説明

液晶シール剤およびこれを用いた液晶表示パネルの製造方法

【課題】粘度安定性、接着強度に優れ、液晶シール部の変形、液晶のリークが低減された液晶シール剤を提供すること、またそれらを用いたパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】
(1)アクリル樹脂、
(2)1分子内にエポキシ基および(メタ)アクリル基をそれぞれ1以上有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂、
(3)エポキシ樹脂
から選ばれる少なくとも2種類の樹脂、およびラジカル重合性官能基を有するモノマーをラジカル重合することで得られるポリマーで被覆され、表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有する被覆粒子を含有する液晶シール剤を液晶表示パネル用のシール剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶シール剤およびこれを用いた液晶表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめ各種機器の表示パネルとして軽量、高精細の液晶表示パネル(液晶表示パネル)が広く使用されるようになってきている。これらの液晶表示パネルは、以下のように製造される。1)エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性の液晶シール用樹脂組成物を液晶表示用のガラス基板に塗布して、プレキュア処理を行う。2)対向基板を貼り合わせて加熱圧締接着し、二枚のガラス基板で挟まれた空間に液晶封入用セルを形成する。3)この二枚のガラス基板を真空下に置き、前記液晶封入用セルに液晶を注入する。4)液晶注入口を封孔する。この製造工程において使用される液晶シール用樹脂組成物として、例えばエポキシ樹脂を主体とする熱硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1を参照)。しかし、特許文献1に開示されているような熱硬化性樹脂組成物は、硬化させるために120℃〜150℃の温度で数時間の時間を要する。さらに、前述の液晶注入工程は長い時間を要することから、従来の液晶表示パネルの製造方法は生産性に問題があった。
【0003】
これに対して、液晶滴下工法と呼ばれる液晶表示パネルの製造方法が提案されている(例えば特許文献2)。この方法は、1)光硬化性のシール剤を液晶表示パネルの基板上に塗布し、液晶を充填するための枠を形成し、2)前記枠内に液晶の微小滴を滴下し、3)シール剤が未硬化の状態で2枚の基板を高真空下で重ね合わせ、4)紫外線等を照射してシール剤の仮硬化を行い、5)加熱による後硬化を行う方法である。
【0004】
しかし、携帯電話等の小型パネルでは配線部分が複雑になっており、液晶滴下工法において、液晶シール剤に紫外線を照射して仮硬化をする場合、光が当たりにくい部分が生じやすい。そのため当該部分の硬化が不十分となり、加熱して後硬化する際に、シール部(「シールパターン」ともいう)に液晶が侵入してシール部が変形(「差込み」ともいう)したり、液晶がシール部を突き破って漏洩したりする場合がある。液晶が侵入してシール部が変形したり、液晶がシール部を突き破って漏洩したりすることを合わせて「液晶がリークする」ともいう。このため、液晶がリークしにくい(「耐リーク性に優れる」ともいう)液晶シール剤が望まれていた。
【0005】
また、同時に、シール剤を長時間、高速でディスペンス塗布する場合や、スクリーン印刷塗布する場合、粘度安定性が悪いあるいはシール中の組成分離によっても同様の、シール部の変形、液晶のリークしやすい場合がある。
【0006】
液晶注入方式では、シールパターンの乱れを少なし、セルギャップ精度向上のため、シランカップリング剤で処理した球状シリカを使用する方法(特許文献3)や、液晶に対する汚染性を改善する目的で、エポキシシラン化合物処理した粒子を使用する方法(特許文献4)が液晶注入方式で検討されている。
【0007】
また、液晶滴下方式でも、アミノシラン化合物で処理した粒子、エポキシシラン化合物処理した粒子、イミダゾールシラン化合物で処理した粒子を使用する方法が検討されている。
【0008】
しかしながら、これらのシランカップリング剤、シラン化合物で処理した粒子、特にエポキシシラン化合物、アミノシラン化合物やイミダゾールシラン化合物で処理した粒子を用いた場合、粘度安定性に劣る。このため、シール剤を高速でディスペンス塗布する場合や、スクリーン印刷塗布する場合、シール直線性の確保が難しく、液晶リークしやすくなる問題があった。
【0009】
さらに、エポキシシラン化合物を代表とするこれらのシランカップリング剤、シラン化合物で処理した粒子を用いたシール剤は、本来の機能である接着強度の向上について十分な検討がされていない。
【特許文献1】国際公開第2004/039885号パンフレット
【特許文献2】特開2002−214626号公報
【特許文献3】特開平5−273560号公報
【特許文献4】特開2001−100223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の状況を鑑み、本発明は、液晶シール部の変形、液晶のリークが低減され、粘度安定性、接着強度等に優れた液晶シール剤を提供すること、またそれらを用いた表示特性等に優れた液晶表示パネル、および液晶パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる事情に鑑み、本発明者らは、液晶シール剤に含まれる粒子組成に着眼し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題は本発明の液晶シール剤により解決される。
即ち、
[1]
ラジカル重合性官能基を有するモノマーをラジカル重合することで得られるポリマーで被覆された被覆粒子を含む液晶シール剤。
[2]
表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有する[1]に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤。
[3]
被覆するポリマーが架橋型ポリマーである[1]に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤。[4]
核粒子が無機粒子である[1]に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤。
[5]
平均粒子径が0.4〜10μmである[1]に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤。
[6]
(1)アクリル樹脂、
(2)1分子内にエポキシ基および(メタ)アクリル基をそれぞれ1以上有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂、
(3)エポキシ樹脂
から選ばれる少なくとも2種類の樹脂を含有する
[1]に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤。
[7]
前記エポキシ樹脂(3)の軟化点が40℃以上160℃以下である[6]に記載の液晶シール剤。
[8]
[1]ないし[7]のいずれかに記載の液晶シール剤を硬化してなる硬化物。
[9]
第一の基板に[1]ないし[7]のいずれかに記載の液晶シール剤を用いてシールパターンを形成する工程、
前記シールパターンが未硬化の状態において前記基板のシールパターン領域内、またはもう一方の基板に液晶を滴下する工程、
前記基板と、これに対向する第二の基板を重ね合わせる工程、および
前記組成物を加熱によって硬化させる工程、を含む液晶表示パネルの製造方法。
[10]
[8]に記載の硬化物を含む液晶表示パネル。
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、液晶シール部の変形、シール部への液晶のリークが低減され、粘度安定性、接着強度に優れた液晶シール剤を提供すること、またそれらを用いた表示特性に優れた液晶表示パネル、および液晶表示パネルの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明について詳細に説明する。なお、以下の説明で、「〜」を用いて数値範囲を規定するが、本発明の「〜」は、境界値を含む。例えば、「10〜100」とは、10以上100以下である。
【0014】
本発明の液晶シール剤は、表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有するポリマーで被覆された被覆粒子を含有する。
【0015】
ラジカル重合性官能基を有するモノマーをラジカル重合することで得られるポリマーで被覆され、表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有する被覆粒子
表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有するポリマーで被覆された被覆粒子とは、本発明の被覆粒子の芯となる粒子、すなわち核粒子とその外側にポリマーを配し、表面に特定官能基を有する粒子を示す。また、ポリマーの被覆の度合いとしては、核粒子表面の少なくとも一部が被覆されていれば良い。
【0016】
本発明における被覆粒子の芯以外の部分を被覆層と呼ぶ。本発明における被覆層の厚みは、核粒子の平均粒子径と被覆粒子の平均粒子径から平均被覆層厚{平均被覆層厚=[(被覆粒子の平均粒子径)-(核粒子の平均粒子径)]/2}として算出する。本発明の被覆粒子の平均被覆層厚は、0.001μm以上1μm以下が好ましく、より好ましくは0.001μm以上0.5μm以下である。被覆粒子の平均被覆層厚がこの範囲にあると、液晶シール剤に配合して用いると、アクリル樹脂やエポキシ樹脂との親和性が向上するためディスペンス塗布性およびスクリーン印刷塗布性に優れ、また液晶表示パネルにした際のシール部の変形が抑えられるので好ましい。
【0017】
核粒子および被覆粒子の粒子径は、波長632.8nmのレーザーを用いたレーザー法粒子径測定器により求めた一次粒子の平均粒子径を10回測定し、その平均値(以下単に、平均粒子径とする)から求めた。
【0018】
表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有するポリマーで被覆された被覆粒子とは、表面にエポキシ基および炭素炭素二重結合性官能基を有するポリマーで被覆された被覆粒子、表面にエポキシ基を有するポリマーで被覆された被覆粒子、炭素炭素二重結合性官能基を有するポリマーで被覆された被覆粒子である。
【0019】
また、炭素炭素二重結合性官能基とは、炭素炭素二重結合があれば良い。このうちラジカル反応性の面から、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基であることがより好ましい。
【0020】
核粒子として無機粒子を用いる場合、例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、沈殿法により得られるシリカ、ゾルゲル法により得られるシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、ニ酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化珪素、二酸化チタン、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、石英粉、雲母、ガラス繊維等、シリカとチタニア、シリカとジルコニア等のシリカと他金属との複合酸化物が挙げられる。この中でも、熱安定性に優れる結晶性シリカ、溶融シリカ、ゾルゲル法により得られるシリカ等のシリカ類がより好ましい。
【0021】
これら無機粒子はそのまま核粒子として使用してもよいが、これら無機粒子に疎水化処理を施して疎水化したものを核粒子として使用しても良い。
【0022】
無機粒子の疎水化処理方法としては、限定はなく、表面に疎水性基或いは疎水性物質を導入する公知の方法を用いることができる。例えば、環状シロキサン、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ヘキサアルキルジシラザン等の疎水化表面処理剤を用いて処理する方法が挙げられる。これのなかでもヘキサメチルシクロトリシロキサン等の環状シロキサンやヘキサメチルジシラザン等のヘキサアルキルジシラザンで疎水化処理することが、パネル製造後のシール部の吸湿性が少なくなり好ましい。
【0023】
耐液晶汚染性とは、液晶表示パネル作製時に液晶とシール剤が接触した際の液晶汚染の耐性、液晶汚染の起こり難さを意味し、パネルの表示特性に影響する。この耐液晶染性の観点からは、タルク、シリカ等の無機粒子を疎水化せず核粒子として用いることが好ましい。粘度安定性は、ディスペンス塗布時、スクリーン印刷時の塗布安定性に影響し、連続的に塗布するための粘度安定性の観点からは、疎水化された無機粒子を用いることがより好ましい。
【0024】
核粒子として有機粒子を用いる場合、例えば、環球法[JACT試験法:RS−2]による軟化点温度が100℃を超えるポリマー粒子が用いられる。このようなポリマー粒子の例には、ポリスチレンおよびこれと共重合可能なモノマー類を共重合した共重合体の微粒子、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子等が含まれる。
【0025】
本発明における核粒子を、ラジカル重合性官能基を有するモノマーをラジカル重合することで得られるポリマーで被覆する方法としては、例えば、核粒子にラジカル重合性官能基を有するモノマーを核粒子に噴霧等することにより、物理的に吸着もしくは吸収させ、付着させた後、当該モノマーをラジカル重合反応させポリマーを形成し被覆する方法が挙げられる。このような方法を用いることで、核粒子の表面を均一に被覆することができる。
【0026】
一方、核粒子上の官能基とモノマーを脱アルコール縮合反応等によりグラフト結合させ固定化する方法も考えられるが、核粒子とモノマーの結合が弱く脱離しやすい上に、核粒子上の官能基の密度が低い場合は、十分、粒子を被覆できないおそれがあり、上記の方法に比べ好ましくない。
また、核粒子を疎水化処理した後、ラジカル重合性官能基を有するモノマーを核粒子に噴霧等して物理的に吸着もしくは吸収させ、付着させた後、当該モノマーをラジカル重合させることにより被覆することもできる。
【0027】
被覆粒子からの被覆層の脱離防止の観点から、ラジカル重合成官能基を有するモノマーとしては、多官能炭素炭素二重結合性化合物を用いることが好ましい。多官能炭素炭素二重結合性化合物を有するポリマーを特に、架橋型ポリマーと称する。
【0028】
本発明の被覆粒子を製造する際に、用いるラジカル開始剤は、液晶シール剤に配合することができる光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0029】
これらラジカル開始剤の量は、特に制限はなく、被覆されるのに必要な量であれば良い。
表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有する被覆粒子の粒子径は、特に制限はない。しかしながら、被覆粒子を簡便に合成するためには、波長632.8nmのレーザーを用いたレーザー法粒子径測定器により求めた平均粒子径が0.4μm以上10μm以下にあるものが好ましく、0.4μm以上5μm以下がより好ましく、0.4μm以上3μm以下がさらに好ましい。
【0030】
核粒子の表面にエポキシ着、アクリル基を有する方法として、例えば、シリカ、タルク等の水酸基を有する核粒子に炭素炭素二重結合性官能基を有するシラン化合物を反応させた後、さらにエポキシ基および炭素炭素二重結合性官能基を有する化合物と多官能炭素炭素二重結合性化合物をラジカル反応させ被覆する方法や、核粒子に炭素炭素二重結合性官能基を有する化合物と多官能炭素炭素二重結合性化合物をラジカル反応させ被覆する方法が挙げられる。
【0031】
ただし、核粒子をエポキシシラン化合物で反応させた場合、残留したエポキシシラン化合粒により液晶汚染しやすく、パネルでの表示ムラの原因となりやすい。また、アミノシラン化合物やイミダゾール基を有するシラン化合物で使用する場合、液晶シール剤として配合した際の粘度安定性が悪くなり、シールラインの細りの原因、これにより液晶リークしやすくなるため、好ましくない。
【0032】
表面にエポキシ基を有する被覆粒子としては、例えば、アクリルシラン化合物を無機粒子と反応させた後にエポキシアクリレートとラジカル反応させた被覆粒子、アクリルシラン化合物を無機粒子と反応させた後にエポキシアクリレートおよびアクリレートとラジカル反応させた被覆粒子、アクリルシラン化合物を無機粒子と反応させた後にエポキシアクリレートおよび多官能アクリレートとラジカル反応させた被覆粒子が挙げられる。
【0033】
表面に炭素炭素二重結合性官能基を有する被覆粒子としては、例えば、アクリルシラン化合物を無機粒子と反応させた後に多官能アクリレートとラジカル反応させた被覆粒子が挙げられる。
【0034】
表面にエポキシ基および炭素炭素二重結合性官能基を有する被覆粒子としては、例えば、アクリルシラン化合物を無機粒子と反応させた後にエポキシアクリレートとラジカル反応させた被覆粒子、アクリルシラン化合物を無機粒子と反応させた後にエポキシアクリレートおよびアクリレートとラジカル反応させた被覆粒子、アクリルシラン化合物を無機粒子と反応させた後に、エポキシアクリレートおよび多官能アクリレートを含有するモノマー混合物とラジカル反応させた被覆粒子が挙げられる。
【0035】
アクリルシラン化合物としては、例えば、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
エポキシアクリレートとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシドキシスチレン、グリシドキシメチルスチレン、グリシドキシエチルスチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
多官能炭素炭素二重結合性化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の多官能の芳香族ビニル化合物類等の芳香族ビニル系の単量体類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレンジ(メタ)アクリルアミド等の多官能の(メタ)アクリル系の単量体類、(メタ)アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能炭素炭素二重結合性化合物は、粒子の表面のポリマーを構成するモノマーのうち、モル比で0.001〜2.0の範囲で用いるのが好ましい。粒子表面に炭素炭素二重結合性を有するためには、重合開始剤のラジカル発生量を制御する方法で一部炭素炭素二重結合を残存させる方法がある。また、アリルメタクリレートのような反応性の異なる複数の官能基を有するモノマーを用いることがより好ましい。
【0037】
その他の任意モノマー成分としては、スチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系のモノマー類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、 (メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリル系のモノマー類。ジビニルスルホン、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0038】
表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有する粒子からなる粒子は、その表面がエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有するポリマーで被覆されているが、少なくとも表面の一部が被覆されており、脱離しなければよい。表面の被覆率としては50%以上が好ましく、80%以上被覆されているのがより好ましい。
【0039】
また、被覆の状態は、核粒子の表面に被覆樹脂が容易に脱離しない形で固定化されていれば良く、例えば核粒子が細孔を有している場合には、該細孔の壁面を覆った状態、あるいは該細孔を埋めるように存在している状態、あるいはそれらが組み合わさった状態で存在していてもよい。更に、定法により高純度化処理をして用いることが好ましい。
【0040】
本発明の粒子がエポキシ基を含有する場合のエポキシ当量は、概ね1μeq/g〜300μeq/gの範囲が好ましい。貯蔵安定性の観点からは、1μeq/g〜150μeq/gが好ましい。また、接着強度向上の観点からは、5μeq/g〜300μeq/gが好ましい。エポキシ当量の測定法は通常の分析法であればいずれでも良く、特に限定されない。
【0041】
本発明の被覆粒子で炭素炭素二重結合性官能基を有する場合の、炭素炭素二重結合性官能基当量は、1μeq/g〜300μeq/gの範囲が好ましい。この範囲であれば貯蔵安定性が優れるため好ましい。炭素炭素二重結合性官能基当量の測定法は通常の分析法であればいずれでも良く、特に限定されないが、例としてヨウ素価法(第十四改正日本薬局方 一般試験法 65.油脂試験法)が用いられる。
【0042】
本発明の被覆粒子は、接着強度の観点から、表面にエポキシ基を有するポリマーで被覆されている被覆粒子を用いることが好ましい。本発明の被覆粒子は、表示特性改善の観点から、表面に炭素炭素二重結合性官能基を有するポリマーで被覆されている被覆粒子を用いることが好ましい。この場合、特に、メタクリル基、アクリル基を有するポリマーで被覆されている被覆粒子を用いることが好ましい。
【0043】
本発明の被覆粒子と被覆していない粒子と併用する場合、粒子総量に対し、本発明の被覆粒子量が50重量%〜100重量%であれば好ましく、70重量%〜100重量%がより好ましくは良い。この範囲にあると本発明の被覆粒子の機能が損なわれないため好ましい。
【0044】
被覆していない粒子とは、シール剤の粘度制御や、シール剤の硬化物の強度向上、線膨張性制御等を目的として添加される粒子をいう。被覆していない粒子を充填することにより、シール剤の接着信頼性が向上する。被覆していない粒子は、通常電子材料分野で使用されるものであれば限定されない。シール剤に含まれるものの例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機フィラーが含まれる。
【0045】
また、シール剤に含まれる被覆していない粒子は無機物に限定されず、有機物であってもよい。有機物の例には、環球法[JACT試験法:RS−2]による軟化点温度が120℃を超えるポリマー粒子が含まれる。このようなポリマー粒子の例には、ポリスチレンおよびこれと共重合可能なモノマー類を共重合した共重合体の微粒子、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子等が含まれる。
【0046】
無機物は、それを含むシール剤の線膨張率を低減させ形状を良好に保持できることから好ましい。特に、二酸化ケイ素やタルクは、紫外線を透過しにくいため好ましい。上記被覆していない粒子の形状は特に限定されず、球状、板状、針状等の定形状あるいは非定形状のいずれであってもよい。
【0047】
本発明のシール剤における被覆粒子の配合量は、樹脂ユニット100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましい。更に、ディスペンス塗布性やスクリーン印刷性の観点からは、樹脂ユニット100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、5〜40重量部がより好ましい。シール部への液晶の差込防止の観点からは、20〜100重量部が好ましい。また、本発明の効果が失われない範囲で、他の粒子を併用して配合しても良い。
【0048】
本発明の液晶シール剤の組成は、(1)アクリル樹脂、(2)1分子内にエポキシ基および(メタ)アクリル基をそれぞれ1以上有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂、(3)エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも2種類の樹脂、および表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有する粒子からなる被覆粒子を含有することを特徴とする。この組成とすることにより、粘度安定性に優れ、シール直線性の確保しやすく、結果として液晶リークしにくくなるので好ましい。
【0049】
なお、(メタ)アクリル基を有する、(1)および(2)の樹脂を総合して、「樹脂ユニット」と呼ぶ場合がある。「樹脂ユニット」は、ラジカル反応に関与する樹脂であるため、エポキシ樹脂等と区別して表現している。
【0050】
(1)アクリル樹脂
シール剤に含まれるアクリル樹脂とは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルモノマー、またはこれらのオリゴマーをいう。これらの例には以下のものが含まれる。ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリアクリレートおよび/またはジまたはトリメタクリレート;ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート、またはそのオリゴマー;ペンタエリスリトールトリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート、またはそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸アクリレートおよび/またはジメタクリレート;エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸アクリレートおよび/またはジメタクリレート;ネオペンチルグルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのオリゴアクリレートおよび/またはオリゴメタクリレート等。
【0051】
またアクリル樹脂の例には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等の総てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させて得られる、エポキシ樹脂を完全に(メタ)アクリル化した樹脂も含まれる。
【0052】
シール剤に含まれるアクリル樹脂の数平均分子量は、300〜2000の範囲にあることが好ましい。このようなアクリル樹脂は、液晶に対する溶解性や拡散性が低くなるため、製造される液晶表示パネルの表示品質が良好となる。また(5)エポキシ樹脂に対する相溶性も向上する。アクリル樹脂の数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定できる。シール剤は、上述したアクリル樹脂の数種類を組み合わせて含んでいてもよい。シール剤に含まれるアクリル樹脂は、水洗法などにより高純度化されていることが好ましい。
【0053】
(2)変性エポキシ樹脂
変性エポキシ樹脂は、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基を併せ持つ化合物をいう。このような化合物の例には、ビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸、フェニルメタクリレートを、例えば、塩基性触媒下で反応することにより得られる樹脂が含まれる。このような変性エポキシ樹脂は、樹脂骨格内にエポキシ基と(メタ)アクリル基を併せ持つため、液晶シール剤の(1)アクリル樹脂と、後述する(5)エポキシ樹脂との相溶性に優れる。そのためガラス転移温度(Tg)が高く、かつ接着性に優れる硬化物を与える。
【0054】
変性エポキシ樹脂の原料となるエポキシ樹脂の例には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が含まれる。また変性エポキシ樹脂は、分子蒸留法、洗浄法等により高純度化されていることが好ましい。
【0055】
(3)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ基を1以上有する化合物である。シール剤に含まれる好適なエポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等で代表される芳香族ジオール類およびそれらをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール変性したジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物(以下、例えばビスフェノールAを原料としたものは「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」のように表記する。);フェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂、ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等で代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;キシリレンフェノール樹脂のグリシジルエーテル化合物類等が含まれる。
【0056】
なかでも好ましいエポキシ樹脂の例には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が含まれる。シール剤は、単独種のエポキシ樹脂を含有してもよいが、複数種のエポキシ樹脂を含有してもよい。
【0057】
シール剤に含まれるエポキシ樹脂は、環球法による軟化点が40℃以上で、かつ重量平均分子量が1000〜10000であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂は、液晶に対する溶解性や拡散性が低いため、得られる液晶表示パネルの表示特性が良好となる。さらに前述したアクリル樹脂との相溶性が高まるため、シール剤の接着信頼性が向上する。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定できる。これらのエポキシ樹脂としては分子蒸留法などにより高純度化処理されたものが好ましい。
【0058】
液晶シール剤が(1)と(3)を硬化性樹脂として含む場合、これらの配合比は、質量比にして(1):(3)=70〜97:3〜30であることが好ましい。液晶シール剤が(1)と(2)を硬化性樹脂として含む場合、これらの配合比は、質量比にして(1):(3)=10〜70:30〜90であることが好ましい。液晶シール剤が(2)と(3)を硬化性樹脂として含む場合、これらの配合比は、質量比にして(2):(3)=10〜70:30〜90であることが好ましい。液晶シール剤が(1)と(2)と(3)を硬化性樹脂として含む場合、これらの配合比は、質量比にして(1):(2):(3)=10〜87:10〜87:3〜30であることが好ましい。(1)と(2)からなる硬化性樹脂を含む液晶シール剤は特に耐リーク性と接着強度のバランスに優れる。また(2)と(3)からなる硬化性樹脂を含む液晶シール剤は特に接着強度に優れる。さらに(1)と(3)からなる硬化性樹脂を含む液晶シール剤は特に耐液晶リーク性に優れる。
【0059】
(4)エポキシ硬化剤
エポキシ硬化剤は、液晶シール剤として配合した際に、粘度安定性を確保できれば特に限定されない。例えば、熱に対して安定な熱潜在性エポキシ硬化剤が好ましい。
【0060】
熱潜在性エポキシ硬化剤としては、公知のものが使用できるが一液型で粘度安定性が良好な配合物を与えることができる点から、具体的には有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン等が好ましく挙げられる。これらは単独で用いても組み合わせて使用しても良い。
【0061】
これらのうち、熱潜在性エポキシ硬化剤としては、アミン系潜在性硬化剤であって、かつ、その融点、または、環球法による軟化点温度が、70℃以上であるものがより好ましい。
【0062】
アミン系潜在性硬化剤の融点又は環球法による軟化点温度が、70℃以上であると、室温での粘度安定性を良好に保持でき、ディスペンサー塗布やスクリーン印刷において、より長時間使用することが可能となる。
【0063】
アミン系潜在性硬化剤で、その融点、または、環球法による軟化点温度が70℃以上である熱潜在性エポキシ硬化剤の具体例としては、例えば、ジシアンジアミド(融点209℃)等のジシアンジアミド類;、アジピン酸ジヒドラジド(融点181℃)、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(融点120℃)、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド(融点160℃)、ドデカン二酸ジヒドラジド(融点190℃)、セバシン酸ジヒドラジド(融点189℃)等の有機酸ジヒドラジド;、2,4−ジアミノ―6―[2’−エチルイミダゾリル−(1’)]−エチルトリアジン(融点215℃〜225℃)、2−フェニルイミダゾール(融点137〜147℃)等のイミダゾール誘導体等が挙げられる。また、味の素ファインテクノ社製、アミキュアMY−24(軟化点120℃)、アミキュアMY−H(軟化点131℃)、ADEKA社製、アデカハードナーEH4339S(軟化点120℃〜130℃)、アデカハードナーEH4357S(軟化点73〜83℃)、ピイ・ティ・アイ・ジャパン社製、オミキュアー94(融点126〜136℃)、オミキュアー52(融点220℃〜230℃)等の市販の変性アミン系熱潜在性硬化剤も好適に使用可能である。
【0064】
熱潜在性エポキシ硬化剤は、その種類によっても異なるが、概ね液晶シール剤100重量部中に、通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部の量で含有される。この範囲で熱潜在性エポキシ硬化剤が含まれていれば、得られる液晶表示パネルの接着信頼性が発現され、また、液晶シール剤の粘度安定性も維持できる。
【0065】
本願発明に使用される熱潜在性エポキシ硬化剤は、水洗法、再結晶法などにより、高純度化処理を行ったものを使用することがより好ましい。
【0066】
(5)光ラジカル重合開始剤
本発明において光ラジカル重合開始剤とは、光によってラジカルを発生する化合物をいう。シール剤が光ラジカル重合開始剤を含むと、液晶表示パネルを製造する際に光硬化によりシール剤の仮硬化が可能となり、作業工程が容易になる。液晶シール剤は光ラジカル重合開始剤を含有していなくてもよい。光ラジカル重合開始剤を含有しないシール剤は、加熱によってのみ硬化されるので、パネル製造工程から光硬化工程を省略することができる。光ラジカル重合開始剤は任意であり、公知のものを用いればよい。光ラジカル重合開始剤の例には、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、α−アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類等が含まれる。シール剤における光ラジカル重合開始剤の含有量は、樹脂ユニット100重量部に対して0.1〜5.0重量部であることが好ましい。0.1重量部以上とすることにより前記樹脂組成物の光照射による硬化性が良好となり、5.0重量部以下とすることにより、基板への塗布時の安定性が良好となる。
【0067】
(6)熱可塑性ポリマー
シール剤に含まれる熱可塑性ポリマーとは、加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる高分子化合物をいう。軟化点温度が50〜120℃、好ましくは60〜80℃である熱可塑性ポリマーを含有するシール剤は、熱硬化するときに、熱可塑性ポリマーが溶融し、シール剤に含まれるアクリル樹脂、変性エポキシ樹脂やエポキシ樹脂の各成分と相溶する。そのため加熱時のシール剤の粘度低下が抑制され、シールからの液晶のリークが防止される。軟化点温度は環球法(JACT試験法:RS−2)により測定することができる。シール剤における熱可塑性ポリマーの含有量は、樹脂ユニット100重量部に対して1〜30重量部が好ましい。熱可塑性ポリマーの平均粒径は、液晶シール剤に良好な相溶性を示すために、通常0.05〜5μm、好ましくは0.07〜3μmの範囲であることが好ましい。
【0068】
熱可塑性ポリマーは、特に限定されず公知のものを用いることができる。なかでも、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、当該モノマーと共重合可能なモノマーとを50〜99.9質量%:0.1〜50質量%の比率(より好ましくは60〜80質量%:20〜40質量%の比率)で共重合させて得られるコポリマーが好ましい。コポリマーは、乳化重合または懸濁重合等によってエマルションの状態で重合させて得ることが好ましい。
【0069】
熱可塑性ポリマーの原料モノマーとなる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーが含まれる。なかでも、メチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、単独で用いても組み合わせて用いてもよい。
【0070】
熱可塑性ポリマーの原料モノマーとなる、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合可能なモノマーの例には、アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの酸モノマー;スチレン、スチレン誘導体などの芳香族ビニル化合物;1,3−ブタジエン、1、3−ペンタジエン、イソプレン、1、3−ヘキサジエン、クロロプレンなどの共役ジエン類;ジビニルベンゼン、ジアクリレート類などの多官能モノマーが含まれる。これらは、単独で用いても組み合わせて用いてもよい。
本発明において、熱ラジカル重合開始剤を含んでも良い。
【0071】
(7)熱ラジカル重合開始剤
熱ラジカル重合開始剤とは、加熱されてラジカルを発生する化合物、すなわち熱エネルギーを吸収し、分解してラジカル種を発生する化合物をいう。このような熱ラジカル重合開始剤は、基板を貼り合わせた後に、加熱によりシール剤を硬化させる場合に好適である。シール剤における熱ラジカル重合開始剤の含有量は、シール剤の粘度安定性と硬化性との両立を図るため、樹脂ユニット100重量部に対して0.01〜3.0重量部とすることが好ましい。
【0072】
また熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は、40℃〜80℃であることが好ましく、50℃〜70℃であることがさらに好ましい。10時間半減期温度とは、熱ラジカル重合開始剤を不活性ガス下、一定の温度で10時間熱分解反応を行った際に、熱ラジカル重合開始剤濃度が元の半分になるときの温度である。熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が上記範囲にあると、粘度安定性と硬化性のバランスがよくなる。10時間半減期温度が低い熱ラジカル重合開始剤は、比較的低温でもラジカルを発生させやすいので、それを含むシール剤は低温でも硬化しやすい。逆に当該温度が高い熱ラジカル重合開始剤はラジカルを発生させにくいので、それを含むシール剤の硬化性は低い。
【0073】
10時間半減期温度は、以下の方法により求めることができる。熱分解反応を1次反応式として取り扱うと、以下の式の関係が成り立つ。
(数1)
ln(C/C)=kd×t
:熱ラジカル重合開始剤の初期濃度
:熱ラジカル重合開始剤のt時間後の濃度
kd:熱分解速度定数
t:反応時間
半減期は、熱ラジカル重合開始剤の濃度が半分になる時間、すなわちC=C/2となる時間である。熱ラジカル重合開始剤の半減期がt時間となる場合には以下の式が成り立つ。
(数2)
kd=(1/t)・ln2
一方、速度定数の温度依存性はアレニウスの式で表されから、以下の式が成立する。
(数3)
kd=Aexp(−ΔE/RT)
(1/t)・ln2=Aexp(−ΔE/RT)
A:頻度因子
ΔE:活性化エネルギー
R:気体定数(8.314J/mol・K)
T:絶対温度(K)
kdおよびΔEの値は、J.Brandrupら著、「ポリマーハンドブック」(第4版)、第1巻、第II/1頁、A john Wiley & Sons,Inc.Publication、(1998年)(Polymer Hand Book fourth edition volum1)に記載されおり、Aは上記の数3より求められる。以上から、t=10時間とすれば、10時間半減期温度Tを求めることができる。
【0074】
熱ラジカル重合開始剤は公知のものを用いることができ、その例には有機過酸化物やアゾ化合物、置換エタン化合物等が含まれる。有機過酸化物は、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートに分類されるものが好ましいが、公知のものを適宜選択すればよい。
【0075】
有機過酸化物の例を以下に示す。かっこ内の数字は10時間半減期温度である(和光純薬カタログ、エーピーアイコーポレーションカタログ、及び前述のポリマーハンドブック参照)。ケトンパーオキサイド類の例には、メチルエチルケトンパーオキサイド(109℃)、シクロヘキサノパーオキサイド(100℃)等が含まれる。
【0076】
パーオキシケタール類の例には、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(87℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(87℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(91℃)、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン(103℃)、1,1−(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン(93℃)、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート(105℃)、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(95℃)が含まれる。
【0077】
ハイドロパーオキサイド類の例には、p−メンタンハイドロパーオキサイド(128℃)、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド(145℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(153℃)、クメンハイドロパーオキサイド(156℃)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(167℃)等が含まれる。
【0078】
ジアルキルパーオキサイドの例には、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(119℃)、ジクミルパーオキサイド(116℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(118℃)、t−ブチルクミルパーオキサイド(120℃)、t−アミルパーオキサイド(123℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(124℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3(129℃)が含まれる。
【0079】
パーオキシエステル類の例には、クミルパーオキシネオデカノエート、(37℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(41℃)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(45℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(46℃)、t−アミルパーオキシネオデカノエート(46℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(53℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(55℃)、t−アミルパーオキシピバレート(55℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(65℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(66℃)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(70℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(72℃)、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(75℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(82℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(95℃)、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド(96℃)、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート(96℃)、t−アミルパーオキシイソノナノエート(96℃)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(97℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(98℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(99℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(99℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(99℃)、2,5−ジメチル−2,5ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(100℃)、t−アミルパーオキシアセテート(100℃)、t−アミルパーオキシベンゾエート(100℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(102℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(104℃)が含まれる。
【0080】
ジアシルパーオキサイド類の例には、ジイソブチリルパーオキサイド(33℃)、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド(60℃)、ジラウロイルパーオキサイド(62℃)、ジスクシニックアシッドパーオキサイド(66℃)、ジベンゾイルパーオキサイド(73℃)が含まれる。
【0081】
パーオキシジカーボネート類の例には、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(40℃)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(41℃)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(41℃)、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(44℃)、t-アミルパーオキシプロピルカーボネート(96℃)、t-アミルパーオキシ2エチルヘキシルカーボネート(99℃)が含まれる。
【0082】
アゾ系熱ラジカル重合開始剤の例には、水溶性アゾ系熱ラジカル重合開始剤、油溶性アゾ系熱ラジカル重合開始剤、高分子アゾ系熱ラジカル重合開始剤が含まれる。
【0083】
水溶性アゾ系熱ラジカル重合開始剤の例には、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート(46℃)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(57℃)、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド(60℃)、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)ジハイドロクロライド(67℃)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](87℃)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド(44℃)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド(56℃)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](61℃)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(80℃)が含まれる。
【0084】
油溶性アゾ系熱ラジカル重合開始剤の例には、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(30℃)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(66℃)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(88℃)、1,1’−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(104℃)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)(111℃)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(51℃)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(67℃)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](96℃)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(110℃)が含まれる。
【0085】
高分子アゾ系熱ラジカル重合開始剤の例には、ポリジメチルシロキサンユニット含有高分子アゾ系熱ラジカル重合開始剤、ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ系熱ラジカル重合開始剤等が含まれる。シール剤は、これらの熱ラジカル重合開始剤を任意に組み合わせて含有してもよい。
【0086】
(9)その他の添加剤
シール剤に含まれる好適な他の添加剤の例には、カップリング剤、連鎖移動剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、導電性粒子、硬化促進剤、光カチオン開始剤、硬化遅延剤、消泡剤等の添加剤が含まれ、用途に応じて1種類或いは複数種類を組合せて用いることができる。
【0087】
本発明の液晶シール剤を、例えば、液晶滴下工法用として用いる場合について、調整方法、液晶表示パネルおよびその製造方法について述べる。
【0088】
<液晶シール剤の調製方法>
本発明の液晶シール剤の調製方法には特に限定はなく、上記各成分を常法により混合して得ることができる。混合には、例えば、双腕式攪拌機、ロール混練機、2軸押出機、ボールミル混練機等のすでに公知の混練機械を介して行って良く、最終的に真空脱泡処理後にガラス瓶やポリ容器に密封充填され、貯蔵、輸送されて良い。なお、粘度安定性を維持するため、調整時に本発明の液晶滴下工法用シール剤にかかる温度としては、−15℃〜35℃が好ましく、より好ましくは10℃〜30℃未満である。
【0089】
本発明の液晶シール剤は、25℃においてE型粘度計による1.0rpmの粘度が10〜500Pa・sであることが好ましい。本発明の液晶シール剤を液晶滴下工法用に用いる場合は、25℃においてE型粘度計による1.0rpmの粘度が50〜500Pa・sであることが好ましく、より好ましくは1.0rpmの粘度が150〜400Pa・sの範囲にある。その範囲の初期粘度特性を保持させることで、塗布ムラのない塗布作業性を発揮出来るため、好ましい。特に25℃においてE型粘度計による1.0rpmの粘度が50Pa・s以上の初期粘度であれば塗布後のシール形状保持性が優れることから好ましく、150Pa・s以上の初期粘度であればより好ましい。また500Pa・s以下の初期粘度であれば、ノズル径が0.15〜0.5mm径のディスペンス塗布性が確保でき好ましい。また、400Pa.s以下であればスクリーン印刷性が確保でき好ましい。
【0090】
<液晶表示パネルおよびその製造方法>
本発明の液晶表示パネルの製造方法に、特に限定はない。
【0091】
本発明の液晶表示パネルは、前述のようにして得られた液晶滴下工法用シール剤を用いて、液晶滴下工法により製造される。製造方法の一例を以下に説明する。
【0092】
予め設定したギャップ幅のスペーサーを本発明の液晶滴下工法用シール剤に混合し、脱泡しておく。さらに一対の液晶セル用ガラス基板を用い、一方の液晶セル用ガラス基板上に該液晶シール剤をディスペンサーにて枠型に塗布する。次いで、対となるガラス基板の貼り合わせ後のパネル内部容量に相当する液晶材料をその枠内に精密に滴下する。その後、他方のガラスを対向させ、紫外線を500〜18000mJ/cmの量を照射してガラス基板を貼り合わせる。さらにその後、100℃〜140℃の温度でおよそ30分〜1時間加熱して充分に硬化させ液晶表示パネルを形成する。
用いられる液晶セル用基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板が挙げられる。なお、前記した基板群では当然のこととして酸化インジウムに代表される透明電極やポリイミド等に代表される配向膜、その他無機質イオン遮蔽膜等が必要部に施工されてなる、いわゆる液晶セル構成用ガラス基板又は同プラスチック基板が用いられる。
液晶セル用基板に液晶滴下工法用シール剤組成物を塗布する方法には特に限定はなく、例えば、ディスペンサー塗布方法又はスクリーン印刷塗布方法などで行って良い。
【0093】
エポキシ当量測定
エポキシ当量は、サンプルを塩酸−ジオキサン溶液に分散・溶解させた後、クレゾールレッドを指示薬とし、エポキシ基によって消費された塩酸量を滴定する方法(塩酸−ジオキサン法)により算出した。
【0094】
炭素炭素二重結合当量測定
炭素炭素二重結合当量は、ヨウ素価法(第十四改正日本薬局方 一般試験法 65.油脂試験法)を用いて行なった。
【0095】
被覆粒子の固定化確認法
被覆粒子の炭素量(CHN法)と、被覆粒子1gをジクロロメタン10ml中で2分間超音波処理した後、濾別、乾燥した粒子の炭素量との差を測定し、超音波処理前後の炭素量の差を求め、数値に差がないことをもって固定化されたと判断した。
【0096】
粒子の被覆層の平均厚さの測定
本発明における被覆層の厚みは、核粒子の平均粒子径と被覆粒子の平均粒子径から平均被覆層厚{平均被覆層厚=[(被覆粒子の平均粒子径)-(核粒子の平均粒子径)]/2}として算出する。核粒子および被覆粒子の粒子径は、波長632.8nmのレーザーを用いたレーザー法粒子径測定器により求めた一次粒子の平均粒子径を10回測定し、その平均値から求めた。
【実施例】
【0097】
以下に、本発明に係る実施例を具体的に説明する。また、ここに示す例はあくまで本発明に係る一例であって、本発明を限定するものではない。したがって、本発明から逸脱しない限り、材料、製造方法等は適宜変更することができる。なお、以下に記載の「%」、「部」とは、断りの無い限り、それぞれ「重量%」、「重量部」を意味する。
それぞれの原料は、断りの無い限り、分子蒸留、精製等の高純度化処理したものを用いた。
(1)アクリル樹脂
アクリル樹脂A-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂変性ジアクリレート(共栄社化学製 3002A;分子量600)をトルエンで希釈した後、超純水にて洗浄する工程を繰り返して、高純度化処理を行なったものを使用した。
アクリル樹脂A-2)
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製 NKエステルA−TMPT)
(2)変性エポキシ樹脂
[合成例1]
攪拌機、気体導入管、温度計、冷却管を備えた500mlの四つ口フラスコにビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポトートYDF−8170C:東都化成社製)160g、アクリル酸36g、トリエタノールアミン0.2gを仕込み、乾燥エア気流下、110℃、5時間加熱攪拌してアクリル変性エポキシ樹脂とした後、これを超純水にて40回洗浄したものを、変性エポキシ樹脂2−Aとして使用した。
(3)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂3−A):o−クレゾールノボラック型固形エポキシ樹脂(日本化薬社製 EOCN−1020−75、環球法による軟化点75℃、エポキシ当量215g/eq)を使用した。
エポキシ樹脂3−B):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL:JER製、エポキシ当量190g/eq)
(4)被覆していない粒子
粒子4−A)日本タルク社製 タルク「SG−2000」(1次粒子径0.900μm)
粒子4−B)ゾルゲルシリカ:ゾルゲル法によって調整した平均粒子径0.600μmの球状シリカ
粒子4−B’)ゾルゲルシリカ:ゾルゲル法によって調整した平均粒子径1.560μmの球状シリカ
粒子4−C)表面疎水化ゾルゲルシリカ:ゾルゲル法によって調整した球状シリカをヘキサメチルシクロトリシロキサンで処理し表面疎水化した平均粒子径0.800μmの疎水化ゾルゲルシリカ。
粒子4-D)アドマテック社製 シリカ「SO−C1」(1次粒子径0.250μm)
粒子4-E)日本アエロジル社製 シリカ「アエロジル200」(1次粒子径0.012μm)
【0098】
[合成例2]
アドマテック社製 シリカ「SO−C1」(粒子4-D)50g、イミダゾールシラン化合物(ジャパンエナジー社製 IM−1000)0.1g、エタノール50gを混合し、60℃で1時間攪拌後、エバポレータで濃縮し、更に、減圧下100℃で1時間乾燥させて、イミダゾールシラン処理した平均粒径0.264μmの被覆粒子を得た。これを被覆粒子4-F)として使用した。
【0099】
[合成例3]
IM−1000の代わりにγ−アミノプロピルトリメトキシシランを用いた以外は合成例2と同様にして、平均粒径0.255μmの被覆粒子を合成した。これを被覆粒子4-G)として使用した。
【0100】
[合成例4]
IM−1000の代わりにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は合成例2と同様にして、平均粒径0.272μmの被覆粒子を合成した。これを被覆粒子4-H)として使用した。
【0101】
(5)エポキシ硬化剤
エポキシ硬化剤5−A)1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(味の素社製 アミキュアVDH、融点120℃)を使用した。
エポキシ硬化剤5−B)アミキュアPN−23J(味の素ファインテクノ社製、融点105℃)
(6)光ラジカル重合開始剤
光ラジカル重合開始剤6−A)イルガキュア184(チバスペシャルティー・ケミカルズ)を使用した。
(7)熱可塑性ポリマー
熱可塑性ポリマー7−A)ゼオン化成社製 微粒子ポリマー「F325」(1次粒子径0.500μm)
(7)熱ラジカル重合開始剤
熱ラジカル重合開始剤7−A)2,2’−アゾビス(2―ジメチルバレロニトリル)(V−65:和光純薬)
(8)その他添加剤/カップリング剤
カップリング剤8−A)シランカップリング剤(信越化学工業社製 KBM−403)を使用した。
表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有するポリマーで被覆された被覆粒子(ポリマー被覆粒子)
合成例を以下に示す。なお、被覆粒子は、以下の合成例に限定されない。
【0102】
[合成例5]
テフロン(登録商標)製撹拌翼を有する攪拌機付きの1Lテフロン(登録商標)製三つ口フラスコにゾルゲルシリカ(粒子4−B)を100g仕込み高速攪拌しながら、グリシジルアクリレート0.28g、ジビニルベンゼン0.026g、パーブチルO(日本油脂製)0.04gを混合した溶液を二流体ノズルにて噴霧した。噴霧終了後にさらに2時間撹拌した。その後、攪拌しながらフラスコを1時間かけて100℃まで昇温し、100℃で4時間保持した。
このようにして得られた粒子について、エポキシ当量を測定した結果、22μeq/gであった。さらに、二重結合性官能基当量を測定したが検出できなかった。この結果より、表面処理により該複合粉体について表面にエポキシ基が付与されていることが確認された。なお、このポリマー被覆粒子のポリマー被腹膜厚は、0.009μmであった。このポリマー被覆粒子をa−1として用いた。
【0103】
[合成例6]
合成例5のゾルゲルシリカを表面疎水化ゾルゲルシリカ(粒子4−C)、グリシジルアクリレートを0.14g、パーブチルOをV-65とした以外は、合成例1と同様に合成した。このようにして得られた粒子について、エポキシ当量を測定した結果、11μeq/gであった。さらに、二重結合性官能基当量を測定したが検出できなかった。なお、このポリマー被覆粒子のポリマー被腹膜厚は、0.045μmであった。このポリマー被覆粒子をa−2として用いた。
【0104】
[合成例7]
合成例5のゾルゲルシリカをゼオン化成社製PMMA微粒子F325(平均粒子径:0.500μm/Tg=107℃)とし、グリシジルアクリレート2.8gとし、アリルメタクリレートを0.02g加えた以外は、合成例1と同様に合成した。このようにして得られた粒子について、エポキシ当量を測定した結果、214μeq/gであった。さらに、二重結合性官能基当量を測定した結果、1μeq/gであった。なお、このポリマー被覆粒子のポリマー被腹膜厚は、0.038μmであった。このポリマー被覆粒子をa−3として用いた。
【0105】
[合成例8]
合成例5のゾルゲルシリカ(粒子4−B)をゾルゲルシリカ(粒子4−B’)とした以外は、合成例1と同様に合成した。このようにして得られた粒子について、エポキシ当量を測定した結果、3μeq/gであった。さらに、二重結合性官能基当量を測定したが検出できなかった。なお、このポリマー被覆粒子のポリマー被腹膜厚は、0.002μmであった。このポリマー被覆粒子をa−4として用いた。
【0106】
[実施例1]
アクリル樹脂(1−A)20部、変性エポキシ樹脂(2−A)80部、エポキシ樹脂(3−A)10部、エポキシ硬化剤(4−A)5部、光ラジカル開始剤(6−A)0.5部、カップリング剤(9−A)1.5部、ポリマー被覆粒子(a−1)25部を表1に記した配合量にてダルトンミキサーで3本ロールを用いて充分に混練し、E型粘度計(1.0rpm)による25℃における粘度が300Pa・sの液晶シール剤を得た。
【0107】
[試験方法]
1)耐液晶リーク性
実施例1で調製した液晶シール剤に、さらに5μmの球状スペーサーを1重量部添加し、脱泡処理を行い、スペーサーが添加された液晶シール剤を調製した。
【0108】
イエローランプ下で、前記液晶シール剤をディスペンス用シリンジに充填した。さらにディスペンス装置(日立プラントテクノロジー社製)を使い、360mm×470mmの液晶表示パネル用ガラス基板(日本電気硝子社製)の上に、描画スピード100mm/sで35mm×40mm角の四角形のシールパターン(断面積3500μm)を50個作製した。さらに、外周には、同条件で、50個のシールパターンを囲むように、2重枠のシールラインを作製した。
【0109】
当該基板のシールパターン内に、貼り合わせ後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−11900−000:メルク社製)をディスペンス装置(日立プラントテクノロジー社製)で精密に滴下した。
【0110】
真空貼り合せ装置(信越エンジニアリング社製)を用いて5Paの減圧下で前述のガラス基板と、対向するガラス基板を重ね合わせた。
貼りあわせたガラス基板を、遮光ボックス内で3分間保持後、2000mJの紫外線を照射して仮硬化させ、続いて120℃で60分加熱して硬化させた。
【0111】
得られた液晶表示パネルのシーパターン直線性、すなわちシール直線性を以下の方法で評価した。シール直線性は耐リーク性の指標となる。
【0112】
[シールの最大幅と最小幅の比率]%=[シールの最小幅]/[シールの最大幅]×100
上記比率が95%以上のもの:◎(優れる)
80%以上95%未満であるもの:○(やや優れる)
80%未満であるもの:×(劣る)
上記の判定であっても、シールライン内に液晶が入り込んでいるものについては、耐リーク性に劣るため、×とした。
【0113】
2)ディスペンス塗布性
前記1)で得た液晶シール剤20gをシリンジに真空下で充填した。次に口径0.35mmの針先をつけたシリンジを、1g吐出後、23℃で1日放置した。続いて、このシリンジをディスペンサー(日立プラントテクノロジー社製)にセットし、360mm×470mmの液晶表示パネル用ガラス基板(日本電気硝子社製)の上に35mm×40mmのシールパターンを50個描画した。このとき、吐出圧力を0.3MPa、断面積断面積3000μm、塗布速度を100mm/secとした。描画されたシールパターンのシール形状は、以下のように評価された。
【0114】
シール切れ、シールかすれが全く発生していない枠型が50個:◎(優れる)
シール切れ、シールかすれが全く発生していない枠型が48個〜49個:△(やや劣る)
シール切れ、シールかすれが全く発生していない枠型が48個未満:×(劣る)
【0115】
3)スクリーン印刷塗布性
液晶シール剤の塗布に、スクリーン印刷機(東海精機社製)を用い、1日放置せず、代わりに80回印刷後のシールラインで評価を行ったこと以外は、前記2)と同様のシールパターンを作製し、評価を行った。
シール形状は、以下のように評価された。
【0116】
シール切れ、シールかすれが全く発生していない枠型が50個:◎(優れる)
シール切れ、シールかすれが全く発生していない枠型が48個〜49個:○△(やや劣る)
シール切れ、シールかすれが全く発生していない枠型が48個未満:×(劣る)
【0117】
4)液晶表示パネルの表示特性評価
透明電極及び配向膜を付した40mm×45mmガラス基板(EHC社製、RT−DM88−PIN)上に、液晶シール剤を、ディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)にて、35mm×40mmの四角形のシールパターン(断面積3500μm)(メインシール)と、最外周に同様のパターンを描画し、続いて、貼り合せ後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−11900−000:メルク社製)を、ディスペンサーを用いてメインシールの枠内に精密に滴下し、更に対になるガラス基板を減圧下で貼り合せた後、大気開放して貼りあわせ、3分間遮光ボックスに保持後、紫外線を2000mJ/cm照射した。続いて、120℃で1時間の加熱を行なった。得られた液晶表示パネルを、70℃、95%RH、500時間放置前後に、シール部周辺の液晶に生じる色むらを目視で観察した。この液晶表示パネルを、直流電源装置を用いて5Vの印加電圧で駆動させ、液晶シール剤近傍の液晶表示機能が駆動初期から正常に機能するか否かでパネル表示特性の評価判定を行った。該判定方法は、シール際まで液晶表示機能が発揮出来ている場合を表示特性が良好であるとして記号◎とし、シール際の近傍0.3mm未満で表示機能の異常を見た場合を表示特性が劣るとして記号△、またシール際の近傍0.3mmを超えて表示機能の異常を見た場合を表示特性が著しく劣るとして記号×と表示した。
【0118】
5)シール観察
前記1)で調製した液晶シール剤を用いスクリーン版で25mm×45mm厚さ0.7mmの無アルカリガラス上に直径1mmの円状のシールパターンを塗布した。次に対となる同様のガラスを十字に重ね合わせ固定した。この重ね合わされ固定された二枚のガラスを紫外線2000mJ照射後、120℃で60分加熱して、貼り合わせた。こうして貼り合わせられた二枚のガラス板(以下「試験片」という)を、25℃湿度50%の恒温槽にて24時間保管した後、目視および電子顕微鏡でシールの状態を観察した。
【0119】
シール観察は以下のように評価した。
【0120】
目視で空隙、流れ出しがない:◎(優れる)
目視でわずかな空隙あるいは流れ出しあり:△(やや劣る)
目視で流れ出しおよび空隙あり:×(劣る)
電子顕微鏡で観察、シール分離なし:◎(優れる)
電子顕微鏡で観察、シール分離あり:×(劣る)
【0121】
6)接着強度
さらに、恒温槽から取り出した試験片について、引張り試験装置(インテスコ製)を使用し、引張り速度2mm/分で平面引張り強度を測定した。
【0122】
接着強度は以下のように評価した。
【0123】
接着強度が15MPa以上:◎(優れる)
接着強度が7MPa以上15MPa未満:△(やや劣る)
接着強度が7MPa未満:×(劣る)
【0124】
7)粘度測定
実施例1で調製した液晶シール剤の粘度は、E型回転型粘度計(BROOKFIELD社製:デジタルレオメータ型式DV−III ULTRA)を使用し、半径12mm、角度3°のCP−52型コーンプレート型センサーを使用し、以下の条件にて回転数1.0rpmで測定した。
【0125】
25℃での粘度:本発明のシール剤を25℃で5分間放置後測定した。
8)粘度安定性
実施例1で調製した液晶シール剤を、ディスペンス用シリンジ内の液晶シール剤の重量が10gになるよう調整した後、脱泡処理をした。そのうち2gを使用し初期の粘度測定し、23℃50%RHで1週間保存後に粘度測定を行なった。初期粘度に対する1週間後の粘度の上昇率が1.5倍以下を優れているとして◎で表記し、1.5倍を超え2倍以下は粘度安定性にやや劣るとして△で表記、2倍を超えるものは劣るとして×で表記した。
【0126】
[実施例2]〜[実施例5]
実施例1と同様にして、表1に示す組成の液晶シール剤を得た。さらに実施例1と同様の評価を行った。
【0127】
[比較例1]〜[比較例5]
実施例1と同様にして表2に示す組成の液晶シール剤を得た。さらに実施例1と同様の評価を行った。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
実施例と比較例の比較から、本発明の液晶シール剤は、粘度安定性に優れ、液晶シール部の変形、シール部への液晶のリークが低減されることが明らかである。パネル表示についても優れることが明らかである。
【0131】
特に、核粒子にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをグラフトした粒子を用いた比較例5と本願発明に係る被覆粒子を用いた実施例1〜5を比較すると接着強度、耐液晶リーク性等が著しく向上していることがわかる。さらに、実施例1〜3および5と、実施例4を比較すると、被覆粒子表面に炭素炭素二重結合性官能基を導入したポリマー被覆粒子a−3を用いることで、接着強度がさらに向上することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の液晶シール剤は、粘度安定性、接着強度に優れ、液晶シール部の変形、シール部への液晶のリークが低減された液晶表示パネルを提供できるため、液晶表示パネル分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性官能基を有するモノマーをラジカル重合することで得られるポリマーで被覆された被覆粒子を含む液晶シール剤。
【請求項2】
表面にエポキシ基および/または炭素炭素二重結合性官能基を有する請求項1に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤。
【請求項3】
被覆するポリマーが架橋型ポリマーである請求項1に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤

【請求項4】
核粒子が無機粒子である請求項1に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤。
【請求項5】
平均粒子径が0.4〜10μmである請求項1に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤。
【請求項6】
(1)アクリル樹脂、
(2)1分子内にエポキシ基および(メタ)アクリル基をそれぞれ1以上有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂、
(3)エポキシ樹脂
から選ばれる少なくとも2種類の樹脂を含有する請求項1に記載の被覆粒子を含む液晶シール剤。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂(3)の軟化点が40℃以上160℃以下である請求項6に記載の液晶シール剤。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液晶シール剤を硬化してなる硬化物。
【請求項9】
第一の基板に請求項1ないし7のいずれかに記載の液晶シール剤を用いてシールパターンを形成する工程、
前記シールパターンが未硬化の状態において前記基板のシールパターン領域内、またはもう一方の基板に液晶を滴下する工程、
前記基板と、これに対向する第二の基板を重ね合わせる工程、および
前記組成物を加熱によって硬化させる工程、
を含む液晶表示パネルの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化物を含む液晶表示パネル。

【公開番号】特開2009−192560(P2009−192560A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29946(P2008−29946)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】