説明

流体発電装置

【課題】発電効率の向上と発電電圧の安定化を図ることができる流体発電装置を提案する。
【解決手段】作動流体Wの移動により回転する羽根車10と、羽根車10とともに回転する回転軸20と、回転軸20の回転によって得られる回転力を変換して電力を発電する発電機31と、発電機31に接続して発電機31の発電電圧を所望の電圧範囲に変圧する可変変圧部35と、発電機31の固定子34と可動子32を相対移動させて、固定子34と可動子32の対向面積を変化させる対向面積変更部40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体発電装置に関する。特に、風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れを利用して発電を行う流体発電装置として、例えば、風力発電装置が開発されている。
風のエネルギーは風速の3乗に比例すること、発電機の出力は風速(風車の回転数)の2乗に比例すること、が知られている。このため、垂直軸型の風力発電装置では、風速が定格風速よりも低くなると、発電機の出力に比べて風のエネルギーが足りなくなり、風車の回転数が低下して、発電効率が低下してしまう。
【0003】
そこで、垂直軸型の風力発電装置では、発電機のコイルステータをマグネットロータに対して平行移動させて、マグネットロータとコイルステータの対向面積(噛合い率)を変化させることで、発電機の発電効率を向上させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−161052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、発電機から得られる出力電圧の変化幅が非常に大きくなって、例えばバッテリを安定して充電できない。すなわち、風速の増加に従ってマグネットロータとコイルステータの対向面積(噛合い率)を増加させると、カットイン風力時とカットアウト風力時の発電電圧の比が数十倍になってしまうのである。
つまり、従来の技術では、安定した発電電圧が得られないため、効率的に発電電圧を利用することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、発電効率の向上と発電電圧の安定化を図ることができる流体発電装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係る流体発電装置は、作動流体の移動により回転する羽根車と、前記羽根車とともに回転する回転軸と、前記回転軸の回転によって得られる回転力を変換して電力を発電する発電機と、前記発電機に接続して前記発電機の発電電圧を所望の電圧範囲に変圧する可変変圧部と、前記発電機の固定子と可動子を相対移動させて、前記固定子と前記可動子の対向面積を変化させる対向面積変更部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発電効率の向上と発電電圧の安定化を両立することができる。これにより、効率的に発電電圧を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る垂直軸型風力発電装置の外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係る垂直軸型風力発電装置の概略構成図である。
【図3】スイッチング部による発電機の接続方式の切替えを説明する図である。
【図4】風速に対する発電機の噛合い率を示す図である。
【図5】回転主軸の回転数と発電機の発電電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る垂直軸型風力発電装置1の外観図である。図2は、
本発明の実施形態に係る垂直軸型風力発電装置1の概略構成図である。
【0011】
図1に示すように、垂直軸型風力発電装置(流体発電装置)1は、風車10の回転軸(回転主軸20)が地面Fに対して垂直となるように設置される。つまり、風車10の回転軸は、地面Fに沿って流れる風(作動流体)Wに対して常に交差する。
そして、垂直軸型風力発電装置1は、風向きに対して依存性がなく、どの方向からの風Wに対しても風車10が回転できる。したがって、季節や時間帯で風向きが変動する場合であっても発電が可能である。
【0012】
垂直軸型風力発電装置1は、主に、地面Fに対して垂直に立つように固定された支柱2と、この支柱2上に設置された風車部5から構成される。
【0013】
図2に示すように、風車部5は、風Wを受けて回転する風車(羽根車)10と、風車10の回転中心に配置されて、風車10と共に回転する回転主軸20と、回転主軸20の回転を利用して発電を行う発電部30と、発電部30の固定子(コイルステータ34)を可動子(マグネットロータ32)に対して回転主軸20の回転軸方向に平行移動させるステータ駆動部40等から構成される。
また、風車部5は、回転主軸20の一部及び発電部30及びステータ駆動部40等を収容するケーシング6を備えている。そして、ケーシング6の底面が、支柱2の上端面に固定される。
【0014】
風車10は、翼に発生する揚力を利用して回転するジャイロミル型風車である。すなわち、風車10は、回転主軸20に対して平行に配置された複数の翼ブレード11を有している。また、複数の翼ブレード11は、回転主軸20の外周側の同一半径の位置に、均等角度間隔に配置される。本実施形態では、風車10は、5つの翼ブレード11を有している。
なお、各翼ブレード11は、それぞれ、回転主軸20に対して直交に接続された一対の翼支持体12を介して、その両端側が回転主軸20に固定される。
【0015】
各翼ブレード11は、風Wを受けると揚力を発生する形状に成形されている。各翼ブレード11に発生する揚力は、回転主軸20の半径方向に対して交差する方向に発生するため、この揚力によって風車10が一定方向に回転する。
【0016】
風車10の回転中心に配置された回転主軸(回転軸)20は、その一端側が風車10(翼ブレード11)よりも下方(地面)側に向けて伸びている。そして、回転主軸20のうち、下方側に向けて伸びた部分は、ケーシング6に対して回転可能に収容される。
【0017】
ケーシング6は、二段階に半径が変化する円筒状部材であり、回転主軸20の一部を複数のベアリング9を介して支持する小径の円筒形の第一ケーシング7と、第一ケーシング7の下方側において発電部30及びステータ駆動部40等を収容する大径の円筒形の第二ケーシング8から構成される。
【0018】
発電部30は、回転主軸20の回転によって得られる回転力を変換して電力を発電するものである。発電部30は、第二ケーシング8の内部の下方側において、回転主軸20の下端に連結配置される。
発電部30は、発電機31を備えている。この発電機31は、回転主軸20に連結されて回転するマグネットロータ32と、マグネットロータ32の外周側を取り囲むように配置されたコイルステータ34から構成される。
そして、風車10の回転が回転主軸20を介してマグネットロータ32に伝わって、マグネットロータ32が風車10及び回転主軸20と同軸上で回転する。これにより、第二ケーシング8に対して固定されたコイルステータ34との間で電磁誘導が発生して、電力が発電される。
【0019】
なお、発電機31は、定格風速(例えば10m/s)、定格回転数(風車10が、例えば200rpmで回転)のときに、定格発電量(例えば数kW)を出力するように設計されている。
【0020】
ステータ駆動部(対向面積変更部)40は、発電機31の固定子であるコイルステータ34を可動子であるマグネットロータ32に対して、回転主軸20の回転軸方向に平行移動させるものである。つまり、マグネットロータ32とコイルステータ34を相対移動させて、マグネットロータ32が形成する磁場(磁界)に対するコイルステータ34の重なり(対向面積)の度合い(噛合い率)を無段階に変化させるものである。
これにより、発電機31の逆起電圧係数が変化して、発電機31の回転効率や発電効率を向上させることができる。
【0021】
ステータ駆動部40を設ける主な理由は、風速が定格風速よりも低くなった際に、発電機31の発電効率が低下してしまう事態を防止するためである。
すなわち、風速が定格風速よりも低くなると、発電機31の出力に比べて風Wのエネルギーが足りなくなって、風車10(回転主軸20)の回転数が低下してしまうのである。そこで、マグネットロータ32とコイルステータ34の重なりの度合い(噛合い率)を変化させて、発電機31の回転効率や発電効率を向上させている。
【0022】
ステータ駆動部40は、具体的には、回転主軸20に対して平行に立てられて、コイルステータ34に推進力を与えるボールネジ42と、ボールネジ42の一端に連結されてネジ軸を回転させるサーボモータ44等から構成されている。
そして、サーボモータ44を駆動して、ボールネジ42を回転させることにより、コイルステータ34がボールネジ42に沿って平行移動する。
【0023】
なお、サーボモータ44は、ロータリーエンコーダ44aを有しており、ロータリーエンコーダ44aの検出結果(出力パルス)により、コイルステータ34の現在位置が求められる。
また、マグネットロータ32は、回転主軸20の軸方向に対して、その位置が不変(固定)であるから、ロータリーエンコーダ44aの検出結果により、マグネットロータ32に対するコイルステータ34の重なりの度合い(噛合い率)も求められる。
【0024】
発電部30は、図2に示すように、発電機31(マグネットロータ32、コイルステータ34)を備える。
また、発電部30は、発電機31のコイルステータ34に接続されると共にコイルステータ34のコイル群の接続方式(直列接続・並列接続)を切替えるスイッチング部35と、回転主軸20の一端に連結されて回転主軸20(風車10)の回転数を検出するロータリーエンコーダ36と、ロータリーエンコーダ36の検出結果(出力パルス)に基づいて、スイッチング部35に対して制御指令を出力するコイル切替制御部37を備える。
更に、スイッチング部35には、整流回路38とバッテリ39が直列に接続される。なお、バッテリ39には、不図示のDC/ACインバータが接続され、バッテリ39に充電された電力を利用可能となっている。
【0025】
図3は、スイッチング部35による発電機31の接続方式の切替えを説明する図である。なお、図3では、スイッチング部35におけるU相の回路構成のみを示している。
発電部30は、三相交流発電機である。すなわち、マグネットロータ32の外周側に、複数のコイルLが同一半径位置上に、例えば均等角度間隔で配置されている。
具体的には、コイルステータ34は、24個のコイルLを有している。つまり、U相用のコイルLU1〜LU8、V相用のコイルLV1〜LV8、W相用のコイルLW1〜LW8を有している。
【0026】
スイッチング部(可変変圧部)35は、U相用のコイルLU1〜LU8を、直列接続させたり並列接続させたりするために、複数のスイッチSW(SW1〜SW21)を有している。
図3に示すように、8個のコイルLU1〜LU8が並んで配置される。そして、コイルLU1〜LU8の間に、スイッチSW8〜SW14が一つずつ直列に接続される。
【0027】
また、コイルLU1の一方の出力端側には、スイッチSW1〜SW7の一端が並列に接続される。スイッチSW1〜SW7の他端側は、コイルLU2〜LU8の第一出力端側に接続される。例えば、スイッチSW1の他端側は、コイルLU2の第一出力端側(スイッチSW8とコイルLU2の間)に接続される。
【0028】
また、コイルLU8の他方の出力端側には、スイッチSW15〜SW21の一端が並列に接続される。スイッチSW15〜SW21の他端側は、コイルLU1〜LU7の第二出力端側に接続される。例えば、スイッチSW15の他端側は、コイルLU1の第二出力端側(コイルLU1とスイッチSW8の間)に接続される。
【0029】
したがって、スイッチング部35のスイッチSW8〜SW14を全てON(接続)すると同時に、残りのスイッチSW1〜SW7,SW15〜SW21を全てOFF(切断)すると、コイルステータ34のU相用のコイルLU1〜LU8は、直列接続されることになる(第一接続状態)。
【0030】
次に、上述の第一接続状態から、スイッチSW11をOFFすると同時に、スイッチSW4,18をON(接続)すると、コイルLU1〜LU4、コイルLU5〜LU8がそれぞれ直列接続されると共に、コイルLU1〜LU4、コイルLU5〜LU8が並列接続されることになる(第二接続状態)。
【0031】
更に、上述の第二接続状態から、スイッチSW9,13をOFFすると同時に、スイッチSW2,6,16,20をON(接続)すると、コイルLU1〜LU2、コイルLU3〜LU4、コイルLU5〜LU6、コイルLU7〜LU8がそれぞれ直列接続されると共に、コイルLU1〜LU2、コイルLU3〜LU4、コイルLU5〜LU6、コイルLU7〜LU8が並列接続されることになる(第三接続状態)。
【0032】
そして、上述の第三接続状態から、スイッチSW8,10,12,14をOFFすると同時に、スイッチSW1,3,5,7,15,17,19,21をON(接続)すると、コイルLU1〜LU8が並列接続されることになる(第四接続状態)。
【0033】
このように、スイッチング部35は、複数のスイッチSW1〜SW21を選択的にON/OFFすることで、コイルステータ34のU相用のコイルLU1〜LU8を、直列接続させたり並列接続させたり、直列接続と並列接続を混在させたりすることができる。
なお、スイッチング部35は、U相用のコイルLU1〜LU8の切替えと同時に、V相用のコイルLV1〜LV8とW相用のコイルLW1〜LW8の切替えを同様に行う。つまり、例えば、U相用のコイルLU1〜LU8が直列接続されるとき、V相用のコイルLV1〜LV8とW相用のコイルLW1〜LW8も直列接続される。
【0034】
そして、上述したように、スイッチング部35により、コイルステータ34のコイルLU1〜LU8,LV1〜LV8,LW1〜LW8を、直列接続させたり並列接続させたりすることで、発電機31から得られる発電電圧を変化させることができる。
【0035】
上述したように、スイッチング部35には、PLC等のコイル切替制御部37が接続されており、ロータリーエンコーダ36により検出される回転主軸20(マグネットロータ32)の回転数に応じて、コイル切替制御部37からコイルLの切替指令(制御指令)を受ける。
つまり、マグネットロータ32の回転数に応じてコイル切替制御部37からスイッチング部35に制御指令が発せられる。言い換えれば、発電機31の発電電圧が所望の電圧範囲内に収まるように、コイル切替制御部37からスイッチング部35に制御指令が発せられる。
なお、上述した第一接続状態〜第四接続状態は、コイル切替制御部37の記憶部に記憶されており、第一接続状態〜第四接続状態に対応する指令がスイッチング部35に発せられる。
【0036】
次に、垂直軸型風力発電装置1の作用について説明する。
図4は、風速に対する発電機31の噛合い率を示す図である。
垂直軸型風力発電装置1では、ステータ駆動部40により、発電機31のコイルステータ34をマグネットロータ32に対して、回転主軸20の回転軸方向に平行移動させて、マグネットロータ32とコイルステータ34の噛合い率を変化させることで、発電機31の発電効率を向上させている。つまり、発電機31の出力を風Wのエネルギーに一致させている。
【0037】
図4の関係線に示すように、発電を開始するカットイン風力(例えば風速2m/s)から発電機31を停止させるカットアウト風力(例えば風速15m/s)に向かうにしたがって、発電機31の噛合い率も高くなるように、ステータ駆動部40が制御される。すなわち、噛合い率は、例えば、カットイン風力時に20%、低格時に70%、カットアウト風力時に80%となる。つまり、風速(回転主軸20の回転数)が高くなるに従って発電機31の噛合い率が徐々に高くなるように設定されている。
【0038】
なお、風速と発電機31の噛合い率の関係は、図4の関係直線に示すように、比例して変化する場合に限らない。例えば、関係線が2次曲線や高次曲線等となる場合であってもよい。
また、カットイン風力、カットアウト風力時の噛合い率は、風車10や発電機31の仕様等に応じて、適宜変更することができる。
【0039】
ステータ駆動部40は、カットイン風力時、すなわち、例えば風速が2m/s程度になると、ロータリーエンコーダ36により回転主軸20の回転数(例えば30rpm程度)を検出する。
すると、ロータリーエンコーダ36の出力に基づいて、制御部45にからの指令によりサーボモータ44が駆動し、ボールネジ42を回転させ、コイルステータ34をボールネジ42に沿って平行移動させる。そして、発電機31の噛合い率が20%となるように、コイルステータ34を移動・位置決めする。
そして、その後は、風速の変化に応じて、サーボモータ44によりコイルステータ34を平行移動して、発電機31の噛合い率を変化させる。
【0040】
なお、風速と風車10(回転主軸20)の回転数は、必ずしも一対一に対応しない。なぜなら、風車10には慣性力があるため、風速が変化としても、風車10の回転は遅れて変化(タイムラグが発生)するからである。
このため、制御部45は、回転主軸20の回転数として、例えば1〜10分間程度の回転数の平均値を用いて、ステータ駆動部40を制御する。つまり、風速が時々刻々と不規則に変化する場合であっても、高い周波数の変動を遮断し、低い周波数の変動のみに対応して、ステータ駆動部40を制御する。これにより、ステータ駆動部40の制御を安定させることができる。
【0041】
図5は、回転主軸20の回転数と発電機31の発電電圧との関係を示す図である。
上述したように、ステータ駆動部40は、風速の変化に応じて、サーボモータ44によりコイルステータ34を平行移動して、発電機31の噛合い率を変化させる。
これと並行して、発電部30は、スイッチング部35の複数のスイッチSWを選択的にON/OFFして、発電機31から得られる発電電圧を変化させる。
【0042】
具体的には、図5に示すように、スイッチング部35の複数のスイッチSWの接続を、上述した4つの接続状態(第一接続状態〜第四接続状態)となるように切替える。これにより、発電機31の発電電圧が段階的に変化して、カットイン風力からカットアウト風力の間で、バッテリ39の定格充電電圧(例えば80V)から大きく懸け離れないように調整される。
【0043】
まず、回転主軸20の回転数が0〜約50rpm以下のときは、発電部30は、スイッチング部35の複数のスイッチSWを第一接続状態にする。すなわち、コイルステータ34の各相の8つのコイルLを直列接続した状態にする。
つまり、U相においては、スイッチング部35のスイッチSW8〜SW14を全てON(接続)すると同時に、残りのスイッチSW1〜SW7,SW15〜SW21を全てOFF(切断)する。これにより、コイルLU1〜LU8が直列接続される。
【0044】
このとき、スイッチング部35の出力電圧は、図5の曲線M1に示すように変化する。具体的には、カットイン風力(例えば、風速2m/s、回転主軸20の回転数30rpm)のとき、スイッチング部35の出力電圧はAC40Vとなる。
そして、回転主軸20の回転数が上がって、約50rpmとなると、ステータ駆動部40による発電機31の噛合い率の変化も伴って、スイッチング部35の出力電圧はAC120Vとなる。
つまり、この間において、ステータ駆動部40による発電機31の噛合い率は、図4に示す関係線に従って変化している。
【0045】
そして、回転主軸20の回転数が約50〜90rpmとなると、発電部30は、スイッチング部35の複数のスイッチSWを第二接続状態にする。すなわち、コイルステータ34の各相の8つのコイルLを、4つを直列接続し、かつ、この4つ(2組)を並列接続した状態にする。
つまり、U相においては、スイッチSW4,SW8〜SW10,SW12〜SW14,SW18をON(接続)と同時に、残りのスイッチSW1〜SW3,SW5〜SW7,SW11,SW15〜SW17,SW19〜SW21を全てOFF(切断)する。
これにより、コイルLU1〜LU4、コイルLU5〜LU8がそれぞれ直列接続され、かつ、コイルLU1〜LU4、コイルLU5〜LU8が並列接続される。
【0046】
このとき、スイッチング部35の出力電圧は、図5の曲線M2に示すように変化する。
具体的には、回転主軸20の回転数が約60rpmのとき、スイッチング部35の出力電圧はAC70Vとなる。また、回転主軸20の回転数が約90rpmのとき、スイッチング部35の出力電圧はAC120Vとなる。
この間においても、ステータ駆動部40による発電機31の噛合い率は、図4に示す関係線に従って変化している。
【0047】
そして、回転主軸20の回転数が約90〜140rpmとなると、発電部30は、スイッチング部35の複数のスイッチSWを第三接続状態にする。すなわち、コイルステータ34の各相の8つのコイルLを、2つを直列接続し、かつ、この2つ(4組)を並列接続した状態にする。
つまり、U相においては、スイッチSW2,4,6,8,10,12,14,16,18,20をON(接続)と同時に、残りのスイッチSW1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21を全てOFF(切断)する。
これにより、コイルLU1〜LU2、コイルLU3〜LU4、コイルLU5〜LU6、コイルLU7〜LU8がそれぞれ直列接続され、かつ、コイルLU1〜LU2、コイルLU3〜LU4、コイルLU5〜LU6、コイルLU7〜LU8が並列接続される。
【0048】
このとき、スイッチング部35の出力電圧は、図5の曲線M3に示すように変化する。
具体的には、回転主軸20の回転数が約100rpmのとき、スイッチング部35の出力電圧はAC70Vとなる。また、回転主軸20の回転数が約140rpmのとき、スイッチング部35の出力電圧はAC120Vとなる。
この間においても、ステータ駆動部40による発電機31の噛合い率は、図4に示す関係線に従って変化している。
【0049】
そして、回転主軸20の回転数が約140rpm以上となると、発電部30は、スイッチング部35の複数のスイッチSWを第四接続状態にする。すなわち、コイルステータ34の各相の8つのコイルLを並列接続した状態にする。
つまり、U相においては、スイッチSW1〜SW7,SW15〜SW21をON(接続)と同時に、残りのスイッチSW8〜SW14を全てOFF(切断)する。
これにより、コイルLU1〜LU8が並列接続される。
【0050】
このとき、スイッチング部35の出力電圧は、図5の曲線M4に示すように変化する。
具体的には、回転主軸20の回転数が約150rpmのとき、スイッチング部35の出力電圧はAC60Vとなる。また、定格時、すなわち、回転主軸20の回転数が約170rpmのとき、スイッチング部35の出力電圧はAC80Vとなる。そして、カットアウト風力(例えば、風速15m/s、回転主軸20の回転数200rpm)のとき、スイッチング部35の出力電圧はAC100Vとなる。
この間においても、ステータ駆動部40による発電機31の噛合い率は、図4に示す関係線に従って変化している。
【0051】
なお、風速が下がる場合、すなわち、回転主軸20の回転数が低下する場合には、スイッチング部35の複数のスイッチSWを第四接続状態から第一接続状態に、段階的に変化させる。また、風速が変動する場合には、第一接続状態から第四接続状態のいずれかの状態に変化させる。
したがって、スイッチング部35の出力電圧は、風速の変動に拘らず、例えば40V〜120Vの間で維持される。
【0052】
以上、説明したように、垂直軸型風力発電装置1は、風速に応じてスイッチング部35の複数のスイッチSWを、第一接続状態から第四接続状態のいずれかの接続状態に切替えることで、発電機31の発電電圧を、例えば40V〜120Vの間で維持させることができる。
これにより、風速の変化に拘らず、発電機31の出力電圧の変動幅が一定範囲になるように調整(制御)されるので、バッテリ39を安定して充電することができる。つまり、発電機31の出力電圧を有効に利用することができる。
【0053】
特に、ステータ駆動部40とスイッチング部35を備えることで、バッテリ39を安定して充電することができる。
すなわち、従来のように、ステータ駆動部40のみを備える場合には、発電機31の出力電圧の変化幅が非常に大きくなって、バッテリ39を安定して充電できないという問題を解消することができる。
言い換えれば、垂直軸型風力発電装置1では、ステータ駆動部40とスイッチング部35を同時に備えるので、発電機31の発電効率の向上と発電電圧の安定化を両立することができる。これにより、発電機31の発電電圧を有効利用することができる。
【0054】
上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0055】
例えば、上述した実施の形態では、回転主軸20の回転数に基づいてスイッチング部35を制御する場合について説明したが、これに限らない。
発電機31の発電電圧を検出し、この電圧変化に基づいてスイッチング部35を制御してもよい。つまり、スイッチング部35の出力側に電圧センサを接続し、この電圧センサの検出結果に応じて、コイル切替制御部37によりスイッチング部35を制御してもよい。
この場合には、低圧側の閾値を40V、高圧側の閾値を120Vと設定して、コイル切替制御部37によるスイッチング部35の制御を行う。
【0056】
また、発電機31の噛合い率を検出し、この噛合い率に基づいてスイッチング部35を制御してもよい。すなわち、ロータリーエンコーダ36に代えて、ステータ駆動部40のロータリーエンコーダ44aを用いてもよい。つまり、ロータリーエンコーダ44aの検出結果に応じて、コイル切替制御部37によりスイッチング部35を制御してもよい。
【0057】
なお、マグネットロータ32に対するコイルステータ34の位置を検出する位置センサとしては、ロータリーエンコーダ44aに限らず、リニアスケール(リニアエンコーダ)であってもよい。
また、マグネットロータ32に対するコイルステータ34の位置に応じて作動する複数の近接スイッチ等を用いてもよい。更に、コイルステータ34の位置をレーザ光等により計測する測長センサ(光センサ、超音波センサ)等を用いてもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態では、スイッチング部35の出力側に、整流回路38を介してバッテリ39を接続する場合について説明したが、これに限らない。
バッテリ39及びDC/ACインバータに代えて、パワーコンディショナーを接続してもよい。特に、発電機31の出力電圧が大きい場合には、パワーコンディショナーを用いることが好ましい。
【0059】
また、スイッチング部35に代えて、単巻変圧器等の可変変圧器(可変変圧部)を用いてもよい。すなわち、可変変圧器の一次側(巻線)に発電機31を、二次側(巻線に接触させた可動式摺動子)に整流回路38を接続する。そして、例えば、回転主軸20の回転数に基づいて、可動式摺動子に連結したアクチュエータ等を駆動して、出力電圧を変化させてもよい。
【0060】
また、例えば、上述の実施形態では、垂直軸型風力発電装置について説明したが、水平軸型風力発電装置であってよい。
【0061】
また、垂直軸型風力発電装置(垂直軸型風車)としては、ジャイロミル型に限らない。ダリウス型、直線翼型、サボニウス型、パドル型、クロスフロー型、S型ロータ型等であってもよい。
【0062】
また、作動流体として、風力に限らず、水力であってもよい。つまり、本発明は、水力発電装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…垂直軸型風力発電装置(流体発電装置)、 10…風車(羽根車)、 20…回転主軸(回転軸)、 31…発電機、 32…マグネットロータ(可動子)、 34…コイルステータ(固定子)、 35…スイッチング部(可変変圧部)、 36…ロータリーエンコーダ(回転数検出センサ)、 37…コイル切替制御部、 40…ステータ駆動部(対向面積変更部)、 44a…ロータリーエンコーダ(位置センサ)、 L…コイル、 SW…スイッチ、 W…風(作動流体)、 F…地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の移動により回転する羽根車と、
前記羽根車とともに回転する回転軸と、
前記回転軸の回転によって得られる回転力を変換して電力を発電する発電機と、
前記発電機に接続して前記発電機の発電電圧を所望の電圧範囲に変圧する可変変圧部と、
前記発電機の固定子と可動子を相対移動させて、前記固定子と前記可動子の対向面積を変化させる対向面積変更部と、
を備えることを特徴とする流体発電装置。
【請求項2】
前記可変変圧部は、前記発電機が有する複数のコイルの接続方式を切替えるスイッチング部であることを特徴とする請求項1に記載の流体発電装置。
【請求項3】
前記スイッチング部は、前記複数のコイルの接続方式を複数の接続状態のいずれか一つに切替えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体発電装置。
【請求項4】
前記スイッチング部は、前記回転軸の回転数を検出する回転数検出センサの検出結果に基づいて、前記複数のコイルの接続方式を切替えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体発電装置。
【請求項5】
前記スイッチング部は、出力側に接続した電圧センサの検出結果に基づいて、前記複数のコイルの接続方式を切替えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体発電装置。
【請求項6】
前記スイッチング部は、前記固定子と前記可動子の相対位置を検出する位置センサの検出結果に基づいて、前記複数のコイルの接続方式を切替えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−259641(P2011−259641A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133214(P2010−133214)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】