説明

液滴吐出装置、重量測定方法、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法

【課題】複数のキャリッジに搭載された複数の吐出ヘッドから吐出される液状体の重量を適正に測定できる液滴吐出装置、液状体の重量測定方法、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法を提供すること。
【解決手段】液滴吐出装置1は、Y軸方向に配列した複数のキャリッジユニット21と、キャリッジユニット21ごとに設けらたヘッドユニット61と、各ヘッドユニット61に搭載された複数の液滴吐出ヘッドから吐出される液状体を受けて、その重量を液滴吐出ヘッドごとに測定する重量測定機構91と、ワークとしての基板Wと重量測定機構91とをそれぞれ独立してX軸方向に移動させるX軸テーブル22と、複数のキャリッジユニット21をそれぞれ独立してY軸方向に移動させるY軸テーブル23と、を備えた。X軸テーブル22によって、各キャリッジユニット21が描画領域31における配列状態を維持して重量測定領域33に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出された液状体の重量を測定する重量測定機構を備えた液滴吐出装置、液状体の重量測定方法、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出された液状体の重量を測定する重量測定機構を備えた液滴吐出装置としては、ワークに対して液滴を吐出する少なくとも1つの液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドの液滴の吐出量を測定するために液滴吐出ヘッドが吐出した液滴を受ける吐出量測定用液受け部とを有する液滴吐出装置が知られている(特許文献1)。さらに、この液滴吐出装置が収容され、その内部の環境条件を調整可能なチャンバを備えた液滴吐出システムが提案されている。
【0003】
上記液滴吐出システムでは、液滴吐出ヘッドが吐出量測定用液受け部に対して液滴を吐出する際、チャンバ内の環境条件をワークに対して液滴を吐出する際に管理するのと同様な環境条件に管理する。これにより、予め液滴の吐出量を正確に測定して、該吐出量を適正な値に調整することができるとしている。
【0004】
一方、基板の大型化に伴って、液滴吐出ヘッドが複数搭載されたヘッドユニット(或いはキャリッジ)を複数備えた液滴吐出装置が知られている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−209429号公報
【特許文献2】特開2005−254797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ヘッドユニットを複数備えた従来の液滴吐出装置に上記液滴吐出システムを適用しようとする場合、重量測定時やワークに液滴を吐出して描画するときの環境条件を管理する大型のチャンバが必要となる。このような条件下では、液滴の重量を測定する重量測定機構と各ヘッドユニットとをどのように配置するかによって、重量測定時と実際の描画時とにおいて、その環境条件や液滴吐出ヘッドの駆動条件を同一とすることが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、複数のキャリッジに搭載された複数の吐出ヘッドから吐出される液状体の重量を適正に測定できる液滴吐出装置、液状体の重量測定方法、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液滴吐出装置は、ワークと吐出ヘッドとを対向させて相対移動させる主走査に伴って、ワーク上に吐出ヘッドから液状体を液滴として吐出描画する液滴吐出装置であって、それぞれに複数の吐出ヘッドが搭載された複数のキャリッジと、吐出ヘッドごとに吐出された液状体の重量を測定する重量測定機構と、重量測定機構と前記ワークとをそれぞれ独立して前記主走査の方向に移動させる主走査移動機構とを備え、重量測定機構が複数のキャリッジに搭載された複数の吐出ヘッドによって吐出描画可能な描画領域に沿って主走査の方向と直交する方向に配設されたことを特徴とする液滴吐出装置。
【0009】
この構成によれば、重量測定機構とワークとをそれぞれ独立して主走査の方向に移動させる主走査移動機構を備え、重量測定機構が複数のキャリッジに搭載された複数の吐出ヘッドによって吐出描画可能な描画領域に沿って主走査の方向と直交する方向に配設されている。したがって、主走査移動機構を用いれば、描画領域に配列した状態のままの複数のキャリッジと重量測定機構とを対向配置することができる。ゆえに、実際にワークに対して液状体を吐出する際の複数のキャリッジの配列を変えることなく、搭載された複数の吐出ヘッドから吐出される液状体の重量を測定することができる。すなわち、複数のキャリッジを分割して重量測定を行う場合に比べて、実際に液状体を吐出描画するキャリッジの配列状態で液状体の重量を適正に測定することが可能な重量測定機構を備えた液滴吐出装置を提供することができる。
【0010】
上記重量測定機構には、複数のキャリッジに対応して少なくとも同数の重量測定装置を備えたことを特徴とする。これによれば、キャリッジの数と重量測定装置の数とが少なくとも同数である。したがって、同数未満の場合に比べて複数のキャリッジと重量測定機構と相対移動させて測定対象の吐出ヘッドと重量測定装置とを対向配置する動作を少なくすることができる。ゆえに、効率よく重量測定を行うことができる。
【0011】
また、上記重量測定機構には、複数のキャリッジごとに設けられ少なくとも1つの吐出ヘッドから吐出される液滴を受けることが可能な第1液滴受け部と、複数のキャリッジに搭載された複数の吐出ヘッドの配置に対応して、第1液滴受け部を囲うように設けらた第2液滴受け部と、を備えることが好ましい。これによれば、第1液滴受け部に測定対象の吐出ヘッドから液状体を吐出させて重量測定を行う一方で、測定対象以外の吐出ヘッドから第2液滴受け部に液状体を吐出させることができる。したがって、複数の吐出ヘッドを間歇的に駆動して吐出された液状体の重量を測定する場合に比べて、複数の吐出ヘッドをほぼ同時に駆動する実際の液状体の吐出描画状態に近づけて、測定対象の吐出ヘッドから吐出された液状体の重量を適正に測定することができる。
【0012】
本発明の重量測定方法は、複数のキャリッジに搭載された複数の吐出ヘッドから吐出される液状体の重量を測定する重量測定方法であって、複数のキャリッジを描画領域における配列状態を維持して重量測定領域に配置する配置工程と、複数のキャリッジに搭載された各吐出ヘッドから液状体を液滴として吐出し、各吐出ヘッドごとに吐出された液状体の重量を計測する計測工程と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この方法によれば、配置工程では、重量測定領域に描画領域における配列状態を維持して複数のキャリッジが配置される。したがって、複数のキャリッジを分割して重量測定領域に配置する場合に比べて、実際に液状体を吐出描画する状態に近づけて液状体の重量を適正に測定することができる。
【0014】
上記計測工程では、計測可能となる吐出数を設定して液滴を吐出することを特徴とする。これによれば、吐出される液滴が極微量であっても、計測可能となる吐出数を設定して液状体を吐出するので、安定した重量測定結果が得られる。また、計測された液状体の重量を上記吐出数で割ることによって、液滴が極微量であっても1滴あたりの重量を精度よく求めることができる。
【0015】
また、上記計測工程で得られた各吐出ヘッドごとに吐出された液状体の重量と、吐出ヘッドから吐出しようとする所望の液状体の重量とを比較して、その差が所定の範囲内に入っているか否かを判定する判定工程をさらに備え、判定工程で否となった場合には、各吐出ヘッドのメンテナンスをするメンテナンス工程を行うことが好ましい。これによれば、判定工程によって、適正に液状体が吐出されたか否かを判定することができる。また、判定が否となった場合にメンテナンス工程を行うので、吐出ヘッドの目詰まりや吐出状態を安定化させてから再び計測工程を実施することができる。すなわち、より確実に液状体を吐出させて重量測定を行うことができる。
【0016】
また、上記計測工程では、複数の吐出ヘッドのうち測定対象以外の吐出ヘッドからも液滴を吐出することが好ましい。これによれば、測定対象の吐出ヘッドから計測用の液状体を吐出する一方で、測定対象以外の吐出ヘッドからも液滴を吐出する。したがって、測定対象の吐出ヘッドのみを駆動して吐出された液状体の重量を測定する場合に比べて、事前に液滴の吐出状態を安定化して重量測定に臨むことができる。よって、測定対象の吐出ヘッドから吐出された液状体の重量をより適正に測定することができる。
【0017】
本発明の液状体の吐出方法は、複数のキャリッジに搭載された複数の吐出ヘッドから液状体をワークに対して吐出描画する液状体の吐出方法であって、複数のキャリッジを描画領域における配列状態を維持して重量測定領域に配置する配置工程と、複数のキャリッジに搭載された各吐出ヘッドから液状体を液滴として吐出し、各吐出ヘッドごとに吐出された液状体の重量を計測する計測工程と、計測工程で得られた液状体の重量情報を基に、各吐出ヘッドから吐出される液滴の吐出量を調整する調整工程と、ワークの所望の領域に各吐出ヘッドから液滴を吐出描画する吐出工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、複数のキャリッジを分割して重量測定領域に配置する場合に比べて、実際に液状体を吐出描画する状態に近づけて液状体の重量を適正に測定することができる。したがって、調整工程では、適正に測定された液状体の重量情報を基に、各吐出ヘッドから吐出される液滴の吐出量を調整することができる。そして、吐出工程では、調整された各吐出ヘッドから液滴を吐出描画すれば、ワークの所望の領域に適正な量の液状体を付与することができる。
【0019】
上記計測工程では、計測可能となる吐出数を設定して液滴を吐出することを特徴とする。これによれば、吐出される液滴が極微量であっても、計測された液状体の重量を吐出数で割ることによって、1滴あたりの重量を精度よく求めることができる。すなわち、ワークの所望の領域に精度よく適正な量の液状体を付与することができる。
【0020】
また、上記計測工程で得られた各吐出ヘッドごとに吐出された液状体の重量と、吐出ヘッドから吐出しようとする所望の液状体の重量とを比較して、その差が所定の範囲内に有るか否かを判定する判定工程をさらに備え、判定工程で否となった場合には、各吐出ヘッドのメンテナンスをするメンテナンス工程を行うことが好ましい。これによれば、判定工程によって、適正に液状体が吐出されたか否かを判定することができる。また、判定が否となった場合にメンテナンス工程を行うので、吐出ヘッドの目詰まりや吐出状態を安定化させてから再び計測工程を実施することができる。ゆえに、より確実に液状体を吐出させて重量測定を行うことができる。すなわち、ワークの所望の領域に安定して適正な量の液状体を付与することができる。
【0021】
また、上記計測工程では、複数の吐出ヘッドのうち測定対象以外の吐出ヘッドからも液滴を吐出することが好ましい。これによれば、測定対象の吐出ヘッドから計測用の液状体を吐出する一方で、測定対象以外の吐出ヘッドからも液滴を吐出する。したがって、測定対象の吐出ヘッドのみを駆動して吐出された液状体の重量を測定する場合に比べて、事前に液滴の吐出状態を安定化して重量測定に臨むことができる。よって、測定対象の吐出ヘッドから吐出された液状体の重量をより適正に測定することができる。すなわち、ワークの所望の領域により適正な量の液状体を付与することができる。
【0022】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に区画形成された複数の着色領域に少なくとも3色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、少なくとも3色の着色層形成材料を含む液状体を複数の着色領域に吐出描画する描画工程と、吐出描画された液状体を固化して、少なくとも3色の着色層を形成する固化工程とを備えたことを特徴とする。
【0023】
この方法によれば、ワークの所望の領域に適正な量の液状体を付与することができる上記発明の液状体の吐出方法を用いている。したがって、描画工程では、複数の着色領域に適正な量の少なくとも3色の着色層形成材料を含む液状体が付与され、固化工程では、付与された液状体を固化することによって、適正な膜厚を有する少なくとも3色の着色層を形成することができる。すなわち、所望の光学特性を有するカラーフィルタを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(液滴吐出装置)
まず、本実施形態の液滴吐出装置について図1から図6に基づいて説明する。図1は液滴吐出装置の構造を示す概略平面図、図2は液滴吐出装置の構造を示す概略側面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の液滴吐出装置1は、ワークとしての基板Wが載置される吸着テーブル41をX軸方向に移動させる主走査移動機構としてのX軸テーブル22と、複数(7つ)のキャリッジとしてのキャリッジユニット21をX軸テーブル22の上方において、それぞれ独立してY軸方向に移動させる副走査移動機構としてのY軸テーブル23とを備えている。
【0026】
Y軸方向に配列した各キャリッジユニット21は、液状体を液滴として吐出する複数の吐出ヘッドとしての液滴吐出ヘッド62(図3参照)が搭載されたヘッドユニット61と、ヘッドユニット61を含むキャリッジ本体66を吊設するメインキャリッジ63とを備えている。
【0027】
また、X軸テーブル22には、ヘッドユニット61に搭載された各液滴吐出ヘッド62から吐出される液状体を受けて、その重量を液滴吐出ヘッド62ごとに測定する重量測定機構91と、重量計測機構91に並列して吸着テーブル41側に設けられたフラッシング部としてのフラッシングボックス114とを備えている。この場合、X軸テーブル22によって、重量測定機構91とフラッシングボックス114とが一体となってX軸方向に移動可能となっている。
【0028】
重量測定機構91は、複数のキャリッジユニット21に搭載された複数の液滴吐出ヘッド62によって吐出描画可能な描画領域31に沿ってY軸方向に配設されている。重量測定時には、各キャリッジユニット21が描画領域31における配列状態を維持して重量測定領域33に配置される。
【0029】
X軸テーブル22をY軸方向に外れた位置には、液滴吐出ヘッド62のメンテナンスを行うメンテナンス機構12が設けられている。Y軸テーブル23は、X軸テーブル22に直交して延設されており、描画領域31に配列した複数のキャリッジユニット21をメンテナンス機構12が設けられたメンテナンス領域32に移動させる。
【0030】
メンテナンス機構12は、液滴吐出ヘッド62内で増粘した液状体を吸引除去する吸引ユニット111と、吸引除去等によって液滴吐出ヘッド62の表面(ノズル面)に付着した液状体や異物をワイピングシート112aにより拭き取りを行うワイピングユニット112とを備えている。
【0031】
吸引ユニット111は、複数(7つ)のキャリッジユニット21に対応してY軸方向に複数配列して設けられている。各吸引ユニット111とワイピングユニット112とがアングル架台118上に配設されている。
【0032】
メンテナンス機構12は、上記各吸引ユニット111とワイピングユニット112とにより、複数のヘッドユニット61に搭載された複数の液滴吐出ヘッド62のノズル目詰まり等、吐出機能を回復させる装置である。
【0033】
図2は、液滴吐出装置の構造を示す概略側面図である。詳しくは、メンテナンス機構12側から見た側面図である。
【0034】
X軸テーブル22は、基台40と、基台40上に配設された一対のX軸ガイドレール45と、一対のX軸ガイドレール45に並設された一対のX軸リニアモータ(図示省略)とを備えている。一対のX軸ガイドレール45によりガイドされ、X軸リニアモータによってX軸方向にスライド自在に移動するX軸スライダ44,47と、X軸スライダ44により支持されたテーブル支持部43と、X軸スライダ47によって支持された重量測定機構支持部46とを備えている。
【0035】
テーブル支持部43には、基板Wを吸着(エアー吸引)セットする吸着テーブル41と、吸着テーブル41を介して基板Wのθ位置を微調整するθ軸テーブル42とが配設されている。一対のX軸リニアモータを駆動すると、一対のX軸ガイドレール45によりガイドされたX軸スライダ44がX軸方向に移動して、吸着テーブル41にセットされた基板WをX軸方向に移動させることができる。
【0036】
また、吸着テーブル41には、図示しないが、X軸方向に一対のX軸幅寄せ機構が、Y軸方向に一対のY軸幅寄せ機構が設けられており、セットした基板Wを位置決め(プリアライメント)できるようになっている。セットされた基板Wは、Y軸テーブル23等に設けられたワーク認識カメラ(図示省略)により画像認識されて最終的に位置決めされる。
【0037】
重量測定機構支持部46には、重量測定機構91とフラッシングボックス114とが並列して配設されている。一対のX軸リニアモータを駆動すると、一対のX軸ガイドレール45によりガイドされたX軸スライダ47がX軸方向に移動して、重量測定機構91とフラッシングボックス114とをヘッドユニット61を臨む位置に移動させることができる。言い換えれば配列を維持したまま複数のヘッドユニット61(キャリッジユニット21)を重量測定領域33またはフラッシング領域34に配置することができる。
【0038】
図1および図2に示すように、液滴吐出ヘッド62の吐出機能を安定化させるため、X軸テーブル22には、Y軸方向に配列した複数のキャリッジユニット21に対応して設けられたフラッシングボックス114のほかに、吸着テーブル41のX軸方向の両端部に設けられた2つの描画前フラッシングボックス115を備えている。
【0039】
図2に示すように、重量測定機構91とフラッシングボックス114は、その上面が吸着テーブル41の上面とほぼ同じ高さとなるように重量測定機構支持部46に配設されている。同様に上記描画前フラッシングボックス115もその上面が吸着テーブル41の上面とほぼ同じ高さとなるように吸着テーブル41に配設されている。
【0040】
液滴吐出ヘッド62のすべてのノズル85(図3参照)から液状体をフラッシングボックス114や描画前フラッシングボックス115に向けて、定期的あるいは描画前に吐出するフラッシングを行うことによりノズル85内の液状体のメニスカスを安定化させる。
【0041】
一方、Y軸テーブル23は、基台40から立設した一対の支持スタンド56と、一対の支持スタンド56上に架け渡された一対の柱状支持部材55と、一対の柱状支持部材55に併設された一対のY軸リニアモータ54とを備えている。一対の柱状支持部材55上には、一対のY軸ガイドレール53と、一対のY軸ガイドレール53にガイドされ、Y軸リニアモータ54によってY軸方向に自在に移動するY軸スライダ52とが設けられている。
【0042】
Y軸スライダ52は、各キャリッジユニット21に対応して複数設けられ、メインキャリッジ63が吊設されたブリッジプレート51を支持している。すなわち、7つのブリッジプレート51がそれぞれ独立したY軸スライダ52に支持されている。
【0043】
Y軸リニアモータ54を駆動すると、一対のY軸ガイドレール53によりガイドされたY軸スライダ52がY軸方向に移動して、ブリッジプレート51に吊設されたメインキャリッジ63をY軸方向に移動させることができる。
【0044】
メインキャリッジ63は、ヘッドユニット61を支持するキャリッジ本体66と、キャリッジ本体66を吊設すると共に、キャリッジ本体66の上部に連結され、キャリッジ本体66を介して、ヘッドユニット61のθ位置をモータ駆動で微調整可能なヘッドθ軸テーブル67と、ヘッドθ軸テーブル67の上部に連結され、ヘッドθ軸テーブル67およびキャリッジ本体66を介して、ヘッドユニット61のZ軸方向の位置をモータ駆動で微調整可能なヘッドZ軸テーブル68とを有している。
【0045】
このような液滴吐出装置1は、ヘッパユニット6を上部に備えたチャンバ5に収容され、その内部が所定のクリーン度、温度、湿度となるように空調された状態で用いられる。
【0046】
図3は、液滴吐出ヘッドを示す概略図である。同図(a)は斜視図、同図(b)はノズルプレートを示す平面図である。
【0047】
図3(a)に示すように、液滴吐出ヘッド62は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針72を有する液導入部71と、液導入部71に連なるヘッド基板73と、液導入部71の上方に連なり、内部に液状体が満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体74とを備えている。接続針72は、圧力調整弁を介して液状体が貯留されたタンクに接続され、液滴吐出ヘッド62のヘッド内流路に液状体が供給される。また、ヘッド本体74は、圧電素子等で構成されたキャビティ81と、ノズル面82aに複数のノズル85からなる2本のノズル列84が形成されたノズルプレート82とを有している。また、ヘッド基板73には、2連のコネクタ75が設けられており、各コネクタ75は、フレキシブルフラットケーブルを介してヘッドドライバ131(図6参照)に接続されている。ヘッドドライバ131は、圧電素子に駆動電圧を与えてキャビティ81の体積を変化させる。これによりキャビティ81に充填された液状体を加圧し、ノズル85から液状体を液滴として吐出する。
【0048】
図3(b)に示すように、各ノズル列84の長さは、例えば1インチ(略25.4mm)であって、各ノズル列84は180個のノズル85が等しいピッチP1(略140μm)で並べられて構成されている。この場合、一方のノズル列84は、他方のノズル列84に対して、ノズル列方向に半ピッチ(70μm)分ずれて設けられている。よって、各ノズル列方向と直交する方向から見ると360個のノズル85がノズルピッチP2で配列した状態となっている。この場合、2つのノズル列84から吐出された液滴のドット密度(解像度)は360dpiである。
【0049】
このような液滴吐出ヘッド62は、圧電素子を備えたものに限らず、液状体を加圧するエネルギー発生手段として、振動板を静電吸着することによって振動させる電気機械変換素子や、液状体を加熱する発熱素子を備えたものでもよい。
【0050】
図4は、ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。詳しくは、X軸テーブル22側から見た平面図である。
【0051】
図4に示すように、ヘッドユニット61には、合計12個の液滴吐出ヘッド62が搭載されている。X軸方向から見て6個の液滴吐出ヘッド62が階段状に配列した2つのヘッド群62L,62Rを構成している。各ヘッド群62L,62Rは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の着色層形成材料を含む液状体が充填された3つの液滴吐出ヘッド62がRGBの順に並列している。そして、例えば、赤色(R)の液状体が充填された各ヘッドR1,R2,R3,R4のノズル列84が、X軸方向から見て1ノズルピッチP2を置いてY軸方向に並んでいる。他の緑色(G)、青色(B)においても同様である。また、異なる色の液状体が充填されたヘッドR2とヘッドG2、ヘッドG2とヘッドB2とにおいて、ノズル列84がノズル列84の全長の1/3の距離でY軸方向に互いにずれた状態で配置されている。
【0052】
したがって、同色の液状体をY軸方向において、連続的に吐出可能ないわゆる描画幅は、この場合、(P2×359×4)+(P2×3)=100730μm、およそ100mmである。
【0053】
次に、図5に基づいて重量測定機構91について説明する。図5(a)は重量測定機構を示す概略側面図、同図(b)は概略平面図である。
【0054】
図5(a)および(b)に示すように、重量測定機構91は、支持プレート97上に配設された14個の重量測定装置としての電子天秤95と、各電子天秤95ごとに設けられた第1液滴受け部94と、第2液滴受け部92とを備えている。電子天秤95は第1液滴受け部94に吐出された液状体の重量を計測可能となっている。
【0055】
第1液滴受け部94は、受け皿状となっており吐出された液状体を吸収する吸収体96が敷設されている。
【0056】
第2液滴受け部92は、支持プレート97の四隅から立設した支柱に支えられた受け皿状となっている。また、図5(b)に示すように、第1液滴受け部94を囲む開口部92aを有している。そして、各第1液滴受け部94を囲むように同じく吸収体93が敷設されている。吸収体93は、その上面が吸収体96の上面とほぼ同じ高さとなるように敷設されている。このような吸収体93,96としては、例えば、多孔質の発泡プラスチックが用いられる。
【0057】
このような第1液滴受け部94および第2液滴受け部92は、これらに対向するヘッドユニット61に搭載された液滴吐出ヘッド62の配置に基づいて設計されている。すなわち、図5(b)に示す第1液滴受け部94の大きさ(平面積)は、液滴吐出ヘッド62のノズル面82a(図3参照)と十分に対向可能な大きさとなっている。また、第2液滴受け部92の大きさ(平面積)は、測定対象の液滴吐出ヘッド62と第1液滴受け部94とが対向するように7つのヘッドユニット61(キャリッジユニットCA1〜CA7)と重量測定機構91とを相対配置させたときに、測定対象以外の液滴吐出ヘッド62と第2液滴受け部92とが必ず対向するように設計されている。
【0058】
次に、図6を参照して、液滴吐出装置1全体の制御系について説明する。図6は、液滴吐出装置の制御系を示すブロック図である。図6に示すように、液滴吐出装置1の制御系は、基本的に、上位コンピュータ2と、液滴吐出ヘッド62、X軸テーブル22、Y軸テーブル23、メンテナンス機構12、重量測定機構91等を駆動する各種ドライバを有する駆動部121と、駆動部121を含め液滴吐出装置1全体を統括制御する制御部122(コントローラ13)とを備えている。
【0059】
上位コンピュータ2は、コントローラ13に接続されたコンピュータ本体に、キーボードや、キーボードによる入力結果等を画像表示するディスプレイ等が接続されて構成されている。
【0060】
駆動部121は、液滴吐出ヘッド62を吐出駆動制御するヘッドドライバ131と、X軸テーブル22およびY軸テーブル23の各リニアモータをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ132と、メンテナンス機構12の吸引ユニット111、ワイピングユニット112およびユニット昇降機構を駆動制御するメンテナンス用ドライバ133と、重量測定機構91の電子天秤95を制御する重量測定用ドライバ134とを備えている。
【0061】
制御部122は、CPU141と、ROM142と、RAM143と、P−CON144とを備え、これらは互いにバス145を介して接続されている。ROM142は、CPU141で処理する制御プログラム等を記憶する制御プログラム領域と、描画動作や重量測定を行うための制御データ等を記憶する制御データ領域を有している。
【0062】
RAM143は、各種レジスタ群のほか、基板Wに液状体の吐出を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、基板Wおよびヘッドユニット61の設計位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。なお、ヘッドユニット61の設計位置データとは、描画処理の直前に記憶されている位置データのことであり、液滴吐出装置1の設計時(新設時)における位置データのほか、ヘッドユニット61の更新後の位置データをも含む概念である。
【0063】
P−CON144には、駆動部121の各種ドライバのほか、基板Wの位置を認識するカメラ等が接続されており、CPU141の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON144は、上位コンピュータ2からの各種指令等をそのままあるいは加工してバス145に取り込むと共に、CPU141と連動して、CPU141等からバス145に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部121に出力する。
【0064】
そして、CPU141は、ROM142内の制御プログラムに従って、P−CON144を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM143内の各種データ等を処理した後、P−CON144を介して駆動部121等に各種の制御信号を出力することにより、液滴吐出装置1全体を制御している。例えば、CPU141は、液滴吐出ヘッド62、X軸テーブル22およびY軸テーブル23を制御して、所定の液滴吐出条件および所定の移動条件で、液滴吐出ヘッド62から基板Wに液状体を液滴として吐出する描画を行う。
【0065】
また、CPU141は、X軸テーブル22を制御して重量測定機構91を移動させ、複数のキャリッジユニット21を重量測定領域33に配置し、ヘッドユニット61に搭載された液滴吐出ヘッド62から第1液滴受け部94に液状体を液滴として吐出させる。そして、電子天秤95によって計測された液状体の重量に基づいて液滴の吐出量を演算する。この演算結果に基づいて各液滴吐出ヘッド62の圧電素子を駆動する駆動電圧を制御して、適正な量の液滴を吐出させる。より具体的な重量測定方法および液状体の吐出方法は後述する。
【0066】
このような液滴吐出装置1における重量測定機構91の配置は、複数のキャリッジユニット21が描画領域31に配列して液状体の吐出描画を行うときの環境条件や液滴吐出ヘッド62の駆動条件と、複数のキャリッジユニット21を重量測定領域33に配置して測定対象の液滴吐出ヘッド62から液状体を吐出するときの環境条件や駆動条件とがほぼ同一となるように考慮してなされた。
【0067】
次に、本実施形態の重量測定方法および液状体の吐出方法について、複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法を例に説明する。
【0068】
まず、カラーフィルタが用いられた電気光学装置の一つである液状表示装置について説明する。図7は、液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図である。
【0069】
図7に示すように、液晶表示装置500は、TFT(Thin Film Transistor)透過型の液晶表示パネル520と、液晶表示パネル520を照明する照明装置516とを備えている。液晶表示パネル520は、着色層としてのカラーフィルタ505を有する対向基板501と、画素電極510に3端子のうちの1つが接続されたTFT素子511を有する素子基板508と、両基板501,508によって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。また、液晶表示パネル520の外面側となる両基板501,508の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板514と下偏光板515とが配設される。
【0070】
対向基板501は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に隔壁部504によってマトリクス状に区画された複数の着色領域に複数色の着色層としてRGB3色のカラーフィルタ505R,505G,505Bがストライプ状に形成されている。隔壁部504は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク502と、下層バンク502の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク503とにより構成されている。また対向基板501は、隔壁部504とカラーフィルタ505R,505G,505Bとを覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)506と、OC層506を覆うように形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向電極507とを備えている。カラーフィルタ505R,505G,505Bは後述するカラーフィルタの製造方法を用いて製造されている。
【0071】
素子基板508は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜509を介してマトリクス状に形成された画素電極510と、画素電極510に対応して形成された複数のTFT素子511とを有している。TFT素子511の3端子のうち、画素電極510に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極510を囲むように格子状に配設された走査線512とデータ線513とに接続されている。
【0072】
照明装置516は、光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源からの光を液晶表示パネル520に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
【0073】
尚、液晶を挟む対向基板501と素子基板508の表面には、液晶の分子を所定の方向に配列させるための配向膜がそれぞれ形成されているが、図示省略した。また、上下偏光板514,515は、視角依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。液晶表示パネル520は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin Film Diode)素子を有したものでもよく、さらには、少なくとも一方の基板にカラーフィルタを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。
【0074】
(カラーフィルタの製造方法)
図8は、カラーフィルタの製造方法を示す概略図である。本実施形態のカラーフィルタの製造方法は、上記液滴吐出装置1を用い後述する液状体の吐出方法を適用した。なお、図8において、破線で示した各液滴吐出ヘッド62のY軸方向の幅は、有効ノズルから液状体を吐出可能な領域の幅を示すものである。
【0075】
図8に示すように、上記液滴吐出装置1において、Y軸方向に配列した複数のヘッドユニット61に対して、RGB3色の着色領域Aのストライプ方向が平行となるように、基板Wを吸着テーブル41にセットして位置決めする。
【0076】
例えば、ヘッドユニット61のヘッドR1のY軸方向の端が、基板Wの赤色(R)の着色領域Aの端と一致するように位置決めする。
【0077】
そして、X軸テーブル22を駆動し、複数のヘッドユニット61に対して基板WをX軸方向に相対移動させる間に、各ヘッドユニット61に搭載された各液滴吐出ヘッド62から着色領域Aに向けて着色層形成材料を含む液状体を液滴として吐出する。
【0078】
前述したように、各ヘッドユニット61には、X軸方向から見て同色の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド62がY軸方向に4つ並んでいる。よって、同色の液状体をY軸方向に吐出可能な描画幅Eが連続するように、描画領域31にヘッドユニット61を配列すれば、基板Wの幅に対応して同色の液状体を隙間を空けることなく付与することができる。当然のことながら着色領域Aの端付近では、赤色(R)以外の緑色(G)や青色(B)に対応する着色領域Aに液状体が付与されない領域が発生する。よって、複数のヘッドユニット61をY軸方向に移動させる副走査を行ってから、再び液滴を吐出する主走査を行うようにすれば、すべての着色領域Aに所望の色の液状体を付与することができる。
【0079】
(液状体の吐出方法)
次に、本実施形態の重量測定方法を適用した液状体の吐出方法について図9に基づいて説明する。図9は、液状体の吐出方法を示すフローチャートである。
【0080】
図9に示すように、本実施形態の液状体の吐出方法は、複数のキャリッジユニット21と重量測定機構91とを対向配置する配置工程(ステップS1)と、液滴吐出ヘッド62ごとに吐出される液状体の重量を計測する計測工程(ステップS2)と、吐出された液状体の重量について判定する判定工程(ステップS3)と、メンテナンス工程(ステップS4)とを備えている。ここまでが本実施形態の重量測定方法に該当する。さらに、各液滴吐出ヘッド62から吐出される液滴の吐出量を調整する調整工程(ステップS5)と、ワークとしての基板Wの着色領域Aに各液滴吐出ヘッド62から着色層形成材料を含む液状体を吐出描画する描画工程としての吐出工程(ステップS6)とを備えている。
【0081】
図9のステップS1は配置工程である。ステップS1では、制御部122は、X軸リニアモータを駆動し、重量測定機構91が複数のキャリッジユニット21を臨むように重量測定機構支持部46を移動させる。これにより、複数のキャリッジユニット21を描画領域31における配列状態を維持して重量測定領域33に配置する。そして、ステップS2へ進む。
【0082】
図9のステップS2は計測工程である。ステップS2では、制御部122は、ROM142に格納された重量測定の制御プログラムと制御データに基づいて重量測定を行う。まず、液状体を受ける前の第1液滴受け部94の重量を計測する。この時点で、重量を「ゼロ」として電子天秤95をリセットしてもよい。次に、測定対象の液滴吐出ヘッド62から予め設定された吐出数の液滴を第1液滴受け部94に吐出する。吐出数の設定は、電子天秤95の最小計量単位を考慮して制御データに含める。この場合、電子天秤95の最小計量単位は1mgである。一方、吐出される液滴はngレベルであるため、測定可能な液状体の量となるように吐出数を数千から1万程度に設定して液滴吐出ヘッド62を駆動し、各ノズル85から液状体を液滴として吐出する。
【0083】
本実施形態の計測工程では、ノズル列84ごとに吐出された液状体の重量を計測する。その理由としては、図3に示したように、液滴吐出ヘッド62は、2連のノズル列84とこれに対応する2連の接続針72を備え、ヘッド本体74の内部にノズル列84ごとに異なる液状体共通流路を有している。よって、液状体共通流路の違いによるノズル列84ごとの液滴の吐出量の変動を考慮した。したがって、一方のノズル列84から計測用に液状体の吐出を行って第1液滴受け部94の重量を計測し、測定結果を制御部122のRAM143に記憶させる。その後に、他方のノズル列84から計測用に液状体の吐出を行って重量を計測し、同様に測定結果をRAM143に記憶させる。なお、上記吐出数は、ノズル数180と吐出回数とを掛け合わせたものである。
【0084】
さらに、計測工程では、測定対象以外の液滴吐出ヘッド62からも第2液滴受け部92に向けて同時に液滴を吐出した。これにより、事前に液滴の吐出状態を安定化しておき重量測定に臨むことができる。以上の動作は、キャリッジユニット21に搭載されたすべての液滴吐出ヘッド62に対応して繰り返される。
【0085】
この場合、図5に示すように、重量測定機構91には、各キャリッジユニット21に対応してそれぞれ2つの第1液滴受け部94が配設されている。よって、2連のノズル列84に対応して少なくとも12回の重量測定を行う。制御部122は、複数のキャリッジユニット21と重量測定機構91とを相対移動させることにより、測定対象の液滴吐出ヘッド62を選択して第1液滴受け部94と対向させ液滴を吐出させる。また、このとき、吐出された液滴が第1液滴受け部94以外に飛散しないように、各キャリッジユニット21(図中ではキャリッジユニットCA1〜CA7として示した)のヘッドZ軸テーブル68を駆動して液滴吐出ヘッド62のノズル面82aと吸収体96の上面との間隔がおよそ0.5mm〜1.0mmとなるように調整することが好ましい。そして、ステップS3へ進む。
【0086】
図9のステップS3は、判定工程である。ステップS3では、計測工程で得られた各液滴吐出ヘッド62のノズル列84ごとに吐出された液状体の重量と、当該ノズル列84から吐出しようとする所望の液状体の重量とを比較して、その差が所定の範囲内に入っているか否かを判定する。図3に示したように、1つのノズル列84には、ノズル85が180個配列しており、このうちいくつかが目詰まり等で吐出されなかったり、液滴の吐出量が変動していたりすると、結果的に実際の吐出描画時を反映した適正な液状体の重量を計測することができない。よって、所定の範囲を外れた場合には、ステップS4のメンテナンス工程に進んで、各液滴吐出ヘッド62のメンテナンスを行う。具体的には、制御部122は、Y軸テーブル23を駆動して各キャリッジユニット21をメンテナンス領域32に移動させ、吸引ユニット111、ワイピングユニット112を稼動してヘッドユニット61に搭載された各液滴吐出ヘッド62の吐出機能を回復させる。
【0087】
ステップS4のメンテナンス工程が終了したなら、再びステップS1〜ステップS3を行う。ステップS3の判定工程で問題がなければ、ステップS5へ進む。
【0088】
図9のステップS5は、調整工程である。ステップS5では、まず、計測して得られた各液滴吐出ヘッド62のノズル列84ごとに有効とした液状体の重量を吐出数で除して、1吐出あたりの液滴の吐出量を算出する。なお、このような演算は、CPU141がRAM143に記憶された測定結果を基に実行する。そして、この液状体の重量情報(1吐出あたりの液滴の吐出量)を基に、液滴吐出ヘッド62ごとに吐出される液滴の吐出量を調整する。調整方法としては、液滴吐出ヘッド62の圧電素子に印加される駆動波形において、実効的な駆動電圧を変える方法が挙げられる。また、駆動波形における急峻性を変える方法でも液滴の吐出量を変えることが可能である。この場合、3色の異なる液状体ごとに液滴の吐出量が所望の値となるように液滴吐出ヘッド62ごと且つノズル列84ごとに駆動電圧の調整を実施した。なお、各液滴吐出ヘッド62において、上記液滴の吐出量がほぼ所望の値ならば、当然のことながら駆動電圧の調整を行わなくてもよい。そして、ステップS6へ進む。
【0089】
図9のステップS6は、基板Wの着色領域Aに液状体を液滴として吐出描画する吐出工程である。ステップS6では、基板Wと複数のキャリッジユニット21とを対向配置して相対移動させる間に、複数の液滴吐出ヘッド62から液状体を液滴として吐出する。調整工程において、液滴の吐出量が液滴吐出ヘッド62ごと且つノズル列84ごとに調整されているので、適正な量の液状体を色ごとに着色領域Aに付与することが可能である。
【0090】
次に、吐出描画された液状体を固化する固化工程を経ることにより、3色のカラーフィルタ505R,505G,505Bを形成する。着色層形成材料を含む液状体を固化する方法としては、液状体中の溶媒成分を均一に乾燥させることが可能な減圧乾燥方法を用いることが望ましい。
【0091】
本実施形態のカラーフィルタの製造方法は、上記液状体の吐出方法を用いているので、各液滴吐出ヘッド62から吐出される液状体の重量が、複数のキャリッジユニット21が描画領域31に配列した状態で適正に測定される。そして、基板Wの着色領域Aに吐出される液滴の吐出量が3色の液状体ごとに適正な量となるように予め液滴吐出ヘッド62のノズル列84ごとに調整されている。したがって、着色領域Aに必要な量の液滴が安定して付与される。付与された液状体を乾燥して固化すれば、着色領域Aに所望の膜厚を有するRGB3色の着色層を形成することができる。このようにして製造されたカラーフィルタ505を備える液晶表示装置500は、所望の光学特性が実現された高い表示品質を有している。
【0092】
上記実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態の液滴吐出装置1は、X軸テーブル22を駆動制御することによって、描画領域31に配列した状態のままの複数のキャリッジユニット21と重量測定機構91とを対向配置することができる。したがって、実際に基板Wに対して液状体を吐出する際の複数のキャリッジユニット21の配列を変えることなく、搭載された複数の液滴吐出ヘッド62から吐出される液状体の重量を測定することができる。すなわち、複数のキャリッジユニット21を分割して重量測定を行う場合に比べて、実際に液状体を吐出描画するキャリッジユニット21の配列状態で液状体の重量を適正に測定することが可能な重量測定機構91を備えた液滴吐出装置1を提供することができる。
【0093】
(2)上記実施形態の液滴吐出装置1において、重量測定機構91は、各キャリッジユニット21のヘッドユニット61における2つのヘッド群62L,62Rの配置に応じて14個の電子天秤95を備えている。したがって、各ヘッドユニット61に搭載された12個の液滴吐出ヘッド62から吐出される液状体の重量を効率的に測定することができる。
【0094】
(3)上記実施形態の液滴吐出装置1において、重量測定機構91は、測定用の液状体を受ける第1液滴受け部94と、第1液滴受け部94を囲む第2液滴受け部92とを備えている。したがって、測定対象の液滴吐出ヘッド62から液状体を吐出すると同時に、測定対象以外の液滴吐出ヘッド62からも液状体を吐出させ、これを受けることができる。ゆえに、測定対象の液滴吐出ヘッド62のみを駆動して液状体を吐出する場合に比べて、事前に液滴の吐出状態を安定化しておき重量測定に臨むことができる。
【0095】
(4)上記実施形態の液状体の吐出方法は、上記液滴吐出装置1を用い、計測工程では、描画領域31に配列した複数のキャリッジユニット21と重量測定機構91とを対向配置し、各液滴吐出ヘッド62のノズル列84ごとに設定された吐出数で液滴を吐出して、吐出された液状体の重量を測定する。得られた液状体の重量と所望の液状体の重量との差が所定の範囲に入っていなければ各液滴吐出ヘッド62のメンテナンスを行って再重量測定を行う。そして、調整工程では、有効な液状体の重量情報(1吐出あたりの液滴の吐出量)を基に、各液滴吐出ヘッド62から吐出される液滴の吐出量が所定の吐出量となるように駆動条件を変更して調整する。したがって、吐出工程では、基板Wの所望の領域に各液滴吐出ヘッド62から適正な量の液滴を吐出して描画することができる。
【0096】
(5)上記実施形態の液状体の吐出方法において、計測工程では、測定対象以外の液滴吐出ヘッド62からも第2液滴受け部92に向けて液状体を吐出する。したがって、事前に液滴の吐出状態を安定化しておき重量測定に臨むことができる。
【0097】
(6)上記実施形態のカラーフィルタの製造方法は、上記実施形態の液状体の吐出方法を適用しているので、各液滴吐出ヘッド62から色ごとに適正な量の液状体を液滴として着色領域Aに吐出描画することができる。吐出された液状体を固化すれば、所望の膜厚を有する3色の着色層を備えたカラーフィルタを製造することができる。この方法で製造されたカラーフィルタを用いれば、所望の光学特性を有した高い表示品質を有する液晶表示装置500を提供することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0099】
(変形例1)上記実施形態の液滴吐出装置1において、複数のキャリッジユニット21の配置はこれに限定されない。図10は、変形例のキャリッジユニットおよび重量測定機構の配置を示す概略図である。例えば、図10に示すように、複数のキャリッジユニット21をY軸方向に千鳥状に配置し、これに対応するように電子天秤95、第2液滴受け部92などが配置された重量測定機構91としてもよい。これによれば、キャリッジユニット21がY軸方向に隣接しないため、キャリッジユニット21間の放熱等による液状体の吐出への影響を低減して重量測定および実際の吐出描画を行うことができる。
【0100】
(変形例2)上記実施形態の液滴吐出装置1において、ヘッドユニット61に搭載される複数の液滴吐出ヘッド62の配置は、これに限定されない。液滴吐出装置1は、重量測定機構91を独立してX軸方向に移動可能なX軸テーブル22と、キャリッジユニット21を独立してY軸方向に移動可能なY軸テーブル23とを備えている。したがって、ヘッドユニット61に対して少なくともノズル列84がY軸方向と平行するように複数の液滴吐出ヘッド62が配置されていれば、測定対象の液滴吐出ヘッド62と第1液滴受け部94とを対向配置させて重量測定することができる。
【0101】
(変形例3)上記実施形態の液滴吐出装置1の重量測定機構91において、重量測定装置としての電子天秤95の数は、14個に限定されない。例えば、電子天秤95を各ヘッドユニット61の一方のヘッド群62Lに対応してY軸方向に半数の7個配列させてもよい。他方のヘッド群62Rに含まれる液滴吐出ヘッド62を測定対象とする場合には、各キャリッジユニット21をY軸方向に移動すればよい。このようにすれば、測定回数が増加するものの、装置の構成を簡略化することが可能である。
【0102】
(変形例4)上記実施形態の液状体の吐出方法において、判定工程とメンテナンス工程は必須ではない。例えば、これらの工程を削除しても、効果が期待できる。
【0103】
(変形例5)上記カラーフィルタの製造方法において、3色の着色層の配置は、ストライプ方式に限定されない。例えば、モザイク方式、デルタ方式の配置においても対応が可能である。また、着色層は3色に限定されない。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色に他の色を加えた多色としてもよい。
【0104】
(変形例6)上記実施形態の液状体の吐出方法を適用可能なデバイスの製造方法は、カラーフィルタの製造方法に限定されない。例えば、液晶表示装置500において、液晶を配向させる配向膜や液晶そのものの塗布にも適用することができる。さらには、隔壁部により区画形成された領域に発光材料を含む液状体を塗布して有機EL発光層を形成する方法にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】液滴吐出装置の構造を示す概略平面図。
【図2】液滴吐出装置の構造を示す概略側面図。
【図3】(a)は液滴吐出ヘッドを示す概略斜視図、(b)はノズルプレートを示す概略平面図。
【図4】ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図5】(a)は重量測定機構を示す概略側面図、(b)は概略平面図。
【図6】液滴吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図7】液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図。
【図8】カラーフィルタの製造方法を示す概略図。
【図9】液状体の吐出方法を示すフローチャート。
【図10】変形例のキャリッジユニットおよび重量測定機構の配置を示す概略図。
【符号の説明】
【0106】
1…液滴吐出装置、21…キャリッジとしてのキャリッジユニット、22…主走査移動機構としてのX軸テーブル、31…描画領域、33…重量測定領域、62…吐出ヘッドとしての液滴吐出ヘッド、92…第2液滴受け部、94…第1液滴受け部、95…重量測定装置としての電子天秤、505R,505G,505B…カラーフィルタ、A…着色領域、W…ワークとしての基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと吐出ヘッドとを対向させて相対移動させる主走査に伴って、前記ワーク上に前記吐出ヘッドから液状体を液滴として吐出描画する液滴吐出装置であって、
複数の前記吐出ヘッドが搭載された複数のキャリッジと、
前記吐出ヘッドごとに吐出された液状体の重量を測定する重量測定機構と、
前記重量測定機構と前記ワークとをそれぞれ独立して前記主走査の方向に移動させる主走査移動機構とを備え、
前記重量測定機構が前記複数のキャリッジに搭載された前記複数の前記吐出ヘッドによって吐出描画可能な描画領域に沿って前記主走査の方向と直交する方向に配設されたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記重量測定機構には、前記複数のキャリッジに対応して少なくとも同数の重量測定装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記重量測定機構には、前記複数のキャリッジごとに設けられ少なくとも1つの前記吐出ヘッドから吐出される前記液滴を受けることが可能な第1液滴受け部と、
前記複数のキャリッジに搭載された前記複数の吐出ヘッドの配置に対応して、前記第1液滴受け部を囲うように設けられた第2液滴受け部と、を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
複数のキャリッジに搭載された複数の吐出ヘッドから吐出される液状体の重量を測定する重量測定方法であって、
前記複数のキャリッジを描画領域における配列状態を維持して重量測定領域に配置する配置工程と、
前記複数のキャリッジに搭載された各吐出ヘッドから前記液状体を液滴として吐出し、前記各吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量を計測する計測工程と、
を備えたことを特徴とする重量測定方法。
【請求項5】
前記計測工程では、計測可能となる吐出数を設定して前記液滴を吐出することを特徴とする請求項4に記載の重量測定方法。
【請求項6】
前記計測工程で得られた前記各吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量と、前記吐出ヘッドから吐出しようとする所望の液状体の重量とを比較して、その差が所定の範囲内に入っているか否かを判定する判定工程をさらに備え、
前記判定工程で否となった場合には、前記各吐出ヘッドのメンテナンスをするメンテナンス工程を行うことを特徴とする請求項5に記載の重量測定方法。
【請求項7】
前記計測工程では、前記複数の吐出ヘッドのうち測定対象以外の前記吐出ヘッドからも前記液滴を吐出することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか一項に記載の重量測定方法。
【請求項8】
複数のキャリッジに搭載された複数の吐出ヘッドから液状体をワークに対して吐出描画する液状体の吐出方法であって、
前記複数のキャリッジを描画領域における配列状態を維持して重量測定領域に配置する配置工程と、
前記複数のキャリッジに搭載された各吐出ヘッドから前記液状体を液滴として吐出し、前記各吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量を計測する計測工程と、
前記計測工程で得られた前記液状体の重量情報を基に、前記各吐出ヘッドから吐出される前記液滴の吐出量を調整する調整工程と、
前記ワークの所望の領域に前記各吐出ヘッドから前記液滴を吐出描画する吐出工程と、を備えたことを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項9】
前記計測工程では、計測可能となる吐出数を設定して前記液滴を吐出することを特徴とする請求項8に記載の液状体の吐出方法。
【請求項10】
前記計測工程で得られた前記各吐出ヘッドごとに吐出された前記液状体の重量と、前記吐出ヘッドから吐出しようとする所望の液状体の重量とを比較して、その差が所定の範囲内に有るか否かを判定する判定工程をさらに備え、
前記判定工程で否となった場合には、前記各吐出ヘッドのメンテナンスをするメンテナンス工程を行うことを特徴とする請求項9に記載の液状体の吐出方法。
【請求項11】
前記計測工程では、前記複数の吐出ヘッドのうち測定対象以外の前記吐出ヘッドからも前記液滴を吐出することを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法。
【請求項12】
基板上に区画形成された複数の着色領域に少なくとも3色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項8ないし11のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法を用い、少なくとも3色の着色層形成材料を含む液状体を前記複数の着色領域に吐出描画する描画工程と、
吐出描画された前記液状体を固化して、前記少なくとも3色の着色層を形成する固化工程とを備えたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−104916(P2008−104916A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288370(P2006−288370)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】