説明

測定装置

【課題】ラインセンサにより高さのみ及び高さと変位の両方を高精度に測定することができ、設置作業が容易な測定装置を提供する。
【解決手段】測定装置において、5つ以上の高さ方向の絶対座標が分かるキャリブレーションターゲット2と、前記キャリブレーションターゲット2の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力するラインセンサ1と、前記画像信号に基づき画像情報を作成する入力画像作成部と、前記画像情報に基づきターゲット座標を検出するターゲット検出部と、前記ターゲット座標及び予め取得した絶対座標に基づきDLT法の係数を算出する係数算出部と、前記係数に基づき前記ラインセンサ1の姿勢を計算する姿勢計算部と、前記係数に基づき前記ラインセンサ1の焦点距離を計算する焦点距離計算部と、前記係数に基づき前記ラインセンサ1の位置を計算する位置計算部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エリアカメラやラインセンサを用いて撮像した画像を基に、測定対象物の位置を測定する方法が知られている。
例えば、下記特許文献1には、2つのエリアカメラで測定対象物を撮像し、ステレオ画像から位置を求める方法が開示されている。
また、下記特許文献2,3には、測定対象物に特殊なマーカーを付け、ラインセンサでマーカーを撮像することで、測定対象物の高さのみを求める方法が開示されている。
【0003】
上記特許文献1に開示される方法では、通常のエリアカメラを用いた場合にはエリアカメラの解像度が低く、高精度の測定を行うことができない。このため、精度を高めるために解像度の高いエリアカメラを用いた場合、コストが高くなるという問題がある。また、解像度の高いエリアカメラを用いた場合、保存する画像サイズが肥大化するという問題がある。
【0004】
このため、測定対象物の高さだけを求めたい場合には、下記特許文献2,3に開示される方法のようにラインセンサを用いる。下記特許文献2,3に開示される方法においては、まず、下記非特許文献1に開示される方法により測定対象物の焦点距離を求め、次に、下記特許文献2に開示される方法によりラインセンサの姿勢を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3608305号公報
【特許文献2】特開2009−300137号公報
【特許文献3】特開2009−300138号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】社団法人日本写真測量学会・解析写真測量委員会、「解析写真測量」、改訂版、社団法人日本写真測量学会、平成9年4月10日、p.149−152
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献2,3ではラインセンサの撮像面から測定対象物が設置される壁面までの距離を既知としている。通常、ラインセンサの撮像面は外箱内部に隠れるため、この値を既知とするような設置は困難である。
【0008】
また、測定対象物の高さだけでなく位置をも求めたい場合には、変位を求めるためにエリアカメラとラインセンサを組み合わせて測定することとなるが、この場合、測定装置が大掛かりになる上、エリアカメラを使用する変位の方が、高さに比べ精度が悪くなってしまうという問題がある。
【0009】
以上のことから、本発明は、ラインセンサにより高さのみ及び高さと変位の両方を高精度に測定することができ、設置作業が容易な測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る測定装置は、
5つ以上の高さ方向の絶対座標が分かるキャリブレーションターゲットと、
前記キャリブレーションターゲットの画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力するラインセンサと、
前記画像信号に基づき画像情報を作成する入力画像作成部と、
前記画像情報に基づきターゲット座標を検出するターゲット検出部と、
前記ターゲット座標及び予め取得した絶対座標に基づきDLT法の係数を算出する係数算出部と、
前記係数に基づき前記ラインセンサの姿勢を計算する姿勢計算部と、
前記係数に基づき前記ラインセンサの焦点距離を計算する焦点距離計算部と、
前記係数に基づき前記ラインセンサの位置を計算する位置計算部と
を備える
ことを特徴とする。
【0011】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る測定装置は、
測定対象物の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力する第1のラインセンサと、
前記測定対象物の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力する第2のラインセンサと、
前記第1のラインセンサの画像信号及び前記第2のラインセンサの画像信号に基づき画像情報を作成する画像作成部と、
前記第1のラインセンサの画像情報及び前記第2のラインセンサの画像情報に基づき前記第1のラインセンサのターゲット座標と、前記第2のラインセンサのターゲット座標とを検出するターゲット検出部と、
前記第1のラインセンサのターゲット座標及び前記第2のラインセンサのターゲット座標と、予め取得した前記第1のラインセンサの姿勢、焦点距離及び位置と、前記第2のラインセンサの姿勢、焦点距離及び位置とに基づきターゲット絶対座標を算出するステレオ計測部と
を備える
ことを特徴とする測定装置。
【0012】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る測定装置は、
5つ以上の絶対座標が分かる円柱状のポールが配置されたキャリブレーションターゲットと、
測定対象物の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力する第1のラインセンサと、
前記測定対象物の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力する第2のラインセンサと、
前記第1のラインセンサの画像信号及び前記第2のラインセンサの画像信号に基づき画像情報を作成する画像作成部と、
前記第1のラインセンサの画像情報及び前記第2のラインセンサの画像情報に基づき前記第1のラインセンサのターゲット座標と、前記第2のラインセンサのターゲット座標とを検出するターゲット検出部と、
前記ターゲット座標及び予め取得した絶対座標に基づきDLT法の係数を算出する係数算出部と、
前記係数に基づき前記第1のラインセンサ及び前記第2のラインセンサの姿勢を計算する姿勢計算部と、
前記係数に基づき前記第1のラインセンサ及び前記第2のラインセンサの焦点距離を計算する焦点距離計算部と、
前記係数に基づき前記第1のラインセンサ及び前記第2のラインセンサの位置を計算する位置計算部と
を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラインセンサにより高さのみ及び高さと変位の両方を高精度に測定することができ、設置作業が容易な測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係る測定装置の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る測定装置の構成を示した模式図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施例に係る測定装置におけるキャリブレーションターゲットの例を示した模式図である。
【図5】DLT法についての説明図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係る測定装置の概略図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る測定装置におけるステレオ計測における座標系を示した模式図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る測定装置の構成を示した模式図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係る測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施例に係る測定装置の概略図である。
【図11】本発明の第3の実施例に係る測定装置におけるキャリブレーションターゲットの例を示した模式図である。
【図12】本発明の第3の実施例に係る測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施例に係る測定装置におけるひし形ターゲットの例を示した模式図である。
【図14】本発明の第3の実施例に係る測定装置におけるキャリブレーションターゲット撮像時の様子を示した模式図である。
【図15】本発明の第3の実施例に係る測定装置におけるキャリブレーションターゲット画像の例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る測定装置を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明に係る測定装置の第1の実施例について説明する。
本実施例においては、上記特許文献2,3のような構成で測定対象物の高さをラインセンサにより求める場合、必要なパラメータを後述するDLT法(Direct Linear Transformation)(上記非特許文献1参照)を用いて一度に取得する方法である。
【0017】
ただし、上記特許文献2,3においては、ラインセンサの中心が撮像面となっているが、本実施例においては上記非特許文献1のようにラインセンサの中心をラインセンサのレンズ中心としている。また、撮像画像から高さを求める方法も上記非特許文献1のように投影変換により求めることとする。
【0018】
図1は、本実施例に係る測定装置の概略図である。なお、図1(a)は、本実施例に係る測定装置の側面から見た概略図である。また、図1(b)は、本実施例に係る測定装置におけるターゲットを正面から見た概略図である。
【0019】
図1(a)に示すように、本実施例に係る測定装置は、ラインセンサ1と、ラインセンサ1のパラメータを得るためのキャリブレーションターゲット2と、キャリブレーションターゲット2を照らす照明3とを備えている。なお、ラインセンサ1、キャリブレーションターゲット2及び照明3は、地面等の基準となる設置面4上に設置される。
【0020】
キャリブレーションターゲット2には、高さ方向(図1中、X軸方向)について測定対象の可動範囲内に5つ以上の絶対値が分かるものを用いる。例えば、図1(b)に示すように、測定対象物の可動範囲内に縞の幅が既知の黒2aと白2bの縞模様を描き、その境界にP0〜P4を取る。キャリブレーションターゲット2の設置面4からP0までの高さを測定しておけば、相対的にP1〜P4の座標も分かる。このとき、Z座標はP0〜P4ですべて同じ座標であるため、例えば0としておけばキャリブレーションの結果として、キャリブレーションターゲット2からラインセンサ1のレンズまでの距離が分かることとなる。
【0021】
図2は、本実施例に係る測定装置の構成を示した模式図である。
図2に示すように、本実施例に係る測定装置は、ラインセンサ1と、入力画像作成部10と、第1のメモリ11a、第2のメモリ11b及び第3のメモリ11cを備える記憶部11と、ターゲット検出部12と、係数算出部14と、焦点距離計算部15と、姿勢計算部16と、位置計算部17と、メモリ18と、ログ出力部19とにより構成されている。
【0022】
ラインセンサ1は、キャリブレーションターゲット2の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を入力画像作成部10に出力する。
入力画像作成部10は、入力した画像信号に基づき画像情報を作成し、記憶部11の第1のメモリ11aに出力する。
【0023】
ターゲット検出部12は、記憶部11の第1のメモリ11aに記憶された画像情報を読み込み、画像情報に基づきターゲット座標x1〜xnを検出し、記憶部11の第2のメモリ11bに出力する。
なお、記憶部11の第2のメモリ11bには、予め取得したターゲット絶対座標13に基づき、絶対座標(X1,Z1)〜(Xn,Zn)を予め記憶させておく。
【0024】
係数算出部14は、記憶部11の第2のメモリ11bに記憶されたターゲット座標x1〜xn及び絶対座標(X1,Z1)〜(Xn,Zn)を読み込み、ターゲット座標x1〜xn及び絶対座標(X1,Z1)〜(Xn,Zn)に基づき係数b1〜b5を算出し、記憶部11の第3のメモリ11cに出力する。
【0025】
焦点距離算出部15は、記憶部11の第3のメモリ11cに記憶された係数b1,b5又は係数b2,b4を読み込み、係数b1,b5又は係数b2,b4に基づき焦点距離fを計算し、メモリ18に出力する。
【0026】
姿勢計算部16は、記憶部11の第3のメモリ11cに記憶された係数b1,b2又は係数b4,b5を読み込み、係数b1,b2又は係数b4,b5に基づきラインセンサ姿勢φを計算し、メモリ18に出力する。
【0027】
位置計算部17は、記憶部11の第3のメモリ11cに記憶された係数b1〜b5を読み込み、係数b1〜b5に基づきラインセンサ位置座標(X0,Z0)を計算し、メモリ18に出力する。
【0028】
ログ出力部19は、メモリ18に記憶された焦点距離f、ラインセンサ姿勢φ及びラインセンサ座標(X0,Z0)を読み込み、焦点距離f、ラインセンサ姿勢φ及びラインセンサ座標(X0,Z0)のログ20を記録する。
【0029】
図3は、本実施例に係る測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
図3に示すように、はじめに、ステップP10において、ラインセンサ1によりキャリブレーションターゲット2の撮影を行う。なお、撮像時にP0〜P4に対応する点がすべて入るように注意する。図1(b)においては、図1中にlで示す撮像ラインがキャリブレーションターゲット2正面のちょうど中心を鉛直方向に通っているが、すべての点が写っていれば中心でなくてもよい。また、撮像ラインは、真に鉛直とならなくてもよい。
【0030】
次に、ステップP11において、入力画像作成部10により撮像した画像を2値化すると、図4に示すような2値化画像が得られる。
次に、ステップP12において、ターゲット検出部12により2値化画像から画像上の座標を求める。画像上の座標として、ラインセンサ1のセンサ画像上での長さ[mm]を用いるため、画像上でのピクセル数x[pix]を用いて以下の式により得る。
【数1】

ただし、Wは撮像の結果得られるラインセンサ画像の幅[pix]、Sはラインセンサ1上の素子の幅[mm]である。このとき、ラインセンサ1のセンサ中心が画像上の座標の原点となる。
【0031】
次に、ステップP13において、係数算出部14、焦点距離算出部15、姿勢計算部16及び位置計算部17によりDLT法(上記非特許文献1参照)を用いてキャリブレーションを行う。ただし、3次元のDLT法をそのまま用いることは冗長であるため、2次元に落として考えることとする。DLT法を2次元に落として整理しなおすことで、DLT法のみでラインセンサ1の姿勢、焦点距離及び位置を得ることができる。さらに、これらすべてのパラメータは、レンズの収差等の誤差を含めた形で求まるため、キャリブレーションターゲット2を撮影した領域内で高精度の計測が可能となる。
【0032】
以下に、本実施例におけるキャリブレーション方法の詳細について説明する。
図5に示すように、空間内に測定対象物M(X,Z)があるとすると、Mとラインセンサ1のレンズ中心Olは共線条件を満たす。なお、図5中、Pはラインセンサ1の撮像面を示している。すなわち、下記式(2)を満足する。
【数2】

ここで、a1〜a4は、ラインセンサ1の姿勢行列Tの要素である。
【0033】
すなわち、
【数3】

となる。
【0034】
上記式(2)は、係数b1〜b5を用いて以下の二次の射影変換式に置き換えることができる。
【数4】

【0035】
上記式(4)を変形すると、以下の式が得られる。
【数5】

上記式(5)は、b1〜b5について線形であるから、最低5点、すなわち5つの撮像対象物の座標(X1,Z1)〜(X5,Z5)と、それらを撮像したときのラインセンサ画像上の座標x1〜x5より回帰分析を行うことができる。このとき、xを被説明変数、X,Z,xX,xZを説明変数とする。
【0036】
以上から、係数b1〜b5を計算することができる。なお、5点以上の絶対値を用いないのであれば、以下のように行列表現し、掃き出し法等で得られた逆行列を左から掛けることでも係数b1〜b5が得られる。
【数6】

【0037】
ところで、上記式(2)と上記式(4)とを比べると、a1〜a4とb1〜b5について以下の関係があることが分かる。ただし、C=−(a3l+a4l)である。
【数7】

【0038】
上記式(3)と上記式(7)とを比べることで、ラインセンサ1の姿勢φは以下となる。
【数8】

【0039】
上記式(3)と上記式(7)とを比べることで、焦点距離fは以下となる。
【数9】

【0040】
上記式(8)より、
【数10】

とすると、両辺の左からB-1を掛けることで直ちに答えが得られる。
【0041】
また、行列Tが正規直交行列であることから、
【数11】

としてもよい。
【0042】
したがって、ステップP12で求めた画像上の座標xp0〜xp4[pix]〜x0〜x4[pix]と、キャリブレーションターゲット2の絶対座標P0(X0,Z0)〜P4(X4,Z4)用いて、最小二乗法によりラインセンサ1の姿勢、焦点距離及びレンズ中心位置(すなわち、ラインセンサ1の位置)を求めることができることが分かる。
最後に、ステップP14において、求めたパラメータをログ20として記録する。
【0043】
以上説明したように、本実施例に係る測定装置によれば、ラインセンサ1の姿勢、焦点距離及び位置を、設置した後から計算により求めることができるため、ラインセンサ1を設置するときに所定の角度に固定する必要がなく、簡単に設置することができる。
【0044】
また、本実施例に係る測定装置によれば、ラインセンサ1の姿勢、焦点距離及び位置を、設置した後から計算により求めることができるため、設置後に別の測定器により測定する必要がない。このため、設置後に別の測定器により測定する際に生じる測定誤差の影響を受けることがない。
【0045】
また、本実施例に係る測定装置によれば、ラインセンサ1の姿勢、焦点及び位置を統一した手法により求めることができるため、測定領域で十分な精度を得ることができる。
【0046】
また、本実施例に係る測定装置によれば、ラインセンサ1を真に鉛直上方に向けずとも、キャリブレーションターゲット2さえ正しく設置できてさえいれば、ラインセンサ1の姿勢、焦点距離及び位置のパラメータ側でラインセンサ1の撮像面のずれを吸収することができるため、ラインセンサ1の設置を非常に容易に行うことができる。
【実施例2】
【0047】
以下、本発明に係る測定装置の第2の実施例について説明する。
本実施例においては、上記特許文献1のように、従来エリアカメラを用いて行われてきたステレオ計測を、2つのラインセンサ1a,1bを用いて行うことを特徴とする。これにより、高精度の測定を行うためにエリアカメラとラインセンサとを組み合わせて使うということをせずに済むため、測定装置をコンパクト、かつ低コストで構成することができる。
【0048】
また、統一的な計算方法で精度良く測定対象物5の位置を計算することが可能となる。さらに、図7からも分かるように、測定装置の設置時にラインセンサ1a,1bのレンズ中心がどこに位置してもよいことから、測定装置の設置時に所定の位置にレンズ中心が位置するように配慮するなどの煩雑な作業をなくすことができる。
【0049】
ただし、2つのラインセンサ1a,1bを用いたステレオ計測は、図7中にPで示す2つのラインセンサ1a,1bの撮像面が合ったごく狭い領域が測定対象領域となることと、後述するキャリブレーション方法から、ある程度の長さがあり、かつ丸い断面をした棒状の物体が適している。
【0050】
図6は、本実施例に係る測定装置の概略図である。
図6に示すように、本実施例に係る測定装置は、第1のラインセンサ1aと、第2のラインセンサ1bと、測定対象物5を照らす第1のラインセンサ1a側の照明3aと、測定対象物5を照らす第2のラインセンサ1b側の照明3bを備えている。本実施例においては、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bを用いてステレオ計測を行う。
【0051】
第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bは、後述するキャリブレーション方法により撮像面が一致し、図7に示すように設定した座標系において、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの姿勢、焦点距離及びレンズ中心座標(すなわち、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの位置)が求まっているものとする。
【0052】
図8は、本実施例に係る測定装置の構成を示した模式図である。
図8に示すように、本実施例に係る測定装置は、第1のラインセンサ1aと、第2のラインセンサ1bと、入力画像作成部30と、第1のメモリ31a、第2のメモリ31b及び第3のメモリ31cを備える記憶部31と、ターゲット検出部32と、ステレオ計測部34と、ログ出力部35とにより構成されている。
【0053】
第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bは、測定対象物5の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を入力画像作成部30に出力する。入力画像作成部30は、入力した画像信号に基づき画像情報を作成し、記憶部31の第1のメモリ31aに出力する。
【0054】
ターゲット検出部32は、記憶部31の第1のメモリ31aに記憶された画像情報を読み込み、画像情報に基づき第1のラインセンサ1aのターゲット座標x1と、第2のラインセンサ2aのターゲット座標x2とを検出し、記憶部31の第2のメモリ31bに出力する。
【0055】
なお、記憶部31の第2のメモリ31bには、予め取得しておいたラインセンサ姿勢ログ33より第1のラインセンサ1aの姿勢φ1、焦点距離f1及びレンズ中心O1(すなわち、第1のラインセンサ1aの位置)と、第2のラインセンサ1bの姿勢φ2、焦点距離f2及びレンズ中心O2(すなわち、第2のラインセンサ1bの位置)とを予め記憶させておく。
【0056】
ステレオ計測部34は、記憶部31の第2のメモリ31bに記憶された第1のラインセンサ1aのターゲット座標x1及び第2のラインセンサ1bのターゲット座標x2と、第1のラインセンサ1aの姿勢φ1、焦点距離f1及びレンズ中心O1と、第2のラインセンサ1bの姿勢φ2、焦点距離f2及びレンズ中心O2とを読み込み、第1のラインセンサ1aのターゲット座標x1及び第2のラインセンサ1bのターゲット座標x2と、第1のラインセンサ1aの姿勢φ1、焦点距離f1及びレンズ中心O1と、第2のラインセンサ1bの姿勢φ2、焦点距離f2及びレンズ中心O2とに基づきターゲット絶対座標を算出し、記憶部31の第3のメモリ31cに出力する。
【0057】
ログ出力部35は、記憶部31の第3のメモリ31cに記憶されたターゲット絶対座標を読み込み、ターゲット絶対座標のログ36を記録する。
【0058】
図9は、本実施例に係る測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
図9に示すように、はじめに、ステップP20において、第1のラインセンサ及び第2のラインセンサにより測定対象物の画像を撮像する。
次に、ステップP21において、測定箇所5aの座標は、第1の実施例に係るステップP12と同様の方法で[pix]から[mm]に変換したものを用いる。そして、測定箇所5a(図6参照)の座標を求める。
次に、ステップP22において、ステレオ計測を行う。なお、ステレオ計測は、図7に示すような座標系を用いて以下のように行うことができる。
【0059】
図7において、第1のラインセンサのレンズ中心がO1(X01,Z01)に対応し、第2のラインセンサのレンズ中心がO2(X02,Z02)に対応し、第1のラインセンサにおいて撮像したときの撮像面上のターゲット座標がx1であり、第2のラインセンサにおいて撮像したときの撮像面上のターゲット座標がx2であるとする。図7に示す座標系において、ターゲット座標x1,x2は、以下のようにあらわされる。
【数12】

【0060】
したがって、測定対象物の測定箇所5a(図6参照)の座標(X,Z)は、以下のようにあらわすことができる。
【数13】

【0061】
ただし、f1は第1のラインセンサの焦点距離、f2は第2のラインセンサの焦点距離であり、t1,t2は以下のとおりである。
【数14】

最後に、ステップP23において、測定結果をログに記録する。
【0062】
以上説明したように、本実施例に係る測定装置によれば、第1のラインセンサ及び第2のラインセンサのみを用いて測定対象物の位置を簡便かつ高精度に計測することができる。
【0063】
また、第1のラインセンサ及び第2のラインセンサのみを用いるため、測定装置をコンパクトかつ低コストで構成することができる。
【0064】
また、本実施例に係る測定装置によれば、測定対象が棒状の物体である場合、上記特許文献2,3と異なり、棒状の物体そのものを測定することができる。
【実施例3】
【0065】
以下、本発明に係る測定装置の第3の実施例について説明する。
本実施例においては、第2の実施例に係る測定装置において第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面を合わせて、計算のために用いる第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bのパラメータを得ることを特徴とする。これにより、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面を一定の手順により合わせることができるため、第2の実施例に係る測定装置をより現実的に実現することができる。
【0066】
図10は、本実施例に係る測定装置の概略図である。なお、図10(a)は、本実施例に係る測定装置の正面から見た概略図である。また、図1(b)は、本実施例に係る測定装置におけるひし形ターゲットを正面から見た概略図である。
【0067】
図10に示すように、本実施例に係る測定装置は、第1のラインセンサ1aと、第2のラインセンサ1bと、図11に示すような第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bのパラメータを求めるためのキャリブレーションターゲット6と、図10(b)に示すような第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像ラインを合わせるための複数のひし形が描かれたひし形ターゲット7と、キャリブレーションターゲット6及びひし形ターゲット7を照らす第1のラインセンサ1a側の照明3aと、キャリブレーションターゲット6及びひし形ターゲット7を照らす第2のラインセンサ1b側の照明3bとを備えている。なお、本実施例においては、キャリブレーションターゲット6は、正面の向く方向を容易に調整することができるように、回転角を調整することが可能な雲台(図示省略)上に設置することとする。
【0068】
なお、本実施例においては、キャリブレーションターゲット6は、図11に示すように、断面が円となる5本以上の円柱状のポール6aを固定でき、かつ各ポール6aの絶対座標が分かるようにしておく。例えば、ポール6aを5本配置する場合には、図10に示すように、P0の絶対座標のみ分かるようにしておき、P0からの相対座標が分かるようにP1〜P4を配置するとよい。
【0069】
そして、本実施例においては、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面を合わせることにより、第1の実施例に係る測定装置におけるキャリブレーション方法をそのまま適用することが可能である。したがって、本実施例に係る測定装置の構成は、第1の実施例に係る測定装置の構成と同様である。
【0070】
すなわち、本実施例においては、第1のラインセンサ1aの画像信号及び第2のラインセンサ1bの画像信号に基づき画像情報を作成する画像作成部と、第1のラインセンサ1aの画像情報及び第2のラインセンサ1bの画像情報に基づき第1のラインセンサ1aのターゲット座標と、第2のラインセンサ1bのターゲット座標とを検出するターゲット検出部と、ターゲット座標及び予め取得した絶対座標に基づきDLT法の係数を算出する係数算出部と、係数に基づき第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの姿勢を計算する姿勢計算部と、係数に基づき第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの焦点距離を計算する焦点距離計算部と、係数に基づき第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの位置を計算する位置計算部とを備えている。
【0071】
図12は、本実施例に係る測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
図12に示すように、はじめに、ステップP30において、図10に示すように、ひし形ターゲット7をキャリブレーションターゲット6のポール6a上に載置する。そして、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面がキャリブレーションターゲット6上で一致するようにひし形ターゲット7を撮像しながら第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bを設置している雲台の回転角を調整する。
【0072】
ここで、図13(b)は、ひし形ターゲット7を撮像したときに第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面が、図13(a)におけるA及びA´で示すようにひし形ターゲット7を横切る撮像ラインにおける画像の例である。
【0073】
また、図13(c)は、ひし形ターゲット7を撮像したときに第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面が、図13(a)におけるB及びB´で示すようにひし形ターゲット7を横切る撮像ラインにおける画像の例である。
【0074】
図13(d)は、ひし形ターゲットを撮像したときに第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面が図13(a)におけるCで示すようにひし形ターゲット7を横切る撮像ラインにおける画像の例である。
【0075】
そして、図13(d)に示すように、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面がひし形ターゲット7の中央を横切るときに第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面が一致する。
【0076】
次に、ステップP31において、図14に示すように、ひし形ターゲット7をキャリブレーションターゲット6のポール6a上からはずした上で、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bにより撮像する。このとき、図15(a),(b)に示すように、第1のラインセンサ1aで撮像した画像と、第2のラインセンサ1bで撮像した画像とでは、各ポール6aのP0〜P4の写る場所が変わることに注意する。本実施例においては、ポール6aの数を5つとしているが、さらにポール6aの数を増やす場合には注意が必要である。
【0077】
次に、ステップP32において、キャリブレーションターゲット6に配置された各ポール6aの下から照明を当てているため、キャリブレーションターゲット6に配置された各ポール6aのP0〜P4は、撮像した画像を2値化することにより白くなり、図15(a)に示すような第1のラインセンサ1aの画像と、図15(b)に示すような第1のラインセンサ1bの画像とを得ることができる。
【0078】
次に、ステップP33において、2値化した画像から画像上の座標[mm]を求める。まず、図15(c)に示すように、各ポール6aの白い部分の幅の中心を求め、画像左端からのピクセル数x[pix]を求める。次に、第1の実施例に係るステップP12と同様の方法により、画像上の座標x[mm]を得る。
【0079】
次に、ステップP34において、キャリブレーションを行う。なお、本実施例においては、第1の実施例に係る測定装置におけるキャリブレーション方法と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
次に、ステップP35において、求めたパラメータをログとして記録する。
最後に、ステップP36において、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bのパラメータが求まったか判断し、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bのパラメータが求まった場合には一連の処理を終了し、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bのパラメータが求まっていない場合は、ステップP31〜ステップP36を再度実行する。
【0080】
以上説明したように、本実施例に係る測定装置によれば、第1のラインセンサ1a及び第2のラインセンサ1bの撮像面を一定の手順により合わせることができるため、第2の実施例に係る測定装置をより現実的に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えば、ラインセンサを用いた測定装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 ラインセンサ
1a 第1のラインセンサ
1b 第2のラインセンサ
2 キャリブレーションターゲット
3,3a,3b 照明
4 設置面
5 測定対象物
6 キャリブレーションターゲット
7 ひし形ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5つ以上の高さ方向の絶対座標が分かるキャリブレーションターゲットと、
前記キャリブレーションターゲットの画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力するラインセンサと、
前記画像信号に基づき画像情報を作成する入力画像作成部と、
前記画像情報に基づきターゲット座標を検出するターゲット検出部と、
前記ターゲット座標及び予め取得した絶対座標に基づきDLT法の係数を算出する係数算出部と、
前記係数に基づき前記ラインセンサの姿勢を計算する姿勢計算部と、
前記係数に基づき前記ラインセンサの焦点距離を計算する焦点距離計算部と、
前記係数に基づき前記ラインセンサの位置を計算する位置計算部と
を備える
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
測定対象物の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力する第1のラインセンサと、
前記測定対象物の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力する第2のラインセンサと、
前記第1のラインセンサの画像信号及び前記第2のラインセンサの画像信号に基づき画像情報を作成する画像作成部と、
前記第1のラインセンサの画像情報及び前記第2のラインセンサの画像情報に基づき前記第1のラインセンサのターゲット座標と、前記第2のラインセンサのターゲット座標とを検出するターゲット検出部と、
前記第1のラインセンサのターゲット座標及び前記第2のラインセンサのターゲット座標と、予め取得した前記第1のラインセンサの姿勢、焦点距離及び位置と、前記第2のラインセンサの姿勢、焦点距離及び位置とに基づきターゲット絶対座標を算出するステレオ計測部と
を備える
ことを特徴とする測定装置。
【請求項3】
5つ以上の絶対座標が分かる円柱状のポールが配置されたキャリブレーションターゲットと、
測定対象物の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力する第1のラインセンサと、
前記測定対象物の画像を撮像し、撮像した画像の画像信号を出力する第2のラインセンサと、
前記第1のラインセンサの画像信号及び前記第2のラインセンサの画像信号に基づき画像情報を作成する画像作成部と、
前記第1のラインセンサの画像情報及び前記第2のラインセンサの画像情報に基づき前記第1のラインセンサのターゲット座標と、前記第2のラインセンサのターゲット座標とを検出するターゲット検出部と、
前記ターゲット座標及び予め取得した絶対座標に基づきDLT法の係数を算出する係数算出部と、
前記係数に基づき前記第1のラインセンサ及び前記第2のラインセンサの姿勢を計算する姿勢計算部と、
前記係数に基づき前記第1のラインセンサ及び前記第2のラインセンサの焦点距離を計算する焦点距離計算部と、
前記係数に基づき前記第1のラインセンサ及び前記第2のラインセンサの位置を計算する位置計算部と
を備える
ことを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−58045(P2012−58045A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200471(P2010−200471)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】