説明

熱伝導基板とその製造方法及びこれを用いた回路モジュール

【課題】従来、熱伝導基板に発熱部品3は、直接取り付けられていため、その床面積が広くなったり、その上に、プリント配線板8を取り付けた場合、熱がこもりやすくなるという課題を有していた。
【解決手段】金属板11上に、シート状の伝熱層12と、前記伝熱層12に固定したリードフレーム13とからなる熱伝導基板において、前記リードフレーム13の一部を熱伝導基板の外周部で略垂直に折り曲げ、ここに発熱部品15(例えば、その金属部20側をリードフレーム13側に、そのリード線21側をプリント配線板24側に)を実装することで、熱伝導基板の放熱効果を高め、その床面積を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のパワー半導体等を用いた電源回路等に使用される熱伝導基板とその製造方法及びこれを用いた回路モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型化の要求に伴い、パワー半導体等を用いた電源回路には、更なる小型化が求められている。しかしパワー系電子部品(例えばパワー半導体素子等)は大電流、高発熱を伴うため、大電流、高放熱に対応する熱伝導基板の上に実装する必要がある。こうしたパワー系電子部品に比べ、信号系電子部品(例えば、信号系半導体素子や各種チップ部品等)は、それほど発熱を伴わないため、高密度に実装することができる。そのため従来より、パワー系電子部品を高放熱基板に実装しこれを熱部品ユニット(例えば後述する図10の熱部品ユニット7)、信号系電子部品は一般的なプリント配線板に実装し、こうして作成した複数の基板間を電気的に接続して、一つの回路モジュールとすることが、特許文献1等で提案されている。次に図10を用いて、従来の回路モジュールの一例について説明する。
【0003】
図10は、従来の回路モジュールを説明する斜視図であり、例えばプラズマディスプレイ装置に使われる回路モジュールの一つである。この回路モジュールは、熱部品ユニットと、その上に複数本のリード線を介して固定されたプリント配線板から構成されている。
【0004】
図10において、熱部品ユニット7は、金属板4の上に固定した絶縁体5、金属パターン6、リード線1等から形成されている。そして金属パターン6の上には、発熱部品3が端子2を介して半田付けされている。またプリント配線板8の一部には孔9が形成されており、前記リード線1が一括して挿入可能な状態となっている。そしてプリント配線板8の孔9に、熱部品ユニット7のリード線1を挿入し一体化して、一つの回路モジュールとする。
【特許文献1】特開2006−308620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように図10の構成では、発熱を伴う(あるいは放熱が必要な)発熱部品3を実装した熱部品ユニット7と、信号系電子部品等を実装したプリント配線板8とを、略平行に積み重ねるため、熱部品ユニット7に発生した熱が、その間に、こもりやすいため、回路モジュールとした場合に、空冷による放熱には限界があった。
【0006】
そこで本発明は、発熱部品は、リードフレームを折り曲げた部分に取り付けることで、熱伝導基板自体の空冷性を高めると共に、プリント配線板と組み合わせた場合でもその空冷性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そしてこの本発明は、上記目的を達成するために、金属板と、前記金属板の上に固定したシート状の伝熱層と、前記伝熱層に固定したリードフレームと、からなる熱伝導基板であって、前記リードフレームの一部を外周部で前記伝熱層から略垂直に折り曲げ、その折り曲げ部に発熱部品を実装している熱伝導基板としたものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明によれば、発熱部品は、リードフレームを折り曲げ部分に実装することになり、熱伝導基板の放熱性(更には空冷性)を高めることができ、熱伝導基板の実装面積(あるいは床面積)を小さくできる。その結果、プリント配線板と組み合わせて、回路モジュールとした場合でも、小型で放熱性の良い回路モジュールを提供できることとなる。
【0009】
更にプリント配線板の上に、個別に実装していた発熱部品も、必要に応じて、前記熱伝導基板にまとめて実装することができ、空冷ファン等を用いた場合での空冷効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
なお本発明の実施の形態に示された一部の製造工程は、成型金型等を用いて行われる。但し説明するために必要な場合以外は、成形金型は図示していない。また図面は模式図であり、各位置関係を寸法的に正しく示したものではない。
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における熱伝導基板について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態における熱伝導基板の斜視図である。図1において、11は金属板、12は伝熱層、13はリードフレーム、14はトランス等(例えば発熱を伴うトランスや一部の半導体等)、15は発熱部品(例えば、パワートランジスタやパワーFET等)、16は絶縁伝導接着剤であり、熱伝導性に優れた絶縁接着剤であり、市販品を使うことができる。17は放熱用のフィンであり、アルミニウム製等の市販品を使うことができる。18は空冷用のファン(あるいは扇風機)であり、市販品を使うことができる。19は矢印である。この矢印19は、例えばファン18の回転方向や、風の向き、発熱部品15の熱の伝わる方向等を模式的に説明するものである。
【0013】
まず図1を用いて説明する。図1は、実施の形態における熱伝導基板に、発熱部品15やトランス等14、放熱用にフィン17等を実装してなる回路モジュールの一例である。図1において、金属板11の上には、伝熱層12を介して、複数のリードフレーム13が一種の配線として、その一部以上を埋め込んで形成している。そしてリードフレーム13の上(例えば図1の中央部に示すように)には、複数のトランス等14を実装している。そしてトランス等14の上には、市販の絶縁伝導接着剤16等を用いて、放熱用のフィン17を固定している。これは実施の形態における回路(例えば、DCDCコンバーター等)におけるトランス等14が発熱を伴う場合がある。こうした場合、トランス等14の上にも、絶縁伝導接着剤16を用いて、放熱用のフィン17を固定することで、局所的にトランス等14を冷却するためである(詳細は図3(B)等で説明する)。
【0014】
また図1において、リードフレーム13の一部(例えば、図1に示すように熱伝導基板の外周部、あるいはその周縁部)を、略垂直に折り曲げ、折り曲げた部分のリードフレーム13に(あるいはその外側に)、発熱部品15(発熱部品15に形成したリード線等は図示していない)を実装している。そして必要に応じて、その内側(あるいはリードフレーム13の発熱部品15を実装していない面側)に絶縁伝導接着剤16を介して、放熱用のフィン17を固定する。こうすることで、発熱部品15に発生した熱を、フィン17を介して空冷する。また必要に応じて、フィン17の数を増やし、例えば図1に示すように熱伝導基板の表面(あるいは上面)は、複数のフィン17で覆うこともできる。そしてこの複数のフィン17を、空冷用のファン18を、矢印19aのように回転することで、発生した風(矢印19bで図示)で空冷することになる。なお図1において、熱伝導基板の外周部(あるいは周縁部)のすべてのリードフレーム13を折り曲げる必要は無い。これは後述する図2や図3で、熱伝導基板とプリント配線板とを、電気的に接続するためである。
【0015】
本実施の形態では、放熱が必要な電子部品(例えば、発熱部品15や、トランス等14)を熱伝導基板の上に集中させることができる。このように発熱源となる発熱部品15やトランス等14を高密度に集合させた(あるいは実装させた)場合でも、図1に示すように、熱伝導基板の上面の多くの部分(例えば、殆どの部分)をフィン17で覆うことができ、ファン18等で集中的に冷却することができ、その冷却効率を高めることができる。なお図1では強制空冷としたが、他の方法(例えば、ヒートパイプを用いる、水冷循環設備を用いる)等でも、同様の効果が得られる。そして、本実施の形態における熱伝導基板は、単独でもその放熱効果が優れたものであるが、プリント配線板と組み合わせて回路モジュールとすることで、更に利用価値を高めることができる。次に、図2〜3を用いて、熱伝導基板をプリント配線板と組み合わせて作成した回路モジュールにおける放熱効果について説明する。
【0016】
次に図2を用いて、発熱部品15となるパワー半導体の一例について説明する。図2(A)(B)は、それぞれ発熱部品15を説明する断面図と斜視図である。図2において、20は金属部、21はリード線、22は樹脂部である。パワー半導体15の一部(例えば、TO−220C、TO−3P等のパッケージ形態によっては)には、その放熱性を高めるために、その一部に金属部20を設けたものがある。
【0017】
図2(A)は、発熱部品15の断面図であり、例えば金属部20の上に、所定の半導体チップを実装し、リード線21と共に、樹脂部22で覆ったものである。なお金属部20を活電部とすることで、金属部20を放熱以外に給電等に使うことができる。ここでリード線21は、例えば、パワーFETにおけるソース、ドレイン、バックゲートあるいはバルク等の端子に相当するものであり、発熱部品15から突き出したものであり、一部のリード線21を、金属部20と同電位とすることもできる。
【0018】
図2(B)は、発熱部品15の斜視図であり、金属部20は、樹脂部22と略同一面に形成していることが判る。こうすることで、金属部20や樹脂部22を、図1等で図示したように、リードフレーム13に密着して固定でき、放熱性を高めることができる。なお発熱部品15のリード線21は、一般的に2〜3本であるが、この数が変更されても、本実施の形態の場合、リードフレーム13を適宜分割することで対応することもできる。
【0019】
なお本実施の形態において用いるパワー半導体15の形状は、図2(A)(B)に示すように金属部20を有するものが望ましい。これは活電部や放熱部を兼用する金属部20を直接、電流容量の大きく熱伝導性の高いリードフレーム13に直接固定できるためである。なお固定方法は、半田付け、ネジ止め等の電気的、機械的に信頼性の高いものを選ぶことが望ましい。これは後述する図3や図4で説明するように、パワー半導体15の金属部20をリードフレーム13に、リード線21はプリント配線板24に固定するためである。
【0020】
次に図3を用いて、放熱効果について説明する。図3(A)(B)は、それぞれ回路モジュールの組立方を説明する断面図と、その放熱効果について説明する断面図である。図3(A)(B)において、23は電子部品であり、例えばチップ部品(角チップ抵抗器や積層セラミックコンデンサ等)、あるいは発熱部品15を制御するための半導体素子等である。24はプリント配線板(例えば、ガラスエポキシ製の両面や多層等の一般のプリント配線板24であるが、銅箔からなる電極パターンやスルーホール、ソルダーレジスト等は図示していない)である。25はシャーシ(例えば、プラズマTVにおけるアルミニウムシャーシ、あるいは金属筐体部分等である)、26a、26bは孔であり、孔26a、26bはプリント配線板24の一部に形成したものである。
【0021】
図3(A)(B)に示すように、このリード線21(あるいはリード線21の少なくとも一部以上)を、プリント配線板24に形成した孔26bに差込み(あるいは孔26bを用いて実装することで)、発熱部品15をプリント配線板24上に実装し電子部品23(例えば、パワー半導体を制御するための制御用半導体等)に近づけて(あるいは高密度に)実装することができる。なお熱伝導基板と、プリント配線板24との接続には、熱伝導基板から横に伸びるリードフレーム13の一部を用いることもできる。なお熱伝導基板とプリント配線板24を接続するリードフレーム13は、その先端部を略垂直に折り曲げたものとし、この折り曲げ部分を、プリント配線板24に形成した孔26bに差し込むようにすることで、作業性や接続安定性を高めることができる。
【0022】
そして、熱伝導基板は、プリント配線板24に形成した孔26aに挿入するようにして、矢印19aのように、シャーシ25の上にセットする。なお図3(A)(B)では、プリント配線板24に対して、上側から熱伝導基板を挿入(あるいはセット)するように図示しているが、逆にすることも可能である。例えば熱伝導基板の上に、プリント配線板24を挿入(あるいはセット)するようにしても良い。この場合、図3(A)(B)に示すリードフレーム13と、プリント配線板24の孔26bの挿入部(あるいはそのリードフレーム13の先端を孔26bに挿入するように曲げた部分)は、上下反転(下から上に挿入するように、あるいはプリント配線板24の上に熱伝導基板を挿入するように)しても良い。
【0023】
なお図3(A)(B)で、プリント配線板24に形成した孔26bに挿入するリードフレーム13の先端は、折り曲げ、プリント配線板24に挿入するようにすることが望ましい。プリント配線板24に形成した孔26bに挿入し(あるいは突き刺して)、半田付けすることで、リードフレーム13とプリント配線板24との半田付け部の信頼性を高めることができる。その結果、半田接続部分の接続抵抗を下げることができ、熱伝導基板の大電流化にも対応できる。また必要に応じて孔26bの内部にスルーホールめっきすることで、更に信頼性を高めることができる。
【0024】
ここで発熱が課題とならない電子部品23等は、プリント配線板24側に高密度に実装することが、低コスト化、小型化に有利であるためである。しかしこうした電子部品23に近接して発熱部品15を実装した場合、発熱部品15に発生する熱が、電子部品23等に影響を与えてしまう。しかし本実施の形態においては、図3(B)に示すようにプリント配線板24の上に、リード線21を用いて実装した発熱部品15に発生した熱は、図3(B)に示すように、熱伝導基板側に放熱することができ、熱の影響を抑えることができ、回路モジュールの小型化が可能となる。
【0025】
図3(B)は、回路モジュールにおける放熱メカニズムを説明する断面図である。図3(B)において、矢印19bは、放熱用のファン18が回転する様子を示す。また矢印19cは、発熱部品15やトランス等14に発生した熱が、広がる方向等を示す。図3(B)において、発熱部品15に発生した熱は、リードフレーム13に伝わる。そしてリードフレーム13に伝わった熱の一部は、絶縁伝導接着剤16を介してフィン17に伝わり、空冷される。またリードフレーム13の熱の一部は、リードフレーム13の一部以上を埋め込む伝熱層12を介して、金属板11に伝わる。ここで金属板11を、シャーシ25にネジ等で固定(固定方法は図示していない)しておくことで、金属板11に伝わった熱は、矢印19cに示すように、シャーシ25へと広がる。
【0026】
更にファン18を矢印19bに示すように回転することで(例えば、風を吸い込むようにすることで)、シャーシ25とプリント配線板24の隙間から、矢印19cに示すように、冷却用の空気を効率良く吸い込むことができる。この場合、略垂直に折り曲げたリードフレーム13の一部や、フィン17等を組み合わせて、積極的に煙突構造を構成するようにすることで、煙突効果による効率的な空冷効果も得られる。ここで煙突効果とは、例えば煙突状の空間の中で、空気を暖めた場合、温まって密度が小さくなった空気が煙突の上方に浮上すると同時に、煙突の下の方から冷たい空気を吸い込む効果のことである。そして発熱部品15やトランス等14に発生した熱によって、フィン17を暖め煙突効果を発生させることができる。このように図3(A)(B)に示す構造とすることで、シャーシ25等への直接的な熱伝導以外に、ファン18や煙突効果による積極的な空冷効果も生かすことができる。
【0027】
更に図3(B)に示すように、発熱部品15の金属部20を活電部として、リードフレーム13に直接、半田付けすることで発熱部品15との接続信頼性や接続強度を高められる。更に(あるいは同時に)発熱部品15のリード線21をプリント配線板24に接続することで、その回路パターンの引き回し距離(あるいは線路長)を短くできる。
【0028】
なおプリント配線板24とシャーシ25の間を一定距離(例えば3〜20mm、望ましくは5〜10mm)離すことで、シャーシ25に伝わった熱の積極的な煙突効果による吸出しも可能となり、熱伝導基板部分のみならず、シャーシ25の冷却効果も得られる。
【0029】
なお図3(A)(B)において、熱伝導基板とプリント配線板24の電気的な接続は、発熱部品15から伸びるリード線21と、リードフレーム13とを、それぞれ用途に応じて併用することで、回路設計やその熱対策を容易にできることは言うまでもない。
【0030】
次に図4(A)(B)を用いて、回路モジュールの組立方及びその放熱効果について説明する。図4(A)(B)は、それぞれ回路モジュールの組立方を説明する断面図と、その放熱効果について説明する断面図である。
【0031】
図4(A)は、回路モジュールを組み立てる様子を示す断面図、図4(B)は回路モジュールとした場合の放熱効果を説明する断面図である。なお図4(A)(B)においても、熱伝導基板とプリント配線板24の電気的な接続は、必要に応じて発熱部品15から伸びるリード線21によって(図示していない)も、行うことができる。
【0032】
図4(A)(B)とすることで、従来、プリント配線板24の上に実装していた発熱部品15であっても、熱伝導基板を一種の放熱部として、ここに取り付けることができる。またその場合、発熱部品15を取り付けている、リードフレーム13の折り曲げ部分は、リードフレーム13の他の配線から絶縁するようなパターン設計する(一種の浮島状態として設計する)こともできる。また発熱部品15の金属部20を、直接リードフレーム13に接続し、発熱部品15のリード線21をプリント配線板24に接続することで、回路パターンの引き回し距離が短くでき、機器の小型化を可能にする。
【0033】
次に図5を用いて、熱伝導基板を組み立てる様子を説明する。図5(A)(B)は、共に熱伝導基板を組み立てる様子を説明する断面図である。図5(A)は、熱伝導基板に発熱部品15やフィン17を取り付ける様子を説明する断面図、図5(B)は、熱伝導基板の一部を折り曲げる様子を説明する断面図である。図5(A)において、熱伝導基板は、金属板11の上に、シート状の伝熱層12を介してリードフレーム13を固定したものから構成されている。そしてリードフレーム13は、伝熱層12に一部以上を埋め込まれ(これはリードフレーム13に肉厚のものを選んでも、その凹凸が基板表面に表れにくくするため)、リードフレーム13の一部は熱伝導基板から、突き出している。そしてこの突き出した部分に、矢印19aに示すように必要に応じて発熱部品15を実装し、フィン17を絶縁伝導接着剤16等で固定する。また熱伝導基板の中央部には、トランス等14の発熱部品15を実装する。そしてトランス等14の上にも、必要に応じてフィン17を絶縁伝導接着剤16等で固定する。なお図5(A)(B)において、実装用の半田等は図示していない。また発熱部品15において、金属部20やリード線21も図示していない。
【0034】
その後、図5(B)に示すように、所定部分を矢印19bに示すように、略垂直に折り曲げることで、図1等に示した形状とする。なお図5(B)において、熱伝導基板から左右に突き出したリードフレーム13の全てに発熱部品15やフィン17を固定する必要は無い。また左右に突き出したリードフレーム13の一部を用いて、図3(A)(B)、図4(A)(B)に示したように、熱伝導基板とプリント配線板24とを電気的に(更には最短距離で)接続することができる。
【0035】
次に図6を用いて、熱伝導基板の製造方法の一例について説明する。図6(A)(B)は、共に熱伝導基板の製造方法を説明する断面図である。図6(A)(B)において、27はプレス、28はフィルムであり、汚れ防止用のものである。29はV溝であり、リードフレーム13の一部にプレス等で折り曲げしやすいように加工した部分である。まず図6(A)に示すように、プレス27に、金属板11や、伝熱層12や汚れ防止用にフィルム28をセットする。なお図6(A)(B)において、プレス27にセットする金型等は図示していない。またリードフレーム13は、所定の銅板は銅箔等の金属材を配線パターン状に打抜き加工したものである。またリードフレーム13の所定位置(例えば、図5(B)で説明した折り曲げ位置)に、予めV溝29を形成しておくことが望ましい。ここで伝熱層12とは、後述する伝熱材料を例えばシート状に予備成形したものである。なお図6(A)において、伝熱層12の中央部を、プレス時に空気を抜けやすくするために、中央部を僅かに凸状としても良い。
【0036】
図6(B)は、プレスが終了した後の様子を説明する断面図である。図6(B)に示すように、フィルム28を用いることで、プレス27や金型(図示していない)の表面に、伝熱層12が汚れとして付着しない。またフィルム28をプレス27や金型と、リードフレーム13との間の緩衝材(あるいは、パッキング、あるいはシール材)とすることで、リードフレーム13の表面への、伝熱層12の回り込みを防止したり、プレス圧力を高めることができる。その結果、リードフレーム13間に形成された狭い隙間まで伝熱層12を回り込ませることができる。
【0037】
なお図6(A)(B)において、伝熱層12等をプレス時に加熱することで、伝熱層12を軟化でき、金属板11との密着効果を高めている。
【0038】
そして図6(B)に示すように、所定形状に成形した後、フィルム28を、伝熱層12の表面から引き剥がす。そして金属板11の上に、リードフレーム13を埋め込んで一体化した伝熱層12を、加熱装置の中で加熱し、硬化させ、図1(A)(B)等で示した伝熱層12とする。なおフィルム28を剥離した状態で、加熱することで、フィルム28の熱収縮(シワ発生)が、伝熱層12の硬化に影響を与えなくできる。
【0039】
ここでシート状の伝熱層12としては、熱硬化性樹脂とフィラーとからなる伝熱性のコンポジット材料を用いることができる。例えば無機フィラー70重量%以上95重量%以下と、熱硬化性樹脂5重量%以上30重量%以下からなる部材が望ましい。ここで無機フィラーは略球形状で、その直径は0.1μm以上100μm以下が適当である(0.1μm未満の場合、樹脂への分散が難しくなる場合、また100μmを超えると伝熱層12の厚みが厚くなり熱拡散性に影響を与える)。そのため伝熱層12における無機フィラーの充填量は、熱伝導率を上げるために70から95重量%と高濃度に充填している。特に、本実施の形態では、無機フィラーは、平均粒径3μmと平均粒径12μmの2種類のアルミナを混合したものを用いている。この大小2種類の粒径のアルミナを用いることによって、大きな粒径のアルミナの隙間に小さな粒径のアルミナを充填できるので、アルミナを90重量%近くまで高濃度に充填できるものである。この結果、伝熱層12の熱伝導率は5W/(m・K)程度となる。なお無機フィラーとしてはアルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種以上を含んでもよい。
【0040】
なお無機フィラーを用いると、放熱性を高められるが、特に酸化マグネシウムを用いると線熱膨張係数を大きくできる。また酸化ケイ素を用いると誘電率を小さくでき、窒化ホウ素を用いると線熱膨張係数を小さくできる。こうして伝熱層12としての熱伝導率が1W/(m・K)以上20W/(m・K)以下のものを形成することができる。なお熱伝導率が1W/(m・K)未満の場合、熱伝導基板の放熱性に影響を与える。また熱伝導率を20W/(m・K)より高くしようとした場合、フィラー量を増やす必要があり、プレス時の加工性に影響を与える場合がある。なお熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂の内、少なくとも1種類の樹脂を含んでいる。これらの樹脂は耐熱性や電気絶縁性に優れている。
【0041】
次にリードフレーム13の材質について説明する。ここでリードフレーム13の材料としては、銅を主体とするもの(例えば銅箔や銅板)が望ましい。これは銅が熱伝導性と導電率が共に優れているためである。リードフレーム13用の銅板としては、例えば厚み200μm以上〜2000μm以下(望ましくは500μm以上1000μm以下)を利用できる。厚み200μm未満の場合、折り曲げた場合所定の強度が得られない場合がある。また厚みが2000μmを超えると、高精度な折り曲げが難しく、コストアップする可能性がある。こうしたリードフレーム13用の銅板としては、例えばタフピッチ銅(合金記号:C1100)や無酸素銅(合金記号:C1020)等を用いることが望ましい。こうした材料は原料の電気銅を溶解して製造したものある。ここでタフピッチ銅は、銅中に酸素を残した精錬銅であり、電気伝導性や加工性に優れている。タフピッチ銅は例えばCu99.90wt%以上、無酸素銅は例えばCu99.96wt%以上が望ましい。銅の純度が、これら数字未満の場合、不純物(例えば酸素の影響によるCu2Oの含有量が大きくなるので)の影響によって、加工性のみならず熱伝導性や電気伝導性に影響を受ける場合がある。こうした部材は安価であり、量産性に優れている。なおリードフレーム13のパターニング方法としては、エッチングでも良いが、プレス27(あるいは金型)による打ち抜きがパターンの同一性、量産性の面から適している。
【0042】
更に必要に応じて各種銅合金を選ぶことも出来る。例えば、リードフレーム13として、加工性や、熱伝導性を高めるためには、銅素材に銅以外の少なくともSn、Zr、Ni、Si、Zn、P、Fe等の群から選択される少なくとも1種類以上の材料とからなる合金を使うことも可能である。例えばCuを主体として、ここにSnを加えた、銅材料(以下、Cu+Snとする)を用いることができる。Cu+Sn銅材料(あるいは銅合金)の場合、例えばSnを0.1重量%以上0.15重量%未満添加することで、その軟化温度を400℃まで高められる。比較のためSn無しの銅(Cu>99.96重量%)を用いて、リードフレーム13を作成したところ、導電率は低いが、出来上がった熱伝導基板において特に形成部等に歪が発生する場合があった。そこで詳細に調べたところ、その材料の軟化点が200℃程度と低いため、後の部品実装時(半田付け時)に変形する可能性があることが予想された。一方、Cu+Sn>99.96重量%の銅系の材料を用いた場合、実装された各種部品の発熱の影響は特に受けなかった。また半田付け性やダイボンド性にも影響が無かった。そこでこの材料の軟化点を測定したところ、400℃であることが判った。このように、銅を主体として、いくつかの元素を添加することが望ましい。銅に添加する元素として、Zrの場合、0.015重量%以上0.15重量%の範囲が望ましい。添加量が0.015重量%未満の場合、軟化温度の上昇効果が少ない場合がある。また添加量が0.15重量%より多いと電気特性に影響を与える場合がある。また、Ni、Si、Zn、P等を添加することでも軟化温度を高くできる。この場合、Niは0.1重量%以上5重量%未満、Siは0.01重量%以上2重量%以下、Znは0.1重量%以上5重量%未満、Pは0.005重量%以上0.1重量%未満が望ましい。そしてこれらの元素は、この範囲で単独、もしくは複数を添加することで、銅素材の軟化点を高くできる。なお添加量がここで記載した割合より少ない場合、軟化点上昇効果が低い場合がある。またここで記載した割合より多い場合、導電率への影響の可能性がある。同様に、Feの場合0.1重量%以上5重量%以下、Crの場合0.05重量%以上1重量%以下が望ましい。これらの元素の場合も前述の元素と同様である。
【0043】
なおこれらリードフレーム13に使う銅材料の引張り強度は、600N/平方mm以下が望ましい。引張り強度が600N/平方mmを超える材料の場合、これらリードフレーム13の加工性に影響を与える場合がある。一方、引張り強度が600N/平方mm以下(更にこれらリードフレーム13に微細で複雑な加工が必要な場合、望ましくは400N/平方mm以下)とすることでスプリングバック(必要な角度まで曲げても圧力を除くと反力によってはねかえってしまうこと)の発生を抑えられ、形成精度を高められる。このようにこれらリードフレーム13の材料としては、Cuを主体とすることで導電率を下げられ、更に柔らかくすることで加工性を高められ、更にこれらリードフレーム13による放熱効果も高められる。なおこれらリードフレーム13に使う銅合金の引張り強度は、10N/平方mm以上が望ましい。これは一般的な鉛フリー半田の引張り強度(30〜70N/平方mm程度)に対して、これらリードフレーム13に用いる銅合金はそれ以上の強度が必要なためである。これらリードフレーム13に用いる銅合金の引張り強度が、10N/平方mm未満の場合、これらリードフレーム13の上に発熱部品15等を半田付け実装する場合、半田部分ではなくてこれらリードフレーム13の部分で凝集破壊する可能性がある。
【0044】
なおリードフレーム13の発熱部品15等の実装面に、予め半田付け性を改善するように半田層や錫層を形成しておくことも有用である。なおリードフレーム13の伝熱層12に接する面には、半田層は形成しないことが望ましい。このように伝熱層12と接する面に半田層や錫層を形成すると、半田付け時にこの層が柔らかくなり、リードフレーム13と、伝熱層12との接着性(もしくは結合強度)に影響を与える場合がある。
【0045】
また金属板11は、熱伝導の良いアルミニウム、銅またはそれらを主成分とする合金からできている。特に本実施の形態では、金属板11の厚みを1mm(望ましくは0.1mm以上50mm以下の厚み)としているが、その厚みは製品仕様に応じて設計できる(なお金属板11の厚みが0.1mm以下の場合、放熱性や強度的に不足する可能性がある。また金属板11の厚みが50mmを超えると、重量面で不利になる)。金属板11としては、単なる板状のものだけでなく、より放熱性を高めるため、伝熱層12を積層した面とは反対側の面に、表面積を広げるためにフィン部(あるいは凹凸部)を形成しても良い。全膨張係数は8〜20ppm/℃としており、本発明の熱伝導基板や、これを用いた電源ユニット全体の反りや歪みを小さくできる。またこれらの部品を表面実装する際、互いに熱膨張係数をマッチングさせることは信頼性的にも重要となる。
【0046】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における熱伝導基板について、図面を参照しながら説明する。
【0047】
図7は、本発明の実施の形態における熱伝導基板の斜視図である。図7と図1の違いは、リードフレーム13の一部(例えば、その先端部)を、熱伝導基板の外周部で伝熱層から複数回折り曲げ、その折り曲げ部に発熱部品15を実装(あるいは包み込むように固定)している点である。
【0048】
図7において、リードフレーム13の一部(例えば、図1に示すように熱伝導基板の外周部、あるいはその周縁部)を、複数回折り曲げ、折り曲げた部分のリードフレーム13に(あるいは複数回折り曲げたリードフレーム13で囲まれた中に)、発熱部品15(発熱部品15に形成したリード線やその半田付け部分等は、図1においては図示していない)を実装している。そして必要に応じて、その内側(あるいはリードフレーム13の発熱部品15を実装していない面側)に絶縁伝導接着剤16を介して、放熱用のフィン17を固定する。こうすることで、発熱部品15に発生した熱を、フィン17を介して空冷する。また必要に応じて、フィン17の数を増やし、例えば図1に示すように熱伝導基板の表面(あるいは上面)は、複数のフィン17で覆うこともできる。そしてこの複数のフィン17を、空冷用のファン18を、矢印19aのように回転することで、発生した風(矢印19bで図示)で空冷することになる。なお図1において、熱伝導基板の外周部(あるいは周縁部)のすべてのリードフレーム13を折り曲げる必要は無い。これは後述する図2や図3で、熱伝導基板とプリント配線板とを、電気的に接続するためである。
【0049】
実施の形態2では、放熱が必要な電子部品(例えば、発熱が伴う発熱部品15や、トランス等14)を熱伝導基板の上に集中させることができる。このように発熱源となる発熱部品15やトランス等14を高密度に集合させた(あるいは実装させた)場合でも、図1に示すように、熱伝導基板の上面の多くの部分(例えば、殆どの部分を)フィン17で覆うことができ、ファン18等で集中的に冷却することができ、その冷却効率を高めることができる。なお図1では強制空冷としたが、他の方法(例えば、ヒートパイプを用いる、水冷循環設備を用いる)等でも、同様の効果が得られる。そして、本実施の形態における熱伝導基板は、単独でもその放熱効果が優れたものであるが、プリント配線板と組み合わせて回路モジュールとすることで、更に利用価値を高めることができる。
【0050】
次に図8を用いて、放熱効果について説明する。図8(A)(B)は、それぞれ回路モジュールの組立方を説明する断面図と、その放熱効果について説明する断面図である。
【0051】
図8(A)(B)に示すように、このリード線21(あるいはリード線21の少なくとも一部以上)を、プリント配線板24に形成した孔26bに差込み(あるいは孔26bを用いて実装することで)、発熱部品15をプリント配線板24上に実装し電子部品23(例えば、パワー半導体を制御するための制御用半導体等)に近づけて(あるいは高密度に)実装することができる。なお熱伝導基板と、プリント配線板24との接続には、熱伝導基板から横に伸びるリードフレーム13の一部を用いることもできる。なお熱伝導基板とプリント配線板24を接続するリードフレーム13は、その先端部を複数回折り曲げたものとし、この折り曲げ部分を、プリント配線板24に形成した孔26bに差し込むようにすることで、作業性や接続安定性を高めることができる。
【0052】
そして、熱伝導基板は、プリント配線板24に形成した孔26aに挿入するようにして、矢印19aのように、シャーシ25の上にセットする。なお図8(A)(B)では、プリント配線板24に対して、上側から熱伝導基板を挿入(あるいはセット)するように図示しているが、逆にすることも可能である。例えば熱伝導基板の上に、プリント配線板24を挿入(あるいはセット)するようにしても良い。この場合、図8(A)(B)に示すリードフレーム13と、プリント配線板24の孔26bの挿入部(あるいはそのリードフレーム13の先端を孔26bに挿入するように曲げた部分)は、上下反転(下から上に挿入するように、あるいはプリント配線板24の上に熱伝導基板を挿入するように)しても良い。
【0053】
なお図8(A)(B)で、プリント配線板24に形成した孔26bに挿入するリードフレーム13の先端は、折り曲げ、プリント配線板24に挿入するようにすることが望ましい。プリント配線板24に形成した孔26bに挿入し(あるいは突き刺して)、半田付けすることで、リードフレーム13とプリント配線板24との半田付け部の信頼性を高めることができる。その結果、半田接続部分の接続抵抗を下げることができ、熱伝導基板の大電流化にも対応できる。また必要に応じて孔26bの内部にスルーホールめっきすることで、更に信頼性を高めることができる。
【0054】
ここで発熱が課題とならない電子部品23等は、プリント配線板24側に高密度に実装することが、低コスト化、小型化に有利であるためである。しかしこうした電子部品23に近接して発熱部品15を実装した場合、発熱部品15に発生する熱が、電子部品23等に影響を与えてしまう。しかし本実施の形態においては、図8(B)に示すようにプリント配線板24の上に、リード線21を用いて実装した発熱部品15に発生した熱は、図8(B)に示すように、熱伝導基板側に放熱することができ、熱の影響を抑えることができ、回路モジュールの小型化が可能となる。
【0055】
図8(B)は、回路モジュールにおける放熱メカニズムを説明する断面図である。図8(B)において、矢印19bは、放熱用のファン18が回転する様子を示す。また矢印19cは、発熱部品15やトランス等14に発生した熱が、広がる方向等を示す。図8(B)において、発熱部品15に発生した熱は、リードフレーム13に伝わる。そしてリードフレーム13に伝わった熱の一部は、絶縁伝導接着剤16を介してフィン17に伝わり、空冷される。またリードフレーム13の熱の一部は、リードフレーム13の一部以上を埋め込む伝熱層12を介して、金属板11に伝わる。ここで金属板11を、シャーシ25にネジ等で固定(固定方法は図示していない)しておくことで、金属板11に伝わった熱は、矢印19cに示すように、シャーシ25へと広がる。
【0056】
更にファン18を矢印19bに示すように回転することで(例えば、風を吸い込むようにすることで)、シャーシ25とプリント配線板24の隙間から、矢印19cに示すように、冷却用の空気を効率良く吸い込むことができる。この場合、複数回折り曲げたリードフレーム13の一部や、フィン17等を組み合わせて、積極的に煙突構造を構成するようにすることで、煙突効果による効率的な空冷効果も得られる。ここで煙突効果とは、例えば煙突状の空間の中で、空気を暖めた場合、温まって密度が小さくなった空気が煙突の上方に浮上すると同時に、煙突の下の方から冷たい空気を吸い込む効果のことである。そして発熱部品15やトランス等14に発生した熱によって、フィン17を暖め煙突効果を発生させることができる。このように図8(A)(B)に示す構造とすることで、シャーシ25等への直接的な熱伝導以外に、ファン18や煙突効果による積極的な空冷効果も生かすことができる。
【0057】
なおプリント配線板24とシャーシ25の間を一定距離(例えば3〜20mm、望ましくは5〜10mm)離すことで、シャーシ25に伝わった熱の積極的な煙突効果による吸出しも可能となり、熱伝導基板部分のみならず、シャーシ25の冷却効果も得られる。
【0058】
なお図8(A)(B)において、熱伝導基板とプリント配線板24の電気的な接続は、発熱部品15から伸びるリード線21と、リードフレーム13とを、それぞれ用途に応じて併用することで、回路設計やその熱対策を容易にできることは言うまでもない。
【0059】
更に図8(B)に示すように、発熱部品15の金属部20を活電部として、リードフレーム13に直接、半田付けすることで発熱部品15との接続信頼性や接続強度を高められる。更に(あるいは同時に)発熱部品15のリード線21をプリント配線板24に接続することで、その回路パターンの引き回し距離(あるいは線路長)を短くできる。
【0060】
なお発熱部品15の金属部20を、直接リードフレーム13に接続し、発熱部品15のリード線21をプリント配線板24に接続することで、回路パターンの引き回し距離が短くなり、機器の小型化を可能にする。
【0061】
次に図9(A)〜(C)を用いて、回路モジュールの放熱効果の改善例について説明する。図9(A)〜(C)は、共に回路モジュールの放熱効果の改善例を示す部分断面図であり、例えば前述の図8(A)の側面部分(例えば右側面)の断面図に相当する。なお図9(A)〜(C)において、(中央部省略)と図示しているのは、回路モジュールの部分断面であることを示すためのものである。図9(A)は、複数回折り曲げてなるリードフレーム13aの内部に、矢印19aが示すように発熱部品15、絶縁伝導接着剤16a、16b、フィン17bを順番にセットする様子を示す。図9(B)は、複数回折り曲げてなるリードフレーム13aの中(あるいは折り曲げた中)に、発熱部品15をセットし、更に絶縁伝導接着剤16bで固定した様子を示す。そしてこの上に、絶縁伝導接着剤16bを用いて、フィン17bを固定する。図9(C)は、こうして作成した回路モジュールの放熱効果を説明する断面図である。図9(C)において、矢印19bは、発熱部品15に発生した熱が、フィン17a、17b等を介して放熱する様子を示す。なお図9(A)〜(C)における発熱部品15としては、樹脂モールドしたものを使うことができる。図9(B)(C)に示すように、発熱部品15の一部(例えば、フィン17c部分)を、複数回折り曲げてなるリードフレーム13aで囲っても良い。更に囲った後、ネジ止めし(図4においてネジ等は図示していない)、絶縁伝導接着剤16で固定することで、発熱部品15に発生した熱を、多面的(あるいは発熱部品15の上面や下面、側面等から)にリードフレーム13aやフィン17bに伝える。
【0062】
以上のようにして、金属板11と、前記金属板11の上に固定したシート状の伝熱層12と、前記伝熱層12に固定したリードフレーム13と、からなる熱伝導基板であって、前記リードフレーム13の一部を、前記熱伝導基板の外周部で前記伝熱層12から略垂直に折り曲げ、その折り曲げ部に発熱部品15を実装している熱伝導基板を提供することができ、熱伝導基板の放熱性や小型化(あるいは床面積の低減)を実現することができる。
【0063】
また金属板11と、前記金属板11の上に固定したシート状の伝熱層12と、前記伝熱層12に一部以上を埋め込んだリードフレーム13と、からなる熱伝導基板であって、前記リードフレーム13の一部を、前記熱伝導基板の外周部で前記伝熱層12から略垂直に折り曲げ、その折り曲げ部にフィン17を取り付けている熱伝導基板とすることで、熱伝導基板の放熱性や小型化(あるいは床面積の低減)を実現することができる。
【0064】
また図7等に示すように、金属板11と、前記金属板11の上に固定したシート状の伝熱層12と、前記伝熱層12に固定したリードフレーム13と、からなる熱伝導基板として、そのリードフレーム13の一部を、前記熱伝導基板の外周部で前記伝熱層12から複数回折り曲げ、その折り曲げ部に発熱部品15を実装することで、その放熱性を高めることができる。
【0065】
あるいは、金属板11と、前記金属板11の上に固定したシート状の伝熱層12と、前記伝熱層12に一部以上を埋め込んだリードフレーム13と、からなる熱伝導基板であって、前記リードフレーム13の一部を、前記熱伝導基板の外周部で前記伝熱層12から複数回折り曲げ、その折り曲げ部にフィン17を取り付けている熱伝導基板とすることで、その放熱性を高めることができる。
【0066】
また伝熱層12は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びイソシアネート樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類以上の樹脂と、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化珪素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種類以上の無機フィラーと、を含む熱伝導基板とすることで、熱伝導基板の放熱性や小型化(あるいは床面積の低減)を実現することができる。
【0067】
リードフレーム13は、Snは0.1重量%以上0.15重量%以下、Zrは0.015重量%以上0.15重量%以下、Niは0.1重量%以上5重量%以下、Siは0.01重量%以上2重量%以下、Znは0.1重量%以上5重量%以下、Pは0.005重量%以上0.1重量%以下、Feは0.1重量%以上5重量%以下である群から選択される少なくとも一種以上を含む、銅を主体とする金属材料である熱伝導基板とすることで、熱伝導基板の放熱性や小型化(あるいは床面積の低減)を実現することができる。
【0068】
少なくとも、金属板11と、リードフレーム13とを、伝熱層12を介して一体化する工程と、前記伝熱層12を硬化させる工程と、前記リードフレーム13の表面に、発熱部品15やトランス等14の電子部品を実装する工程と、前記リードフレーム13の表面にフィン17を取り付ける工程と、前記リードフレーム13を略垂直に折り曲げる工程とを、含む熱伝導基板の製造方法とすることで、放熱性の優れた小型(あるいは床面積の小さい)熱伝導基板を製造することができる。なおこれらの工程順番(例えば発熱部品15を実装した後、リードフレーム13を折り曲げる)は、用途に応じて前後することができることは、言うまでも無い。
【0069】
少なくとも、プリント配線板24と、熱伝導基板と、発熱部品15とからなる回路モジュールであって、前記熱伝導基板は、金属板11と、前記金属板11の上に固定したシート状の伝熱層12と、前記伝熱層12に一部以上を埋め込んだリードフレーム13と、からなり、前記リードフレーム13の一部は外周部で前記伝熱層12から略垂直に折り曲げ、その折り曲げ部に前記発熱部品15の一部を実装したものであり、前記熱伝導基板は、前記プリント配線板24に形成した孔26a、26bに挿入したものであって、前記熱伝導基板と前記プリント配線板24とは、前記発熱部品15のリード線21もしくは、前記リードフレーム13を介して電気的に接続している回路モジュールとすることで、回路モジュールの小型化が可能となる。また回路モジュールを小型化することで、配線長を短くでき、DCDCコンバーター等における配線長さを短くしたり、最適化設計することができ、回路動作を安定化できる。
【0070】
そして、金属板11上に、シート状の伝熱層12と、前記伝熱層12に固定したリードフレーム13とからなる熱伝導基板において、前記リードフレーム13の一部を熱伝導基板の外周部で略垂直に折り曲げ、ここに発熱部品15(例えば、その金属部20側をリードフレーム13側に、そのリード線21側をプリント配線板24側に)を実装することで、熱伝導基板の放熱効果を高め、その床面積を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる熱伝導基板とその製造方法及びこれを用いた回路モジュールによって、プラズマテレビ、液晶テレビ、あるいは車載用各種電装品、あるいは産業用の放熱が要求される機器の小型化、高性能化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態における熱伝導基板の斜視図
【図2】(A)(B)は、それぞれ発熱部品15を説明する断面図と斜視図
【図3】(A)(B)は、それぞれ回路モジュールの組立方を説明する断面図と、その放熱効果について説明する断面図
【図4】(A)(B)は、それぞれ回路モジュールの組立方を説明する断面図と、その放熱効果について説明する断面図
【図5】(A)(B)は、共に熱伝導基板を組み立てる様子を説明する断面図
【図6】(A)(B)は、共に熱伝導基板の製造方法を説明する断面図
【図7】本発明の実施の形態における熱伝導基板の斜視図
【図8】(A)(B)は、それぞれ回路モジュールの組立方を説明する断面図と、その放熱効果について説明する断面図
【図9】(A)〜(C)は、共に回路モジュールの放熱効果の改善例を示す部分断面図
【図10】従来の回路モジュールを説明する斜視図
【符号の説明】
【0073】
11 金属板
12 伝熱層
13 リードフレーム
14 トランス等
15 発熱部品
16 絶縁伝導接着剤
17 フィン
18 ファン
19 矢印
20 金属部
21 リード線
22 樹脂部
23 電子部品
24 プリント配線板
25 シャーシ
26 孔
27 プレス
28 フィルム
29 V溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、前記金属板の上に固定したシート状の伝熱層と、前記伝熱層に固定したリードフレームと、からなる熱伝導基板であって、
前記リードフレームの一部を、前記熱伝導基板の外周部で前記伝熱層から略垂直に折り曲げ、その折り曲げ部に発熱部品を実装している熱伝導基板。
【請求項2】
金属板と、前記金属板の上に固定したシート状の伝熱層と、前記伝熱層に一部以上を埋め込んだリードフレームと、からなる熱伝導基板であって、
前記リードフレームの一部を、前記熱伝導基板の外周部で前記伝熱層から略垂直に折り曲げ、その折り曲げ部にフィンを取り付けている熱伝導基板。
【請求項3】
伝熱層は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びイソシアネート樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類以上の樹脂と、
アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化珪素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種類以上の無機フィラーと、
を含む請求項1または請求項2に記載の熱伝導基板。
【請求項4】
リードフレームは、Snは0.1重量%以上0.15重量%以下、Zrは0.015重量%以上0.15重量%以下、Niは0.1重量%以上5重量%以下、Siは0.01重量%以上2重量%以下、Znは0.1重量%以上5重量%以下、Pは0.005重量%以上0.1重量%以下、Feは0.1重量%以上5重量%以下である群から選択される少なくとも一種以上を含む、銅を主体とする金属材料である請求項1または請求項2に記載の熱伝導基板。
【請求項5】
少なくとも、金属板と、リードフレームとを、伝熱層を介して一体化する工程と、
前記伝熱層を硬化させる工程と、
前記リードフレームの表面に電子部品を実装する工程と、
前記リードフレームの表面にフィンを取り付ける工程と、
前記リードフレームを略垂直に折り曲げる工程とを、含む熱伝導基板の製造方法。
【請求項6】
少なくとも、プリント配線板と、熱伝導基板と、発熱部品とからなる回路モジュールであって、
前記熱伝導基板は、金属板と、前記金属板の上に固定したシート状の伝熱層と、前記伝熱層に一部以上を埋め込んだリードフレームと、からなり、
前記リードフレームの一部は外周部で前記伝熱層から略垂直に折り曲げ、その折り曲げ部に前記発熱部品の一部を実装したものであり、
前記熱伝導基板は、前記プリント配線板に形成した孔に挿入したものであって、
前記熱伝導基板と前記プリント配線板とは、前記発熱部品のリード線もしくは、前記リードフレームを介して電気的に接続している回路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−235321(P2008−235321A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68400(P2007−68400)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】