説明

流体動圧軸受、スピンドルモータ、記録ディスク駆動装置および流体動圧軸受の製造方法

【課題】 本発明では、より簡易かつ低コストに、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を提供することを課題とする。
【解決手段】 流体動圧軸受10は、ロータハブ14と、シャフト13と、スリーブ16と、軸受ハウジング17とから主に構成される。シャフト13は、ロータハブ14の一端側に立設される。スリーブ16は、シャフト13の下部外周面13cと対向する内周面16aを有する。軸受ハウジング17は、スリーブ16を内嵌する。軸受ハウジング17の内周面17aには、スリーブ16の外周面16bに向けて突出するとともに、その突出量が軸方向両側に向けて滑らかに減少する突出部15が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受、特に、流体動圧軸受に関する。また別の本発明は、流体動圧軸受を用いたスピンドルモータ、記録ディスク駆動装置および流体動圧軸受の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクなどに用いられる小型の駆動装置には、高速化及び低振動化を目的として流体動圧軸受が採用されている。流体動圧軸受は、軸と軸受部材との間に軸受流体を充填し、軸と軸受部材とが相対回転する際に発生する動圧により軸を軸受部材と非接触状態で支持するものである。このような流体動圧軸受は、軸を非接触状態で支持しているため、従来のボールベアリングなどと比べて低振動、低騒音となり、回転精度が向上し回転の高速化が可能となる。
このような流体動圧軸受は、機器を構成する部材への取り付けのためユニット化されている。例えば、スリーブが軸受ハウジングと呼ばれる筒状またはカップ状の部材に内嵌され、軸受ハウジングを介して、機器を構成する部材へと取り付けられるといった構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。さらに詳しくは、この流体動圧軸受は、外周面に動圧発生用溝が形成された円柱状のシャフトと、シャフトの外周面と径方向微少間隙を介して対向する内周面を有する円筒状のスリーブと、スリーブの外周面と当接する内周面を有しスリーブを内嵌して固定する軸受ハウジングとを備えている。この流体動圧軸受では、シャフトとスリーブおよび軸受ハウジングとが相対回転することにより、シャフトの外周面とスリーブの内周面との径方向微少間隙に動圧が発生し、ラジアル軸受を構成する。
【0003】
また、カップ状の軸受ハウジングを備える流体動圧軸受として、軸受ハウジングの軸方向端面をスラスト軸受面の一方の面とする構造が知られている。すなわち、この構造では、円筒状の外周面を有するシャフトと、シャフトの外周面と径方向微少間隙を介して対向する内周面を有する円筒状のスリーブと、スリーブの環状の外周面をその内周面に対向させて内嵌するカップ状の軸受ハウジングとを備えている。さらに、この構造では、シャフトの外周面とスリーブの内周面とその間の径方向微少間隙に保持される動圧発生流体とによりラジアル軸受が構成され、軸受ハウジングの軸方向端面とシャフトに固定されたシャフト基部の軸方向に向く平坦面とその間の軸方向微少間隙に保持される動圧発生流体とによりスラスト軸受が構成される。
このような構成の流体動圧軸受では、高い回転精度を得るために、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めることが求められている。
【特許文献1】特開2000−175399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の要求に対応するためには、スリーブと軸受ハウジングとの部品精度を向上させることが考えられる。すなわち、スリーブの外周面の加工精度と軸受ハウジングの内周面および軸方向端面の加工精度とを向上させることが考えられる。しかし、低コスト化の要求があるため、このような部品精度を向上させる加工を採用することは難しい。
そこで、本発明では、より簡易かつ低コストに、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を提供することを課題とする。さらに、別の本発明では、流体動圧軸受を用いたスピンドルモータ、記録ディスク駆動装置および流体動圧軸受の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の流体動圧軸受は、シャフト基部と、シャフトと、スリーブと、軸受ハウジングとを備えている。シャフトは、シャフト基部の一端側に立設され、円筒状の外周面を有する。スリーブは、シャフトの外周面と径方向微少間隙を介して対向する内周面を有する。軸受ハウジングは、スリーブを内嵌する。軸受ハウジングの軸方向他端には軸方向端面が形成される。軸方向端面は、シャフト基部の軸方向一端側に形成された平坦面と軸方向微少間隙を介して対向する。シャフトの外周面と、スリーブの内周面と、その間の径方向微少間隙に保持される動圧発生流体とによってラジアル軸受が構成されている。シャフト基部の平坦面と、軸受ハウジングの軸方向端面と、その間の軸方向微少間隙に保持される動圧発生流体とによってスラスト軸受が構成されている。スリーブの外周面あるいは軸受ハウジングの内周面のいずれか一方には、他方に向けて突出するとともに、その突出量が軸方向両側に向けて滑らかに減少する突出部が形成されている。
ここで、軸受ハウジングとは、例えば、流体動圧軸受を備える機器の回転部材あるいは静止部材に対して、スリーブを取り付けるための部材である。また、スリーブの外周面あるいは軸受ハウジングの内周面のいずれか一方には、他方に向けて突出する突出部が形成されている。これにより、スリーブの外周面は、例えば、略俵状に形成され、軸受ハウジングの内周面は、例えば、略鼓状に形成される。
【0006】
本発明の流体動圧軸受では、スリーブの外周面と軸受ハウジングの内周面とは突出部においてお互いに接している。突出部は、スリーブの外周面あるいは軸受ハウジングの内周面のいずれか一方に形成され、他方に向けて突出するとともに、その突出量が軸方向両側に向けて滑らかに減少する。このため、突出部を当接させた状態でスリーブと軸受ハウジングとを揺動させ、ラジアル軸受を構成するスリーブの内周面とスラスト軸受を構成する軸受ハウジングの軸方向端面との直角精度を調整することが可能となる。すなわち、スリーブの外周面と軸受ハウジングの内周面との加工精度を高めることなく、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を提供することが可能となる。
請求項2に記載の流体動圧軸受は、請求項1に記載の流体動圧軸受であって、突出部は、スリーブの外周面あるいは軸受ハウジングの内周面のいずれか一方において、周方向に連続して形成されている。
本発明の流体動圧軸受では、スリーブの外周面の軸方向1箇所において、外径の大きい部分が形成される、あるいは軸受ハウジングの内周面の軸方向1箇所において、内径の小さい部分が形成される。
請求項3に記載の流体動圧軸受は、請求項1または2に記載の流体動圧軸受であって、軸受ハウジングは、プレス加工により形成されている。
【0007】
プレス加工の特徴として、低コストであるが加工精度を向上させることが難しい点が上げられる。このため、従来の流体動圧軸受では、軸受ハウジングにプレス加工を用いつつ、スリーブの内周面と軸受ハウジングの軸方向端面とに高い直角精度を得ることは難しい。
本発明の流体動圧軸受では、プレス加工の精度に依存せずスリーブの内周面と軸受ハウジングの軸方向端面とに高い直角精度を得ることが可能となる。このため、より低コストにラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を提供することが可能となる。
請求項4に記載の流体動圧軸受は、請求項1または2に記載の流体動圧軸受であって、軸受ハウジングは、樹脂により形成されている。
樹脂により形成される部材の加工精度は、金型の精度に影響されやすく、高い加工精度を得ることが難しい。
本発明の流体動圧軸受では、樹脂により形成された軸受ハウジングの加工精度に依存せずスリーブの内周面と軸受ハウジングの軸方向端面とに高い直角精度を得ることが可能となる。このため、より低コストにラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を提供することが可能となる。
【0008】
請求項5に記載の流体動圧軸受は、請求項1〜4のいずれかに記載の流体動圧軸受であって、スリーブは、焼結金属により形成されている。
スリーブを金属粉末を焼結して形成すると、多孔質であり潤滑油をスリーブ内に保持することができるため、軸受部材に適している。一方、寸法の管理が困難であるために、サイジングと呼ばれる寸法合わせの工程が必要である。
本発明の流体動圧軸受では、例えば、スリーブの外周面に突出部が形成される場合であっても、上記サイジングの工程において突出部の加工を行うことが可能である。このため、作業性の低下やコストの上昇などを伴わずに突出部の加工を行うことが可能となる。
請求項6に記載の流体動圧軸受は、請求項1〜5のいずれかに記載の流体動圧軸受であって、スリーブと軸受ハウジングとは、スリーブの外周面と軸受ハウジングの内周面とにより形成される径方向間隙に接着剤が充填されることにより、固定されている。
スリーブの外周面と軸受ハウジングの内周面とにより形成される径方向間隙は、突出部から軸方向両端に向かって拡がるように形成されている。
本発明の流体動圧軸受では、軸方向両端に向かって拡がる径方向間隙に接着剤が充填されるため、径方向間隙では、充分な量の接着剤を保持することが可能となる。これにより、スリーブと軸受ハウジングとの接着による締結強度を高めることが可能となる。
【0009】
請求項7に記載の流体動圧軸受は、請求項1〜6のいずれかに記載の流体動圧軸受であって、シャフト基部の平坦面は、シャフトに直交する。
ここで、シャフト基部とは、例えば、流体動圧軸受を搭載するスピンドルモータの回転部材を構成するロータハブなどである。
本発明の流体動圧軸受では、シャフトの外周面とスリーブの内周面との間にラジアル軸受が形成され、軸受ハウジングの軸方向端面とシャフト基部の平坦面との間にスラスト軸受が形成される。ラジアル軸受を構成するスリーブの内周面とスラスト軸受を構成する軸受ハウジングの軸方向端面との直角精度は、突出部の作用により調整可能である。すなわち、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度が調整可能となる。
請求項8に記載のスピンドルモータは、請求項1〜7のいずれかに記載の流体動圧軸受と、シャフトあるいはスリーブのいずれかと一体的に回転するロータマグネットと、ロータマグネットに対向して配置されるステータとを備えている。
本発明のスピンドルモータでは、請求項1〜7のいずれかに記載の流体動圧軸受と同様の効果を得ることが可能となり、より簡易かつ低コストに、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を備えるスピンドルモータを提供することが可能となる。
【0010】
請求項9に記載の記録ディスク装置は、ハウジングと、ハウジングに固定されるスピンドルモータであって、情報を記録できるディスク状記録媒体を回転させる請求項7に記載のスピンドルモータと、記録媒体の所要の位置に情報を書き込むまたは読み出すための情報アクセス手段とを備えている。
本発明の記録ディスク装置では、請求項8に記載のスピンドルモータと同様の効果を得ることが可能となり、より簡易かつ低コストに、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を備える記録ディスク装置を提供することが可能となる。
請求項10に記載の流体動圧軸受の製造方法は、円筒状の外周面を有するシャフトと、シャフトの外周面と径方向微少間隙を介して対向する内周面を有するスリーブと、スリーブを内嵌する軸受ハウジングとを備える流体動圧軸受の製造方法であって、嵌合工程と、接着剤塗布工程と、直角精度調整工程とを備えている。嵌合工程は、スリーブの外周面あるいは軸受ハウジングの内周面のいずれか一方に形成され、他方に向けて突出するとともに、その突出量が軸方向両側に向けて滑らかに減少する突出部を、他方と接触させて嵌合する。接着剤塗布工程は、スリーブの外周面と軸受ハウジングの内周面との少なくとも一方に接着剤を塗布する。直角精度調整工程は、スリーブの内周面と軸受ハウジングの軸方向端面との直角精度を調整する。
【0011】
本発明の製造方法により、流体動圧軸受を構成する部材の加工精度の向上によってではなく構造的な改善によってスリーブの内周面と軸受ハウジングの軸方向端面との直角精度を調整することが可能となる。このため、より簡易かつ低コストに、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を製造することが可能となる。
請求項11に記載の流体動圧軸受の製造方法は、請求項10に記載の流体動圧軸受の製造方法であって、直角精度調整工程は、スリーブの内周面と軸受ハウジングの軸方向端面との直角精度を治具を用いて調整する工程と、接着剤を硬化させスリーブと軸受ハウジングとを固定する工程とを含む。
本発明の製造方法により、部材の加工精度の向上によってではなく治具の精度を高めることによって、流体動圧軸受の直角精度を高めることができる。このため、より簡易かつ低コストに、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を製造することが可能となる。さらに、治具によって直角精度の調整を行うため、製造された流体動圧軸受における直角精度のばらつきを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、より簡易かつ低コストに、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受を提供することが可能となる。さらに、別の本発明では、流体動圧軸受を用いたスピンドルモータ、記録ディスク駆動装置および流体動圧軸受の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[1]流体動圧軸受の構成
〈1〉全体構成
図1を用いて、本発明の実施形態としての流体動圧軸受10について説明する。なお、図面を用いた説明では、便宜上図面の上下方向を軸線上下方向とするが、これは、実際の取り付け状態を限定するものではない。
図1に示す流体動圧軸受10は、機器のハウジング11に設けられたハブ12に固定される軸受ハウジング17と、軸受ハウジング17に内嵌されるスリーブ16と、スリーブ16に対して回転自在に支持されるシャフト13とから主に構成されている。ここで、機器とは、例えば、ハードディスクなどの記録ディスクを駆動させるためのスピンドルモータを備えるハードディスク装置などである。
シャフト13は、下部13aに対して小径の上部13bを有するほぼ円柱状の部材である。シャフト13は、スピンドルモータのロータハブ14の回転中心に設けられた中心孔14aにおいて軸方向下向きに立設されている。より詳しくは、後述するロータハブ14の平坦面14bとシャフト13の軸とが直交するように立設されている。
スリーブ16は、シャフト13の円筒状の下部外周面13cと対向する内周面16aを備えるほぼ円筒状の部材である。スリーブ16は、環状の内周面16aをシャフト13の下部外周面13cと径方向微少間隙18を介して対向させることにより、シャフト13を回転可能に支持している。さらに、スリーブ16は、軸受ハウジング17の内部に嵌め合わされるとともに接着されており、円筒状の外周面16bと軸受ハウジング17の内周面17aとが当接した状態で固定されている。このとき、スリーブ16と軸受ハウジング17とは、環状の軸方向上端面16cの軸線方向位置と軸受ハウジング17の環状面21c(後述)の軸線方向位置とをほぼ一致させて固定されている。
【0014】
軸受ハウジング17は、カップ形状の部材であり、内周面17aを有する側部19と、側部19の下端から径方向に連続する円盤状の底部20とから構成されている。
側部19の下部外周面19aは、軸方向に延びる筒状に形成されており、ハウジング11のハブ12に固定されている。
側部19の上部には、下部外周面19aよりも大径の上部外周面21aを有する縁部21が形成されている。上部外周面21aは、軸線方向上側に向けて径が大きくなる傾斜面により形成されており、その下端においてもなお下部外周面19aよりも大径である。これにより、縁部21の下端には、上部外周面21aの下端縁から下部外周面19aの上端縁まで、径方向に向けて延びる環状の下端面21bが形成されている。
また、縁部21の軸線方向上側を向く環状面21cは、ロータハブ14の環状の平坦面14bと軸方向微少間隙26を介して対向する。ここで、平坦面14bとは、ロータハブ14の中心孔14aの下縁から環状突起部23までにわたって径方向に拡がる環状面である。またここで、環状突起部23とは、ロータハブ14において、中心孔14aと同心に形成された軸線方向下側に向かう環状の突起部である。
この環状突起部23の下部に形成される段部23bには、リング状の抜け止め25が取り付けられている。リング状の抜け止め25は、環状の軸線方向上端面の内周側を軸受ハウジング17の下端面21bと対向させており、ロータハブ14およびシャフト13の軸線方向上側への移動を制限する。
【0015】
軸受ハウジング17の内周面17aには、スリーブ16に向けて突出するとともに、その突出量が軸方向両側に向けて滑らかに減少する突出部15が形成されている。すなわち、内周面17aは、軸線を含む断面が径方向内方に向けて凸となる凸曲面から構成されている。さらに言い換えれば、内周面17aは、上端部および下端部の径が中央部の径よりも大きく、それらの径が軸方向に連続的に変化する略鼓状に形成されている。
内周面17aは、最小の径を有する中央部の径がスリーブ16の外周面16bの径とほぼ同じになるように形成されている。これにより、軸受ハウジング17をスリーブ16に嵌め合わせた場合にそれぞれの軸線をほぼ一致させることができる(同軸度を得ることができる。)。
内周面17aの上端部および下端部は、スリーブ16の外周面16bとの間に間隙を有しているが、この間隙には、接着剤24が充填されている。この接着剤24により、スリーブ16と軸受ハウジング17とは固定されている。
〈2〉動圧発生機構
流体動圧軸受10は、動圧発生部として、ラジアル軸受部35と、スラスト軸受部36とを有している。各軸受部において対向する面により形成される間隙とスリーブ16の外周面16bの数箇所においてスリーブ16の軸方向上下を連通するように形成される連通孔27とには、潤滑油38が満たされている(空気によって遮断された部分を有していない。)。潤滑油38は、環状突起部23の内周面23aと軸受ハウジング17の上部外周面21aとの間に形成される表面張力シール部39のみにて、界面を形成して外気に通じている。これにより、流体動圧軸受10では、いわゆるフルフィル構造が実現されている。
【0016】
なお、本実施形態では、フルフィル構造が実現されているとしたが、軸受ハウジング17の下端が開口し、上下に界面を作るような構造であっても本発明を適用可能である。さらに、潤滑油38が軸受部分(ラジアル軸受部35およびスラスト軸受部36)にのみ保持される構造の動圧軸受(パーシャルフィル構造)についても、本発明を適用可能である。
以下、各軸受部の構造を説明する。なお、図1では、後述する各動圧発生用溝を断面上に記入しているが、実際には各部材の表面に形成されている。
(1)ラジアル軸受部
ラジアル軸受部35は、スリーブ16の内周面16aと、内周面16aに対向するシャフト13の下部外周面13cと、その間の潤滑油38とにより構成されている。
スリーブ16の内周面16aには、シャフト13の回転に伴い潤滑油38中に動圧を発生するためのヘリングボーン状のラジアル動圧発生用溝41が軸方向2箇所に形成されている。ここで、ラジアル動圧発生用溝41は、回転方向に並んだ複数の溝であり、各溝は回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結してなる略「く」の字状の溝である。
【0017】
ラジアル軸受部35では、ラジアル動圧発生用溝41は、バランス形状に形成されており、ラジアル軸受部35における流体動圧は、回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝の連結部において極大となっている。
なお、軸受内の負圧の発生を防止するために、軸方向2箇所に形成されたラジアル動圧発生用溝41のうち軸方向上側のラジアル動圧発生用溝41は、軸方向下側に向けて潤滑油38を流動させる形状のヘリングボーンであってもよい。
なお、ラジアル動圧発生用溝41は、シャフト13の下部外周面13cに形成されていてもよい。
(2)スラスト軸受部
スラスト軸受部36は、軸受ハウジング17の環状面21cおよびスリーブ16の軸方向上端面16cと、ロータハブ14の平坦面14bと、その間の潤滑油38とにより構成されている。
軸受ハウジング17の上部外周面21aには、ロータハブ14の回転に伴い潤滑油38中に動圧を発生するためのスパイラル状のスラスト動圧発生用溝43が形成されており、回転時にロータハブ14を軸線方向上方に支持する。
【0018】
また、スパイラル状のスラスト動圧発生用溝43は、スラスト軸受部36の潤滑油38を半径方向内側に流動させるように形成されている。これにより、軸受内の負圧の発生が防止される。
なお、スラスト動圧発生用溝43は、潤滑油38を半径方向内側に流動させるように形成されるアンバランスのヘリングボーン形状であってもよい。
なお、スラスト動圧発生用溝43は、平坦面14bに形成されていてもよい。
(3)表面張力シール部
表面張力シール部39は、スラスト軸受部36からの潤滑油38の漏れを防止するための構造であり、環状突起部23の内周面23aと軸受ハウジング17の上部外周面21aとの間に形成される。表面張力シール部39では、流体動圧軸受10に保持された潤滑油38の表面張力と外気の空気圧等とが釣り合うことにより、潤滑油38が流体動圧軸受10の外部に移動するのが抑制される。また、潤滑油38と外気との接触を最小に抑えることができ、潤滑油38の蒸発を抑えることが可能となる。
[2]製造方法
図1をさらに参照して、流体動圧軸受10の製造方法について説明する。
【0019】
第1の工程では、流体動圧軸受10を構成する各部材が形成される。
スリーブ16は、金属粉末を焼結成形することにより形成された焼結含油多孔質体である。スリーブ16の内周面16aには、ラジアル動圧発生用溝41がプレス成形される。シャフト13には、ステンレス鋼を表面処理した金属の切削品が用いられる。なお、シャフト13およびスリーブ16は、セラミックにより形成されていてもよい。
軸受ハウジング17の概形は、金属板材をプレス成形することによりすることにより形成される。また同時に、軸受ハウジング17の環状面21cには、スラスト動圧発生用溝43がプレス成形される。なお、軸受ハウジング17は、金属を切削することにより、あるいは樹脂を射出成形することにより形成されてもよい。
第2の工程では、スリーブ16と軸受ハウジング17とが組み付けられる。この際、スリーブ16の外周面16bと軸受ハウジング17の内周面17aの突出部15とが当接した状態で嵌め合わされる。
第3の工程では、スリーブ16の外周面16bと軸受ハウジング17の内周面17aとに挟まれる間隙に接着剤が充填される。
第4の工程では、接着剤硬化前にスリーブ16の内周面16aと軸受ハウジング17の環状面21cとの直角度が治具を用いて調整される。軸受ハウジング17の内周面17aは、軸方向の中央部を径方向内側に突出させるように形成されており、スリーブ16に対して軸受ハウジング17を揺動させることが可能である。これにより、スリーブ16の内周面16aと軸受ハウジング17の環状面21cとの直角度を調整することが可能となる。
【0020】
第5の工程では、流体動圧軸受10を構成する各部材が組み付けられる。まず、ロータハブ14の中心孔14aにシャフト13の上部13bが固定される。さらに、第2〜第4の工程により組み付けられたスリーブ16と軸受ハウジング17とが、スリーブ16の内周面16aをシャフト13の下部外周面13cに対向させて取り付けられる。またさらに、リング状の抜け止め25が段部23bに取り付けられる。この際、径方向微少間隙18、軸方向微少間隙26および表面張力シール部39には潤滑油38が注入されている。
なお、第2〜第4の工程の順序は、上記した順序に限定されるものではない。例えば、スリーブ16の外周面16bと軸受ハウジング17の内周面17aとに接着剤を塗布した後(第3の工程)、スリーブ16と軸受ハウジング17とを組み付けてもよい(第2の工程)。また、第4の工程は、接着剤硬化前に行われればよく、角度調整後(第4の工程)にスリーブ16の外周面16bと軸受ハウジング17の内周面17aとの間隙に接着剤が充填されてもよい。
[3]スピンドルモータ及びハードディスク装置
〈1〉スピンドルモータの構成
図2を用いて、流体動圧軸受10を備えるスピンドルモータ52の縦断面概略図を示す。
【0021】
スピンドルモータ52は、流体動圧軸受10と、ロータハブ14を介してシャフト13に固定されて一体的に回転するロータマグネット62と、ロータマグネット62に対向して配置されるステータ63とから主に構成されている。
流体動圧軸受10の構成は、図1を用いて説明したため、ここでは説明を省略する。流体動圧軸受10は、ハウジング11のハブ12に形成された孔12aに軸受ハウジング17の下部外周面19aを固定して取り付けられている。
ロータハブ14は、シャフト13の上部13bを固定し、外周部に記録ディスクが載置されるカップ状の部材である。ロータハブ14は、その中心部にシャフト13の上部13bの径とほぼ同じ径の中心孔14aを有している。中心孔14aにシャフト13の上部13bを嵌め合わすことにより、シャフト13は、ロータハブ14に固定される。
ロータハブ14は、中心孔14aから径方向外方に向けて延びる環状部66と、環状部66の外周縁より軸方向下側に延びる内周面67aを有する外周側部67とから主に構成されている。環状部66の径方向中間部には、中心孔14aと同心に形成された軸線方向下側に向かう環状の突起部である環状突起部23が形成されている。内周面67aには、ロータマグネット62が接着手段により固定されている。外周側部67の外周面には、記録ディスクが嵌合される。
【0022】
ハウジング11のハブ12の径方向外方には、孔12aと同心に形成された軸線方向上側に向かう環状の突起部である環状突起部30が形成されている。環状突起部30の外周部にはステータ63が固定されている。ステータ63は、ステータコアとそれに巻装されたコイルとから構成されている。さらに、ハウジング11には、ロータマグネット62に対応する径方向位置にスラストヨーク64が固定されている。
〈2〉スピンドルモータの動作
ステータ63に通電されると、ステータ63とロータマグネット62との電磁相互作用が発生する。これにより、ロータマグネット62、ロータハブ14およびシャフト13(以上、回転部材)が一体として、スリーブ16、軸受ハウジング17、ハウジング11およびステータ63(以上、静止部材)に対して回転駆動される。このとき、スラスト軸受部36において、環状面21cおよび軸方向上端面16cと、平坦面14bとの間隙内の潤滑油38は、スラスト動圧発生用溝43の作用によってスラスト荷重支持圧を発生する。またラジアル軸受部35において、内周面16aと、下部外周面13cとの間隙内の潤滑油38は、ラジアル動圧発生用溝41の作用によってラジアル荷重支持圧を発生する。
ここで、ロータマグネット62の磁気的中心とステータ63の磁気的中心とを軸線方向に相異するよう配設すること、およびハウジング11に取り付けられたスラストヨーク64とロータマグネット62との磁気吸引力により、ロータハブ14およびシャフト13を下方に支持する付勢力を付与することが可能となる。この付勢力とスラスト軸受部36のスラスト荷重支持圧とがバランスして釣り合っている。
【0023】
〈3〉ハードディスク装置
図3を用いて、スピンドルモータ52を備えるハードディスク装置50の縦断面概略図を示す。
ハードディスク装置50は、記録ディスクを回転させるための小型・薄型化されたハードディスク装置である。
ハードディスク装置50は、各部がハウジング11に内包されており、主に、スピンドルモータ52、記録ディスク53、磁気ヘッド移動機構57を備える。ハウジング11の内部は、塵埃が極度に少ない良好な環境を形成している。
記録ディスク53は、磁気により情報を記録する円盤状の部材である。
磁気ヘッド移動機構57は、記録ディスク53に対して情報の読み書きを行うための機構であり、磁気ヘッド56、アーム55、アクチュエータ部54を有する。
磁気ヘッド56は、アーム55の一端に設けられることにより記録ディスク53の近傍に配され、記録ディスク53の読み書きを行う。アーム55は、磁気ヘッド56を支持する部材である。アクチュエータ部54は、アーム55の他端を支持してアーム55の移動を行う。アクチュエータ部54により、アーム55が首振り移動を行い、磁気ヘッド56を記録ディスク53の所要の位置に移動させることができる。
【0024】
ハードディスク装置50は、スピンドルモータ52が回転することにより記録ディスク53が回転する。アクチュエータ部54を駆動させてアーム55の首振りを行い、磁気ヘッド56を記録ディスク53の所要の位置に移動させる。これにより、記録ディスク53の読み書きを行う。
[4]効果
〈1〉
本発明の流体動圧軸受10では、スリーブ16の外周面16bと軸受ハウジング17の内周面17aとは突出部15においてお互いに接している。突出部15は、軸受ハウジング17の内周面17aに形成され、スリーブ16の外周面16bに向けて突出するとともに、その突出量が軸方向両側に向けて滑らかに減少する。このため、突出部15を当接させた状態でスリーブ16と軸受ハウジング17とを揺動させ、ラジアル軸受部35を構成するスリーブ16の内周面16aとスラスト軸受部36を構成する軸受ハウジング17の環状面21cとの直角精度を調整することが可能となる。すなわち、スリーブ16の外周面16bと軸受ハウジング17の内周面17aとの加工精度を高めることなく、ラジアル軸受部35とスラスト軸受部36との直角精度を高めた流体動圧軸受10を提供することが可能となる。
【0025】
また、内周面17aの加工精度を高める必要が無いため、軸受ハウジング17の成形にプレス加工などの低コストな加工を用いることが可能であり、流体動圧軸受のコスト削減も実現できる。
〈2〉
本発明の流体動圧軸受10では、スリーブ16と軸受ハウジング17とを接着剤により固定している。ここで、スリーブ16と軸受ハウジング17とは、それぞれの対向する面が当接する「クリアランスの狭い部分」を有するため同軸度精度を得ることが可能となる。また、軸線方向両端においてそれぞれの対向する面により挟まれる「クリアランスの広い部分」を有し、この部分に接着剤が充填されるため、十分な接着強度を得ることが可能となる。
〈3〉
本発明の流体動圧軸受10では、軸受ハウジング17の概形をプレス成形する際に同時にスラスト動圧発生用溝43をプレス成形することが可能である。すなわち、本発明の軸受ハウジング17を製造する際に、従来の軸受ハウジングを製造する場合に比して特別な工程を必要としない。このため、従来と同様のコストでより回転精度の高い流体動圧軸受を得ることが可能となる。
【0026】
また、金属のプレス成形や樹脂の射出成形などを用いて軸受ハウジング17を製造するため、流体動圧軸受10のコストを低く抑えつつ生産性を高く維持することが可能となる。
〈4〉
背景技術に記載した特許文献1に示される流体動圧軸受では、スリーブと軸受ハウジングとが当接する部分が軸方向に向けて延びる円筒状に形成される。この従来技術では、スリーブと軸受ハウジングとの軸線の調整は困難である。
一方、本発明の流体動圧軸受10では、スリーブ16と軸受ハウジング17とが接触する部分が小さく、スリーブ16と軸受ハウジング17と相対的な揺動運動が可能となり、それぞれの軸線が一致するよう調整可能となる。
また、特許文献1に示される流体動圧軸受では、スリーブが軸受ハウジングに圧入固定されている。圧入固定の場合には、スリーブの変形が起こりやすく、スリーブと軸受ハウジングとの位置調整が困難となる。また、軸受の回転精度の向上のためには、それぞれの部材の加工精度(直角度・真円度・同軸度・面精度など)を向上させる必要がある。
一方、本発明の流体動圧軸受10では、スリーブ16と軸受ハウジング17との位置調整が可能であり、低コストの加工を用いても軸受の回転精度を維持することが可能となる。
【0027】
〈5〉
本発明のスピンドルモータ52、ハードディスク装置50は、流体動圧軸受10を備えるため、上記記載の流体動圧軸受10の効果と同様の効果を得ることが可能となる。例えば、高い回転精度の実現とコスト削減とを両立させたスピンドルモータおよびハードディスク装置を得ることが可能となる。
[5]変形例
本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形あるいは修正が可能である。
〈1〉
上記実施形態では、軸受ハウジング17の内周面17aは、径方向内方に突出する突出部15を有すると説明した。
ここで、突出部15は、スリーブ側にあっても構わない。これについて、図4を用いて説明を加える。
図4は、変形例としてのスリーブ76と軸受ハウジング77との縦断面概略図である。図中、一点鎖線は流体動圧軸受の軸線を示している。
【0028】
スリーブ76は、環状の内周面76aをシャフト13(図1参照)の下部外周面13cに対向させて配置される中空状の部材である。スリーブ76の外周面76bは、軸線を含む断面が径方向外方に向けて凸となる凸曲面から構成されている。言い換えれば、スリーブ76の外周面76bは、上端部および下端部の径が中央部の径よりも小さく、それらの径が軸方向に連続的に変化する略俵状に形成されている。さらに言えば、外周面76bは、軸線上に中心を有する球面の一部であることがより好ましい。
軸受ハウジング77は、図1に示した軸受ハウジング17と外形がほぼ同様の部材である。軸受ハウジング77は、軸受ハウジング17と内周面77aの形状において相違している。軸受ハウジング17の内周面17aは、径方向内方に向けて凸となる凸曲面により構成されていたが、軸受ハウジング77の内周面77aは、軸線方向に延びる円筒状に形成されている。
スリーブ76の内周面76aと、シャフト13の下部外周面13cと、その間の径方向微少間隙に保持される潤滑油とによりラジアル軸受が構成される。軸受ハウジング77の軸方向上端に形成される環状面77bと、ロータハブ14の平坦面14b(図1参照)と、その間の軸方向微少間隙に保持される潤滑油とによりスラスト軸受が構成される。
【0029】
このような構成により、スリーブ76と軸受ハウジング77とは、スリーブ76の外周面76bと軸受ハウジング77の内周面77aとを当接させた状態で揺動運動することが可能となる。このため、ラジアル軸受を構成する内周面76aとスラスト軸受を構成する環状面77bとの直角精度を調整することができる。
また、この場合、スリーブ76を焼結する際、並びに内周面76aに動圧発生用溝をプレス成形する際に、外周面76bを略俵状に形成することが可能である。このため、従来のスリーブを製造する場合に比して特別な工程を必要としない。
なお、スリーブと軸受ハウジングとの変形例は、これに限定されない。例えば、スリーブと軸受ハウジングとの両方の対向面を相手方に向けて凸にするような構成も考えられる。あるいは、一方の対向面を他方の対向面に向けて凸形状に形成にするとともに、他方には、形成された凸形状に対応する凹形状を形成するとしてもよい。
また、上記実施形態では、軸受ハウジング17の内周面17aにおいて、周方向に連続して形成されていると説明したが、周方向に複数箇所(例えば、3箇所)に形成されていてもよい。
〈2〉
上記実施形態では、シャフト13がスピンドルモータの回転部材となる構成について説明した。
【0030】
ここで、シャフト13がスピンドルモータの静止部材となる場合にも本発明を適宜修正して適用することが可能である。
〈3〉
上記実施形態および変形例では、軸受ハウジング17(図1参照)あるいはスリーブ76(図4参照)は、軸線方向中間部において径方向内方あるいは外方に向けて突出する突出部を有すると説明した。
ここで、この突出部の軸線方向位置は、ラジアル軸受の軸支に寄与しない位置であってもよいし、ラジアル軸受の軸支に寄与する位置であってもよい。
例えば、図1において、軸受ハウジング17とスリーブ16とが当接する部分の軸線方向位置は、ラジアル動圧発生用溝41の軸線方向位置と同じであってもよいし、ラジアル動圧発生用溝41の軸線方向位置と異なっていてもよい。
〈4〉
上記実施形態では、軸受ハウジング17は、一体として形成されるカップ状部材である、と説明した。
ここで、軸受ハウジング17では、底部20が別体として形成されていてよい。この場合、軸受ハウジング17は、略円筒状の側部19の軸方向下端にカバー部材(カウンタプレート)としての底部20を固定した構造となる。
【0031】
〈5〉
また、上記実施形態で説明した発明は、例えば、特開2004−19755号公報に示された構造の流体動圧軸受に対して適用可能である。
すなわち、図1に示す流体動圧軸受10において、シャフト13の軸方向下端に径方向外方に延びるスラストフランジが形成される。スラストフランジは、シャフト13の軸方向下端から径方向外方に延びるとともに、スリーブ16の軸方向下端面と底部20の軸方向上側面との軸方向隙間に配置される。これにより、スラストフランジの軸方向下端面と底部20の軸方向上側面とが対向してスラスト軸受が形成される。
このような構造の流体動圧軸受は、上記実施形態に記載の流体動圧軸受10とラジアル軸受の構造において同様であるが、スラスト軸受の構造において相違している。しかし、このような構造の流体動圧軸受に対しても本発明を適用することにより、スラスト軸受を構成する底部20を有する軸受ハウジング17と、ラジアル軸受を構成するスリーブ16との直角精度を向上させることが可能となる。
また、上記実施形態で説明した発明は、例えば、特開2003−262217号公報に示された構造の流体動圧軸受に対して適用可能である。
【0032】
すなわち、図1に示す流体動圧軸受10において、シャフト13の軸方向下端に径方向外方に延びるスラストフランジが形成される。スラストフランジは、シャフト13の軸方向下端から径方向外方に延びるとともに、スリーブ16の軸方向下端面と底部20の軸方向上側面との軸方向隙間に配置される。これにより、スラスト軸受部36に加えて、スリーブ16の軸方向下端面とスラストフランジの軸方向上端面とが対向してスラスト軸受が形成される。
このような構造の流体動圧軸受は、上記実施形態に記載の流体動圧軸受10とラジアル軸受の構造において同様であるが、スラスト軸受の構造において相違している。しかし、このような構造の流体動圧軸受に対しても本発明を適用することにより、スラスト軸受を構成する軸受ハウジング17と、ラジアル軸受を構成するスリーブ16との直角精度を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、より簡易かつ低コストに、ラジアル軸受とスラスト軸受との直角精度を高めた流体動圧軸受、その流体動圧軸受を備えるスピンドルモータ、記録ディスク駆動装置などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】流体動圧軸受10の縦断面概略図
【図2】スピンドルモータ52の縦断面概略図
【図3】ハードディスク装置50の縦断面概略図
【図4】変形例としての流体動圧軸受の縦断面概略図
【符号の説明】
【0035】
10 流体動圧軸受 11 ハウジング
12 ハブ 13 シャフト
14 ロータハブ 15 突出部
16 スリーブ 17 軸受ハウジング
18 径方向微少間隙 19 側部
20 底部 21 縁部
23 環状突起部 24 接着剤
25 リング状の抜け止め 26 軸方向微少間隙
27 連通孔 30 環状突起部
35 ラジアル軸受部 36 スラスト軸受部
38 潤滑油 39 表面張力シール部
41 ラジアル動圧発生用溝 43 スラスト動圧発生用溝
50 ハードディスク装置 52 スピンドルモータ
53 記録ディスク 54 アクチュエータ部
55 アーム 56 磁気ヘッド
57 磁気ヘッド移動機構 62 ロータマグネット
63 ステータ 64 スラストヨーク
66 環状部 67 外周側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト基部と、
前記シャフト基部の一端側に立設され、円筒状の外周面を有するシャフトと、
前記シャフトの前記外周面と径方向微少間隙を介して対向する内周面を有するスリーブと、
前記スリーブを内嵌する軸受ハウジングとを備え、
前記軸受ハウジングの軸方向他端には軸方向端面が形成され、
前記軸方向端面は、前記シャフト基部の軸方向一端側に形成された平坦面と軸方向微少間隙を介して対向し、
前記シャフトの前記外周面と、前記スリーブの前記内周面と、その間の前記径方向微少間隙に保持される動圧発生流体とによってラジアル軸受が構成され、
前記シャフト基部の前記平坦面と、前記軸受ハウジングの前記軸方向端面と、その間の前記軸方向微少間隙に保持される動圧発生流体とによってスラスト軸受が構成され、
前記スリーブの外周面あるいは前記軸受ハウジングの内周面のいずれか一方には、他方に向けて突出するとともに、その突出量が軸方向両側に向けて滑らかに減少する突出部が形成されている、
流体動圧軸受。
【請求項2】
前記突出部は、前記スリーブの前記外周面あるいは前記軸受ハウジングの前記内周面のいずれか一方において、周方向に連続して形成されている、
請求項1に記載の流体動圧軸受。
【請求項3】
前記軸受ハウジングは、プレス加工により形成されている、
請求項1または2に記載の流体動圧軸受。
【請求項4】
前記軸受ハウジングは、樹脂により形成されている、
請求項1または2に記載の流体動圧軸受。
【請求項5】
前記スリーブは、焼結金属により形成されている、
請求項1〜4のいずれかに記載の流体動圧軸受。
【請求項6】
前記スリーブと前記軸受ハウジングとは、前記スリーブの前記外周面と前記軸受ハウジングの前記内周面とにより形成される径方向間隙に、接着剤が充填されることにより、固定されている、
請求項1〜5のいずれかに記載の流体動圧軸受。
【請求項7】
前記シャフト基部の前記平坦面は、前記シャフトに直交する、
請求項1〜6のいずれかに記載の流体動圧軸受。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の流体動圧軸受と、
前記シャフトあるいは前記スリーブのいずれかと一体的に回転するロータマグネットと、
前記ロータマグネットに対向して配置されるステータと、
を備えるスピンドルモータ。
【請求項9】
ハウジングと、
前記ハウジングに固定されるスピンドルモータであって、情報を記録できるディスク状記録媒体を回転させる請求項7に記載のスピンドルモータと、
前記記録媒体の所要の位置に情報を書き込むまたは読み出すための情報アクセス手段と、
を備える記録ディスク駆動装置。
【請求項10】
円筒状の外周面を有するシャフトと、前記シャフトの前記外周面と径方向微少間隙を介して対向する内周面を有するスリーブと、前記スリーブを内嵌する軸受ハウジングとを備える流体動圧軸受の製造方法であって、
前記スリーブの外周面あるいは前記軸受ハウジングの内周面のいずれか一方に形成され、他方に向けて突出するとともに、その突出量が軸方向両側に向けて滑らかに減少する突出部を、他方と接触させて嵌合する嵌合工程と、
前記スリーブの外周面と前記軸受ハウジングの内周面との少なくとも一方に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記スリーブの前記内周面と前記軸受ハウジングの軸方向端面との直角精度を調整する直角精度調整工程と、
を備える流体動圧軸受の製造方法。
【請求項11】
前記直角精度調整工程は、前記スリーブの前記内周面と前記軸受ハウジングの前記軸方向端面との直角精度を治具を用いて調整する工程と、前記接着剤を硬化させ前記スリーブと前記軸受ハウジングとを固定する工程とを含む、
請求項10に記載の流体動圧軸受の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−105183(P2006−105183A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289561(P2004−289561)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】