説明

熱型光検出器、熱型光検出装置、電子機器および熱型光検出器の製造方法

【課題】 熱型光検出器の検出感度を向上させること。
【解決手段】 熱型光検出器は、基板10と、基板に対して空洞部102を介して支持される支持部材215と、支持部材上に形成され、下部電極234と上部電極236によって焦電材料層232を挟んだ構造を有する熱検出素子230と、熱検出素子上に形成されている光吸収層(270,272)と、熱検出素子230と接続部CNによって接続され、平面視で接続部よりも広い面積を有し、少なくとも一部の波長域の光に対して光透過性を有し、かつ光吸収層(270,272)の内部に形成されている集熱部FLを備える熱伝達部材260と、を含み、下部電極234は、平面視で、焦電材料層232の周囲に延在する延在部分RXを有し、延在部分RXは、熱伝達部材260の集熱部FLを透過した光のうちの少なくとも一部を反射する光反射特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱型光検出器、熱型光検出装置、電子機器および熱型光検出器の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
光センサーとして、熱型光検出器が知られている。熱型光検出器は、物体から放射された光を光吸収層によって吸収し、光を熱に変換し、温度の変化を熱検出素子によって測定する。熱型光検出器には、光吸収にともなう温度上昇を直接検出するサーモパイル、電気分極の変化として検出する焦電型素子、温度上昇を抵抗変化として検出するボロメータ等がある。熱型光検出器は、測定できる波長帯域が広い特徴がある。近年、半導体製造技術(MEMS技術等)を利用して、より小型の熱型光検出器を製造する試みがなされている。
【0003】
熱型光検出器の検出感度の向上、ならびに応答性の改善のためには、光吸収層で発生した熱を、効率的に熱検出素子に伝達することが重要である。
【0004】
熱伝達を効率化するための熱検出素子の構造は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載される赤外線検出素子(ここではサーモパイル型の赤外線検出素子)は、赤外線感知部と赤外線吸収層との間に設けられた高熱伝導層を有している。具体的には、空洞部上にメンブレンが形成され、メンブレンは、四隅に設けられた突出する梁によって、周囲の基板に支持されている。中央のメンブレン部分には、赤外線吸収層層と高熱伝導層とが設けられており、また、梁の部分には、サーモパイル素子が設けられている。また、高熱伝導層は、アルミニウム、金などの赤外線反射性に優れる材料で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3339276号公報
【特許文献2】再表99/31471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、特許文献1に記載される赤外線検出素子では、光吸収層の下に高熱伝達部材が設けられているが、熱検出素子は、光吸収層ならびに高熱伝達部材の下には設けられていない。光赤外線吸収層は、赤外線感知部熱検出素子から離れた位置にあることから、光赤外線吸収層で発生した熱を直接的に熱検出素子赤外線感知部に供給することはできない。
【0007】
特許文献2に記載される赤外線固体撮像素子では、赤外線吸収部を構成する絶縁層は、温度検出器から離れた位置にあることから、赤外線吸収部の絶縁層で発生した熱を直接的に温度検出器に供給することができない。
【0008】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、熱型光検出器の検出感度を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の熱型光検出器の一態様は、基板と、前記基板に対して空洞部を介して支持される支持部材と、前記支持部材上に形成され、下部電極と上部電極によって焦電材料層を挟んだ構造を有する熱検出素子と、前記熱検出素子上に形成されている光吸収層と、前記熱検出素子と接続部によって接続され、平面視で前記接続部よりも広い面積を有し、少なくとも一部の波長域の光に対して光透過性を有し、かつ前記光吸収層の内部に形成されている集熱部を備える熱伝達部材と、を含み、前記下部電極は、平面視で、前記焦電材料層の周囲に延在する延在部分を有し、前記延在部分は、前記熱伝達部材の前記集熱部を透過した光のうちの少なくとも一部を反射する光反射特性を有する。
【0010】
本態様の熱型光検出器では、例えば、熱型光検出器に入射した光(例えば赤外線)の一部は、まず第2光吸収層で吸収され、その他は吸収されずに熱伝達部材に到達する。熱伝達部材は、少なくとも一部の波長域の光に対して光透過性を有しており、例えば、赤外線領域(例えば遠赤外線領域)において半透過性を有することができる。熱伝達部材では、例えば、到達した光の一部は反射し、その他は熱伝達部材を透過する。熱伝達部材を透過した光の一部は、第1光吸収層で吸収され、その他の光は、熱検出素子に到達する。
【0011】
熱検出素子は、支持部材上に形成されている。ここで、「〜上」という表現は、直上であってもよく、あるいは、上部(別の層が介在する場合)であってもよい。他の箇所においても同様に、広義に解釈することができる。
【0012】
また、熱検出素子の下部電極は、支持部材上に延在する延在部分を有し、この延在部分は、光反射特性を有する。すなわち、下部電極は導電性に優れた材料(例えば金属材料)で構成されており、一般に、金属材料等は光の反射率も高い。よって、熱検出素子の構成要素である下部電極の延在部分の表面において、入射する光の多くは反射され、その反射された光は、第1光吸収層や第2光吸収層にて吸収される。よって、入射した光を無駄なく利用して、熱に変換することができる。また、支持部材の表面に到達した光の一部も反射されて、第1光吸収層や第2光吸収層にて吸収されることも有り得る。この点でも、入射光の有効利用が図られる。
【0013】
また、下部電極(金属材料等で構成される)は、熱伝導率も高いことから、例えば、光吸収層における焦電材料層から遠い箇所で発生した熱を、焦電材料層に伝達する効果も発揮する。すなわち、下部電極は、支持部材上において、例えば広く延在していることから、光吸収層における広範囲で発生した熱を、効率的に焦電材料層に伝達することが可能である。この点で、下部電極は、熱伝達部材(すなわち、熱検出素子の上部に形成される熱伝達部材(例えば第1熱伝達部材ということができる)とは別の熱伝達部材(第2熱伝達部材ということができる))を兼ねる、ということもできる。
【0014】
また、熱伝達部材は、光透過性(例えば光の半透過性)を有する材料で構成され、接続部と、平面視で接続部よりも広い面積を有する集熱部とを有し、集熱部は、熱検出素子上に形成される。熱伝達部材の集熱部は、例えば、広範囲な領域において発生した熱を集熱して、熱検出素子に伝達する役割を果たす。熱伝達部材としては、例えば、熱伝導が良好で、かつ光の半透過性を有する金属化合物(例えばAlNやAlOx)を使用することができる。
【0015】
入射した光が、上述のような挙動を示す場合における、第1光吸収層および第2光吸収層における熱の発生、ならびに、発生した熱の、熱検出素子への伝達は、例えば、以下のように行われる。すなわち、熱型光検出器に入射した光の一部が、まず第2光吸収層で吸収され、第2光吸収層にて熱が発生する。また、熱伝達部材で反射した光は、第2光吸収層で吸収され、これによって第2光吸収層にて熱が発生する。
【0016】
また、熱伝達部材を透過(通過)した光の一部は、第1光吸収層にて吸収されて熱が発生する。また、下部電極の延在部分に到達する光の多く(例えば大部分)は、その表面で反射されて、第1光吸収層、および第2光吸収層の少なくとも一方に吸収され、これによって、第1光吸収層あるいは第2光吸収層にて熱が発生する。また、支持部材の表面で反射した光も、第1光吸収層および第2光吸収層の少なくとも一方に吸収され、これによって、第1光吸収層あるいは第2光吸収層にて熱が発生する。
【0017】
そして、第2光吸収層で発生した熱は、熱伝達部材を介して効率的に熱検出素子に伝達され、また、第1光吸収層で発生した熱は、直接的に、あるいは熱伝達部材を介して熱検出素子に効率的に伝達される。すなわち、熱伝達部材の集熱部は、熱検出素子上を広く覆うように形成されており、よって、第1光吸収層ならびに第2光吸収層の発生した熱の多くを、その発生場所を問わずに、効率的に熱検出素子に伝達することができる。例えば、熱検出素子から離れた箇所で発生した熱であっても、熱伝導率が高い熱伝達部材を経由して、熱検出素子に効率的に伝達することができる。
【0018】
また、熱伝達部材の集熱部と、熱検出素子とは、熱伝達部材の接続部によって接続されていることから、熱伝達部材の集熱部を経由して伝達される熱を、接続部を介して、熱検出素子に直接的に伝達することができる。また、熱伝達部材の下に熱検出素子が位置する(平面視で重なる位置に設けられている)ことから、例えば、平面視における熱伝達部材の中央部と、熱検出素子とを最短で接続することが可能である。よって、熱伝達に伴うロスを減らすことができ、また、専有面積の増大を抑制することができる。
【0019】
また、本態様では、2層の光吸収膜によって熱を発生することから吸収効率が高まる。また、第1光吸収層を介して熱を直接的に熱検出素子に伝達することができる。よって、特許文献1に記載される赤外線検出素子ならびに特許文献2に記載される赤外線固体撮像素子と比較して、熱型光検出器の検出感度をより向上させることができる。また、本実施形態では、熱検出素子は熱伝達部材に接続されている。よって、応答速度は、特許文献1に記載される赤外線検出素子と同等に高い。また、本態様では、熱伝達部材が直接に熱検出素子に接続されているため、特許文献2に記載される赤外線固体撮像素子と比較して、より高い応答速度が得られる。
【0020】
(2)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記光吸収層は、前記支持部材上であって前記熱検出素子の周囲に形成されている。
【0021】
本態様では、光吸収層は、平面視で、熱検出素子の周囲に形成される。これによって、光吸収層の広範囲で発生した熱は、熱検出素子に、直接的に、あるいは熱伝達部材を経由して間接的に、効率的に伝達される。よって、熱型光検出器の光検出感度をさらに高めることができる。また、熱型光検出器の応答速度も、より向上する。
【0022】
(3)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記光吸収層は、前記熱伝達部材と前記熱検出素子の前記下部電極における前記延在部分との間において、前記熱伝達部材に接して形成されている第1光吸収層と、前記熱伝達部材上において、前記熱伝達部材と接して形成されている第2光吸収層と、を有する。
【0023】
本態様では、光吸収層として、第1光吸収層と第2光吸収層を設け、これらの2層の光吸収層で、熱伝達部材の集熱部を挟んだ構成を採用する。第1光吸収層ならびに第2光吸収層の広範囲で発生した熱は、熱検出素子に、直接的に、あるいは熱伝達部材を経由して間接的に、効率的に伝達される。また、入射光のうちの熱伝達部材で反射した光を、上層の第2光吸収層で吸収し、また、熱伝達部材を透過した光を、下層の第1光吸収層で吸収することができる。
【0024】
本態様の熱型光検出器によれば、2層(複数層)の光吸収層における広範囲で発生した熱を、熱検出素子に効率的に伝達することができ、よって、小型の熱型光検出器の光検出感度を大幅に向上させることができる。また、熱の伝達に要する時間が短縮されるため、熱型光検出器の応答速度を高めることができる。
【0025】
(4)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記下部電極の延在部分の表面と前記第2光吸収層の上面との間で、第1波長に対する第1光共振器が構成されており、前記第2光吸収層の下面と、前記第2光吸収層の上面との間で、前記第1の波長とは異なる第2の波長に対する第2光共振器が構成されている。
【0026】
本態様では、各光吸収層の膜厚を調整して、異なる共振波長をもつ2個の光共振器を構成する。第1波長に対する第1光共振器は、支持部材上に形成されている、熱型光検出器の構成要素である下部電極の延在部分の表面と、第2光吸収層の上面との間において形成される。下部電極の延在部分の表面で反射した光は、第1光吸収層および第2光吸収層の少なくとも一方に吸収されるが、このとき、第1光共振器を構成することによって、各光吸収層における実効吸収率を高めることができる。下部電極は導電性に優れた材料(例えば金属材料)で構成されており、一般に、金属材料等は光の反射率も高い。よって、延在部分の表面に入射する光の多くを上方に反射させることができる。よって光の共振が生じやすい。
【0027】
ここで、第1光共振器は、例えば、いわゆるλ/4光共振器とすることができる。すなわち、第1波長をλ1としたとき、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234の延在部分RXの表面と第2光吸収層の上面との間の距離が、n・(λ1/4)(nは1以上の整数)の関係を満足するように、第1光吸収層および第2光吸収層の膜厚を調整すればよい。下部電極の膜厚がごく薄いとすると、その膜厚を無視することができ、この場合には、第1光吸収層および第2光吸収層の合計の膜厚が、n・(λ1/4)(nは1以上の整数)の関係を満足すればよい。これによって、入射した波長λ1の光と、支持部材の表面で反射した波長λ1の光とが相互干渉よって打ち消され、第1光吸収層ならびに第2光吸収層における実効吸収率が高まる。
【0028】
また、上述のとおり、熱伝達部材で反射した光は、第2光吸収層で吸収されるが、このとき、第2光共振器を構成することによって、第2光吸収層における実効吸収率を高めることができる。第2光共振器は、例えば、いわゆるλ/4光共振器とすることができる。
【0029】
すなわち、第2波長をλ2としたとき、第2光吸収層の下面と第2光吸収層の上面との間の距離(すなわち、第2光吸収層の膜厚)を、n・(λ2/4)に設定することによって、第2光共振器を構成することができる。これによって、入射した波長λ2の光と、第2光吸収層の下面(第1光吸収層と第2光吸収層との界面)で反射した波長λ2の光とが相互干渉よって打ち消され、第2光吸収層における実効吸収率を高めることができる。
【0030】
また、本態様によれば、異なる2つの波長において共振ピークが生じることから、熱型光検出器が検出可能な光の波長帯域(波長幅)を広げることができる。なお、熱伝達部材の集熱部と光反射層とは、互いに平行に配置されている。よって、光反射層の上面と第2光吸収層の上面との平行が維持される。
【0031】
(5)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記熱伝達部材は、前記熱検出素子を他の素子に接続する配線を兼ねる。
【0032】
熱伝達部材は、上述のとおり、例えば、AlNやAlOx等の金属化合物で構成することができるが、金属を主成分とする材料は電気伝導も良好であることから、熱伝達部材は、熱検出素子を他の素子に接続する配線(配線の一部を含む)としても利用することができる。熱伝達部材を、配線としても利用することによって、配線を別途、設ける必要がなくなり、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0033】
(6)本発明の熱型光検出装置の一態様では、上記いずれかに記載の熱型光検出器が複数、2次元配置されている。
【0034】
これによって、複数の熱型光検出器(熱型光検出素子)が2次元に配置された(例えば、直交2軸の各々に沿ってアレイ状に配置された)、熱型光検出装置(熱型光アレイセンサー)が実現される。
【0035】
(7)本発明の電子機器の一態様は、上記のいずれかに記載の熱型光検出器と、前記熱型光検出器の出力を処理する制御部と、を有する。
【0036】
上記いずれかの熱型光検出器は、光の検出感度が高い。よって、この熱型光検出器を搭載する電子機器の性能が高まる。電子機器としては、例えば、赤外線センサー装置、サーモグラフィー装置、車載用夜間カメラや監視カメラ等が挙げられる。なお、制御部は、例えば、画像処理部やCPUで構成することができる。
【0037】
(8)本発明の熱型光検出器の一態様は、基板の主面上に絶縁層を含む構造体を形成し、前記絶縁層を含む構造体上に犠牲層を形成し、前記犠牲層上に支持部材を形成する工程と、前記支持部材上に、下部電極と上部電極によって焦電材料層を挟んだ構造を有し、かつ、前記下部電極が、平面視で、前記焦電材料層の周囲に延在する延在部分を有すると共に、前記延在部分が、到来する光を反射する光反射特性を有する熱検出素子を形成する工程と、前記熱検出素子を覆うように第1光吸収層を形成し、前記第1光吸収層を平坦化する工程と、前記第1光吸収層の一部にコンタクトホールを形成した後、熱伝導性と、少なくとも一部の波長域の光に対する光透過性とを有する材料層を形成し、前記材料層をパターニングすることによって、前記熱検出素子に接続する接続部と、平面視で前記接続部よりも広い面積を有する集熱部とを備える熱伝達部材を形成する工程と、前記第1光吸収層上に第2光吸収層を形成する工程と、前記第1光吸収層および前記第2光吸収層をパターニングする工程と、前記支持部材をパターニングする工程と、前記犠牲層をエッチングにより除去して、前記基板の主面上に形成された絶縁層を含む構造体と、前記支持部材との間に空洞部を形成する工程と、を含む。
【0038】
本態様では、基板の主面に、層間絶縁層を含む多層構造、犠牲層、支持部材を積層形成し、また、支持部材上に、光反射特性を有する下部電極(すなわち、光反射部材を兼ねる下部電極)を含む熱検出素子、第1光吸収層、熱伝達部材ならびに第2光吸収層を積層形成する。第1光吸収層の上面は、平坦化処理によって平坦化される。また、第1光吸収層にはコンタクトホールが設けられ、このコンタクトホールに、熱伝達部材の接続部が埋め込まれる。第1光吸収層上に設けられる、熱伝達部材の集熱部は、接続部を介して熱検出素子(例えば、焦電キャパシターの上側電極)に接続される。本態様によれば、半導体製造技術(例えばMEMS技術)を用いて、小型かつ検出感度の高い熱型光検出器を実現することができる。なお、熱伝達部材の集熱部と光反射層とは、互いに平行に配置するのが好ましい。これによって、光反射層の上面と第2光吸収層の上面との平行が維持される。
【0039】
このように、本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、熱型光検出器の検出感度を、格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(A)および図1(B)は、熱型光検出器の一例の平面図ならびに断面図
【図2】図2(A)および図2(B)は、アルミナ板の、遠赤外線の波長域における分光特性(光反射特性ならびに光透過特性)の一例を示す図、ならびに2つの光共振器が構成される場合における、熱型光検出器の検出感度の一例を示す図
【図3】図3(A)〜図3(E)は、熱型光検出器の製造方法における、第1光吸収層を形成するまでの主要な工程を示す図
【図4】図4(A)〜図4(C)は、熱型光検出器の製造方法における、第1光吸収層ならびに第2光吸収層をパターニングするまでの主要な工程を示す図
【図5】図5(A)および図5(B)は、熱型光検出器の製造方法における、熱型光検出器が完成するまでの主要な工程を示す図
【図6】熱型光検出器の他の例を示す図
【図7】熱型光検出装置(熱型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図
【図8】電子機器の構成の一例を示す図
【図9】電子機器の構成の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0042】
(第1の実施形態)
図1(A)および図1(B)は、熱型光検出器の一例の平面図ならびに断面図である。図1(B)は、図1(A)に示される熱型光検出器のA−A’線に沿う断面図である。図1(A)および図1(B)では、単独の熱型光検出器を示しているが、複数の熱型光検出器を、例えばマトリクス状に配置して、熱型光検出器アレイ(すなわち熱型検出装置)を構成することもできる。
【0043】
図1(A)および図1(B)に示される熱型光検出器は、焦電型赤外線検出器(光センサーの一種)200である(但し、一例であり、これに限定されるものではない)。この焦電型赤外線検出器200は、2層の光吸収膜270,272における光吸収によって発生する熱を、熱伝導が良好な熱伝達部材260を経由して、熱検出素子(ここでは焦電キャパシター230)に、効率的に伝達することができる。
【0044】
熱伝達部材260は、例えば、高い熱伝導率を有すると共に、少なくとも一部の波長域の光(熱型光検出器が検出感度を有する波長帯域(波長幅)の光の少なくとも一部の波長域の光)に対して、光透過性(例えば半透過性)を有する材料(例えば、AlNやAlOx等の金属化合物)によって構成することができる。なお、熱伝達部材260における光透過性については、図2を参照して後述する。
【0045】
熱検出素子としての焦電キャパシター230は、熱を電気信号に変換する。これによって、受光した光の強度に対応する検出信号(例えば電流信号)が得られる。熱検出素子としての焦電キャパシター230は、支持部材215上に形成されている。ここで、「〜上」という表現は、直上であってもよく、あるいは、上部(別の層が介在する場合)であってもよい。他の箇所においても同様に、広義に解釈することができる。以下、具体的に説明する。
【0046】
(熱型光検出器としての焦電型赤外線検出器の構造の一例)
まず、図1(B)を参照して、断面構造について説明する。
【0047】
(断面構造)
熱型光検出器としての焦電型赤外線検出器200は、基板(シリコン基板)10上に形成された多層の構造体によって構成されている。すなわち、熱型光検出器200としての焦電型赤外線検出器は、基板(ここではシリコン基板とする)10と、基板10の第1主面(ここでは表面とする)上に形成された、絶縁層を含む構造体100(例えば、層間絶縁層を含む多層構造:多層構造の具体例については図6を参照)と、絶縁層を含む構造体100の表面に形成されたエッチングストッパー膜130aと、熱分離用の空洞部(熱分離空洞)102と、載置部210およびアーム部212a,212bとで構成される支持部材(メンブレン)215と、支持部材(メンブレン)215上に形成された、熱検出素子としての焦電キャパシター230と、焦電キャパシター230の表面を覆う絶縁層250と、第1光吸収層(例えばSiO層)270と、熱伝達部材260(接続部CNおよび集熱部FLを有する)と、第2光吸収層(例えばSiO層)272と、を有する。
【0048】
焦電キャパシター230は、下部電極(第1電極)234と、焦電材料層232と、上部電極(第2電極)236と、を有する。また、焦電キャパシター230の下部電極は、平面視(基板の表面に垂直な方向からみた平面視)で、焦電材料層の周囲に延在する延在部分RXを有し、この延在部分RXは、熱伝達部材260の集熱部FLを透過した光のうちの少なくとも一部を反射する光反射特性を有する。なお、「延在部分」は、「張り出し部分」あるいは「拡張部分」と言い換えることができる。
【0049】
第1光吸収層270は、熱伝達部材260(具体的には熱伝達部材260の集熱部FL)と、熱検出素子(焦電キャパシター230)の下部電極における延在部分RXとの間において、熱伝達部材260(具体的には熱伝達部材260の集熱部FL)に接して形成されている。
【0050】
また、第2光吸収層272は、熱伝達部材260(具体的には、熱伝達部材260の集熱部FL)上において、熱伝達部材260(具体的には熱伝達部材260の集熱部FL)と接して形成されている。
【0051】
すなわち、下部電極234は導電性に優れた材料(例えば金属材料)で構成されており、一般に、金属材料等は光の反射率も高い。よって、焦電キャパシター230の構成要素である下部電極234の延在部分RXの表面において、入射する光の多くは反射され、その反射された光は、第1光吸収層270や第2光吸収層272にて吸収される。よって、入射した光を無駄なく利用して、熱に変換することができる。また、支持部材215の表面に到達した光の一部も反射されて、第1光吸収層270や第2光吸収層272にて吸収されることも有り得る。この点でも、入射光の有効利用が図られる。
【0052】
図1(A)および図1(B)の例では、下部電極234における延在部分RXは、平面視で、熱伝達部材260の外周まで張り出して形成されている。延在部分RXを、熱伝達部材260の外周よりも外側にまで張り出させることも可能であり、また、逆に、熱伝達部材260の外周の内側において、張り出しを止めることも可能である。但し、下部電極234における延在部分RXの面積が小さすぎると、熱伝達部材260の集熱部FLを透過した光を効率よく反射する効果が弱くなる。したがって、延在部分RXは、平面視で、少なくとも熱伝達部材260の外周(外周付近)まで張り出して形成するのが好ましい。また、延在部分RXは、入射光の有効利用を図る観点から、平面視で、焦電材料層232の周囲に設けられるのが好ましい。より好ましくは、全周囲に設けられるのが好ましい。
【0053】
また、下部電極234は金属材料で構成されており、熱伝導率も高いことから、例えば、第1光吸収層270における焦電材料層232から遠い箇所で発生した熱を、焦電材料層232に、効率的に伝達する効果も発揮する。すなわち、下部電極234は、支持部材215上において、例えば広く延在していることから、第1光吸収層270における広範囲で発生した熱を、効率的に焦電材料層232に伝達することが可能である。この点で、下部電極234は、熱伝達部材(すなわち、焦電キャパシター230の上部に形成される熱伝達部材260(例えば第1熱伝達部材ということができる)とは別の熱伝達部材(第2熱伝達部材ということができる))を兼ねる、ということもできる。
【0054】
なお、基板10および多層構造体100によって、基部(ベース)が構成される。この基部(ベース)は、空洞部102において、支持部材215や焦電キャパシター230を含む素子構造体160を支持する。また、例えば、シリコン(Si)基板10の、平面視で熱検出素子(焦電キャパシター230)と重なる領域には、トランジスターや抵抗等の半導体素子を形成することができる(例えば、図6の例を参照)。
【0055】
基板10上に形成される多層構造体100の表面には、上述したとおり、エッチングストッパー膜(例えばSi膜)130aが設けられており、また、支持部材(メンブレン)215の裏面には、エッチングストッパー膜(例えばSi膜)130b〜130dが設けられている。このエッチングストッパー膜130a〜130dは、空洞部102を形成するために犠牲層(図1では不図示,図3の参照符号101)を除去する工程において、エッチングの対象外の層が除去されるのを防止する役割を果たす。但し、エッチングストッパー膜は、支持部材(メンブレン)215を構成する材料によっては不要の場合がある。
【0056】
また、素子構造体160に含まれる焦電キャパシター230は、同じく素子構造体160の構成要素である支持部材(メンブレン)215によって、空洞部102上において支持されている。
【0057】
ここで、支持部材(メンブレン)215は、例えば、酸化シリコン膜(SiO)/窒化シリコン膜(SiN)/酸化シリコン膜(SiO)の3層の積層膜をパターニングすることによって形成することができる(但し、一例であり、これに限定されるものではない)。支持部材(メンブレン)215は、焦電キャパシター230を安定的に支持する必要があり、よって、支持部材(メンブレン)215のトータルの厚みは、必要な機械強度を満足する厚みを有する。
【0058】
支持部材(メンブレン)215の表面上には、配向膜(不図示)が形成されており、この配向膜上に、焦電キャパシター230が形成されている。焦電キャパシター230は、上述のとおり、下部電極(第1電極)234と、下部電極上に形成される焦電材料層(例えば焦電体としてのPZT層:チタン酸ジルコン酸鉛層)232と、焦電材料層232上に形成される上部電極(第2電極)236と、を含む。
【0059】
下部電極(第1電極)234ならびに上部電極(第2電極)236は共に、例えば、3層の金属膜を積層することによって形成することができる。例えば、焦電材料層(PZT層)232から遠い位置から順に、例えばスパッタリングにて形成されるイリジウム(Ir)、イリジウム酸化物(IrOx)及びプラチナ(Pt)の三層構造とすることができる。また、焦電材料層232としては、上述のとおり、例えばPZT(Pb(Zi,Ti)O:チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。
【0060】
焦電材料層(焦電体)に熱が伝達されると、その結果、焦電効果(パイロ電子効果)によって、焦電材料層232に電気分極量の変化が生じる。この電気分極量の変化に伴う電流を検出することによって、入射した光の強度を検出することができる。
【0061】
この焦電材料層232は、例えば、スパッタリング法やMOCVD法等で成膜することができる。下部電極(第1電極)234および上部電極(第2電極)236の膜厚は、例えば0.4μm程度であり、焦電材料層232の膜厚は、例えば0.1μm程度である。
【0062】
焦電キャパシター230は、絶縁層250ならびに第1光吸収層270によって覆われている。絶縁層250には、第1コンタクトホール252が設けられている。第1コンタクトホール252は、上部電極(第2電極)236用の電極226を、上部電極(第2電極)236に接続するために使用される。
【0063】
また、第1光吸収層270(および絶縁層250)には、第2コンタクトホール254が設けられている。第2コンタクトホール254は、第1光吸収層270および絶縁層250を貫通して設けられている。この第2コンタクトホール254は、熱伝達部材260を、焦電キャパシター230の上部電極236に接続するために使用される。すなわち、熱伝達部材260を構成する材料(例えば、窒化アルミニウム(AlN)あるいは酸化アルミニウム(AlOx)等)が、第2コンタクトホール254内に充填されており(充填部分は、図中、参照符号228で示されている)、これによって、熱伝達部材260における接続部CNが構成される。
【0064】
熱伝達部材260は、表面が平坦化されている第1光吸収層270上に延在する部分である集熱部FLと、この集熱部FLを、焦電キャパシター230における上部電極(第2電極)236に接続する部分である接続部CNと、を有している。
【0065】
ここで、熱伝達部材260の集熱部FLは、例えば、広範囲な領域において発生した熱を集熱して、熱検出素子である焦電キャパシター230に伝達する役割を果たす。なお、集熱部FLは、例えば、平坦化された第1光吸収層270上において、平坦面を有する態様にて形成される場合があり、この場合には、「集熱部」は、「平板部あるいは平坦部」と言い換えることができる。
【0066】
上述のとおり、熱伝達部材260は、熱伝導率が高く、かつ所望の波長帯域の光に対して光透過性(例えば半透過性)を有する材料で構成することができ、例えば、窒化アルミニウム(AlN)あるいは酸化アルミニウム(AlOx)等で構成することができる。なお、集熱部FLにおける材料と、接続部CNにおける材料228(例えばコンタクトホール254に埋め込まれるコンタクトプラグの材料)とを異ならせることも可能である。
【0067】
また、図1(B)(ならびに図1(A))に示すように、接続部CNの横幅をW0とし、焦電材料層232の横幅をW1とし、熱伝達部材260の集熱部FLの横幅をW2としたとき、W0<W1<W2の関係が成立する。また、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234の横幅はW2に設定されている。つまり、図1(A)に示されるように、熱伝達部材260の外周(外縁)と、下部電極(第1電極)234の外周(外縁)とは、平面視において略一致する。
【0068】
また、図1(B)に示されるように、第1波長をλ1、第2波長をλ2としたとき、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234の延在部分(RX)の表面と、第2光吸収層272の上面との間の距離H1は、n・(λ1/4)(nは1以上の整数)に設定されている。これによって、下部電極(第1電極)234の延在部分(RX)の表面と、第2光吸収層272の上面との間で、第1光共振器(λ1/4光共振器)が構成されている。下部電極(第1電極)234の膜厚は十分に薄いため、その膜厚を無視しても特に問題はなく、よって、第1光吸収層270の膜厚H2と第2光吸収層272の膜厚H3の合計の膜厚を、上述の距離H1とみなすこともできる。
【0069】
また、第2光吸収層272の下面と、第2光吸収層272の上面との間の距離H3(すなわち、第2光吸収層272の膜厚H3)は、n・(λ2/4)に設定されている。これによって、第2光吸収層272の下面と、第2光吸収層272の上面との間で第2光共振器(λ2/4光共振器)が構成されている。熱伝達部材260における集熱部FLの膜厚は十分に薄いため、その膜厚を無視しても特に問題はなく、よって、第2光吸収層272の膜厚H3を、第2光共振器の共振器長とみることができる。第1光共振器および第2光共振器が構成されることの効果については後述する。また、熱伝達部材260の集熱部FLと光反射層235とは、互いに平行に配置されている。よって、光反射層235の上面と第2光吸収層272の上面との平行が維持される。
【0070】
(レイアウト構成)
次に、図1(A)を参照して、レイアウト構成について説明する。図1(A)に示すように、支持部材(メンブレン)215は、焦電キャパシター230を載置する載置部210と、この載置部210を、空洞部(熱分離空洞部)102上にて保持する2本のアーム、すなわち第1アーム部212aと第2アーム部212bと、を有している。焦電キャパシター230は、支持部材(メンブレン)215における載置部210上に形成されている。また、上述のとおり、支持部材(メンブレン)215、焦電キャパシター230、第1光吸収層270、熱伝達部材260ならびに第2光吸収層272を含めて、素子構造体160が構成される。
【0071】
第1アーム部212aならびに第2アーム部212bは、上述したように、例えば、酸化シリコン膜(SiO)/窒化シリコン膜(SiN)/酸化シリコン膜(SiO)の3層の積層膜をパターニングして、細長い形状に加工することによって形成することができる。細長い形状とするのは、熱抵抗を大きくして、焦電キャパシター230からの放熱(熱の逃げ)を抑制するためである。
【0072】
第1アーム部212aにおける幅広の先端部232aは、第1ポスト104a(図1(A)において破線で示される、平面視で円形の部材)によって、空洞部102上において支持されている。また、第1アーム部212a上には、一端(参照符号228)が、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234に接続され、他端231aが、第1ポスト104aに接続される配線229aが形成されている。
【0073】
第1ポスト104aは、例えば、図1(B)に示される絶縁層を含む構造体100と、第1アーム部212aの先端部232aとの間に設けられる。この第1ポスト104aは、例えば、空洞部102に選択的に形成される、柱状に加工された多層配線構造(層間絶縁層と、焦電キャパシター230と下地のシリコン基板10に設けられたトランジスター等の素子とを接続するための配線を構成する導電層とからなる)によって構成することができる。
【0074】
同様に、第2アーム部212bは、第2ポスト104b(図1(A)において、破線で示される、平面視で円形の部材)によって、空洞部102上において支持されている。第2アーム部212bにおける幅広の先端部232bは、第2ポスト104b(図1(A)において破線で示される、平面視で円形の部材)によって、空洞部102上において支持されている。また、第2アーム部212b上には、一端(参照符号226)が、焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続され、他端231bが、第2ポスト104bに接続される配線229bが形成されている。
【0075】
第2ポスト104bは、図1(B)に示される絶縁層を含む構造体100と、第2アーム部212bの先端部232bとの間に設けられる。また、第2ポスト104bは、例えば、空洞部102に選択的に形成される、柱状に加工された多層配線構造(層間絶縁層と、焦電キャパシター230と下地のシリコン基板10に設けられたトランジスター等の素子とを接続するための配線を構成する導電層とからなる)によって構成することができる。
【0076】
図1(A)に示される例では、第1ポスト104aならびに第2ポスト104bを用いて、支持部材215や焦電キャパシター230を含む素子構造体160を、空洞部102において保持している。この構成は、共通の空洞部102において、熱検出素子としての焦電キャパシター230を複数、高密度に配置する際(つまり、熱検出素子のアレイを形成する際)に有効である。但し、この構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、図6に示される例のように、一つの熱検出素子(焦電キャパシター)230毎に一つの空洞102を形成し、支持部材(メンブレン)215を、空洞部102の周囲の、絶縁層を含む構造体100にて支持するようにしてもよい。
【0077】
また、図1(A)において、焦電キャパシター230は、支持部材215における載置部210の中央領域に配置されており、焦電キャパシター230は、平面視で、略正方形の形状を有する。また、図1(A)に示すように、熱伝達部材260の接続部CNにおける横幅をW0とし、焦電キャパシター230における焦電材料層232の横幅をW1とし、熱伝達部材260の集熱部FLの横幅ならびに下部電極(第1電極)234の横幅をW2としたとき、W0<W1<W2の関係が成立する。
【0078】
したがって、平面視(基板10の表面に対して垂直な方向からみた平面視、より具体的には、垂直上側方向からみた平面視)における熱伝達部材260の集熱部FLの面積は、接続部CNの面積よりも大きい。また、平面視における熱伝達部材260の集熱部FLの面積は、焦電キャパシター230の面積よりも大きい。
【0079】
また、図1(A)に示されるように、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272は、平面視で、支持部材215上であって、熱検出素子である焦電キャパシター230の周囲に形成されている。したがって、第1光吸収層270および第2光吸収層272の広範囲で発生した熱は、焦電キャパシター230に、直接的に、あるいは、広範囲をカバーする広い面積をもつ熱伝達部材260を経由して間接的に、効率的に伝達される。
【0080】
つまり、第1光吸収層270および第2光吸収層272の広範囲で発生した熱は、焦電キャパシター230に、あらゆる方向(つまり、四方八方から)集まってくる。ここで、焦電キャパシター230は、平面視で、略正方形の熱伝達部材260の中央の下に位置している。よって、あらゆる方向から、熱伝達部材260を経由して集まってくる熱は、接続部CNを経由して、最短距離で、焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に伝達される。よって、広範囲から、多くの熱を効率的に集約し、かつ、それらの熱を、最短距離で、ロスを最小限に抑制しつつ、焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に伝達することができる。よって、熱型光検出器200の光検出感度をさらに高めることができる。また、熱型光検出器の応答速度も、より向上する。
【0081】
また、上述したとおり、焦電キャパシター230における下部電極(第1電極)234の延在部分RXは、熱を伝達する効果も併せ持つことから、例えば、第1光吸収層270の広範な領域で発生した熱は、延在部分RXを経由してあらゆる方向から、焦電材料層232に集まってくる。また、第1光吸収層270における焦電材料層232から遠い箇所で発生した熱を、焦電材料層232に、効率的に伝達する効果も得られる。
【0082】
また、本実施形態では、2層の光吸収膜270,272によって熱を発生することから吸収効率が高まる。また、第1光吸収層270を介して熱を直接的に熱検出素子230に伝達することができる。よって、特許文献1に記載される赤外線検出素子ならびに特許文献2に記載される赤外線固体撮像素子と比較して、熱型光検出器の検出感度をより向上させることができる。また、本実施形態では、熱検出素子230は熱伝達部材260に接続されている。よって、応答速度は、特許文献1に記載される赤外線検出素子と同等に高い。また、本実施形態では、熱伝達部材260が直接に熱検出素子230に接続されているため、特許文献2に記載される赤外線固体撮像素子と比較して、より高い応答速度が得られる。
【0083】
(熱型光検出器の動作等について)
図1(A)および図1(B)に示される本実施形態にかかる熱型光検出器(熱型光検出器)200は、以下のように動作する。
【0084】
すなわち、熱型光検出器200に入射した光(例えば赤外線)の一部は、まず第2光吸収層272で吸収され、その他は吸収されずに熱伝達部材260に到達する。熱伝達部材260は、熱型光検出器200が検出感度を有する波長帯域の光に対して光透過性を有しており、例えば、赤外線に対して半透過性を有する。熱伝達部材260では、例えば、到達した光の一部は反射し、その他は熱伝達部材260を透過する。熱伝達部材260を透過した光の一部は、第1光吸収層270で吸収され、その他の光は、支持部材(メンブレン)215上に形成されている熱検出素子としての焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234の延在部分RXの表面、ならびに支持部材(メンブレン)215の表面に到達する。
【0085】
焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234の延在部分RXに入射する光の多く(例えば大部分)は、その表面で反射されて、第1光吸収層270、および第2光吸収層272の少なくとも一方に吸収され、これによって、第1光吸収層270あるいは第2光吸収層272にて熱が発生する。つまり、下部電極(第1電極)234の延在部分RXが存在することによって、入射する光が、支持部材(メンブレン)215を通過して下方に逃げてしまうことが低減され、よって、より多くの入射光を熱に変換することができ、光の有効利用が図られる。
【0086】
また、支持部材(メンブレン)215の表面で反射した光も、第1光吸収層270および第2光吸収層272の少なくとも一方に吸収され、これによって、第1光吸収層あるいは第2光吸収層にて熱が発生する。例えば、第1光吸収層270がSiO層(屈折率:1.45)で構成され、支持部材(メンブレン)215が、SiN膜(屈折率2.0)で構成される場合、第1光吸収層270の屈折率よりも、支持部材(メンブレン)215を構成する膜の屈折率(つまり、支持部材215の屈折率)の方が大きいことから、支持部材(メンブレン)215に到達した光のほとんどは、支持部材(メンブレン)215の表面で反射されることになる。
【0087】
また、支持部材(メンブレン)215の構成要素として、例えばチタン(Ti)膜等の金属膜を設けて(特に、光が反射する表面に設けるのが好ましい)、支持部材(メンブレン)215の表面における光の反射率を高めることも有効である。支持部材(メンブレン)215の表面で反射された光は、第1光吸収層270や第2光吸収層272にて吸収される。
【0088】
入射した光が、上述のような挙動を示す場合における、第1光吸収層270および第2光吸収層272における熱の発生、ならびに、発生した熱の、熱検出素子である焦電キャパシター230への伝達は、例えば、以下のように行われる。
【0089】
すなわち、熱型光検出器200に入射した光の一部が、まず第2光吸収層272で吸収され、第2光吸収層272にて熱が発生する。また、熱伝達部材260で反射した光は、第2光吸収層272で吸収され、これによって第2光吸収層272にて熱が発生する。
【0090】
また、熱伝達部材260を透過(通過)した光の一部は、第1光吸収層270にて吸収されて熱が発生する。その他の光は、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)の延在部分RXの表面ならびに支持部材(メンブレン)215の表面に到達する。
【0091】
上述のとおり、下部電極(第1電極)の延在部分RXの表面に入射する光の多く(例えば大部分)は反射され、その反射された光は、第1光吸収層270や第2光吸収層272にて吸収される。よって、入射した光を無駄なく利用して、熱に変換することができる。
【0092】
また、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)の延在部分RXは、集熱効果をもつことから、第1光吸収層270の広範囲で発生した熱を、効率的に焦電材料層232に集めることができる。
【0093】
また、支持部材(メンブレン)215の表面に到達した光の一部も反射されて、第1光吸収層270や第2光吸収層272にて吸収されることから、この点でも、入射光の有効利用が図られる。
【0094】
そして、第2光吸収層272で発生した熱は、熱伝達部材260を介して効率的に熱検出素子である焦電キャパシター230に伝達され、また、第1光吸収層270で発生した熱は、直接的に、あるいは熱伝達部材260を介して焦電キャパシター230に効率的に伝達される。
【0095】
すなわち、熱伝達部材260の集熱部は、熱検出素子230上を広く覆うように形成されており、よって、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272の発生した熱の多くを、その発生場所を問わずに、効率的に熱検出素子に伝達することができる。例えば、熱検出素子230から離れた箇所で発生した熱であっても、熱伝導率が高い熱伝達部材260を経由して、熱検出素子である焦電キャパシター230に効率的に伝達することができる。
【0096】
また、熱伝達部材260の集熱部FLと、焦電キャパシター230とは、熱伝達部材260の接続部CNによって接続されていることから、熱伝達部材260の集熱部FLを経由して伝達される熱を、接続部CNを介して、焦電キャパシター230に直接的に伝達することができる。また、熱伝達部材260の下(直下)に熱検出素子としての焦電キャパシター230が位置する(平面視で重なる位置に設けられている)ことから、例えば、平面視における熱伝達部材260の中央部と、焦電キャパシター230とを最短で接続することが可能である。よって、熱伝達に伴うロスを減らすことができ、また、専有面積の増大を抑制することができる。
【0097】
このように、図1(A)および図1(B)に記載される熱型光検出器(ここでは焦電型赤外線検出器)によれば、2層(複数層)の光吸収層270,272における広範囲で発生した熱を、熱検出素子である焦電キャパシター230に効率的に伝達することができ、よって、小型の熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)の光検出感度を大幅に向上させることができる。また、熱の伝達に要する時間が短縮されるため、熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)の応答速度を高めることができる。
【0098】
また、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234の延在部分RXによる光の反射効果ならびに集熱効果によって、熱型光検出器の検出効率が高まる。
【0099】
また、図1(A)および図1(B)に記載される熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)では、第1光吸収層270および第2光吸収層272は、支持部材215(の載置部210)上において、平面視で、熱検出素子である焦電キャパシター230の周囲に形成されている。これによって、第1光吸収層270および第2光吸収層272の広範囲で発生した熱は、熱検出素子である焦電キャパシター230に、直接的に、あるいは熱伝達部材260を経由して間接的に、きわめて効率的に伝達される。よって、熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)の光検出感度をさらに高めることができる。また、熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)の応答速度も、より向上する。
【0100】
また、上述のとおり、図1(A)および図1(B)に記載される熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)では、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234の延在部分RXの表面と第2光吸収層272の上面との間で、第1波長λ1に対する第1光共振器が構成されており、また、第2光吸収層272の下面と、第2光吸収層272の上面との間で、第1の波長λ1とは異なる第2の波長λ2に対する第2光共振器が構成されている。すなわち、第1光吸収層270および第2光吸収層272の膜厚を調整することによって、異なる共振波長をもつ2個の光共振器が構成されている。
【0101】
上述したように、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234の延在部分RXで反射した光は、第1光吸収層270および第2光吸収層272の少なくとも一方に吸収されるが、このとき、第1光共振器を構成することによって、各光吸収層における実効吸収率を高めることができる。
【0102】
第1光共振器は、例えば、いわゆるλ/4光共振器とすることができる。すなわち、第1波長をλ1としたとき、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234の延在部分RXの表面と第2光吸収層272の上面との間の距離H1(下部電極234の膜厚を無視できるとすると、第1光吸収層270および第2光吸収層272の合計の膜厚H1)が、n・(λ1/4)(nは1以上の整数)の関係を満足するように、第1光吸収層270および第2光吸収層272の膜厚が調整されている。これによって、入射した波長λ1の光と、下部電極234の延在部分RXの表面で反射した波長λ1の光とが相互干渉よって打ち消され、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272における実効吸収率が高まる。
【0103】
また、下部電極234の延在部分RXは、光の反射率が高い材料によって構成されていることから、入射する光の多くを上方に反射させることができ、よって光の共振が生じやすい。
【0104】
また、支持部材(メンブレン)215の表面で反射した光についても、入射光との間で相互干渉が生じることから、第1光共振器における共振が生じやすい。
【0105】
また、上述のとおり、熱伝達部材260で反射した光は、第2光吸収層272で吸収されるが、このとき、第2光共振器を構成することによって、第2光吸収層272における実効吸収率を高めることができる。第2光共振器は、例えば、いわゆるλ/4光共振器とすることができる。
【0106】
すなわち、第2波長をλ2としたとき、第2光吸収層272の下面と第2光吸収層272の上面との間の距離(すなわち、第2光吸収層の膜厚)を、n・(λ2/4)に設定することによって、第2光共振器を構成することができる。これによって、入射した波長λ2の光と、第2光吸収層の下面(第1光吸収層270と第2光吸収層272との界面)で反射した波長λ2の光とが相互干渉よって打ち消され、第2光吸収層272における実効吸収率を高めることができる。
【0107】
また、2個の光共振器を構成することによって、異なる2つの波長において共振ピークが生じることから、ピーク同士が合成されて、熱型光検出器が検出感度を有する波長帯域が拡大される。つまり、熱型光検出器が検出可能な光の波長帯域(波長幅)を広げることができる。
【0108】
(熱伝達部材の好ましい例について)
次に、熱伝達部材(熱伝達層)の好ましい例について説明する。上述のとおり、本実施形態の熱型光検出器200では、熱伝達部材260における集熱部FLを、第1光吸収層270と第2光吸収層272とによって挟む構造が採用されており、かつ、熱伝達部材260の集熱部FLは、熱検出素子である焦電キャパシター230から遠い位置で発生した熱も集熱できるようにするため、平面視で、広い面積を有するのが好ましい。この状況下で、熱型光検出器200の上方から入射する光を、第1光吸収層270と第2光吸収層272の双方で吸収させるためには、熱伝達部材260を、所望の波長帯域のうちの、少なくとも一部の波長域の光を透過させる光透過性を有する材料にて構成するのが好ましい。
【0109】
すなわち、熱伝達部材260は、熱伝達良好な熱伝導性と光透過性とを有する材料にて構成するのが好ましい。熱伝達部材260は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)や酸化アルミニウム(AlOx)にて構成することができる。酸化アルミニウムは、アルミナとも呼ばれ、例えば、Alを使用することができる。
【0110】
図2(A)および図2(B)は、アルミナ板の、遠赤外線の波長域における分光特性(光反射特性ならびに光透過特性)の一例を示す図、ならびに、2つの光共振器が構成される場合における、熱型光検出器の検出感度の一例を示す図である。
【0111】
なお、遠赤外線の波長域については、特に厳密な定義があるわけではないが、一般には、遠赤外線の波長域は4μm〜1000μm程度である。赤外線は物体からは必ず放射されており、高い温度の物体ほど赤外線を強く放射する。また、放射のピークの波長は温度に反比例し、例えば、室温20℃の物体が放射する赤外線のピーク波長は、10μm程度である。
【0112】
図2(A)には、アルミナ板の、4μm〜24μmの波長域における反射率と透過率が示されている。横軸は波長(μm)であり、縦軸は相対強度(arbitray unit:a.u.)である。図2において、透過率を示す特性線Q1は一点鎖線で示されており、反射率を示す特性線Q2は実線で示されており、透過率と反射率を加算した結果を示す特性線Q3は点線で示されている。
【0113】
図2(A)に示されるように、反射率は、波長に応じて、かなり大きく変動する。一方、透過率は、6μm以上の波長域では、ほとんどゼロに近くなる。
【0114】
ここで、波長4μmの光に対する透過率と反射率に着目する。透過率0.2(つまり20%)であり、反射率は0.5(つまり50%)である。また、波長12μmの光に対する透過率と反射率に着目する。透過率はほぼ0(0%)であり、反射率は0.43(43%)程度である。
【0115】
このような分光特性を考慮すると、例えば、上述の第1波長λ1を4μmに設定し、第2波長λ2を12μmに設定することができる。この場合、第1光吸収膜270の膜厚は例えば3μmとすればよく、また、第2光吸収膜272の膜厚は例えば1μmとすればよい。
【0116】
図2(A)に示される分光特性を有するアルミナを、熱伝達部材260の材料として使用した場合、入射光に含まれる第1波長λ1(=4μm)の波長をもつ光の50%程度は、アルミナで構成される熱伝達部材260で反射し、また、入射光に含まれる第1波長λ1(=4μm)の波長をもつ光の20%程度は、熱伝達部材260を透過する。
【0117】
熱伝達部材260を透過した波長λ1の光は、支持部材(メンブレン)215に到達し、その表面で反射して、再び、第2光吸収層272に向かって上昇し、その上昇する光の一部は、第2光吸収層272の上面(大気と第1光吸収層272の界面)にて反射して、再び、下方に向かう。このようにして、第1光共振器において波長λ1における共振を生じさせることができる。
【0118】
また、入射光に含まれる波長λ2(=12μm)の光の43%程度は、熱伝達部材260で反射し(透過光はほとんど生じない)、反射した光は、第2光吸収層272内を上昇し、その上昇する光の一部は、第2光吸収層272の上面(大気と第2光吸収層272との界面)にて反射して、再び、下方に向かう。このようにして、第2光共振器において波長λ2における共振を生じさせることができる。
【0119】
上述したように、光共振を生じさせることによって、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272における、光の実効吸収率を高めることができる。
【0120】
また、図2(B)に示すように、熱型光検出器の検出感度を有する波長帯域を広げることができる。図2(B)は、2つの光共振器が構成される場合における、熱型光検出器の検出感度の一例を示す図である。図2(B)に示される例では、第1光共振器による共振ピークP1が波長λ1(例えばλ1=4μm)に出現し、第2光共振器による共振ピークP2が波長λ2(例えばλ2=12μm)に出現している。これらのピーク特性が合成されることによって、熱型光検出器200の検出感度P3が広がる。つまり、広い波長域において検出感度をもつ熱型光検出器200が実現される。なお、熱伝達部材260の材料として、窒化アルミニウム(AlN)を用いた場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0121】
このように、本実施形態の熱型光検出器によれば、熱検出素子から遠い箇所で発生した熱を、熱伝達部材(熱伝達層)260の集熱部FLを経由して、熱検出素子である焦電キャパシター230に高速かつ効率的に集めることができる。また、光の波長の相互干渉を利用する(光の共振を利用する)ことによって、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272における光の実効的な吸収効率を高めることができ、また、熱型光検出器が検出感度を有する波長帯域を広げることができる。
【0122】
(熱型光検出器の製造方法について)
以下、図3〜図5を参照して、熱型光検出器の製造方法について説明する。まず、図3(A)〜図3(E)を参照する。図3(A)〜図3(E)は、熱型光検出器の製造方法における、第1光吸収層を形成するまでの主要な工程を示す図である。
【0123】
図3(A)に示される工程では、シリコン基板(トランジスター等の素子を有してもよい)を用意し、このシリコン基板10上に、絶縁層を含む構造体(例えば、多層配線構造体)100を形成する。絶縁層を含む構造体100上に、エッチングストッパー膜130aを形成し、さらに、犠牲層(例えば、SiO層)101を形成する。
【0124】
図3(B)の工程では、犠牲層101上にエッチングストッパー膜130bを形成する。次に、支持部材(メンブレン)215となる厚膜(例えば、3層の積層膜で構成される厚膜)を形成する。
【0125】
図3(C)の工程では、支持部材(メンブレン)215に、下部電極(第1電極)234、焦電材料層(PZT層)232ならびに上部電極(第2電極)236を積層形成して、熱検出素子としての焦電キャパシター230を形成する。このとき、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234を、支持部材(メンブレン)215上において延在する延在部分RXを有するように形成する。
【0126】
焦電キャパシター230の形成方法として、例えば、アトミックレイヤーCVD法を用いることができる。次に、焦電キャパシター230を覆うように絶縁層250を形成する。絶縁層250は、例えばCVD法によって形成することができる。続いて、絶縁層250をパターニングする。
【0127】
図3(E)の工程では、焦電キャパシター230を覆う絶縁層250において、第1コンタクトホール252を形成し、続いて、金属材料層を堆積し、次に、その金属材料層をパターニングすることによって、上部電極(第2電極)236に接続される電極(ならびに配線)226を形成する。なお、図3(E)の工程では、併せて、下部電極(第1電極)に接続される電極ならびに配線(不図示)も形成される。
【0128】
図3(E)の工程では、CVD法によって第1光吸収層(SiO層等)270を形成する。次に、その表面を、例えば、CMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング)によって平坦化する。
【0129】
図4(A)〜図4(C)は、熱型光検出器の製造方法における、第1光吸収層ならびに第2光吸収層をパターニングするまでの主要な工程を示す図である。図4(A)の工程では、第1光吸収層270に、第2コンタクトホール254を形成する。続いて、酸化アルミニウム(アルミナ:AlOx)や窒化アルミニウム(AlN)等の、高い熱伝導率と光透過性を有する材料を堆積し、パターニングすることによって、熱伝達部材(熱伝達層)260を形成する。熱伝達部材260は、集熱部FLおよび接続部CNを有する。第2コンタクトホール254内には、アルミナ等の材料が充填される。アルミナ等の材料が充填された部分238によって接続部CNが構成される。熱伝達部材260の集熱部FLと光反射層235とは、互いに平行に配置される。
【0130】
図4(B)の工程では、第1光吸収層270上に、第2光吸収層となる材料層(SiO層等)を堆積した後、パターニングする。これによって、第2光吸収層272が形成される。図4(C)の工程では、第1光吸収層270をパターニングする。
【0131】
図5(A)および図5(B)は、熱型光検出器の製造方法における、熱型光検出器が完成するまでの主要な工程を示す図である。図5(A)の工程では、支持部材(メンブレン)215をパターニングする。これによって、載置部210、第1アーム部212aならびに第2アーム部212bが形成される。図5(A)において、パターニングによって除去された部分(開口部)には参照符号OPを付してある。
【0132】
図5(B)の工程では、例えば、ウエットエッチングによって犠牲層101を選択的に除去する。これによって、空洞部(熱分離空洞部)102が形成される。支持部材215の載置部210は、空洞部102によって、基部(基板10、絶縁層を含む構造体100ならびにエッチングストッパー膜130aからなる)から分離される。したがって、支持部材215を経由した放熱が抑制される。このようにして、熱型光検出器が完成する。
【0133】
(第2の実施形態)
図6は、熱型光検出器の他の例を示す図である。図6に示される熱型光検出器200では、一つの熱検出素子毎に空洞部102が形成され、支持部材(メンブレン)215は、空洞部102の周囲の構造体(基部の一部)によって支持される。また、基板の、平面視で、熱検出素子に重なる領域には、回路構成要素(ここではMOSトランジスター)が形成されており、このMOSトランジスターは、多層配線を経由して、熱検出素子である焦電キャパシター230に接続される。また、図6の例では、熱伝達部材260が、配線としても利用されている。
【0134】
すなわち、基板(シリコン基板)10には、ソース層(S)ならびにドレイン(D)層が形成され、また、基板10上に、ゲート絶縁膜INSとゲート電極(例えばポリシリコンゲート電極)Gが形成されており、これらによって、回路構成要素であるMOSトランジスターが形成されている。
【0135】
基板10上には、絶縁層を含む構造体100が形成されている。基板10ならびに絶縁層を含む構造体100によって基部(ベース)が構成される。
【0136】
絶縁層を含む構造体100は、多層構造体で構成され、より具体的には、多層配線構造体で構成される。多層配線構造体は、第1絶縁層100aと、第2絶縁層100bと、第3絶縁層100cと、第1コンタクトプラグCP1と、第1層目配線M1と、第2コンタクトプラグCP2と、第2層目配線M2と、第3コンタクトプラグCP3と、を含む。第3絶縁層100cの一部が、選択的に除去されることによって、空洞部(熱分離空洞部)102が形成される。
【0137】
支持部材(メンブレン)215の載置部210上には、熱検出素子としての焦電キャパシター230が形成されている。また、熱伝達部材260は、第1光吸収層270と第2光吸収層272とによって挟まれて形成されている。
【0138】
支持部材(メンブレン)215と、焦電キャパシター230と、第1光吸収層270と第2光吸収層272と、熱伝達部材260と、第4コンタクトプラグCP4と、第3層目配線M3と、第5コンタクトプラグCP5と、によって素子構造体160が構成される。上述したとおり、熱伝達部材260は、熱検出素子である焦電キャパシター230を他の素子(ここでは、基板10に形成されたCMOSトランジスター)に接続する配線の一部を兼ねている。
【0139】
すなわち、熱伝達部材260は、上述のとおり、例えば、AlNやAlOx等の金属化合物で構成することができるが、金属を主成分とする材料は電気伝導も良好であることから、熱伝達部材260は、熱検出素子を他の素子に接続する配線(配線の一部を含む)としても利用することが可能である。熱伝達部材260を、配線としても利用することによって、配線を別途、設ける必要がなくなり、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0140】
(第3実施形態)
図7は、熱型光検出装置(熱型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。図7の例では、複数の光検出セル(すなわち、熱型光検出器200a〜200d等)が、2次元的に配置されている。複数の光検出セル(熱型光検出器200a〜200d等)の中から一つの光検出セルを選択するために、走査線(W1a,W1b等)と、データ線(D1a,D1b等)が設けられている。
【0141】
第1の光検出セルとしての熱型光検出器200aは、熱形光検出素子5としての圧電コンデンサーZCと、素子選択トランジスターM1aと、を有する。圧電コンデンサーZCの両極の電位関係は、PDr1に印加する電位を切り換えることによって反転することができる(この電位反転によって、機械的なチョッパーを設ける必要がなくなる)。なお、他の光検出セルも同様の構成である。
【0142】
データ線D1aの電位は、リセットトランジスターM2をオンすることによって初期化することができる。検出信号の読み出し時には、読み出しトランジスターM3がオンする。焦電効果によって生じる電流は、I/V変換回路510によって電圧に変換され、アンプ600によって増幅され、A/D変換器700によってデジタルデータに変換される。
【0143】
本実施形態では、複数の熱型光検出器が2次元的に配置された(例えば、直交2軸(X軸およびY軸)の各々に沿ってアレイ状に配置された)、熱型光検出装置(熱型光アレイセンサー)が実現される。
【0144】
(第4実施形態)
図8は、電子機器の構成の一例を示す図である。電子機器としては、例えば、赤外線センサー装置、サーモグラフィー装置、車載用夜間カメラや監視カメラ等が挙げられる。
【0145】
図8に示されるように、電子機器は、光学系400と、センサーデバイス410(前掲の実施形態における熱型光検出器200に相当する)と、画像処理部420と、処理部430と、記憶部440と、操作部450と、表示部460と、を含む。なお本実施形態の電子機器は図8の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0146】
光学系400は、例えば1または複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス410への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
【0147】
センサーデバイス410は、上述した本実施形態の光検出器を二次元配列させて構成され、複数の行線(走査線(あるいはワード線))と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス410は、二次元配列された光検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して光検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各光検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
【0148】
画像処理部420は、センサーデバイス410からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。画像処理部420は、センサーデバイス410(熱型光検出器200)の出力を処理する制御部に相当する。処理部430は、電子機器の全体の制御や電子機器内の各ブロックの制御を行う。この処理部430は、例えばCPU等により実現される。記憶部440は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部430や画像処理部420のワーク領域として機能する。操作部450は、ユーザが電子機器を操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。
【0149】
表示部460は、例えばセンサーデバイス410により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
【0150】
このように、1セル分の熱型光検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の熱型光検出器を直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス(熱型光検出装置)410を構成することができ、こうすると熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス410を用いて、サーモグラフィー、車載用の夜間視認カメラあるいは監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
【0151】
先に説明したように、本発明にかかる熱型光検出器は、光の検出感度が高い。よって、この熱型光検出器を搭載する電子機器の性能が高まる。
【0152】
図9は、電子機器の構成の他の例を示す図である。図9の電子機器800は、熱型光検出器200と、加速度検出素子503と、を搭載したセンサーユニット600を有する。センサーユニット600には、さらにジャイロセンサー等を搭載することもできる。センサーユニット600によって、異なる種類の物理量を測定することが可能である。センサーユニット600から出力される各検出信号は、CPU700によって処理される。CPU700は、熱型光検出器200の出力を処理する制御部に相当する。
【0153】
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、熱型光検出器の検出感度を、格段に向上させることができる。
【0154】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【0155】
また、上述の実施形態では、熱検出素子として、焦電キャパシターが用いられているが、これに代えて、サーモパイル素子やボロメータ素子を用いることもできる。
【符号の説明】
【0156】
10 基板(例えばシリコン基板)、
100 絶縁層を含む構造体(例えば、少なくとも1層の層間絶縁層を含む多層構造体)、102 空洞部(熱分離空洞部)、
104a,104b 第1ポストならびに第2ポスト、
130a〜130d エッチングストッパー膜
200 熱型光検出器、210 支持部材の載置部、
212(212a,212b) 支持部材のアーム部(第1アーム部,第2アーム部)、215 支持部材(メンブレン)、
229a,229b 配線(アーム部上に形成される配線)、
226 電極(配線)、
228 熱伝達部材を構成する材料の、第2コンタクトホールに充填されている部分、
230 熱検出素子としての焦電キャパシター、
232 焦電材料層(PZT層等)、
232a,232b アーム部の端部、
234 下部電極(第1電極)、
RX 下部電極(第1電極)の延在部分(張り出し部分あるいは拡張部分)、
236 上部電極(第2電極)、250 絶縁層、
252、254 第1コンタクトホールおよび第2コンタクトホール、
260 熱伝達部材、
270 第1光吸収層、272 第2光吸収層、
FL 熱伝達部材の集熱部、CN 熱伝達部材の接続部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に対して空洞部を介して支持される支持部材と、
前記支持部材上に形成され、下部電極と上部電極によって焦電材料層を挟んだ構造を有する熱検出素子と、
前記熱検出素子上に形成されている光吸収層と、
前記熱検出素子と接続部によって接続され、平面視で前記接続部よりも広い面積を有し、少なくとも一部の波長域の光に対して光透過性を有し、かつ前記光吸収層の内部に形成されている集熱部を備える熱伝達部材と、を含み、
前記下部電極は、平面視で、前記焦電材料層の周囲に延在する延在部分を有し、前記延在部分は、前記熱伝達部材の前記集熱部を透過した光のうちの少なくとも一部を反射する光反射特性を有することを特徴とする熱型光検出器。
【請求項2】
請求項1記載の熱型光検出器であって、
前記光吸収層は、前記支持部材上であって前記熱検出素子の周囲に形成されていることを特徴とする熱型光検出器。
【請求項3】
請求項2記載の熱型光検出器であって、
前記光吸収層は、
前記熱伝達部材と前記熱検出素子の前記下部電極における前記延在部分との間において、前記熱伝達部材に接して形成されている第1光吸収層と、
前記熱伝達部材上において、前記熱伝達部材と接して形成されている第2光吸収層と、を有することを特徴とする熱型光検出器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱型光検出器であって、
前記下部電極の延在部分の表面と前記第2光吸収層の上面との間で、第1波長に対する第1光共振器が構成されており、
前記第2光吸収層の下面と、前記第2光吸収層の上面との間で、前記第1の波長とは異なる第2の波長に対する第2光共振器が構成されていることを特徴とする熱型光検出器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱型光検出器であって、
前記熱伝達部材は、前記熱検出素子を他の素子に接続する配線を兼ねることを特徴とする熱型光検出器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱型光検出器が複数、2次元配置されていることを特徴とする熱型光検出装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱型光検出器と、前記熱型光検出器の出力を処理する制御部と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
基板の主面上に絶縁層を含む構造体を形成し、前記絶縁層を含む構造体上に犠牲層を形成し、前記犠牲層上に支持部材を形成する工程と、
前記支持部材上に、下部電極と上部電極によって焦電材料層を挟んだ構造を有し、かつ、前記下部電極が、平面視で、前記焦電材料層の周囲に延在する延在部分を有すると共に、前記延在部分が、到来する光を反射する光反射特性を有する熱検出素子を形成する工程と、
前記熱検出素子を覆うように第1光吸収層を形成し、前記第1光吸収層を平坦化する工程と、
前記第1光吸収層の一部にコンタクトホールを形成した後、熱伝導性と、少なくとも一部の波長域の光に対する光透過性とを有する材料層を形成し、前記材料層をパターニングすることによって、前記熱検出素子に接続する接続部と、平面視で前記接続部よりも広い面積を有する集熱部とを備える熱伝達部材を形成する工程と、
前記第1光吸収層上に第2光吸収層を形成する工程と、
前記第1光吸収層および前記第2光吸収層をパターニングする工程と、
前記支持部材をパターニングする工程と、
前記犠牲層をエッチングにより除去して、前記基板の主面上に形成された絶縁層を含む構造体と、前記支持部材との間に空洞部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする熱型光検出器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−137366(P2012−137366A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289492(P2010−289492)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】