液中作業装置及び液中作業方法
【課題】貯蔵プールの水中で、狭隘部や障害物があっても、目的とする部位の各種作業を遠隔地点から行うことにある。
【解決手段】水中を航行する遠隔操縦式移動体であるROV6,17,26に電動ウインチ8と空気袋6bに接続された吸着パッド6aや、内視鏡カメラ22やサンプリングヘッド29を装備させ、それらを貯蔵プール1の外側から操作卓13等で操縦して、容器2を吸着パッド6aで吸着保持して検査個所から移動させる作業や、内視鏡カメラ22を用いてその移動跡での観察作業を行ったり、サンプリングヘッドで貯蔵プール壁面に付着した物質の採取作業を行ったりする。
【解決手段】水中を航行する遠隔操縦式移動体であるROV6,17,26に電動ウインチ8と空気袋6bに接続された吸着パッド6aや、内視鏡カメラ22やサンプリングヘッド29を装備させ、それらを貯蔵プール1の外側から操作卓13等で操縦して、容器2を吸着パッド6aで吸着保持して検査個所から移動させる作業や、内視鏡カメラ22を用いてその移動跡での観察作業を行ったり、サンプリングヘッドで貯蔵プール壁面に付着した物質の採取作業を行ったりする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中を航行する移動体を利用して液体中で各種作業を実施する装置及びその作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中に存在する物体を回収する水中作業装置としては、沈殿池や水路の除貝を目的としたロボットや回収装置がある(例えば、特許文献1,2参照)。また、原子力関連施設では固体廃棄物貯槽における廃棄物の回収方法の公知例として水を排除してから回収する方法がある(例えば、特許文献3参照)。また、タンク内や容器中の水中点検・清掃ロボットの公知例もある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−163716号公報
【特許文献2】特開平07−214019号公報
【特許文献3】特開平10−274698号公報
【特許文献4】特開平11−188327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
沈殿池や水路の除貝を目的としたロボットや回収装置では、狭隘部や障害物がある場合の回収までは考慮されていなかった。また、固体廃棄物貯槽における廃棄物の回収方法では水を排除してからの回収方法のため水中での回収方法は考慮されていなかった。また、タンク内や容器の中の水中で点検したり清掃したりするロボットは水中で作業を行うロボットではあるが、狭隘部や障害物の裏を点検したり、点検の障害となる障害物などを回収して退かすことまでは考慮されていなかった。
【0005】
本発明の第1目的は、液中での作業に障害となる障害物を退かして作業環境を改善する作業に従事する装置を提供することであり、第2目的は、液中でのカメラによる観察作業の障害となる障害物が有っても観察作業しやすい装置を提供することであり、第3目的は、液中の壁面に付着した物質を回収する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1目的を達成するための液中作業装置の基本的構成は、液中を航行する移動体と、前記移動体に装備されて前記液中の物体を保持及び保持解除するハンドリング装置と、前記ハンドリング装置に接続された牽引装置と、を備えた点である。
【0007】
本発明の第2目的を達成するための液中作業装置の基本的構成は、液中を航行する移動体と、前記移動体から突き出るように前記移動体に装備された固定アームと、前記移動体に観察対象物の方向へ進退自在にして装備した可動アームと、前記可動アームの可動端部分に懸垂支持されるとともに、観察対象像の取り込み口の方向が可変できる観察装置と、を備えた点である。
【0008】
本発明の第3目的を達成するための液中作業装置の基本的構成は、液中を航行する移動体と、前記移動体に装備されたフードと、前記フードの内側で前記フードの開口部の方向へ進退自在に支持された回転ブラシと、前記回転ブラシを駆動する原動機と、前記フード内の液体を吸引する吸引装置と、前記フード内の圧力を調整する圧力制御装置と、前記フードの開口部の縁に設けられたシール部材と、を備えた点である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による液中作業装置を用いれば、プール等の液体を貯留する施設の水を抜くことなく、液中で、狭隘部や障害物があっても、その部位に対して目的とする観察,点検,検査,異物回収,補修、あるいは障害物などの回収の作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した放射性廃棄物が収容された容器を貯蔵した貯蔵プールの断面図である。
【図2】本発明の実施例1を適用した放射性廃棄物が収容された容器を貯蔵した貯蔵プールの断面図である。
【図3】本発明の実施例1におけるROVの構成を示した全体図である。
【図4】本発明の実施例1におけるROVに搭載する吸着パッドを示す図であり、(a)図は吸着パッドの内側面を見た図であり、(b)図は吸着パッドの縦断面図であり、(c)図は(b)図のA−A断面図である。
【図5】実施例1における回収装置の断面図である。
【図6】本発明の実施例2を適用したROVの構成を示した全体図である。
【図7】本発明の実施例3を適用したROVの構成を示した全体図である。
【図8】図7におけるサンプリングヘッドの内部概要を示した断面図である。
【図9】図8における回転ブラシと送り機構を一つの駆動モータで駆動する為の機構を示した平断面図である。
【図10】図8における回転ブラシと送り機構を一つの駆動モータで駆動する為の機構を示した立面図である。
【図11】図9のA−A断面図である。
【図12】本発明の実施例による吸着パッドの変形例を示した図であり、(a)図は一部断面表示による全体構成図、(b)図は(a)図のA−A矢視図である。
【図13】本発明の実施例による可動アームと内視鏡ホルダの組合せ構成の変形例を示した図であり、(a)図は一部断面表示による全体構成図、(b)図は(a)図のA−A矢視図である。
【図14】図7におけるサンプリングヘッドの変形例を示した断面図である。
【図15】図14のサンプリングヘッドを採用したROVを有する水中作業装置の全体図である。
【図16】図8における回転ブラシと送り機構を一つの駆動モータで駆動する為の機構の変形例を示したもので、(a)図はその機構の平断面図、(b)図は(a)図のA−A矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の第1実施例を説明する。図1,図2のように、水を貯留する施設である貯蔵プール1は、コンクリート製の躯体1aの内壁面にライニング4が施され、上方には開口部3が一部分だけ設けられている構成を有する。このような貯蔵プール1は、原子力関連施設に限らず、下水処理施設関連や化学プラントの人体にはあまり好ましくない液体を貯蔵する沈澱貯層や地下タンクなどに用いられている。
【0012】
本実施例では、原子力関連施設の一つとして、放射性廃棄物を密封した円筒状の容器2を貯蔵プール1内に投棄して水没状態にて保管する施設に本発明を適用した内容で説明する。
【0013】
貯蔵プール1の躯体1aの垂直な壁の上方には、補強ベース16hが置かれる。その補強ベース16hの上方には貯蔵プール1の上方を覆うように補強床16iが置かれる。その補強床16iは貯蔵プール1の開口部3の真上にその開口部3と同じ大きさの開口1bを備えている。
【0014】
図1において、貯蔵プール1の水面1c下、即ち水中には、水中作業時に障害となる容器2が多数おかれている。貯蔵プール1内は放射線環境下にあり、人による直接作業は困難である。貯蔵プール1の天井より上部、即ち躯体1aより上側では作業員が耐放射線上必要な管理をすれば作業のできる空間がある。また、貯蔵プール1の天井には、開口部3があって、貯蔵プール1内へ容器2が投棄される。そのため、容器2が邪魔となりライニング4を直接に観察,検査,点検,補修などの各種作業を行うことは難しい。
【0015】
図2は、図1に示す狭隘な部分の要因となる容器2を安全に現状の位置から移動,回収する作業を実施するための水中作業装置を貯蔵プール1に適用した状態を示しており、図3はその水中作業装置の全体構成を、図4は水中作業装置の遠隔操縦式移動体(以下、ROVという。)6に搭載した吸着パッド6aの構成を、図5は容器回収装置16の詳細構成を示す。
【0016】
図2,図3において、貯蔵プール1内の水中を浮遊移動して航行可能なROV6は水中の容器2を把持および移動する為の吸着パッド6aと、浮力増加用の大きさの可変制御可能な空気袋6bを持つ。このROV6は水平と垂直を含めて三次元方向への推進装置を備え、その三次元方向へ水中を航行できる。このROV6には、照明装置とビデオカメラとが搭載されている。
【0017】
このROV6には、ジョイント6dによって上下回転自在なフレーム6cが装備される。そのフレーム6cの回転自由端側部分には、貯蔵物体である容器2を保持及び保持解除するハンドリング装置の一部である吸着パッド6aが固定されている。このROV6には、そのフレーム6cを上下方向へ回転させる駆動装置が内蔵されている。このようなROV6は、貯蔵プール1の外の場所に置かれた操作卓13で遠隔操縦される。その操縦に必要な信号やROV6の駆動に必要な電力はROV6に接続されたケーブル6mによって供給されている。操作卓13とROV6に接続されたケーブル6mの途中は貯蔵プール1の外側でケーブルコネクタ9dで着脱自在に接続されている。
【0018】
ROV6はその操作卓からの遠隔操縦により、水中での三次元方向への航行やフレーム6cの回転駆動制御を行得る。その操縦に際しては、ROV6に搭載した照明装置によって照らし出された場所をビデオカメラで撮像してモニタ14乃至は操作卓の画像表示装置に画像として、その画像を見ながらROV6を遠隔操縦する。
【0019】
フレーム6cに装着されているハンドリング装置は、吸着パッド6aと吸着パッド6aに真空吸着力を付与するハンドリング装置の動力源とその動力源から吸着パッド6aへ接続したホース6kとから構成されている。そのハンドリング装置の動力源は、ホース6kが接続されたタンク12と、そのタンク12へ接続されたエアポンプ12bと、同じくそのタンク12に接続された真空ポンプ12aを構成として備えている。
【0020】
その真空ポンプ12aを駆動してタンク12内の気体を真空ポンプ12aで排気するとそのタンク12内とホース6k内が真空となってその真空が吸着パッドへ供給され、その吸着パッド6aは真空吸着力を発揮することができる。また、エアポンプ12bを駆動してそのタンク12内に空気を供給してやると、タンク12内やホース6k内の真空状態は解消されて吸着パッド6aの真空吸着力は解消される。そのため、吸着パッド6aは真空吸着力を発揮することで容器2を吸着保持することが出来、真空を解消することで容器2の保持を解除することができる。そのホース6kの途中は補強床16iの上方においてホース6kの途中を着脱するコネクタ9cで接続されている。
【0021】
この吸着パッド6aは、図4のように、容器2の外周面の曲率と同じ曲率の内周面を有するケーシング6fと、そのケーシング6fの内周面に、ケーシング6fの縁に沿って装着したシール部材6eと、そのケーシング6fの内周面に間隔を置いて固定されて容器2の外周面との間に空間6hを形成維持する為のスペーサと、その空間6hへ連通するようにケーシング6fに固定した吸気口6gとしての配管とで構成されている。その吸気口6gにはホース6kが接続されている。そのため、ホース6kを介してその空間6hに真空が供給されたり、空間6hの真空が解消されたりして、上述のように吸着パッド6aが容器2に真空吸着して保持した真空が解消されてその保持を解除したりできる。
【0022】
吸着パッド6aのケーシング6fの中央部には、図3のように、浮力体として空気袋6bが接続され、その空気袋6bには、ホース6nを介してタンク11が接続され、そのタンク11にはエアポンプ11bと真空ポンプ11aとが接続されている。そのエアポンプ11bを駆動すると、タンク11内の圧力が上昇してホース6nを介して空気袋6bにタンク11から圧縮空気が供給され、空気袋6bが膨張する。また、真空ポンプ11aを駆動してタンク11内の空気を排気すると、空気袋6b内の空気が空気袋6bから排気されて空気袋6bが収縮する。このように、空気袋6bを膨張及び収縮させることによって、空気袋6bによる吸着パッド6aやROV6へ与える浮力の大きさを制御する。そのホース6nの途中は貯蔵プール1の外側でホースコネクタ9bで着脱自在に接続されている。
【0023】
吸着パッド6aのケーシング6fの中央部には、牽引装置が接続されている。その牽引装置は、図3のように、ケーシング6fの中央部に一端が接続されているワイヤロープ7と、そのワイヤロープ7の他端が巻き取り及び繰り出し自在に接続されている電動ウインチ8と、その電動ウインチ8に接続してその電動ウインチ8を貯蔵プールの水面と貯蔵プールの天井との間の気相空間の位置に懸垂支持するワイヤロープ6pとを備えている。そのワイヤロープ6pは途中がコネクタ9aで着脱自在に接続され、そのワイヤロープ6pの端部は補強床16i上の支持架台10に連結されている。ワイヤロープ7の一端をケーシング6fに接続する代わりにワイヤロープ7の一端をROV6へ接続することで牽引装置をROV6に接続するようにしても良い。
【0024】
図5のように、補強床16i上には、容器回収装置16が配備されている。その容器回収装置16は以下のような構成を有する。即ち、キャスタ16gの取り付いたハウジング16fが台車として補強床16iの上に平面移動自在に装備されている。そのハウジング16fには、放射線遮蔽材を用いて造られた遮蔽キャスク16cが遮蔽容器として備えられている。その遮蔽キャスク16cは下方のみが開口し、その開口は放射線遮蔽材を用いて造られた開閉式キャスク底16dによって開閉自在にされている。その開閉式キャスク底16dはキャスク底開閉装置16eで遮蔽キャスク16cの開口を閉じる方向と開く方向へ駆動できる。そのキャスク底開閉装置16eは、開閉式キャスク底16dに固定したラックと、そのラックに噛合うピニオンと、ハウジング16fに設けられてピニオンを回転駆動する電動モータとで構成される。その電動モータによるピニオンの回転方向によって開閉式キャスク底16dによる遮蔽キャスク16cの開口の開閉作用が達成される。
【0025】
その遮蔽キャスク16cにはゴンドラ昇降装置16bが昇降装置として設置されている。ゴンドラ昇降装置16bはボールスクリューネジ軸とそのボールスクリューネジ軸が通されたボールナットと、そのボールナットを回転駆動する電動モータとで構成される。ゴンドラ昇降装置16bは、そのボールスクリューネジ軸の下方への延長部分が遮蔽キャスク内を貫通して貯蔵プールの水面下に達する昇降ストロークを設定してある。そのボールスクリューネジ軸の下方への延長部分である昇降シャフト16kには、容器2を収納するゴンドラ16aが固定されている。
【0026】
ゴンドラ16aは、容器2が一個収納できる大きさを有し、且つ上下が閉鎖された円筒状の形状を有し、その円筒側面は180度の角度の領域が蝶番16pを回転中心とした観音開きの蓋16mで開閉自在とされている。その蓋16mは蝶番16pに組み込んだ水密にシールドされたモータによって開閉駆動し、その開閉駆動の制御は遠隔制御によって行う。そのため、蝶番16pに組み込んだモータを遠隔で駆動制御するリモートコントローラを備えている。そのゴンドラ16aの天井の外側面には照明装置16nが設置されゴンドラ16aの周辺での作業環境を明るくできるようにしてある。
【0027】
このようなゴンドラ昇降装置16bにあっては、電動モータでボールナットを回転駆動すると、ボールスクリューネジ軸がその回転量に応じ、且つその回転方向に応じて上下にストロークする。そのため、開閉式キャスク底を開いている状態において前述のストロークを行うと、ゴンドラ16aが貯蔵プール1の水面下と遮蔽キャスク16c内との間で昇降できる。
【0028】
容器回収装置16の構成として、遮蔽キャスク16cに乾燥装置16jと洗浄装置16oとが設けられている。その洗浄装置16oは洗浄液を遮蔽キャスク16c内に噴射する装置と、その噴射後の使用済洗浄液を回収して濾過して再利用する装置とを備えている。乾燥装置16jは、遮蔽キャスク13c内に温風を供給する温風発生装置と遮蔽キャスク13c内供給された温風を吸い込んでその温風に同伴されてきた塵や水分を補足する集塵装置とを備えている。
【0029】
容器回収装置16が貯蔵プール1の天井に直接搭載されることはその天井の強度上避けるべきである。そのため、貯蔵プール1を囲むコンクリート壁の真上に当たる床面に補強ベース16hを設置し、補強ベース16hの上に補強床16iを乗せ、この補強床16iの上を容器回収装置16はキャスタ16gによって移動するようにしている。この補強床16iに乗る装置や機器などの荷重は補強ベース16hによって貯蔵プールの周囲全体に分散される。
【0030】
図6に示したROV17は、貯蔵プール1のライニング4の表面の状態、或いはその表面に付着した物質を観察する作業に用いる水中作業装置である。そのROV17とその操縦のための操作卓23は、図3の操作卓13やROV6との関係と同様で、ROV17を操作卓23で遠隔操縦できる構成となっている。そのROV17と操作卓23とを接続するケーブル6mは、貯蔵プール1の外側で途中が着脱自在なジョイント23aによって接続されている。
【0031】
そのROV17には、少なくとも3本以上の複数本の固定アームが水平に突き出されて固定されている。また、そのROV17には、ジョイント19で平行リンク構造の可動アーム20が上下回転自在に装備され、そのROV17に内蔵したモータでその可動アーム20を上下回転自在に駆動できるように構成してある。その可動アーム20の回転自由端側のリンクメンバーには水平に内視鏡ホルダ21が固定されている。
【0032】
その内視鏡ホルダ21には内視鏡のケーブル6rの途中部分が懸垂支持されている。その内視鏡カメラ22の下端は観察対象の像を取り込む窓口となっている。観察対象がライニング4の面である場合には、その面の像が取り込めるように内視鏡カメラ22の下端が水平方向に曲がることができる。このように、内視鏡カメラ22の下端は操作卓23から向きを変化させる制御ができるように構成されている。
【0033】
操作卓23には、内視鏡カメラが取り込んだ検査対象の像を画像として表示するモニタと、その画像を記録する記録装置とが接続されている。そのモニタには、ROV17に搭載したビデオカメラで取り込んだ像を表示できるようにも構成されている。
【0034】
図7に示したROV26は、貯蔵プール1のライニング4の表面に付着した物質を採取する作業に用いる水中作業装置である。そのROV26とその操縦のための操作卓34は、図3の操作卓13やROV6との関係と同様で、ROV26を操作卓34で遠隔操縦できる構成となっている。そのROV26と操作卓34とを接続するケーブル6mは、貯蔵プール1の外側で途中が着脱自在なコネクタ30cによって接続されている。
【0035】
図7に示すROV26には、ジョイント27を介して可動アーム28が上下回転自在に装着され、その可動アーム28はROV26に内蔵したモータでジョイント27を回転中心部とした上下回転方向に駆動できる構成を有する。その可動アーム28の回転自由端部分にはサンプリングヘッド29が固定されている。
【0036】
サンプリングヘッド29は図8のように、可動アーム28に固定されたフード29dと、そのフード29d内で押し付けばね29bで支持された回転ブラシ29aと、回転ブラシ29aを押し付けばね29bとともにライニングに沿って上下方向に移動させる送り機構29cと、を備えている。その押し付けばね29bのばねストローク量だけ回転ブラシ29aはフードの開口部の方向へ進退自在である。そのフード29dには、上方にそのフード29d内に連通するエア供給口29fが備わり、下方にそのフード29d内に連通する吸水口29gが備わる。その図8のフード29dの左側にはフード29dの開口が設けられ、その開口の縁にはシール部材29eが開口全周囲に配置されて設けられている。
【0037】
このようなサンプリングヘッド29のエア供給口29fにはホース29hがポンプ31との間で接続され、その途中は貯蔵プール1の外側で着脱自在なコネクタ30aで接続されている。同じく吸水口29gには、ホース29iがフィルタ32との間で接続され、その途中は着脱自在なコネクタ30bで接続されている。そのフィルタ32には吸水ポンプ33が接続されていて、吸水ポンプ33でフード29d内の液体をホース29iとフィルタ32を通じて吸い込むことができる。
【0038】
フード内の送り機構と押付ばねと回転ブラシとの組合せ構成は図9,図10,図11の通りである。即ち、回転ブラシ29aの回転機構は、駆動モータ36軸から動力を伝え、軸受39aで支持される軸37aに取り付けられた歯車38aと、軸37aとは平行且つ段違いの場所に配置された軸37c,歯車38b、及び軸37d,歯車38cと、前記歯車38a,38b,38dに動力を伝達するベルト41と、ケーシング29lに設けられたガイド溝に沿って図の左右方向へのスライドが可能であり、軸受39d,39eを有すスライドバー40a,40bと、ベルト41から動力を伝達される歯車38dが取り付けられ、スライドバー40a,40bとともにスライドする軸37eによって構成され、回転ブラシ29aは軸37eに取り付けられる。スライドバー40a,40bには押し付けばね29bが取り付けられている為、対象面に回転ブラシ29aを押し付けると、反力と押し付けばね力の平衡する場所にスライドバーは移動する。送り機構29cは軸37aに取り付けられた歯車42aと、軸受39cによって支持される軸37bと、減速用歯車42bとフード29dの内壁に固定したラック43、およびフード29dの内壁にレール部が設置されたガイドレール29mで構成される。この機構を用いれば、回転ブラシ29aと送り機構29cは1台の駆動モータ36で駆動することができる。また、押し付けばね29bにより回転ブラシ29aが図の左右方向へと移動した場合でも、ベルト41に歯車38dがかみ合う為、回転ブラシ29aの駆動が可能である。このとき、回転ブラシと送り機構29cが所定の速度となるように、各構成要素間が適切な減速比及び回転方向となるような減速機構を設けても良い。
【0039】
次に、各水中作業装置による各作業を以下に説明する。貯蔵容器のライニングに容器が寄りかかっていると、その容器とライニングとの間は狭隘でライニングの表面を観察できない。その場合には、図2の様に、ROV6を貯蔵プール1の水中に投入して、そのROV6を利用してライニングに寄りかかって邪魔な容器2を安全に現状の位置から移動,回収する作業を行う。
【0040】
その作業では、まず、容器回収装置16のゴンドラ16aを開口部3から貯蔵プール1の水中へゴンドラ昇降装置16bによって下ろす。ゴンドラ16aが下ろされている間は作業性の向上のため照明16nを点灯しておき、ゴンドラ16aが水中に達した地点で蓋16mを開く。また、同様に貯蔵プール1の水中に開口部3からROV6を投入した後、作業員は操作卓13でROV6を遠隔操縦して、ROV6に搭載したビデオカメラによる画像を操作卓13の表示装置又はモニタ14で見ながら、回収目標とする容器2にROV6を到達させる。
【0041】
次にROV6は目標の容器2の静止状態の角度に吸着パッド6aの角度が合うようにフレーム6cをジョイント6dを回転中心に回転させ、その容器2に吸着パッド6aのシール部材6eを、例えば図4のように、接触させる。そして真空ポンプ12aを駆動してタンク12を真空にすることで吸着パッド6aを容器2に吸着させ保持させる。
【0042】
その容器2の吸着パッド6aによる保持が完了した後、電動ウインチ8でワイヤ7を巻き上げ、吸着パッド6aを上方へ牽引することで吸着パッド6aで保持した容器2を引き上げる。この方法は、容器2の重量が重い場合にROV6に負担をかけないので有効である。このとき、引き上げられた容器2は開口部3の鉛直下で宙吊りの状態となる。開口部3は貯蔵プール1の側面のライニング4から離れた中央部にあるので、ここでエアポンプ12bを駆動して吸着パッド6aの容器2への吸着を解除すると、容器2が吸着パッド6aから離れて水中を降下して、開口部3の真下へ移し変える移動作業ができる。
【0043】
容器2の移動作業に際しては、空気袋6bを用いて容器2の中性浮力化を図り、ROV6の推力を用いて吸着パッド6aで保持した容器2を移動させても良い。この方法では、エアポンプ11bでタンク11内を加圧して加圧した空気をタンク11から空気袋6bへ供給して空気袋6bを膨張させる。この時の空気袋6bへ供給する空気量の調節により、容器2の中世浮力化が可能であり、またはそれ以上の浮力の獲得も行え、容器2の移動が容易になる。また、真空ポンプ11aを駆動してタンク11内の空気を排出すれば、空気袋6bは縮小して浮力が低下して次の容器を回収する作業に移行できる。
【0044】
このように、空気袋6bを活用すれば、ROV6の推進力で容器2を貯蔵プール1の開口部3の真下に移動させることができるので、ワイヤ7と電動ウインチ8を活用して牽引する必要もない。しかし、ROV6にワイヤ7と電動ウインチ8による牽引装置を接続して空気袋6bとともに両者を活用するようにしても良い。
【0045】
この場合では、容器2の周囲で空気袋6bを膨張させるスペースが取れない場合などに、吸着パッド6aで容器2を把持した後に牽引装置で十分スペースの取れる位置まで牽引し、空気袋6bを膨らませて容器2を中性浮力化し、ROV6の推力を用いて移動させることができる。
【0046】
また、垂直なライニング4の近く投棄されている容器2の回収を行う場合は、空気袋6bを膨張させて容器の中性浮力化を行い、ROV6の推力によって容器2をゴンドラ16a内まで移動させ、ゴンドラ16aのケーシング16lに容器2を納め、吸着パッド6aの容器2への吸着を解除する。ROV6がゴンドラ16a付近から安全な位置まで退避した後、ケーシング16lの蓋16mを閉じ、ゴンドラ16aをゴンドラ昇降装置16bによって上昇させ遮蔽キャスク16c内へ到着させ、その容器2をゴンドラ16aごと収納する。
【0047】
その後に、開閉式キャスク底16dをキャスク底開閉装置16eによって閉じる。そして、蓋16mを開いた状態で遮蔽キャスク16c内部に洗浄装置16oからの洗浄液を噴出させてゴンドラ16aや容器2を洗浄液で浄化させる。洗浄液は再度浄化されて再度遮蔽キャスク内に噴出させられる。その洗浄の作業が終了した後に、乾燥装置の温風発生装置16jから遮蔽キャスク16c内へ温風が吹き込まれ、ゴンドラ16aや容器2や遮蔽キャスク16c内が十分乾燥させられる。その乾燥作業に際して遮蔽キャスク16c内に吹き込まれた温風は再度温風発生装置内に吸い込まれてフィルタで濾過され且つ過熱されて再度吹き込まれることになる。このように、浄化及び乾燥された容器2は遮蔽キャスク16c内に収納されたまま、回収装置16がキャスタ16gによって移動することで目的地まで運搬され、運搬先で他の貯蔵プール等に移し変えられ、回収作業が終る。
【0048】
ライニング4を観察する際に障害となっていた容器を全て回収乃至は邪魔でない位置に移動させた後は、電動ウインチ8は貯蔵プール1の内側で使用されたものであり、ワイヤ7や電動ウインチ8は汚染された水が付着している。そこで、作業員の作業空間、即ち貯蔵プール1の外側にあるジョイント9aを切り離すことで、電動ウインチ8は人が直接汚染部位に触れることなく貯蔵プール1内に廃棄する。また、ROV6の構成機器に放射線による劣化が生じた場合は、コネクタ9b,コネクタ9c、及びコネクタ9dを切り離すことによって貯蔵プール1内に投棄することも可能である。
【0049】
以上のように、ライニング4に接触していた、もしくは接近していた容器2を移動することにより、ライニング4の観察,検査,ライニング4への付着物の回収、およびライニング4の補修などの各種作業が行えるスペースを確保することができ、観察,検査,回収、および補修などを行う装置によって作業を行うことができる。また、作業員が汚染物質に直接触れることなく、容器2の移動及び回収作業を安全に行うことができる。
【0050】
このようにライニング4の観察場所近くに広い観察作業スペースが確保されたとしても、容器2が観察作業スペース周囲に存在してまだ十分な作業スペースが得られないような場合には、観察作業を行うROV17を開口部3から所蔵プール1内の水中に投入する。
その後に、操作卓23でROV17を遠隔操縦する。操縦者はROV17に内蔵するビデオカメラによって得られる水中の映像をモニタ24で確認しながら、ROV17を観察個所の上方へ移動させる。
【0051】
次に、ROV17をライニング4の方向へ推進させ、ROV17の推進力で固定アームをライニング4に押し当てて静止させる。その静止位置は、可動アーム20を回転して内視鏡カメラ22の先端が観察個所に到達可能な位置とする。これによりROV17がライニング4へ推進力で押付固定され、内視鏡カメラ22による観察中の内視鏡カメラ22の揺れを防止できる。
【0052】
このときライニング4付近の狭隘なスペースに内視鏡カメラ22は先端部のみでアクセスすることになるので、内視鏡カメラ22が挿入できる程度のわずかな隙間があれば、内視鏡カメラ22の首振り機構を利用してその狭隘な個所のライニング4の表面の映像を入手することができる。また、可動アーム20を上下に回転移動させることにより、内視鏡カメラ22の正確な位置決めや微調整が可能である。
【0053】
内視鏡カメラ22によるライニング4の表面の観察作業中は内視鏡カメラ22の映像を収集し、記録装置25に映像を記録する。また、ROV17の構成機器に放射線による劣化が生じた場合は、ジョイント23a、およびコネクタ23bを切り離すことによってROV17を貯蔵プール1内に投棄することも可能である。
【0054】
このようにして、ライニング4に接近している容器を移動乃至は回収してROV17が到達できるスペースを確保し、そのスペースに静止させたROV17から内視鏡カメラ22を懸垂して、狭隘なスペースにおけるライニング4部の観察作業が可能となる。その観察個所が移動させた容器2が接触していたライニング4の部位である場合には、その内視鏡カメラ22の下端はその個所に向けられて、その個所を撮影して記録することができる。
【0055】
ライニング4の表面を観察した後に、その表面に付着している付着物を採取する場合には、次のような採取作業が行われる。即ち、図7に示した構成を用いてライニング4に付着した付着物のサンプルを採取するが、その方法は以下の通りである。先ず、作業員は開口部3からROV26を貯蔵プール1内の水中に投入し、操作卓34でROV26を遠隔操縦する。操縦者はROV26に内蔵するカメラによって得られる水中の映像をモニタ35で確認しながら、ROV26を付着物のあるライニング4の壁面へ移動させる。
【0056】
その壁面手前でROV26の可動アーム28を水平となる方向へ回転させ、サンプリングヘッド29のフード29dの開口部が壁面に正対するようにする。その後に、サンプリングヘッド29をROV26の推力を用いてライニング4に押し付ける。このようにすると、サンプリングヘッド29のフード29d内部はライニング4に接触するシール部材29eによって密閉される。
【0057】
このように、フード29d内部を密閉した後に、吸水ポンプ33を駆動することによって吸引ホース29iを通じてフード29d内の水を吸水してフード29d内がフード29dの外に比較して負圧にする。そのフード29dの内外間の負圧の関係が成立するように流量を調整しながらホースを介してエアポンプ31から空気をフード29d内に送る。このことにより、サンプリングヘッド29は壁面に吸着し、ROV26もライニング4側へ固定することができる。
【0058】
次に、壁面に押し付けられた回転ブラシ29aを駆動モータ36で回転駆動してライニングに付着した付着物をサンプルとして回転ブラシ29aでライニングから掻きとって剥離させ、付着物をフード29d内に採集する。サンプルの採取が終了した後、フード29d内への浸水による剥離サンプルの希薄を避けるため、ROV26の推力でサンプリングヘッド29を押し付けながら、もしくはフード29d内の負圧を維持させながら、エアポンプ31から空気をフード29d内に供給しつつ、吸水ポンプ33によってフード29d内の剥離したサンプルをフード29d内部の水と一緒に吸引する。
【0059】
このようにして吸引した剥離サンプルはフィルタ32で濾し取られる。このフィルタ32を回収することで作業員は最低の被爆量でサンプルを回収することができる。また、ROV26の構成機器に放射線による劣化が生じた場合は、コネクタ30a,コネクタ30bおよびコネクタ30cを切り離すことによって貯蔵プール1内にROV26を投棄することができる。以上により、ライニング4に付着した付着物のサンプルを採取することができる。
【0060】
図12に示した吸着パッドは、図3,図4に示した吸着パッド6aの代替え品である。即ち、図12に示すように、円筒状且つ円筒曲面が蛇腹形状の吸着部61iは、一端部が閉止板で閉鎖され、もう一端側が開口している。その閉止板には吸着部61iの内外を通じる配管が排出口61jとして設けられ、その排出口61jを構成する配管の端部を塞ぐように蓋61kが開閉自在に設けられている。蓋61kは、ばね力により自動的に排出口61jを閉じるように排出口61jを構成する配管に取り付けられている。
【0061】
その蓋61kにはワイヤ61lが接続され、そのワイヤ61lは巻上モータ61mで駆動される巻上装置に巻きかけられている。そのため、巻上モータ61mで巻上装置を駆動すると、その回転駆動方向に応じてワイヤ61lを巻上装置に巻き取ったり繰り出したりできる。その巻上装置は巻上モータ61mとともに図3のROV6の中に内蔵してもよいし、貯蔵プール1の外に配置しておいても良い。
【0062】
このような図12に示した吸着パッドは、図3のROV6に装着した吸着パッド6aの変わりに装着される。その装着はROV6のフレーム6cの回転自由端に吸着部61iの閉止板を固定して成される。
【0063】
図12に示した吸着パッドは回収乃至は移動させる容器2にROV6の推進力を用いて吸着部61iの開口部分を押し付けると、吸着部61iの蛇腹構造部分が縮まって吸着部61i内の圧力が高まり、排出口61jから水が蓋61kを押し上げ、外部に排出される。水が排出され終わると、蓋61kはばね力によりすぐに閉じる為、縮んだ吸着部61iの蛇腹構造部分が元の状態に伸びない。そのため、吸着部61i内は負圧となり、吸着部61iは容器2に吸着して容器を保持可能になる。
【0064】
容器2を図12に示した吸着パッドから放すときは、巻上げモータ61mによりワイヤ61lを巻き取って、ワイヤ61lを引けば、蓋61kはばね力に抗して開き、吸着部61i内に周囲の水が排出口61jを通じて流入する。このように、吸着部61i内に周囲の水が排出口61jを通じて流入すると、吸着部61i内の圧力は周囲の圧力と均等になって容器を吸着している力が喪失し、容器2は吸着部61iから離れることができる。
【0065】
以上により図12に示した吸着パッドは容器2の把持,開放ができ、この吸着パッドによって図3に示す吸引用のタンク12やホース6kを用いずに、図3に示した水中作業装置と同等な作業を行うことが可能である。また、この吸着パッドは水中の図1に示す容器2の形状でなくとも、平面や球面を持つものであれば吸着が可能である。
【0066】
図13に示した可動アームと内視鏡ホルダの組合せは、図6に示した可動アーム20と内視鏡ホルダ21との組合せ構造と置き換えて使用される構成である。即ち、図6に示した平行リンク形式の可動アーム20の代わりに可動アーム55がROV17へ固定ジョイント54部分で水平に固定される。その可動アーム55は、図13のように、テレスコピック構造による伸縮構造を備え、一端が固定ジョイント54に固定されている。その可動アーム55は、可動アーム55内部に設けたピストン・シリンダ装置で伸縮駆動可能とされている。
【0067】
その可動アーム55の伸縮端部には内視鏡ホルダ21が固定されている。その内視鏡ホルダ21は、内視鏡ホルダ21に内蔵したモータ21bで回転駆動される一対のローラ21aと、上下端部に一対ずつ回転自在に設けたガイドローラとを備えている。
【0068】
その一対のローラ21aとガイドローラは内視鏡ホルダ21内で内視鏡カメラ22のケーブルを上下方向に通過させるように挟み込んでいる。そのため、モータ21bでローラ21aを回転駆動すると、その回転駆動方向に応じて内視鏡カメラ22を上下方向へ移動させ、内視鏡カメラ22の撮像高さを調整できる。
【0069】
このような図13に示した可動アーム55と内視鏡ホルダ21を図6のROV17に採用すれば、可動アーム55を水平方向へ伸縮させることによって、内視鏡カメラ22のライニング4の壁面への寄り付きを調整することができ、内視鏡ホルダ21による内視鏡カメラ22の上下方向の移動で内視鏡カメラ22の深さ方向への距離を調整することができ、狭隘部へ内視鏡カメラ22の先端を挿入できる。以上の図13に示した構成要素を搭載したROV17においても、図6のROV17による水中観察作業は可能であり、この構成要素を用いれば、内視鏡カメラの先端部寄り付き時の位置決めが水平方向,垂直方向の直線操作となるので容易である。
【0070】
図14に示したサンプリングヘッドは、図7,図8に示すサンプリングヘッド29に置き換えて、図7のROV26に採用して使用されるものである。図14に示したサンプリングヘッドは、図7のROV26の可動アーム28の回転自由端部に固定されたフード29dを有する。そのフード29dは、図14のように、空気溜り44が形成されている。その空気溜り44の上部には空気供給口29fと並行にして空気の吸引口29jが取り付けられている。その吸引口29jにはホース29kが接続され、そのホース29kは貯蔵プール1の外側において真空ポンプ45へジョイント30を介して接続されている。その他の構成は図7から図11までに示した構成と同じである。
【0071】
このようなサンプリングヘッドを用いてサンプリング作業する場合は、ライニング4の壁面にサンプリングヘッドを押し付ける前に、エアポンプ31から空気を供給し、空気溜り44に空気を溜める。次にその壁面にサンプリングヘッドを押し付けた後、真空ポンプ45で空気溜り44内の空気を排気しフード29d内を外周囲に比較して負圧にする。このようなサンプリングヘッドを搭載したROVにおいても、図7から図11までに示した実施例と同様な作業は可能である。
【0072】
図14のサンプリングヘッドを用いることで、サンプリングヘッド内の水量を減少させ、サンプルの希薄防止が可能である。また、サンプリングヘッド内の密閉が不完全な場合に負圧化するための吸水を行うと、ホース内に吸い込んだ水がサンプルを希薄させることになるが、図14のサンプリングヘッドの構成の場合はその恐れがない。
【0073】
図16に示した回転ブラシの駆動及び送り機構は、図7から図11までに示した回転ブラシ29aの駆動及び送り機構29cに代えて採用するものである。その図16に示した回転ブラシの駆動及び送り機構は以下の通りである。
【0074】
ここでは、図7から図11での実施例で解説した構成と重複する構成部分には同じ番号をつけてその説明を割愛する。回転ブラシ29aの回転機構は、駆動モータ36の軸37aに取り付けられたかさ歯車38eと、軸37aに直行し、軸受39h,39iによって支持される軸50と、軸50に動力を伝えるかさ歯車49と、軸50に取り付けられた歯車51と、軸50に平行に配置され、軸受39jとともにケーシング29lに設けられたガイド溝に沿って図の左右方向にスライドが可能なスライドバー40c及び軸受39kによって支持される軸52と、歯車51から動力を伝えられ、且つ軸52とともにスライドする歯幅の広い歯車53とによって構成される。この機構を用いれば、回転ブラシ29aと送り機構29cは1台の駆動モータで駆動することができる。また、反力と押し付けばね力の平衡する場所にスライドバーが移動し、回転ブラシ29aが図の左右方向へと移動した場合でも、歯車53が歯車51を歯幅以内に収める限り回転ブラシ29aの駆動が可能である。
【0075】
以上の回転ブラシ29aと送り機構29cの駆動力を一つの駆動モータ36で連動させる機構を用いたサンプリングヘッドを図7のROV26においても、図7から図11での実施例によるサンプル採取の作業は可能である。図16の構成を用いると、回転ブラシをライニング4の壁面に対して平行に回転させるので、図7から図11での実施例による縦回転駆動の回転ブラシの回転時に受ける不規則なライニング4壁からの反力が低減され、ライニング4壁から回転ブラシが跳ね上がることを防止でき、安定して付着物の採取作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、放射性廃棄物が収容された容器を貯蔵した貯蔵プールや、下水関連や化学プラントの人体にはあまり好ましくない液体を貯蔵する沈殿貯層や地下タンクなどの点検,検査,異物回収,補修、あるいは物体の回収などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1…貯蔵プール、2…容器、3…開口部、4…ライニング、6,17,26…ROV、6a…吸着パッド、6b…空気袋、6c…フレーム、6d,9,19,23a,27…ジョイント、6e,29e…シール部材、6f,16l,29l…ケーシング、6g…吸気口、6h…空間、6i…排出口、6j…吸着部、6l,7…ワイヤ、8…電動ウインチ、9a,9b,9c,23b,30a,30b,30c…コネクタ、10…支持架台、11,12…タンク、13,23,34…操作卓、14,24,35…モニタ、15,25…記録装置、16…容器回収装置、16a…ゴンドラ、16b…ゴンドラ昇降装置、16c…遮蔽キャスク、16d…キャスク底、16e…キャスク底開閉装置、16f…ハウジング、16g…キャスタ、16h…補強ベース、16i…補強床、16j…乾燥装置、16k…昇降シャフト、16m…蓋、16n…照明装置、16o…洗浄装置、18…固定アーム、20,28,55…可動アーム、21…内視鏡ホルダ、21a…回転ローラ、22…内視鏡カメラ、29…サンプリングヘッド、29a…回転ブラシ、29b…押し付けばね、29c…送り機構、29d…フード、29f…供給口、29g…吸水口、29h,29i,29k…ホース、29j…吸引口、29m…ガイドレール、31…エアポンプ、32…フィルタ、33…吸水ポンプ、36…駆動モータ、37a,37b,37c,37d,37e,50,52…軸、38a,38b,38c,38d,42a,51,53…歯車、38e,49…かさ歯車、39a,39b,39c,39d,39e,39f,39g,39h,39i,39j,39k…軸受、40a,40b,40c…スライドバー、41…ベルト、42b…減速用歯車、43…ラック、44…空気溜り、54…固定ジョイント。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中を航行する移動体を利用して液体中で各種作業を実施する装置及びその作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中に存在する物体を回収する水中作業装置としては、沈殿池や水路の除貝を目的としたロボットや回収装置がある(例えば、特許文献1,2参照)。また、原子力関連施設では固体廃棄物貯槽における廃棄物の回収方法の公知例として水を排除してから回収する方法がある(例えば、特許文献3参照)。また、タンク内や容器中の水中点検・清掃ロボットの公知例もある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−163716号公報
【特許文献2】特開平07−214019号公報
【特許文献3】特開平10−274698号公報
【特許文献4】特開平11−188327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
沈殿池や水路の除貝を目的としたロボットや回収装置では、狭隘部や障害物がある場合の回収までは考慮されていなかった。また、固体廃棄物貯槽における廃棄物の回収方法では水を排除してからの回収方法のため水中での回収方法は考慮されていなかった。また、タンク内や容器の中の水中で点検したり清掃したりするロボットは水中で作業を行うロボットではあるが、狭隘部や障害物の裏を点検したり、点検の障害となる障害物などを回収して退かすことまでは考慮されていなかった。
【0005】
本発明の第1目的は、液中での作業に障害となる障害物を退かして作業環境を改善する作業に従事する装置を提供することであり、第2目的は、液中でのカメラによる観察作業の障害となる障害物が有っても観察作業しやすい装置を提供することであり、第3目的は、液中の壁面に付着した物質を回収する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1目的を達成するための液中作業装置の基本的構成は、液中を航行する移動体と、前記移動体に装備されて前記液中の物体を保持及び保持解除するハンドリング装置と、前記ハンドリング装置に接続された牽引装置と、を備えた点である。
【0007】
本発明の第2目的を達成するための液中作業装置の基本的構成は、液中を航行する移動体と、前記移動体から突き出るように前記移動体に装備された固定アームと、前記移動体に観察対象物の方向へ進退自在にして装備した可動アームと、前記可動アームの可動端部分に懸垂支持されるとともに、観察対象像の取り込み口の方向が可変できる観察装置と、を備えた点である。
【0008】
本発明の第3目的を達成するための液中作業装置の基本的構成は、液中を航行する移動体と、前記移動体に装備されたフードと、前記フードの内側で前記フードの開口部の方向へ進退自在に支持された回転ブラシと、前記回転ブラシを駆動する原動機と、前記フード内の液体を吸引する吸引装置と、前記フード内の圧力を調整する圧力制御装置と、前記フードの開口部の縁に設けられたシール部材と、を備えた点である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による液中作業装置を用いれば、プール等の液体を貯留する施設の水を抜くことなく、液中で、狭隘部や障害物があっても、その部位に対して目的とする観察,点検,検査,異物回収,補修、あるいは障害物などの回収の作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した放射性廃棄物が収容された容器を貯蔵した貯蔵プールの断面図である。
【図2】本発明の実施例1を適用した放射性廃棄物が収容された容器を貯蔵した貯蔵プールの断面図である。
【図3】本発明の実施例1におけるROVの構成を示した全体図である。
【図4】本発明の実施例1におけるROVに搭載する吸着パッドを示す図であり、(a)図は吸着パッドの内側面を見た図であり、(b)図は吸着パッドの縦断面図であり、(c)図は(b)図のA−A断面図である。
【図5】実施例1における回収装置の断面図である。
【図6】本発明の実施例2を適用したROVの構成を示した全体図である。
【図7】本発明の実施例3を適用したROVの構成を示した全体図である。
【図8】図7におけるサンプリングヘッドの内部概要を示した断面図である。
【図9】図8における回転ブラシと送り機構を一つの駆動モータで駆動する為の機構を示した平断面図である。
【図10】図8における回転ブラシと送り機構を一つの駆動モータで駆動する為の機構を示した立面図である。
【図11】図9のA−A断面図である。
【図12】本発明の実施例による吸着パッドの変形例を示した図であり、(a)図は一部断面表示による全体構成図、(b)図は(a)図のA−A矢視図である。
【図13】本発明の実施例による可動アームと内視鏡ホルダの組合せ構成の変形例を示した図であり、(a)図は一部断面表示による全体構成図、(b)図は(a)図のA−A矢視図である。
【図14】図7におけるサンプリングヘッドの変形例を示した断面図である。
【図15】図14のサンプリングヘッドを採用したROVを有する水中作業装置の全体図である。
【図16】図8における回転ブラシと送り機構を一つの駆動モータで駆動する為の機構の変形例を示したもので、(a)図はその機構の平断面図、(b)図は(a)図のA−A矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の第1実施例を説明する。図1,図2のように、水を貯留する施設である貯蔵プール1は、コンクリート製の躯体1aの内壁面にライニング4が施され、上方には開口部3が一部分だけ設けられている構成を有する。このような貯蔵プール1は、原子力関連施設に限らず、下水処理施設関連や化学プラントの人体にはあまり好ましくない液体を貯蔵する沈澱貯層や地下タンクなどに用いられている。
【0012】
本実施例では、原子力関連施設の一つとして、放射性廃棄物を密封した円筒状の容器2を貯蔵プール1内に投棄して水没状態にて保管する施設に本発明を適用した内容で説明する。
【0013】
貯蔵プール1の躯体1aの垂直な壁の上方には、補強ベース16hが置かれる。その補強ベース16hの上方には貯蔵プール1の上方を覆うように補強床16iが置かれる。その補強床16iは貯蔵プール1の開口部3の真上にその開口部3と同じ大きさの開口1bを備えている。
【0014】
図1において、貯蔵プール1の水面1c下、即ち水中には、水中作業時に障害となる容器2が多数おかれている。貯蔵プール1内は放射線環境下にあり、人による直接作業は困難である。貯蔵プール1の天井より上部、即ち躯体1aより上側では作業員が耐放射線上必要な管理をすれば作業のできる空間がある。また、貯蔵プール1の天井には、開口部3があって、貯蔵プール1内へ容器2が投棄される。そのため、容器2が邪魔となりライニング4を直接に観察,検査,点検,補修などの各種作業を行うことは難しい。
【0015】
図2は、図1に示す狭隘な部分の要因となる容器2を安全に現状の位置から移動,回収する作業を実施するための水中作業装置を貯蔵プール1に適用した状態を示しており、図3はその水中作業装置の全体構成を、図4は水中作業装置の遠隔操縦式移動体(以下、ROVという。)6に搭載した吸着パッド6aの構成を、図5は容器回収装置16の詳細構成を示す。
【0016】
図2,図3において、貯蔵プール1内の水中を浮遊移動して航行可能なROV6は水中の容器2を把持および移動する為の吸着パッド6aと、浮力増加用の大きさの可変制御可能な空気袋6bを持つ。このROV6は水平と垂直を含めて三次元方向への推進装置を備え、その三次元方向へ水中を航行できる。このROV6には、照明装置とビデオカメラとが搭載されている。
【0017】
このROV6には、ジョイント6dによって上下回転自在なフレーム6cが装備される。そのフレーム6cの回転自由端側部分には、貯蔵物体である容器2を保持及び保持解除するハンドリング装置の一部である吸着パッド6aが固定されている。このROV6には、そのフレーム6cを上下方向へ回転させる駆動装置が内蔵されている。このようなROV6は、貯蔵プール1の外の場所に置かれた操作卓13で遠隔操縦される。その操縦に必要な信号やROV6の駆動に必要な電力はROV6に接続されたケーブル6mによって供給されている。操作卓13とROV6に接続されたケーブル6mの途中は貯蔵プール1の外側でケーブルコネクタ9dで着脱自在に接続されている。
【0018】
ROV6はその操作卓からの遠隔操縦により、水中での三次元方向への航行やフレーム6cの回転駆動制御を行得る。その操縦に際しては、ROV6に搭載した照明装置によって照らし出された場所をビデオカメラで撮像してモニタ14乃至は操作卓の画像表示装置に画像として、その画像を見ながらROV6を遠隔操縦する。
【0019】
フレーム6cに装着されているハンドリング装置は、吸着パッド6aと吸着パッド6aに真空吸着力を付与するハンドリング装置の動力源とその動力源から吸着パッド6aへ接続したホース6kとから構成されている。そのハンドリング装置の動力源は、ホース6kが接続されたタンク12と、そのタンク12へ接続されたエアポンプ12bと、同じくそのタンク12に接続された真空ポンプ12aを構成として備えている。
【0020】
その真空ポンプ12aを駆動してタンク12内の気体を真空ポンプ12aで排気するとそのタンク12内とホース6k内が真空となってその真空が吸着パッドへ供給され、その吸着パッド6aは真空吸着力を発揮することができる。また、エアポンプ12bを駆動してそのタンク12内に空気を供給してやると、タンク12内やホース6k内の真空状態は解消されて吸着パッド6aの真空吸着力は解消される。そのため、吸着パッド6aは真空吸着力を発揮することで容器2を吸着保持することが出来、真空を解消することで容器2の保持を解除することができる。そのホース6kの途中は補強床16iの上方においてホース6kの途中を着脱するコネクタ9cで接続されている。
【0021】
この吸着パッド6aは、図4のように、容器2の外周面の曲率と同じ曲率の内周面を有するケーシング6fと、そのケーシング6fの内周面に、ケーシング6fの縁に沿って装着したシール部材6eと、そのケーシング6fの内周面に間隔を置いて固定されて容器2の外周面との間に空間6hを形成維持する為のスペーサと、その空間6hへ連通するようにケーシング6fに固定した吸気口6gとしての配管とで構成されている。その吸気口6gにはホース6kが接続されている。そのため、ホース6kを介してその空間6hに真空が供給されたり、空間6hの真空が解消されたりして、上述のように吸着パッド6aが容器2に真空吸着して保持した真空が解消されてその保持を解除したりできる。
【0022】
吸着パッド6aのケーシング6fの中央部には、図3のように、浮力体として空気袋6bが接続され、その空気袋6bには、ホース6nを介してタンク11が接続され、そのタンク11にはエアポンプ11bと真空ポンプ11aとが接続されている。そのエアポンプ11bを駆動すると、タンク11内の圧力が上昇してホース6nを介して空気袋6bにタンク11から圧縮空気が供給され、空気袋6bが膨張する。また、真空ポンプ11aを駆動してタンク11内の空気を排気すると、空気袋6b内の空気が空気袋6bから排気されて空気袋6bが収縮する。このように、空気袋6bを膨張及び収縮させることによって、空気袋6bによる吸着パッド6aやROV6へ与える浮力の大きさを制御する。そのホース6nの途中は貯蔵プール1の外側でホースコネクタ9bで着脱自在に接続されている。
【0023】
吸着パッド6aのケーシング6fの中央部には、牽引装置が接続されている。その牽引装置は、図3のように、ケーシング6fの中央部に一端が接続されているワイヤロープ7と、そのワイヤロープ7の他端が巻き取り及び繰り出し自在に接続されている電動ウインチ8と、その電動ウインチ8に接続してその電動ウインチ8を貯蔵プールの水面と貯蔵プールの天井との間の気相空間の位置に懸垂支持するワイヤロープ6pとを備えている。そのワイヤロープ6pは途中がコネクタ9aで着脱自在に接続され、そのワイヤロープ6pの端部は補強床16i上の支持架台10に連結されている。ワイヤロープ7の一端をケーシング6fに接続する代わりにワイヤロープ7の一端をROV6へ接続することで牽引装置をROV6に接続するようにしても良い。
【0024】
図5のように、補強床16i上には、容器回収装置16が配備されている。その容器回収装置16は以下のような構成を有する。即ち、キャスタ16gの取り付いたハウジング16fが台車として補強床16iの上に平面移動自在に装備されている。そのハウジング16fには、放射線遮蔽材を用いて造られた遮蔽キャスク16cが遮蔽容器として備えられている。その遮蔽キャスク16cは下方のみが開口し、その開口は放射線遮蔽材を用いて造られた開閉式キャスク底16dによって開閉自在にされている。その開閉式キャスク底16dはキャスク底開閉装置16eで遮蔽キャスク16cの開口を閉じる方向と開く方向へ駆動できる。そのキャスク底開閉装置16eは、開閉式キャスク底16dに固定したラックと、そのラックに噛合うピニオンと、ハウジング16fに設けられてピニオンを回転駆動する電動モータとで構成される。その電動モータによるピニオンの回転方向によって開閉式キャスク底16dによる遮蔽キャスク16cの開口の開閉作用が達成される。
【0025】
その遮蔽キャスク16cにはゴンドラ昇降装置16bが昇降装置として設置されている。ゴンドラ昇降装置16bはボールスクリューネジ軸とそのボールスクリューネジ軸が通されたボールナットと、そのボールナットを回転駆動する電動モータとで構成される。ゴンドラ昇降装置16bは、そのボールスクリューネジ軸の下方への延長部分が遮蔽キャスク内を貫通して貯蔵プールの水面下に達する昇降ストロークを設定してある。そのボールスクリューネジ軸の下方への延長部分である昇降シャフト16kには、容器2を収納するゴンドラ16aが固定されている。
【0026】
ゴンドラ16aは、容器2が一個収納できる大きさを有し、且つ上下が閉鎖された円筒状の形状を有し、その円筒側面は180度の角度の領域が蝶番16pを回転中心とした観音開きの蓋16mで開閉自在とされている。その蓋16mは蝶番16pに組み込んだ水密にシールドされたモータによって開閉駆動し、その開閉駆動の制御は遠隔制御によって行う。そのため、蝶番16pに組み込んだモータを遠隔で駆動制御するリモートコントローラを備えている。そのゴンドラ16aの天井の外側面には照明装置16nが設置されゴンドラ16aの周辺での作業環境を明るくできるようにしてある。
【0027】
このようなゴンドラ昇降装置16bにあっては、電動モータでボールナットを回転駆動すると、ボールスクリューネジ軸がその回転量に応じ、且つその回転方向に応じて上下にストロークする。そのため、開閉式キャスク底を開いている状態において前述のストロークを行うと、ゴンドラ16aが貯蔵プール1の水面下と遮蔽キャスク16c内との間で昇降できる。
【0028】
容器回収装置16の構成として、遮蔽キャスク16cに乾燥装置16jと洗浄装置16oとが設けられている。その洗浄装置16oは洗浄液を遮蔽キャスク16c内に噴射する装置と、その噴射後の使用済洗浄液を回収して濾過して再利用する装置とを備えている。乾燥装置16jは、遮蔽キャスク13c内に温風を供給する温風発生装置と遮蔽キャスク13c内供給された温風を吸い込んでその温風に同伴されてきた塵や水分を補足する集塵装置とを備えている。
【0029】
容器回収装置16が貯蔵プール1の天井に直接搭載されることはその天井の強度上避けるべきである。そのため、貯蔵プール1を囲むコンクリート壁の真上に当たる床面に補強ベース16hを設置し、補強ベース16hの上に補強床16iを乗せ、この補強床16iの上を容器回収装置16はキャスタ16gによって移動するようにしている。この補強床16iに乗る装置や機器などの荷重は補強ベース16hによって貯蔵プールの周囲全体に分散される。
【0030】
図6に示したROV17は、貯蔵プール1のライニング4の表面の状態、或いはその表面に付着した物質を観察する作業に用いる水中作業装置である。そのROV17とその操縦のための操作卓23は、図3の操作卓13やROV6との関係と同様で、ROV17を操作卓23で遠隔操縦できる構成となっている。そのROV17と操作卓23とを接続するケーブル6mは、貯蔵プール1の外側で途中が着脱自在なジョイント23aによって接続されている。
【0031】
そのROV17には、少なくとも3本以上の複数本の固定アームが水平に突き出されて固定されている。また、そのROV17には、ジョイント19で平行リンク構造の可動アーム20が上下回転自在に装備され、そのROV17に内蔵したモータでその可動アーム20を上下回転自在に駆動できるように構成してある。その可動アーム20の回転自由端側のリンクメンバーには水平に内視鏡ホルダ21が固定されている。
【0032】
その内視鏡ホルダ21には内視鏡のケーブル6rの途中部分が懸垂支持されている。その内視鏡カメラ22の下端は観察対象の像を取り込む窓口となっている。観察対象がライニング4の面である場合には、その面の像が取り込めるように内視鏡カメラ22の下端が水平方向に曲がることができる。このように、内視鏡カメラ22の下端は操作卓23から向きを変化させる制御ができるように構成されている。
【0033】
操作卓23には、内視鏡カメラが取り込んだ検査対象の像を画像として表示するモニタと、その画像を記録する記録装置とが接続されている。そのモニタには、ROV17に搭載したビデオカメラで取り込んだ像を表示できるようにも構成されている。
【0034】
図7に示したROV26は、貯蔵プール1のライニング4の表面に付着した物質を採取する作業に用いる水中作業装置である。そのROV26とその操縦のための操作卓34は、図3の操作卓13やROV6との関係と同様で、ROV26を操作卓34で遠隔操縦できる構成となっている。そのROV26と操作卓34とを接続するケーブル6mは、貯蔵プール1の外側で途中が着脱自在なコネクタ30cによって接続されている。
【0035】
図7に示すROV26には、ジョイント27を介して可動アーム28が上下回転自在に装着され、その可動アーム28はROV26に内蔵したモータでジョイント27を回転中心部とした上下回転方向に駆動できる構成を有する。その可動アーム28の回転自由端部分にはサンプリングヘッド29が固定されている。
【0036】
サンプリングヘッド29は図8のように、可動アーム28に固定されたフード29dと、そのフード29d内で押し付けばね29bで支持された回転ブラシ29aと、回転ブラシ29aを押し付けばね29bとともにライニングに沿って上下方向に移動させる送り機構29cと、を備えている。その押し付けばね29bのばねストローク量だけ回転ブラシ29aはフードの開口部の方向へ進退自在である。そのフード29dには、上方にそのフード29d内に連通するエア供給口29fが備わり、下方にそのフード29d内に連通する吸水口29gが備わる。その図8のフード29dの左側にはフード29dの開口が設けられ、その開口の縁にはシール部材29eが開口全周囲に配置されて設けられている。
【0037】
このようなサンプリングヘッド29のエア供給口29fにはホース29hがポンプ31との間で接続され、その途中は貯蔵プール1の外側で着脱自在なコネクタ30aで接続されている。同じく吸水口29gには、ホース29iがフィルタ32との間で接続され、その途中は着脱自在なコネクタ30bで接続されている。そのフィルタ32には吸水ポンプ33が接続されていて、吸水ポンプ33でフード29d内の液体をホース29iとフィルタ32を通じて吸い込むことができる。
【0038】
フード内の送り機構と押付ばねと回転ブラシとの組合せ構成は図9,図10,図11の通りである。即ち、回転ブラシ29aの回転機構は、駆動モータ36軸から動力を伝え、軸受39aで支持される軸37aに取り付けられた歯車38aと、軸37aとは平行且つ段違いの場所に配置された軸37c,歯車38b、及び軸37d,歯車38cと、前記歯車38a,38b,38dに動力を伝達するベルト41と、ケーシング29lに設けられたガイド溝に沿って図の左右方向へのスライドが可能であり、軸受39d,39eを有すスライドバー40a,40bと、ベルト41から動力を伝達される歯車38dが取り付けられ、スライドバー40a,40bとともにスライドする軸37eによって構成され、回転ブラシ29aは軸37eに取り付けられる。スライドバー40a,40bには押し付けばね29bが取り付けられている為、対象面に回転ブラシ29aを押し付けると、反力と押し付けばね力の平衡する場所にスライドバーは移動する。送り機構29cは軸37aに取り付けられた歯車42aと、軸受39cによって支持される軸37bと、減速用歯車42bとフード29dの内壁に固定したラック43、およびフード29dの内壁にレール部が設置されたガイドレール29mで構成される。この機構を用いれば、回転ブラシ29aと送り機構29cは1台の駆動モータ36で駆動することができる。また、押し付けばね29bにより回転ブラシ29aが図の左右方向へと移動した場合でも、ベルト41に歯車38dがかみ合う為、回転ブラシ29aの駆動が可能である。このとき、回転ブラシと送り機構29cが所定の速度となるように、各構成要素間が適切な減速比及び回転方向となるような減速機構を設けても良い。
【0039】
次に、各水中作業装置による各作業を以下に説明する。貯蔵容器のライニングに容器が寄りかかっていると、その容器とライニングとの間は狭隘でライニングの表面を観察できない。その場合には、図2の様に、ROV6を貯蔵プール1の水中に投入して、そのROV6を利用してライニングに寄りかかって邪魔な容器2を安全に現状の位置から移動,回収する作業を行う。
【0040】
その作業では、まず、容器回収装置16のゴンドラ16aを開口部3から貯蔵プール1の水中へゴンドラ昇降装置16bによって下ろす。ゴンドラ16aが下ろされている間は作業性の向上のため照明16nを点灯しておき、ゴンドラ16aが水中に達した地点で蓋16mを開く。また、同様に貯蔵プール1の水中に開口部3からROV6を投入した後、作業員は操作卓13でROV6を遠隔操縦して、ROV6に搭載したビデオカメラによる画像を操作卓13の表示装置又はモニタ14で見ながら、回収目標とする容器2にROV6を到達させる。
【0041】
次にROV6は目標の容器2の静止状態の角度に吸着パッド6aの角度が合うようにフレーム6cをジョイント6dを回転中心に回転させ、その容器2に吸着パッド6aのシール部材6eを、例えば図4のように、接触させる。そして真空ポンプ12aを駆動してタンク12を真空にすることで吸着パッド6aを容器2に吸着させ保持させる。
【0042】
その容器2の吸着パッド6aによる保持が完了した後、電動ウインチ8でワイヤ7を巻き上げ、吸着パッド6aを上方へ牽引することで吸着パッド6aで保持した容器2を引き上げる。この方法は、容器2の重量が重い場合にROV6に負担をかけないので有効である。このとき、引き上げられた容器2は開口部3の鉛直下で宙吊りの状態となる。開口部3は貯蔵プール1の側面のライニング4から離れた中央部にあるので、ここでエアポンプ12bを駆動して吸着パッド6aの容器2への吸着を解除すると、容器2が吸着パッド6aから離れて水中を降下して、開口部3の真下へ移し変える移動作業ができる。
【0043】
容器2の移動作業に際しては、空気袋6bを用いて容器2の中性浮力化を図り、ROV6の推力を用いて吸着パッド6aで保持した容器2を移動させても良い。この方法では、エアポンプ11bでタンク11内を加圧して加圧した空気をタンク11から空気袋6bへ供給して空気袋6bを膨張させる。この時の空気袋6bへ供給する空気量の調節により、容器2の中世浮力化が可能であり、またはそれ以上の浮力の獲得も行え、容器2の移動が容易になる。また、真空ポンプ11aを駆動してタンク11内の空気を排出すれば、空気袋6bは縮小して浮力が低下して次の容器を回収する作業に移行できる。
【0044】
このように、空気袋6bを活用すれば、ROV6の推進力で容器2を貯蔵プール1の開口部3の真下に移動させることができるので、ワイヤ7と電動ウインチ8を活用して牽引する必要もない。しかし、ROV6にワイヤ7と電動ウインチ8による牽引装置を接続して空気袋6bとともに両者を活用するようにしても良い。
【0045】
この場合では、容器2の周囲で空気袋6bを膨張させるスペースが取れない場合などに、吸着パッド6aで容器2を把持した後に牽引装置で十分スペースの取れる位置まで牽引し、空気袋6bを膨らませて容器2を中性浮力化し、ROV6の推力を用いて移動させることができる。
【0046】
また、垂直なライニング4の近く投棄されている容器2の回収を行う場合は、空気袋6bを膨張させて容器の中性浮力化を行い、ROV6の推力によって容器2をゴンドラ16a内まで移動させ、ゴンドラ16aのケーシング16lに容器2を納め、吸着パッド6aの容器2への吸着を解除する。ROV6がゴンドラ16a付近から安全な位置まで退避した後、ケーシング16lの蓋16mを閉じ、ゴンドラ16aをゴンドラ昇降装置16bによって上昇させ遮蔽キャスク16c内へ到着させ、その容器2をゴンドラ16aごと収納する。
【0047】
その後に、開閉式キャスク底16dをキャスク底開閉装置16eによって閉じる。そして、蓋16mを開いた状態で遮蔽キャスク16c内部に洗浄装置16oからの洗浄液を噴出させてゴンドラ16aや容器2を洗浄液で浄化させる。洗浄液は再度浄化されて再度遮蔽キャスク内に噴出させられる。その洗浄の作業が終了した後に、乾燥装置の温風発生装置16jから遮蔽キャスク16c内へ温風が吹き込まれ、ゴンドラ16aや容器2や遮蔽キャスク16c内が十分乾燥させられる。その乾燥作業に際して遮蔽キャスク16c内に吹き込まれた温風は再度温風発生装置内に吸い込まれてフィルタで濾過され且つ過熱されて再度吹き込まれることになる。このように、浄化及び乾燥された容器2は遮蔽キャスク16c内に収納されたまま、回収装置16がキャスタ16gによって移動することで目的地まで運搬され、運搬先で他の貯蔵プール等に移し変えられ、回収作業が終る。
【0048】
ライニング4を観察する際に障害となっていた容器を全て回収乃至は邪魔でない位置に移動させた後は、電動ウインチ8は貯蔵プール1の内側で使用されたものであり、ワイヤ7や電動ウインチ8は汚染された水が付着している。そこで、作業員の作業空間、即ち貯蔵プール1の外側にあるジョイント9aを切り離すことで、電動ウインチ8は人が直接汚染部位に触れることなく貯蔵プール1内に廃棄する。また、ROV6の構成機器に放射線による劣化が生じた場合は、コネクタ9b,コネクタ9c、及びコネクタ9dを切り離すことによって貯蔵プール1内に投棄することも可能である。
【0049】
以上のように、ライニング4に接触していた、もしくは接近していた容器2を移動することにより、ライニング4の観察,検査,ライニング4への付着物の回収、およびライニング4の補修などの各種作業が行えるスペースを確保することができ、観察,検査,回収、および補修などを行う装置によって作業を行うことができる。また、作業員が汚染物質に直接触れることなく、容器2の移動及び回収作業を安全に行うことができる。
【0050】
このようにライニング4の観察場所近くに広い観察作業スペースが確保されたとしても、容器2が観察作業スペース周囲に存在してまだ十分な作業スペースが得られないような場合には、観察作業を行うROV17を開口部3から所蔵プール1内の水中に投入する。
その後に、操作卓23でROV17を遠隔操縦する。操縦者はROV17に内蔵するビデオカメラによって得られる水中の映像をモニタ24で確認しながら、ROV17を観察個所の上方へ移動させる。
【0051】
次に、ROV17をライニング4の方向へ推進させ、ROV17の推進力で固定アームをライニング4に押し当てて静止させる。その静止位置は、可動アーム20を回転して内視鏡カメラ22の先端が観察個所に到達可能な位置とする。これによりROV17がライニング4へ推進力で押付固定され、内視鏡カメラ22による観察中の内視鏡カメラ22の揺れを防止できる。
【0052】
このときライニング4付近の狭隘なスペースに内視鏡カメラ22は先端部のみでアクセスすることになるので、内視鏡カメラ22が挿入できる程度のわずかな隙間があれば、内視鏡カメラ22の首振り機構を利用してその狭隘な個所のライニング4の表面の映像を入手することができる。また、可動アーム20を上下に回転移動させることにより、内視鏡カメラ22の正確な位置決めや微調整が可能である。
【0053】
内視鏡カメラ22によるライニング4の表面の観察作業中は内視鏡カメラ22の映像を収集し、記録装置25に映像を記録する。また、ROV17の構成機器に放射線による劣化が生じた場合は、ジョイント23a、およびコネクタ23bを切り離すことによってROV17を貯蔵プール1内に投棄することも可能である。
【0054】
このようにして、ライニング4に接近している容器を移動乃至は回収してROV17が到達できるスペースを確保し、そのスペースに静止させたROV17から内視鏡カメラ22を懸垂して、狭隘なスペースにおけるライニング4部の観察作業が可能となる。その観察個所が移動させた容器2が接触していたライニング4の部位である場合には、その内視鏡カメラ22の下端はその個所に向けられて、その個所を撮影して記録することができる。
【0055】
ライニング4の表面を観察した後に、その表面に付着している付着物を採取する場合には、次のような採取作業が行われる。即ち、図7に示した構成を用いてライニング4に付着した付着物のサンプルを採取するが、その方法は以下の通りである。先ず、作業員は開口部3からROV26を貯蔵プール1内の水中に投入し、操作卓34でROV26を遠隔操縦する。操縦者はROV26に内蔵するカメラによって得られる水中の映像をモニタ35で確認しながら、ROV26を付着物のあるライニング4の壁面へ移動させる。
【0056】
その壁面手前でROV26の可動アーム28を水平となる方向へ回転させ、サンプリングヘッド29のフード29dの開口部が壁面に正対するようにする。その後に、サンプリングヘッド29をROV26の推力を用いてライニング4に押し付ける。このようにすると、サンプリングヘッド29のフード29d内部はライニング4に接触するシール部材29eによって密閉される。
【0057】
このように、フード29d内部を密閉した後に、吸水ポンプ33を駆動することによって吸引ホース29iを通じてフード29d内の水を吸水してフード29d内がフード29dの外に比較して負圧にする。そのフード29dの内外間の負圧の関係が成立するように流量を調整しながらホースを介してエアポンプ31から空気をフード29d内に送る。このことにより、サンプリングヘッド29は壁面に吸着し、ROV26もライニング4側へ固定することができる。
【0058】
次に、壁面に押し付けられた回転ブラシ29aを駆動モータ36で回転駆動してライニングに付着した付着物をサンプルとして回転ブラシ29aでライニングから掻きとって剥離させ、付着物をフード29d内に採集する。サンプルの採取が終了した後、フード29d内への浸水による剥離サンプルの希薄を避けるため、ROV26の推力でサンプリングヘッド29を押し付けながら、もしくはフード29d内の負圧を維持させながら、エアポンプ31から空気をフード29d内に供給しつつ、吸水ポンプ33によってフード29d内の剥離したサンプルをフード29d内部の水と一緒に吸引する。
【0059】
このようにして吸引した剥離サンプルはフィルタ32で濾し取られる。このフィルタ32を回収することで作業員は最低の被爆量でサンプルを回収することができる。また、ROV26の構成機器に放射線による劣化が生じた場合は、コネクタ30a,コネクタ30bおよびコネクタ30cを切り離すことによって貯蔵プール1内にROV26を投棄することができる。以上により、ライニング4に付着した付着物のサンプルを採取することができる。
【0060】
図12に示した吸着パッドは、図3,図4に示した吸着パッド6aの代替え品である。即ち、図12に示すように、円筒状且つ円筒曲面が蛇腹形状の吸着部61iは、一端部が閉止板で閉鎖され、もう一端側が開口している。その閉止板には吸着部61iの内外を通じる配管が排出口61jとして設けられ、その排出口61jを構成する配管の端部を塞ぐように蓋61kが開閉自在に設けられている。蓋61kは、ばね力により自動的に排出口61jを閉じるように排出口61jを構成する配管に取り付けられている。
【0061】
その蓋61kにはワイヤ61lが接続され、そのワイヤ61lは巻上モータ61mで駆動される巻上装置に巻きかけられている。そのため、巻上モータ61mで巻上装置を駆動すると、その回転駆動方向に応じてワイヤ61lを巻上装置に巻き取ったり繰り出したりできる。その巻上装置は巻上モータ61mとともに図3のROV6の中に内蔵してもよいし、貯蔵プール1の外に配置しておいても良い。
【0062】
このような図12に示した吸着パッドは、図3のROV6に装着した吸着パッド6aの変わりに装着される。その装着はROV6のフレーム6cの回転自由端に吸着部61iの閉止板を固定して成される。
【0063】
図12に示した吸着パッドは回収乃至は移動させる容器2にROV6の推進力を用いて吸着部61iの開口部分を押し付けると、吸着部61iの蛇腹構造部分が縮まって吸着部61i内の圧力が高まり、排出口61jから水が蓋61kを押し上げ、外部に排出される。水が排出され終わると、蓋61kはばね力によりすぐに閉じる為、縮んだ吸着部61iの蛇腹構造部分が元の状態に伸びない。そのため、吸着部61i内は負圧となり、吸着部61iは容器2に吸着して容器を保持可能になる。
【0064】
容器2を図12に示した吸着パッドから放すときは、巻上げモータ61mによりワイヤ61lを巻き取って、ワイヤ61lを引けば、蓋61kはばね力に抗して開き、吸着部61i内に周囲の水が排出口61jを通じて流入する。このように、吸着部61i内に周囲の水が排出口61jを通じて流入すると、吸着部61i内の圧力は周囲の圧力と均等になって容器を吸着している力が喪失し、容器2は吸着部61iから離れることができる。
【0065】
以上により図12に示した吸着パッドは容器2の把持,開放ができ、この吸着パッドによって図3に示す吸引用のタンク12やホース6kを用いずに、図3に示した水中作業装置と同等な作業を行うことが可能である。また、この吸着パッドは水中の図1に示す容器2の形状でなくとも、平面や球面を持つものであれば吸着が可能である。
【0066】
図13に示した可動アームと内視鏡ホルダの組合せは、図6に示した可動アーム20と内視鏡ホルダ21との組合せ構造と置き換えて使用される構成である。即ち、図6に示した平行リンク形式の可動アーム20の代わりに可動アーム55がROV17へ固定ジョイント54部分で水平に固定される。その可動アーム55は、図13のように、テレスコピック構造による伸縮構造を備え、一端が固定ジョイント54に固定されている。その可動アーム55は、可動アーム55内部に設けたピストン・シリンダ装置で伸縮駆動可能とされている。
【0067】
その可動アーム55の伸縮端部には内視鏡ホルダ21が固定されている。その内視鏡ホルダ21は、内視鏡ホルダ21に内蔵したモータ21bで回転駆動される一対のローラ21aと、上下端部に一対ずつ回転自在に設けたガイドローラとを備えている。
【0068】
その一対のローラ21aとガイドローラは内視鏡ホルダ21内で内視鏡カメラ22のケーブルを上下方向に通過させるように挟み込んでいる。そのため、モータ21bでローラ21aを回転駆動すると、その回転駆動方向に応じて内視鏡カメラ22を上下方向へ移動させ、内視鏡カメラ22の撮像高さを調整できる。
【0069】
このような図13に示した可動アーム55と内視鏡ホルダ21を図6のROV17に採用すれば、可動アーム55を水平方向へ伸縮させることによって、内視鏡カメラ22のライニング4の壁面への寄り付きを調整することができ、内視鏡ホルダ21による内視鏡カメラ22の上下方向の移動で内視鏡カメラ22の深さ方向への距離を調整することができ、狭隘部へ内視鏡カメラ22の先端を挿入できる。以上の図13に示した構成要素を搭載したROV17においても、図6のROV17による水中観察作業は可能であり、この構成要素を用いれば、内視鏡カメラの先端部寄り付き時の位置決めが水平方向,垂直方向の直線操作となるので容易である。
【0070】
図14に示したサンプリングヘッドは、図7,図8に示すサンプリングヘッド29に置き換えて、図7のROV26に採用して使用されるものである。図14に示したサンプリングヘッドは、図7のROV26の可動アーム28の回転自由端部に固定されたフード29dを有する。そのフード29dは、図14のように、空気溜り44が形成されている。その空気溜り44の上部には空気供給口29fと並行にして空気の吸引口29jが取り付けられている。その吸引口29jにはホース29kが接続され、そのホース29kは貯蔵プール1の外側において真空ポンプ45へジョイント30を介して接続されている。その他の構成は図7から図11までに示した構成と同じである。
【0071】
このようなサンプリングヘッドを用いてサンプリング作業する場合は、ライニング4の壁面にサンプリングヘッドを押し付ける前に、エアポンプ31から空気を供給し、空気溜り44に空気を溜める。次にその壁面にサンプリングヘッドを押し付けた後、真空ポンプ45で空気溜り44内の空気を排気しフード29d内を外周囲に比較して負圧にする。このようなサンプリングヘッドを搭載したROVにおいても、図7から図11までに示した実施例と同様な作業は可能である。
【0072】
図14のサンプリングヘッドを用いることで、サンプリングヘッド内の水量を減少させ、サンプルの希薄防止が可能である。また、サンプリングヘッド内の密閉が不完全な場合に負圧化するための吸水を行うと、ホース内に吸い込んだ水がサンプルを希薄させることになるが、図14のサンプリングヘッドの構成の場合はその恐れがない。
【0073】
図16に示した回転ブラシの駆動及び送り機構は、図7から図11までに示した回転ブラシ29aの駆動及び送り機構29cに代えて採用するものである。その図16に示した回転ブラシの駆動及び送り機構は以下の通りである。
【0074】
ここでは、図7から図11での実施例で解説した構成と重複する構成部分には同じ番号をつけてその説明を割愛する。回転ブラシ29aの回転機構は、駆動モータ36の軸37aに取り付けられたかさ歯車38eと、軸37aに直行し、軸受39h,39iによって支持される軸50と、軸50に動力を伝えるかさ歯車49と、軸50に取り付けられた歯車51と、軸50に平行に配置され、軸受39jとともにケーシング29lに設けられたガイド溝に沿って図の左右方向にスライドが可能なスライドバー40c及び軸受39kによって支持される軸52と、歯車51から動力を伝えられ、且つ軸52とともにスライドする歯幅の広い歯車53とによって構成される。この機構を用いれば、回転ブラシ29aと送り機構29cは1台の駆動モータで駆動することができる。また、反力と押し付けばね力の平衡する場所にスライドバーが移動し、回転ブラシ29aが図の左右方向へと移動した場合でも、歯車53が歯車51を歯幅以内に収める限り回転ブラシ29aの駆動が可能である。
【0075】
以上の回転ブラシ29aと送り機構29cの駆動力を一つの駆動モータ36で連動させる機構を用いたサンプリングヘッドを図7のROV26においても、図7から図11での実施例によるサンプル採取の作業は可能である。図16の構成を用いると、回転ブラシをライニング4の壁面に対して平行に回転させるので、図7から図11での実施例による縦回転駆動の回転ブラシの回転時に受ける不規則なライニング4壁からの反力が低減され、ライニング4壁から回転ブラシが跳ね上がることを防止でき、安定して付着物の採取作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、放射性廃棄物が収容された容器を貯蔵した貯蔵プールや、下水関連や化学プラントの人体にはあまり好ましくない液体を貯蔵する沈殿貯層や地下タンクなどの点検,検査,異物回収,補修、あるいは物体の回収などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1…貯蔵プール、2…容器、3…開口部、4…ライニング、6,17,26…ROV、6a…吸着パッド、6b…空気袋、6c…フレーム、6d,9,19,23a,27…ジョイント、6e,29e…シール部材、6f,16l,29l…ケーシング、6g…吸気口、6h…空間、6i…排出口、6j…吸着部、6l,7…ワイヤ、8…電動ウインチ、9a,9b,9c,23b,30a,30b,30c…コネクタ、10…支持架台、11,12…タンク、13,23,34…操作卓、14,24,35…モニタ、15,25…記録装置、16…容器回収装置、16a…ゴンドラ、16b…ゴンドラ昇降装置、16c…遮蔽キャスク、16d…キャスク底、16e…キャスク底開閉装置、16f…ハウジング、16g…キャスタ、16h…補強ベース、16i…補強床、16j…乾燥装置、16k…昇降シャフト、16m…蓋、16n…照明装置、16o…洗浄装置、18…固定アーム、20,28,55…可動アーム、21…内視鏡ホルダ、21a…回転ローラ、22…内視鏡カメラ、29…サンプリングヘッド、29a…回転ブラシ、29b…押し付けばね、29c…送り機構、29d…フード、29f…供給口、29g…吸水口、29h,29i,29k…ホース、29j…吸引口、29m…ガイドレール、31…エアポンプ、32…フィルタ、33…吸水ポンプ、36…駆動モータ、37a,37b,37c,37d,37e,50,52…軸、38a,38b,38c,38d,42a,51,53…歯車、38e,49…かさ歯車、39a,39b,39c,39d,39e,39f,39g,39h,39i,39j,39k…軸受、40a,40b,40c…スライドバー、41…ベルト、42b…減速用歯車、43…ラック、44…空気溜り、54…固定ジョイント。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液中を航行する移動体と、
前記移動体に装備されたフードと、
前記フードの内側で前記フードの開口部の方向へ進退自在に支持された回転ブラシと、 前記回転ブラシを駆動する原動機と、
前記フード内の液体を吸引する吸引装置と、
前記フード内の圧力を調整する圧力制御装置と、
前記フードの開口部の縁に設けられたシール部材と、
を備えた液中作業装置。
【請求項2】
請求項1において、前記移動体は操作卓からの遠隔操縦でプール内の液中を航行するものであり、前記移動体の操作卓と前記プール内に投入される前記移動体の部分の間、前記吸引装置の動力源と前記プール内に投入される前記吸引装置の部分の間、前記圧力制御装置の動力源と前記プール内に投入される前記圧力制御装置の部分の間、をそれぞれ着脱自在な連結装置で接続してある液中作業装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記吸引装置は、吸引した前記液体を濾過するフィルタを備え、前記圧力制御装置は、前記フード内に通じたエアポンプを備えている液中作業装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2又は請求項3において、前記回転ブラシを前記液を貯留する施設の内壁面に沿って移動させる移動装置を備える液中作業装置。
【請求項5】
請求項4において、前記回転ブラシを駆動する原動機を前記移動装置の原動機に共用してある液中作業装置。
【請求項6】
液中を航行する移動体と、
前記移動体から突き出るように前記移動体に装備された固定アームと、
前記移動体に観察対象物の方向へ進退自在にして装備した可動アームと、
前記可動アームの可動端部分に懸垂支持されるとともに、観察対象像の取り込み口の方向が可変できる観察装置と、
を備えた液中作業装置。
【請求項7】
請求項6において、前記移動体は操作卓からの遠隔操縦でプール内の液中を航行するものであり、前記移動体の操作卓と前記プール内に投入される前記移動体の部分の間、前記プール外に配備される前記観察装置の部分と前記プール内に投入される前記吸引装置の部分の間、をそれぞれ着脱自在な連結装置で接続してある液中作業装置。
【請求項8】
液中を航行する移動体と、
前記移動体に装備されて前記液中の物体を保持及び保持解除するハンドリング装置と、 前記ハンドリング装置に接続された牽引装置と、
を備えた液中作業装置と、
請求項1に記載の液中作業装置と請求項6に記載の液中作業装置とのいずれか一方の液中作業装置を備えた液中作業システム。
【請求項9】
液中を航行する移動体と、
前記移動体に装備されて前記液中の物体を保持及び保持解除するハンドリング装置と、 前記ハンドリング装置に接続された牽引装置と、
を備えた液中作業装置と、
前記液中作業装置から液中の物体を受け入れて収納するゴンドラと、
前記ゴンドラを前記液中から前記液の液面の上方の間で移動させる昇降装置と、
前記昇降装置で移動させた前記ゴンドラを前記液面の上方での移動位置で受け入れるように配置され、前記ゴンドラを受け入れる開口が開閉自在な遮蔽キャスクと、
前記遮蔽キャスクを支持して移動する運搬装置と、
請求項1に記載の液中作業装置と、
請求項6に記載の液中作業装置と、
を備えた液中作業システム。
【請求項10】
液体中を航行する移動体でハンドリング装置を前記液体中の物体まで運搬し、
前記ハンドリング装置を前記物体に係合し、
前記ハンドリング装置を前記物体ごと牽引装置で牽引して前記物体を前記牽引前の位置から退避させ、
前記物体の退避元の空間を広げて液中作業空間を拡大する液中作業方法。
【請求項11】
液体中を航行する移動体でハンドリング装置を前記液体中の物体まで運搬し、
前記ハンドリング装置を前記物体に係合して運搬し、
運搬されてきた前記物体を前記ハンドリング装置から前記液体の液面上下に渡って昇降する昇降手段に移し変え、
前記昇降手段で前記液面の上方へ運搬してきた前記物体を遮蔽容器内に収納して閉じ込め、
前記遮蔽容器内に前記物体を閉じ込めた状態で、前記遮蔽容器内を乾燥及び集塵して前記物体を収納した場所から他の場所へ運搬する液中作業方法。
【請求項1】
液中を航行する移動体と、
前記移動体に装備されたフードと、
前記フードの内側で前記フードの開口部の方向へ進退自在に支持された回転ブラシと、 前記回転ブラシを駆動する原動機と、
前記フード内の液体を吸引する吸引装置と、
前記フード内の圧力を調整する圧力制御装置と、
前記フードの開口部の縁に設けられたシール部材と、
を備えた液中作業装置。
【請求項2】
請求項1において、前記移動体は操作卓からの遠隔操縦でプール内の液中を航行するものであり、前記移動体の操作卓と前記プール内に投入される前記移動体の部分の間、前記吸引装置の動力源と前記プール内に投入される前記吸引装置の部分の間、前記圧力制御装置の動力源と前記プール内に投入される前記圧力制御装置の部分の間、をそれぞれ着脱自在な連結装置で接続してある液中作業装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記吸引装置は、吸引した前記液体を濾過するフィルタを備え、前記圧力制御装置は、前記フード内に通じたエアポンプを備えている液中作業装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2又は請求項3において、前記回転ブラシを前記液を貯留する施設の内壁面に沿って移動させる移動装置を備える液中作業装置。
【請求項5】
請求項4において、前記回転ブラシを駆動する原動機を前記移動装置の原動機に共用してある液中作業装置。
【請求項6】
液中を航行する移動体と、
前記移動体から突き出るように前記移動体に装備された固定アームと、
前記移動体に観察対象物の方向へ進退自在にして装備した可動アームと、
前記可動アームの可動端部分に懸垂支持されるとともに、観察対象像の取り込み口の方向が可変できる観察装置と、
を備えた液中作業装置。
【請求項7】
請求項6において、前記移動体は操作卓からの遠隔操縦でプール内の液中を航行するものであり、前記移動体の操作卓と前記プール内に投入される前記移動体の部分の間、前記プール外に配備される前記観察装置の部分と前記プール内に投入される前記吸引装置の部分の間、をそれぞれ着脱自在な連結装置で接続してある液中作業装置。
【請求項8】
液中を航行する移動体と、
前記移動体に装備されて前記液中の物体を保持及び保持解除するハンドリング装置と、 前記ハンドリング装置に接続された牽引装置と、
を備えた液中作業装置と、
請求項1に記載の液中作業装置と請求項6に記載の液中作業装置とのいずれか一方の液中作業装置を備えた液中作業システム。
【請求項9】
液中を航行する移動体と、
前記移動体に装備されて前記液中の物体を保持及び保持解除するハンドリング装置と、 前記ハンドリング装置に接続された牽引装置と、
を備えた液中作業装置と、
前記液中作業装置から液中の物体を受け入れて収納するゴンドラと、
前記ゴンドラを前記液中から前記液の液面の上方の間で移動させる昇降装置と、
前記昇降装置で移動させた前記ゴンドラを前記液面の上方での移動位置で受け入れるように配置され、前記ゴンドラを受け入れる開口が開閉自在な遮蔽キャスクと、
前記遮蔽キャスクを支持して移動する運搬装置と、
請求項1に記載の液中作業装置と、
請求項6に記載の液中作業装置と、
を備えた液中作業システム。
【請求項10】
液体中を航行する移動体でハンドリング装置を前記液体中の物体まで運搬し、
前記ハンドリング装置を前記物体に係合し、
前記ハンドリング装置を前記物体ごと牽引装置で牽引して前記物体を前記牽引前の位置から退避させ、
前記物体の退避元の空間を広げて液中作業空間を拡大する液中作業方法。
【請求項11】
液体中を航行する移動体でハンドリング装置を前記液体中の物体まで運搬し、
前記ハンドリング装置を前記物体に係合して運搬し、
運搬されてきた前記物体を前記ハンドリング装置から前記液体の液面上下に渡って昇降する昇降手段に移し変え、
前記昇降手段で前記液面の上方へ運搬してきた前記物体を遮蔽容器内に収納して閉じ込め、
前記遮蔽容器内に前記物体を閉じ込めた状態で、前記遮蔽容器内を乾燥及び集塵して前記物体を収納した場所から他の場所へ運搬する液中作業方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−51961(P2010−51961A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270972(P2009−270972)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2004−338302(P2004−338302)の分割
【原出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2004−338302(P2004−338302)の分割
【原出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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