説明

燃料タンクの排気弁装置

【課題】燃料タンクの排気弁装置において、装置の大型化を招くことなく、ガスを円滑に流通させる。
【解決手段】連通孔36を有する隔壁35によって内部が上部室41と下部室42とに区画されたケーシング2、3、4と、フロート弁5とを有する燃料タンクの排気弁装置1であって、ケーシングの上部室を画成する部分は、排気ポート20が形成された円筒部11と円筒部の上端を閉塞する円板12とを有し、連通孔36の上部室側の周囲には、筒体37が設けられ、筒体の排気ポート側と相反する側の側壁に、第1通気孔43が形成され、円筒部の内周面と円板の下面との境界部には、円筒部の内周面と円板の下面とを滑らかに連続させる曲面状の隅部13が延設され、隅部の曲率は、排気孔が形成された側と相反する側において最も小さく、周方向に排気孔が形成された側へと進むにつれて漸増することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの排気弁装置に係り、詳しくは燃料タンク内の燃料の液位に応じて排気通路を閉塞する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクの上壁に貫通孔を形成し、その貫通孔に排気弁装置を取り付けたものがある(例えば、特許文献1)。排気弁装置は、内部に液体燃料の液位に応じて上下動するフロート弁を備えている。フロート弁は、燃料の液位が低い通常時には、排気弁装置内において下方に位置し、通路を開く。これにより、排気弁装置を通って、燃料タンク内のガス(空気及び燃料蒸気を含む)がタンク外に設けられたキャニスタへと流出可能となる。一方、燃料の液位が高い場合には、フロート弁が燃料から浮力を受けて排気弁装置内を上昇し、通路を閉塞する。これにより、液体燃料が排気弁装置を通過して外部に漏出することが抑制される。
【0003】
燃料タンク内の液位が急激に上昇した場合や、液面に気泡が多く、液体燃料が吹き上がった場合には、フロート弁が上昇して通路を閉塞するよりも先に液体燃料が通路を通過する問題がある。この問題に対して、特許文献1に係る発明では、通路のフロート弁によって閉塞される部分よりも下流側(燃料タンクの外部側)部分に、液体燃料の流動を阻止する障壁を設けている。具体的には、特許文献1に係る排気弁装置は、上下方向に延在する円筒形状をなし、その内部の通路は、隔壁によって上部室及び下部室に区画されている。上部室の側部には外部と連通する排気ポートが設けられている。隔壁の中央には、上部室と下部室とを連通する貫通孔が形成されている。貫通孔の上部室側の孔縁部には、排気ポート側と相反する側を残して、円筒状の障壁が貫通孔を囲むように突設されている。これにより、貫通孔を通過した液体燃料は、障壁によって阻害され、排気ポートに直接に流れないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−333136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、障壁を設けることによって、気体の燃料の流通も阻害されるという問題がある。給油時において、燃料タンク内の気体が排気弁装置を通過して円滑に排出されない場合には、液体燃料を円滑にタンク内に流入させることができない。上部室内の体積を増大させることによって、ガスの流路断面積を増大させ、障壁による影響を小さくすることができるが、装置が大型化するため好ましくない。
【0006】
本発明は、以上の背景を鑑みてなされたものであって、燃料タンクの排気弁装置において、装置の大型化を招くことなく、ガスを円滑に流通させる一方、液体燃料の漏出を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、燃料タンク(100)の上壁(101)を貫通するように設けられ、貫通孔(36)を有する隔壁(35)によって内部が上部室(41)と下部室(42)とに区画されたケーシング(2、3、4)と、前記下部室と前記燃料タンクの内部とを連通する流入孔(54)と、前記上部室の側部と前記燃料タンクの外部とを連通する排気孔(20)と、前記下部室に変位可能に支持され、前記流入孔を通過して前記下部室に流入する燃料から浮力を受けて上昇し、前記貫通孔を閉塞するフロート弁(5)とを有する燃料タンクの排気弁装置(1)であって、前記ケーシングの前記上部室を画成する部分は、円筒部(11)と前記円筒部の上端を閉塞する円板(12)とを有し、前記排気孔は前記円筒部に形成され、前記隔壁の前記上部室側には、前記貫通孔を覆うように上部が閉塞された筒体(37)が前記円筒部と概ね同軸に設けられ、前記筒体と前記隔壁との間にバッファ室(38)が画成され、前記バッファ室は、前記貫通孔によって前記下部室と連通し、前記筒体の前記排気孔側と相反する側の側壁に、前記バッファ室と前記上部室とを連通する第1通気孔(43)が形成され、前記円筒部の内周面と前記円板の下面との境界部には、前記円筒部の内周面と前記円板の下面とを滑らかに連続させる曲面状の隅部(13)が延設され、前記隅部の曲率は、前記排気孔が形成された側と相反する側において最も小さく、周方向に前記排気孔が形成された側へと進むにつれて漸増することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1通気孔に対向する部分の隅部の曲率を小さくしたため、第1通気孔を通過して上部室に流入したガスが隅部に沿って円滑に流れ易くなる。すなわち、隅部の第1通気孔に対向する部分で、ガスの流れが阻害され難くなると共に滞留し難く、圧力低下が抑制される。また、隅部の曲率は、排気ポートと相反する側(第1通気孔に対向する側)において小さくし、排気ポート側において大きくしたため、上部室の容積の低減を抑制してガスの流路断面積を確保することができる。
【0009】
本発明の他の側面は、前記筒体の前記排気孔側の前記側壁に、前記第1通気孔よりも開口面積が小さい第2通気孔(44)が形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1通気孔に加え、第2通気孔を通過してガスが流れるため、ガスの圧力損失を低減することができる。また、第2通気孔は第1通気孔に比べて開口面積が小さいため、ガスは主として第1通気孔から流れ、第2通気孔からは補助的に流れる。
【0011】
本発明の他の側面は、前記隔壁の前記上部室側部分であって、前記第2通気孔と前記排気孔との間に位置する部分には、前記第2通気孔に対向するバッフル壁(46)が突設されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、液体燃料の第2通気孔から排気孔への流れをバッフル壁によって抑制することができる。
【0013】
本発明の他の側面は、前記隔壁の前記上部室側の部分は、前記貫通孔が設けられた部分が前記下部室側に凹んだ円錐面状に形成されている。
【0014】
この構成によれば、意図せず上部室に流入した液体燃料を、貫通孔側へと導いて下部室へと戻すことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成によれば、燃料タンクの排気弁装置において、装置の大型化を招くことなく、ガスを円滑に流通させる一方、液体燃料の漏出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】燃料タンクの排気弁装置の斜視図
【図2】燃料タンクの排気弁装置の平面図
【図3】図2のIII−III断面図であって、開弁状態を示す
【図4】図2のIV−IV断面図であって、閉弁状態を示す
【図5】第1ケーシングの斜視図
【図6】第2ケーシングの斜視図
【図7】第3ケーシングの斜視図
【図8】第3ケーシングの平面図
【図9】図8のIX−IX断面図
【図10】(A)上部室の平断面を示す模式図、(B)(A)のB−B断面図、(C)(A)のC−C断面図、(D)(A)のD−D断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を自動車の燃料タンクに使用される排気弁装置に適用した実施形態について詳細に説明する。図に示す座標に基づいて上下方向(鉛直方向)を定める。
【0018】
図1に示すように、実施形態に係る排気弁装置1は、第1ケーシング2、第2ケーシング3、第3ケーシング4及びフロート弁5を組み合わせて構成されている。
【0019】
第1ケーシング2は、熱溶着が可能な第1樹脂と、炭化水素難透過性の第2樹脂とを二色成形法によって一体的に成形したものである。第1樹脂は、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)であり、第2材料は、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体である。図2〜5に示すように、第1ケーシング2は、軸線が上下方向に延びる円筒部11を有している。円筒部11は、円筒部11の軸線に対して直交する円板12によって上端が閉塞されている一方、下端が開口している。円筒部11の内周面と円板12の下面との境界には、境界に沿って隅部13が延設されている。隅部13の内面は、円筒部11の内周面と円板12の下面とを滑らかに連続する曲面となっている。図3及び4に示すように、隅部13の断面における内面の形状は、90°の円弧となっている。隅部13の曲率は、円筒部11の周方向において変化する。隅部13の上縁は、円板12の下面との境界であり、円筒部11の周方向における各部位で、円筒部11の軸線方向における位置が一定している。一方、隅部13の下縁(すなわち、隅部13と円筒部11との境界)14は、円筒部11の周方向における各部位で、円筒部11の軸線方向における位置が変化している。円筒部11の外周面と円板12と上面との境界は、面取りがなされた曲面となっている。
【0020】
円筒部11の外周面の長手方向における中間部には、径方向外方に突出する円形状のフランジ15が形成されている。フランジ15の周縁部には、下方に向けて壁部16が突設されている。壁部16は、フランジ15の周縁部に沿って環状に形成されており、その下端は下方を向く平面である接合面17となっている。
【0021】
円筒部11のフランジ15よりも上方の部分には、径方向外方へと突設された円管状の排気管18が設けられている。排気管18の内孔が形成する排気ポート20の基端は円筒部11の内部に連通している。本実施形態では、排気ポート20の基端の上縁は、円筒部11の上端、すなわち隅部13の下縁14よりも下方に偏倚した位置に配置されている。なお、他の実施形態では排気ポート20の基端の縁部が隅部13の下縁14を跨いでいてもよい。排気管18の基端の下部は、フランジ15の上面に連続している。排気管18の先端の外周面には、ホース又はホースカプラと結合するための突起が複数形成されている。
【0022】
図3、4及び10に示すように、隅部13は、周方向において、排気ポート20と相反する側において曲率が最も小さく(曲率半径が大きく)、周方向に沿って排気ポート側に進むほど曲率が漸増するように形成されている。図10に示すように、隅部13の排気ポート20と相反する側の曲率半径はR3で、排気ポート20側に進むにつれて、曲率半径はR2、R1へと漸減している(R3>R2>R1)。そのため、隅部13の下縁14は、排気ポート20と相反する側から排気ポート20側に進むにつれて上方へと変位している。
【0023】
円筒部11のフランジ15よりも下方の部分の外周面には、第1ケーシング側係止爪19が複数突設されている。第1ケーシング側係止爪19は、下端から上方に向うにつれて径方向外方に突出する傾斜面と、傾斜面の上端に連続した上方を向く逆止面とを有する。本実施形態では、第1ケーシング側係止爪19は円筒部11の周方向に90°間隔で4つ設けられている。また、円筒部11には下端から上方へと延びるスリット21が適所に形成されている。スリット21は、排気弁装置1を構成する各部材が燃料によって膨潤した際に、応力を逃がす効果を奏する。また、円筒部11の外周面には上下方向に延在するガイドリブ22が適所に突設されている。
【0024】
第1樹脂は、円筒部11の上部の外周部、円板12の上面部、排気管18の外周部、フランジ15及び壁部16(図3及び4の符号Aで示すハッチング部)を一体に形成している。第2樹脂は、円筒部11の上部の内周部、円筒部11の下部、円板12の下面部、排気管18の内周部及びフランジ15の基端の下面部(図3及び4の符号Bで示すハッチング部)を一体に形成している。
【0025】
図3、4及び6に示すように、第2ケーシング3は、円筒部25を有している。円筒部25は、第1ケーシング2の円筒部11に嵌合可能な大きさに形成されており、その上半部が円筒部11に嵌合される。これにより、第2ケーシング3の円筒部25は、第1ケーシング2の円筒部11と同軸に配置され、軸線が上下方向に延在している。円筒部25の外周面には周方向に延在するOリング溝26が形成され、Oリング溝26には可撓性を有するOリング27が嵌め付けられている。Oリング27は、円筒部25の外周面と、円筒部11の内周面の隙間をシールする。
【0026】
円筒部25の長手方向における中間部の外周面には、複数の係止突片30が突設されている。本実施形態では、係止突片30は、円筒部25の外周面に、周方向に等間隔で4つ設けられている。係止突片30は、円筒部25の外周面から径方向外方に突出した基部31と、基部31の先端から上方へと延出する周壁部32とを備えたL字形の薄片である。周壁部32は、円筒部25の外周面と一定の距離をおいて対向するように円筒部25の周方向に湾曲し、その外面は円周面となっている。係止突片30は、薄片状に形成されているため、可撓性を有し周壁部32が円筒部25の外周面に対して近接、離間が可能となっている。
【0027】
周壁部32には、厚み方向(円筒部25の径方向)に貫通する第2ケーシング側係止孔33が形成されている。本実施形態では、第2ケーシング側係止孔33は、基部31にも延在し、孔縁が円筒部25の外周面まで到達している。各係止突片30は、周壁部32が第1ケーシング2の円筒部11の外周面及び第1ケーシング側係止爪19上に延出し、第2ケーシング側係止孔33に第1ケーシング側係止爪19が係止される。このとき、係止突片30の基部31は、円筒部11の下端面に当接する。このようにして、第2ケーシング3は第1ケーシング2に対して結合されている。また、図6に示すように、隣り合う係止突片30の間には間隙34が形成されており、この間隙34に第1ケーシング2のガイドリブ22が突入することによって、第1ケーシング2と第2ケーシング3との相対回転位置が定められる。
【0028】
円筒部25の上端には、隔壁35が設けられている。隔壁35は、中央部が下方(円筒部25の内方)に突出した円錐面状に形成され、中央部に厚み方向に貫通する連通孔36を有している。隔壁35の上面の中央部には、連通孔36を囲むように、円筒体37が突設されている。円筒体37は、軸線が上下方向に延在し、上端が閉塞され、内部にバッファ室38を形成している。図3及び4に示すように、第1ケーシング2及び第2ケーシング3の内部空間であって、隔壁35の上方に位置し、バッファ室38を除く空間を上部室41、隔壁35の下方に位置する空間を下部室42とする。
【0029】
円筒体37は、排気管18と略同一の上下方向位置に配置されている。円筒体37の基部(下部)であって、周方向において排気ポート20側と相反する側には径方向に貫通する第1通気孔43が形成され、周方向において排気ポート20側を向く側には径方向に貫通する第2通気孔44が形成されている。本実施形態では、円筒体37の構造強度を維持するために、第1通気孔43及び第2通気孔44をそれぞれ2分するように、第1通気孔43及び第2通気孔44内に上下方向に延在する支柱が掛け渡されている。第1通気孔43及び第2通気孔44は周方向における幅が略同一であるが、第1通気孔43は第2通気孔44よりも上方に延出し、開口面積が大きく形成されている。なお、他の実施形態では、第2通気孔44は省略してもよい。
【0030】
図3、4及び6に示すように、隔壁35の上面には、複数のリブ45が放射状に延設されている。リブ45は、隔壁35を補強すると共に、隔壁35の上面に存在する液体(燃料)の小滴を寄せ集めて大滴とし、連通孔36に導く機能を有する。また、隔壁35の上面であって、第2通気孔44と排気ポート20との間の部分には、バッフル壁46が第2通気孔44と対向するように上方へと向けて突設されている。隔壁35の上面であって、バッフル壁46と排気管18との間の部分には、切り欠き47が形成されている。切り欠き47は、滑らかな曲面を形成し、排気ポート20に滑らかに連通する通路の一部を形成している。
【0031】
円筒部25の外周面であって、係止突片30よりも下方の部分には、第2ケーシング側係止爪48が突設されている。第2ケーシング側係止爪48は、下端から上方に向うにつれて径方向外方に突出する傾斜面と、傾斜面の上端に連続した上方を向く逆止面とを有する。本実施形態では、第2ケーシング側係止爪48は円筒部25の周方向に90°間隔で4つ設けられている。円筒部25の内周面には、径方向に突出すると共に、長手方向に延在するリブ49が複数形成されている。
【0032】
図3、4、7、8及び9に示すように、第3ケーシング4は、上下両端が開口した円筒形をなし、上端から順に、リング部51、テーパ部52、中間部53、スカート部54を有する。中間部53は、径が一定の円筒であり、第2ケーシング3の円筒部25が、内部にがた付きなく嵌合する大きさに形成されている。テーパ部52は、中間部53の上端縁から上方に向うにつれて、外径及び内径がテーパ状に拡径された円錐台形状をなす。リング部51は、テーパ部52の上端に連続した径が一定の円筒である。リング部51の径は、テーパ部52の上端の径よりも大きく、リング部51とテーパ部52との境界には段部55が形成されている。リング部51の内径は、第2ケーシング3の各係止突片30の周壁部32の外面に当接可能な大きさに形成されている。スカート部54は、中間部53の下端縁に連続し、下方へと延在した径が一定の円筒である。スカート部54は、液体やガスの流入孔として機能する。スカート部54の径は、中間部53の径よりも小さく形成されており、スカート部54と中間部53との境界には段部56、57が形成されている。なお、他の実施形態では、リング部51の径とテーパ部52の上端の径とを同一にして段部55を省略してもよく、スカート部54の径と中間部53の径とを同一にして段部56、57を省略してもよい。
【0033】
中間部53の第2ケーシング側係止爪48に対応する部分には、厚み方向(径方向)に貫通する第3ケーシング側係止孔58が形成されている。本実施形態では、第3ケーシング側係止孔58は、中間部53の周方向に90°間隔で4つ設けられている。各第3ケーシング側係止孔58には、第2ケーシング側係止爪48が突入し、それぞれ係止される。中間部53の、隣り合う2つの第3ケーシング側係止孔58の間には、厚み方向に貫通すると共に、長手方向(上下方向)に延びる長孔(切り込み)59が形成されている。長孔59の上端は、テーパ部52内に延在している。しかし、長孔59は、第3ケーシング4の上端縁までは到達していない。本実施形態のように、長孔59の上端は、テーパ部52の上端に配置され、リング部51には形成されていないことが好ましい。長孔59の下端は、中間部53の長手方向において第3ケーシング側係止孔58の下縁まで延びていることが好ましく、第3ケーシング側係止孔58の下縁を越えて下方へと延びていてもよい。本実施形態では、長孔59は2つ形成され、第3ケーシング4の周方向に互いに対称となる位置に配置されている。
【0034】
段部56、57及びスカート部54の外周面上には、中間部53の下縁から段部56、57を通過してスカート部54の外周面上へと延びる補強リブ60が突設されている。補強リブ60は、少なくとも周方向において長孔59と対応する位置に配置されている。
【0035】
図3及び8に示すように、中間部53及びスカート部54の内周面側の境界部には、径方向内方へと突出するフロート支持片61が突設されている。図8に示すように、フロート支持片61は、中間部53及びスカート部54の内周面から径方向に延びる複数の梁部62と、複数の梁部62の突出端同士を連結する環状梁部63とを有している。
【0036】
第2ケーシング3と第3ケーシング4との結合は、第1ケーシング2が組み付けられた第2ケーシング3の円筒部25の下端部を第3ケーシング4の上端部(リング部51)側から挿入することによって行う。第2ケーシング3を第3ケーシング4に挿入する際には、リング部51及びテーパ部52が中間部53に対して内径が拡径されているため、第2ケーシング側係止爪48は、リング部51及びテーパ部52に接触しないようになっている。そのため、第2ケーシング3の第3ケーシング4に対する挿入抵抗が小さくなる。また、中間部53及びテーパ部52は、長孔59によって剛性が低下し、撓み易くなっているため、第2ケーシング側係止爪48が中間部53を横切って第3ケーシング側係止孔58に到達するまでの間の挿入抵抗が小さくなっている。特に、テーパ部52と中間部53との境界には角稜部が形成され、撓み難くなっているため、長孔59を形成することで挿入抵抗を任意に低下させることができ、挿入操作を容易にすることができる。他の実施形態では、長孔59の個数、第3ケーシング4の周方向における幅、第3ケーシング4の長手方向における長さを変化させ、第2ケーシング3の第3ケーシング4に対する挿入抵抗を任意に調整してもよい。第2ケーシング3の円筒部25の下端部が、第3ケーシング4の段部56の内面側に当接することによって、第2ケーシング3の第3ケーシング4に対する挿入位置が規制される。
【0037】
第2ケーシング側係止爪48が第3ケーシング側係止孔58に係止された状態では、リング部51の内周面は4つの係止突片30の外面に当接し、第1ケーシング2の円筒部11の外周面との間に係止突片30を挟持する。これにより、係止突片30の撓みが規制され、第2ケーシング側係止孔33への第1ケーシング側係止爪19の係止が解除され難くなる。リング部51は、環状に形成されると共に下縁に段部55を有するため変形し難く、係止突片30の撓みを確実に抑制することができる。
【0038】
図3及び4に示すように、第2ケーシング3の円筒部25及び隔壁35と、第3ケーシング4のフロート支持片61とによって囲まれた空間(下部室42)に、フロート弁5が収容される。フロート弁5は、フロート体71と、受座72と、弁体73とを組み合わせて構成されている。フロート体71は、上下方向に延在する円筒部75と、円筒部の上端部を閉塞する天板76と、天板76から上方へと突設されると共に、上端が径方向に延出した拡頭部77とを有している。天板76及び拡頭部77には、それぞれを上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)が形成されている。
【0039】
受座72は、円板状をなし、その周縁部に係止爪を有している。受座72は、その係止爪が拡頭部77に遊びをもって係止され、拡頭部77の上面に傾倒可能(変位可能)に支持されている。弁体73は、円板状をなし、その中央部に可撓性を有するパッキン81を有し、その周縁部に係止爪を有している。弁体73は、その係止爪が拡頭部77に遊びをもって係止され、受座72の上面に傾倒可能(変位可能)に支持されている。これにより、弁体73は受座72を介してフロート体71の上端に傾倒可能に支持されている。
【0040】
フロート弁5は、下部室42に上下動可能に収容されている。フロート弁5は、フロート体71の外周面が第2ケーシング3の円筒部25の内周面に突設された複数のリブ49の突出端に摺接することによって、下部室42内で姿勢が維持されている。また、フロート体71がリブ49と摺接することによって、フロート弁5と円筒部25の内周面との間に空隙が形成される。フロート弁5が、下部室42を上方に移動した際には、弁体73がパッキン81を介して隔壁35の連通孔36の周縁部に当接し、連通孔36を閉塞する。
【0041】
フロート体71の天板76の下面と、フロート支持片61との間には圧縮コイルばね83が介装されている。圧縮コイルばね83は、フロート弁5を上方、すなわち隔壁35側に付勢している。なお、圧縮コイルばね83の付勢力は、フロート弁5に燃料の浮力が作用していない状態において、フロート弁5を隔壁35に到達させることがない強さに設定されている。
【0042】
第2ケーシング3、第3ケーシング4及びフロート弁5のフロート体71、受座72、弁体73は、樹脂を射出成形したものであり、樹脂は例えばポリアセタールであってよい。
【0043】
以上のように構成した排気弁装置1は、図3に示すように、燃料タンク100の上壁101に内部と外部を連通するように形成された取付孔102に挿入され、結合される。排気弁装置1は、第1ケーシングのフランジ15の接合面17において取付孔102の周縁部に結合される。接合面17と上壁101との結合は、熱溶着や振動溶着、接着剤による接着等によって行われる。排気弁装置1が燃料タンク100に取り付けられた状態で、第3ケーシング4のスカート部54は燃料タンク100内に配置され、排気管18の開口端は燃料タンク100の外部に配置される。排気管18には、キャニスタに接続された接続管(接続ホース)が接続され、排気ポート20とがキャニスタとが互いに連通する。
【0044】
次に、排気弁装置1の作用について説明する。燃料タンク100内の液体燃料(ガソリンや軽油等)の液位が高く、液体燃料がスカート部54を通過して下部室42内に進入した場合には、図4に示すように、フロート弁5は、燃料による浮力と圧縮コイルばね83の付勢力とを受けて下部室42内を上方に移動し、連通孔36を閉塞する(排気弁装置1の閉弁状態)。この状態では、燃料タンク100内のガス(空気及び燃料蒸気を含む)及び液体燃料は燃料タンク100の外部へと流通することができない。このように、排気弁装置1は、燃料タンク100内の燃料の液位が高い場合には、連通孔36を閉塞して液体燃料が燃料タンク外に流出することを防止する。
【0045】
液体燃料の液位の上昇が速く、フロート弁5が連通孔36を閉塞するよりも先に、液体燃料やその中に含まれる気泡が吹き上がり、連通孔36を通過する場合には、連通孔36を通過した液体燃料や気泡はバッファ室38に大部分がトラップされる。液体燃料や気泡がバッファ室38から流出する場合にも、第2通気孔44より第1通気孔43の方が開口面積が大きいため、液体燃料や気泡は第1通気孔43側から上部室41内に流出する。すなわち、排気ポート20側とは相反する側に、液体燃料等が導かれるため、液体燃料等が排気ポート20を通過して外部に流出する虞が低減される。また、液体燃料等が第2通気孔44を通過しても、バッフル壁46が液体燃料等の排気ポート20への流れを阻害するため、外部への流出が抑制される。
【0046】
燃料タンク100内の液体燃料の液位が低く、フロート弁5に液体燃料による浮力が生じていない場合には、図3に示すように、フロート弁5は下部室42内の下方に位置し、フロート支持片61に支持された状態となる(排気弁装置1の開弁状態)。この状態では、燃料タンク100のガスは、スカート部54から排気弁装置1内に進入し、下部室42、連通孔36、バッファ室38、第1通気孔43又は第2通気孔44、上部室41及び排気ポート20を順に通過して燃料タンク100の外部へと流通することができる。
【0047】
図10に示すように、本実施形態の排気弁装置1では、第1通気孔43が第2通気孔44よりも開口面積が大きいため、ガスは、大部分が第1通気孔43を通過して、上部室41の排気ポート20と相反する側に導かれる。第1通気孔43を通過して上部室41に進入したガスは、円筒部11の内周面、円板12の下面及び隅部13の表面側に流れた後、それらの面によって流れの向きを曲げられ、それらの面に沿って排気ポート20側に流れる。特に、隅部13は、周方向において排気ポート20と相反する側(第1通気孔43と対向する側)の曲率が、排気ポート20側(第2通気孔44と対向する側)の曲率よりも小さく、より滑らかな曲面を形成しているため、第1通気孔43から上部室41内に流入するガスを効率良く排気ポート20側へと導くことができる。すなわち、上部室41内でのガスの圧力損失を小さくして、ガスを円滑に流通させることできる。
【0048】
隅部13の曲率を小さくすることによって、隅部13の下縁14が下方側へと延出して上部室41の容積が減少することになるが、隅部13の排気ポート20側の部分を排気ポート20と相反する側の部分に対して曲率が大きくなるよう変化させることによって、上部室41の容積の減少を小さくすることができる。すななわ、曲率を大きくして隅部13を縮小し、上方へと後退させることによって上部室41を拡張することができる。隅部13の排気ポート20側の部分は、排気ポート20と相反する側の部分に比べてガスの流れに対する抵抗とならないため、ガスの圧力損失に与える影響が小さく、上部室41の容積を大きくし、流路断面積を大きくすることで、ガスの圧力損失をより低減することができる。
【0049】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。フロート弁5やフランジ15の構造は、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…排気弁装置、2…第1ケーシング、3…第2ケーシング、4…第3ケーシング、5…フロート弁、11…円筒部、12…円板、13…隅部、14…下縁、19…第1ケーシング側係止爪、20…排気ポート(排気孔)、25…円筒部、30…係止突片、33…第2ケーシング側係止孔、35…隔壁、36…連通孔、37…円筒体、38…バッファ室、41…上部室、42…下部室、43…第1通気孔、44…第2通気孔、46…バッフル壁、48…第2ケーシング側係止爪、51…リング部、52…テーパ部、53…中間部、54…スカート部(流入孔)、58…第3ケーシング側係止孔、59…長孔、61…フロート支持片、71…フロート体、72…受座、73…弁体、75…円筒部、81…パッキン、100…燃料タンク、101…上壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの上壁を貫通するように設けられ、貫通孔を有する隔壁によって内部が上部室と下部室とに区画されたケーシングと、
前記下部室と前記燃料タンクの内部とを連通する流入孔と、
前記上部室の側部と前記燃料タンクの外部とを連通する排気孔と、
前記下部室に変位可能に支持され、前記流入孔を通過して前記下部室に流入する燃料から浮力を受けて上昇し、前記貫通孔を閉塞するフロート弁と
を有する燃料タンクの排気弁装置であって、
前記ケーシングの前記上部室を画成する部分は、円筒部と前記円筒部の上端を閉塞する円板とを有し、
前記排気孔は前記円筒部に形成され、
前記隔壁の前記上部室側には、前記貫通孔を覆うように上部が閉塞された筒体が前記円筒部と概ね同軸に設けられ、前記筒体と前記隔壁との間にバッファ室が画成され、
前記バッファ室は、前記貫通孔によって前記下部室と連通し、
前記筒体の前記排気孔側と相反する側の側壁に、前記バッファ室と前記上部室とを連通する第1通気孔が形成され、
前記円筒部の内周面と前記円板の下面との境界部には、前記円筒部の内周面と前記円板の下面とを滑らかに連続させる曲面状の隅部が延設され、
前記隅部の曲率は、前記排気孔が形成された側と相反する側において最も小さく、周方向に前記排気孔が形成された側へと進むにつれて漸増することを特徴とする燃料タンクの排気弁装置。
【請求項2】
前記筒体の前記排気孔側の前記側壁に、前記第1通気孔よりも開口面積が小さい第2通気孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの排気弁装置。
【請求項3】
前記隔壁の前記上部室側部分であって、前記第2通気孔と前記排気孔との間に位置する部分には、前記第2通気孔に対向するバッフル壁が突設されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料タンクの排気弁装置。
【請求項4】
前記隔壁の前記上部室側の部分は、前記貫通孔が設けられた部分が前記下部室側に凹んだ円錐面状に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の燃料タンクの排気弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103561(P2013−103561A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247692(P2011−247692)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】