説明

溶融樹脂供給方法、溶融樹脂供給装置、溶融樹脂圧縮成形方法、溶融樹脂圧縮成形装置、及び合成樹脂製容器の製造方法

【課題】押出機から押し出される溶融樹脂を切断して圧縮成形型に供給し、圧縮成形によって所定形状の合成樹脂成形品を製造するにあたり、より高荷重の負荷が必要とされる合成樹脂成形品の製造にも好適に利用することができ、また、圧縮成形型に十分な精度をもって溶融樹脂を供給することができるのはもとより、圧縮成形型に供給された後においても、供給された溶融樹脂の位置精度が損なわれないようにする。
【解決手段】押出機20の押出口22を中心に配置された各搬送手段30が、押出機20の押出口22から押し出された溶融樹脂を、所定の長さごとに交互に切断しつつ、切断された溶融樹脂Dを、それぞれに設定された供給位置まで搬送し、それぞれと対になって設置された複数の圧縮成形型40のそれぞれに順次供給して圧縮成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機から押し出される溶融樹脂を所定の長さに切断して圧縮成形型に供給するための溶融樹脂供給方法、そのような溶融樹脂供給方法を好適に実施するための溶融樹脂供給装置、これらの溶融樹脂供給方法、溶融樹脂供給装置を好適に利用して圧縮成形型に供給された溶融樹脂を所定形状に圧縮成形する溶融樹脂圧縮成形方法、そのような溶融樹脂圧縮成形方法を好適に実施するための溶融樹脂圧縮成形装置、これらの溶融樹脂圧縮成形方法、溶融樹脂圧縮成形装置を好適に利用して合成樹脂製容器を製造する合成樹脂製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定形状の合成樹脂成形品を圧縮成形により量産する技術として、本出願人は、先に、特許文献1において、合成樹脂供給域、圧縮成形・冷却域及び取出域を周回する複数の圧縮成形型に、押出装置から押し出される合成樹脂を押出口から切り離して順次供給し、合成樹脂成形品を連続成形する圧縮成形システムを提案した。
【特許文献1】特開2007−216531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1では、回転駆動源に接続された回転基盤上に複数の支持台を固定し、これらの支持台の各々に、雌型や雄型とともに、圧縮成形に際して荷重を負荷するための加圧機構(シリンダー機構)を備えた成形型手段を装着することによって、複数の圧縮成形型が前記各領域を周回するようにした例を示したが、その後、本発明者らが、かかる例について改善を重ねていったところ、次のような知見を得るに至った。
【0004】
例えば、上記した例にあっては、それぞれが単独で圧縮成形を行う成形型手段の全てが、回転基盤の回転に伴って移動するように構成されている。
このため、圧縮成形に際してより高荷重の負荷が必要とされ、加圧機構の能力向上や、これに伴う強度確保などのために、成形型手段の重量増加が避けられない場合には、回転基盤を回転させるための機構も相応の強度を確保して、成形型手段の重量増加に耐えられるように対処しなければならない。ところが、このようにして対処しようとすると、装置全体が大型化してしまったり、装置の建造コストが増大したりするというような不具合が考えられる。
【0005】
ここで、特許文献1で例示した圧縮成形システムは、主として、いわゆるPETボトルの如き合成樹脂製容器を延伸ブロー成形などによって成形するために用いるプリフォーム(前成形体)を対象とし、これを圧縮成形によって製造することを念頭において設計したものである。このようなプリフォームは比較的厚肉であり、圧縮成形に必要とされる荷重も相対的に小さいため、上記の不具合はそれほど問題にはならない。
【0006】
これに対して、例えば、供給された合成樹脂をそのまま圧縮成形によって、薄肉カップ状の合成樹脂製容器に成形しようとする場合には、必要とされる荷重は、上記の如きプリフォームを成形するときの数十倍にも及ぶことがある。このため、特許文献1で例示した圧縮成形システムを、より高荷重の負荷が必要とされる圧縮成形品の製造に適用しようとしても、実際には、上記した不具合が許容できる範囲内にある場合に限られてしまうことになる。
【0007】
また、特許文献1で例示した圧縮成形システムによれば、雄型の成形キャビティ内の所要位置に十分精密に合成樹脂を供給することができるが、キャビティ内に供給された合成樹脂には、回転基盤の回転に伴って成形型手段が移動する際に、その回転によって遠心力が作用することになる。
このため、キャビティ内の所要位置に十分精密に合成樹脂を供給することができても、合成樹脂を供給してから型締めがなされるまでの間に、キャビティ内に供給された合成樹脂が、遠心力によって傾いてしまったりするなどして、キャビティ内での位置にずれが生じてしまうことが懸念される。特に、多層構成とされた薄肉の合成樹脂製容器を圧縮成形によって製造する場合(詳細については後述する)には、圧縮成形時における供給された合成樹脂のキャビティ内での位置や姿勢に格段の精度が要求されるため、キャビティ内に供給された合成樹脂には、遠心力などの外力が作用しないようにすることが望まれる。
【0008】
本発明は、上記のような知見に基づいてなされたものであり、押出機から押し出される溶融樹脂を切断して圧縮成形型に供給し、圧縮成形によって所定形状の合成樹脂成形品を製造するにあたり、より高荷重の負荷が必要とされる合成樹脂成形品の製造にも好適に利用することができ、また、圧縮成形型に十分な精度をもって溶融樹脂を供給することができるのはもとより、圧縮成形型に供給された後においても、供給された溶融樹脂の位置精度が損なわれないようにするのに好適な溶融樹脂供給方法、そのような溶融樹脂供給方法を好適に実施するための溶融樹脂供給装置、これらの溶融樹脂供給方法、溶融樹脂供給装置を好適に利用する溶融樹脂圧縮成形方法、そのような溶融樹脂圧縮成形方法を好適に実施するための溶融樹脂圧縮成形装置、これらの溶融樹脂圧縮成形方法、溶融樹脂圧縮成形装置を好適に利用する合成樹脂製容器の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る溶融樹脂の供給方法は、押出機の押出口から溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すとともに、前記押出口を中心に配置された複数の搬送手段によって、前記押出口から押し出されてくる溶融樹脂を所定長さごとに交互に切断しつつ、前記搬送手段のそれぞれに設定された供給位置まで搬送する方法としてある。
【0010】
また、本発明に係る溶融樹脂供給装置は、溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すように押出口を設けた押出機と、前記押出口から押し出されてくる溶融樹脂を切断する切断部を有し、前記切断部によって切断された溶融樹脂をそれぞれに設定された供給位置まで搬送する複数の搬送手段とを備え、前記各搬送手段が、前記押出口を中心に配置されて、前記押出口の下方位置と前記供給位置との間を交互に往復移動する構成としてある。
【0011】
また、本発明に係る溶融樹脂の圧縮成形方法は、押出機の押出口から溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すとともに、前記押出口を中心に配置された複数の搬送手段によって、前記押出口から押し出されてくる融樹樹脂を所定長さごとに交互に切断しつつ、前記搬送手段と対になって設置された複数の圧縮成形機のそれぞれに供給し、前記圧縮成形機によって、前記切断された溶融樹脂を所定形状に圧縮成形する方法としてある。
【0012】
また、本発明に係る溶融樹脂圧縮成形装置は、溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すように押出口を設けた押出機と、前記押出口から押し出されてくる溶融樹脂を切断する切断部を有し、前記切断部によって切断された溶融樹脂をそれぞれに設定された供給位置まで搬送する複数の搬送手段と、前記搬送手段と対になって前記搬送手段ごとに設定された前記供給位置に設置されて、前記切断された溶融樹脂を所定形状に圧縮成形する複数の圧縮成形型とを備え、前記各搬送手段が、前記押出口を中心に配置されて、前記押出口の下方位置と前記供給位置との間を交互に往復移動することによって、前記切断された溶融樹脂を前記圧縮成形型に順次供給する構成としてある。
【0013】
また、本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法は、押出機の押出口から溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すとともに、前記押出口を中心に配置された複数の搬送手段によって、前記押出口から押し出されてくる融樹樹脂を所定長さごとに交互に切断しつつ、前記搬送手段と対になって設置された複数の圧縮成形機のそれぞれに供給し、前記圧縮成形機によって、前記切断された溶融樹脂を所定の容器形状に圧縮成形する方法としてある。
【発明の効果】
【0014】
以上のような本発明にあっては、搬送手段ごとに設定された供給位置に、圧縮成形型が設置されるようにしてあり、圧縮成形型を移動するための機構を必要としない。このため、圧縮成形に際してより高荷重の負荷が必要とされ、型締めのための加圧機構の能力向上や、これに伴う強度確保が要求される場合であっても、圧縮成形型以外の部分には、その影響が及ばない。このため、装置全体が大型化してしまったり、装置の建造コストが増大したりするというような不具合を伴うことなく、より高荷重の負荷が必要とされる合成樹脂成形品の製造にも対応可能である。さらに、圧縮成形型に十分な精度をもって溶融樹脂を供給することができることに加え、圧縮成形型に供給された後においても、供給された溶融樹脂の位置精度が損なわれないようにすることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
[溶融樹脂圧縮成形装置]
まず、本発明に係る溶融樹脂圧縮成形装置の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る溶融樹脂圧縮成形装置の実施形態について、その概略を示す平面図であり、図2は、その要部拡大図である。また、図3は、図2に示す要部を図2中矢印X方向からみた要部側面図である。
【0017】
これらの図に示す成形装置10は、熱可塑性樹脂を溶融、混練して押出口22から押し出す押出機20と、押出機20の押出口22を中心に配置された複数の搬送手段30と、各搬送手段30と対になって設置された複数の圧縮成形型40とを備えている。
なお、図2及び図3は、押出機20の押出口22を中心に配置された複数の搬送手段30のうち、その一つに着目して成形装置10の要部を示すものである。また、図示する成形装置10から圧縮成形型40を除いたものが、本発明に係る溶融樹脂供給装置の実施形態に相当し、本発明に係る溶融樹脂供給方法及び溶融樹脂圧縮成形方法は、これらの装置を好適に利用して実施することができる。
【0018】
押出機20は、そのダイヘッド21に開口する押出口22が、溶融状態にある樹脂を鉛直方向に沿ってほぼ下向きに押し出すように設けられていればよい。押出機20そのものは、単軸スクリュー型押出機、多軸スクリュー型押出機、ギヤポンプアシスト型押出機などの公知の押出機の中から任意に選択することができる。
【0019】
また、押出機20によって溶融、混練して、押出口22から押し出される熱可塑性樹脂としては、圧縮成形が可能であれば、任意の樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂,ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂,ポリカーボネート,ポリアリレート,ポリ乳酸,又はこれらの共重合体などが用いられる。
【0020】
図示する例において、溶融樹脂が押し出されてくる押出口22を中心に配置される搬送手段30のそれぞれは、押出口22を中心に放射状に設置された複数の駆動機構300のそれぞれに取り付けられて、押出口22の下方位置と、搬送手段30のそれぞれに設定された供給位置との間を交互に往復移動するようになっている。そして、搬送手段30ごとに設定された供給位置には、搬送手段30のそれぞれと対になる圧縮成形型40が設置されている。
【0021】
また、図4及び図5に一例を示すように、搬送手段30は、供給位置に設置された圧縮成形型40に向かって押出口22の下方位置を通過する際に、押出口22から押し出されてくる溶融樹脂を削ぎ取るようにして切断する切断部31を有している。この切断部31は、基部32の上方に位置する周端縁に沿って形成されており、切断部31によって切断された溶融樹脂Dの側面に、基部32の内周面が保持面33となって当接するようにしてある(図5(b)参照)。
【0022】
ここで、図4は、搬送手段30の概略を示す説明図であり、図4(a)は、その平面図、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。また、図5は、搬送手段30が、押出機20の押出口22の下方位置を通過する前後の状態を示す説明図である。
【0023】
また、搬送手段30の基部32には、その保持面33に対向して開閉可能となるように、保持部材34が取り付けられている。保持部材34は、例えば、図示しないロータリーアクチュエータなどによって、回転軸35を中心に、その開閉動作がなされるようにすることができる。このような保持部材34は、切断部31による溶融樹脂の切断を妨げないように、搬送手段30が押出口22の下方位置を通過する際には開放位置にあり(図5(a),(b)参照)、溶融樹脂の切断がなされた後に閉じるようになっている(図5(c)参照)。
ここで、図4では、保持部材34が閉じた状態を実線で示し、開放位置にある保持部材34を二点破線で示してある。また、図5(a),(b)では、保持部材34の図示を省略している。
なお、保持部材34の開閉動作は、回転軸35を中心とする回動によるものには限定されない。特に図示しないが、例えば、保持部材34を平行移動などさせることによって、その開閉動作がなされるようにしてもよい。
【0024】
保持部材34が閉じると、保持面33と保持部材34との間には円柱状の空間が形成される。この空間内に、切断された溶融樹脂Dが保持されるが、このとき、移送手段30の移動時の慣性力を利用して、切断された溶融樹脂Dを基部32に設けた保持面33に保持して搬送するようにするのが好ましい。この場合、保持面33と保持部材34との間に形成される円柱状の空間の内径は、押出口22の外径、すなわち、押出口22から押し出されてくる溶融樹脂の外径よりも若干大きくなるように設定する。
このようにすることで、切断された溶融樹脂Dに対して過度の負荷がかからないようにして、その変形などを有効に回避することができるともに、搬送手段30が供給位置で停止したときに溶融樹脂Dが自重で落下し、これによって成形型40への溶融樹脂Dの供給がなされるようにすることができる。
【0025】
以上、搬送手段30について、その一例を示して説明したが、搬送手段30の具体的な構成は上記した例には限定されない。押出機20の押出口22を中心に配置された各搬送手段30が、押出機20の押出口22から押し出された溶融樹脂を、所定の長さごとに交互に切断しつつ、切断された溶融樹脂Dを、それぞれに設定された供給位置まで搬送し、それぞれと対になって設置された複数の圧縮成形型40のそれぞれに順次供給できるようになっていればよい。
【0026】
ここで、押出口22から押し出される溶融樹脂を切断する長さは、押出機20の押出速度や、各搬送手段30によって溶融樹脂を交互に切断するタイミングなどを調整することで、成形に必要な樹脂量に応じて任意に設定することができる。また、各搬送手段30は、押出口22から押し出される溶融樹脂の切断と、切断された溶融樹脂Dの搬送が同一の条件下でなされるように、駆動機構300も含めて等しく構成するのが好ましい。特に、それぞれの搬送手段30の移動距離を等しくして、押出口22から押し出されてくる溶融樹脂を切断するタイミングの調整が容易となるように、搬送手段20ごとに設定された供給位置、すなわち、搬送手段30のそれぞれと対になって設置される圧縮成形型40の全てが、押出機20の押出口22を中心とする同一円周上にあるようにするのが好ましい。
【0027】
また、搬送手段30による溶融樹脂の切断と、切断された溶融樹脂Dの搬送に支障を来たすものでない限り、搬送手段30の移動を担う駆動機構300の具体的な構成は任意である。
【0028】
例えば、駆動機構300は、図示するように、搬送手段30を水平方向に往復移動させる水平駆動用アクチュエーター301と、これらを鉛直方向に昇降させる鉛直駆動用アクチュエーター302との組み合わせからなるものとすることができる。鉛直駆動用アクチュエーター302は、押出口22から押し出される溶融樹脂を切断するに先だって、時間差で移動する他の搬送手段30との衝突を避けつつ、押出口22を越えて水平駆動用アクチュエーター301の移動方向の上手側に搬送手段30を回り込ませる際に、水平駆動用アクチュエーター301とともに搬送手段30を昇降させるが、その具体的な動作については後述する。
なお、搬送手段30は、水平駆動用アクチュエーター301によって押出口22の下方位置と、圧縮成形型40(供給位置)との間を往復移動するところ、便宜上、圧縮成形型40に向かう方向を往路、圧縮成形機40から離れる方向を復路とし、その移動方向の押出口22側を上手側、圧縮成形型40側を下手側とする。
【0029】
また、図示する例において、圧縮成形型40は、下型としての雄型41と、上型としての雌型42とを有しており、雄型41の上面には凹状の受け部411が形成されている。雄型41の上面に形成する受け部411の大きさや形状は、成形しようとする製品の形状を考慮しつつ、供給される溶融樹脂Dの大きさや形状に応じて設計することができる。
このようにすることで、雄型41上に溶融樹脂Dを落下、供給するに際して、溶融樹脂Dを受け部411で受けることにより、その供給位置の精度を高めることができる。さらに、雄型41を固定して、雄型41に対して雌型42が上下動することで型開きと型締めがなされるようにすることで、雌型42が下動して型締めがなされるまでの間に、雄型41上に供給された溶融樹脂Dの位置ずれが生じてしまうのをより確実に防止することができる。
【0030】
ここで、図示する例では、供給された溶融樹脂Dが、薄肉カップ状の容器に圧縮成形される型構造としてあるが、圧縮成形型40の具体的な型構造は、成形品の形状などに応じて適宜変更できるのはいうまでもない。
【0031】
以上のように、本実施形態にあっては、搬送手段30ごとに設定された供給位置に、圧縮成形型40が設置されるようにしてあり、圧縮成形型40を移動するための機構を必要としない。このため、圧縮成形に際してより高荷重の負荷が必要とされ、型締めのための加圧機構の能力向上や、これに伴う強度確保が要求される場合であっても、圧縮成形型40以外の部分には、その影響が及ばない。したがって、装置全体が大型化してしまったり、装置の建造コストが増大したりするというような不具合を伴うことなく、より高荷重の負荷が必要とされる合成樹脂成形品の製造にも好適に利用することができる。
【0032】
さらに、切断された溶融樹脂Dを十分な精度をもって圧縮成形型40に供給することができるのはもとより、圧縮成形型40は、定められた供給位置に設置して固定されるものであるから、圧縮成形型40に溶融樹脂Dが供給された後においても、溶融樹脂Dの位置精度が損なわれないようにすることも容易である。特に、前述したように、供給される溶融樹脂Dを受ける雄型41を固定することで、溶融樹脂Dの位置ずれをより確実に防止することができる。
【0033】
[合成樹脂製容器の製造方法]
次に、本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法の実施形態について説明する。
本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法は、上記したような成形装置10を好適に利用して実施することができ、成形装置10の動作を以下に説明することによって、本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法の実施形態を説明する。
【0034】
図6及び図7は、成形装置10の動作を説明する工程図である。これらの図には、押出機20の押出口22を中心に、二つの搬送手段30a,30bと、それぞれと対になって設置された二つの圧縮成形型40a,40bとを配置した例を示している。また、図6は、搬送手段30aが、押出機20の押出口22から押し出された溶融樹脂を切断して、圧縮成形型40が設置された供給位置に搬送するまでの工程を示し、図7は、圧縮成形型40に溶融樹脂Dが供給されてから、搬送手段30aが、他方の搬送手段30bの下方の待機位置に向かって移動を開始するまでの工程を示している。
【0035】
成形装置10を利用して合成樹脂製容器を製造するにあたり、一方の搬送手段30aは、図6(1)に示すように、押出口22を越えて、その移動方向の上手側に回り込んだ位置で、押出機20の押出口22から押し出されてくる溶融樹脂の切断に備える。これとともに、他方の搬送手段30bは、搬送手段30aの下方で待機する。
【0036】
押出口22から押し出されてくる溶融樹脂が所定の長さに達すると、水平駆動用アクチュエーター301によって、搬送手段30aを図中矢印方向に移動させる。このとき、押出口22の下方位置を通過する搬送手段30aが、押出口22から押し出されてくる溶融樹脂を切断するとともに、搬送手段30aの移動による慣性力を利用して、切断された溶融樹脂Dを保持する(図6(2)参照)。
なお、溶融樹脂の切断がなされると保持部材34が閉じて、保持面33との間に形成される空間内に、切断された溶融樹脂Dが保持されるのは前述した通りであるが、図6及び図7では、保持部材34の図示は省略してある。
【0037】
搬送手段30aに保持された溶融樹脂Dは、圧縮成形型40が設置された供給位置で搬送手段30が停止すると、圧縮成形型40aの雄型41a上に落下され、その供給が完了する(図6(3)参照)。これとともに、他方の搬送手段30bは、鉛直駆動用アクチュエーター302によって上昇し、押出口22から押し出されてくる溶融樹脂の切断に備える。
このとき、他方の搬送手段30bを上昇させるタイミングは、一方の搬送手段30aとの衝突が避けられる限り任意である。搬送手段30aが押出口22の下方位置を通過した直後に、搬送手段30bが上昇するようにしてもよい。
【0038】
溶融樹脂Dが圧縮成形型40aの雄型41a上に供給されると、図7(4)に示すように、水平駆動用アクチュエーター301によって、搬送手段30aが図中矢印方向に退避するとともに、圧縮成形型40の雌型42aが下動する(図7(5)参照)。これにより、雌雄一対の型41a,42aによって形成されるキャビティ内で、溶融樹脂Dが所定の容器形状の合成樹脂製容器50に圧縮成形される。
【0039】
図7(6)に示すように、圧縮成形を終えると圧縮成形型40aの雌型42aが上動し、成形された合成樹脂製容器50の取り出しを行う。その一方で、下動してくる雌型42aと接触しないように退避した搬送手段30aは、退避後又は退避すると同時に、鉛直駆動用アクチュエーター302によって下降する。次いで、搬送手段30aは、水平駆動用アクチュエーター301によって図中矢印方向に移動して、その移動方向の上手側に押出口22を越えて回り込み、他方の搬送手段30bの下方で待機する。
【0040】
この後は、搬送手段30aと搬送手段30bとが入れ替わって、搬送手段30bが、上記した搬送手段30aと同様に動作することにより、押出口22から押し出されてくる溶融樹脂を切断して圧縮成形型40bに供給し、圧縮成形型40aと圧縮成形型40bとで合成樹脂製容器の圧縮成形を交互に繰り返す。
このようにすることで、本実施形態によれば、合成樹脂製容器50を安定に連続して量産することができる。
【0041】
以上、押出機20の押出口22を中心に、二つの搬送手段30a,30bと、それぞれと対になって設置された二つの圧縮成形型40a,40bとを配置した成形装置10によって、圧縮成形を交互に繰り返す例を挙げて説明したが、搬送手段30と、これと対となる圧縮成形型40を三つ以上に増やして設置した場合であっても同様である。すなわち、搬送手段30と、これと対となる圧縮成形型40が三つ以上に増えても、全ての搬送手段30について、上記した搬送手段30aと同様の動作を時間差でさせることで、それぞれの圧縮成形型40において、圧縮成形を交互に繰り返すことができる。
【0042】
本実施形態において製造される合成樹脂製容器50としては、圧縮成形に際して比較的高荷重の負荷が必要とされる薄肉カップ状の容器が好適であり、特に、多層構造とされた薄肉カップ状の容器を製造するのに適している。合成樹脂製容器50を多層構造とするには、例えば、押出機20のダイヘッド21の内部構造を図8に示すようなものとすればよい。
【0043】
図8に示す例において、ダイヘッド21内には、押出口22に連なる吐出流路220と、押出口22と同心状に配置されて、それぞれに送られてきた溶融樹脂を吐出流路220に流入させる四つの環状流路22a,22b,22c,22dが形成されている。押出口22と同心状に配置される四つの環状流路22a,22b,22c,22dは、便宜上、その外周側から、第一環状流路22a、第二環状流路22b、第三環状流路22c、第四環状流路22dというものとする。
【0044】
第一環状流路22aと第二環状流路22bは、吐出流路220に対して別々に交わっており、第二環状流路22bに送られてきた溶融樹脂が、第一環状流路22aに送られてきた溶融樹脂よりも上流側で、吐出流路220に流入するようになっている。
一方、第三環状流路22cは、吐出流路220に至る途中で第四環状流路22dに交わっており、第三環状流路22cに送られてきた溶融樹脂が、第四環状流路22に送られてきた溶融樹脂とともに、吐出流路220に流入するようになっている。このときの流入位置は、第二環状流路22bに送られてきた溶融樹脂が吐出流路220に流入する位置よりも上流側にある。そして、第三環状流路22cに送られてきた溶融樹脂と、第四環状流路22に送られてきた溶融樹脂とは、図示するような弁体23を開閉することによって、吐出流路220に間欠的に流入するようになっている。
【0045】
ここで、図8(a)は、押出口22から押し出されてきた溶融樹脂を切断する直前の状態を示しており、その切断される部位を図中鎖線で示す。このとき、図示する例では、弁体23が開いており、第三環状流路22cに送られてきた溶融樹脂と、第四環状流路22に送られてきた溶融樹脂とが、吐出流路220に流入し、吐出流路220内を流下していく過程で、第二環状流路22bに送られてきた溶融樹脂と、第一環状流路22aに送られてきた溶融樹脂とに順次合流する。
【0046】
次いで、図8(b)に示すように弁体23を閉じて、第三環状流路22cに送られてきた溶融樹脂と、第四環状流路22に送られてきた溶融樹脂の吐出流路220への流入を遮断する。これにより、先に吐出流路220に流入したこれらの樹脂が切り離されて、シェル体Sが形成される。そして、シェル体Sは、第二環状流路22bから吐出流路220に流入してくる溶融樹脂に押されて扁平になりながら、吐出流路220内を流下していく(図8(c)参照)。
なお、上記のようにして、押出口22から押し出されてくる溶融樹脂内にシェル体Sを形成するにあたり、シェル体Sが形成される間隔や、切断された溶融樹脂D中に含まれるシェル体Sの形状は、弁体23を開閉するタイミングや、各環状流路22a,22b,22c,22dに送られてくる溶融樹脂の流速などを適宜調整することによって制御することができる。
【0047】
以上のようにして、押出口22から押し出されてくる溶融樹脂内にシェル体Sを形成し、そのような溶融樹脂を切断して圧縮成形型40に供給して圧縮成形することにより、例えば、図9に示すような薄肉多層構造のカップ状容器50を成形することができる。すなわち、圧縮成形型40に供給された溶融樹脂Dは、雌雄一対の型41,42によって形成されるキャビティ内で押し拡げられていくが、このとき、シェル体Sにより中間層50b及び内層50cが形成されて、薄肉多層構造のカップ状容器50に成形される。
【0048】
ここで、図9は、本実施形態において成形される薄肉多層構造のカップ状容器50の一例を示し、図9(b)に、図9(a)中鎖線で囲む部分の断面を示している。ダイヘッド21の内部構造を前述したようなものとして、このような薄肉多層構造のカップ状容器50を成形するにあたり、第一環状流路22aに送られてきた溶融樹脂と、第二環状流路22bに送られてきた溶融樹脂には、通常、同種の樹脂が用いられ、これらの樹脂によって外層50aが形成される。そして、シェル体Sを形成する第三環状流路22cに送られてきた溶融樹脂と、第四環状流路22に送られてきた溶融樹脂とによって、それぞれ中間層50bと、内層50cとが形成される。
【0049】
このとき、圧縮成形型40に十分な精度をもって溶融樹脂Dを供給することができず、また、供給後に溶融樹脂Dの位置精度が損なわれてしまうようなことがあると、中間層50b及び内層50cを形成するシェル体Sが、圧縮成形の過程で容器全体に行き渡らなかったり、容器表面にはみ出してしまったりするなどして、中間層50b及び内層50cの形成に支障を来してしまうことになる。
【0050】
これに対して、本実施形態によれば、切断された溶融樹脂Dを十分な精度をもって圧縮成形型40に供給することができるのはもとより、圧縮成形型40は、定められた供給位置に設置して固定されるものであるから、圧縮成形型40に溶融樹脂Dが供給された後においても、溶融樹脂Dの位置精度が損なわれないようにすることも容易であるため、シェル体Sによって形成される中間層50b及び内層50cの容器内における分布を均一にすることができる。本実施形態における合成樹脂容器の製造方法が、特に、多層構造とされた薄肉カップ状の容器を製造するのに適しているのは、このような理由による。
【0051】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、圧縮成形による合成樹脂成形品、特に、多層構造とされた薄肉の合成樹脂容器の製造に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る溶融樹脂圧縮成形装置の実施形態を示す概略平面図である。
【図2】本発明に係る溶融樹脂圧縮成形装置の実施形態を示す要部拡大図である。
【図3】本発明に係る溶融樹脂圧縮成形装置の実施形態を示す要部側面図である。
【図4】搬送手段の概略を示す説明図である。
【図5】搬送手段が押出口の下方位置を通過する前後の状態を示す説明図である。
【図6】本発明に係る溶融樹脂圧縮成形装置の実施形態の動作を説明する工程図である。
【図7】本発明に係る溶融樹脂圧縮成形装置の実施形態の動作を説明する工程図である。
【図8】合成樹脂製容器を多層構造とするダイヘッドの一例を示す説明図である。
【図9】合成樹脂製容器の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 成形装置
20 押出機
22 押出口
30 搬送手段
31 切断部
33 保持面
34 保持部材
300 駆動機構
301 水平駆動用アクチュエーター
302 鉛直駆動用アクチュエーター
40 圧縮成形型
41 雄型(下型)
411 受け部
42 雌型(上型)
50 合成樹脂製容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機の押出口から溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すとともに、
前記押出口を中心に配置された複数の搬送手段によって、前記押出口から押し出されてくる溶融樹脂を所定長さごとに交互に切断しつつ、前記搬送手段のそれぞれに設定された供給位置まで搬送することを特徴とする溶融樹脂の供給方法。
【請求項2】
溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すように押出口を設けた押出機と、
前記押出口から押し出されてくる溶融樹脂を切断する切断部を有し、前記切断部によって切断された溶融樹脂をそれぞれに設定された供給位置まで搬送する複数の搬送手段と
を備え、
前記各搬送手段が、前記押出口を中心に配置されて、前記押出口の下方位置と前記供給位置との間を交互に往復移動することを特徴とする溶融樹脂供給装置。
【請求項3】
前記搬送手段ごとに設定された前記供給位置の全てが、前記押出口を中心とする同一円周上にある請求項2に記載の溶融樹脂供給装置。
【請求項4】
前記搬送手段が、前記切断された溶融樹脂の側面に当接し、前記搬送手段の移動時の慣性力を利用して前記切断された溶融樹脂を保持する保持面と、前記保持面に対向して開閉可能に取り付けられた保持部材とを有し、
前記保持面の上方に前記切断部が形成された請求項2又は3のいずれか1項に記載の溶融樹脂供給装置。
【請求項5】
前記各搬送手段が、前記押出口を中心に放射状に設置された複数の駆動機構のそれぞれに取り付けられて、前記押出口の下方位置と前記供給位置との間を交互に往復移動する請求項2〜4のいずれか1項に記載の溶融樹脂供給装置。
【請求項6】
前記駆動機構が、前記搬送手段を水平方向に往復移動させる水平駆動用アクチュエーターと、前記各搬送手段を鉛直方向に昇降させる鉛直駆動用アクチュエーターとを有する請求項5に記載の溶融樹脂供給装置。
【請求項7】
押出機の押出口から溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すとともに、
前記押出口を中心に配置された複数の搬送手段によって、前記押出口から押し出されてくる融樹樹脂を所定長さごとに交互に切断しつつ、前記搬送手段と対になって設置された複数の圧縮成形機のそれぞれに供給し、
前記圧縮成形機によって、前記切断された溶融樹脂を所定形状に圧縮成形することを特徴とする溶融樹脂の圧縮成形方法。
【請求項8】
溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すように押出口を設けた押出機と、
前記押出口から押し出されてくる溶融樹脂を切断する切断部を有し、前記切断部によって切断された溶融樹脂をそれぞれに設定された供給位置まで搬送する複数の搬送手段と、
前記搬送手段と対になって前記搬送手段ごとに設定された前記供給位置に設置されて、前記切断された溶融樹脂を所定形状に圧縮成形する複数の圧縮成形型と
を備え、
前記各搬送手段が、前記押出口を中心に配置されて、前記押出口の下方位置と前記供給位置との間を交互に往復移動することによって、前記切断された溶融樹脂を前記圧縮成形型に順次供給することを特徴とする溶融樹脂圧縮成形装置。
【請求項9】
前記圧縮成形型の全てが、前記押出口を中心とする同一円周上に設置された請求項8に記載の溶融樹脂圧縮成形装置。
【請求項10】
押出機の押出口から溶融状態にある樹脂をほぼ鉛直下方に押し出すとともに、
前記押出口を中心に配置された複数の搬送手段によって、前記押出口から押し出されてくる融樹樹脂を所定長さごとに交互に切断しつつ、前記搬送手段と対になって設置された複数の圧縮成形機のそれぞれに供給し、
前記圧縮成形機によって、前記切断された溶融樹脂を所定の容器形状に圧縮成形することを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項11】
前記圧縮成形型が、下型としての雄型及び上型としての雌型を有し、
前記搬送手段によって、前記切断された溶融樹脂を前記圧縮成形型に供給する際に、前記雄型の上面に設けた凹状の受け部で前記切断された溶融樹脂を受ける請求項10に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項12】
多層構造とされた薄肉カップ状の容器を製造する請求項10又は11のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−226609(P2009−226609A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71368(P2008−71368)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】