説明

無機粉体含有樹脂組成物、転写フィルムおよびフラットパネルディスプレイ部材の製造方法

【課題】パターニング性およびパターン形状に優れたFPDのパネル部材を好適に形成することができる無機粉体含有樹脂組成物および無機粉体含有樹脂組成物を用いた転写フィルムを提供すること。およびパターニング性および、パターン形状に優れたFPDのパネル部材を効率的に形成することができるFPD部材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】(a)無機粉体、(b)結着樹脂、(c)下記式(1)で表される化合物、(d)溶剤を含有することを特徴とする、無機粉体含有樹脂組成物。ただし下記式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1はn価の有機基を示し、Bはイソシアネート
をブロックする基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粉体含有樹脂組成物、転写フィルム、およびフラットパネルディスプレイ部材の製造方法に関する。詳しくは、フラットパネルディスプレイを構成するパネル材料の形成に好適な無機粉体含有樹脂組成物および転写フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィールドエミッションディスプレイ(以下、「FED」ともいう)、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう)等のフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」ともいう)は、大型パネルでありながら製造プロセスが容易であること、視野角が広いこと、自発光タイプで表示品位が高いこと等の理由から、フラットパネル表示技術の中で注目されており、特にカラープラズマディスプレイパネルは、20インチ以上の壁掛けTV用の表示デバイスとして将来主流になるものと期待されている。
【0003】
FEDは、電界印加によって陰極から真空中に電子を放出させ、その電子を陽極上の蛍光体に照射することにより、蛍光体を発光させて情報を表示するディスプレイである。
カラーPDPは、ガス放電により発生する紫外線を蛍光体に照射することによってカラー表示が可能になる。そして、一般に、カラーPDPにおいては、赤色発光用の蛍光体部位、緑色発光用の蛍光体部位及び青色発光用の蛍光体部位が基板上に形成されることにより、各色の発光表示セルが全体に均一に混在した状態に構成されている。具体的には、ガラス等からなる基板の表面に、バリアリブと称される絶縁性材料からなる隔壁が設けられており、この隔壁によって多数の表示セルが区画され、当該表示セルの内部がプラズマ作用空間になる。そして、このプラズマ作用空間に蛍光体部位が設けられるとともに、この蛍光体部位にプラズマを作用させる電極が設けられることにより、各々の表示セルを表示単位とするプラズマディスプレイパネルが構成される。当該電極は、通常、銀等を含有する白色導電層と、当該白色導電層の下層に反射防止層(遮光層)の役割を有する暗色層(黒色層)を有する積層パターンで構成される。また、通常、PDPのコントラストを向上させるために、電極パターンの間にブラックマトリクスやカラーフィルターが設けられる。
【0004】
このようなFPDにおけるパネル材料の製造方法としては、(1)イオンスパッタ法や電子ビーム蒸着法などによる方法や(2)フォトリソグラフィー法やスクリーン印刷法等により形成した無機粉体含有樹脂層パターンを焼成し、有機物質を除去する方法などが知られている。中でもフォトリソグラフィー法により無機粉体含有樹脂層をパターニングする方法が、製造効率が高く、原理的にパターン精度に優れているため好適に用いられている。特に、可撓性を有する支持フィルム上に無機粉体含有樹脂層を形成した転写フィルムを用い、当該無機粉体含有樹脂層を基板上に転写してパターニングを行う方法が、膜厚の均一性、および表面の均一性に優れたパターンを形成することができるため、好ましく用いられている。
【特許文献1】特開平11−162339号公報
【特許文献2】特開2001−84833号公報
【特許文献3】特開2002−245932号公報
【特許文献4】特開2003−51250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記無機粉体含有樹脂膜の形成に用いる無機粉体含有樹脂組成物は、ガ
ラス基板やPETフィルムなどの支持体上に塗布、乾燥して形成される被膜の柔軟性を保持するため、あるいは転写フィルムとして用いる場合は、ガラス基板等の基材への転写性を得るために、ガラス転移点の低いポリマーを用いたり、可塑剤を多量に添加したりする必要がある。しかし、このような無機粉体含有樹脂組成物は、フォトリソグラフィー等を用いてパターンを形成した後、焼成する際に、樹脂がメルトしてしまい、焼成後のパターンが太ってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものである。
本発明の第1の目的は、パターニング性およびパターン形状に優れたFPDのパネル部材(例えば、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルター、ブラックマトリクス)を好適に形成することができる無機粉体含有樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、パターニング性および、パターン形状に優れたFPDのパネル部材を効率的に形成することができる転写フィルムを提供することにある。
本発明の第3の目的は、パターニング性および、パターン形状に優れたFPDのパネル部材を効率的に形成することができるFPD部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、(a)無機粉体と、(b)結着樹脂と、(c)下記式(1)で表される化合物と、(d)溶剤とを含有することを特徴とする。
【0009】
【化3】

【0010】
[上記式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1はn価の有機基を示し、Bはイソシアネートをブロックする基を表す。]
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、さらに(e)感放射線成分を含有する、感放射線性無機粉体含有樹脂組成物であってもよい。
【0011】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、前記式(1)で表される化合物が、下記式(2)および式(3)からなる群から選択される少なくとも1種の活性メチレンブロックイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0012】
【化4】

【0013】
[上記式(2)および式(3)において、nは1〜10の整数を表し、R1はn価の有機
基を示し、R2およびR3は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基を表す。]
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、前記式(1)で表される化合物のイソシアネートをブロックする基(B)がマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセチルアセトンおよ
びアセト酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種のブロック化剤(H−B)より誘導される基であることが好ましい。
【0014】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、前記式(1)で表される化合物の80℃、ベーク時間30分におけるゲル分率が、50%以上であることが好ましい。
本発明の第一の転写フィルム(以下、「転写フィルムI」ともいう)は、本発明の無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第二の転写フィルム(以下、「転写フィルムII」ともいう)は、レジスト膜と、本発明の無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜との積層膜を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の第一のFPD部材の製造方法(以下、「FPD部材の製造方法I」ともいう)は、支持フィルム上に形成された、本発明の無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜を基板上に転写し、転写された無機粉体含有樹脂膜上にレジスト膜を形成し、当該レジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成し、当該レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させ、当該無機粉体含有樹脂膜をエッチング処理してレジストパターンに対応するパターンを形成し、当該パターンを焼成処理することにより、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスからなる群から選ばれるパネル部材を形成することを特徴とする。
【0017】
本発明の第二のFPD部材の製造方法(以下、「FPD部材の製造方法II」ともいう)は、レジスト膜と本発明の感光性無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜との積層膜を基板上に転写し、当該積層膜を構成するレジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成し、当該レジスト膜を現像処理してレジストパターンを形成し、当該無機粉体含有樹脂膜をエッチング処理してレジストパターンに対応するパターンを形成し、当該パターンを焼成処理することにより、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスからなる群から選ばれるパネル部材を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明の第三のFPD部材の製造方法(以下、「FPD部材の製造方法III」ともいう)は、支持フィルム上に形成された、本発明の(e)感放射線成分を含有する無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜を基板上に転写し、当該無機粉体含有樹脂膜を露光処理してパターンの潜像を形成し、当該無機粉体含有樹脂膜を現像処理してパターンを形成し、当該パターンを焼成処理して、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスからなる群から選ばれるパネル部材を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物を用いると、基板へのフィルム転写性が良好であり、かつ焼成時の樹脂のメルトもないため、バターニング性およびバターニング形状に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る無機粉体含有樹脂組成物、転写フィルム、およびFPD部材の製造方法について詳細に説明する。
〔無機粉体含有樹脂組成物〕
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、(a)無機粉体、(b)結着樹脂、(c)式(1)で表されるブロックイソシアネート化合物と、(d)溶剤、必要に応じて、(e)感放射線性物質とを含有し、FPD部材の形成に好適に用いることができる。
【0021】
(a)無機粉体
本発明の組成物に用いられる無機粉体を構成する無機物質としては特に限定されるものではなく、当該組成物により形成される焼結体の用途(FPD部材の種類)に応じて適宜選択することができる。
【0022】
ここに、FPDを構成する「誘電体層」または「隔壁」を形成するための組成物に含有される無機粉体としては、軟化点が350〜700℃(好ましくは400〜620℃)の範囲内にあるガラス粉末を挙げることができる。ガラス粉末の軟化点が400℃未満である場合には、当該組成物による無機粉体含有樹脂膜の焼成工程において、結着樹脂などの有機物質が完全に分解除去されない段階でガラス粉末が溶融してしまうため、形成される誘電体層中に有機物質の一部が残留し、この結果、誘電体層が着色されて、その光透過率が低下する傾向がある。一方、ガラス粉末の軟化点が620℃を超える場合には、620℃より高温で焼成する必要があるために、ガラス基板に歪みなどが発生しやすい。
【0023】
好適なガラス粉末の具体例としては、
1.酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(PbO−B2O3−SiO2系)の混合物、
2.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(ZnO−B2O3−SiO2系)の混合物、
3.酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム(PbO−B2O3−SiO2−Al2O3系)の混合物、
4.酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(PbO−ZnO−B2O3−SiO2系)の混合物、5.酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化ケイ素(Bi2O3-B2O3-SiO2系)の混合物、
6.酸化亜鉛、酸化リン、酸化ケイ素(ZnO−P2O5−SiO2系)の混合物、
7.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化カリウム(ZnO−B2O3−K2O系)の混合物、
8.酸化リン、酸化ホウ素、酸化アルミニウム(P2O5−B2O3−Al2O3系)の混合物、
9.酸化亜鉛、酸化リン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム(ZnO−P2O5−SiO2−Al2O3系)の混合物、
10.酸化亜鉛、酸化リン、酸化チタン(ZnO−P2O5−TiO2系)の混合物、
11.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウム(ZnO−B2O3−SiO2系−K2O系)の混合物、
12.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化カルシウム(ZnO−B2O3
−SiO2−K2O−CaO系)の混合物、
13.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム(ZnO−B2O3−SiO2−K2O−CaO−Al2O3系)の混合物
などが挙げられる。
【0024】
上記ガラス粉末は、誘電体層および隔壁以外のパネル部材(例えば電極・抵抗体・蛍光体・カラーフィルター・ブラックマトリックス)を形成するための組成物中に含有(併用)されていてもよい。これらのパネル材料を得るための無機粉体含有樹脂組成物におけるガラスフリットの含有量は、無機粉体全量に対して、通常、80質量%以下、好ましくは、1〜70質量%である。
【0025】
FPDを構成する「電極」を形成するための組成物に含有される無機粉体としては、Ag、Au、Al、Ni、Ag−Pd合金、Cu、CoおよびCrなどからなる金属粒子を挙げることができる。なお、電極として、暗色層(反射防止層)と白色層との二層を有する電極を形成する場合には、暗色層に用いられる無機粉体としては、Ni、Cu、Fe、Cr、Mnおよびそれら複合酸化物、さらには酸化ニッケル、酸化鉄、酸化銅、酸化コバルト、酸化ルテニウム等が好適に用いられる。
【0026】
これらの金属粒子は、誘電体層を形成するための組成物中にガラス粉末と併用する形で
含有されていてもよい。誘電体層形成用組成物における金属粒子の含有量は、無機粉体全量に対して、通常、10質量%以下、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0027】
FPDを構成する「抵抗体」を形成するための組成物に含有される無機粉体としては、RuO2などからなる粒子を挙げることができる。
FPDを構成する「蛍光体」を形成するための組成物に含有される無機粉体としては、Y2O3:Eu3+、Y2SiO5:Eu3+、Y3Al5O12:Eu3+、YVO4:Eu3+、(Y, Gd)BO3:Eu3+、Zn3(PO4)2:Mnなどの赤色用蛍光物質;Zn2SiO4:Mn、BaAl12O19:Mn、BaMgAl14O23:Mn、LaPO4:(Ce, Tb)、Y3(Al, Ga)5O12:Tbなどの緑色用蛍光物質;Y2SiO5:Ce、BaMgAl10O17:Eu2+、BaMgAl14O23:Eu2+、(Ca, Sr, Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+、(Zn, Cd)S:Agなどの青色用蛍光
物質などからなる粒子を挙げることができる。
【0028】
FPDを構成する「カラーフィルター」を形成するための組成物に含有される無機粉体としては、Fe2O3、Pb3O4などの赤色用物質、Cr2O3などの緑色用物質、2(Al2Na2Si3O10)・Na2S4などの青色用物質などからなる粒子を挙げることができる。
【0029】
FPDを構成する「ブラックマトリックス」を形成するための組成物に含有される無機粉体としては、Mn、Fe、Cr、Co、Niや、その酸化物およびそれらの複合酸化物からなる粒子を挙げることができる。
【0030】
(b)結着樹脂
本発明の無機粉体含有樹脂組成物を構成する結着樹脂としては、種々の樹脂を用いることができるが、アルカリ可溶性樹脂を30〜100質量%の割合で含有する樹脂を用いることが好ましい。ここに、「アルカリ可溶性」とは、アルカリ性の現像液によって溶解し、目的とする現像処理が遂行される程度に溶解性を有する性質をいう。
【0031】
かかるアルカリ可溶性樹脂の具体例としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂などを挙げることができる。
このようなアルカリ可溶性樹脂のうち、特に好ましいものとしては、下記のモノマー(イ)とモノマー(ハ)との共重合体、モノマー(イ)、モノマー(ロ)およびモノマー(ハ)の共重合体などのアクリル樹脂を挙げることができる。なお、該アクリル樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体の何れであっても良い。
モノマー(イ):カルボキシル基含有モノマー類
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなど。
モノマー(ロ):OH含有モノマー類
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有モノマー類;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどのフェノール性水酸基含有モノマー類、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類(ブレンマーPE、ブレンマーAE、ブレンマーPPシリーズ:日本油脂)などが挙げられる。
モノマー(ハ):その他の共重合可能なモノマー類
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルなどのモノマー(イ)以外の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系モノマー類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、
ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル等のポリマー鎖の一方の末端に(メタ)アクリロイル基などの重合性不飽和基を有するマクロモノマー類、アルキル基末端リアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類(ブレンマーPME、ブレンマーAME、ブレンマーPSEシリーズ:日本油脂)など。
【0032】
上記モノマー(イ)とモノマー(ハ)との共重合体や、モノマー(イ)、モノマー(ロ)およびモノマー(ハ)の共重合体は、モノマー(イ)に由来する共重合成分の存在により、アルカリ可溶性を有するものとなる。中でも特定モノマーとモノマー(イ)、モノマー(ロ)およびモノマー(ハ)の共重合体は、(a)無機粉体の分散安定性や後述するアルカリ現像液への溶解性の観点から特に好ましい。この共重合体におけるモノマー(イ)に由来する共重合成分の含有率は、好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜40質量%であり、モノマー(ロ)に由来する共重合成分の含有率は、好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%である。
【0033】
上記アルカリ可溶性樹脂の分子量としては、Mwが5,000〜5,000,000であることが好ましく、さらに好ましくは10,000〜300,000とされる。
また、本発明の無機粉体含有樹脂組成物における結着樹脂の含有割合としては、無機粉体100質量部に対して、通常、1〜200質量部とされ、好ましくは、5〜150質量部、特に好ましくは、10〜120質量部とされる。
【0034】
(c)ブロックイソシアネート化合物
本発明の組成物に用いられるブロックイソシアネート化合物は、下記式(1)で表される。
【0035】
【化5】

【0036】
[上記式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1はn価の有機基を示し、Bはイソシアネートをブロックする基を表す。]
本発明の組成物に用いるブロックイソシアネート化合物は上記式(1)で表されるものであれば1種単独で用いても2種以上を用いても良い。
【0037】
Bの具体例としては、アルコキシ基、フェノキシ基、活性メチレン化合物残基、メルカプタン系化合物残基、酸アミド系化合物残基、アミノ基、イミダゾール系化合物残基、イミノ基、オキシム系化合物残基、ラクタム系化合物残基などが挙げられる。中でもBは活性メチレン化合物残基であることが好ましい。
【0038】
式(1)で表されるブロックイソシアネート化合物の中でも、特にBが活性メチレン化合物残基である下記式(2)および式(3)からなる群から選択される少なくとも1種の活性メチレンブロックイソシアネート化合物が保存安定性と反応性を両立できるため好ましい。
【0039】
【化6】

【0040】
[上記式(2)および式(3)において、nは1〜10の整数を表し、R1はn価の有機基を示し、R2およびR3は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基を表す。]
また、上記化合物(1)は、下記反応式に示すように、熱処理によって脱ブロック化し、活性なイソシアネート基を再生させることができる。
【0041】
【化7】

【0042】
これにより、焼成時に、再生されたイソシアネート基がポリマー中の活性水素を有する置換基(−COOH、−OH、−NH2等)と反応し、熱架橋を引き起こすため、ポリマー
の高分子量化が起こり、樹脂のメルトによるパターンの変形や太りを抑制することができる。また、常温ではイソシアネート基のブロックが外れることはなく、活性水素と反応することがないため、ポリマーの高分子量化は起こり得ず、保存安定性にも優れている。したがって、上記モノマー(1)を用いることにより、可撓性および転写性に優れる無機粉体含有樹脂組成物が得られるとともに、焼成時の樹脂のメルトを抑制し、線太りがなく、形状に優れたパターンを得ることが可能となる。
【0043】
上記化合物式(1)中のイソシアネートをブロックする基(B)はブロック化剤(H−B)より誘導される基であり、遊離イソシアネート基を、ブロック化剤(H−B)を用いた公知のブロック化方法で処理することにより、化合物式(1)中のブロック化イソシアネート(−NHCO−B)基を形成することができる。前記ブロック化剤としては、イソシアネート基のブロック化剤として従来から一般的に使用されている化合物が挙げられる。
【0044】
上記ブロック化剤(H−B)の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、メチルカルビトール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、フルフリルアルコール等のアルコール系化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、p−エチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、ノニルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、p−ニトロフェノール、p−クロロフェノール等のフェノール系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等の活性メチレン化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオフェノール等のメルカプタン系化合物;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセチルアミド、ベンズアミド等の酸アミド系化合物;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等のアミン系化合物;イミダゾール、2−エチルイミダゾー
ル、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;エチレンイミン等のイミン系化合物;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系化合物等を挙げることができる。これらの中では、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン化合物系化合物、オキシム系化合物、ラクタム系化合物が好ましく、活性メチレン化合物がより好ましい。
【0045】
また上記化合物(1)中のR1の具体例としては、トリレンジイソシアネート誘導体、
キシリレンジイソシアネート誘導体、ナフチレン1,5−ジイソシアネート誘導体、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート誘導体、水添キシリレンジイソシアネート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート誘導体、ダイマー酸ジイソシアネート誘導体、ノルボルネンジイソシアネート誘導体、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート誘導体等が挙げることができる。
【0046】
具体的な化合物を挙げるとすれば、旭化成ケミカルズ製のデュラネート17B−60PX、TPA−B80X、MF−B60X、MF−K60X、K6000、E−402−B−80T、Degussa製のVESTAGON 1530、VESTAGON1065が挙げられるが、これらに限らず用いることが可能である。
【0047】
本発明の組成物におけるブロックイソシアネート化合物の含有割合としては、無機粉体100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜10質量部とされる。ブロックイソシアネート化合物の割合が過小である場合には、焼成時の熱架橋が十分でなく、ポリマーを高分子量化させることができないため、メルト抑制の効果が発現されにくくなる。一方、この割合が過大である場合には、ペースとおよびドライフィルムの保存安定性が悪くなるだけでなく、得られる組成物を用いて形成される無機粉体含有樹脂膜の粘着性(タック)が過大となり、そのような無機粉体含有樹脂膜を備えた転写フィルムは、取扱性が劣るものとなるおそれがある。
【0048】
本発明の組成物におけるブロックイソシアネート化合物のベーク温度80℃、ベーク時間30分におけるゲル分率が、50%以上であることが好ましい。ブロックイソシアネート化合物のベーク温度80℃、ベーク時間30分におけるゲル分率が50%以下である場合、焼成時の樹脂のメルトが起こる前に、十分に反応せず、線太りの抑制効果が十分に発揮できない場合がある。本発明においてゲル分率の測定方法とは以下の通りである。
【0049】
ブロックイソシアネート化合物とアクリディックA−801(大日本インキ化学工業株式会社)をNCO/OH=1.0になるように混合し、硬化促進剤としてジブチル錫ジラウレート0.5%(対塗料固形分)を加え、攪拌し、試験用組成物を得る。次にプロピレン板に試験用組成物をエアスプレー(口径1mmΦ、スプレー圧3kg/cm2)にて塗布し、ベーク温度80℃、ベーク時間30分とし、乾燥膜厚50umの塗膜を得る。プロピレン板ごと400メッシュのステンレス金網の袋に入れ、アセトン中に20℃で24時間浸漬した後の、塗膜の重量残存率から算出する。
【0050】
(d)溶剤
本発明の無機粉体含有樹脂組成物には、通常、適当な流動性または可塑性、良好な膜形成性を付与するために溶剤が含有される。用いられる溶剤としては、無機粉体との親和性、結着樹脂の溶解性が良好で、無機粉体含有樹脂組成物に適度な粘性を付与することができると共に、乾燥されることにより容易に蒸発除去できるものであることが好ましい。
【0051】
また、特に好ましい溶剤として、標準沸点(1気圧における沸点)が100〜200℃であるケトン類、アルコール類およびエステル類(以下、これらを「特定溶剤」という)を挙げることができる。
【0052】
かかる特定溶剤の具体例としては、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸エチル、乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類などを例示することができ、これらのうち、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどが好ましい。これらの特定溶剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
特定溶剤以外の溶剤の具体例としては、テレビン油、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどを挙げることができる。
【0054】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物における溶剤の含有割合としては、良好な膜形成性(流動性または可塑性)が得られる範囲内において適宜選択することができる。
(e)感放射線成分
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、感放射線性成分を含有する感放射線性無機粉体含有樹脂組成物であってもよい。当該感放射線性成分としては、例えば、(イ)多官能性モノマーと放射線重合開始剤との組み合わせ、(ロ)メラミン樹脂と放射線照射により酸を形成する光酸発生剤との組み合わせなどを好ましいものとして例示することができ、上記(イ)の組み合わせのうち、多官能性(メタ)アクリレートと放射線重合開始剤との組み合わせが特に好ましい。
【0055】
多官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;両末端ヒドロキシポリブタジエン、両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシポリカプロラクトンなどの両末端ヒドロキシル化重合体のジ(メタ)アクリレート類;
グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールアルカン、テトラメチロールアルカン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類;3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のポリ(メタ)アクリレート類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ベンゼンジオール類などの環式ポリオールのポリ(メタ)アクリレート類;ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレート類などを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
上記多官能性(メタ)アクリレートの分子量としては、100〜2,000であること
が好ましい。
本発明の無機粉体含有樹脂組成物における多官能性(メタ)アクリレートの含有割合としては、無機粉体100質量部に対して、通常、20〜80質量部とされ、好ましくは、30〜60質量部とされる。
【0057】
放射線重合開始剤の具体例としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ビス(N、N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(N、N-ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−〔4’−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのカルボニル化合物;アゾイソブチロニトリル、4−アジドベンズアルデヒドなどのアゾ化合物あるいはアジド化合物;メルカプタンジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾールなどの有機硫黄化合物;ベンゾイルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、パラメタンハイドロパーオキシドなどの有機パーオキシド;1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−(2−フラニル)エチレニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどのトリハロメタン類;2,2’−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル1,2’−ビイミダゾールなどのイミダゾール二量体などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
本発明の組成物における放射線重合開始剤の含有割合としては、多官能性(メタ)アクリレート100質量部に対して、通常、0.01〜50.0質量部とされ、好ましくは、0.1〜30.0質量部とされる。
【0059】
また、本発明の無機粉体含有樹脂組成物には、任意成分として、シランカップリング剤、可塑剤、分散剤、現像促進剤、接着助剤、ハレーション防止剤、レベリング剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、連鎖移動剤、粘着性付与剤、表面張力調整剤などの各種添加剤が含有されてもよい。
【0060】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、上記無機粉体、結着樹脂、シランカップリング剤、光重合性モノマー、光重合開始剤および溶剤と必要に応じて上記任意成分を、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミルなどの混練機を用いて混練することにより調製することができる。
【0061】
上記のようにして調製される無機粉体含有樹脂組成物は、塗布に適した流動性を有するペースト状の組成物であり、その粘度は、通常100〜1,000,000cP、好ましくは300〜300,000cPとされる。
【0062】
無機粉体含有樹脂組成物の一例として、好ましい電極形成用の組成物の例を示せば、無機粉体としてニッケル粉100質量部とガラス粉末1〜30質量部、結着樹脂としてブレンマーPME−100/メタクリル酸n−ブチル/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル共重合体10〜150質量部と、活性メチレン系ブロックイソシアネート化合物5重量部、可塑剤を1〜50質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルおよび/またはエチル−3−エトキシプロピオネート5〜30質量部を含有する組成物を挙げることができる。
〔転写フィルム〕
本発明の転写フィルムは、FPD部材の形成工程に好適に使用される複合フィルムであって、支持フィルム上に本発明の組成物を塗布し、塗膜を乾燥させることにより形成され
る無機粉体含有樹脂膜を備えてなる。
【0063】
すなわち、本発明の第一の転写フィルムは、支持フィルム上に、(a)無機粉体、(b)結着樹脂、(c)上記式(1)で表される化合物、(d)溶剤を含有する無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜を有する。本発明の第一の転写フィルムは、前記無機粉体含有樹脂組成物に上記感放射線性成分(e)がさらに含有された感放射線性転写フィルムであってもよい。
【0064】
本発明の第二の転写フィルムは、支持フィルム上に、該支持フィルム上に形成されたレジスト膜と、該レジスト膜上に本発明の組成物を塗布し、塗膜を乾燥させることにより形成された無機粉体含有樹脂膜との積層膜を有する。
【0065】
支持フィルム上の無機粉体含有樹脂膜は、基板の表面に一括転写される。本発明の転写フィルムによれば、このような簡単な操作によって無機粉体含有樹脂膜をガラス基板上に確実に形成することができるので、FPD部材の形成工程における工程改善(高効率化)を図ることができるとともに、形成される部材の品質の向上(例えば、電極における安定したライン抵抗の発現)を図ることができる。
【0066】
<転写フィルムの構成>
図1(イ)は、ロール状に巻回された本発明の転写フィルムを示す概略断面図であり、同図(ロ)は、該転写フィルムの層構成を示す断面図〔(イ)の部分詳細図〕である。
【0067】
図1に示す転写フィルムは、本発明の転写フィルムの一例として、複合フィルムであって、通常、支持フィルムF1と、この支持フィルムF1の表面に剥離可能に形成された無機粉体含有樹脂膜F2と、この無機粉体含有樹脂膜F2の表面に剥離容易に設けられたカバーフィルムF3とにより構成されている。カバーフィルムF3は、無機粉体含有樹脂膜F2の性質によっては使用されない場合もある。また、支持フィルムF1と無機粉体含有樹脂膜F2との間には、レジスト膜が形成されていてもよく、無機粉体含有樹脂膜F2は異種、同種の層が2層以上積層されたものでもよい。
【0068】
転写フィルムを構成する支持フィルムF1は、耐熱性および耐溶剤性を有するとともに可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムF1が可撓性を有することにより、ロールコーター、ブレードコーターなどを用いてペースト状の組成物(本発明の組成物)を塗布することができ、これにより、膜厚の均一な無機粉体含有樹脂膜を形成することができるとともに、形成された無機粉体含有樹脂膜をロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。
【0069】
支持フィルムF1を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。支持フィルムF1の厚さとしては、例えば20〜100μmとされる。
【0070】
転写フィルムを構成する無機粉体含有樹脂膜F2は、焼成されることによって無機焼結体(FPD部材)となる膜である。
無機粉体含有樹脂膜F2の厚さとしては、形成する部材の種類、無機粉体の含有率、パネルの種類やサイズによっても異なるが、例えば5〜200μmである。
【0071】
転写フィルムを構成するカバーフィルムF3は、無機粉体含有樹脂膜F2の表面(基板との接触面)を保護するためのフィルムである。このカバーフィルムF3も可撓性を有す
る樹脂フィルムであることが好ましい。カバーフィルムF3を形成する樹脂としては、支持フィルムF1を形成するものとして例示した樹脂を挙げることができる。カバーフィルムF3の厚さとしては、例えば20〜100μmである。
【0072】
<転写フィルムの製造方法>
本発明の転写フィルムは、支持フィルム(F1)上に無機粉体含有樹脂膜(F2)を形成し、該無機粉体含有樹脂膜(F2)上にカバーフィルム(F3)を設ける(圧着する)ことにより製造することができる。
【0073】
本発明の組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、膜厚が大きく(例えば20μm以上)、膜厚の均一性に優れた塗膜を効率よく形成することができる観点から、ロールコーターによる塗布方法、ドクターブレードなどのブレードコーターによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法、ワイヤーコーターによる塗布方法、ダイコーターによる塗布方法などを好ましいものとして挙げることができる。
【0074】
なお、本発明の組成物が塗布される支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、無機粉体含有樹脂膜を転写した後において、該無機粉体含有樹脂膜から支持フィルムを容易に剥離することができる。
【0075】
支持フィルム上に形成された本発明の組成物による塗膜は、乾燥されることによって溶剤の一部または全部が除去され、転写フィルムを構成する無機粉体含有樹脂膜となる。本発明の組成物による塗膜の乾燥条件としては、例えば40〜150℃で0.1〜30分間程度である。乾燥後における溶剤の残存割合(無機粉体含有樹脂膜中の溶剤の含有割合)は、通常10質量%以下であり、基板に対する粘着性および適度な形状保持性を無機粉体含有樹脂膜に発揮させる観点から0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0076】
上記のようにして形成された無機粉体含有樹脂膜の上に設けられる(通常、熱圧着される)カバーフィルムの表面にも離型処理が施されていることが好ましい。これにより、無機粉体含有樹脂膜を転写する前に、当該無機粉体含有樹脂膜からカバーフィルムを容易に剥離することができる。
【0077】
〔FPD部材の製造方法〕
本発明のFPD部材の製造方法は、本発明の転写フィルムを用いて、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスからなる群から選ばれる少なくとも1種のパネル部材を形成することを特徴とする。
【0078】
図1に示したような構成の転写フィルムによる無機粉体含有樹脂膜の転写工程の一例を示せば以下のとおりである。
1.ロール上に巻回された状態の転写フィルムを基板の面積に応じた大きさに裁断する。2.裁断した転写フィルムにおける無機粉体含有樹脂膜(F2)表面からカバーフィルム(F3)を剥離した後、基板の表面に無機粉体含有樹脂膜(F2)の表面が当接するように転写フィルムを重ね合わせる。
3.基板に重ね合わされた転写フィルム上に加熱ローラを移動させて熱圧着させる。
4.熱圧着により基板に固定された無機粉体含有樹脂膜(F2)から支持フィルム(F1)を剥離除去する。
【0079】
上記のような操作1〜4により、支持フィルム(F1)上の無機粉体含有樹脂膜(F2)が基板上に転写される。基板の表面に転写形成された無機粉体含有樹脂膜(F2)は、焼成されて無機焼結体となる。焼成方法としては、無機粉体含有樹脂膜(F2)が転写形成された基板を高温雰囲気下に配置する方法を挙げることができる。これにより、無機粉
体含有樹脂膜(F2)に含有されている有機物質(例えば、結着樹脂、残留溶剤、非イオン性界面活性剤、各種添加剤)が分解されて除去され、無機粉体が溶融して燒結する。焼成温度としては、基板の溶融温度、無機粉体含有樹脂膜中の構成物質などによっても異なるが、例えば300〜800℃、好ましくは400〜620℃である。
【0080】
<FPD部材の製造方法I>
本発明のFPD部材の製造方法Iは、本発明の転写フィルムを構成する無機粉体含有樹脂膜を基板上に転写する工程、転写された無機粉体含有樹脂膜上にレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成する工程、該レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させる工程、該無機粉体含有樹脂膜をエッチング処理して該レジストパターンに対応するパターンを形成する工程、該パターンを焼成処理することにより、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスから選ばれるパネル部材を形成する工程を含む。
【0081】
以下、FPDのパネル部材である「電極」を背面基板の表面に形成する方法を例にとって説明する。この方法においては、〔1〕無機粉体含有樹脂膜の転写工程、〔2〕レジスト膜の形成工程、〔3〕レジスト膜の露光工程、〔4〕レジスト膜の現像工程、〔5〕無機粉体含有樹脂膜のエッチング工程、〔6〕無機粉体含有樹脂パターンの焼成工程により、基板の表面に電極が形成される。
【0082】
〔1〕無機粉体含有樹脂膜の転写工程
この工程においては、本発明の転写フィルムの無機粉体含有樹脂膜を基板に転写形成する。無機粉体含有樹脂膜の転写工程一例を示せば以下のとおりである。
【0083】
上記転写フィルムのカバーフィルムを剥離した後、基板表面に、無機粉体含有樹脂膜の表面が当接されるように転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムを加熱ローラなどにより熱圧着した後、無機粉体含有樹脂膜から支持フィルムを剥離除去する。これにより、基板の表面に無機粉体含有樹脂膜が転写されて密着した状態となる。転写条件としては、例えば、加熱ローラの表面温度が80〜140℃、加熱ローラによるローラ圧が1〜5kg/cm、加熱ローラの移動速度が0.1〜10.0m/分である。また、基板は予熱されていてもよく、予熱温度としては、例えば40〜100℃である。
【0084】
〔2〕レジスト膜の形成工程
この工程においては、転写された無機粉体含有樹脂膜の表面にレジスト膜を形成する。このレジスト膜を構成するレジストとしては、ポジ型レジストおよびネガ型レジストのいずれであってもよい。本発明に用いる好ましいレジストの一例としては、上述した感放射線性成分である多官能性(メタ)アクリレートと放射線重合開始剤と、バインダー樹脂としてアクリル樹脂とを含有するレジスト組成物を挙げることができる。
【0085】
レジスト膜は、スクリーン印刷法、ロール塗布法、回転塗布法、流延塗布法など種々の方法によってレジストを塗布した後、塗膜を乾燥することにより形成することができる。塗膜の乾燥温度は、通常60〜130℃程度である。
【0086】
〔3〕レジスト膜の露光工程
この工程においては、無機粉体含有樹脂膜上に形成されたレジスト膜の表面に、露光用マスクを介して、紫外線などの放射線を選択的に照射(露光)して、レジストパターンの潜像を形成する。なお、レジスト膜を転写により形成した場合には、レジスト膜上に被覆されている支持フィルムを剥離しない状態で露光工程を行うことが好ましい。
【0087】
露光工程に用いられる紫外線照射装置としては、従来のフォトリソグラフィー法で使用
されている紫外線照射装置、半導体および液晶表示装置を製造する際に使用されている露光装置など特に限定されるものではない。
【0088】
〔4〕レジスト膜の現像工程
この工程においては、露光されたレジスト膜を現像処理することにより、レジストパターン(潜像)を顕在化させる。
【0089】
現像処理条件としては、レジスト膜の種類などに応じて、現像液の種類・組成・濃度、現像時間、現像温度、現像方法(例えば、浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法)、現像装置などを適宜選択することができる。
【0090】
この現像工程により、レジスト残留部とレジスト除去部とから構成されるレジストパターン(露光用マスクに対応するパターン)が形成される。
このレジストパターンは、次工程(エッチング工程)におけるエッチングマスクとして作用するものであり、レジスト残留部の構成材料(光硬化されたレジスト)は、無機粉体含有樹脂膜の構成材料よりもエッチング液に対する溶解速度が小さいことが必要である。
【0091】
〔5〕無機粉体含有樹脂膜のエッチング工程
この工程においては、無機粉体含有樹脂膜をエッチング処理し、レジストパターンに対応する無機粉体含有樹脂のパターンを形成する。すなわち、無機粉体含有樹脂膜のうち、レジストパターンのレジスト除去部に対応する部分がエッチング液に溶解されて選択的に除去される。そして、無機粉体含有樹脂膜における所定の部分が完全に除去されて基板が露出する。これにより、樹脂層残留部と樹脂層除去部とから構成される無機粉体含有樹脂のパターンが形成される。
【0092】
エッチング処理条件としては、無機粉体含有樹脂膜の種類などに応じて、エッチング液の種類・組成・濃度、処理時間、処理温度、処理方法(例えば、浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法)、処理装置などを適宜選択することができる。なお、エッチング液として、現像工程で使用した現像液と同一の溶液を使用することができるよう、レジスト膜および無機粉体含有樹脂膜の種類を選択することにより、現像工程とエッチング工程とを連続的に実施することが可能となり、工程の簡略化による製造効率の向上を図ることができる。
【0093】
ここで、レジストパターンを構成するレジスト残留部は、エッチング処理の際に徐々に溶解され、無機粉体含有樹脂のパターンが形成された段階(エッチング処理の終了時)で完全に除去されるものであることが好ましい。なお、エッチング処理後にレジスト残留部の一部または全部が残留していても、該レジスト残留部は、次の焼成工程で除去される。
【0094】
〔6〕無機粉体含有樹脂のパターンの焼成工程
この工程においては、無機粉体含有樹脂のパターンを焼成処理する。これにより、樹脂層残留部の有機物質が焼失されて電極が形成される。
【0095】
焼成処理の温度としては、樹脂層残留部の有機物質が焼失される温度であることが必要であり、通常400〜600℃である。また、焼成時間は、通常10〜90分間である。
<FPD部材の製造方法II>
本発明のFPD部材の製造方法IIは、本発明の支持フィルム上に形成された、レジスト膜と、前期無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜との積層膜を基板上に転写する工程、該積層膜を構成するレジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成する工程、該レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させる工程、該無機粉体含有樹脂膜をエッチング処理してレジストパターンに対応するパターンを形成
する工程、および該パターンを焼成処理することにより、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスからなる群から選ばれるパネル部材を形成する工程を含む。
【0096】
この方法においては下記(1)〜(3)の工程による形成方法を挙げることができる。
(1)支持フィルム上にレジスト膜を形成した後、該レジスト膜上に本発明の無機粉体含有樹脂組成物を塗布、乾燥することにより無機粉体含有樹脂膜を積層形成する。レジスト膜および無機粉体含有樹脂膜を形成する際には、ロールコーターなどを使用することができ、これによりレジストの膜厚均一性が優れたものとなるため、レジスト膜の現像処理および無機粉体含有樹脂膜のエッチング処理が均一に行われ、形成される電極の高さおよび形状が均一なものとなる。レジスト膜の膜厚は、通常0.1〜40μm、好ましくは0.5〜20μmである。
【0097】
(2)支持フィルム上に形成された、レジスト膜と無機粉体含有樹脂膜との積層膜を基板上に転写する。転写条件としては前記〔1〕無機粉体含有樹脂膜の転写工程における条件と同様でよい。
【0098】
(3)前記〔3〕レジスト膜の露光工程、〔4〕レジスト膜の現像工程、〔5〕無機粉体含有樹脂膜のエッチング工程および〔6〕無機粉体含有樹脂パターンの焼成工程と同様の操作を行う。その際、先に記載したように、レジスト膜の現像液と無機粉体含有樹脂膜のエッチング液とを同一の溶液とし、〔4〕レジスト膜の現像工程と〔5〕無機粉体含有樹脂膜のエッチング工程とを連続的に実施することが好ましい。
【0099】
以上のような方法によれば、無機粉体含有樹脂膜とレジスト膜とが基板上に一括転写されるので、工程の簡略化により製造効率を更に向上させることができる。
<FPD部材の製造方法III>
本発明のFPD部材の製造方法IIIは、本発明の感放射線性転写フィルムを構成する無機粉体含有樹脂膜を基板上に転写する工程、該無機粉体含有樹脂膜を露光処理してパターンの潜像を形成する工程、該無機粉体含有樹脂膜を現像処理してパターンを形成する工程、該パターンを焼成処理することにより、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスから選ばれるパネル部材を形成する工程を含む。
【0100】
この方法においては、例えば電極の形成方法を例に採ると、前記〔1〕無機粉体含有樹脂膜の転写工程の後、〔3〕レジスト膜の露光工程、〔4〕レジスト膜の現像工程に準じた条件でパターンを形成し、その後、〔6〕無機粉体含有樹脂のパターンの焼成工程と同様に焼成処理することにより、基板の表面に電極が形成される。
【0101】
以上、本発明のFPD部材の製造方法I、IIおよびIIIの各工程説明において、FPD部材として「電極」を形成する方法について説明したが、この方法に準じてFPDを構成する誘電体層、隔壁、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスなどの部材を形成することができる。
【0102】
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下について「部」は「質量部」を示す。
【実施例1】
【0103】
(1)反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物の調製
(a)無機粉体としてニッケル粉末(平均粒径0.2μm)100部、Bi23−B2
3 −SiO2 系ガラスフリット(軟化点560℃、平均粒径2.0μm)10部、(b)結着樹脂として、ブレンマーPME−100/メタクリル酸n−ブチル/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル=20/35/15/20(質量%)共重合体(質量平均分子量:90,000)100部、ブロックイソシアネート化合物として、旭化成ケミカルズ製のK6000(ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体のブロックイソシアネート体の60%イソアミルアルコール、イソブタノール、トルエン溶液、ベーク温度80℃、ベーク時間30分でのゲル分率=80〜90%)5部、可塑剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート30部、シランカップリング剤として、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1部、分散剤としてオレイン酸3部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル20部を、分散機を用いて混練することにより反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物1を調製した。
【0104】
(2)導電膜形成用無機粉体樹脂組成物の調製
導電性粒子として銀粉末(平均粒径2.2μm)100部、Bi23−B23 −SiO2 系ガラスフリット(軟化点520℃、平均粒径2.0μm)10部、結着樹脂としてメタクリル酸ベンジル/メタクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル/メタクリル酸/コハク酸(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)=20/20/20/20/20(質量%)共重合体(質量平均分子量:90,000)15部、可塑剤としてポリプロピレングリコールジアクリレート(n=12)10部、分散剤として
オレイン酸1部、溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル9部を、分散機を用いて混練することにより導電膜形成用無機粉体樹脂組成物を調製した。
【0105】
(3)レジスト組成物の調製
バインダー樹脂としてメタクリル酸ベンジル/メタクリル酸=75/25(質量%)共重合体(質量平均分子量30,000)60部、多官能性モノマーとしてポリプロピレングリコールジアクリレート(n=12)40部、光重合開始剤として2−ベンジル−2−ジ
メチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン20部および溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部を混練りした後、カートリッジフィルター(2μm径)でフィルタリングすることにより、アルカリ現像型感放射線性レジスト組成物(以下、「レジスト組成物」という。)を調製した。
【0106】
(4)電極形成用転写フィルムの作成
下記(ハ)〜(ホ)の操作により、レジスト膜、導電膜形成用ペースト層および反射防止膜形成用ペースト層を有する積層膜が支持フィルム上に形成されてなる本発明の転写フィルムを作製した。
(ハ)3)で調製したレジスト組成物を予め離型処理した膜厚38μmのPETフィルムよりなる支持フィルム上にロールコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で5分間乾燥して溶剤を完全に除去し、厚さ5μmのレジスト膜を支持フィルム上に形成した。
(ニ)2)で調製した導電膜形成用無機粉体樹脂組成物を(ハ)で作成したレジスト膜上にロールコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で5分間乾燥して溶剤を完全に除去し、膜厚20μmの導電膜形成用無機粉体樹脂膜をレジスト膜上に形成した。
(ホ)1)で調製した反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物1を(ニ)で形成した導電膜形成用無機粉体樹脂膜上にロールコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で5分間乾燥して溶剤を完全に除去し、膜厚8μmの反射防止膜形成用無機粉体含有樹膜を導電膜形成用無機粉体樹脂膜上に形成した。
【0107】
(5)電極形成用転写フィルムの転写
予めホットプレート上で80℃に加熱されたガラス基板の表面に、反射防止膜形成用無機粉体含有樹膜の表面が当接されるよう上記5)で作製した転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムを加熱ローラに熱圧着した。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの
表面温度を100℃、ロール圧を2kg/cm、加熱ローラの移動速度を0.5m/分とした。熱圧着処理の終了後、転写フィルム(レジスト膜の表面)から支持フィルムを剥離除去し、当該電極形成用無機粉体含有樹脂の転写を行った。転写後、フィルム転写性つまり、基板とフィルムとの密着性の指標として、基板とフィルムの間にカッターの刃を入れ、剥がれるどうかの試験を行った。指標として簡単に剥がれる場合は×、剥がれがない場合は○とした。
【0108】
(6)レジスト膜の露光工程
ガラス基板上に形成されたレジスト膜に対して、ライン幅100μm、スペース幅400μmのストライプ状ネガ用露光用マスクを介して、超高圧水銀灯によりg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)の混合光を照射した。その際の露光量は、365nmのセンサーで測定した照度換算で200mJ/cm2 とした。
【0109】
(7)現像工程・エッチング工程
露光処理されたレジスト膜に対して、液温30℃の0.3質量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液とするシャワー法による現像処理と、引き続き無機粉体含有樹脂膜のエッチング処理を、併せて90秒間行い、続いて、超純水を用いて水洗を行った。これにより、レジストパターンを形成し、その後、当該レジストパターンに対応した無機粉体含有樹脂パターンを形成した。得られた無機粉体含有樹脂パターンを光学顕微鏡にて解像異常、残渣等がないかを確認した。パターン解像性の指標として、解像異常や残渣が見られる場合を×、見られない場合を○とした。
【0110】
(8)焼成工程
無機粉体含有樹脂パターンが形成されたガラス基板を焼成炉内で590℃の温度雰囲気下で30分間にわたり焼成処理を行った。これによりガラス基板の表面にパターン幅100μm、厚み10μmの電極が形成されてなるパネル材料を得ることができた。形成された電極パターンを、顕微鏡を用いて観察し、パターンの線太りや直線性異常がないかを確認した。焼成後パターンの線太りや直線性の指標として、太りや、直線性異常が見られる場合は×、見られない場合は○とした。
【0111】
[比較例1]
(1)反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物の調製
K6000を添加しない以外は実施例1と同様とし、反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物2を調製した。
【0112】
以下実施例1における反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物1の代わりに、前記(1)で調製した反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、(2)導電膜形成用無機粉体樹脂組成物の調製、(3)レジスト組成物の調製、(4)電極形成用転写フィルムの作成、(5)電極形成用転写フィルムの転写、(6)レジスト膜の露光工程、(7)現像工程・エッチング工程および(8)焼成工程の操作および評価を行った。
【実施例2】
【0113】
(1)反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物の調製
実施例1のK6000の代わりに旭化成ケミカルズ製のE−402−B80T(ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体のブロックイソシアネート体の80%トルエン溶液、ベーク温度80℃、ベーク時間30分でのゲル分率<50%)を用いた以外は同様とし、反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物3を調製した。
【0114】
以下実施例1における反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物1の代わりに、前記(
1)で調製した反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、(2)導電膜形成用無機粉体樹脂組成物の調製、(3)レジスト組成物の調製、(4)電極形成用転写フィルムの作成、(5)電極形成用転写フィルムの転写、(6)レジスト膜の露光工程、(7)現像工程・エッチング工程および(8)焼成工程の操作および評価を行った。
【0115】
[比較例2]
(1)反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物の調製
比較例1同様、ブロックイソシアネート化合物を含まない組成でかつ、結着樹脂として、ブレンマーPME−100/メタクリル酸n−ブチル/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル=20/35/15/20(質量%)共重合体(質量平均分子量:150,000)を用いた以外は同様とし、反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物4を調製した。
【0116】
以下実施例1における反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物1の代わりに、前記(1)で調製した反射防止膜形成用無機粉体含有樹脂組成物4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、(2)導電膜形成用無機粉体樹脂組成物の調製、(3)レジスト組成物の調製、(4)電極形成用転写フィルムの作成、(5)電極形成用転写フィルムの転写、(6)レジスト膜の露光工程、(7)現像工程・エッチング工程および(8)焼成工程の操作および評価を行った。
【0117】
実施例および、比較例の評価結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物を用いると、基板へのフィルム転写性が良好かつ、焼成時の樹脂のメルトもないため、直線性に優れたパターンを得ることができる。
しかし、ブロックイソシアネート化合物を含まない無機粉体含有樹脂組成物を用いると、例えば、比較例1のような樹脂のガラス転移点が低いものは、転写性に優れるものの、焼成時の樹脂のメルトによるパターン線太りが大きく、パターン直線性に劣る結果となった。また、実施例2のように、用いるブロックイソシアネート化合物のベーク温度80℃、ベーク時間30分におけるゲル分率が50%以下である場合、焼成時の樹脂のメルトが起こる前に、十分に反応せず、線太りの抑制効果が十分に発揮できないことが分かった。
【0120】
一方、焼成時の線太りは、比較例2のように、用いる樹脂の分子量(Mw)を上げることでも回避できるが、現像液への溶解性が悪く、現像後に残渣が多く見られ、解像度も悪い結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】(イ)は、本発明の転写フィルムを示す概略断面図であり、(ロ)は、当該転写フィルムの層構成を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)無機粉体と、(b)結着樹脂と、(c)下記式(1)で表される化合物と、(d)溶剤とを含有することを特徴とする、無機粉体含有樹脂組成物。
【化1】

[上記式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1はn価の有機基を示し、Bはイソシアネートをブロックする基を表す。]
【請求項2】
さらに(e)感放射線成分を含有する、請求項1記載の無機粉体含有樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(2)および式(3)からなる群から選択される少なくとも1種の活性メチレンブロックイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の無機粉体含有樹脂組成物。
【化2】

[上記式(2)および式(3)において、nは1〜10の整数を表し、R1はn価の有機基を示し、R2およびR3は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基を表す。]
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物のイソシアネートをブロックする基(B)がマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種のブロック化剤(H−B)より誘導される基であることを特徴とする請求項1に記載の無機粉体含有樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物の80℃、ベーク時間30分におけるゲル分率が、50%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機粉体含有樹脂組成物。
【請求項6】
支持フィルム上に、請求項1〜5のいずれかに記載の無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜を有することを特徴とする転写フィルム。
【請求項7】
支持フィルム上に、レジスト膜と、請求項1〜5のいずれかに記載の無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜との積層膜を有することを特徴とする転写フィルム。
【請求項8】
支持フィルム上に形成された、請求項1に記載の無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜を基板上に転写する工程、
該無機粉体含有樹脂膜上にレジスト膜を形成する工程、
該レジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成する工程、
該レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させる工程、
該無機粉体含有樹脂膜をエッチング処理して該レジストパターンに対応するパターンを形成する工程、および
該パターンを焼成処理することにより、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスから選ばれるパネル部材を形成する工程
を含むことを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材の製造方法。
【請求項9】
支持フィルム上に形成された、レジスト膜と、請求項1に記載の無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜との積層膜を基板上に転写する工程、
該積層膜を構成するレジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成する工程、該レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させる工程、
該無機粉体含有樹脂膜をエッチング処理してレジストパターンに対応するパターンを形成する工程、および
該パターンを焼成処理することにより、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスから選ばれるパネル部材を形成する工程
を含むことを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材の製造方法。
【請求項10】
支持フィルム上に形成された、請求項2に記載の無機粉体含有樹脂組成物から得られる無機粉体含有樹脂膜を基板上に転写する工程、
該無機粉体含有樹脂膜を露光処理してパターンの潜像を形成する工程、
該無機粉体含有樹脂膜を現像処理してパターンを形成する工程、および
該パターンを焼成処理することにより、誘電体層、隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスから選ばれるパネル部材を形成する工程
を含むことを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−51899(P2008−51899A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225759(P2006−225759)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】