説明

液状エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【解決手段】 (A)液状エポキシ樹脂、
(B)下記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂、
【化1】


(式中、R1、R2は水素原子又はメチル基である。)
(C)マイクロカプセル型硬化促進剤
を必須成分とすることを特徴とする液状エポキシ樹脂組成物。
【効果】 本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、保存性を維持しつつ硬化時間を短縮することができる。また、シリコンチップの表面やソルダーレジストとの密着性に優れた硬化物を与え、125℃以下での硬化温度で硬化させても吸湿後、半田特性に優れ、更にPCT(120℃/2.1atm)などの高温多湿の条件下でも劣化せず、−65℃/150℃の温度サイクルにおいて数百サイクルを超えても剥離、クラックが起こらない半導体装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用として好適で、シリコンチップの素子表面(特に感光性ポリイミド、窒化膜、酸化膜)やソルダーレジストとの密着性が非常に良好であり、耐湿性の高い硬化物を与え、特に温度サイクル性に対して優れた封止材となり得る液状エポキシ樹脂組成物、及びこの組成物にて封止された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の小型化、軽量化、高機能化に伴い、半導体の実装方法もピン挿入タイプから表面実装が主流になっている。また、半導体素子の高集積化に伴い、ダイサイズの一辺が10mmを超えるものもあり、ダイサイズの大型化が進んできている。このような大型ダイを用いた半導体装置では、温度サイクル時にダイと封止材にかかる応力が増大し、封止材とダイ及び基板の界面での剥離、基板実装時にパッケージにクラックが入るといった問題がクローズアップされてきている。
【0003】
これらの要求を満たす材料として、液状エポキシ樹脂/アルキル置換芳香族ジアミン系の液状封止樹脂が提案されている(特許文献1:特開平9−176287号公報、特許文献2:特開平9−176294号公報参照)。この材料は、基板、金属、ソルダーレジスト等との接着性に優れ、更に耐リフロー性、耐温度サイクルクラック性に優れ、高信頼性パッケージを可能としている。
【0004】
しかし、上記の樹脂系は硬化時間が長く(150℃/3時間)、パッケージ生産性という観点からは問題であった。更に、BGA型半導体装置やベアチップなどを直接マザーボードに接続する場合、接続する半導体自体や他の部品が高熱に対する抵抗力がなく、125℃より高い温度では使用できない半導体装置が広く用いられるようになり、従来の熱硬化性エポキシ樹脂組成物で満足のゆく材料は皆無であった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−176287号公報
【特許文献2】特開平9−176294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来に比べて低い温度で短時間に硬化が可能であり、シリコンチップの表面やソルダーレジストとの密着性に優れ、かつ強靭性に優れた硬化物を与え、リフローの温度が従来温度240℃付近から260〜270℃に上昇しても不良が発生せず、更にPCT(120℃/2.1atm)などの高温多湿の条件下でも劣化せず、−65℃/150℃の温度サイクルにおいて数百サイクルを超えても剥離、クラックが発生しない半導体装置の封止材となり得る液状エポキシ樹脂組成物、及びこの組成物の硬化物で封止された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)液状エポキシ樹脂、(B)下記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂、
【化1】

(式中、R1、R2は水素原子又はメチル基である。)
(C)マイクロカプセル型硬化促進剤を必須成分とし、これに好ましくは(D)無機質充填剤を含有させること、この場合、更に好ましくは(A)液状エポキシ樹脂と(B)上記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂の割合〔(B)/((A)+(B))〕を質量比で0.1〜0.9とした液状エポキシ樹脂組成物が、シリコンチップの表面、ソルダーレジストとの密着性に優れ、PCT(120℃/2.1atm)などの高温多湿の条件下でも劣化せず、熱衝撃に対して優れており、特に大型ダイサイズの半導体装置の封止材として有効となり得ることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、下記液状エポキシ樹脂組成物及び半導体装置を提供する。
[I](A)液状エポキシ樹脂、
(B)下記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂、
【化2】

(式中、R1、R2は水素原子又はメチル基である。)
(C)マイクロカプセル型硬化促進剤
を必須成分とすることを特徴とする液状エポキシ樹脂組成物。
[II](A)液状エポキシ樹脂と(B)上記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂の割合〔(B)/((A)+(B))〕が質量比として0.1〜0.9である[I]記載の液状エポキシ樹脂組成物。
[III](A)液状エポキシ樹脂と(B)上記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂との総量100質量部に対し、(C)マイクロカプセル型硬化促進剤の添加量が0.1〜50質量部であることを特徴とする[I]又は[II]記載の液状エポキシ樹脂組成物。
[IV]上記マイクロカプセル型硬化促進剤が、アミノ基を有する化合物を含有したマイクロカプセル触媒であって、平均粒径が0.5〜10μmであり、かつo−クレゾール中におけるマイクロカプセルからの触媒の溶出量が30℃、15分でマイクロカプセル中に含まれる全触媒量の70質量%以上であるマイクロカプセル触媒を含有する[I]乃至[III]のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物。
[V]上記マイクロカプセル型硬化促進剤におけるアミノ基を有する化合物がトリエチルテトラアミン、N−アミノエチルピペラジン又は2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである[IV]記載の液状エポキシ樹脂組成物。
[VI]更に、(D)無機質充填剤を(A)液状エポキシ樹脂と(B)上記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂との総量100質量部に対して50〜1,200質量部配合してなることを特徴とする[I]乃至[V]のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物。
[VII][I]乃至[VI]のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置。
[VIII][I]乃至[VI]のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物の硬化物をアンダーフィル材として封止したフリップチップ型半導体装置。
[IX][I]乃至[VI]のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物の硬化物をBGA保護材として封止したBGA型半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、保存性を維持しつつ硬化時間を短縮することができる。また、シリコンチップの表面やソルダーレジストとの密着性に優れた硬化物を与え、125℃以下での硬化温度で硬化させても吸湿後、半田特性に優れ、更にPCT(120℃/2.1atm)などの高温多湿の条件下でも劣化せず、−65℃/150℃の温度サイクルにおいて数百サイクルを超えても剥離、クラックが起こらない半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物において、(A)液状エポキシ樹脂は、一分子内に3官能基以下のエポキシ基を含有する室温(25℃)で液状のエポキシ樹脂であればいかなるものでも使用可能であるが、25℃における粘度が800Pa・s以下、特に500Pa・s以下のものが好ましく、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらの中でも室温(25℃)で液状のエポキシ樹脂を使用することが好ましい。また、本発明の液状エポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0011】
また、本発明のエポキシ樹脂は、下記構造式(2),(3)で示されるエポキシ樹脂を使用することができる。
【0012】
【化3】

【0013】
ここで、上記式(2),(3)中、R3は水素原子、又は炭素数1〜20、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜3の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基等が挙げられる。また、xは1〜4の整数であり、特に好ましくは1又は2である。
【0014】
なお、上記式(3)で示されるエポキシ樹脂を配合する場合、その配合量は、全エポキシ樹脂中25質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であることが推奨される。25質量%未満であると組成物の粘度が上昇したり、硬化物の耐熱性が低下したりするおそれがある。なお、その上限は100質量%でもよい。
【0015】
上記式(3)で示されるエポキシ樹脂の例としては、日本化薬(株)製のRE600NM等が挙げられる。
【0016】
上記液状エポキシ樹脂中の全塩素含有量は、1,500ppm以下、望ましくは1,000ppm以下であることが好ましい。また、100℃で50%エポキシ樹脂濃度における20時間での抽出水塩素が10ppm以下であることが好ましい。全塩素含有量が1,500ppmを超え、又は抽出水塩素が10ppmを超えると半導体素子の信頼性、特に耐湿性に悪影響を与えるおそれがある。
【0017】
次に、本発明に使用する(B)ビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂は、下記一般式(1)で表される。
【0018】
【化4】

(式中、R1、R2は水素原子又はメチル基である。)
このような例として、YL7000、YL7150(ジャパンエポキシレジン(株)製)が挙げられる。
【0019】
上記樹脂は、通常、常温で固体又は高粘度であるため、作業性を良くする目的で予め前述の常温で液体のエポキシ樹脂と混合して配合するようにしてもよい。
【0020】
(A)液状エポキシ樹脂と(B)上記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂の割合〔(B)/((A)+(B))〕の値は、質量比として0.1〜0.9の範囲が好ましい。より好ましくは0.3〜0.7の範囲である。〔(B)/((A)+(B))〕の値が0.1より小さいと、低温度域、この発明の用途範囲である80℃以上125℃以下の硬化温度では、十分な硬化特性が得られないおそれがある。0.9を超えると、粘度が上昇し、作業性が著しく悪くなるおそれがある。
【0021】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、(C)成分として、エポキシ樹脂の硬化触媒をマイクロカプセル化したマイクロカプセル型硬化促進剤を配合する。
この場合、マイクロカプセル化される硬化触媒としては、アミノ基含有化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0022】
本発明に使用するマイクロカプセル型硬化促進剤中のアミノ基含有化合物としては、例えば、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン等の芳香族ジアミノジフェニルメタン化合物、トリエチルテトラアミン、N−アミノエチルピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのアミン化合物が例示される。
【0023】
また、イミダゾール化合物としては、下記一般式(4)で示されるものを使用することができる。
【0024】
【化5】

(式中、R5、R6は水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、フェニル基から選ばれるいずれかであり、R7はメチル基、エチル基、ペンタデシル基、ウンデシル基、フェニル基、アリル基から選ばれるいずれかであり、R8は水素原子、メチル基、エチル基、シアノエチル基、ベンジル基又は下記式(5)で示される基から選ばれるいずれかである。)
【0025】
【化6】

【0026】
具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−S−トリアジンイソシアヌール酸付加物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。
【0027】
これらの中では、アミノ基を有する化合物が好ましく、特にトリエチルテトラアミン、N−アミノエチルピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノエチル)フェノールが好ましい。
【0028】
本発明で使用するマイクロカプセルは、(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル等の炭素数1〜8のアルキルエステルやこのアルキルエステルのアルキル基がアリル基等の置換基を有するもの、また、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等の単官能性単量体及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能単量体のポリマー中に上記硬化触媒が閉じ込められたものである。なお、上記ポリマーの中では、(メタ)アクリレート系単量体の重合物が好ましい。
【0029】
本発明の上記アミン系等の硬化触媒を含有するマイクロカプセル型硬化促進剤の製造方法としては、様々な方法が挙げられるが、生産性及び球状度が高いマイクロカプセルを製造するためには、通常懸濁重合法及び乳化重合法などの従来から公知の方法で製造することができる。
【0030】
この場合、一般的に使用されている硬化触媒の分子構造から高濃度マイクロカプセル型硬化促進剤を得るためには、硬化触媒10質量部に対して使用する上記単量体の総量10〜200質量部程度が好ましく、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜50質量部である。10質量部未満では潜在性を十分に寄与することが困難となる場合があり、200質量部を超えると、触媒の比率が低くなり、十分な硬化性を得るためには多量に使用しなければならなくなるため、経済的に不利となる場合がある。
【0031】
このような方法で得られるマイクロカプセルとしては、平均粒径が0.5〜10μm、最大粒径が50μm以下のものを使用することが好ましい。より好ましくは平均粒径が2〜5μm、かつ最大粒径が20μm以下のものが望ましい。硬化促進剤の粒径が小さすぎると、比表面積が大きくなり、混合した時の粘度が高くなるおそれがある。また平均粒径が10μmを超えると、樹脂への分散が不均一になり、信頼性の低下を引き起こすおそれがある。なお、この平均粒径、最大粒径は、シーラスレーザ法による測定法に基づくものである。
【0032】
また、上記マイクロカプセルとしては、下記性能を有するものを使用することが好ましい。即ち、硬化触媒を含有するマイクロカプセルを1g秤量し、これをo−クレゾール30gに混合した後、30℃で放置し、溶出する触媒をガスクロマトグラフィーで定量した場合、マイクロカプセルから溶出する触媒が30℃、15分でマイクロカプセル中に含まれる全触媒量の70質量%以上であるものを用いる。70質量%未満では、硬化時間が長くかかるおそれがあり、生産性が低下する場合がある。望ましくは、溶出量が75質量%以上である。
【0033】
本発明のマイクロカプセル型硬化促進剤の配合量は、(A)液状エポキシ樹脂と、(B)上記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂との総量100質量部に対して0.1〜50質量部、特に0.5〜20質量部、とりわけ1〜15質量部であることが好ましい。0.1質量部未満では硬化性が低下するおそれがあり、50質量部を超える量では硬化性に優れるが、保存性が低下するおそれがある。
【0034】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、(D)成分として無機質充填剤を配合することが好ましい。
本発明に用いられる(D)無機質充填剤は、膨張係数を小さくする目的から、公知の各種無機質充填剤を添加することができる。無機質充填剤として、具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化珪素、マグネシア、マグネシウムシリケート、アルミニウムなどが挙げられる。中でも真球状の溶融シリカが低粘度化のため望ましい。
【0035】
無機質充填剤は、樹脂と無機質充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。ここで表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については、特に制限されるものではない。
【0036】
本発明の組成物をポッティング材として使用する場合、平均粒径が2〜20μmで、最大粒径が75μm以下、特に50μm以下のものが望ましい。平均粒径が2μm未満では粘度が高くなり、多量に充填できない場合があり、一方20μmを超えると粗い粒子が多くなり、リード線につまり、ボイドとなるおそれがある。
【0037】
なお、この最大粒径、平均粒径は、例えばレーザー光回折法による粒度分布測定により得ることができ、平均粒径は例えば重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができる。
【0038】
この場合、無機質充填剤の充填量は、(A)液状エポキシ樹脂と、(B)式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂との総量100質量部に対して50〜1,200質量部の範囲が好ましい。50質量部未満では、膨張係数が大きく、冷熱試験においてクラックの発生を誘発させるおそれがある。1,200質量部を超えると、粘度が高くなり、流動性の低下をもたらすおそれがある。
【0039】
なお、アンダーフィル材として使用する場合には、侵入性の向上と低線膨張化の両立を図るためフリップチップギャップ幅(基板と半導体チップとの隙間)に対して平均粒径が約1/10以下、最大粒径が1/2以下とすることが好ましい。
【0040】
この場合の無機質充填剤の配合量としては、(A)液状エポキシ樹脂と、(B)式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂との総量100質量部に対して50〜400質量部で配合することが好ましく、より好ましくは100〜250質量部の範囲で配合する。50質量部未満では、膨張係数が大きく、冷熱試験においてクラックの発生を誘発させるおそれがある。400質量部を超えると、粘度が高くなり、薄膜侵入性の低下をもたらすおそれがある。
【0041】
更に、本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、作業性を向上させるため、また粘度を低下させる目的から、沸点が130℃以上250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。この有機溶剤の沸点として、より好ましくは140℃以上230℃以下、更に好ましくは150℃以上230℃以下である。沸点が130℃未満であると、ディスペンス時又は硬化時に溶剤が揮発し、ボイドが発生するおそれがある。また、250℃を超えると硬化時に溶剤が揮発しきれず、強度の低下や密着性の低下を引き起こすおそれがある。
【0042】
このような有機溶剤の例としては、2−エトキシエタノール、1,2−プロパンジオール、1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、キシレン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、ホルムアミド、アセトアミド、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0043】
より好ましい有機溶剤は、エステル系有機溶剤である。エステル系有機溶剤以外のアルコール系溶剤又は水酸基を有する有機溶剤では、水酸基とアミンが容易に反応し、保存性が著しく悪くなるおそれがる。このような見地から、安全性を考えるとエステル系有機溶剤が好ましく、このようなエステル系有機溶剤としては、下記一般式(6)で表されるエステル系有機溶剤が例示できる。
【0044】
9COO−[R10−O]n−R11 (6)
(式中、R9、R11は炭素数1〜6の一価炭化水素基、R10は炭素数1〜6のアルキレン基である。nは0〜3の整数である。)
ここで、R9、R11の炭素数1〜6の一価炭化水素基としては、アルキル基などが挙げられ、またR10の炭素数1〜6のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキセン基等が挙げられる。
【0045】
上記式(6)で表されるエステル系有機溶剤の具体例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0046】
この有機溶剤の配合量は、(A)液状エポキシ樹脂と、(B)式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂との総量100質量部に対して0.5〜10質量部、望ましくは1〜10質量部である。0.5質量部未満では十分な粘度の低下効果が得られず、10質量部を超えると架橋密度が低下し、十分な強度が得られなくなる。
【0047】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、応力を低下させる目的でシリコーンゴム、シリコーンオイルや液状のポリブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンよりなる熱可塑性樹脂などを配合してもよい。好ましくは、アルケニル基含有エポキシ樹脂又はフェノール樹脂のアルケニル基と下記平均組成式(7)で示される一分子中の珪素原子の数が20〜400であり、SiH基の数が1〜5であるオルガノポリシロキサンのSiH基との付加反応により得られる共重合体を配合することが好ましい。
【0048】
a12bSiO(4-a-b)/2 (7)
(但し、式中R12は脂肪族不飽和基を除く置換又は非置換の一価の炭化水素基、aは0.01〜0.1、bは1.8〜2.2、1.81≦a+b≦2.3である。)
【0049】
なお、R12の一価炭化水素基としては、炭素数1〜10、特に1〜8のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、キシリル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などや、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したフロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基を挙げることができる。
【0050】
上記共重合体としては、中でも下記構造式(8)のものが望ましい。
【0051】
【化7】

【0052】
上記式中、R13は上記R12と同様の一価炭化水素基であり、R14は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R15は−CH2CH2CH2−、−OCH2−CH(OH)−CH2−O−CH2CH2CH2−又は−O−CH2CH2CH2−である。rは4〜199、好ましくは19〜109の整数、pは1〜10の整数、qは1〜10の整数である。
【0053】
上記共重合体をジオルガノポリシロキサン単位がエポキシ樹脂100質量部に対して0〜20質量部、特には2〜15質量部含まれるように配合することで応力をより一層低下させることができる。
【0054】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じ、接着向上用炭素官能性シラン、カーボンブラックなどの顔料、染料、酸化防止剤、その他の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。但し、本発明においては、表面処理剤として使用する以外に接着向上用炭素官能性シラン等としてアルコキシ系シランカップリング剤を添加しないことが好ましい。特に、アンダーフィル材として用いる場合、少量でもアルコキシ系シランカップリング剤を配合すると、ボイドの原因となるおそれがある。
【0055】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、例えば、液状エポキシ樹脂、ビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂、無機質充填剤及びその他の添加剤等を同時に又は別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶解、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。またこれら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0056】
なお、本発明において、封止材として用いる液状エポキシ樹脂組成物の粘度は、25℃において1,000Pa・s以下のものが好ましい。また、この組成物の成形方法、成形条件は、常法とすることができるが、好ましくは、80℃以上、1.0時間以上の条件で熱オーブンキュアを行う。80℃以上での加熱が1.0時間未満では、十分な硬化物特性が得られない場合がある。なお、この場合、加熱温度は125℃以下とすることが好ましい。
【0057】
この場合、本発明のエポキシ樹脂組成物は、フリップチップ型半導体装置のアルダーフィル材やBGA型半導体装置のBGA保護材として好適に用いられる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0059】
[実施例1〜4、比較例1〜3]
表1で示す成分を3本ロールで均一に混練することにより、7種の樹脂組成物を得た。これらの樹脂組成物を用いて、以下に示す試験を行った。その結果を表2に示す。
[粘度]
BH型回転粘度計を用いて4rpmの回転数で25℃における粘度を測定した。
[保存性]
25℃/60%RHにおいて樹脂を保存し、上記測定条件で20%粘度上昇するのに要した時間の1/2の時間を保存性とした。
[ゲル化時間]
80℃のホットプレートに0.5ccの液状樹脂組成物を滴下し、スパチュラで攪拌して糸引きが切れるところでゲル化時間とした。
[Tg(ガラス転移温度)、CTE1(膨張係数)、CTE2(膨張係数)]
80℃/1時間で硬化させた5mm×5mm×15mmの硬化物試験片を用いて、TMA(熱機械分析装置)により毎分5℃の速さで昇温した時のTgを測定した。
[接着力テスト]
ソルダーレジストAUS308をコートしたBT基板上に上面の直径2mm、下面の直径5mm、高さ3mmの円錐台形状の試験片を載せ、80℃で1時間硬化させた。硬化後、得られた試験片の剪断接着力を測定し、初期値とした。更に、硬化させた試験片をPCT(121℃/2.1atm)で168時間吸湿させた後、接着力を測定した。いずれの場合も試験片の個数は5個で行い、その平均値を接着力として表記した。
[PCT剥離テスト]
ポリイミドコートした10mm×10mmのシリコンチップを30mm×30mmのFR−4基板に約100μmのスペーサを用いて設置し、生じた隙間に組成物を侵入、80℃/1時間で硬化させ、30℃/65%RH/192時間後に最高温度265℃に設定したIRリフローにて5回処理した後の剥離、更にPCT(121℃/2.1atm)の環境下に置き、168時間後の剥離をC−SAM(SONIX社製)で確認した。
[熱衝撃テスト]
ポリイミドコートした10mm×10mmのシリコンチップを30mm×30mmのFR−4基板に約100μmのスペーサを用いて設置し、生じた隙間に組成物を侵入、80℃/1時間で硬化させ、30℃/65%RH/192時間後に最高温度265℃に設定したIRリフローにて5回処理した後、−65℃/30分、150℃/30分を1サイクルとし、250,500,750サイクル後の剥離、クラックを確認した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
YDF8170:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製)
YL7150:ビスフェノールA型エピスルフィド変性樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製)
【0063】
共重合体:下記式(9),(10)の化合物の付加反応生成物
【化8】

【0064】
アミン化合物A:TETA(トリエチルテトラアミン)
アミン化合物Aのマイクロカプセル:アミン化合物Aを30質量%含有したメタクリル酸メチルの重合体,平均粒径が7μm,o−クレゾール中で30℃、15分間の処理でマイクロカプセルから溶出する触媒の量は87質量%
アミン化合物B:DMP−30(2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール)
無機質充填剤:最大粒径53μm、平均粒径10μmの球状シリカ
シランカップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM403)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、沸点146℃の溶剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状エポキシ樹脂、
(B)下記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂、
【化1】

(式中、R1、R2は水素原子又はメチル基である。)
(C)マイクロカプセル型硬化促進剤
を必須成分とすることを特徴とする液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A)液状エポキシ樹脂と(B)上記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂の割合〔(B)/((A)+(B))〕が質量比として0.1〜0.9である請求項1記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(A)液状エポキシ樹脂と(B)上記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂との総量100質量部に対し、(C)マイクロカプセル型硬化促進剤の添加量が0.1〜50質量部であることを特徴とする請求項1又は2記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
上記マイクロカプセル型硬化促進剤が、アミノ基を有する化合物を含有したマイクロカプセル触媒であって、平均粒径が0.5〜10μmであり、かつo−クレゾール中におけるマイクロカプセルからの触媒の溶出量が30℃、15分でマイクロカプセル中に含まれる全触媒量の70質量%以上であるマイクロカプセル触媒を含有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
上記マイクロカプセル型硬化促進剤におけるアミノ基を有する化合物がトリエチルテトラアミン、N−アミノエチルピペラジン又は2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである請求項4記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
更に、(D)無機質充填剤を(A)液状エポキシ樹脂と(B)上記式(1)で表されるビスフェノール型エピスルフィド変性樹脂との総量100質量部に対して50〜1,200質量部配合してなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物の硬化物をアンダーフィル材として封止したフリップチップ型半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物の硬化物をBGA保護材として封止したBGA型半導体装置。

【公開番号】特開2006−28250(P2006−28250A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205974(P2004−205974)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】