説明

液体塗工ヘッド、液体塗工装置および塗工方法

【課題】 本発明の目的は、寸法精度の良好な塗布物を形成し得る液体塗工ヘッド、それを用いた液体塗工装置及び塗工方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明にかかる液体塗工ヘッドは、内側全周に亘って液体を吐出する環状スリットを有している環状の液体塗工ヘッドであって、環状スリットに連通している環状の分配室と、該分配室に外部から液体を供給する供給口とを備え、更に、該分配室内に供給された液体を加圧して該環状スリットから押出すための環状のピストンが該分配室に臨んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状基体の周面への被覆層の形成に用いる塗工ヘッド、及びそれを用いた塗工方法に関する。
【0002】
また本発明は、上記塗工方法を用いた弾性ローラ、現像ローラの製造方法に関する。更に本発明は、上記現像ローラを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電子写真画像形成装置には、円筒状または円柱状の基体(以降「円筒状基体」と略)の周面にゴムや樹脂を含む被覆層を有するローラ形状の機能部材(以降「ローラ部材」と略)が多く使用されている。
【0004】
このようなローラ部材の製造にあたり、円筒状基体の周面に被覆層形成用の塗料を均一に塗布する方法として、所謂リング塗工法が提案されている(特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開2003−190870号公報
【特許文献2】特開2006−150266号公報
【特許文献3】特開2005−152830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の電子写真画像のより一層の高品位化に伴い、電子写真装置に使用される弾性ローラ等に対してもより一層の高精度化が要求されている。上記要求を満たすためには、リング塗工ヘッドの環状スリットからの塗料吐出量の安定性の、より一層の高度化を図る必要があるとの認識を得るに至った。
【0006】
そこで、本発明の目的は、寸法精度の良好な塗布物を形成し得る液体塗工ヘッド、それを用いた液体塗工装置及び塗工方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、振れ精度が良好な弾性ローラの製造方法を提供することにある。
【0008】
また本発明の他の目的は、振れ精度が良好で、周方向で抵抗ムラの少ない現像ローラの製造方法を提供することにある。
【0009】
さらに、本発明の他の目的は、優れた画像を形成できるプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る液体塗工ヘッドは、内側全周に亘って液体を吐出する環状スリットを有している環状の液体塗工ヘッドであって、環状スリットに連通している環状の分配室と、該分配室に外部から液体を供給する供給口とを備え、更に、該分配室内に供給された液体を加圧して該環状スリットから押出すための環状のピストンが該分配室に臨んで配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る液体塗工装置は、上記の液体塗工ヘッドと、該液体塗工ヘッドと同軸に円筒状基体を支持する手段と、該円筒状基体と該液体塗工ヘッドとを相対的に移動させる手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る塗工方法は、上記の液体塗工装置を用いた円筒状基体の周面への塗料の塗工方法であって、
(i)円筒状基体を液体塗工ヘッドと同軸に支持する工程と、
(ii)液体塗工ヘッドの供給口から分配室に塗料を供給し、該分配室の全周に亘り塗料を分配する工程と、
(iii)前記工程(ii)によって分配された該分配室中の塗料を、環状のピストンを駆動させて環状スリットから吐出させて該円筒状基体の周面に塗布する工程と、
(iv)該液体塗工ヘッドと該円筒状基体とを相対的に移動させる工程と
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る弾性ローラの製造方法は、上記の液体塗工装置を用いた弾性ローラの製造方法であって、
(i)円筒状基体を液体塗工ヘッドと同軸に支持する工程と、
(ii)液体塗工ヘッドの供給口から分配室に液状ゴムを含む塗料を供給し、該分配室の全周に亘り塗料を分配する工程と、
(iii)前記工程(ii)によって分配された該分配室内の塗料を、環状のピストンを駆動させて環状スリットから吐出させて該円筒状基体の周面に塗布する工程と、
(iv)該液体塗工ヘッドと該円筒状基体とを相対的に移動させる工程と
(v)該円筒状基体の周面に塗布された塗料中の液状ゴムを硬化させる工程と
を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る弾性ローラは、上記の弾性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る現像ローラは、上記の弾性ローラの製造方法のうち、塗料として導電剤を含む塗料を用いることによって製造されたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るプロセスカートリッジは、少なくともトナーを有する現像剤と、該現像剤を収容している現像剤容器と、上記の現像ローラとを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る電子写真装置は、トナーを有する現像剤、該現像剤を収容している現像剤容器、上記の現像ローラ、電子写真感光体、帯電手段、露光手段及び転写手段と具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、分配室の全周に分配された塗料を、環状のピストンで加圧して環状スリットから押出すことにより、周方向に均一に塗布液を吐出させることができる。その結果、円筒状基体の周面に、より均一な厚さの被覆層を形成することができる。その為、外径精度・振れ精度をより高精度化し、更には周方向で抵抗ムラの極めて少ない弾性ローラや現像ローラを得ることができる。
【0019】
また、外径精度や振れ精度に優れ、抵抗ムラが極めて少ない現像ローラを用いることにより、高品位な電子写真画像を供給可能なプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の形態を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0021】
・図1の説明;
図1は、本発明にかかる液体塗工ヘッドを用いた液体塗工装置の概略説明図である。
【0022】
架台1の上に略垂直にコラム2が取り付けられている。架台1とコラム2の上部に精密ボールネジ3が鉛直方向に平行に取り付けられている。14はリニアガイドであり、精密ボールネジ3と平行に2本がコラム2上に取り付けられている。LMガイド4はリニアガイド14と精密ボールネジ3とを連結し、サーボモータ5よりプーリ6を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。
【0023】
コラム2には、円筒状基体102の周面に塗料を供給する、環状スリットから液体、例えば未硬化の液状ゴムを吐出する塗工ヘッド8が取り付けられている。さらにLMガイド4には上ブラケット71および下ブラケット72が取り付けられている。下ブラケット72には円筒状基体102を保持、固定する下保持軸9が取り付けられている。また、上保持軸10が上ブラケット71に取り付けられ、上保持軸10は下保持軸9に対向して同芯になるように配置して円筒状基体102を保持している。
【0024】
さらに塗工ヘッド8の中心軸は下保持軸9と上保持軸10の移動方向と平行となるようにそれぞれに支持されている。また、下保持軸9および上保持軸10の移動時において、塗工ヘッド8の内側に開口した環状スリットの中心軸と下保持軸9および上保持軸10の中心軸が同芯となるように調節してある。このような構成により塗工ヘッド9の環状スリットの中心軸と、円筒状基体の中心軸とを同芯に合わせることができる。塗工ヘッドの内周面と円筒状基体102の周面との間には、均一な隙間が形成される。
【0025】
・塗工ヘッド;
図2(a)は、図1中の塗工ヘッド8の概略断面図である。図2(b)、(c)は各々、図2(a)に示した塗工ヘッドのA−A線及びB−B線における断面図である。
【0026】
塗工ヘッド8は、中空円筒形の内リング(以下、内リング)201および供給口11を少なくとも一つ有する中空円筒形の外リング(以下、外リング)205が、中空円筒形のキャップリング(以下、キャップリング)202を保持することによって構成されている。また、内リングと外リングの間にはリング状のピストン208が配されている。内側に開口した環状スリット203は、内リング201およびキャップリング202により、制御される。
【0027】
内リング201は、絞り段差部207を有しており、内リング201の最小外径部と外リング205との間で環状の液分配室206が構成される。したがって、環状スリット203は環状の分配室206と連通している。
【0028】
外リング205は、分配室206に塗料を供給する供給口11を有している。
【0029】
208は、供給口11より分配室206内に供給された塗料を加圧し、環状スリット203から吐出させるリング状のピストンである。ピストン208の駆動により、分配室206内の全周に亘って分配された塗料は、環状スリット203から均一な圧力で吐出される。
【0030】
ピストン208の摺動部を構成する、該内リングの外径をd1min、該外リングの内径をr2としたとき、[r2/d1min]の値が、1.05以上2.0以下の範囲内、特には、1.2以上1.4以下の範囲内にあることが好ましい。
【0031】
[r2/d1min]の値を上記の範囲内とすることにより、ピストン208の肉厚を十分に厚くすることができる。そのため、高粘度の塗布液を押出す際の耐久性をより確実なものとできる。また、ピストン208の摺動する部分の容積が確保されるために、塗工ヘッド8を軸方向に長くする必要もない。
【0032】
また、このときの該内リングの外径d1minは、20.00mm以上95.0mm以下、該外リングの内径r2は、21.0mm以上100.0mm以下であることが好ましい。d1min、r2ともに上記数値範囲内であれば、塗工ヘッド8内におけるリング状のピストンの肉厚の薄肉化、高粘度の塗布液を押出す際の耐久性を維持し得る。また、塗工ヘッド8を軸方向に長くする必要もない。
【0033】
図2中、11は、分配室206への塗布液の供給口である。供給口11は、図1に示した塗布液搬送用の配管12を介して材料供給弁13に接続されている。図1の材料供給弁13は、その手前に混合ミキサー、材料供給ポンプ、材料定量吐出装置、材料タンク等を備え、定量(単位時間当たりの量が一定)の塗布液を吐出可能としている。塗布液は材料タンクから、材料定量吐出装置により一定量計量され、混合ミキサーで混合される。その後、材料供給ポンプにより混合された塗布液は、材料供給弁13から配管12を経由して、供給口11に送られ、塗工ヘッドの分配室206に供給される。
【0034】
分配室206に臨んで配置されているリング状のピストン208は、図2(a)の上方に駆動させることで分配室206内に環状に供給された塗布液は押出され、環状スリット203より吐出され、軸芯体周面に塗布される。
【0035】
尚、ここでは、塗工ヘッド8が、複数の部材から構成される例を示すものの、一体成形型であっても良いし、二つあるいは五つ以上の部材から構成されても良い。 なお、塗工ヘッド8の内直径L(図9および環状スリット203の幅は、軸芯体の周囲に塗工する塗布液の膜厚や粘度、固形分、塗工速度により適宜選ばれる。
【0036】
・当該塗布ヘッドを用いた塗布方法、弾性ローラ製法
次に、軸芯体外周面上に塗布液からなる円筒形状(ロール形状)の未硬化物の層を形成する方法を説明する。塗工ヘッド8を固定とし、軸芯体102を軸方向移動させる場合において、図1に示す軸芯体下保持軸9および軸芯体上保持軸10により軸芯体102を把持する。次いで、軸芯体102における塗布層の塗工開始場所を塗工ヘッド8の環状スリット203に合わせる様に軸芯体を移動させる。
【0037】
一方、塗工ヘッド8は、図3(a)に示したように、ピストン208を最も後退した位置に置く。次いで、図3(b)に示したように、塗布液供給口11から、分配室206に塗布液を供給し、分配室206内に環状に塗布液を供給する。ここで、分配室206への塗布液の供給量は、軸芯体周面に形成する塗布膜の厚さ、軸芯体の長さなどを考慮して適宜設定すればよい。また、このとき、塗布液の量は弾性ローラ1本分に限らず、あらかじめ所望の本数分を計量し、塗工ヘッド内に充填させておくことで充填作業を経ずに連続的に塗工することもできる。
【0038】
次いで、図3(c)に示したようにピストン208を図3(c)中の矢印Aの方向に駆動させて、分配室206内の塗布液を環状スリット203に向けて押し出し、環状スリット203から吐出させる。塗布液を吐出させると同時に、軸芯体保持軸に把持された軸芯体を軸方向(特には、鉛直方向)に移動させることで軸芯体外周面上に塗布液からなる円筒形状(ロール形状)の未硬化物の層が形成される。
【0039】
上記の方法によれば、分配室内に環状に分配された塗布液に対してリング状のピストンを用いて均一に圧力を加えることができる為、環状スリットからの塗布液の量をより均一にすることができる。その為、吐出時に周方向で、塗布液の吐出ムラが生じず、振れ精度よく弾性ローラを製造できる。
【0040】
また、供給口11から分配室206に塗布液を供給する際に、塗布液に生じることのあるせん断履歴及びウェルドラインが、軸芯体周面に形成される塗膜に与える影響を大幅に抑制することができる。
【0041】
その結果、塗工後の弾性ローラに周方向で抵抗ムラが生じない塗布方法および塗布装置が提供される。ここでは塗工ヘッド8を固定し、軸芯体102を移動させている。これに対し、軸芯体102が固定で、塗工ヘッド8を軸芯体102の中心軸方向に移動させることもできる。すなわち、塗工ヘッドを軸芯体に対し、相対的に移動させることで、軸芯体外周面上に塗布液からなる円筒形状(ロール形状)の未硬化物の層が形成されることになる。
【0042】
リング状のピストン208を駆動させる速度は一定としても可変させてもよい。当該駆動速度を可変させることで、例えば、塗布液の層厚をローラの長手方向で調節することもできる。
【0043】
塗布液の粘度は、10Pa・s以上5000Pa・s以下とすることが好ましい。粘度は温度25℃における値である。塗布液の粘度を上記範囲内とすることにより、塗布液の自重により重力方向に垂れが生じず、外形寸法や振れの精度をよくできる。また、材料供給における配管内のせん断速度において、塗布液粘度が高いために装置に高負荷がかかり安定した材料供給に困難が生じることを防止することができる。
【0044】
軸芯体の外周面に形成された塗布液は、架橋せしめて硬化させ弾性層とする。
【0045】
この際、円筒形状(ロール形状)の未硬化の塗布液は、粘着性を有しているため、熱処理する方法としては非接触の熱処理方法で行うことが好ましい。その熱処理方法としては、赤外線加熱方法、熱風加熱方法、ニクロム熱加熱方法が挙げられる。特に、装置が簡易で、未硬化物の層を軸方向に均一に熱処理できる赤外線加熱が好ましい。この時、赤外線加熱装置を固定し、円筒形状(ロール形状)の未硬化物層を設けた軸芯体を周方向に回転させることにより、周方向に均一に熱処理を行うことができる。塗布液表面の熱処理温度としては、使用する材質にもよるが、硬化反応が開始する100℃以上250℃以下が好ましい。例えば、赤外線加熱を行う場合には材料の特性(熱伝導率、比熱)に応じて赤外線加熱装置と未硬化の塗布液の層との距離、出力等を調整すれば良い。また、熱風加熱を行う場合には熱風の温度や向きを調節すれば良い。
【0046】
ここで、弾性層の硬化後の物性安定化、弾性層中の反応残渣および未反応低分子分を除去する等を目的として、硬化させて形成した弾性層に更に熱処理等を行う二次硬化を行わせても良い。
【0047】
・現像ローラについて;
本発明にかかる弾性ローラは現像ローラとして使用することができる。
【0048】
その一例の概略図を図4に示す。図4(a)はこの現像ローラの長手方向に平行な断面を表したものであり、図4(b)は長手方向に垂直な断面を表したものである。
【0049】
本発明にかかる現像ローラの軸芯体102としては、その材料は導電性であれば何でも良く、炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄及び、導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。ここで、合金鋼としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。強度の観点から、金属製のものが好ましい。さらに防錆対策として軸芯体材料にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきなどいずれも使用することが出来る。寸法安定性の観点からは、無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、カニゼンめっき、その他各種合金めっきがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni−P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきがある。膜厚みはそれぞれ0.05μm以上であれば好ましいが、より好ましくは0.1〜30μmである。
【0050】
また、現像ローラは感光体、現像ブレード、トナーと常に圧接している。このため、これらの部材に与えるダメージを小さくするために硬度が小さく、圧縮永久歪みが小さい材料で構成されることが、良好な画像を得るためには重要である。また、現像ローラは表面が耐磨耗性を有し、耐久性が高いことが好ましい。このため、本発明で用いる現像ローラは軸芯体102の周囲に弾性層42を有した構成となっている。
【0051】
このとき、弾性層42の硬度は上記の理由からAsker C硬度で10度以上80度以下であることが好ましい。弾性層の硬度を上記範囲内とすることにより、長期停止の際にも、弾性ローラと上記当接部材との当接部分に永久ひずみによる変形が起こりにくい。その結果、当該変形に起因する濃度ムラなどの画像欠陥の発生を抑えることができる。また、接触現像時に繰り返しトナーに高い圧力がかかり、トナーに流動性を付与する外添剤のトナーへの埋没や、分離が起こり、トナー残量が減少するにつれトナーの弾性ローラへの固着、所謂フィルミングにより出力画像の画質の低下を抑えることができる。尚、弾性層42は1層で有る必要はなく、多層になっていても構わない。
【0052】
弾性層42の形成に用いる材料、即ち、塗布液の構成材料としては、液状ジエンゴム(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム)、液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴムが挙げられる。これらの材料は単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの材料の発泡体を弾性層に用いても良い。中でも、弾性層には適度に低硬度であり十分な変形回復力を持たせることが重要である。従って、弾性層に用いられる材料としては液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴムを用いることが好ましい。特に加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しない、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いることがより好ましい。
【0053】
現像ローラ等の導電性ローラを得るために、上記液状ゴム中に導電剤を適宣添加し所望の抵抗に調整することができる。導電剤としてイオン伝導機構を有する導電付与剤(イオン導電剤)及び電子伝導機構を有する導電付与剤(電子導電剤)から適宜選んで用いることができる。
【0054】
・・イオン導電剤;
イオン導電剤としては、以下のものが挙げられる。
・・・LiCFSO、NaClO、LaClO、LiAsF、LiBF、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族金属の塩;
・・・NHCl、(NHSO、NHNO等のアンモニウム塩;
・・・Ca(ClO、Ba(ClO等の周期律表第2族金属の塩;
・・・上記のいずれかの塩と1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコールやそれらの誘導体との錯体;
・・・上記のいずれかの塩とエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のモノオールとの錯体;
・・・第4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;
・・・脂肪族スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤;
・・・ベタイン等の両性界面活性剤。
【0055】
・・電子導電剤;
また、電子導電剤としては、以下のものが挙げられる。
・・・カーボンブラック、グラファイト等の炭素系物質;
・・・アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅―ニッケル合金等の金属或いは合金;
・・・酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀等の金属酸化物;
・・・各種フィラーに銅、ニッケル又は銀で導電性表面処理を施した物質。
【0056】
これらイオン導電剤、電子導電剤は粉末状や繊維状の形態で、単独または2種類以上を混合して使用することが出来る。この中でも、カーボンブラックは導電性の低抵抗化が容易であり、また経済的であるという観点から好ましいものである。
【0057】
・現像ローラ層構成;
また、本発明で用いた現像ローラのように耐磨耗性を高めるために、弾性層42の外周上に表面層43が形成される場合もある。表面層も弾性層と同様に1層である必要はなく、多層になっていても構わない。
【0058】
次に表面層43について説明する。本発明の実施例のように弾性層42の周りにローラ表面適正化のため、表面層43を形成する場合もある。表面層43に用いられる材料としては以下のものが挙げられる。
・・エポキシ樹脂;ジアリルフタレート樹脂;ポリカーボネート樹脂;フッ素樹脂;ポリプロピレン樹脂;ユリア樹脂;メラミン樹脂;珪素樹脂;ポリエステル樹脂;スチロール系樹脂;酢酸ビニル樹脂;フェノール樹脂;ポリアミド樹脂;繊維素系樹脂;ウレタン樹脂;シリコーン樹脂;アクリルウレタン樹脂;水系樹脂等。
【0059】
また、上記の樹脂群から選ばれるいずれかを2種類以上組み合わせて使用することも可能である。この中でも特に含窒素化合物(例えばウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂)を用いることがトナーを安定して帯電させられることから好ましい。ここで使用するウレタン樹脂はイソシアネート化合物とポリオールとから得られる。イソシアネート化合物として、以下のものが挙げられる。
・・ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート;3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート;4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート;p−フェニレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;カルボジイミド変性MDI;キシリレンジイソシアネート;トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;トリレンジイソシアネート;ナフチレンジイソシアネート;パラフェニレンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート。
【0060】
また、上記の化合物群から選ばれるいずれか2種、若しくはそれ以上の混合物を用いることもできる。その混合割合はいかなる割合でもよい。
【0061】
ポリオールとしては、以下のものが挙げられる。
・・2価のポリオール(ジオール)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、トリエチレングリコール。
・・3価以上のポリオールとして、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール。さらに、ジオール、トリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した高分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド‐プロピレンオキサイドブロックグリコールなどのポリオール。
【0062】
また、これらの材料も混合させて用いることもできる。その混合割合は適宜決定する。
【0063】
また、表面層43を塗布する方法としては、リングコート法、ディッピング法、ロール塗工法およびスプレー塗工法など一般に知られている塗工法を用いることが出来る。表面層43の厚みを制御しやすい理由からディッピング法を用いることが好ましい。ディッピング法では粘度5cps以上50cps以下の材料を用いるのが好ましい。粘度を上記の範囲とすることによって、材料を硬化させて安定させるまでに形状が崩れるのと抑えることができる。また、弾性層42の表面に均一に表面層43を形成することが困難となることもない。
【0064】
さらに、これらの表面層43に導電性を付与して使用することが出来る。導電性を付与する手法としては上記弾性層の導電化と同様の手法を用いることが可能である。
【0065】
さらに、表面層43の厚みとしては、1μm以上500μm以下、特には1μm以上50μm以下であることが好ましい。表面層43の厚みを上記範囲内とすることで、画像を繰り返して出力した場合の磨耗等による劣化を抑えられる。またローラ表面の硬度が高くなり、トナー劣化の促進およびトナーの融着を抑えることもできる。
【0066】
・帯電ローラへの適用
本発明にかかる弾性ローラは、上記に示す現像ローラと同一に帯電ローラとしても使用することができる。
【0067】
・カートリッジ、電子写真装置;
本発明にかかる現像ローラを搭載したプロセスカートリッジおよび電子写真装置の一例を図5に模式図として示した。この図5により以下説明する。
【0068】
尚、本画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンダおよびブラックの画像を形成する画像形成ユニット508a〜508dの4個があり、タンデムに設けられている。
【0069】
そして、各画像形成ユニットは、感光体501、帯電装置502、書き込みビーム503を与える露光装置(不図示)、現像装置504、クリーニング装置505、画像転写装置506としての転写ローラ)を具備している。
【0070】
また、感光体501、帯電装置502、現像装置およびクリーニング装置505が一体となり、プロセスカートリッジを形成している。
【0071】
現像装置504には、1成分現像剤(1成分トナー)509を収容した現像容器510と、現像容器510内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光体501と対向設置された現像ローラ40とを備えている。
【0072】
そして、感光体501上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、トナー供給ローラ511が設けられている。トナー供給ローラ511及び現像ブレード512も設けられている。トナー供給ローラ511は、現像ローラ40に1成分トナー509を供給すると共に現像に使用されずに現像ローラ40に担持されている1成分トナー509を現像ローラ40から掻き取る。
【0073】
現像ブレード512は、現像ローラ40上の1成分トナー509の担持量を規制すると共に摩擦帯電を付与する。
【0074】
感光体501の表面が帯電装置502により所定の極性・電位に一様に帯電される。画像情報が変調され、画像露光装置からビーム503として、帯電された感光体501の表面層に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像上に本発明の現像ローラ40を有する現像装置504から一成分トナーが供給され、感光体501の表面にトナー像が形成される。このトナー像は感光体501の回転に伴って、画像転写装置506に対向する部所に来たときに回転と同期して供給されてきた紙などの記録材としての転写材(紙)507に転写される。
【0075】
なお、本図では4つの画像形成ユニット508a〜508dが一連に連動して所定の色画像を1つの転写材507に重ねて形成されている。したがって、転写材507をそれぞれの画像形成ユニットの画像形成と同期させる。すなわち、画像形性が転写材507の挿入と同期している。
【0076】
そのために、転写部材507を輸送するための転写搬送ベルト513が感光体501と画像転写装置506との間に挟まれるように、転写搬送ベルト513の駆動ローラ514、テンションローラ515および従動ローラ516に架けまわされている。
【0077】
また、転写材507は転写搬送ベルト513に吸着ローラ517の働きにより静電気的に吸着された形で搬送されている。なお、518は転写材507を供給するための供給ローラである。
【0078】
画像が形成された転写材507は、転写搬送ベルト513から剥離装置519の働きにより剥がされ、定着装置520に送られ、トナー像は転写材507に定着されて、印刷が完了する。一方、トナー像の転写材507への転写が終わった感光体501はさらに回転して、クリーニング装置505により感光体501表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後、感光体501は次の画像形成に供される。なお、図において、521、522はそれぞれ画像転写装置506、吸着ローラ517へのバイアス電源を示す。
【0079】
なお、ここでは、タンデム型の転写材へ直接各色のトナー像を転写する装置で説明したが、現像ローラとして本発明の現像ローラを使用する装置であればいずれでもよい。具体的には、例えば、白黒の単色画像形成装置を挙げることができる。
【0080】
また、転写ローラや転写ベルトに一旦各色のトナー像を重ねてカラー画像を形成し、それを転写部材へ一括して転写する画像形成層置も挙げられる。更には、各色の現像ユニットがロータ上に配置されたり、感光体に並列して配置されたりした画像形成装置等も挙げることができる。
【0081】
また、プロセスカートリッジではなく、感光体、帯電装置、現像装置が直接組み込まれている画像形成装置も本発明に係る画像形成装置に含まれる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。まず、実施例において行った各種評価および測定方法について説明する。
【0083】
(画像評価)
電子写真プロセスカートリッジ(公称寿命6000枚、A4サイズ、5%印字率、hp社製、商品名:プリントカートリッジ黒・プリントカートリッジシアン・プリントカートリッジマゼンタ・プリントカートリッジイエロー)に、下記の各実施例及び比較例において作成したローラを各色それぞれについて現像ローラとして組み込んだ。
【0084】
次にこの電子写真プロセスカートリッジを電子写真方式の画像形成装置(商品名:Color Laserjet 3700、hp社製、印刷解像度600dpi)に組み込んだ。そして、この画像形成装置を用いて、画像(ベタ画像、ハーフトーン画像)を出力し、濃度ムラ(ローラピッチ)を画像評価1として評価した。さらに、この画像形成装置の印刷解像度を1200dpiに改造したものを用いて同様に評価した。これを画像評価2とする。画像評価1および2について、以下のように評価した。
A:目視にて全画像において良好である。
B:ベタ、ハーフトーンにて濃度ムラが若干確認されるが、実用上問題ない。
C:全画像において濃度ムラが確認される。
【0085】
(振れ精度測定)
弾性ローラの振れ精度の測定は、軸芯体の中心軸を回転軸として弾性ローラを回転させ、回転軸と垂直に配置した非接触レーザー測長器(キーエンス製、商品名:LS−5000)で弾性層層厚を測定し、最大層厚から最小層厚を引くことで求めた。弾性層層厚は、基準から弾性ローラ外周面までの距離から、予め測定した基準から芯金外周面までの距離を引いた値である。弾性層の軸方向に1cmピッチで振れ精度をそれぞれ求め、その値の中で最大の値を弾性ローラの振れ精度の値とする。次のように評価した。
A:振れ精度が30μm以内。
B:振れ精度が30μmより大きいが、塗工表面にスジや凹凸が観察されない。
C:振れ精度が30μmより大きく、塗工表面にスジや凹凸が観察される。
【0086】
(弾性ローラの抵抗および抵抗ムラ測定)
図6を用いて詳細を説明する。
【0087】
弾性ローラ40の軸芯体の両端に500グラムの荷重をかけて、24rpmで回転する金属製ドラム62に押し当て、金属製ドラム62と弾性ローラ40の軸体間に50Vの電圧を印加した。
【0088】
そして、導電ローラと直列につないでいる10kΩの抵抗にかかる電圧値から電流値を求め、その電流値から導電ローラの抵抗値を算出し、1周中での導電ローラ抵抗の最大値と最小値の平均値をその導電ローラの抵抗値とする。
【0089】
また、導電ローラ1周中での抵抗値の最大・最小の値をとり、1−(抵抗最小値/抵抗最大値)の値をその導電ローラの抵抗ムラとする。
以下の基準で、評価した。
【0090】
A:抵抗ムラが0以上、0.1未満、
B:抵抗ムラが0.1以上、0.5未満、
C:抵抗ムラが0.5以上、0.7以下。
【0091】
(粘度測定)
粘度測定にはHaake社製RheoStress600(商品名)を用いた。
【0092】
未硬化の状態の塗布液を約1g採取し試料台の上にのせ、コーンプレート(直径35mm、傾斜角1°)を徐々に近づけ、試料台から約50μmの位置で測定ギャップを設定した。
【0093】
そのとき、周りに押し出された塗布液を測定に影響が出ないよう除去した。試料温度が25℃になるように試料台の温度は設定され、試料をセットしてから10分間放置後に測定を開始した。試料にかけるせん断速度を0.1s−1からスタートし10までの範囲を、0.2s−1ずつ変化させ、せん断速度1s−1のせん断応力をせん断速度1s−1で割った値を粘度とした。
【0094】
(実施例1)
弾性ローラを製造するにあたり、軸芯体としては外径6mmの丸棒状鉄製軸芯体にニッケルメッキを施し、さらに厚み約1μmのプライマーDY35−051(商品名:東レ・ダウ・コーニング(株)社製)を塗布、150℃、30分間焼き付けしたものを用いた。
【0095】
付加反応架橋型液状シリコーンゴム(東レダウコーニング社製)のA液およびB液の各液100質量部に、それぞれカーボンブラック(MA11、三菱化学社製)8質量部を加え、プラネタリーミキサーで30分間脱泡した。その後、カーボンブラックを配合したA液およびB液を、それぞれ塗工装置付随の原料タンクにセットし、圧送ポンプを使用してスタティックミキサーに送り出し、A液およびB液を質量基準で1:1で混合し、このシリコーンゴム混合液を塗布液とした。その粘度は545Pa・sであった。
【0096】
図3に示した形態の塗工装置に示した軸芯体保持軸で軸芯体をクランプし、軸芯体保持部材を下から上に垂直に30mm/sの速度で上昇させ軸芯体を移動させた。これと同時に、塗工ヘッドのリング状のピストンを上昇させ、シリコーンゴム混合液を、図2に示した形態の塗工ヘッドの環状スリット203から2.52ml/secで吐出し、軸芯体の外周面に未硬化の塗布液を円筒形状(ロール形状)に形成した。尚、塗工ヘッドの内径は12.1mmであり、環状スリット203の幅は1.0mmとした。
【0097】
また、塗工ヘッド内で、リング状ピストンの摺動部分を構成する、該内リングの外径(d1min)は36.0mm、該外リングの内径(r2)は、43.2mmであった。従って、r2/d1min=1.2である。
【0098】
次に、この未硬化の弾性層に赤外線加熱を施した。赤外線加熱ランプ(商品名:ハイベック製、商品名:HYL25)を熱処理温度(非加熱体の表面温度。以降、熱処理温度とは非加熱体の表面温度を指す)200℃とし、ランプと未硬化物の層表面との距離が60mmとなるように配置した。そして、未硬化物の層を設けた軸芯体を周方向に60rpmで回転させながら4分間過熱し未硬化の塗布液を硬化し弾性層とした。
【0099】
その後、シリコーンゴム弾性層の硬化後の物性を安定させ、シリコーンゴム弾性層中の反応残滓および未反応低分子分を除去する等を目的として、電気炉で温度200℃、4時間の二次硬化を行った。
【0100】
このようにして、軸芯体の外周上に弾性層を有する弾性ローラを製造した。
【0101】
ここで製造したローラの振れ精度測定の結果を表1に示す。
【0102】
その後、この弾性ローラに表面層を設けた。表面層の材料処方を示す。
・ポリウレタンポリオールプレポリマー(商品名:タケラックTE5060、三井武田ケミカル社製):100質量部;
・イソシアネート(商品名:コロネート2521、日本ポリウレタン株式会社製):77質量部;
・カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製):24質量部;
・メチルエチルケトン(MEK)
これらを横型分散機(商品名:NVM−03、アイメックス社製)で周速7m/s、流量1cc/min、分散液温度15℃の条件下で1時間分散した。
【0103】
分散後さらにMEKを加え固形分25質量%で、膜厚が20μmとなるように調整したものを表面層の原料液とした。
【0104】
次にこの表面層原材料を液流速250cc/min、液温23℃で循環させた直径32mmのシリンダ中に浸入速度100mm/sで前記弾性ローラ外周に浸漬させ、10秒間停止させた。
【0105】
その後に、初速400mm/s、終速200mm/sの条件で引き上げて、10分間自然乾燥させた。次いで、温度140℃にて60分間加熱処理することで表面層の原料の硬化を行い、表面層を設けた弾性ローラを得た。表面層を設けた弾性ローラを現像ローラとして、電子写真プロセスカートリッジに組み込んだ。画像出力した結果を表1に示す。
【0106】
(実施例2)
付加反応架橋型液状シリコーンゴムのA液およびB液として次のものを用いた。
【0107】
[A液]
下記シリコーンベースポリマー及びカーボンブラックをプラネタリーミキサーで30分間混合脱泡し、シリコーンベース材料を得た。このベース材料100質量部に対して、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金含有量3質量%)0.02質量部を加え、混合したものをA液とした。
・シリコーンベースポリマー(重量平均分子量Mw=100000、東レダウコーニング社製)100質量部、
・カーボンブラック(商品名:MA77、三菱化学(株)社製)3質量部
[B液]
上記シリコーンベース材料100質量部に対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(粘度10mPa・s、SiH含有量1質量%、東レ・ダウ・コーニング(株)社製)1.5質量部を加え、混合したものをB液とした。
【0108】
上記A液及びB液の混合液の粘度は10Pa・sであった。上記混合液を用いた以外は実施例1と同様にして表面層付きの弾性ローラを作成し、また各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(実施例3)
付加反応架橋型液状シリコーンゴム(東レ・ダウ・コーニング(株)社製)のA液およびB液の各液100質量部に、それぞれカーボンブラック(MA11、三菱化学社製)16質量部を加えた。弾性層形成材料であるシリコーンゴム混合液粘度は5000Pa・sであった。
【0110】
上記以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
(実施例4)
r2=72.0mm、r2/d1min=2.0とした以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作成、評価した。結果を表1に示す。
【0112】
(実施例5)
r2=46.8mm、r2/d1min=1.3とした以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作成、評価した。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例6)
r2=50.4mm、r2/d1min=1.4とした以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作成、評価した。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例7)
実施例1と同様にして弾性ローラを得た。この弾性ローラの振れ精度測定を行った後、実施例1と同様にして表面層を設けた。表面層を設けた弾性ローラを帯電ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み画像評価を行った(現像ローラは電子写真プロセスカートリッジにもともと付属していたものを使用した)。
【0115】
(実施例8)
実施例1と同様の工程で弾性ローラを得たが、表面層を設けずに各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
(実施例9)
r2=36.7mm、r2/d1min=1.02とした以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作成し、評価し。結果を表1に示す。
【0117】
(実施例10)
r2=144.0mm、r2/d1min=4.0とした以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作成、評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、図7に示す塗工ヘッドを用いた以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを調製した。なお、当該塗工ヘッドの分配室のサイズ、および環状スリットの寸法は、実施例1に係る塗工ヘッドと同様とした。
【0118】
また、分配室への塗布液の供給、ならびに環状スリットからの塗布液の吐出は、材料供給ポンプからの供給圧のみを用いた。尚、図7(a)は塗工ヘッドの正面から見た時の断面外略図、図7(b)は上面から見た時の概略図である。
【0119】
こうして得た比較例1にかかる弾性ローラを実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0120】
(比較例2)
実施例1において、図8に示す塗工ヘッドを用いた以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを調製した。なお、当該塗工ヘッドの分配室のサイズ、および環状スリットの寸法は、実施例1に係る塗工ヘッドと同様とした。
【0121】
また、分配室への塗布液の供給、ならびに環状スリットからの塗布液の吐出は、材料供給ポンプからの供給圧のみを用いた。尚、図8(a)は塗工ヘッドの正面から見た時の断面外略図、図8(b)は上面から見た時の概略図である。
【0122】
こうして得た比較例1にかかる弾性ローラを実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0123】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明に係る塗工装置の例を示す模式図である。
【図2】(a)本発明に係る塗工ヘッドの例を示す模式図である。(b)図2(a)に示した塗工ヘッドのA−A線における断面図である。(c)図2(a)に示した塗工ヘッドのB−B線における断面図である。
【図3】本発明に係る塗工ヘッドの具体的な挙動を示した図である。(a)塗工ヘッドの初期状態を示す図である。(b)分配室への塗布液に供給過程を示す図である。(c)ピストンを駆動させた状態を示す図である。
【図4】本発明に係る弾性ローラを示す断面図である。(a)弾性ローラの軸方向断面図である。(b)図4(a)に示す弾性ローラの軸方向に直交する方向の断面図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置の例を説明するための模式的断面図である。
【図6】本発明に係る弾性ローラの抵抗を測定する装置の概略図
【図7】比較例1で用いた塗工ヘッドの概略図である。(a)塗工ヘッドを正面から見た時の断面概略図である。(b)塗工ヘッドを上面から見た時の概略図である。
【図8】比較例2で用いた塗工ヘッドの概略図である。(a)塗工ヘッドを正面から見た時の断面概略図である。(b)塗工ヘッドを上面から見た時の概略図である。
【符号の説明】
【0125】
1 架台
2 コラム
3 ボールネジ
4 LMガイド
5 サーボモータ
6 プーリ
71 上ブラケット
72 下ブラケット
8 塗工ヘッド
9 軸芯体下保持軸
10 軸芯体上保持軸
11 供給口
12 配管
13 材料供給弁
14 リニアガイド
101 弾性層
102 軸芯体
201 内リング
202 キャップリング
203 環状スリット
204 弾性層材料吐出口
205 外リング
206 液分配室
207 絞り段差部
208 リング状のピストン
301 リング状部材
40 弾性ローラ
42 弾性層
43 表面層
62 金属製ドラム
501 感光体
502 帯電装置
503 画像露光装置(書き込みビーム)
504 現像装置
505 クリーニング装置
506 画像転写装置
507 転写材(紙)
508a〜d 画像形成ユニット
509 一成分トナー
510 現像容器
511 トナー供給ローラ
512 現像ブレ−ド
513 転写搬送ベルト
514 駆動ローラ
515 テンションローラ
516 従動ローラ
517 吸着ローラ
518 供給ローラ
519 剥離装置
520 定着装置
521 画像転写装置バイアス電源
522 吸着ローラバイアス電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側全周に亘って液体を吐出する環状スリットを有している環状の液体塗工ヘッドであって、環状スリットに連通している環状の分配室と、該分配室に外部から液体を供給する供給口とを備え、更に、該分配室内に供給された液体を加圧して該環状スリットから押出すための環状のピストンが該分配室に臨んで配置されていることを特徴とする液体塗工ヘッド。
【請求項2】
前記塗工ヘッドが、中空円筒形の内リングと外リングとを具備し、該内リングと該外リングとにより、前記環状スリット、及び前記環状スリットに連通している環状の分配室とが形成されている請求項1記載の液体塗工ヘッド。
【請求項3】
該内リングの外径をd1minとし、該外リングの内径をr2としたときに、それらが下記式(1)で示される関係を満たしている請求項2記載の液体塗工ヘッド:
1.05≦r2/d1min≦2.0 ・・・(1)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の液体塗工ヘッドと、
該液体塗工ヘッドと同軸に円筒状基体を支持する手段と、
該円筒状基体と該液体塗工ヘッドとを相対的に移動させる手段と
を有することを特徴とする液体塗工装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体塗工装置を用いた円筒状基体の周面への塗料の塗工方法であって、
(i)円筒状基体を液体塗工ヘッドと同軸に支持する工程と、
(ii)液体塗工ヘッドの供給口から分配室に塗料を供給し、該分配室の全周に亘り塗料を分配する工程と、
(iii)前記工程(ii)によって分配された該分配室中の塗料を、環状のピストンを駆動させて環状スリットから吐出させて該円筒状基体の周面に塗布する工程と、
(iv)該液体塗工ヘッドと該円筒状基体とを相対的に移動させる工程と
を有することを特徴とする塗工方法。
【請求項6】
該塗料は、粘度が10Pa・s以上5000Pa・s以下である請求項5に記載の塗工方法。
【請求項7】
請求項4に記載の液体塗工装置を用いた弾性ローラの製造方法であって、
(i)円筒状基体を液体塗工ヘッドと同軸に支持する工程と、
(ii)液体塗工ヘッドの供給口から分配室に液状ゴムを含む塗料を供給し、該分配室の全周に亘り塗料を分配する工程と、
(iii)前記工程(ii)によって分配された該分配室内の塗料を、環状のピストンを駆動させて環状スリットから吐出させて該円筒状基体の周面に塗布する工程と、
(iv)該液体塗工ヘッドと該円筒状基体とを相対的に移動させる工程と
(v)該円筒状基体の周面に塗布された塗料中の液状ゴムを硬化させる工程と
を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【請求項8】
該塗料が液状シリコーンゴムを含む請求項7に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項9】
該塗料が、更に導電剤を含んでいる請求項8記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の弾性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする弾性ローラ。
【請求項11】
請求項9に記載の弾性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする現像ローラ。
【請求項12】
少なくともトナーを有する現像剤と、該現像剤を収容している現像剤容器と、請求項11に記載の現像ローラとを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項13】
トナーを有する現像剤、該現像剤を収容している現像剤容器、請求項11に記載の現像ローラ、電子写真感光体、帯電手段、露光手段及び転写手段と具備していることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−155087(P2008−155087A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344272(P2006−344272)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】