテープ状物の移動方向を変化させ、繰出し部とガイドローラーとの間、又は巻取り部とガイドローラーとの間、又は2個のガイドローラーの間の移動経路上で洗浄を行ってもよい。テープ状物としてその長さ方向に一定間隔で設けられた複数のスプロケットホールを有するものを用い、ガイドローラーとしてスプロケットを用いてもよい。
【0020】
また、繰出し部と移動経路上の洗浄を行う部分(以下、クリーニング機構部という。)との間に、回路形成工程等を行う前工程部を設けてもよいし、また、クリーニング機構部と巻取り部との間に、半導体チップ搭載工程等の後工程部を設けてもよい。
【0021】
被洗浄体の表面に水膜を形成させる水供給手段としては、先端に設けた水供給ノズルから水を噴出するものが用いられ、先端の水供給ノズルの吐出口から水を噴出させる機能を有するものであれば特に制限はない。例えば、水供給ノズルとして二流体ノズルを用い、水供給ノズルに加圧水を供給する加圧水供給部及び圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給部と、供給された加圧水と圧縮エアーを混合して噴出させる水供給ノズルとを有するものを用いることができる。加圧水の圧力は、通常、0.2〜0.6MPaであることが好ましく、0.3〜0.5MPaであることがより好ましい。圧縮エアーのエアー圧は、通常、0.2〜0.6MPaであることが好ましく、0.3〜0.5MPaであることがより好ましい。水供給ノズルの吐出口と被洗浄体との距離は、通常、20〜50mmとすることが好ましく、30〜40mmとすることがより好ましい。
【0022】
水膜の厚みは5〜1000μmであることが好ましく、100〜900μmであることがより好ましい。水膜の厚みのこのような微調整を可能にするためには、水供給手段は水供給圧力を調整できる圧力調整器等の水量調整機器を備えていることが好ましい。
【0023】
水膜形成に用いられる水としては、純水、アルカリ電解水等が挙げられる。
【0024】
過熱水蒸気を水膜に当てる過熱水蒸気供給手段としては、先端に設けた過熱水蒸気供給ノズルから水膜の温度よりも高い温度の過熱水蒸気を噴出するものが用いられ、先端の水蒸気供給ノズルの吐出口から過熱水蒸気を噴出させる機能を有するものであれば特に制限はない。例えば、過熱水蒸気を製造して過熱水蒸気ノズルに供給する過熱水蒸気製造機構部と、供給された過熱水蒸気を噴出させる吐出口を有する過熱水蒸気ノズルとを有するものを用いることができる。過熱水蒸気製造機構部としては、過熱水蒸気を製造しうる構成のものであれば特に制限はなく、例えば、電磁誘導過熱方式のボイラー装置で水蒸気を生成し、生成した水蒸気を電磁誘導過熱方式で更に過熱して過熱水蒸気を精製することのできる部品で構成されたもの等が挙げられる。過熱水蒸気の圧力は、通常、0.1〜0.3MPaであることが好ましく、0.15〜0.2MPaであることがより好ましい。過熱水蒸気ノズルの吐出口と被洗浄体との距離は、通常、5〜30mmとすることが好ましく、10〜20mmとすることがより好ましい。
【0025】
水膜の温度と過熱水蒸気との温度差は、100℃以上であることが好ましく、200〜350℃であることがより好ましい。なお、本発明において、水膜の温度とは、水供給ノズルに供給される加圧水の温度を意味し、過熱水蒸気の温度とは、過熱水蒸気ノズルに供給される過熱水蒸気の温度を意味する。水膜の温度は、特に制限はないが、通常、10〜30℃が好ましく、15〜20℃がより好ましい。10℃未満であると、配管に結露するおそれがあり、結露防止用カバー等が必要となりコスト高となる傾向があり、30℃を超えると、過熱水蒸気温度を高く設定することが必要となり、ランニングコスト高となる傾向がある。
【0026】
過熱水蒸気ノズルとしては、スリット状の吐出口を有するスリット状ノズルを用いることが好ましい。例えば、スリット状ノズルを、スリット状の吐出口を、被洗浄体の移動方向に対して垂直、かつ、被洗浄体の表面に平行に配置することにより、被洗浄体の被洗浄表面に均一に過熱水蒸気を当てることができる。吐出口の幅は、通常、0.5〜5mmであることが好ましく、2〜3mmであることがより好ましく、吐出口の長さは被洗浄体が吐出口に対向する面の幅と同一、又は+10mm程度とすることが好ましい。吐出口と被洗浄体との間隔は5〜30mmとすることが好ましく、10〜20mmとすることがより好ましい。
【0027】
被洗浄体に付着していた異物は、過熱水蒸気による加熱によって被洗浄体から剥がれて水膜中に浮遊するが、本発明の洗浄装置及び洗浄方法においては、被洗浄体上に残留する水膜及び浮遊する異物の除去方法は、特に制限するものではない。例えば、クリーニング機構部に、更に、過熱水蒸気を当てられた水膜を有する被洗浄体に洗浄水を吹き付ける洗浄水供給手段、及び、洗浄水を吹き付けられた基板を乾燥する乾燥手段を設けることによって、効率的かつ効果的に除去することができる。
【0028】
洗浄水供給手段としては、例えば、先端に設けた洗浄用噴霧ノズルから洗浄水を噴出するものが用いらる。例えば、洗浄用噴霧ノズルとして二流体ノズルを用い、洗浄用噴霧ノズルに加圧洗浄水を供給する加圧洗浄水供給部及び圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給部と、供給された加圧洗浄水と圧縮エアーを混合して噴出させる洗浄用噴霧ノズルとを有するものを用いることができる。加圧洗浄水の圧力は、通常、0.2〜0.6MPaであることが好ましく、0.3〜0.5MPaであることがより好ましい。圧縮エアーのエアー圧は、通常、0.2〜0.6MPaであることが好ましく、0.3〜0.5MPaであることがより好ましい。洗浄用噴霧ノズルの吐出口と被洗浄体との距離は、通常、20〜50mmとすることが好ましく、30〜40mmとすることがより好ましい。
【0029】
洗浄水としては、純水、アルカリ電解水等を用いることができる。洗浄水の温度は、特に制限はなく、通常、10〜30℃とすることが好ましく、15〜25℃とすることがより好ましい。
【0030】
尚、前述の洗浄水ノズル、過熱水蒸気ノズル、洗浄用噴霧ノズルは、各々、1つのみ設けられていてもよく、また、被洗浄体の形状や大きさ、洗浄を必要とする表面の状態等に応じ、各々、2つ以上設けられていてもよい。
【0031】
乾燥手段としては、例えば、洗浄水を吹き付けられた基板に気体を吹き付けるエアナイフと、気体吹き付け後に基板に熱風を吹き付ける熱風エアナイフとを、又は、そのいずれか一方を設けることが好ましい。エアナイフに用いる気体、熱風エアナイフに用いる気体としては、空気、窒素ガス等が挙げられる。熱風の温度は、40〜120℃とすることが好ましく、60〜90℃とすることがより好ましい。
【0032】
尚、前述のエアナイフ、熱風エアナイフは、各々、1つのみ設けられていてもよく、また、被洗浄体の形状や大きさ、乾燥を必要とする表面の状態等に応じ、各々、2つ以上設けられていてもよい。
【0033】
シート状物、テープ状物の被洗浄体を洗浄する際には、被洗浄体にテンションをかけることが好ましい。テンションをかけることにより、洗浄時の水、過熱水蒸気、洗浄水、気体の噴きつけによる被洗浄体のぶれを防止する効果がある。テンションの程度は、重しリールを用いる場合には、重しリールの重量として200〜600gとすることが好ましく、300〜400gとすることがより好ましい。
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の洗浄装置を示す概略構成図である。被洗浄体である長尺テープ6は、繰出リール1から繰り出され、ガイドローラ3aと3bとの間に配置された重しローラ2により張力を付加されて、クリーニング機構部4へと入る。クリーニング機構部4内では、ガイドローラ3cと3dとの間で上方に向かって移動する。洗浄を終えた長尺テープ6は、ガイドローラ3eを経て巻取リール5により巻き取られる。
尚、図中のガイドローラ3a〜3eは、長尺テープ6のガイド及び進行方向を変化させる際に用いている。
【0035】
図2は、図1に示すクリーニング機構部4の内部機構図である。
長尺テープ6は、クリーニング機構部4の下方から内部に入り、ガイドローラ3cによって進行方向を上方に変え、機構部内を上昇して、ガイドローラ3dによって進行方向を巻取りリール5に変えられ、クリーニング機構部4上方から外部に出している。
【0036】
長尺テープ6は、その両面に対向するように配置された一対の水供給ノズル13から水を吹きかけられるが、水供給ノズル13には流量制御機器(図示せず)が組み込まれ、長尺テープ6の表面に形成される水膜の厚みを5〜1000μmの間で調整可能にしてある。両面に水膜を形成した長尺テープ6は、温度制御機器を付設したスリット状過熱水蒸気ノズル12から、過熱水蒸気を当てられる。スリット状過熱水蒸気ノズル12も、長尺テープ6の両面に対向するように、1対配置されている。その後、長尺テープ6は、その両面に対向するように配置された一対の洗浄用噴霧ノズル7から水を当てられ、過熱水蒸気にてテープから剥がされた粘着性有機異物を、洗い流される。
尚、水膜形成を行う水供給ノズル13は、洗浄用噴霧ノズル7からの水が、垂れさがる等して水膜形成を行うことができれば、省略することもできる。
【0037】
洗浄用噴霧ノズル7により洗浄された長尺テープ6は、その両面に対向するように配置された一対の水切りエアーナイフ8により水切り処理された後に、更にその両面に対向するように配置された一対の熱風エアーナイフ9により乾燥させられる。
水切りエアーナイフ8は、水切り効率を上げるため、長尺テープ6に対して10mm程度まで接近させるが、そのままエアーを当てると長尺テープ6がばたつくので、水切りエアーナイフ配置位置に対する移動方向の前後において、各々が隣接する1対のローラーからなる2組の押さえローラ11により長尺テープ6を押さえこんでいる。
【0038】
図1,2に示す実施態様では、クリーニング機構部4は上部及び下部にそれぞれ排気口10を設けた筐体Aでカバーされているが、筐体Aは必須ではない。クリーニング機構部4を筐体Aでカバーすることにより、噴霧された水、過熱水蒸気、洗浄水、気体の拡散を防ぐことができる。また、筐体Aは、水供給手段の水供給ノズル13、過熱水蒸気供給手段のスリット状過熱水蒸気ノズル12及び洗浄水供給手段の洗浄用噴霧ノズル7が配置された部分、水切りエアーナイフ8及び押さえローラ11が配置された部分、熱風エアーナイフ9が配置された部分で区分けされているが、区分けは必須ではない。区分けすることにより、各部分で噴霧された液体の微粒や熱風が他の部分に拡散することを防ぐことができ、効率上好ましい。
尚、排気口10は、必要に応じて設置することができ、複数箇所に設けることもできる。排気口10から排気ダクト(図示せず)を経て排気ファン(図示せず)によって廃棄することにより、筐体A内の液体の微粒や気体を周囲に拡散させることなく、効率的に排出することができる。
【0039】
図1、2に示す実施態様では、クリーニング機構部は縦型搬送で図示されているが、必要に応じて搬送方向を適宜変更してもよい。クリーニング機構部内での被洗浄体の移動速度は、特に制限はないが、通常、0.5〜15m/分の範囲が使用されるが、スプロケットやリールの回転数を任意に制御することにより変更できる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例について、図3乃至図8を用いて、詳細に説明する。なお、図3乃至図8においては、COFテープ洗浄の際の片面側のみを図示している。
図3は、COFテープの断面図を示している。本実施例で用いるCOFテープ15は、表面に微細回路15aが形成され、ポリイミド製で、厚み50μm、幅35mmであり、その表面に粘着性有機異物16が付着している。
【0041】
図4は、水膜形成時の概略図である。COFテープ15の表面には、水供給手段の4つの水供給ノズル13(二流体専用ノズル)から純水17(温度:20℃)を噴出され水膜が形成されるが、その際、図示を省略する水量調整機器により、水膜の厚みが100μmとなるようにしてある。図5に示すように、水膜18を形成されたCOFテープ15は、水膜を維持したまま次工程へと移り、この段階では、粘着性有機異物16も付着したままとなっている。尚、水供給用ノズルとしては二流体専用ノズルを用いており、その条件は、純水圧0.5Mpa、エアー圧0.5Mpaで、COFテープ15迄の距離を40mmとしている。水量調整機器としては、純水圧及びエアー圧を調整する調整機器が用いられており、純水圧0.3〜0.5Mpa、エアー圧0.3〜0.5Mpaで、水膜100〜900μmを形成できるものである。
【0042】
図6は、過熱水蒸気を当てる際の概略図である。過熱水蒸気は、水中に異物が混入しないように、ステンレス製のボイラーに貯留した水を使用し、この純水を、電磁誘導過熱装置(瀬田興産化工株式会社製、商品名「デュアルパックスヒータ」)にて加熱し、350℃の過熱水蒸気を得ている。
過熱水蒸気は、流量調整を行ってCOFテープ15に噴射されるが、この際、COFテープ15のテープ幅に合わせたスリット状過熱水蒸気ノズル12(吐出口長さ:45mm、吐出口幅:2mm)を用いて、吐出口とCOFテープ15との距離を15mmに設定してある。
粘着性有機異物16は、過熱水蒸気を当てることでCOFテープ15の表面から剥がれ、水膜18中に浮遊することとなる。
尚、水膜18の水温と、過熱水蒸気の温度との差は、大きいほど、過熱水蒸気が水膜に衝突した際の衝撃が大きく、より一層粘着性有機異物が、除去されやすくなる。
【0043】
図7は、洗浄水を当てる際の概略図である。粘着性有機異物16を剥がされたCOFテープ15は、4つの洗浄用噴霧ノズル7(二流体専用ノズル)から噴出される洗浄用噴霧水20(温度20℃)を当てられ、粘着性有機異物16を洗い流される。
本実施例では、洗浄用噴霧水20として、純水を用いており、洗浄用噴霧ノズル7は、純水とエアーとを混合して噴射する二流体専用ノズルを用いている。
尚、二流体専用ノズルの条件は、純水圧0.5Mpa、エアー圧0.5Mpaで、COFテープ15迄の距離を40mmとしている。
【0044】
粘着性有機異物を除去されたCOFテープは、水切りエアーナイフにより、表面に付着している水を除去される。水切りエアーナイフは、水切り効果を上げるため、COFテープから10mmの距離迄近づけて、0.2Mpaの吐出圧で噴出され、COFテープのばたつきを押さえるために、COFテープに400g程度の張力をかけながら、押さえローラにより押さえ込んでいる。
【0045】
水切り処理を終えたCOFテープは、目視観察によれば水が除去されているが、水気をなくすために、乾燥処理を行う。乾燥処理は、65℃に加熱された熱風を、熱風エアーナイフ9(図2参照)よりCOFテープに吹き付ける。熱風エアーナイフ9からCOFテープまでの距離は、10mm、圧力は0.1Mpaである。
【0046】
図8は、粘着性有機異物が除去されCOFテープの断面を示す。
一連の洗浄処理が終了したCOFテープは、図2に示すクリーニング機構部4より排出され、図1の巻取りリール5で巻き取られていく。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の1実施例である洗浄装置の概略構成図を示す
【図2】図1に示す洗浄装置のクリーニング機構部の内部構造図を示す
【図3】本発明の実施例に用いるCOFテープの断面図を示す
【図4】図3に示すCOFテープの水膜形成時の概略図を示す
【図5】図3に示すCOFテープの水膜形成時断面図を示す
【図6】図5に示すCOFテープに過熱水蒸気を当てる概略図を示す
【図7】図6に示すCOFテープに洗浄水を当てる概略図を示す
【図8】図3に示すCOFテープの洗浄後の断面図を示す
【符号の説明】
【0048】
1 繰出しリール
2 重しローラ
3a〜3e ガイドローラ
4 クリーニング機構部
A 筐体
5 巻取りリール
6 長尺テープ
7 洗浄用噴霧ノズル
8 水切りエアーナイフ
9 熱風エアーナイフ
10 排気口
11 押さえローラ
12 スリット状過熱水蒸気ノズル
13 水供給ノズル
14 過熱水蒸気製造機構部
15 COFテープ
15a 微細回路
16 粘着性有機異物
17 純水
18 水膜
19 噴射された過熱水蒸気
20 洗浄用噴霧水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄体の移動経路上で被洗浄体を洗浄する洗浄装置であって、
被洗浄体を移動させる被洗浄体搬送手段、
先端に設けた水供給ノズルから水を噴出して被洗浄体の表面に水膜を形成させる水供給手段、及び、
先端に設けた過熱水蒸気供給ノズルから水膜の温度よりも高い温度の過熱水蒸気を噴出して水膜に当てる加熱水蒸気供給手段
を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
水供給手段が、水膜の厚みを5〜1000μmに調整する水量調整機器を備えるものである請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
水膜の温度と過熱水蒸気との温度差が、100℃以上である請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
水供給手段が、加圧水を供給する加圧水供給部及び圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給部と、供給された加圧水と圧縮エアーを混合して噴出させる水供給ノズルとを有し、過熱水蒸気供給手段が、過熱水蒸気を製造して供給する過熱水蒸気製造機構部と、供給された過熱水蒸気を噴出させる過熱水蒸気ノズルとを有するものである請求項1〜3いずれかに記載の洗浄装置。
【請求項5】
被洗浄体が長尺のテープ状物であり、被洗浄体搬送手段が、長尺のテープ状物である被洗浄体を被洗浄体の長手方向に移動させるものであり、過熱水蒸気供給手段が、過熱水蒸気を製造して供給する過熱水蒸気製造機構部と、供給された過熱水蒸気を噴出させる過熱水蒸気ノズルとを有し、過熱水蒸気ノズルがスリット状の吐出口を有するスリット状ノズルである請求項1〜4いずれかに記載の洗浄装置。
【請求項6】
過熱水蒸気を当てられた水膜を有する被洗浄体に洗浄水を吹き付ける洗浄水供給手段、及び、
洗浄水を吹き付けられた基板を乾燥する乾燥手段
を更に有する請求項1〜5いずれかに記載の洗浄装置。
【請求項7】
洗浄水供給手段が、加圧洗浄水を供給する加圧洗浄水供給部及び圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給部と、供給された加圧洗浄水と圧縮エアーを混合して噴出させる洗浄用噴霧ノズルとを有するものであり、乾燥手段が、洗浄水を吹き付けられた基板に気体を吹き付けるエアナイフと、気体吹き付け後に基板に熱風を吹き付ける熱風エアナイフを有するものである請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項8】
水供給ノズルから水を噴出して被洗浄体の表面に水膜を形成させ、次いで、過熱水蒸気供給ノズルから水膜の温度よりも高い温度の過熱水蒸気を噴出して水膜に当てることを特徴とする洗浄方法。
【請求項9】
被洗浄体表面に形成される水膜の厚みが5〜1000μmである請求項8に記載の洗浄方法。
【請求項10】
水膜の温度と過熱水蒸気との温度差が、100℃以上である請求項8又は9に記載の洗浄方法。
【請求項11】
被洗浄体が長尺のテープ状物であり、長尺のテープ状物である被洗浄体を被洗浄体の長手方向に移動させる移動経路上で洗浄を行う請求項8〜10いずれかに記載の洗浄方法。
【請求項12】
被洗浄体表面の水膜に過熱水蒸気を当てた後、被洗浄体に洗浄水を吹き付け、次いで乾燥する請求項8〜11いずれかに記載の洗浄方法。
【請求項13】
洗浄水を吹き付けられた基板に気体を吹き付け、次いで熱風を吹き付けることにより乾燥を行う請求項11に記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−195832(P2009−195832A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40377(P2008−40377)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(501041159)日化設備エンジニアリング株式会社 (15)
【出願人】(598026035)瀬田興産化工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】