説明

演算増幅器及びそれを用いた表示駆動回路

【課題】大きなスルーレートが必要なときのみオペアンプへの供給電流値を一時的に増加させ、不要なときは、電流値が小さくなり消費電流の削減が可能となる、安価で簡便な回路構成が求められている。
【解決手段】電流源用入力端子75p,75n及び定電流源41p,41nを有し、2つの入力信号の差を増幅した出力信号を出力するオペアンプ本体30と、電流源用入力端子75p,75nと制御端子70p,70nとの間に結合された容量71p,71nを有するオペアンプであって、制御端子70p,70nに入力されているオペアンプ本体30の動作開始信号ENAB,ENAが変化したとき、容量71p,71nによりVBP,VBNに定電圧源41p,42nの定電流Ip,Inを増加させるよう変化を起こしてオペアンプのスルーレートを向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、表示装置等の制御に使われる演算増幅器(以下「オペアンプ」という。)であって、方形波状の入力波形に応答して変化する出力波形の立ち上がりや立下りの際に生じる傾斜(スルーレート=単位時間に対する電圧変化)を改善したオペアンプ及びそれを用いた表示駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来のオペアンプの概略を示す構成図である。
従来のオペアンプは、定電流を出力する図示しない定電流源と、入力信号と帰還させた出力信号との電位差を増幅して増幅信号を出力する図示しない差動部本体とを有する差動部21と、その増幅信号を更に増幅して出力する差動増幅部22と、増幅された信号を外部に出力する出力部23とを備えている。
【0003】
差動部21には、バイアス回路10から電流源用入力端子を通じて、電圧VBP及びVBNが印加されている。更に、差動部21の反転入力端子(−)には、出力信号が帰還され、非反転入力端子(+)には入力端子1が接続されている。出力部23には、出力端子2が接続されている。
【0004】
従来から、液晶ディスプレイ(以下「LCD」という。)の制御においては、ソースドライバにより液晶パネルの液晶セルを駆動することにより行われている。ソースドライバには、オペアンプ20が使われており、このソースドライバ用のオペアンプ20に要求される特性に、スルーレート特性がある。
【0005】
スルーレート特性は、オペアンプ20の反応スピードを示すもので、出力信号の大きさをV[ボルト]、出力信号の立ち上がり又は立下り時間をsr[マイクロ秒]とすると、スルーレートは、SR=V/sr[ボルト/マイクロ秒]となる。
【0006】
このスルーレート特性は、オペアンプ20の差動部21の図示しない差動部本体に流す電流量で決まる。電流量が多いほどスルーレートは向上し、電流量が少ないほどスルーレートは低下する。その一方で、オペアンプ20は、電流消費量が低消費であることが求められている。
【0007】
LCDのソースドライバは、出力チャンネル数が多く(数百〜数千)、オペアンプ20は出力チャンネル数と同数用意する必要があるため、1個のオペアンプ20の消費電流がマイクロアンペアオーダーで増加しても、全体で見ると、ミリアンぺアオーダーの増加となってしまう。よって、オペアンプ20に流す電流量は、求められる特性に応じた調整が必要となる。
【0008】
図8は、図7中のオペアンプの動作波形を表す波形図である。
動作開始信号ENAは、オペアンプ20に対するアンプ動作開始信号で、LCDのソース駆動部及び走査駆動部を制御するコントローラによって出力される。例えば、動作開始信号ENAは、時刻t1において、“H”から“L”に立下り、この“L”期間中、時刻t2おいて入力信号inが“H”から“L”に切り替わる。時刻t3において、動作開始信号ENAが立ち上がり“L”から“H”になると、出力信号outが出力される。
【0009】
オペアンプ20には、スルーレート特性があるため、時刻t3からt4にかけて時間srを要して“H”から“L”に切り替わる。
【0010】
差動部21には、バイアス回路10から電流源用入力端子を通じて、定電圧VBP=VDD−Vtp-α及びVBN=Vtn+αが印加されている。ここで、VDDは電源圧、Vtpは第1の定電流源を動作させる閾値電圧及びVtnは、第2の定電流源を動作させる閾値電圧である。
【0011】
このようなオペアンプ20に流す電流量を調整し、スルーレートを制御する回路については、次のような文献に記載されている。
【0012】
【特許文献1】特開平10−22749号公報
【0013】
特許文献1には、オペアンプの入力信号が変化して反転入力端子と基準電圧を入力する非反転入力端子との間に入力電圧差を生じると、オペアンプの内部電流源回路に接続されている電流源発生回路は、これらの反転入力端子及び非反転入力端子それぞれの電圧を入力し、このバランスの崩れを検出して出力電流を増加させる。オペアンプが内蔵する内部電流回路は、この出力電圧の増加を受けて電流を増加させ、オペアンプのスルーレートを向上させるオペアンプが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
例えば、LCDの制御に使われるソースドライバの出力時にアンプ動作開始信号に同期してオペアンプのスルーレートを向上させる等、必要なタイミングでのみ、動作電流を増加させ、スルーレートを向上させる技術が必要とされている。しかしながら、特許文献1の発明は、オペアンプの入力信号が変化したときに、オペアンプのスルーレートを向上させる技術であり、発明の目的、構成及び効果等において異なるものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のオペアンプは、電流源用入力端子に入力される制御信号により制御されて定電流を出力する定電流源を有し、制御端子から入力される動作開始信号により活性化され、前記定電流により2つの入力信号の差を増幅した出力信号を出力するオペアンプであって、前記電流源用入力端子と前記制御端子との間に結合された容量を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の他のオペアンプは、第1の電流源用入力端子に入力される第1の制御信号により制御されて第1の定電流を出力する第1の定電流源と、第2の電流源用入力端子に入力される第2の制御信号により制御されて第2の定電流を出力する第2の定電流源とを有し、第1の制御端子から入力される第1の動作開始信号と第2の制御端子から入力される第2の動作開始信号とにより活性化され、前記第1の定電流及び前記第2の定電流により2つの入力信号の差を増幅した出力信号を出力するオペアンプであって、前記第1の電流源用入力端子と前記第1の制御端子との間に結合された第1の容量と、前記第2の電流源用入力端子と前記第2の制御端子との間に結合された第2の容量とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電流源用入力端子と制御端子との間に結合されたた容量は、動作開始信号を受けると、オペアンプの定電流を出力する定電流源のゲート電位をオペアンプの電流が増える方向に一時的に変動させる。その結果、オペアンプの出力タイミングに同期して一時的にオペアンプのスルーレートが向上することになる。この電流の増加は一時的であり、その後は、定電圧回路により定電流源のゲート電位が所定の電圧レベルに戻るため、増加した電流も元の定常状態に戻る。このように、必要なタイミングでのみ、動作電流を増加させ、スルーレートを向上させるため、電流消費の増加を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0019】
(実施例1におけるオペアンプの概略の構成)
図1は、本発明の実施例1におけるオペアンプの概略を示す構成図である。
【0020】
本実施例1におけるオペアンプは、第1の電流源用入力端子75pと第1の制御端子70pとの間に結合された第1の容量71pと、第2の電流源用入力端子75nと第2の制御端子70nとの間に結合された第2の容量71nと、2つの入力信号の差を増幅した出力信号を出力するオペアンプ本体30から構成されている。
【0021】
オペアンプ本体30は、差動部40、その出力側に設けられた差動増幅部50及び更に、その出力側に設けられた出力部60を有している。差動部40は、電流源用入力端子75pに入力される第1の制御信号(例えば、定電圧VBP)により制御されて第1の定電流Ipを出力する第1の定電流源41pと、第2の電流源用入力端子75nに入力される第2の制御信号(例えば、定電圧VBN)により制御されて第2の定電流Inを出力する第2の定電流源41nとを有している。
【0022】
更に、差動部40は、定電流Ip及び定電流Inにより2つの入力信号の差を増幅した信号を出力する差動部本体40Aを有している。差動部本体40Aの非反転入力端子(+)には、入力端子72が接続され、反転入力端子(−)には、出力部60が接続されている。
差動増幅部50は、差動部本体40Aの出力した信号を更に増幅する回路であり、増幅結果を出力部60に出力する。出力部60には、出力端子74が接続されている
【0023】
バイアス回路200は、定電圧源であり電流源用入力端子75pに定電圧VBP、電流源用入力端子75nに定電圧VBNを印加している。バイアス回路200には、互いに反転の関係にある制御信号SAVEB,SAVEが入力されている。
【0024】
容量71p及び容量71nは、動作開始信号ENAB及びENAの立下り及び立ち上がりで、定電流源41p及び定電流源41nの電流量を増加させるように定電圧VBP及び定電圧VBNを変化させる。定電流源41p及び定電流源41nの電流が増加することによりオペアンプ本体30のスルーレートが向上する。なお、動作開始信号ENAB及びENAは、互いに反転信号である。
【0025】
(実施例1におけるLCDの構成)
図2は、本発明の実施例1におけるLCDを示す概略の構成図である。
【0026】
本実施例1のLCDは、液晶パネル110と、この液晶パネル110を駆動するソース駆動部120及び走査駆動部130と、これらを制御するコントローラ150と、各回路に定電圧を供給するバイアス回路200と、そのバイアス回路200を制御するバイアス制御回路140とを備えている。
【0027】
液晶パネル110は、複数の走査線111と複数のデータ線120との交差箇所に配置された複数の液晶セル114が、マトリックス上に配置されて構成されている。この液晶セル114は、液晶素子113及びゲート114等から構成されている。
【0028】
ソース駆動部120は、コントローラ150によって制御される複数の表示駆動回路(例えば、ソースドライバ)121を有し、そのソースドライバは、オペアンプ本体30等により構成され、コントローラ130からの動作開始信号ENA、ENABを受けて液晶素子113を駆動している。走査駆動部130は、コントローラ150によって制御される複数のゲートドライバ131を有し、そのゲートドライバは、各液晶セル内のゲート114を制御する。
【0029】
例えば、横1024ドット×縦768ドットのカラー液晶パネル110の場合、1024ドット×3色=3072本の出力が必要となり、出力数が384本のソースドライバ121の場合は、3072ドット/384本=8チップのソースドライバ121が使用されている。そして、各ソースドライバ121チップには、各出力に対応して384個のオペアンプ本体30が搭載されている。
【0030】
バイアス回路200は、バイアス制御回路から制御信号SAVE及びSAVEBを受け各ソースドライバ121に定電圧VBP,VBNを供給し、各ゲートドライバ131には、定電圧VBを供給している。
【0031】
(実施例1におけるバイアス制御回路140の構成)
図3は、図2中のバイアス制御回路140を示す回路図である。
【0032】
制御信号MPGとグランドの間に、NMOS143、NMOS144及びNMOS145が直列に接続され、NMOS145のゲートには、テスト信号TESTBの入力端子が接続されている。電源VDDとグランンド間には、PMOS141、PMOS142及びNMOS146が直列に接続され、PMOS141のゲートには、インバータ147を介してテスト信号TESTBの入力端子が接続されている。NMOS146のゲートには、定電圧VBNが印加されている。テスト信号TESTBは、そのまま制御信号SAVEBとして出力されると同時に、インバータ147で反転されて制御信号SAVEが出力される。
【0033】
本バイアス制御回路140は、通常時は、テスト信号TESTB=“H”で固定されており、バイアス回路200は動作状態を継続している。テスト信号TESTB=“L”とするとバイアス回路200が停止する。
【0034】
(実施例1におけるバイアス回路200の構成)
図4は、図2中のバイアス回路200を示す回路図である。
【0035】
本バイアス回路200は、定電圧VBP,VBP2,VBN,VBN2を生成する回路であり、その構成の概略は以下の通りである。
【0036】
電源VDDとグランド間には、PMOS206、NMOS208及びNMOS209が直列に接続され、PMOS208のソースと電源VDD間には、PMOS207が接続されている。PMOS208のソースの電位は定電圧VBPとして出力される。
【0037】
電源VDDとグランド間には、PMOS210及びNMOS213が直列に接続され、電源VDDとNMOS213のドレイン間には、PMOS211及びPMOS212が直列に接続されている。PMOS213のドレインの電位は、定電圧VBP2として出力される。
【0038】
電源VDDとグランド間には、PMOS214b、NMOS217及びNMOS218が接続され、NMOS217のドレインとグランド間には、NMOS219が接続されている。NMOS217のドレインの電位は、定電圧VBN2として出力される。
【0039】
電源VDDとグランド間には、PMOS220、NMOS221、NMOS222が直列で接続され、NMOS222のドレインとグランド間には、NMOS223が接続されている。NMOS223のゲートには、制御信号SAVEが印加されている。NMOS222のドレインの電位は、定電圧VBNとして出力される。
【0040】
(実施例1におけるオペアンプの構成)
図5は、図1のオペアンプを示す回路図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0041】
本オペアンプ本体30は、定電流源41p及び定電流源41nを有し、入力信号inと出力信号outからのフィードバックが入力され、その電圧差により増幅された信号を出力する差動部40と、この出力側に接続された差動増幅部50と、この出力側に接続され、負帰還の安定性(位相余裕)を補償する位相補償部80と、この出力側に接続されて出力信号outを外部に出力するプッシュプル型の出力部60とから構成されている。
【0042】
オペアンプ本体30の差動部40の定電流源41pのゲートには、バイアス回路200からの電流源用入力端子75pが接続され、定電圧VBPが供給されている。この定電流源41pは、PチャネルMOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)で構成されている。PMOS41pのドレインは、並列接続により差動増幅回路を構成しているPMOS42a及びPMOS42bのソースに接続されている。
【0043】
同様に、差動部40の定電流源41nのゲートには、バイアス回路200からの電流源用入力端子75nが接続され、定電圧VBNが供給されている。この定電流源41nは、NチャネルMOSトランジスタ(以下「NMOS」という。)で構成されている。NMOS41nのドレインは、並列接続により差動増幅回路を構成しているNMOS43a及びNMOS43bのソースに接続されている。
【0044】
差動部40のPMOS42aのドレインは、ノードN57に接続され、PMOS42bのドレインはノードN55に接続され、NMOS43aのドレインはノードN56に接続され、NMOS43bのドレインはノードN54に接続されている。
【0045】
差動増幅部50では、電源VDDとグランド間に、PMOS51a,ノードN54、NMOS52a、ノードN55及びNMOS53aが直列に接続されている。NMOS52aのドレインには、NMOS52bのドレインが接続され、NMOS52aのソースには、NMOS52bのソースが接続されている。
【0046】
更に、電源VDDとグランド間には、PMOS51b、ノードN56、PMOS52c、ノードN57及びNMOS53bが直列に接続されている。PMOS52cのソースには、PMOS52dのソースが接続され、PMOS52cのドレインには、PMOS52dのドレインが接続されている。NMOS52a、NMOS52b、PMOS52c及びPMOS52dのゲートには、それぞれ、定電圧VBN2が印加されている。
【0047】
PMOS51a及びPMOS51bとは、そのゲートが互いに接続されてPMOS51aのドレインに短絡されたカレントミラー回路を構成している。同様に、NMOS53a及びNMOS53bとは、そのゲートが互いに接続されてNMOS31aのドレインに短絡されたカレントミラー回路を構成している。
【0048】
プッシュプル型の出力部60は、電圧VDDとノードN62との間に接続された出力用PMOS61pと、ノードN62とグランドの間に接続された出力用NMOS61nとを有している。PMOS61pは、ノードN56の電位によりゲート制御され、NMOS61nは、ノードN57の電位によりゲート制御される。
【0049】
ノードN62には、出力スイッチ73が接続されており、その出力側には、出力端子74が接続されている。出力スイッチ73は、PMOS73p及びNMOS73nの並列接続からなるアナログスイッチにより構成されている。NMOS73nのゲートには、動作開始信号ENAが、PMOS73pのゲートには、動作開始信号ENABがそれぞれ印加されている。
【0050】
差動増幅部50と出力部60の間には、位相補償部80が接続されている。位相補償部80は、容量81及び容量82を有しており、容量81の一端は、ノードN56とPMOS61pのゲートに接続され、容量82の一端は、ノードN57とNMOS61nのゲートに接続され、容量81と容量82の他端は、相互に接続され、ノードN62に接続されている。
【0051】
(実施例1におけるオペアンプの動作)
始めに、オペアンプ本体30の通常の動作について次の(A)、(B)のケースについて説明する。
【0052】
(A) in>outのとき
定常状態から入力信号inの電圧が出力信号outの電圧より高くなったときは、オペアンプ本体30は、次の(1)〜(4)の動作を行う。
【0053】
(1) in>outとなったとすると、PMOS42a及びNMOS43aのゲート電圧が上昇する。その結果、ノードN56の流出電流は増加し、ノードN57の流入電流は減少する。
【0054】
(2) ノードN57の流入電流は減少するので、ノードN57の電圧が低下し、NMOS61nのゲート電圧が下がるのでNMOS61nのドレイン電流が減少する。
【0055】
(3) ノードN56の流出電流が増加するのでノードN56の電圧が低下し、PMOS61pのゲート電圧が下がるのでPMOS61pのソースードレイン間電流を増加させる。
【0056】
(4) その結果、液晶パネル110の液晶セル115への流入電流が増加する。
【0057】
(B) in<outのとき
定常状態から入力信号inの電圧が出力信号outの電圧より低くなったときは、オペアンプ本体30は、次の(1)〜(4)の動作を行う。
【0058】
(1) in<outとなったとすると、PMOS42a及びNMOS43aのゲート電圧が低下する。その結果、ノードN56の流出電流は減少し、ノードN57の流入電流は増加する。
【0059】
(2) ノードN57の流入電流は増加するので、N57の電圧が上昇し、NMOS61nのゲート電圧を上げるのでNMOS61nのドレイン電流が増加する。
【0060】
(3) ノードN56の流出電流が減少するのでノードN56の電圧が上昇し、PMOS61pのゲート電圧を上げるのでPMOS61pのソースードレイン間電流を減少させる。
【0061】
(4) その結果、液晶パネル110の液晶セル115からの還流電流が増加する。
【0062】
以上、オペアンプ本体30の通常の動作について説明したが、次に本実施例1のオペアンプのスルーレートを向上させる動作について説明する。
【0063】
図6は、図5に示すオペアンプの動作波形を表す波形図である。
バイアス回路200から定電流源であるPMOS41p及びNMOS41nに印加される電位は、それぞれ定電圧VBP=VDD−Vtp−α及び定電圧VBN=Vtn+αに設定されている。ここで、VtpはPMOS41pの閾値で、VtnはNMOS41nの閾値である。VBP及びVBNは、それぞれ、αだけ加減されているので、PMOS41pには、定電流Ipが、NMOS41nには、定電流Inが常時、流れている。
【0064】
通常、出力スイッチ73のNMOS73nには、動作開始信号ENA=“H”が、PMOS73pには、動作開始信号ENAB=“L”が印加されているので、ノードN62と出力端子74は、導通状態になっている。以下、(1)〜(8)で順次説明する。
【0065】
(1) 動作開始信号ENAは、時刻t1において、“H”から“Lに”立下り、この“L”期間中、時刻t2おいてに入力信号inが“H”から“L”に切り替わる。
【0066】
(2) コントローラ150の制御により、時刻t3でENABは、“H”から“L”へ遷移し、動作開始信号ENAは、“L”から“H”へと遷移する。このとき、電位VBPは、容量71pの影響を受けて、定電圧VBP=VDD−Vtp−α―ΔVに変動し、定電圧VBNは、容量71nの影響を受けて、定電圧VBN=Vtn+α+ΔVに変動する。
【0067】
(3) その結果、PMOS41pのゲート電圧が負の方向に変動し、定電流Ipは、急激に増加する。同様に、PMOS41nのゲート電圧が正の方向に変動し、定電流Inは、急激に増加する。
【0068】
(4) 定電流Ipが増加するとノードN55及びノードN57に流入する電流が増加し、定電流Inが増加するとノードN54及びノード56から流出する電流が増加する。
【0069】
(5) その結果、ノードN55及びノード57の電圧は、高くなりNMOS61nのゲート電圧を上げる。
【0070】
(6) ノードN54及びノードN56の電圧は、低下してPMOS61pのゲート電圧は低くなる。
【0071】
(7) NMOS61nのゲート電圧が上がるので、NMOS61nのドレインーソース間の電流は増加する。
【0072】
(8) PMOS61pのゲート電圧は低くなるのでPMOS61pのソースードレイン間の電流は増加する。
【0073】
以上により出力部60の電流が増加し、出力部60での電流の吐き出し及び引き込みにおいて出力部60の駆動能力を増加させ、スルーレートを向上させることができる。
【0074】
なお、容量71pがVBPに及ぼす影響はENABの立下りの瞬時であり、その後、バイアス回路200によりVBPは通常の電位に復帰する。同様に、容量71nがVBPBに及ぼす影響はENAの立ち上がりの瞬時であり、その後、バイアス回路200によりVBNは通常の電位に復帰する。
【0075】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、オペアンプ本体30の動作開始信号が発信されると、電流源用入力端子75pに設けられた容量71pは、オペアンプ本体30の定電流源であるPMOS41pのゲート電位をPMOS42a及び42bのソースからドレインに流れる電流量Ipが増える方向に一時的に変動させる。
【0076】
同様に、オペアンプ本体30の動作開始信号が発信されると、電流源用入力端子75nに設けられた容量71nは、オペアンプ本体30の定電流源であるNMOS41nのゲート電位をNMOS43a及び43bのドレインからソースに流れる電流量Inが増える方向に一時的に変動させる。その結果、オペアンプ本体30のスルーレートを向上させることができる。
【0077】
その後は、バイアス回路200により定電流源のゲート電位が所定の電圧レベルに戻るため、増加した電流も元の定常状態に戻る。このことによりPMOS41p及びNMOS41nのゲートに印加される電圧は、当初の電圧レベルに戻る。このため、増加した電流も所定の電流レベルに戻るので、オペアンプ本体30の動作電流の増加を抑制することができる。
【0078】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(e)のようなものがある。
【0079】
(a) オペアンプ本体30の構成で、位相補償部80はレール・ツー・レールのための回路であり、これを省略したオペアンプでも適応が可能である。
【0080】
(b) オペアンプ本体30を構成するトランジスタとして、MOSで構成することで説明したが、接合型電界効果トランジスタ又はバイポーラトランジスタで構成してもよい。更に、本実施例1のオペアンプ本体30の回路構成を他の構成にしてもよい。
【0081】
(c) 実施例1では、オペアンプ本体30の動作開始信号を受けたとき、容量71p及び容量71nによりバイアス電圧に変化を起こしてオペアンプ本体30のスルーレートを制御することで説明したが、動作開始信号の替わりに、オペアンプ本体30の出力開始に同期した他の信号であっても同様の接続を行うことでスルーレートの制御が可能である。
【0082】
(d) 本実施例1では、液晶ディスプレイの制御に使われるオペアンプの例で説明したが、本発明のオペアンプは、有機ELディスプレイ等の種々の装置に適用が可能である。
【0083】
(e) 実施例1では、出力スイッチ73を出力部60のノードN62と出力端子74の間に設けることで説明したが、差動部40又は差動増幅部50に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例1におけるオペアンプの概略を示す構成図である。
【図2】本発明の実施例1における液晶ディスプレイを示す概略の構成図である。
【図3】図2中のバイアス制御回路140を示す回路図である。
【図4】図2中のバイアス回路200を示す回路図である。
【図5】図1のオペアンプを示す回路図である。
【図6】図5に示すオペアンプの動作波形を表す波形図である。
【図7】従来のオペアンプの概略を示す構成図である。
【図8】図7中のオペアンプの動作波形を表す波形図である。
【符号の説明】
【0085】
30 オペアンプ
40 差動部
40A 差動部本体
41p、41n 定電流源
50 差動増幅部
60 出力部
70p、70n 制御端子
71p、71n 容量
72 入力端子
73 出力スイッチ
74 出力端子
75p、75n 電流源用入力端子
110 液晶パネル
120 ソース駆動部
130 走査駆動部
200 バイアス回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流源用入力端子に入力される制御信号により制御されて定電流を出力する定電流源を有し、制御端子から入力される動作開始信号により活性化され、前記定電流により2つの入力信号の差を増幅した出力信号を出力する演算増幅器であって、
前記電流源用入力端子と前記制御端子との間に結合された容量を有することを特徴とする演算増幅器。
【請求項2】
第1の電流源用入力端子に入力される第1の制御信号により制御されて第1の定電流を出力する第1の定電流源と、第2の電流源用入力端子に入力される第2の制御信号により制御されて第2の定電流を出力する第2の定電流源とを有し、第1の制御端子から入力される第1の動作開始信号と第2の制御端子から入力される第2の動作開始信号とにより活性化され、前記第1の定電流及び前記第2の定電流により2つの入力信号の差を増幅した出力信号を出力する演算増幅器であって、
前記第1の電流源用入力端子と前記第1の制御端子との間に結合された第1の容量と、前記第2の電流源用入力端子と前記第2の制御端子との間に結合された第2の容量と、
を有することを特徴とする演算増幅器。
【請求項3】
請求項1記載の演算増幅器は、更に、
前記動作開始信号によりオン/オフ動作して前記出力信号を外部に出力する出力スイッチを有することを特徴とする演算増幅器。
【請求項4】
請求項2記載の演算増幅器は、更に、
前記第1及び第2の動作開始信号によりオン/オフ動作して前記出力信号を外部に出力する出力スイッチを有することを特徴とする演算増幅器。
【請求項5】
前記出力スイッチは、アナログスイッチにより構成されていることを特徴とする請求項3記載の演算増幅器。
【請求項6】
前記出力スイッチは、アナログスイッチにより構成されていることを特徴とする請求項4記載の演算増幅器。
【請求項7】
前記制御信号は、一定のバイアス電圧であることを特徴とする請求項1、3又は5記載の演算増幅器。
【請求項8】
前記第1及び第2の制御信号は、一定のバイアス電圧であることを特徴とする請求項2、4又は6記載の演算増幅器。
【請求項9】
前記定電流源は、前記制御信号により導通状態が制御されるトランジスタにより構成されていることを特徴とする請求項1、3、5又は7記載の演算増幅器。
【請求項10】
前記第1の定電流源は、前記第1制御信号により導通状態が制御されるトランジスタにより構成され、前記第2の定電流源は、前記第2制御信号により導通状態が制御されるトランジスタにより構成されていることを特徴とする請求項2、4、6又は8記載の演算増幅器。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の演算増幅器を有することを特徴とする表示駆動回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−147830(P2010−147830A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323092(P2008−323092)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】