説明

炭化炉による熱併給発電方法及びシステム

【課題】電力と熱エネルギーを同時に供給でき、且つ需要先の負荷変動に速やかに対応できる炭化炉による熱併給発電方法及びシステムを提供する。
【解決手段】アスファルト製造プラント40に併設された炭化炉4により炭化物23を製造するとともに、該炭化炉にて発生した熱分解ガス22を燃焼室5aで燃焼させて高温燃焼ガス21を生成し、該高温燃焼ガスからボイラ6で生成した蒸気27を用いて発電を行う炭化炉による熱併給発電システムであって、前記炭化炉4が外熱式キルンであり、該炭化炉にて得られる熱分解ガス21を燃焼して高温燃焼ガスを得るガス燃焼室5aと、炭化物を燃焼して高温燃焼ガスを得る炭化物燃焼室5bとを備え、これらの高温燃焼ガスの一部を分岐させて空気予熱器7を介して高温空気47を生成し、該高温空気をアスファルト製造プラントに供給する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト製造プラントに炭化炉が併設されたシステムにおいて、炭化炉にて炭化物を製造するとともに、炭化炉にて発生した熱分解ガスを用いて発電を行うようにした炭化炉による熱併給発電方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にバイオマスとは、エネルギー源又は工業原料として利用することのできる生物体をいい、従来よりバイオマスを有効利用する方法が各種提案されている。バイオマスとしては、例えば、植物、廃木材、農業廃棄物、家畜糞尿、下水汚泥等が挙げられるが、これらを低コストで以って高付加価値物に転換できる有用な方法として、バイオマスを熱分解ガス化して炭化物を製造する方法がある。例えば、特許文献1(特開2005−162542号公報)では、乾燥させた蓄糞をロータリーキルン式炭化炉に投入して炭化し、炭化物を製造する設備が提案されている。この設備では、炭化物又は熱分解ガスを、蓄糞の乾燥用及び炭化用の熱風発生炉の燃料として用いている。
【0003】
このように、バイオマスから炭化物を製造するとともに、炭化により発生する排ガスから熱エネルギーを回収することによって、エネルギー効率の向上が図られている。
さらに近年では、単一のシステム内で熱と電力を併せて供給する熱併給発電が、より高い総合熱効率を得るシステムとして知られている。特許文献2(特開2001−241624号公報)には、木質系廃棄物を炭化して炭化物を得るとともに、炭化炉から発生する熱分解ガスを燃料としてボイラにて水蒸気を発生させ、この水蒸気を用いてタービン発電機により発電して電力を製造する廃棄物焼却プラントが開示されている。これにより、マテリアルリサイクル及びエネルギーリサイクルの双方を有効に行うことが可能となる。
【0004】
一方、炭化炉にて発生した排ガスをアスファルト製造プラントにて有効利用する方法が特許文献3(特開2003−171909号公報)に開示されている。これは、アスファルトプラントの近傍に炭化炉を併設し、炭化処理にて発生する排ガスをアスファルトプラントのドライヤ内に導入し、排ガスが有する熱エネルギーを利用してアスファルト混合物の骨材加熱を行うものである。これにより、炭化物を得るとともに炭化炉の排ガス熱をアスファルト混合物の骨材加熱に有効利用でき、ドライヤのバーナ燃費を抑えることが可能となる。尚、アスファルト製造プラントとしては、例えば特許文献4(特開2005−248489号公報)等に記載されるように、表面にアスファルト皮膜を有する骨材のをドライヤで加熱乾燥することによってアスファルト合材を製造するプラントなどがある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−162542号公報
【特許文献2】特開2001−241624号公報
【特許文献3】特開2003−171909号公報
【特許文献4】特開2005−248489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載される炭化炉は、被炭化物の部分燃焼による直接的な自己熱を利用した直接加熱式を採用しているため、炭化炉内に均一に空気を供給できない場合、炉内を間接加熱する外熱式炭化炉に比べて炭化ガス化が不安定となる。従って、製造される炭化物が不均質であり、またカロリーが比較的低いため、燃料として利用する際に効率が悪いという問題があった。また、炭化炉出口の排ガス中には重金属類等の有害成分が含まれ可能性があり、その排ガスを直接アスファルト製造プラントへ導入した場合、アスファルトが有害物に汚染される可能性がある。
また、特許文献2に記載される炭化炉においても、熱分解ガス及び炭化物による直接的な自己熱を利用した炭化方式を採用しているため、炭化炉内に均一に空気を供給できない場合、外熱式炭化炉に比べて炭化ガス化が不安定となるという問題があった。さらに、熱分解ガス中にはタール分が含まれ、これを熱風炉に供給した場合閉塞を伴う可能性がある。さらにまた、乾留ガス中の揮発した重金属成分が系内で濃縮して排ガス中の重金属濃度が増大する惧れもあった。
【0007】
また、アスファルト製造プラントは、需要に基づく製造量の変動が大きいという特徴を有しており、特許文献3に記載されるシステムではこの負荷変動に対応できないという問題があった。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、電力と熱エネルギーを同時に供給でき、且つ需要先の負荷変動に速やかに対応できる炭化炉による熱併給発電方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、熱風利用設備に併設された炭化炉により炭化物を製造するとともに、該炭化炉にて発生した熱分解ガスを燃焼室で燃焼させて高温燃焼ガスを生成し、該高温燃焼ガスからボイラで生成した高温蒸気を用いて発電を行う炭化炉による熱併給発電方法であって、
前記炭化炉が外熱式キルンであり、該炭化炉にて得られる熱エネルギーの一部を用いて生成した高温空気を前記熱風利用設備にて利用することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、炭化炉にて炭化物を製造するとともに、熱風利用設備にて利用される電力を発電することができるため、マテリアルリサイクル及びエネルギーリサイクルをともに有効に行うことが可能となる。
また、炭化炉にて得られる熱エネルギーの一部を高温空気として熱風利用設備に供給する構成としたため、該設備における加熱時の助燃料を低減でき、熱効率のよいシステムとすることが可能である。
このとき、炭化炉として炉内を間接加熱する外熱式キルンを採用しているため、炭化炉で発生する熱分解ガスに不純物が混入しにくく、また炉内を低酸素若しくは無酸素状態で均一に加熱できるため、均質で高カロリーの炭化物が得られ、熱エネルギーの燃料として好適である。
尚、前記熱風利用設備はアスファルト製造プラントであることが好ましい。
【0010】
また、前記熱エネルギーが、前記熱分解ガスと前記炭化物を前記燃焼室で燃焼することにより生成した高温燃焼ガスであり、
前記高温燃焼ガスを前記ボイラに供給するとともに、該高温燃焼ガスの一部を分岐させて空気予熱器を介して前記高温空気を生成することを特徴とする。
本発明によれば、炭化物と熱分解ガスから高温燃焼ガスを生成してこれを基に発電を行うようにしたため、熱風利用設備に必要な稼動電力を自己供給するとともに売電可能となり、同時に高温燃焼ガスの一部を用いて高温空気を製造して熱風利用設備に供給するようにしたため、骨材加熱時の助燃量を低減できる。
また、熱風利用設備に供給する熱源が、高温燃焼ガスの顕熱を利用して生成したクリーンな高温空気であるため、例えば熱風利用設備がアスファルト製造プラントである場合、該プラントにて製造したアスファルト製品に不純物が混入せず、高品質の製品を提供できる。
【0011】
このとき、前記熱風利用設備の運転状況に応じて前記燃焼室への炭化物供給量を制御し、前記高温空気の生成量を調整することが好ましい。
本発明では、熱風利用設備の運転状況に伴う負荷変動を、備蓄した炭化物により補う構成としたため、常に一定の電力を供給しつつ熱風利用設備にて利用する高温空気を適宜供給することが可能となり、安定した熱併給発電システムを提供することができる。また、負荷変動を補う燃料として、炭化物を用いているため、熱分解ガスを貯留する場合に比べて極めて備蓄が容易、安全である。
【0012】
また、前記熱エネルギーが前記炭化物を粉砕して得られた微粉炭化物であり、
前記微粉炭化物を前記熱風利用設備が具備する粉体バーナより供給して直接燃焼させて前記高温空気を生成することを特徴とする。
本発明では、製造した炭化物を熱風利用設備へ輸送する際に固形の炭化物の形態であるため、配管等の設備が不要となり設備の簡素化が可能で、熱風利用設備と炭化炉が離れて設けられている場合であっても、容易に熱エネルギーを輸送することが可能となる。
また、炭化炉として間接加熱式のロータリーキルンを採用しているため、均質で高カロリーの炭化物を得ることができ、熱風利用設備の熱源に適した燃料を供給することができる。
さらに、これらの発明において、前記炭化炉にて熱分解ガス化する処理物が木質系バイオマスであることが好ましい。これにより、使用化石燃料を低減でき、資源の枯渇化問題が解消されるとともに、CO削減が図れ、地球温暖化防止に貢献できる。また、木質系であることから不純物の少ない炭化物が製造可能である。
【0013】
また、炭化物を製造する炭化炉が熱風利用設備に併設され、該炭化炉にて発生した熱分解ガスを燃焼させて高温燃焼ガスを生成する燃焼室と、該高温燃焼ガスにより高温蒸気を生成するボイラと、該高温蒸気を用いて発電する発電設備と、を備えた炭化炉による熱併給発電システムであって、
前記炭化炉が外熱式キルンであり、前記熱風利用設備が、前記炭化炉にて得られる熱エネルギーの一部を用いて生成した高温空気を利用する構成であることを特徴とする。
尚、前記熱風利用設備はアスファルト製造プラントであることが好ましい。
【0014】
また、前記熱エネルギーが、前記熱分解ガスと前記炭化物を前記燃焼室で燃焼させて生成した高温燃焼ガスであり、
前記高温燃焼ガスの顕熱により高温空気を生成する空気予熱器と、
前記高温燃焼ガスを前記ボイラに供給するとともに、該高温燃焼排ガスの一部を分岐させて前記空気予熱器に供給する高温燃焼ガスラインと、
前記空気予熱器からの高温空気を前記熱風利用設備に供給する高温空気ラインと、を備えることを特徴とする。
【0015】
さらに、前記燃焼室への炭化物供給量を制御する手段を備え、前記熱風利用設備の運転状況に応じて前記高温空気の生成量を調整することを特徴とする。
さらにまた、前記燃焼室が、前記熱分解ガスを主燃料として高温燃焼ガスを生成するガス燃焼室と、前記炭化物を主燃料として高温燃焼ガスを生成する炭化物燃焼室とからなり、前記熱風利用設備の運転状況に応じて前記炭化物燃焼室における高温燃焼ガスの生成量を調整することを特徴とする。
【0016】
また、前記熱エネルギーが前記炭化物を粉砕して得られた微粉炭化物であり、
前記熱風利用設備が、前記微粉炭化物を供給する粉体バーナを備え、該粉体バーナから供給する微粉炭化物を直接燃焼させて前記高温空気を生成することを特徴とする。
また、これらの発明において、前記炭化物に木質系バイオマスを供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、炭化炉にて得られる熱エネルギーの一部をアスファルト製造プラント等の熱風利用設備に供給する構成としたため、熱風利用設備における加熱時の助燃料を低減でき、熱効率のよいシステムとし、且つ使用化石燃料を低減でき、資源の枯渇化問題が解消されるとともにCO削減が図れ、地球温暖化防止に貢献できる。
また、本発明では炭化炉として外熱式キルンを採用しているため、炭化炉でクリーンな熱分解ガスが得られるとともに、均質で高カロリーの炭化物が得られ、熱エネルギーの再利用化に好適である。
また、熱風利用設備の運転状況に伴う負荷変動を、備蓄した炭化物により補う構成としたため、常に一定の電力を供給しつつも熱風利用設備にて利用する高温空気を適宜供給することが可能となり、安定した熱併給発電システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1及び図2は、夫々本発明の実施例1及び実施例2に係る炭化炉による熱併給発電システムの全体構成図であり、図3は図1及び図2における炭化物供給設備を示す概略図である。
【実施例1】
【0019】
図1に本実施例1に係る炭化炉による熱併給発電システムを示す。本実施例に係るシステムは、アスファルト製造プラント40と、これに併設された炭化炉4と、該炭化炉4からの熱分解ガスを燃焼させるガス燃焼室5aと、炭化物を燃焼させる炭化物燃焼室5bと、高温燃焼ガスから熱回収するボイラ6と、該ボイラ6にて発生させた高温蒸気を用いて発電する発電設備12と、ガス燃焼室5a及び炭化物燃焼室5bからの燃焼排ガスの一部を用いて高温空気を生成する空気予熱器7と、を主要構成とする。尚、本実施例では一例としてアスファルト製造プラント40を備える構成としたが、これに限定されず、他の熱風利用設備を備える構成としてもよい。
【0020】
本システムのフローを、各装置の具体的構成とともに説明する。
受入供給設備1には、炭化炉4で熱分解ガス化される被処理物が供給される。被処理物としては、植物、廃木材、農業廃棄物、家畜糞尿、下水汚泥等のバイオマス20が挙げられるが、特に残廃材、建廃由来木屑、建築廃材、解体材、間伐材等の木質系バイオマスが好ましい。
受入供給設備1から供給されるバイオマス20は、投入コンベア2を搬送されてスクリューフィーダ3から定量的に炭化炉4に投入される。
炭化炉4は、間接加熱により炉内を加熱する外熱式ロータリーキルンである。該炭化炉4は、炉の周囲に加熱ジャケットが設けられ、加熱ジャケットに高温燃焼ガス21を流通させて炭化炉3内のバイオマス20を加熱する装置である。外熱式ロータリーキルンは、少ない飛灰発生量でバイオマスを熱分解ガス化することができる。また、間接加熱式であるために、バイオマスが滞留するキルン内部の酸素濃度を極めて低い値に保持することができるとともに均一な加熱が可能であるため、高カロリーで均質な炭化物23を製造することができる。
【0021】
炭化炉4での炭化により発生した熱分解ガス22は、ガス燃焼室5aに導かれる。ガス燃焼室5aでは、燃焼空気24を供給しながら熱分解ガス22を燃焼させ、高温燃焼ガス21を生成する。
同時に、炭化炉4にて製造された炭化物23は、炭化物燃焼室5bに導かれ、ガス燃焼室5aと同様に燃焼空気24を供給しながら炭化物23を燃焼させ、高温燃焼ガス21を生成する。燃焼室昇温時には助燃25を使用する。
尚、本実施例では、炭化炉4にて発生した熱分解ガス22と炭化物23を、別個の燃焼室5a、5bにて燃焼させる構成としているが、これに限定されるものではなく、一の燃焼室にて熱分解ガス22と炭化物23を燃焼させて高温燃焼ガス21を生成するようにしてもよい。また、燃焼室5a、5bでは排ガス循環を行い、高温燃焼ガス21の燃焼室出口温度を制御し、同時に緩慢燃焼により排ガス中のNO発生を抑制することが好ましい。
【0022】
ここで、炭化物23を、炭化炉4から炭化物燃焼室5bへ供給するまでの工程を図3に示す。炭化炉4から排出された炭化物23は、冷却コンベア51上で空冷されながら移送され、炭化物ホッパ52に貯留される。炭化物ホッパ52に貯留された炭化物は適宜磁選機53に送給され、磁選機53にて金属等の異物が分離除去される。磁選機53からの炭化物は粉砕機54に供給されて粉砕され、微粉炭化物として微粉炭化物ホッパ55に貯留される。そして、微粉炭化物ホッパ55に貯留された微粉炭化物は、所定量ずつ定量フィーダ56にて炭化物燃焼室5bに気相搬送され、粉体バーナから燃焼室5b内に供給される。
【0023】
このようにして生成された高温燃焼ガス21の一部は、炭化炉4の加熱ジャケットに送給され炭化炉4の間接加熱に用いられる。
他の高温燃焼ガス21の少なくとも一部はボイラ6に送給され、ボイラ6にて高温燃焼ガス21の顕熱を利用して高温蒸気27を生成する。生成した高温蒸気27は、ボイラ6に併設される発電設備12に導かれて発電に利用される。発電設備12としては、蒸気タービンに連結された発電機により電力を発生させる周知の装置などが用いられる。ここで発電した電力は、アスファルト製造プラント40の稼動必要電力を自己供給するとともに、他へ売電してもよい。
また、ボイラ6にて生成した高温蒸気の一部を、炭化物23に供給することが好ましく、微粒分飛散防止、或いは冷却に利用する。
ボイラ6にて熱回収後の排ガスは加熱器7に導入され、他の低温排ガス35を熱交換により加熱した後、減温塔8に導入されて冷却水32の噴霧により冷却される。冷却された排ガス33は消石灰34の供給によりNO、HCl等の酸性ガスが中和され、バグフィルタ9に導入されて除塵される。ボイラ6、加熱器7、減温塔8、バグフィルタ9により捕集された飛灰28は飛灰処理設備(不図示)にて処理される。
【0024】
バグフィルタ9から排出される排ガスは、洗煙塔13にて冷却水36、補給水37により冷却、湿式洗浄されるとともに、苛性ソーダ38を噴霧されてSO、HCl等が除去される。洗浄された排ガス35は、加熱器7を介して加熱された後に脱硝反応器10にてアンモニア39の供給によりNOを除去され、煙突11より大気放出される。また、加熱器7により加熱された排ガスの一部は、ガス燃焼室5a若しくは炭化物燃焼室5bに供給される。尚、排ガスの性状に応じて、洗煙塔13、脱硝反応塔10、加熱器7は具備しない構成とすることもでき、これらの装置構成は適宜選択可能である。
【0025】
一方、ガス燃焼室5a及び炭化物燃焼室5bにより生成された高温燃焼ガス21のうち少なくとも一部のガス46は、空気予熱器7に送給される。空気予熱器7では、空気49と高温燃焼ガス21を熱交換して高温空気47が生成される。熱交換により減温した燃焼ガスは加熱器7の後段側に送給され、他の排ガスとともに処理される。
空気予熱器7で生成されたクリーンな高温空気47は、アスファルト製造プラント40に送給され、該プラントにてドライヤー等へ供給される。アスファルト製造プラント40では、骨材41、空気42、灯油等の燃料43が供給されてアスファルト合材等のアスファルト製品44が製造されるが、ここで高温空気47を利用することにより、アスファルト製造プラントの助燃を低減することが可能となる。また、高温空気47は、炭化炉4の熱源を利用しながらも空気予熱器7にて空気49を熱交換して生成したクリーンな空気であるため、製造されたアスファルト製品に不純物が混入することがなく、高品質の製品を製造することができる。
【0026】
本実施例では、ガス燃焼室5a及び炭化物燃焼室5bにて生成した高温燃焼ガス21を利用して、ボイラ6及び発電設備12で安定した電力供給ができる。また、アスファルト製造プラント40の運転状況に応じて、空気予熱器7へ分岐させる高温燃焼排ガス46の流量を制御するとともに、これに応じて炭化物燃焼室5bへの炭化物23の供給量も制御し、高温燃焼排ガス21の生成量を調整する。これにより、アスファルト製造プラント40での運転状況に応じた高温空気47を速やかに生成することができる。即ち、本実施例では、アスファルト製造プラント40の運転状況に伴う負荷変動を、ホッパに備蓄した炭化物23によりまかなう構成としたため、常に一定の電力を供給しつつもアスファルト製造プラント40にて利用する高温空気47を適宜供給することが可能となり、安定した熱併給発電システムを提供することができる。また、負荷変動を補う燃料として、炭化物23を用いているため、熱分解ガスを貯留する場合に比較して極めて備蓄が容易、安全である。
【実施例2】
【0027】
図2に本実施例2に係る炭化炉による熱併給発電システムを示す。尚、本実施例2において、上記した実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例に係るシステムは、アスファルト製造プラント40と、これに併設された炭化炉4と、該炭化炉4からの熱分解ガスを燃焼させて高温燃焼ガスを生成するガス燃焼室5aと、高温燃焼ガスから熱回収するボイラ6と、該ボイラ6にて発生させた高温蒸気を用いて発電する発電設備12と、を主要構成とする。
本実施例2において上記実施例1と異なる構成は、炭化炉4にて製造した炭化物23を、アスファルト製造プラント40で用いられる化石燃料の代替として利用する点である。従って、炭化物23を燃焼して高温燃焼ガスを生成する炭化物燃焼室5bや高温空気47を生成する空気予熱器7は設けない構成とし、炭化炉4からの熱分解ガス22をガス燃焼室5aで燃焼させて生成した高温燃焼ガス21は、炭化炉4の間接加熱、若しくはボイラ6での高温蒸気生成のみに用いる。
【0028】
炭化物23は図3に示す工程を経て、微粉炭化物23としてアスファルト製造プラント40に搬送され、プラント内のドライヤ等に備えられた粉体バーナから供給して直接燃焼させ、アスファルト加熱の熱源として利用する。
本実施例によれば、固形の炭化物23として輸送するため、配管等の設備の簡素化が可能で、またアスファルト製造プラント40と炭化炉4が離れて設けられている場合であっても、容易に熱源を輸送することが可能となる。
また、炭化炉4として間接加熱式のロータリーキルンを採用しているため、均質で高カロリーの炭化物23を得ることができ、アスファルト製造プラント40の熱源に適した燃料を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係る炭化炉による熱併給発電システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施例2に係る炭化炉による熱併給発電システムの全体構成図である。
【図3】図1及び図2における炭化物供給設備を示す概略図である。
【符号の説明】
【0030】
4 炭化炉
5a ガス燃焼室
5b 炭化物燃焼室
6 ボイラ
7 排ガス加熱器
8 減温塔
9 バグフィルタ
10 脱硝反応塔
12 発電設備
20 バイオマス
21 高温燃焼ガス
22 熱分解ガス
23 炭化物
27 高温蒸気
40 アスファルト製造プラント
44 アスファルト製品
46 高温燃焼ガス
47 高温空気
52 炭化物ホッパ
53 磁選機
54 粉砕機
55 微粉炭化物ホッパ
56 定量フィーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風利用設備に併設された炭化炉により炭化物を製造するとともに、該炭化炉にて発生した熱分解ガスを燃焼室で燃焼させて高温燃焼ガスを生成し、該高温燃焼ガスからボイラで生成した高温蒸気を用いて発電を行う炭化炉による熱併給発電方法であって、
前記炭化炉が外熱式キルンであり、該炭化炉にて得られる熱エネルギーの一部を用いて生成した高温空気を前記熱風利用設備にて利用することを特徴とする炭化炉による熱併給発電方法。
【請求項2】
前記熱風利用設備がアスファルト製造プラントであることを特徴とする請求項1記載の炭化炉による熱併給発電方法。
【請求項3】
前記熱エネルギーが、前記熱分解ガスと前記炭化物を前記燃焼室で燃焼することにより生成した高温燃焼ガスであり、
前記高温燃焼ガスを前記ボイラに供給するとともに、該高温燃焼ガスの一部を分岐させて空気予熱器を介して前記高温空気を生成することを特徴とする請求項1若しくは2記載の炭化炉による熱併給発電方法。
【請求項4】
前記熱風利用設備の運転状況に応じて前記燃焼室への炭化物供給量を制御し、前記高温空気の生成量を調整することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の炭化炉による熱併給発電方法。
【請求項5】
前記熱エネルギーが前記炭化物を粉砕して得られた微粉炭化物であり、
前記微粉炭化物を前記熱風利用設備が具備する粉体バーナより供給して直接燃焼させて前記高温空気を生成することを特徴とする請求項1若しくは2記載の炭化炉による熱併給発電方法。
【請求項6】
前記炭化炉に木質系バイオマスを供給することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の炭化炉による熱併給発電方法。
【請求項7】
炭化物を製造する炭化炉が熱風利用設備に併設され、該炭化炉にて発生した熱分解ガスを燃焼させて高温燃焼ガスを生成する燃焼室と、該高温燃焼ガスにより高温蒸気を生成するボイラと、該高温蒸気を用いて発電する発電設備と、を備えた炭化炉による熱併給発電システムであって、
前記炭化炉が外熱式キルンであり、前記熱風利用設備が、前記炭化炉にて得られる熱エネルギーの一部を用いて生成した高温空気を利用する構成であることを特徴とする炭化炉による熱併給発電システム。
【請求項8】
前記熱風利用設備がアスファルト製造プラントであることを特徴とする請求項7記載の炭化炉による熱併給発電システム。
【請求項9】
前記熱エネルギーが、前記熱分解ガスと前記炭化物を前記燃焼室で燃焼させて生成した高温燃焼ガスであり、
前記高温燃焼ガスの顕熱により前記高温空気を生成する空気予熱器と、
前記高温燃焼ガスを前記ボイラに供給するとともに、該高温燃焼排ガスの一部を分岐させて前記空気予熱器に供給する高温燃焼ガスラインと、
前記空気予熱器からの高温空気を前記熱風利用設備に供給する高温空気ラインと、を備えることを特徴とする請求項7若しくは8記載の炭化炉による熱併給発電システム。
【請求項10】
前記燃焼室への炭化物供給量を制御する手段を備え、前記熱風利用設備の運転状況に応じて前記高温空気の生成量を調整することを特徴とする請求項9記載の炭化炉による熱併給発電システム。
【請求項11】
前記燃焼室が、前記熱分解ガスを主燃料として高温燃焼ガスを生成するガス燃焼室と、前記炭化物を主燃料として高温燃焼ガスを生成する炭化物燃焼室とからなり、前記熱風利用設備の運転状況に応じて前記炭化物燃焼室における高温燃焼ガスの生成量を調整することを特徴とする請求項7若しくは8記載の炭化炉による熱併給発電システム。
【請求項12】
前記熱エネルギーが前記炭化物を粉砕して得られた微粉炭化物であり、
前記熱風利用設備が、前記微粉炭化物を供給する粉体バーナを備え、該粉体バーナから供給する微粉炭化物を直接燃焼させて前記高温空気を生成することを特徴とする請求項7若しくは8記載の炭化炉による熱併給発電システム。
【請求項13】
前記炭化物に木質系バイオマスを供給することを特徴とする請求項7乃至12の何れかに記載の炭化炉による熱併給発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−127330(P2007−127330A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320184(P2005−320184)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】