説明

液体吐出装置、及び、液体吐出装置の製造方法

【課題】搬送ローラーに起因して記録媒体が蛇行した場合であっても、印刷品質の低下を抑制する。
【解決手段】ブラックノズル列BTと、ブラックノズル列BLを範囲H2においてオーバーラップさせた上で、搬送方向YJ1に離間して配置し、これらノズル列の離間距離D1を、搬送ローラー10を、整数回、回転した場合における記録媒体11の搬送量に対応する距離とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラーによって記録媒体を搬送方向に搬送させつつ、搬送方向と直交するノズル列方向に延在したノズル列を構成するノズルからインクを吐出して記録媒体にドットを形成する液体吐出装置、及び、当該液体吐出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送ローラーにより記録媒体を搬送しつつ、記録媒体にインクを吐出してドットを形成する液体吐出装置(インクジェット記録装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の液体吐出装置では、1つの記録ヘッドに、記録媒体の搬送方向と直交するノズル列方向に延在したノズル列が複数形成されており、所定の対応関係にあるノズル列については、ノズル列方向における所定範囲で記録媒体の搬送方向においてオーバーラップしている。このオーバーラップした範囲については、各ノズルからインクが吐出されて、ドットが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−12625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、1のノズル列と、他のノズル列とにおけるオーバーラップ部分では、ある1のドットを形成する際、1のノズル列の1のノズル、及び、当該他のノズル列において当該1のノズルに対応して配置された他のノズル、の双方から当該1のドットに対応する記録媒体の位置に、インクが吐出されることにより、正常にドットが形成されることとなる。しかしながら上述した液体吐出装置ように、搬送ローラーにより記録媒体を搬送するものでは、搬送ローラーの偏芯等に起因して、記録媒体が蛇行して搬送され、これに伴って、1のドットを形成すべく当該1のノズルによりインクが吐出された位置と、当該他のノズルによってインクが吐出された位置とに「ずれ」が生じ、このずれに起因して印刷品質が低下する可能性がある、という問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、搬送ローラーに起因して記録媒体が蛇行した場合であっても、印刷品質の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、搬送ローラーによって記録媒体を搬送方向に搬送させつつ、搬送方向と直交するノズル列方向に延在したノズル列を構成するノズルからインクを吐出して記録媒体にドットを形成する液体吐出装置であって、同一色のインクを吐出する異なる前記ノズル列を前記搬送方向に離間し、かつ、前記ノズル列方向における所定範囲でオーバーラップさせて配置し、前記ノズル列の離間距離を、前記搬送ローラーを、整数回、回転した場合における前記記録媒体の搬送量に対応する距離としたことを特徴とする。
ここで、搬送ローラーの偏芯、傾き等により、記録媒体が蛇行する場合、搬送ローラーが1回転する周期と、記録媒体が蛇行する周期とが一致することとなる。
これを踏まえ、上記構成によれば、1のノズル列を構成するノズルのうち、オーバーラップさせた範囲に属する1のノズルと、他のノズル列を構成するノズルのうち、オーバーラップさせた範囲に属するノズルであって、当該1のノズルに対応する位置に配置された他のノズルについて、記録媒体に1のドットを形成する場合、当該1のドットを形成すべく当該1のノズルからインクが吐出される位置と、当該他のノズルからインクが吐出される位置とを、蛇行の周期を反映して一致させることができ、印刷品質が低下することを抑制できる。
【0006】
また、上記発明の液体吐出装置であって、本発明は、前記離間距離を、前記搬送ローラーの外周の整数倍に対応する距離としたことを特徴とする。
この構成によれば、搬送ローラーの外周という客観的な値を利用して、所定の対応関係にあるノズル列の離間距離を、搬送ローラーを、整数回、回転した場合における媒体の搬送量に対応する距離とすることができる。
【0007】
また、上記発明の液体吐出装置であって、本発明は、異なる前記ノズル列であり、同一色の前記ノズル列のそれぞれについて、オーバーラップさせた範囲では、一方の前記ノズル列から吐出するインクの量を、前記ノズル列方向における他方側に向かって減少させると共に、他方の前記ノズル列から吐出するインクの量を、前記ノズル列方向における一方側へ向かって減少させることを特徴とする。
この構成によれば、ノズル列方向における所定範囲でオーバーラップするノズル列のそれぞれによってドットが形成される範囲について、他の範囲との間で、見た目上の違和感が発生することを効果的に抑制できる。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明は、搬送ローラーによって記録媒体を搬送方向に搬送させつつ、搬送方向と直交するノズル列方向に延在したノズル列を構成するノズルからインクを吐出して記録媒体にドットを形成する液体吐出装置の製造方法であって、同一色のインクを吐出する異なる前記ノズル列のそれぞれを、前記ノズル列方向における所定範囲でオーバーラップさせ、前記搬送ローラーを1回転した場合における前記記録媒体の搬送量に対応する距離分、前記搬送方向に離間して配置することを特徴とする。
この製造方法によって液体吐出装置を製造することにより、液体吐出装置を、搬送ローラーに起因して記録媒体が蛇行した場合であっても、印刷品質の低下を抑制可能な装置とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送ローラーに起因して記録媒体が蛇行した場合であっても、印刷品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ラインインクジェットプリンターの構成を模式的に示す図である。
【図2】ラインインクジェットプリンター、ホストコンピューターを示す図。
【図3】図1の範囲H1におけるインクの吐出量の変化の態様を示す図である。
【図4】記録媒体11が蛇行する様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1(液体吐出装置)の構成を模式的に示す図である。
ラインインクジェットプリンター1は、搬送ローラー10によって記録媒体11を搬送方向YJ1に搬送しつつ、搬送方向YJ1と直交する方向であるノズル列方向YJ2に延びるノズル列を有するラインインクジェットヘッド12から記録媒体11に対してインクを吐出して、記録媒体11にドットを形成することにより画像を記録するライン型のインクジェットプリンターである。
【0012】
図1に示すように、ラインインクジェットプリンター1は、上流ヘッドユニット17と、下流ヘッドユニット18とを備えている。
上流ヘッドユニット17には、上流側トップ記録ヘッド17T、上流側左記録ヘッド17L、及び、上流側右記録ヘッド17Rの3つの記録ヘッドが千鳥状に配置されている。同様に、下流ヘッドユニット18には、下流側トップ記録ヘッド18T、下流側左記録ヘッド18L、及び、下流側右記録ヘッド18Rの3つの記録ヘッドが千鳥状に配置されている。
【0013】
上流ヘッドユニット17の上流側トップ記録ヘッド17Tには、ブラックノズル列BTと、このブラックノズル列BTの下流に配置されたシアンノズル列CTとが設けられている。ブラックノズル列BTがノズル列方向YJ2において延在する範囲と、シアンノズル列CTがノズル列方向YJ2において延在する範囲とは一致している。
ブラックノズル列BTは、インクを微細なインク粒(液滴)として吐出するノズル孔が、搬送方向と直交する方向であるノズル列方向YJ2に延在して形成されたノズル列である。ブラックノズル列BTには、ブラック(K)のインクカートリッジ(不図示)から、インクが供給される構成となっており、上流側トップ記録ヘッド17Tは、例えばピエゾ素子を用いて構成されるアクチュエーターによって、ブラック(K)のインクカートリッジから供給されるインクを記録媒体11へ向かって押し出して、所定のノズル孔から微細なインク粒を吐出する。
同様に、シアンノズル列CTは、ブラックノズル列BTと同様、ノズル孔がノズル列方向に延在して形成されたノズル列であり、シアン(C)のインクカートリッジ(不図示)からインクが供給される構成となっている。
【0014】
上流側右記録ヘッド17Rは、上流側トップ記録ヘッド17Tと同様の構成であり、ブラック(K)のインク吐出用のブラックノズル列BRと、このブラックノズル列BRの下流に配置されたシアン(C)のインク吐出用のシアンノズル列CRとを備えている。
図1に示すように、上流側トップ記録ヘッド17Tに形成された各ノズル列と、上流側右記録ヘッド17Rに形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H1において、オーバーラップしている。このオーバーラップは、記録媒体11において、上流側トップ記録ヘッド17Tによって記録媒体11に形成されるドットと、上流側右記録ヘッド17Rによって記録媒体11に形成されるドットとの境目に対応する部位に、ドットの不均一な乖離に起因したいわゆる白線が発生し、見た目上の違和感が発生することを防止するために設定されたものである。
また、図1に示すように、上流側トップ記録ヘッド17Tに形成されたブラックノズル列BTと、上流側右記録ヘッド17Rに形成されたブラックノズル列BRとは、搬送方向において距離D1だけ離間しており、同様に、シアンノズル列CTと、シアンノズル列CRとは距離D1だけ離間している。この距離D1については後述する。
【0015】
上流側左記録ヘッド17Lは、上流側トップ記録ヘッド17Tと同様の構成であり、ブラックノズル列BLと、このブラックノズル列BLの下流に配置されたシアンノズル列CLとを備えている。
図1に示すように、上流側トップ記録ヘッド17Tに形成された各ノズル列と、上流側左記録ヘッド17Lに形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H2において、オーバーラップしている。
また、図1に示すように、上流側トップ記録ヘッド17Tに形成された各ノズル列のそれぞれと、上流側左記録ヘッド17Lに形成されたノズル列のそれぞれとは、搬送方向において距離D1だけ離間している。
【0016】
ブラックノズル列BRと、ブラックノズル列BLとの搬送方向における位置は一致しており、シアンノズル列CRと、シアンノズル列CLとの搬送方向における位置は一致している。
【0017】
下流側トップ記録ヘッド18Tには、イエローノズル列YTと、このイエローノズル列YTの下流に配置されたマゼンタノズル列MTとが設けられている。イエローノズル列YTには、イエロー(Y)のインクカートリッジからインクが供給され、マゼンタノズル列MTには、マゼンタ(M)のインクカートリッジからインクが供給される。イエローノズル列YTがノズル列方向YJ2において延在する範囲と、マゼンタノズル列MTがノズル列方向YJ2において延在する範囲とは、同一である。
【0018】
下流側右記録ヘッド18Rは、下流側トップ記録ヘッド18Tと同様の構成であり、イエロー(Y)のインク吐出用のイエローノズル列YRと、このイエローノズル列YRの下流に配置されたマゼンタ(M)のインク吐出用のマゼンタノズル列MRとを備えている。
図1に示すように、下流側トップ記録ヘッド18Tに形成された各ノズル列と、下流側右記録ヘッド18Rに形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H1において、オーバーラップしている。
また、図1に示すように、下流側トップ記録ヘッド18Tに形成された各ノズル列と、下流側右記録ヘッド18Rに形成された各ノズル列とは距離D1だけ離間している。
【0019】
下流側左記録ヘッド18Lは、下流側トップ記録ヘッド18Tと同様の構成であり、イエローノズル列YLと、このイエローノズル列YLの下流に配置されたマゼンタノズル列MLとを備えている。
図1に示すように、下流側トップ記録ヘッド18Tに形成された各ノズル列と、下流側左記録ヘッド18Lに形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H2において、オーバーラップしている。
また、図1に示すように、下流側トップ記録ヘッド18Tに形成された各ノズル列のそれぞれと、下流側左記録ヘッド18Lに形成されたノズル列のそれぞれとは、搬送方向において距離D1だけ離間している。
【0020】
イエローノズル列YRと、イエローノズル列YLとの搬送方向における位置は一致しており、マゼンタノズル列MRと、マゼンタノズル列MLとの搬送方向における位置は一致している。
【0021】
図1に示すように、上流ヘッドユニット17における3つの記録ヘッドの位置関係と、下流ヘッドユニット18における3つの記録ヘッドの位置関係とは、同一である。
また、図1に示すように、上流ヘッドユニット17の1の記録ヘッドに形成された1のノズル列と、下流ヘッドユニット18の1の記録ヘッドに対応する他の記録ヘッドに形成されたノズル列であって、当該1のノズル列に対応するノズル列と、の距離は、距離D2で一定である。
具体的には、上流ヘッドユニット17の上流側トップ記録ヘッド17Tのブラックノズル列BTと、下流ヘッドユニット18の下流側トップ記録ヘッド18Tのイエローノズル列YTと、は距離D2だけ搬送方向に離間している。同様に、シアンノズル列CT及びマゼンタノズル列MT、ブラックノズル列BR及びイエローノズル列YR、シアンノズル列CR及びマゼンタノズル列MR、ブラックノズル列BL及びイエローノズル列YL、シアンノズル列CL及びマゼンタノズル列MLとは、それぞれ、距離D2だけ搬送方向に離間している。
【0022】
ラインインクジェットプリンター1は、記録媒体11にインクを吐出してドットを形成し、このドットの組み合わせにより、画像を記録する。以下、記録媒体11に、ある1つのドットを形成する場合の基本的な動作について、図1を用いて簡単に説明する。
記録媒体11が図1に示す位置に存在しており、この記録媒体11上の位置P1に所定の色のドットを形成する場合を例にして説明する。なお、所定の色は、ブラック(K)、シアン(C)、イエロー(Y)、及び、マゼンタ(M)のインクがそれぞれ所定量ずつ吐出されることによって表現される色であるものとする。
図1に示すように、位置P1は、範囲H2に属する位置である。
【0023】
ラインインクジェットプリンター1は、記録媒体11にドットを形成している間、記録媒体11を、予め指定された一定の速さで所定方向へ向かって搬送する。そして、図1に示す状態から記録媒体11の搬送方向への搬送が進行し、(1)記録媒体11上の位置P1がブラックノズル列BTの位置P2に対応する位置に至ったタイミングで、ブラックノズル列BTの対応するノズルから所定量のブラック(K)のインクを吐出する。同様にして、(2)記録媒体11の位置P1がシアンノズル列CTの位置P3に至ったタイミングで、シアンノズル列CTの対応するノズルから所定量のシアン(C)のインクを吐出しする。(3)記録媒体11の位置P1がブラックノズル列BLの位置P4に至ったタイミングで、ブラックノズル列BLの対応するノズルから所定量のブラック(B)のインクを吐出しする。(4)記録媒体11の位置P1がシアンノズル列CLの位置P5に至ったタイミングで、シアンノズル列CLの対応するノズルから所定量のシアン(B)のインクを吐出する。(5)記録媒体11の位置P1がイエローノズル列YTの位置P6に至ったタイミングで、イエローノズル列YTの対応するノズルから所定量のイエロー(Y)のインクを吐出する。(6)記録媒体11の位置P1がマゼンタノズル列MTの位置P7に至ったタイミングで、マゼンタノズル列MTの対応するノズルから所定量のマゼンタ(M)のインクを吐出する。(7)記録媒体11の位置P1がイエローノズル列YLの位置P8に至ったタイミングで、イエローノズル列YLの対応するノズルから所定量のイエロー(Y)のインクを吐出する。(8)記録媒体11の位置P1がマゼンタノズル列MLの位置P9に至ったタイミングで、マゼンタノズル列MLの対応するノズルから所定量のマゼンタ(M)のインクを吐出する。
このようにして、記録媒体11上の位置P1に、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及び、イエロー(Y)のインクがそれぞれ所定量ずつ吐出され、位置P1に所定の色のドットが形成される。
つまり、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1では、画像の記録に係る処理中は、各記録ヘッドはその位置が固定された状態であり、この固定された記録ヘッドに対して記録媒体11が相対的に移動しつつ、各記録ヘッドから適宜インクが吐出されてドットが形成され、画像が記録される。
【0024】
図2は、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1、及び、このラインインクジェットプリンター1を制御するホストコンピューター25の機能的構成を示すブロック図である。
ラインインクジェットプリンター1は、プリンター側制御部27と、ドライバー回路部30と、を備えている。
プリンター側制御部27は、ラインインクジェットプリンター1の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行部としてのCPUや、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや、この基本制御プログラムに係るデータ等を不揮発的に記憶するROM、CPUに実行されるプログラムやこのプログラムに係るデータ等を一時的に記憶するRAM、その他の周辺回路等を備えている。
ドライバー回路部30は、記録ヘッドドライバー31と、搬送ドライバー33と、を備えている。
記録ヘッドドライバー31は、各記録ヘッドに接続され、プリンター側制御部27の制御の下、各記録ヘッドが備えるアクチュエーターを駆動し、各ノズル孔から必要量のインクを吐出する。
搬送ドライバー33は、搬送モーター36に接続され、搬送モーター36に駆動信号を出力して、搬送モーター36をプリンター側制御部27により指示された量だけ動作させる。搬送モーター36の動作に応じて、搬送ローラー10が回転し、記録媒体11が搬送方向に搬送される。
また、プリンター側制御部27には表示部39と、入力部40と、通信インターフェイス41(I/F)と、が接続されている。
表示部39は、表示パネルや、LED等を備え、プリンター側制御部27の制御の下、各種情報を表示する。
入力部40は、各種操作スイッチに接続され、操作スイッチに対する操作を検出し、プリンター側制御部27に出力する。
通信インターフェイス41は、プリンター側制御部27の制御の下、ホストコンピューター25との間で、通信規格に準拠した通信を行う。
【0025】
一方、ホストコンピューター25は、ホスト側制御部45と、表示部46と、入力部47と、記憶部48と、通信インターフェイス49とを備えている。
ホスト側制御部45は、ホストコンピューター25の各部を中枢的に制御するものであり、プリンター側制御部27と同様、CPUや、ROM、RAM、周辺回路等を備えている。
表示部46は、液晶ディスプレーパネルや、有機ELパネル等の表示パネルを備え、ホスト側制御部45の制御の下、表示パネルに各種情報を表示する。
入力部47は、各種入力デバイスに接続され、入力デバイスの出力信号をホスト側制御部45に出力する。
記憶部48は、ハードディスクや、EEPROM等を備え、各種データを書き換え可能に記憶する。
通信インターフェイス49(I/F)は、上述した通信インターフェイス41と同様、ホスト側制御部45の制御の下、ラインインクジェットプリンター1との間で通信規格に準拠した通信を行う。
【0026】
ホストコンピューター25には、プリンタードライバー等のラインインクジェットプリンター1を制御するためのプリンタードライバーがインストールされており、ホスト側制御部45は、プリンタードライバーを読み出して、実行することにより、ラインインクジェットプリンター1に対して、適宜、制御コマンドを出力する。
プリンター側制御部27は、ホストコンピューター25から入力される制御コマンドに基づいて、ドライバー回路部30の各部を制御し、記録媒体11に画像を記録する動作を実行する。
【0027】
次いで、ノズル列のオーバーラップについて説明する。
以下、説明の便宜のため、上流側トップ記録ヘッド17Tのブラックノズル列BT、及び、上流側左記録ヘッド17Lのブラックノズル列BLにおけるオーバーラップについて説明する。
図1に示すように、ブラックノズル列BTと、ブラックノズル列BLとは、範囲H2でオーバーラップしている。ブラックノズル列BTについて、範囲H2に属するエリアは、エリアATであり、また、ブラックノズル列BLにおいて、範囲H2に属するエリアは、エリアALである。
上述したように、記録媒体11にある1つのドットを形成するべく、ブラック(K)のインクを吐出する場合、ブラックノズル列BTのエリアATに属する対応する1のノズルから、所定量のブラック(K)のインクが、当該1つのドットを形成すべき位置(例えば、位置P1)に吐出されると共に、ブラックノズル列BLのエリアALに属する対応する他のノズルから、所定量のブラック(K)のインクが、同位置(例えば、位置P1)に吐出される。この場合において、当該1のノズルと、当該他のノズルとから吐出されるインクの量は、記録媒体11に記録された画像における範囲H1に対応する領域に、色の不均一な変化に起因した見た目上の違和感が発生しないようにする、という観点から適切に決定される。
【0028】
図3は、範囲H2におけるブラックノズル列BTと、ブラックノズル列BLとのインク吐出量の変化を示す図である。
図3中、横軸は、記録媒体11において、ノズル列方向YJ2に延在するドットを示しており、縦軸は、インクの量を示している。また、グラフG1は、ブラックノズル列BTのインクの吐出量の変化を示すグラフであり、一方、グラフG2は、ブラックノズル列BLのインクの吐出量の変化を示すグラフである。これらグラフG1、及び、グラフG2は、ブラック(K)を利用して表現されるある一定の色のドットを形成する場合における、各ノズル列のインクの吐出量の変化を示している。
また、図1に示すように、ノズル列方向YJ2において、搬送方向YJ1に対して左方向を左方向YJ3とし、左方向を右方向YJ4と称するものとする。
【0029】
図3に示すように、範囲H2に一定の色のドットを形成する場合、範囲H2において、ブラックノズル列BTから吐出されるインクの量は、左方向YJ3へ向かうに従って、徐々に減少し、一方、ブラックノズル列BLから吐出されるインクの量は、右方向YJ4へ向かうに従って、徐々に減少する。
範囲H2における各ノズル列のインクの吐出量の態様を、図3に示す態様とすることにより、範囲H2に属するドットについては、ブラックノズル列BT、及び、ブラックノズル列BLの双方からインクが吐出されて形成されることとなる。ここで、ブラックノズル列BTと、ブラックノズル列BLとにオーバーラップした範囲を設けなかった場合、ブラックノズル列BTによって形成されるドットと、ブラックノズル列BLによって形成されるドットとの境目に、ドットの配列が不均一となった領域が生じ得、これに起因していわゆる白線が発生する可能性があるが、本実施形態のように構成することにより、いわゆる白線が発生することを好適に防止できる。特に、本実施形態では、図3に示すように、範囲H2において、ブラックノズル列BTから吐出されるインクの量が左方向YJ3へ向かって減少していくのと対応して、ブラックノズル列BLから吐出されるインクの量が左方向YJ3へ向かって増加していく状態となり、範囲H1に属するドットについて、インクの吐出量の相違に起因した色の不均一な変化が生じにくい。
【0030】
ところで、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、搬送ローラー10により、記録媒体11を搬送方向に搬送する。
そして、経年劣化、製品毎の個体差、その他の要因により、搬送ローラー10が偏芯することがある。
搬送ローラー10が偏芯すると、記録媒体11の搬送に際し、記録媒体11が蛇行する場合がある。
【0031】
図4は、搬送ローラー10の偏芯に起因して、記録媒体11が蛇行する様子を示す図である。図4では、説明の便宜のため、記録媒体11の大きさや、現実に起こり得る蛇行の態様等をわかりやすくするため、記録媒体11を極端に蛇行させている。
図4において、ラインS1は、搬送方向に搬送される記録媒体11の中心の軌跡を示すラインである。
搬送ローラー10が偏芯している場合、記録媒体11が図3に示すように蛇行してしまう場合がある。
そして、搬送ローラー10の偏芯に起因して記録媒体11が蛇行する場合、搬送ローラー10が1回転する周期と、記録媒体11が蛇行する周期とが一致することとなる。
詳細には、搬送ローラー10が偏芯している場合において、搬送ローラー10が1の状態にあるとする。そして、当該1の状態から、搬送ローラー10が回転すると、偏芯に起因して、当該1の状態から状態が変移し、1回転した段階で、当該1の状態へと戻る。
このため、例えば、記録媒体11が、図4の位置T1に位置している場合において、搬送ローラー10が回転し始めると、記録媒体11は、搬送ローラー10の回転に伴って所定の態様で蛇行し、搬送ローラー10が1回転した段階で、位置T1における状態と対応する状態(図4の位置T2に示す状態)となる。
【0032】
ここで、ノズル列がオーバーラップした範囲では、1つのドットを形成する際に、1のノズル列の1のノズルと、当該1のノズル列に対応する他のノズル列において当該1のノズルに対応する位置に設けられた他のノズルから、記録媒体11の同一箇所にインクが吐出されることが前提となっており、かつ、これらノズルから同一箇所にインクが吐出された場合に、オーバーラップした範囲に対応する領域における見た目上の違和感を最も抑制できる。図3の例では、範囲H1に属する1つのドットを形成する場合、ブラックノズル列BTの対応するノズルと、ブラックノズル列BLの対応するノズルとの双方から、同一箇所にインクが吐出されることが求められる。
従って、上述したように、搬送ローラー10の偏芯に起因した記録媒体11の蛇行が発生している状況下であっても、オーバーラップした範囲では、1つのドットを形成するに際し、1のノズルと、当該1のノズルに対応する他のノズルとの双方から、同一箇所にインクが吐出されることが求められる。
当該要求を満たすべく、本実施形態では、1のノズル列と、当該1のノズル列とオーバーラップした、対応する他のノズル列との離間距離である距離D1を以下のように設計している。
【0033】
すなわち、本実施形態では、距離D1を、「D1=L1×n」(ただし、外周L1は、搬送ローラー10の外周の長さ。nは、正の整数。)によって算出される値に、所定の補正を加えた値としている。
なお、記録媒体11は、搬送ローラー10に接触し、搬送ローラー10の回転に伴って、搬送方向YJ1へ向かって搬送される。従って、外周L1の値は、搬送ローラー10が1回転した場合における記録媒体11の搬送方向YJ1への搬送量の値に対応している。
【0034】
このように距離D1を算出することにより、以下の効果を奏することができる。
すなわち、上述したように、搬送ローラー10の偏芯に起因して記録媒体11の蛇行が発生している場合、搬送ローラー10が1回転する周期と、記録媒体11が蛇行する周期とが一致することとなる。
従って、1つのドットを形成する場合、1のノズルによってインクを吐出した後、搬送ローラー10が、整数回、回転したタイミングで、他のノズルによってインクを吐出した場合、搬送ローラー10が1回転する周期と、記録媒体11が蛇行する周期とが一致する。これを反映して、1つのドットを形成すべく1のノズルによってインクを吐出する位置と、他のノズルによってインクを吐出する位置とを一致させることができる。
より具体的には、図1を参照し、記録媒体11の位置P1に所定の色(ブラック(K)を用いることにより実現される色であるものとする。)の1つのドットを形成する場合、ブラックノズル列BTの位置P2に位置するノズルによって所定量のブラック(K)のインクを吐出した後、搬送ローラー10が、整数回、回転したタイミングで、ブラックノズル列BLの位置P4に位置するノズルによってインクを吐出した場合、ブラックノズル列BTのノズルによってブラック(K)のインクを吐出する際の記録媒体11の状態と、ブラックノズル列BLのノズルによってブラック(K)のインクを吐出する際の記録媒体11の状態とが、搬送ローラー10の偏芯の状態に係わらず、一致することとなる。すなわち、搬送ローラー10が1回転する周期と、記録媒体11が蛇行する周期とが一致することを反映して、1つのドットを形成すべく1のノズルによってインクを吐出する位置と、他のノズルによってインクを吐出する位置とを好適に一致させることができる。
【0035】
これを踏まえ、本実施形態では、距離D1を、「D1=L1×n」によって算出される値に、所定の補正を加えた値とする。これにより、1つのドットを形成する場合、1のノズルによってインクが吐出された後、搬送ローラー10が、整数回、回転したタイミングで、他のノズルによってインクが吐出されることとなり、搬送ローラー10が1回転する周期と、記録媒体11が蛇行する周期とが一致することを反映して、1つのドットを形成すべく1のノズルによってインクを吐出する位置と、他のノズルによってインクを吐出する位置とを好適に一致させることができる。これにより、印刷品質が低下することを抑制している。
なお、所定の補正とは、ラインインクジェットプリンター1の個体差や、想定される誤差等のハードウェア的、ソフトウェア的な事情を吸収するための補正である。
【0036】
本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、例えば、以下のようにして製造される。
ラインインクジェットプリンター1を製造する装置の事情、設計の事情、その他の製造に係る種々の事情により、距離D1が定まっているものとする。この場合、「L1=D1÷n」により外周L1を算出し、算出した外周L1の搬送ローラー10を製造し、ラインインクジェットプリンター1に設ける。
逆に、搬送ローラー10の外周の値が定まっている場合は、「D1=L1×n」により距離D1を算出し、算出した距離D1が反映されるように、ラインインクジェットプリンター1において各ノズル列や、ノズル列に付随する部材のレイアウトを決定する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、異なるノズル列であり、同一色のノズル列であるブラックノズル列BT、ブラックノズル列BLを、ノズル列方向YJ2における範囲H2でオーバーラップさせた上で、搬送方向YJ1に離間して配置している。そして、これらノズル列ノズル列の離間距離である距離D1を、搬送ローラー10を、整数回、回転した場合における記録媒体11の搬送量に対応する距離としている。また、このような構成となるように、ラインインクジェットプリンター1を製造する。
これにより、例えば、記録媒体11の位置P1に所定の色(ブラック(K)を用いることにより実現される色であるものとする。)の1つのドットを形成する場合、ブラックノズル列BTの位置P2に位置するノズルによって所定量のブラック(K)のインクが吐出された後、搬送ローラー10が、整数回、回転したタイミングで、ブラックノズル列BLの位置P4に位置するノズルによってインクが吐出されることとなり、ブラックノズル列BTのノズルによってブラック(K)のインクを吐出する際の記録媒体11の状態と、ブラックノズル列BLのノズルによってブラック(K)のインクを吐出する際の記録媒体11の状態とが、搬送ローラー10の偏芯の状態に係わらず、一致することとなり、搬送ローラー10が1回転する周期と、記録媒体11が蛇行する周期とが一致することを反映して、1つのドットを形成すべく1のノズルによってインクを吐出する位置と、他のノズルによってインクを吐出する位置とを好適に一致させることができ、これにより、印刷品質の低下を抑制できる。
【0038】
また、本実施形態では、距離D1の値を、「D1=L1×n」により算出される値としている。換言すれば、距離D1を、搬送ローラー10の外周L1の整数倍に対応する距離としている。
これによれば、搬送ローラー10の外周L1という客観的な値を利用して、所定の対応関係にあるノズル列の離間距離を、搬送ローラー10を、整数回、回転した場合における記録媒体11の搬送量に対応する距離とすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、図3に示すように、範囲H2に一定の色のドットを形成する場合、範囲H2において、ブラックノズル列BTから吐出されるインクの量は、左方向YJ3へ向かうに従って、徐々に減少し、一方、ブラックノズル列BLから吐出されるインクの量は、右方向YJ4へ向かうに従って、徐々に減少する。これにより、範囲H2に属するドットについては、ブラックノズル列BT、及び、ブラックノズル列BLの双方からインクが吐出されて形成されることとなる。ここで、ブラックノズル列BTと、ブラックノズル列BLとにオーバーラップした範囲を設けなかった場合、ブラックノズル列BTによって形成されるドットと、ブラックノズル列BLによって形成されるドットとの境目に、ドットの配列が不均一となった領域が生じ得、これに起因していわゆる白線が発生する可能性があるが、本実施形態のように構成することにより、いわゆる白線が発生することを好適に防止できる。特に、本実施形態では、図3に示すように、範囲H2において、ブラックノズル列BTから吐出されるインクの量が左方向YJ3へ向かって減少していくのと反比例して、ブラックノズル列BLから吐出されるインクの量が左方向YJ3へ向かって増加していく状態となり、範囲H1に属するドットについて、インクの吐出量の相違に起因した色の不均一な変化が生じにくい。
【0040】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、本実施形態では、距離D1の値を、「D1=L1×n」により算出される値としているが、距離D1の値は、これに限らない。すなわち、距離D1は、搬送ローラー10を、整数回、回転した場合における記録媒体11の搬送量に対応する距離であればよい。「対応する」とは、1のドットを形成すべく1のノズルからインクが吐出される位置と、他のノズルからインクが吐出される位置とを、蛇行の周期を反映して一致させる、という目的を達成可能な程度の一致性を意味している。
また、各記録ヘッドの配置の態様や、記録の実行に係る各種機構の態様等は、上述した実施形態におけるものに限らないことは、言うまでもない。すなわち、搬送方向YJ1に搬送される記録媒体11に対して、ノズル列方向YJ2に延在するノズル列の各ノズルからインクを吐出して記録を行う記録装置に広く本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…ラインインクジェットプリンター(液体吐出装置)、10…搬送ローラー、11…記録媒体、12…ラインインクジェットヘッド、25…ホストコンピューター、27…プリンター側制御部、45…ホスト側制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ローラーによって記録媒体を搬送方向に搬送させつつ、搬送方向と直交するノズル列方向に延在したノズル列を構成するノズルからインクを吐出して記録媒体にドットを形成する液体吐出装置であって、
同一色のインクを吐出する異なる前記ノズル列を前記搬送方向に離間し、かつ、前記ノズル列方向における所定範囲でオーバーラップさせて配置し、前記ノズル列の離間距離を、前記搬送ローラーを、整数回、回転した場合における前記記録媒体の搬送量に対応する距離としたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記離間距離を、前記搬送ローラーの外周の整数倍に対応する距離としたことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
異なる前記ノズル列であり、同一色の前記ノズル列のそれぞれについて、オーバーラップさせた範囲では、一方の前記ノズル列から吐出するインクの量を、前記ノズル列方向における他方側に向かって減少させると共に、他方の前記ノズル列から吐出するインクの量を、前記ノズル列方向における一方側へ向かって減少させることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
搬送ローラーによって記録媒体を搬送方向に搬送させつつ、搬送方向と直交するノズル列方向に延在したノズル列を構成するノズルからインクを吐出して記録媒体にドットを形成する液体吐出装置の製造方法であって、
同一色のインクを吐出する異なる前記ノズル列のそれぞれを、前記ノズル列方向における所定範囲でオーバーラップさせ、前記搬送ローラーを1回転した場合における前記記録媒体の搬送量に対応する距離分、前記搬送方向に離間して配置することを特徴とする液体吐出装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−201063(P2012−201063A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69530(P2011−69530)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】