説明

濃淡パターン判別方法および濃淡パターン判別装置、上記濃淡パターン判別方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、並びに上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】判別対象パターンが比較対象パターンに類似しているか否かを判別する濃淡パターン判別方法であって、明るさ変化に対してロバストであるとともに、パターン内の濃淡差が大きても小さくても、またパターン内に未知の濃淡異常や不良が含まれていても、類否を精度良く判別できるものを提供すること。
【解決手段】判別対象パターン、比較対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1、第2の正規化濃淡値を生成する。第1、第2の正規化濃淡値を変数とし、かつ互いに直交する2つの座標軸とする2次元空間を設定する。その2次元空間に、判別対象パターンと比較対象パターン上の互いに対応する位置における第1、第2の正規化濃淡値が表す点を累積して、2次元ヒストグラムを作成する。2次元ヒストグラムをなす点の集合を少なくとも1つのクラスタに分類し、クラスタに関する形状、位置若しくは頻度に関する特徴に基づいて、判別対象パターンが比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は濃淡パターン判別方法に関し、より詳しくは、判別対象としての濃淡パターン(これを「判別対象パターン」と呼ぶ。)が、比較対象(リファレンス)としての濃淡パターン(これを「比較対象パターン」と呼ぶ。)に類似しているか否かを判別する濃淡パターン判別方法に関する。
【0002】
また、この発明は、そのような濃淡パターン判別方法を実行する濃淡パターン判別装置に関する。
【0003】
また、この発明は、そのような濃淡パターン判別方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【0004】
また、この発明は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0005】
近年、液相成長法、気相成長法などによってされた薄膜の膜厚分布をカメラにより観察し、その膜厚分布が正常であるか、または異常であるかを自動感知することで、成膜プロセスの異常を早期に発見するシステムが開発されている。一般に薄膜を干渉光学系によってカメラで計測した場合、その成膜状態(膜厚分布の状態)は、画像上での濃淡パターンとなって表れる。例えば、或る領域の膜厚とその周辺領域の膜厚との間に差が生じていれば、画像上ではそれらの領域間で濃淡差が発生する。また、成膜条件の予期せぬ乱れによって膜厚分布の状態が変化してしまった場合、画像上ではその薄膜の濃淡パターンとそれ以外の薄膜の濃淡パターンとの間の差異(濃淡値の面内分布の差異)として表れる。
【0006】
カメラによって撮像された画像を用いて成膜状態を自動監視するシステムにおいては、上述のような差異を利用して監視が行われている。自動監視のプロセスとしては、まず、「良」とする膜厚分布に関する画像の濃淡パターンをリファレンスの濃淡パターンとして事前に定めておく。そのうえで、監視対象である膜厚分布に関する画像の濃淡パターンが、リファレンスの濃淡パターンに対してどの程度変動しているかを、画像における濃淡パターン間の差異として定量化し、管理する。さらに、その定量値を元に、監視対象の膜厚分布が、正常(リファレンスとする成膜状態と同程度の状態)であるか、または異常であるかを判別し、異常であると判別された場合は監視担当者にアラームを発報する。
【0007】
従来、濃淡パターンの類否または異常の有無を判別する問題(比較対象パターンと判別対象パターンが同類であるとみなせるかを判別する問題、もしくは比較対象パターンと比較して、判別対象パターンに大きな変化があるか(異常が発生しているか)を検知する問題)に関して、様々な方法が提案されている。例えば、最も単純な方法として、両パターン間の差分を取り、その差分画像を解析することによって、パターン上の異常/不良発生有無を検出する方法がある。しかし、このような差分による方法は、濃淡パターンの明るさの変化に対して精度が悪化する。
【0008】
一方、別のアプローチとして、比較対象パターンと判別対象パターンとの間の正規化相関を計算し、その相関値をパターン間の類似度として、パターン判別を行う方法がある。この方法は、パターン全域の明るさの変動に対しても、ロバスト(robust)にパターン間の類似度を計算でき、安定してパターンを判別できるという長所を持つ。その一方で、正規化相関自体には、パターンに階調差が少ない場合(フラットに近いパターンの場合)、ノイズ成分同士で相関を計算することに等しくなり、相関値が不安定になるという大きな問題がある。その問題を回避したパターン比較方法が特許文献1(特開2004−108779号公報)にて開示されている(これを「従来技術1」と呼ぶ。)。
【0009】
また、さらに別なアプローチとして、比較対象パターンの濃淡値と判別対象パターンの濃淡値とから成る2次元ヒストグラムを作成し、この2次元ヒストグラム上の分布を解析することで、両パターン間の差異を判別する方法もある。濃淡値による2次元ヒストグラムとは、濃淡値のスケールをそれぞれx軸、y軸とする2次元空間(x−y空間)において、一方のパターン上の或る位置における濃淡値(x座標)と、もう一方のパターンの同位置における濃淡値(y座標)との組が表す点を、プロットすることによって生成されるものである。従って、両パターンが完全に同一のパターンであれば、2次元ヒストグラム上では、全てのプロット点は直線y=x上にプロットされることになる。例えば特許文献2(特開2001−133418号公報)では、2つの濃淡パターンの比較において、これらの濃淡値から成る2次元ヒストグラムを生成した上で、その分布上の母体分布を成す領域が両パターンの類似領域であるとし、その類似領域から外れた領域をパターン間の差異(パターンの異常)として検出する方法が開示されている(文献では欠陥の検出問題として扱っている)(これを「従来技術2」と呼ぶ。)。また、特許文献3(特開2003−337945号公報)では、カラー画像の分類方法として、1枚のカラー画像のRGBの色空間の分布を2次元空間に射影して2次元ヒストグラムを形成し、その分布の原点を中心とした所定の角度毎に特徴を求める処理をし、その角度毎の特徴量をそのカラー画像の特徴量として、カラー画像を分類する方法が開示されている(これを「従来技術3」と呼ぶ。)。
【特許文献1】特開2004−108779号公報
【特許文献2】特開2001−133418号公報
【特許文献3】特開2003−337945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
薄膜の膜厚分布を監視するシステムにおける濃淡パターンの判別方法には、次のような性質が求められる。まず、他の多くのシステムと同様に、照明条件の変化や、対象物の機種の特性の影響などによる濃淡パターン全域での明るさ変化に対して、ロバストにパターン判別ができることが求められる(工場などの或る程度撮像環境が整備された環境においても、これは無視できない問題である)。
【0011】
また、成膜状態(膜厚分布)を表す濃淡パターン自体は、例えば半導体ウェハなどのように明瞭なエッジを有するものではなく、比較的緩やかな勾配を持って広がったパターンであるため、そのようなパターンに対して精度良く判別できる方法であることが求められる。例えば図1(a)、図1(b)に示すような濃淡分布を持ったパターンをそれぞれ判別対象パターンとする場合を考える。図1(a)、図1(b)のパターン全域を、それぞれ図2−1(a)、図2−1(b)に示すように縦3×横3に9分割して、それぞれ図2−1(c)、図2−1(d)に示すような9つの分割領域(i)〜(ix)を得る。そして、図2−2に示すように、図2−1(c)の9つの分割領域(i)〜(ix)と、図2−1(d)の9つの分割領域(i)〜(ix)とを同じ位置の分割領域同士(例えば「左上」の分割領域同士)でそれぞれ対応させて、分割領域ごとに濃淡パターンの類否判別(異常有無の判別)を実施するものとする。この場合において、分割領域内の濃淡差が大きい場合(例えば図2−1(c)中の左上領域(i)、左下領域(iii)、右上領域(vii)、右下領域(ix))においても、分割領域内の濃淡差が小さい場合(例えば図2−1(c)中の中央領域(v))においても、それぞれの濃淡パターンに対して高精度な判別をする必要がある。
【0012】
また、工場で製品を継続的に生産する場合、成膜状態は、例えば図3−1(a)の状態(初期の状態)から1ヶ月経過して図3−1(b)の状態となり、さらに1ヶ月経過して図3−2(c)の状態となり、さらにまた1ヶ月経過して図3−2(d)の状態となるというように、数ヶ月の期間中に経時的に変化していく。このような経時的な成膜状態の変化を許容しつつ、突発的な成膜状態の変化を異常もしくは不良として検知したい場合、経時的な変化の影響を除くため、判別対象パターンの直近に成膜プロセスを通過した対象の濃淡パターンを比較対象パターンとして濃淡パターンの良否を判別する必要がある。例えば図3−1中に示すように初期の状態では図3−1(a)のパターンを比較対象パターンとする必要がある。また、図3−1中に示すように2ヶ月経過後には図3−2(c)のパターンを比較対象パターンとする必要がある。このため、比較対象パターンを固定するのではなく逐次更新していくことになる。したがって、薄膜の膜厚分布を監視するシステムにおける濃淡パターンの判別方法は、そのような影響によって判別精度が損なわれることの無いものでなければならない。
【0013】
さらには、工場やラインの立ち上げ時などの、成膜状態の変化の経時的な変化の傾向や、発生する異常や不良などに関して詳しい知見を得ていない場合(濃淡パターンの特性や種類が事前に把握しきれていない場合)においても、安定して精度良くパターン判別ができることが必要となる。
【0014】
従来技術1では、パターン領域内で濃淡差が少ない場合においても正規化相関を安定して計算できるようにするために、比較対象パターンと判別対象パターンそれぞれに対して、任意のパターンをそれぞれ同じように埋め込んだうえで、正規化相関を計算する方法を提示している。しかし、未知の濃淡パターンの異常や不良を検知しようとする場合、どのようなパターンを埋め込むべきかを事前に決定することは難しく、このため従来技術1の適用は困難である。さらに、正規化相関が持つ別の問題である、(1)パターン領域内の大きな範囲で変化が現れる場合には相関値に差異が現れるが、パターン内の小さな範囲での変化に対しては、たとえ強コントラストな変化であっても、相関値に差異が現れないという問題や、(2)低コントラストな濃淡パターンの変化に対して相関値に差異が現れにくいという問題も解決されないため、未知の異常や不良に対して安定に判別できる方法であるとは言い難い。例えば、図4−1(a)〜(c)に示す正方形の3つの異なる種類の濃淡パターンA、B、Cを基準として設定する。パターンAは、中心が明るく、中心から遠ざかるにつれて次第に暗くなるパターンである。パターンBは、右下隅が明るく、右下隅から遠ざかるにつれて次第に暗くなるパターンである。パターンCは、各部が等しい明るさをもつパターンである。そして、図4−2−1、図4−2−2に示すように、パターンAにシェーディング等を加え又は異常要素を重ねてなる濃淡パターンA−1、A−2、…、A−13を設定する。図4−3−1、図4−3−2に示すように、パターンBにシェーディング等を加え又は異常要素を重ねてなる濃淡パターンB−1、B−2、…、B−13を設定する。また、図4−4−1、図4−4−2に示すように、パターンCにシェーディング等を加え又は異常要素を重ねてなる濃淡パターンC−1、C−2、…、C−13を設定する。さらに、図5−1−1、図5−1−2、図5−1−3に示すように、パターンAとパターンA−1、A−2、…、A−13とを組み合わせて、データセットA−1、A−2、…、A−13を設定する。図5−2−1、図5−2−2、図5−2−3に示すように、パターンBとパターンB−1、B−2、…、B−13とを組み合わせて、データセットB−1、B−2、…、B−13を設定する。また、図5−3−1、図5−3−2、図5−3−3に示すように、パターンCとパターンC−1、C−2、…、C−13とを組み合わせて、データセットC−1、C−2、…、C−13を設定する。なお、簡単のため、図4−2−1から図4−4−2までに示す濃淡パターンと図5−1−1から図5−3−3までに示すデータセットとに同じ符号を用いている。このような図5−1−1から図5−3−3までに示す各データセット、つまり濃淡パターンの各組合せによるパターン判別の問題を考えた場合、上述の正規化相関による判別では良好な判別ができないといえる。具体的には、図5−1−1から図5−3−3までの表中に示すように、「同類」と判別したいデータセットC−2〜C−6に関して正規化相関で判別したとき、判別の結果が「異類」となって誤りとなる。「異類」と判別したいデータセットA−8、A−12、A−13に関して正規化相関で判別したとき、判別の結果が「同類」となって誤りとなる。また、「異類」と判別したいデータセットB−7、B−8、B−12、B−13に関して正規化相関で判別したとき、判別の結果が「同類」となって誤りとなる。このように、正規化相関による判別では類似度が逆転して、誤判別が避けられない。この例で上記正規化相関が持つ2つの問題のうち、前者の問題(1)に相当するのが、データセットA−12、A−13やデータセットB−12、B−13に関する結果であり、後者の問題(2)に相当するのが、データセットA−8やデータセットB−7、B−8に関する結果である。
【0015】
従来技術2では、例えば、図5−1−1から図5−3−3までに示すデータセットの中で、データセットA−13、B−13、C−13のようにパターン内で急峻に濃淡変化が発生するような場合は、それぞれの2次元ヒストグラムを生成すると、図6−1、図6−2、図6−3に示すように、それぞれ2次元ヒストグラム上における母体分布部とそこから離れた位置に存在する「外れ領域」とを明確に区別できる(図6−1(b)(c)、図6−2(b)(c)、図6−3(b)(c)参照。)。したがって、良好な判別結果が期待できる。しかし、データセットC−9やデータセットA−8のような場合は、図7−1、図7−2に示すように、2次元ヒストグラム上で「外れ領域」が明確に存在しない(図7−1(b)(c)、図7−2(b)(c)参照。)。このため、精度良く判別することは難しい。
【0016】
従来技術3は、2次元ヒストグラム上の分布の原点を中心として角度毎に得られる特徴値を列挙した特徴ベクトルによるパターンの分類方法である。この分類方法では、2次元ヒストグラムは1つのカラー画像から生成され、その分布に対して特徴ベクトルが算出される。従って2つのカラー画像の分類はそれぞれの特徴ベクトルを比較することによって成される。この分類方法を本願が想定する濃淡パターンの判別問題に適用する場合、以下のような手続きになると考えられる。まず濃淡パターンが「同類」−「同類」と判別されるデータセットを1セットとみなし、その2次元ヒストグラムから得られる特徴ベクトルをこのデータセットの特徴ベクトル、すなわち「同類を表す特徴ベクトル」として予め定めておく。そして実際に濃淡パターンを判別していく段階においては、判別対象パターンと比較対象パターンの2次元ヒストグラムから得る特徴ベクトルを、「判別対象パターンに関する特徴ベクトル」として算出したうえで、上記「同類を表す特徴ベクトル」と「判別対象パターンに関する特徴ベクトル」との間で特徴ベクトル同士の類似度を比較して、判別対象パターンと比較対象パターンが「同類」であるか、そうでないか(「異類」であるか)を判別していく、という手続きになる。ここで、例えば図5−1−1から図5−3−3までのデータセットのうち、濃淡パターンが「同類」−「同類」と判別されるデータセットを列挙し、それぞれの2次元ヒストグラムを生成すると、図8−1から図8−6までに示すようになる。ここに例示する「同類」−「同類」のデータセットに関してはそれぞれ比較対象パターンに対して、図9(a)(b)(c)に示すような低コントラストのシェーディングが判別対象パターンに入ったデータセットとなっている。このことから分かるように、それぞれの2次元ヒストグラムの分布は一様ではない。これに対して従来技術3で示された特徴ベクトルを用いる場合、それぞれに関しての特徴ベクトルが大きく異なるものになってしまう。即ち、濃淡パターンの種類(この例においてはデータセットの組)によって「同類表す特徴ベクトル」が大きく異なることになる。先にも述べたとおり、本願で想定する問題において、成膜状態の経時的な変化を許容し、かつ突発的な変化を異常や不良として検知したい場合、比較対象パターンを逐次更新していく必要があり、この場合「同類表す特徴ベクトル」は、比較対象パターンが取りうる種類だけ予め準備しておく必要があるということになる。これは成膜状態の変化の傾向や特性に関して詳しい特性に関する知見を十分に得ていない場合、極めて困難となり、従って従来技術3を用いても精度良い濃淡パターンの判別はできないといえる。
【0017】
そこで、この発明の課題は、判別対象パターンが比較対象パターンに類似しているか否かを判別する濃淡パターン判別方法であって、明るさ変化に対してロバストであるとともに、パターン内の濃淡差が大きても小さくても、またパターン内に未知の濃淡異常や不良が含まれていても、類否を精度良く判別できるものを提供することにある。
【0018】
また、この発明の課題は、そのような濃淡パターン判別方法を実行する濃淡パターン判別装置を提供することにある。
【0019】
また、この発明は、そのような濃淡パターン判別方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【0020】
また、この発明は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明者は次のような考察を行った。
【0022】
上記判別対象パターンと上記比較対象パターンとが真に等しい場合、例えば図5−1−1、図5−2−3、図5−3−1中に示すデータセットA−1、B−1、C−1の場合、それぞれのデータセットから生成された2次元ヒストグラムは、図10−1、図10−2、図10−3に示すように、2次元空間上でy=xの直線上に分布する。上記判別対象パターンとしての濃淡パターンと上記比較対象パターンとしての濃淡パターンとの間に均一な明るさ変化がある場合でも、それらを正規化した濃淡パターンによって2次元ヒストグラムを生成すれば上記のように分布する。また、上記判別対象パターンとしての濃淡パターンに異常や不良が含まれている場合でも、上記濃淡パターンにおける変化の発生位置や、形状(線状であっても円状であっても)が異なっていても、上記異常や不良は、x−yの2次元空間におけるy=xの直線が、「膨らむ」、「曲がる」、「向きを変える」、「形を変える」のうちのいずれか、又はそれらが組み合わさった幾何学的な変化として表れる。また、上記濃淡パターンにおける変化領域の面積の大きさやコントラストの強弱などは、こういった幾何的変化の量(程度)として現れる(ただし、特別な例外的変化としては、先にも示した図6−1、図6−2、図6−3の例のように「外れ領域」が生じるという変化がある。)。したがって、2次元ヒストグラム空間のx−y平面上におけるy=xの直線が幾何的にどの程度、どのように変化したかを測り、複合的に判断することによって、未知の濃淡パターンの異常や不良が発生したとしても、濃淡パターンの類否を精度良く判別できることが期待できる。
【0023】
また、濃淡パターン内に濃淡差が少ない場合は、図8−1から図8−6までに例示した通り、わずかなノイズや低コントラストのシェーディングが入っただけで、2次元ヒストグラムの分布が激しく変化する。この性質の故に、従来技術の適用が困難となる。上述のように、この事象をy=xの直線の幾何的な変化として考えた場合も、直線は大きく膨らみ、向きは様々に変わるということになる。しかし、ノイズやシェーディングなどは一般に濃淡パターン全域に緩やか(急激な濃淡値の変化ではない)にかかるものである。したがって、y=xの直線が全体的に膨らむとしても、その形状は損なわれずに、分布全体が楕円や円に近くなる、と考えることができる。したがって、この分布(楕円・円)の形状に関する特徴値は、濃淡差が少ないパターン同士の比較において、ノイズやシェーディングの影響を受け難い特徴値であるといえる。即ち、この形状の特徴を利用すれば濃淡差が少ないパターン同士を比較する場合でも、濃淡パターンの類否を安定して判別できることが期待できる。
【0024】
こういった2次元ヒストグラム空間のx−y平面上におけるy=xの直線に関する幾何的な変化量を定量的に測るには、まず2次元ヒストグラム上の分布をラベリングして、クラスタ(連結された領域)として扱い、そのクラスタの形状特徴を算出することよって定量化できる。例えば、直線が「膨らむ」という事象はクラスタのy=xの直線軸に対する分散として定量化できるし、y=xの直線が「曲がる」、「形を変える」といった事象はクラスタの凹凸度や円らしさといった特徴量で定量化できる。また先にも述べた、例外的ケースである、y=xの直線から完全に外れた「外れ領域」が発生する事象に関しては、生成されるクラスタ数(2つ以上のクラスタが生成されたか否か)によって判別できるし、またその程度はそのクラスタの位置と頻度によって判別することができる。
【0025】
この発明の濃淡パターン判別方法は、以上の考察に基づいて創作された。
【0026】
上記課題を解決するため、この発明の濃淡パターン判別方法は、
或る領域に広がる濃淡値分布を示す判別対象パターンが、或る領域に広がる濃淡値分布を示す比較対象パターンに類似しているか否かを判別する濃淡パターン判別方法であって、
上記判別対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1の正規化濃淡値を生成するとともに、上記比較対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第2の正規化濃淡値を生成し、
上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値を変数とし、かつ互いに直交する2つの座標軸とする2次元空間を設定し、上記2次元空間に、上記判別対象パターンと上記比較対象パターン上の互いに対応する位置における上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値が表す点を累積して、上記判別対象パターン上の上記第1の正規化濃淡値と上記比較対象パターン上の上記第2の正規化濃淡値との相関を表す2次元ヒストグラムを作成し、
上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を少なくとも1つのクラスタに分類し、
上記クラスタに関する形状、位置若しくは頻度に関する特徴、またはそれらの形状、位置若しくは頻度に関する特徴の組み合わせに基づいて、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する。
【0027】
この発明の濃淡パターン判別方法では、上記判別対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1の正規化濃淡値を生成するとともに、上記比較対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第2の正規化濃淡値を生成している。したがって、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに類似しているか否かの後述の判別結果が、明るさ変化に対してロバストになる。また、この発明の濃淡パターン判別方法では、上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を少なくとも1つのクラスタに分類し、上記クラスタに関する形状、位置若しくは頻度に関する特徴、またはそれらの形状、位置若しくは頻度に関する特徴の組み合わせに基づいて、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別するので、パターン内の濃淡差が大きても小さくても、またパターン内に未知の濃淡異常や不良が含まれていても、判別対象パターンが比較対象パターンに類似しているか否かを精度良く判別できる。
【0028】
一実施形態の濃淡パターン判別方法では、上記正規化処理は、上記判別対象パターン、上記比較対象パターンの濃淡値分布をそれぞれ大きさ1かつ平均0の濃淡値分布へ正規化する処理であることを特徴とする。
【0029】
この一実施形態の濃淡パターン判別方法では、上記正規化処理によって、上記判別対象パターンと上記比較対象パターンとが対比されるのに適した状態となる。したがって、明るさ変化に対してロバストになる。
【0030】
一実施形態の濃淡パターン判別方法では、上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を上記クラスタに分類する処理の前に、上記2次元ヒストグラムに対してノイズ成分を除去するためのフィルタリング処理を施すことを特徴とする。
【0031】
この一実施形態の濃淡パターン判別方法では、上記フィルタリング処理によって、2次元ヒストグラム上のノイズ成分、例えば孤立点や欠損点が除去される。したがって、判別対象パターンが比較対象パターンに類似しているか否かをさらに精度良く判別できる。
できる。
【0032】
一実施形態の濃淡パターン判別方法では、上記フィルタリング処理は、上記2次元ヒストグラム上の頻度値が或る閾値以下であるときその頻度値を0に変換する一方、上記頻度値が上記閾値より大きいときその頻度値を1以上の定数に変換する2値化処理を含むことを特徴とする。
【0033】
この一実施形態の濃淡パターン判別方法では、上記2値化処理によって、2次元ヒストグラム上でノイズ的な要素(重要でない要素)の情報を削除できる。
【0034】
一実施形態の濃淡パターン判別方法では、
上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を上記クラスタに分類する処理は、上記点の集合の本体部分をなすメインクラスタを抽出し、
上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する処理は、上記判別の基準となる上記特徴として、上記メインクラスタの主軸に対する広がり、上記メインクラスタの凹凸度、および/または上記メインクラスタの主軸の方向を用いることを特徴とする。
【0035】
この一実施形態の濃淡パターン判別方法では、上記判別の基準となる上記特徴として、上記メインクラスタの主軸に対する広がり、上記メインクラスタの凹凸度、および/または上記メインクラスタの主軸の方向を用いる。したがって、メインクラスタのこのような特徴に基づいて、判別対象パターンが比較対象パターンに類似しているか否かをさらに精度良く判別できる。
【0036】
一実施形態の濃淡パターン判別方法では、
上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を上記クラスタに分類する処理は、上記メインクラスタに加えて、上記点の集合のうち上記本体部分とは異なる部分を表すサブクラスタを抽出し、
上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する処理は、上記判別の基準となる上記特徴として、上記サブクラスタと上記メインクラスタとの間の距離、上記サブクラスタの重心位置、上記サブクラスタ内の上記点の頻度総和、および/または上記サブクラスタ面積を用いることを特徴とする。
【0037】
この一実施形態の濃淡パターン判別方法では、上記判別の基準となる上記特徴として、上記サブクラスタと上記メインクラスタとの間の距離、上記サブクラスタの重心位置、上記サブクラスタ内の上記点の頻度総和、および/または上記サブクラスタ面積を用いる。したがって、サブクラスタのこのような特徴に基づいて、判別対象パターンが比較対象パターンに類似しているか否かをさらに精度良く判別できる。
【0038】
一実施形態の濃淡パターン判別方法では、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する処理は、上記クラスタ毎に順次行い、上記クラスタのいずれか1つに基づいて上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似していないと判定したとき、直ちに判別処理を終了することを特徴とする。
【0039】
この一実施形態の濃淡パターン判別方法では、無用なクラスタに対する判別処理を省略できる。したがって、判別処理のための時間を全体として短縮できる。
【0040】
なお、上記分類されたクラスタに識別番号を付与するラベリング処理を含むのが望ましい。その場合、各クラスタ毎に順次、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する処理を容易に実行できる。
【0041】
この発明の濃淡パターン判別装置は、
或る領域に広がる濃淡値分布を示す判別対象パターンが、或る領域に広がる濃淡値分布を示す比較対象パターンに類似しているか否かを判別する濃淡パターン判別装置であって、
上記判別対象パターンと上記比較対象パターンの濃淡値データを入力するデータ入力部と、
上記判別対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1の正規化濃淡値を生成するとともに、上記比較対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第2の正規化濃淡値を生成する正規化処理部と、
上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値を変数とし、かつ互いに直交する2つの座標軸とする2次元空間を設定し、上記2次元空間に、上記判別対象パターンと上記比較対象パターン上の互いに対応する位置における上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値が表す点を累積して、上記判別対象パターン上の上記第1の正規化濃淡値と上記比較対象パターン上の上記第2の正規化濃淡値との相関を表す2次元ヒストグラムを作成する2次元ヒストグラム作成部と、
上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を少なくとも1つのクラスタに分類し、上記クラスタに関する形状、位置若しくは頻度に関する特徴、またはそれらの形状、位置若しくは頻度に関する特徴の組み合わせに基づいて、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する類否判別部とを備える。
【0042】
この発明の濃淡パターン判別装置は、上記正規化処理部が、上記判別対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1の正規化濃淡値を生成するとともに、上記比較対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第2の正規化濃淡値を生成する。したがって、後述の類否判別部による判別結果が、明るさ変化に対してロバストになる。また、この発明の濃淡パターン判別装置では、上記2次元ヒストグラム作成部が、上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値を変数とし、かつ互いに直交する2つの座標軸とする2次元空間を設定し、上記2次元空間に、上記判別対象パターンと上記比較対象パターン上の互いに対応する位置における上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値が表す点を累積して、上記判別対象パターン上の上記第1の正規化濃淡値と上記比較対象パターン上の上記第2の正規化濃淡値との相関を表す2次元ヒストグラムを作成する。上記類否判別部が、上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を少なくとも1つのクラスタに分類し、上記クラスタに関する形状、位置若しくは頻度に関する特徴、またはそれらの形状、位置若しくは頻度に関する特徴の組み合わせに基づいて、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する。したがって、パターン内の濃淡差が大きても小さくても、またパターン内に未知の濃淡異常や不良が含まれていても、判別対象パターンが比較対象パターンに類似しているか否かを精度良く判別できる。
【0043】
なお、上記濃淡パターン判別装置は、上記判別対象パターンと上記比較対象パターンの濃淡値データを入力するデータ入力部を備えるのが望ましい。その場合、上記データ入力部が、上記判別対象パターンと上記比較対象パターンの濃淡値データを入力する。これらの濃淡値データを対象として、判別対象パターンが比較対象パターンに類似しているか否かが判別される。
【0044】
また、上記濃淡パターン判別装置は、上記類否判別部による判別結果を出力する表示装置やデータ出力部を備えるのが望ましい。これにより、上記濃淡パターン判別装置を使用するユーザが、判別対象パターンが比較対象パターンに類似しているか否かの判別結果を容易に知ることができる。
【0045】
この発明のプログラムは、上記濃淡パターン判別方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0046】
この発明の記録媒体は、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0048】
図11は、一実施形態の濃淡パターン判別方法の流れを例示している。ここで、この方法で取り扱う濃淡パターン、すなわち比較対象パターンと判別対象パターンとは、全て同じサイズで位置合わせ済みであるものとする。なお、比較対象パターンと判別対象パターンにおける「位置」は、後述の図12(a)(b)中に示すように、XY座標によって指定される矩形の小領域(この例では画素)を指す。
【0049】
まず上記判別対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1の正規化濃淡値を生成するとともに、上記比較対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1の正規化濃淡値を生成する。具体的には、この正規化処理では、判別対象パターンの濃淡値分布と比較対象パターンの濃淡値分布をそれぞれ、大きさ1かつ平均0の濃淡値分布をもつパターンに正規化する(S001、S002)。これは均一な明るさ変化に対してもロバストにパターンを判別するための処理である。
【0050】
続いて、上記判別対象パターン上の第1の正規化濃淡値と上記比較対象パターン上の第2の正規化濃淡値との相関を表す2次元ヒストグラムを生成する(S003)。なお、以下、簡単のため、正規化濃淡値を単に「濃淡値」という。
【0051】
ここで、この2次元ヒストグラムの生成方法に関して、図12を用いて具体的に説明する。図12(b)に示すように、比較対象パターンの或る位置(i,j)における濃淡値をLbとする。図12(a)に示すように、判別対象パターンでのその位置に対応する位置(i,j)の濃淡値をLaとする(ここでは両濃淡パターンは同じサイズで位置合わせ済みとしているので、XY座標上で濃淡値Laの位置(i,j)は濃淡値Lbの位置(i,j)と一致している。)。ここで、図12(c)に示すように、判別対象パターン上の濃淡値、比較対象パターン上の濃淡値を変数とし、かつ互いに直交する縦軸、横軸とする2次元空間を設定する。そして、図12(a)、図12(b)のXY座標上の位置(i,j)の濃淡値La,Lbに基づいて、図12(c)の2次元空間における位置(La,Lb)の頻度に1を加える。つまり、1つの点d1(○印で示す)を加える。このようにして、図12(a)、図12(b)のXY座標上の全ての位置(i,j)について、上記2次元空間に、判別対象パターンと比較対象パターン上の互いに対応する位置における正規化濃淡値Laと正規化濃淡値Lbが表す点を累積する。これにより、判別対象パターンと比較対象パターンに関する2次元ヒストグラムが生成される。この2次元ヒストグラムは、比較対象パターンの濃淡値と判別対象パターンの濃淡値との相関を表す2次元画像(頻度を画素値とする)とみなすことができる。
【0052】
次に、図13に示すように、このようにして生成された2次元ヒストグラムに対して、分布上のノイズ成分(孤立点や欠損点)を除去するために、2次元の膨張・収縮フィルタリングを実施する(S004)。これにより、図13(a)中に示す孤立点d2,d3を除去するとともに、欠損点v1,v2を穴埋めする。また、さらに分布全体を2次元の平滑化フィルタなどによって平滑化してもよい。これにより、後述する判別処理がより高精度になる。
【0053】
なお、次工程(ラベリング処理)の前処理として、2次元ヒストグラムに2値化処理を施してもよい。この場合、膨張・収縮処理は2値化処理後に実施する。この2値化処理は、2次元ヒストグラム上の頻度値が或る閾値以下のものを0に、上記閾値より大きいものを0以外の定数に設定する(例えば画像として扱う場合、最大の階調値255にする)処理である。この2値化処理を行えば、2次元ヒストグラム上でノイズ的な要素(重要でない要素)の情報を削除できる。したがって、後述する判別処理がより高精度になることを期待できる。
【0054】
次に、図14に示すように、上記2次元空間で上記2次元ヒストグラムをなす点の集合を少なくとも1つのクラスタに分類するとともに、ラベリング処理を行って各クラスタにそれぞれID(識別番号)を付与する(S005)。
【0055】
次に、IDが付与された各クラスタに関して形状、位置及び頻度に関する特徴を算出する(S006)。ここでそれぞれに関する特徴を例示すると、
I)形状に関する特徴
・主軸に対する広がり
・主軸の方向がy=xの直線となす角度
・クラスタの凹凸度
・クラスタの面積
II)位置に関する特徴
・クラスタの重心位置
III)頻度に関する特徴
・クラスタ内の頻度総和
(このステップS006以前に2値化処理を実施した場合は、その2値化処理前の頻度分布におけるそれぞれのクラスタ内の頻度の総和)
といったものが挙げられる。
【0056】
この例では、これらの特徴を判別に利用するものとする。すなわち、各クラスタに関してこれらの特徴を求めた後、この特徴を用いてパターン判別を行っていく(これらの特徴に関する詳細は以下の説明の中で述べる)。
【0057】
まず、各クラスタを「メインクラスタ」と「サブクラスタ」とのいずれかに分類する(S007)。「メインクラスタ」とは、図14(b)中に例示するクラスタMCのように、2次元ヒストグラムの点の集合の本体部分に相当するクラスタを指す。「メインクラスタ」は1個に限られる。クラスタが1つである場合はそれがメインクラスタとなる。「サブクラスタ」とは、図14(b)中に例示するサブクラスタSCのように、メインクラスタに相当する本体部分とは異なる部分に対応するクラスタを指す。「サブクラスタ」は複数個であっても良い。この分類は、上述の「クラスタの面積」や「クラスタの重心位置」に関する特徴を用いて実施できる。例えば「クラスタの面積」に関する特徴から、最も大きな面積を持つクラスタをメインクラスタとして分類しても良いし、予め定められた面積を持つクラスタのうちで、「クラスタの重心位置」が座標原点に最も近いクラスタをメインクラスタとして分類しても良い。
【0058】
次に、分類されたメインクラスタの「特徴」に基づく判別処理を実施する(S008)。このメインクラスタに対する判別処理において、「判別対象パターンは比較対象パターンと異類」と判別された場合(S009でYES)、それを最終結果として、パターン判別処理を完了する(S015)。このメインクラスタに対する判別処理の詳細については後述する。
【0059】
上記判別処理において「判別対象パターンは比較対象パターンと異類」とは判別されない場合(S009でNO)、サブクラスタの「特徴」に基づくパターン判別処理を実施する(S010〜S013)。例えばサブクラスタがN個ある場合は、k=1,2,3,…というように順次、各サブクラスタの判別処理を実施していく。そして、或るサブクラスタkの判別結果において「判別対象パターンは比較対象パターンと異類」と判別された場合(S012でYES)、それを最終結果として、その時点でパターン判別処理を完了する(S015)。全てのサブクラスタ(N個)の判別処理(S010〜S013)を完了しても、「判別対象パターンは比較対象パターンと異類」とは判別されなかった場合、最終結果を「判別対象パターンは比較対象パターンと同類」として、パターン判別処理を完了する(S014)。なお、この場合、全てのサブクラスタk=1,2,3,…,Nの判別処理において「判別対象パターンは比較対象パターンと同類」という暫定的判別結果が得られている。個々のサブクラスタの特徴に基づく判別処理の詳細については後述する。
【0060】
以上がパターン判別処理の全体のフローとなる。
【0061】
図15は、上記メインクラスタに対する判別処理(図11中のS008)の流れを示している。
【0062】
この判別処理においては、まず、メインクラスタの形状に関する特徴に基づいて、メインクラスタの主軸に対する広がりが大きいか否かを判別する(S101)。
【0063】
ここで「主軸」とは、この例では2次元ヒストグラムの慣性主軸を計算し、その慣性主軸に一致させて定める。また、主軸に対する「広がり」の程度は、主軸に対するメインクラスタ内の要素の散らばり具合を意味する。この「広がり」としては、例えば主軸から最も遠い距離にある点までの距離によって分散を計算してもよいし、またフェレ系を計算してもよいし、またメインクラスタを構成する全ての要素に関する頻度値から分散を計算してもよい。図16(a)の例では、この「広がり」は、メインクラスタMCの主軸Mから最も遠い点同士の間の距離Eとして示されている。この例では、これを主軸Mに対する広がりEとして説明を続ける。
【0064】
この判別(図15のS101)を行う理由は、主軸Mに対する広がりEが大きい場合は、比較対象パターンと判別対象パターンとの間で「濃淡パターンに何らかの大きな変化がある」か、または比較対象パターンと判別対象パターンの「パターン領域内で濃淡差が少ない」かのいずれかであると推測されるからである。
【0065】
ステップS101でメインクラスタの主軸Mに対する広がりEが大きいと判定された場合(S101でYES)は、続いて、メインクラスタの凹凸度が高いか否かを判別する(S102)。
【0066】
ここで、「凹凸度」とは、メインクラスタの形状の凹凸の程度を表す指標を意味する。「凹凸度が高い」とは、メインクラスタの形状が「よりでこぼこしている」という意味になる。この「凹凸度」を定量化するためには、例えば図16(b)中に示すように、メインクラスタの凸包(そのクラスタを含む最小の凸多角形)を求めた上で、その凸包が占める領域(凸包領域)Jの周囲長と実際のメインクラスタが占める領域(クラスタ領域)Fの周囲長との比、または凸包が占める領域Jの面積と実際のメインクラスタが占める領域Fの面積との比によって定義する。そのように「凹凸度」を周囲長の比または面積の比によって定義した場合、メインクラスタの形状の凹凸がより激しいほど、凹凸度の値は大きく(高く)なる。また、クラスタの形状の凹凸がほぼ無ければ、凹凸度の値が小さくなる(1.0に近づく)。この例では、このようにして「凹凸度」を定義したものとして説明を続ける。
【0067】
図15のステップS102でメインクラスタの凹凸度が高いと判定された場合(S102でYES)は、「濃淡パターンに何らかの大きな変化がある」可能性が高い。したがって、「判別対象パターンは比較対象パターンと異類」であると判定する(S105)。これにより、メインクラスタに対する判別処理を終了するとともに、パターン判別処理も全体として終了する。
【0068】
一方、メインクラスタの凹凸度が低いと判定された場合(S102でNO)は、「パターン領域内で濃淡差が少ない」と解釈できるため、「判別対象パターンが比較対象パターンと同類」であると暫定的に判定する(S104)。これにより、メインクラスタの判別処理を終了する。
【0069】
一方、ステップS101でメインクラスタの主軸Mに対する広がりEが小さいと判定された場合(S101でNO)は、続いて、主軸Mの方向θ(横軸から反時計回りに測った角度)が45度から外れているか否かを判別する(S103)。
【0070】
この判別を行う理由は、「主軸Mに対する広がりEが小さい」というだけでは濃淡パターン全域で濃淡の変化がほとんど無いとはいえないからである。なお、主軸Mの方向θが45度から外れているか否かは、主軸Mがy=xの直線方向から図中に示すΔθのように外れているか否かを意味する。
【0071】
ステップS103で主軸Mの方向θが45度から外れていないと判定された場合(S103でNO)、濃淡パターン全域で濃淡の変化がほとんど無い、即ち「判別対象パターンが比較対象パターンと同類」であると暫定的に判定する(S104)。これにより、メインクラスタに対する判別処理を終了する。
【0072】
一方、ステップS103で主軸Mの方向θが45度から外れていると判定された場合(S103でYES)場合、その外れている理由は、濃淡パターン領域内で濃淡値が変化している(例えば一定方向へ変化している)か、または、メインクラスタMC以外にサブクラスタSCが存在し、そのサブクラスタが原因でメインクラスタの主軸Mが傾いている(主軸Mの傾きに影響を与えるほどサブクラスタSC内の頻度総和が大きい)か、のいずれかであると解釈される。いずれの場合においても、濃淡パターン全域で変化があることになるため、この時点で「判別対象パターンは比較対象パターンと異類」と判別する(S105)。これにより、メインクラスタに対する判別処理を終了するとともに、パターン判別処理も全体として終了する。
【0073】
図17は、上記個々のサブクラスタに対する判別処理(図11中のS011)の流れを示している。
【0074】
先に述べた2次元ヒストグラムにサブクラスタが存在している場合、そのサブクラスタの性質として以下の2通りが考えられる。
(ア) 本来メインクラスタの一部であるべきもの(途切れてしまったもの)
(イ) メインクラスタとは完全に独立したもの
図17の判別処理では、サブクラスタの性質が上記(ア)と(イ)のいずれかであることを考慮して、図18中に示すサブクラスタSCとメインクラスタMCとの間の距離D(以下、単に「メインクラスタとの距離」Dという。)と、サブクラスタ内の「頻度総和」とを用いた判別を行ってゆく。具体的には次の通りである。
【0075】
まず、「メインクラスタとの距離」が大きいか否かを判別する(S201)。
【0076】
ここで、「メインクラスタとの距離」が小さいと判定された場合(S201でNO)、そのサブクラスタはメインクラスタのノイズ成分であると考えて、そのサブクラスタは、本来メインクラスタの一部であるべきものが途切れてしまったものであると判断する(上記ア)。したがって、そのサブクラスタをパターン判別には使用せず、この時点では「判別対象パターンは比較対象パターンと同類」であると暫定的に判定する(S203)。そして、他のサブクラスタの解析へ移行する。
【0077】
なお、このステップS201で、「メインクラスタとの距離」のみではなく、その重心位置がy=xの直線上に分布するか否か、という判定基準を加えて用いてもよい(そのサブクラスタはy=xの直線上に存在するメインクラスタが途切れたものである、という解釈である。)。
【0078】
一方、ステップS201で「メインクラスタとの距離」が大きいと判定された場合(S201でYES)、続いて、そのサブクラスタ内の「頻度総和」が大きいか否かを判別する(S202)。
【0079】
この判別を行う理由は、次の通りである。すなわち、ステップS201で「メインクラスタとの距離」が大きいと判定された場合(S201でYES)は、そのサブクラスタは濃淡パターンの強い濃淡変動を表していると考えることができる。さらに、そのサブクラスタは、ノイズ的な成分(パターンの類否判別に影響しない程度の変動)であるか、そうでないか(濃度パターンの類否判別に影響する変動)であるかのいずれかであると考えられる。ここで、そのサブクラスタ内の「頻度総和」が少ないものは、元の濃淡パターンにおいては深刻な変化となっていないと考えられる。
【0080】
そこで、そのサブクラスタの「頻度総和」が小さいと判定された場合(S202でNO)、そのサブクラスタがノイズ的成分であると考える。したがって、そのサブクラスタをパターン判別には使用せず、この時点では「判別対象パターンは比較対象パターンと同類」であると暫定的に判定する(S203)。そして、他のサブクラスタの解析へ移行する。
【0081】
一方、そのサブクラスタ内の「頻度総和」が大きいと判定された場合(S202でYES)は、そのサブクラスタが濃度パターンの類否判別に影響する変動であると考えて、この時点で「判別対象パターンは比較対象パターンと異類」と判別する(S204)。そして、サブクラスタに対する判別処理を終了するとともに、パターン判別処理も全体として終了する。
【0082】
ただし、そのサブクラスタが濃度パターンの類否判別に関わる変動であると判断された場合、さらに、より精度の高い判別を実施しても良い。具体的には、そのサブクラスタを形成する濃淡値が、元の濃淡パターン上でどの位置(座標)に出現しているかを確認し、出現している位置が連続的であったり周期的であったりするか、またはスポット的に分散しているか、を判定する。そのためには、クリッピング処理を行ってそのサブクラスタから特定の濃淡値を抜き出したり、濃淡値の連結成分にラベリング処理を施し、ラベリングされた連結成分の面積・近接度などを計算したりする。これにより、そのサブクラスタが真にパターンの類否判別に影響する変動であるか、またはノイズ的な成分であるかを確認する。このより精度の高い判別でそのサブクラスタがノイズ的成分であると判定された場合は、そのサブクラスタをパターン判別には使用せず、「判別対象パターンは比較対象パターンと同類」であると暫定的に判定する(S203)。そして、他のサブクラスタの解析へ移行する。
【0083】
図19−1−1から図19−1−3は、図5−1−1から図5−1−3に示したデータセットA−2、A−3、…、A−13が、本実施形態の濃淡パターン判別方法によってどのように判別されるかを示している。図19−2−1から図19−2−3は、図5−2−1から図5−2−3に示したデータセットB−2、B−3、…、B−13が、本実施形態の濃淡パターン判別方法によってどのように判別されるかを示している。また、図19−3−1から図19−3−3は、図5−3−1から図5−3−3に示したデータセットC−2、C−3、…、C−13が、本実施形態の濃淡パターン判別方法によってどのように判別されるかを示している。図19−1−1から図19−3−3において、最左列の(a)欄は、対象となるデータセットの番号を示している。左から2列目の(b)欄は、対応するデータセットから作成された2次元ヒストグラム(濃淡値正規化済み、2値化前)を示している。左から3列目の(c)欄は、対応するデータセットから作成された2値化後の2次元ヒストグラムを示している。左から4列目の(d)欄は、対応する上記2次元ヒストグラムをクラスタに分類(クラスタリング)した状態を示している。最右列の欄には判別結果を示している。
【0084】
これらの図19−1−1から図19−3−3において、まず「判別対象パターンは比較対象パターンと同類」であると判定されるべきデータセットに関して着目する。
【0085】
例えばデータセットA−2からデータセットA−6、およびデータセットB−2からデータセットB−6に関しては、クラスタは1つだけ(メインクラスタMC)である。そのメインクラスタに対する判別処理によれば、メインクラスタの主軸に対する広がりが小さく、また主軸の方向が45度(y=x)の方向とほぼ等しい。したがって、「同類」であると判別され、正しい判別結果が得られている。
【0086】
また、データセットC−2からデータセットC−6に関しては、クラスタは1つだけ(メインクラスタMC)である。そのメインクラスタに対する判別処理によれば、メインクラスタの主軸に対する広がりが大きいものの、その形状の凹凸度は低い。したがって、「同類」であると判別され、正しい判別結果が得られている。
【0087】
次に、「判別対象パターンは比較対象パターンと異類」であると判定されるべきデータセットに関して着目する。
【0088】
例えばデータセットA−7からデータセットA−10、およびデータセットB−7からデータセットB−11に関しては、メインクラスタに対する判別処理によれば、メインクラスタの主軸に対する広がりが大きく、形状の凹凸度が高い。したがって、「異類」であると判別される。なお、これらのデータセットの中には実際にはサブクラスタを有するものもあるが、それらのサブクラスタに関する判別は行われない(判別結果としては「サブクラスタ無し」)。そして、そのまま「異類」であるという結果が最終判別結果となり、正しい判別結果が得られている。
【0089】
また、データセットA−11、A−12、A−13、及びデータセットB−12、B−13に関しては、それぞれ、1つのメインクラスタMCと、少なくとも1つのサブクラスタSCとが存在する(データセットA−11に関しては、2つのサブクラスタSC1,SC2が存在する。)。これらのデータセットに関して、メインクラスタに対する判別処理によれば、メインクラスタの主軸に対する広がりが小さく、また主軸の方向が45度(y=x)の方向に近い。したがって、「同類」であると判別される。しかし、サブクラスタに対する判別処理において、そのサブクラスタはメインクラスタから独立した別個のものとして判定される。そのサブクラスタ内の頻度総和から最終的には異類と判別され、正しい判別結果が得られている。
【0090】
また、データセットC−12、C−13に関しては、クラスタは1つだけ(メインクラスタMC)である。そのメインクラスタに対する判別処理によれば、メインクラスタの判別において、メインクラスタの主軸に対する広がりが小さいが、45度方向から大きく外れている。したがって、「異類」であると判定されている。サブクラスタに関する判別は行われず、この判定結果が最終判別結果となり、正しい判別結果が得られている。
【0091】
このように、この濃淡パターン判別方法によれば、明るさ変化に対してロバストであるとともに、パターン内の濃淡差が大きても小さくても、またパターン内に未知の濃淡異常や不良が含まれていても、類否を精度良く判別できる。
【0092】
また、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する処理は、上記クラスタ毎に順次行っている。そして、上記メインクラスタ、サブクラスタのいずれか1つに基づいて「異類」であると判定されたとき、直ちに判別処理を終了している。したがって、無用なクラスタに対する判別処理を省略できる。したがって、判別処理のための時間を全体として短縮できる。
【0093】
図20は、上記濃淡パターン判別方法を実施するのに適した一実施形態の濃淡パターン判別装置110を含むシステム100の構成を示している。
【0094】
このシステム100は、濃淡パターン判別装置110と、工場の生産ラインからデータを収集して格納するデータベース101と、入力装置102と、表示装置108と、出力装置109とを備えている。
【0095】
データベース101は、例えばハードディスクドライブなどの外部記憶装置からなっている。この例では、データベース101には、判別対象パターンと比較対象パターンとを表すデータが蓄積されている。
【0096】
入力装置102は、例えばキーボードやマウスで構成される。この例では、入力装置102は、濃淡パターン判別装置110に対して、ユーザが解析対象となるパターンの指定などを入力するために用いられる。
【0097】
表示装置108は、LCD(液晶表示パネル)またはCRT(陰極線管)などの画像を表示できる装置からなる。解析対象となるパターンや、判別結果を画像として表示するのに用いられる。
【0098】
出力装置109は、紙出力、あるいは磁気ディスクや携帯用半導体メモリなどを通して、濃淡パターン判別装置110による特性分布解析結果を出力する。
【0099】
濃淡パターン判別装置110は、データ入力部と103と、正規化処理部104と、2次元ヒストグラム作成部105と、類否判別部106と、判別結果出力部107とを含んでいる。
【0100】
データ入力部と103は、データベース101から判別対象パターンと比較対象パターンとを表すデータを入力して、判別対象パターンと比較対象パターンとを同じサイズに加工して位置合わせする。また、データ入力部と103は、入力装置102からの解析対象となるパターンの指定を受け取る。
【0101】
正規化処理部104は、上記判別対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1の正規化濃淡値を生成するとともに、上記比較対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第2の正規化濃淡値を生成する。したがって、後述の類否判別部106によって得られた判別結果が、明るさ変化に対してロバストになる。
【0102】
2次元ヒストグラム作成部105は、上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値を変数とし、かつ互いに直交する2つの座標軸とする2次元空間を設定し、上記2次元空間に、上記判別対象パターンと上記比較対象パターン上の互いに対応する位置における上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値が表す点を累積して、上記判別対象パターン上の上記第1の正規化濃淡値と上記比較対象パターン上の上記第2の正規化濃淡値との相関を表す2次元ヒストグラムを作成する。
【0103】
類否判別部106は、上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を少なくとも1つのクラスタに分類し、上記クラスタに関する形状、位置若しくは頻度に関する特徴、またはそれらの形状、位置若しくは頻度に関する特徴の組み合わせに基づいて、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する。
【0104】
判別結果出力部107は、類否判別部106によって得られた判別結果を、表示装置108や出力装置109に適したデータ形式に変換して出力する。
【0105】
この濃淡パターン判別装置110によれば、パターン内の濃淡差が大きても小さくても、またパターン内に未知の濃淡異常や不良が含まれていても、類否を精度良く判別できる。
【0106】
なお、上述の濃淡パターン判別方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして構築しても良い。
【0107】
また、そのようなプログラムを図20中に示すCD−ROM130などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配布できるようにしても良い。上記プログラムを汎用コンピュータにインストールすることで、汎用コンピュータによって上記濃淡パターン判別方法を実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】成膜状態を表す一般的な濃淡パターンの例を示す図である。
【図2−1】正常な成膜状態を表す濃淡パターン、成膜状態に異常が発生した場合の濃淡パターンを縦3×横3に9分割した状態を例示する図である。
【図2−2】図2−1中の分割領域ごとに濃淡パターンの類否判別を行う態様を示す図である。
【図3−1】成膜状態を表す濃淡パターンが経時変化する場合に、初期状態の濃淡パターンの類否判別を行う態様を示す図である。
【図3−2】2ヶ月後の成膜状態を表す濃淡パターンの類否判別を行う態様を示す図である。
【図4−1】基準となる正方形の3つの異なる種類の濃淡パターンA、B、Cを例示する図である。
【図4−2−1】図4−1(a)のパターンAにシェーディング等を加え又は異常要素を重ねてなる濃淡パターンを示す図である。
【図4−2−2】図4−1(a)のパターンAにシェーディング等を加え又は異常要素を重ねてなる濃淡パターンを示す図である。
【図4−3−1】図4−1(b)のパターンBにシェーディング等を加え又は異常要素を重ねてなる濃淡パターンを示す図である。
【図4−3−2】図4−1(b)のパターンBにシェーディング等を加え又は異常要素を重ねてなる濃淡パターンを示す図である。
【図4−4−1】図4−1(c)のパターンCにシェーディング等を加え又は異常要素を重ねてなる濃淡パターンを示す図である。
【図4−4−2】図4−1(c)のパターンCにシェーディング等を加え又は異常要素を重ねてなる濃淡パターンを示す図である。
【図5−1−1】比較対象パターンと判別対象パターンとのデータセットA−1、…、A−4と、それらのデータセットに関して正規化相関を用いて類否を判別した場合の判別結果を例示する図である。
【図5−1−2】比較対象パターンと判別対象パターンとのデータセットA−5、…、A−9と、それらのデータセットに関して正規化相関を用いて類否を判別した場合の判別結果を例示する図である。
【図5−1−3】比較対象パターンと判別対象パターンとのデータセットA−10、…、A−13と、それらのデータセットに関して正規化相関を用いて類否を判別した場合の判別結果を例示する図である。
【図5−2−1】比較対象パターンと判別対象パターンとのデータセットB−1、…B−4と、それらのデータセットに関して正規化相関を用いて類否を判別した場合の判別結果を例示する図である。
【図5−2−2】比較対象パターンと判別対象パターンとのデータセットB−5、…、B−9と、それらのデータセットに関して正規化相関を用いて類否を判別した場合の判別結果を例示する図である。
【図5−2−3】比較対象パターンと判別対象パターンとのデータセットB−10、…、B−13と、それらのデータセットに関して正規化相関を用いて類否を判別した場合の判別結果を例示する図である。
【図5−3−1】比較対象パターンと判別対象パターンとのデータセットC−1、…C−4と、それらのデータセットに関して正規化相関を用いて類否を判別した場合の判別結果を例示する図である。
【図5−3−2】比較対象パターンと判別対象パターンとのデータセットC−5、…、C−9と、それらのデータセットに関して正規化相関を用いて類否を判別した場合の判別結果を例示する図である。
【図5−3−3】比較対象パターンと判別対象パターンとのデータセットC−10、…、C−13と、それらのデータセットに関して正規化相関を用いて類否を判別した場合の判別結果を例示する図である。
【図6−1】データセットA−13に関して従来技術2が正しい判別結果を生む態様を示す図である。
【図6−2】データセットB−13に関して従来技術2が正しい判別結果を生む態様を示す図である。
【図6−3】データセットC−13に関して従来技術2が正しい判別結果を生む態様を示す図である。
【図7−1】データセットC−9に関して従来技術2が誤りの判別結果を生む態様を示す図である。
【図7−2】データセットA−8に関して従来技術2が誤りの判別結果を生む態様を示す図である。
【図8−1】データセットC−2に関して従来技術3が誤りの判別結果を生む態様を示す図である。
【図8−2】データセットC−3に関して従来技術3が誤りの判別結果を生む態様を示す図である。
【図8−3】データセットC−4に関して従来技術3が誤りの判別結果を生む態様を示す図である。
【図8−4】データセットC−5に関して従来技術3が誤りの判別結果を生む態様を示す図である。
【図8−5】データセットA−2に関して従来技術3が誤りの判別結果を生む態様を示す図である。
【図8−6】データセットB−2に関して従来技術3が誤りの判別結果を生む態様を示す図である。
【図9】特定のデータセットに対して与えているシェーディングを説明する図である。
【図10−1】同一のパターンを対比したデータセットA−1から生成される2次元ヒストグラムの例を示した図である。
【図10−2】同一のパターンを対比したデータセットB−1から生成される2次元ヒストグラムの例を示した図である。
【図10−3】同一のパターンを対比したデータセットC−1から生成される2次元ヒストグラムの例を示した図である。
【図11】本発明の一実施形態の濃淡パターン判別方法の流れを示す図である。
【図12】上記濃淡パターン判別方法での2次元ヒストグラムの生成方法を説明する図である。
【図13】上記濃淡パターン判別方法での上記2次元ヒストグラムに対するフィルタリング処理を説明する図である。
【図14】上記濃淡パターン判別方法での、上記2次元ヒストグラムから得られたクラスタにラベリング処理を説明する図である。
【図15】上記2次元ヒストグラムから得られたメインクラスタに対する判別処理の流れを示す図である。
【図16】上記メインクラスタに関する特徴の例を説明する図である。
【図17】上記2次元ヒストグラムから得られたサブクラスタに対する判別処理の流れを示す図である。
【図18】サブクラスタの特徴としての、サブクラスタとメインクラスタとの間の距離を例示して説明する図である。
【図19−1−1】上記データセットA−2、…、A−5についての、上記濃淡パターン判別方法による判別結果を説明する図である。
【図19−1−2】上記データセットA−6、…、A−9についての、上記濃淡パターン判別方法による判別結果を説明する図である。
【図19−1−3】上記データセットA−10、…、A−13についての、上記濃淡パターン判別方法による判別結果を説明する図である。
【図19−2−1】上記データセットB−2、…、B−5についての、上記濃淡パターン判別方法による判別結果を説明する図である。
【図19−2−2】上記データセットB−6、…、B−9についての、上記濃淡パターン判別方法による判別結果を説明する図である。
【図19−2−3】上記データセットB−10、…、B−13についての、上記濃淡パターン判別方法による判別結果を説明する図である。
【図19−3−1】上記データセットC−2、…、C−5についての、上記濃淡パターン判別方法による判別結果を説明する図である。
【図19−3−2】上記データセットC−6、…、C−9についての、上記濃淡パターン判別方法による判別結果を説明する図である。
【図19−3−3】上記データセットC−10、…、C−13についての、上記濃淡パターン判別方法による判別結果を説明する図である。
【図20】この発明の一実施形態の濃淡パターン判別装置を含むシステムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
MC メインクラスタ
SC サブクラスタ
110 濃淡パターン判別装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る領域に広がる濃淡値分布を示す判別対象パターンが、或る領域に広がる濃淡値分布を示す比較対象パターンに類似しているか否かを判別する濃淡パターン判別方法であって、
上記判別対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1の正規化濃淡値を生成するとともに、上記比較対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第2の正規化濃淡値を生成し、
上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値を変数とし、かつ互いに直交する2つの座標軸とする2次元空間を設定し、上記2次元空間に、上記判別対象パターンと上記比較対象パターン上の互いに対応する位置における上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値が表す点を累積して、上記判別対象パターン上の上記第1の正規化濃淡値と上記比較対象パターン上の上記第2の正規化濃淡値との相関を表す2次元ヒストグラムを作成し、
上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を少なくとも1つのクラスタに分類し、
上記クラスタに関する形状、位置若しくは頻度に関する特徴、またはそれらの形状、位置若しくは頻度に関する特徴の組み合わせに基づいて、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する濃淡パターン判別方法。
【請求項2】
請求項1に記載の濃淡パターン判別方法において、
上記正規化処理は、上記判別対象パターン、上記比較対象パターンの濃淡値分布をそれぞれ大きさ1かつ平均0の濃淡値分布へ正規化する処理であることを特徴とする濃淡パターン判別方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の濃淡パターン判別方法において、
上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を上記クラスタに分類する処理の前に、上記2次元ヒストグラムに対してノイズ成分を除去するためのフィルタリング処理を施すことを特徴とする濃淡パターン判別方法。
【請求項4】
請求項3に記載の濃淡パターン判別方法において、
上記フィルタリング処理は、上記2次元ヒストグラム上の頻度値が或る閾値以下であるときその頻度値を0に変換する一方、上記頻度値が上記閾値より大きいときその頻度値を1以上の定数に変換する2値化処理を含むことを特徴とする濃淡パターン判別方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の濃淡パターン判別方法において、
上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を上記クラスタに分類する処理は、上記点の集合の本体部分をなすメインクラスタを抽出し、
上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する処理は、上記判別の基準となる上記特徴として、上記メインクラスタの主軸に対する広がり、上記メインクラスタの凹凸度、および/または上記メインクラスタの主軸の方向を用いることを特徴とする濃淡パターン判別方法。
【請求項6】
請求項5に記載の濃淡パターン判別方法において、
上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を上記クラスタに分類する処理は、上記メインクラスタに加えて、上記点の集合のうち上記本体部分とは異なる部分を表すサブクラスタを抽出し、
上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する処理は、上記判別の基準となる上記特徴として、上記サブクラスタと上記メインクラスタとの間の距離、上記サブクラスタの重心位置、上記サブクラスタ内の上記点の頻度総和、および/または上記サブクラスタ面積を用いることを特徴とする濃淡パターン判別方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の濃淡パターン判別方法において、
上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する処理は、上記クラスタ毎に順次行い、上記クラスタのいずれか1つに基づいて上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似していないと判定したとき、直ちに判別処理を終了することを特徴とする濃淡パターン判別方法。
【請求項8】
或る領域に広がる濃淡値分布を示す判別対象パターンが、或る領域に広がる濃淡値分布を示す比較対象パターンに類似しているか否かを判別する濃淡パターン判別装置であって、
上記判別対象パターンと上記比較対象パターンの濃淡値データを入力するデータ入力部と、
上記判別対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第1の正規化濃淡値を生成するとともに、上記比較対象パターンの濃淡値に正規化処理を施して第2の正規化濃淡値を生成する正規化処理部と、
上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値を変数とし、かつ互いに直交する2つの座標軸とする2次元空間を設定し、上記2次元空間に、上記判別対象パターンと上記比較対象パターン上の互いに対応する位置における上記第1の正規化濃淡値と上記第2の正規化濃淡値が表す点を累積して、上記判別対象パターン上の上記第1の正規化濃淡値と上記比較対象パターン上の上記第2の正規化濃淡値との相関を表す2次元ヒストグラムを作成する2次元ヒストグラム作成部と、
上記2次元ヒストグラムをなす上記点の集合を少なくとも1つのクラスタに分類し、上記クラスタに関する形状、位置若しくは頻度に関する特徴、またはそれらの形状、位置若しくは頻度に関する特徴の組み合わせに基づいて、上記判別対象パターンが上記比較対象パターンに対して類似しているか否かを判別する類否判別部とを備えた濃淡パターン判別装置。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の濃淡パターン判別方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19−1−1】
image rotate

【図19−1−2】
image rotate

【図19−1−3】
image rotate

【図19−2−1】
image rotate

【図19−2−2】
image rotate

【図19−2−3】
image rotate

【図19−3−1】
image rotate

【図19−3−2】
image rotate

【図19−3−3】
image rotate

【図20】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2−1】
image rotate

【図4−2−2】
image rotate

【図4−3−1】
image rotate

【図4−3−2】
image rotate

【図4−4−1】
image rotate

【図4−4−2】
image rotate

【図5−1−1】
image rotate

【図5−1−2】
image rotate

【図5−1−3】
image rotate

【図5−2−1】
image rotate

【図5−2−2】
image rotate

【図5−2−3】
image rotate

【図5−3−1】
image rotate

【図5−3−2】
image rotate

【図5−3−3】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図6−3】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図8−3】
image rotate

【図8−4】
image rotate

【図8−5】
image rotate

【図8−6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10−1】
image rotate

【図10−2】
image rotate

【図10−3】
image rotate


【公開番号】特開2010−91523(P2010−91523A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264071(P2008−264071)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】