説明

燃料遮断弁

【課題】満タン検知の際にケーシング内に空気を含んだ燃料が侵入することを防止する。
【解決手段】底部材37に接合される開口形成部材39の下端の開口部86でもって満タン検知液位を定めることができるタイプの燃料遮断弁10において、ハウジング20を構成する下端の開口形成部材39は、内径方向で下方に突出された斜辺部84を有し、特に揺動して上昇してきた燃料が、斜辺部84の外周に直接的に当たり、また、液面に対し斜辺部84の接触面積が多いため、燃料が表面張力により斜辺部84に吸い寄せられることで開口部86を閉塞し、空気を含んだ燃料の侵入を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの上部に装着され、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を開閉することで燃料タンクと外部とを連通遮断する燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクの上部には、燃料の蒸発ガスをキャニスタへ逃がすための接続通路が設けられており、この接続通路に、燃料遮断弁が装着されている。燃料遮断弁は、弁室内に燃料液位により浮力を増減して昇降するフロートを収納しており、このフロートの上部に弁座を開閉する弁体を備えた構成が一般的である。燃料タンクの燃料液位が上昇すると、フロートが浮力を増大してフロートと一体に弁体が上昇することで接続通路が閉じて、燃料の外部への流出が防止される。
【0003】
こうした構成の燃料遮断弁は、給油時に満タンとなったことを検知するための満タン検知装置として機能する。フロートと一体に上昇する弁体が接続通路を閉じることで燃料タンクの内圧を高めて給油ガンをオートストップさせるものである。なお、この満タン検知位置は、通常はフロートの作動完了位置であるため、給油流量の変化によりその検知位置が早くなったり遅くなったりバラツキが大きかった。そこで、フロートを収納したケーシングの下方の開口端の高さでもって満タン検知位置を決めるブリーザパイプ型の燃料遮断弁が提案されている。
【0004】
従来技術(特許文献1)において、ハウジング本体の下部に上記のブリーザパイプに相当する底部材が設けられている。この底部材の下端の開口部が満タン検知位置に対応しており、燃料が満タン検知位置まで上昇すると、燃料タンク内とキャニスタへの通気が、燃料遮断弁の連通孔を除き閉ざされ、燃料タンク内の圧力が上昇する。この際に、ハウジング内に燃料が入り込み、フロートが上昇して閉弁し、フィラーパイプ内に燃料が上昇してオートストップを働かせる。
【0005】
この底部材の開口部に水平方向のフランジを設け、液面との接触面積を増やし、表面張力で、フランジと液面を接触させることで、底部材を通してハウジング内に空気を巻込んだ燃料が流入することに起因するフロートの浮力の低下を防止している。
【0006】
しかし、上記従来の燃料遮断弁では、開口部に水平にフランジが形成されているため、穏やかに流入した場合には、表面張力によりフランジと液面とが接触しやすいが、燃料給油時の燃料の流入による乱れや、燃料が開口部付近にあり車両が揺動して液面が揺れることにより、横波によって空気を含んだ燃料がハウジング内に入り込み、フロートの作動に影響を与えることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−2838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、燃料液位が満タン検知位置付近にある場合において、ケーシング内への空気を含んだ燃料の侵入を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の燃料遮断弁は、
燃料タンクの上部に装着され、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を開閉することで燃料タンクと外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記燃料タンク内と上記接続通路とを連通する弁室を形成し、上記燃料タンク内の燃料液位が所定液位に達したときに、上記弁室から上記燃料タンク内へ開く開口部を上記燃料液位でもって塞ぐことにより、上記燃料タンク内の圧力と上記弁室内の圧力との差圧を増大させるケーシングと、
上記弁室に収納され、上記弁室内の燃料液位により浮力を増減して昇降するフロートと、
上記フロートが昇降することで上記接続通路を開閉する弁体と
を備え、
上記開口形成部材は、上記開口端に装着される基部と、前記所定液位に開口部を形成するように該基部から内径方向で下方に向けて水平面に対し角度θで突出した環状の斜辺部と
を備え、
上記角度θは、0°<θ<30°であること
を特徴とする。
【0010】
上記構成の本発明の燃料遮断弁を用いた燃料タンクに燃料が供給されて燃料タンク内の燃料液位が所定液位に達すると、開口部が前記燃料液位でもって塞がれることによって、燃料タンク内の圧力が上昇して、燃料タンク内の圧力と上記弁室内の圧力との差圧が増大する。この差圧により、燃料タンク内から弁室内に燃料が流れ込む。この流入した燃料により、フロートが浮力により上昇すると、フロートと一体に弁体も上昇する。そして、弁体の上昇により、接続通路を閉じることで、燃料タンクを外部に対して遮断し、燃料タンクから外部へ燃料が流出するのを防止する。
【0011】
さらに、基部から内径方向で下方に向けて水平面に対し角度θ突出した筒状の斜辺部の開口部を前記所定液位に位置するように配置することで、燃料給油時や、液面が前記所定液位付近にあって液面が揺動した場合でも、水平方向に揺れた燃料が斜辺部の外周に当たり、波立った燃料の直接流入を防ぐと同時に、液面との接触面積が大きくなるため表面張力で液面が斜辺部にくっつき易くなり、盛り上がった部分で十分に閉塞することができる。このため、燃料が前記所定液位付近にある場合でも、開口部は閉塞され、ケーシング内への空気を含んだ燃料の流入を防止することができる。
【0012】
そうして、上記効果の結果、ケーシング内に流入した燃料に多くの空気が混入してしまうことがないことから、燃料に混入した空気を原因としてフロートに発生する浮力が低下して弁体の作動が遅れることを防止することができる。したがって、接続通路から燃料が漏れ出ることを防止することができる。
【0013】
さらに、斜辺部が水平ではなく下方に傾いているため、ケーシング内に流入した燃料は、斜辺部の内周部を伝って、開口部へ向かい、排出されやすい。
【0014】
上記基部は、上記開口端に溶着される接合部と、上記開口部の内周に摺接して位置決めされるように、該接合部の内周から上方に突設された位置決め筒部を有することが好ましい。位置決め筒部を設けることにより、底部材に対し開口形成部材の位置決めが容易に行われ、組付け性が向上する。
【0015】
また、別の形態として、上記底部材は、上記開口端から、下方に向けて複数突設している係合爪とを備え、上記開口形成部材は、上記係合爪が係合するように上記基部に係合孔を有することにより、底部材と開口形成部材を係合構造で組付けることができ、溶着工程が必要でなくなるため、生産性が向上する。
【0016】
さらに別の形態として、上記底部材は、上記開口端より内周で上方へ向けて段差を形成するように位置決め段部とを備え、上記基部が、上記開口端の内周に摺接されるように収納され、上記位置決め段部に当接されることで位置決めされ、溶着面が外周側に位置しないため、燃料の揺動などによる開口形成部材の離脱などの可能性が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例に関わる自動車の燃料タンクの給油装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る燃料遮断弁10を示す断面図である。
【図3】燃料遮断弁10を分解した断面図である。
【図4】開口形成部材80を示す拡大図である。
【図5】フロート52、弁体60を構成する第1弁部61および第2弁部65を分解して示す斜視図である。
【図6】弁体60の付近を示す断面図である。
【図7】フロート機構50の作用を説明する説明図である。
【図8】燃料遮断弁10の動作を説明する説明図である。
【図9】図8に続く動作を説明する説明図である。
【図10】燃料タンク内の燃料液位の上昇に従って液面がどのように変化するかを示す説明図である。
【図11】第2実施例にかかる円筒部39Bと開口形成部材80Bとの構成を示した断面図である。
【図12】第3実施例にかかる円筒部39Cと開口形成部材80Cとの構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
(1)燃料タンクFTの概略構成
図1は自動車の燃料タンクの給油装置を示す概略構成図である。図示するように、燃料タンクFTは、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)から形成されたバリア層と、ポリエチレン(PE)から形成された外層とを備えている。燃料タンクFTの上部には、燃料注入管IPが接続されている。この燃料注入管IPは、燃料キャップにより開閉される注入口IPaを備えており、この注入口IPaを通じて給油ガンから燃料が燃料タンクFTに供給される。また、燃料タンクFTの上部のタンク上壁FTaには、取付穴FTcが形成されており、燃料遮断弁10がその下部を取付穴FTcに突入した状態で取り付けられている。燃料遮断弁10は、キャニスタ連通管CPを介してキャニスタCTに接続されている。燃料遮断弁10は、給油時に燃料タンク内の燃料が所定液位FL1まで上昇したときにキャニスタへの流出を規制してオートストップを機能させるもので、いわゆるブリーザパイプ型のものである。以下、燃料遮断弁10の各部の構成および作用について説明する。
【0020】
(2)燃料遮断弁10の各部の構成
図2は本発明の第1実施例に係る燃料遮断弁10を示す断面図である。図示するように、燃料遮断弁10は、ケーシング20と、フロート機構50と、スプリング70とを主要な構成として備えている。ケーシング20は、ケーシング本体30と、底部材37と、蓋体40と、開口形成部材80とを備え、ケーシング本体30と底部材37とにより囲まれたスペースが弁室30Sになっており、この弁室30Sにスプリング70に支持されたフロート機構50が収納されている。
【0021】
図3は燃料遮断弁10を分解した断面図である。ケーシング本体30は、天井壁部31と、側壁部32とにより囲まれたカップ形状であり、その下部を開口30aとしている。天井壁部31の中央部には、下方に向けて突設された通路形成突部31aが形成されており、この通路形成突部31aに接続通路31bが貫通形成されている。接続通路31bの弁室30S側は、シール部31cになっている。側壁部32には、燃料タンクFT内と弁室30Sとを接続する第1連通孔32aが形成されている。また、側壁部32の内壁には、フロート機構50をガイドするためのケース側ガイド部34が周方向に4カ所リブ形状で設けられている。ケース側ガイド部34は、ケーシング本体30の下部に形成された下ガイドリブ34aと、下ガイドリブ34aより軸心側へ形成された上ガイドリブ34bとを備えている。
【0022】
底部材37は、ケーシング本体30の開口30aの一部を閉じるとともに、弁室30S内に燃料蒸気および液体燃料を導入するための部材である。底部材37は、底板38と、円筒部39とを一体に形成し、底板38の外周部でケーシング本体30の下端に溶着されている。底板38には、流通孔38a,38bが形成され、またスプリング70の下端を支持するためのスプリング支持部38cが形成されている。円筒部39は、流通路39aを形成しており、下端の開口部39bから取り込んだ燃料蒸気および液体燃料を流通孔38aを通じて弁室30S内に導く。
【0023】
図4は、開口形成部材80を示す斜視図である。図2に示すとおり、開口形成部材80のリング状の基部81の接合部82が、底部材37の開口端39bに溶着されている。接合部82の内周に環状に上方へ突出した位置決め筒部83が形成されている。また、位置決め筒部83の下方であって基部81の下面から、内径方向で下方に向けて斜めに環状に突出している斜辺部84が形成されている。斜辺部84は、基部81と位置決め筒部83とともに導入通路85を形成し、燃料を液面から導入通路85に導く開口部86を有している。
【0024】
本実施例では、開口形成部材80の基部81の外周から斜辺部84の内周端までの水平距離t1は3.0〜5.0(例えば4.0)mm、基部の外周の半径をt2とすると、t1とt2の関係は、1/10<t1/t2<3/10をとりうる。水平距離および周辺の部材の肉厚は適宜他の値をとりうる。斜辺部84の水平面に対してなす角度θは2〜30(例えば5)°となっている。
【0025】
図2に戻って、蓋体40は、蓋本体41と、蓋本体41の中央から側方へ突出した管体部42と、蓋本体41の外周に形成されたフランジ43とを備え、これらを一体に形成している。管体部42には、蓋側通路42aが形成されており、この蓋側通路42aの一端は、接続通路31bを通じてケーシング本体30の弁室30Sに接続され、他端はキャニスタ連通管CPに接続される。蓋本体41の下部には、ケーシング本体30の外周部の上端を溶着する内部溶着端43aが形成されており、フランジ43の下端部には、燃料タンクFTのタンク上壁FTaに溶着される外側溶着部43bが形成されている。
【0026】
フロート機構50は、再開弁特性を向上させた2段の弁構造であり、フロート52と、
フロート52の上部に配置された弁体60とを備えている。フロート52は、第1フロート部53と、第2フロート部54とを備え、これらを一体に組み付けている。第1フロート部53は、第1フロート本体53aを備えている。第2フロート部54は、円筒形状であり、収納穴54aを有する第2フロート本体54bを備えている。この収納穴54aに第1フロート部53が嵌挿されることにより第1フロート部53と一体化している。上記第1フロート本体53aの外周部の段部は、スプリング支持部53bとなっており、スプリング70の上端を支持している。スプリング70は、第1フロート部53と第2フロート部54との間のスペースであるスプリング収納間隙52a(図2)の間に配置され、底部材37のスプリング支持部38cとの間にスプリング70を掛け渡している。
【0027】
図5はフロート52、弁体60を構成する第1弁部61および第2弁部65を分解して示す斜視図、図6は弁体60の付近を示す断面図である。第1フロート本体53aの上部には、弁支持部55が突設されている。弁支持部55は、弁体60を首振り可能に支持する部位であり、円柱状の突起である支持突部56を備えている。支持突部56の上面は、平面である支持面56aになっている。また、弁支持部55の外周部には、弁体60を抜止するための環状突部57が形成されている。
【0028】
弁体60は、第1弁部61と、第2弁部65とを備え、フロート52の弁支持部55に昇降可能かつ首振り可能に支持されている。第1弁部61は、有底の円筒形状である弁本体62と、弁本体62に取り付けられるシート部材64とを備えている。弁本体62は、上面部62aと、上面部62aの外周部から突設された円筒形状の側壁62bとを備え、その内側スペースが支持孔62cになっている。上面部62aの中央部には、シート部材64を取り付けるための取付部62dが形成されている。また、弁本体62の上部の外周部には、支持孔62cを外部に接続するための通気孔62eが4箇所形成されている。図6に示す側壁62bの内周壁には、リブ状のガイド部62fが周方向に等間隔で4箇所上下方向に突設されており、第2弁部65を昇降可能にガイドする。また、側壁62bの内周壁には、第2弁部65と係合するための係合爪62gが弾性変形可能に形成されている。
【0029】
シート部材64は、シール部31cに着離するシート部64aと、シート部64aの中央部を貫通して支持孔62cに接続される接続孔64bと、接続孔64bの下端部に形成されたシート部64cと、接続孔64bの外周部に形成された取付部64dとを備え、ゴム材料により一体成形されている。シート部材64は、取付部64dで弁本体62の取付部62dに圧入することで装着されており、シート部64aが弁本体62の上面部62aに対して間隙を有することで、シール部31cに着座するときに弾性変形してシール性を高めている。
【0030】
第2弁部65は、円筒形状の第2弁本体66を備えている。第2弁本体66には、下方を開放した有底筒となったガイド部66aが形成されている。ガイド部66aは、支持突部56に所定間隙を隔てて挿入されることによりフロート52に対して第2弁部65の大きな傾きを防止している。ガイド部66aの上面中央部に、下方に向けてわずかに湾曲した凸形状の被支持部66bが形成されている。被支持部66bは、フロート52の支持面56a上に載置されることにより、第2弁部65が支持部55aを支点として首振り可能に支持されている。
【0031】
また、第2弁本体66の上面には、第2シール部66cが形成されており、この第2シール部66cは、第1弁部61のシート部64cに着離することにより接続孔64bを開閉するように形成されている。第2弁本体66の下部には、抜止爪66dが4箇所形成されており、第1弁部61の係合爪62gに係合することにより、第1弁部61を第2弁部65に対して昇降可能に支持している。第2弁本体66の内壁には、係合爪66eが形成されており、フロート52の環状突部57に係合することにより、第2弁部65がフロート52に対して昇降可能に支持および抜止されている。
【0032】
また、弁体60の重心は、被支持部66bより下方に設定されている。このための構成として、第1弁部61および第2弁本体66がそれぞれ円筒形状であり、支持面56aに支持される被支持部66bより下方に延設されている。さらに、フロート52の環状突部57と弁体60の底面には、スプリング68が介在し、フロート52がスプリング68を介して弁体60を支持している。
【0033】
図7はフロート機構50の作用を説明する説明図である。図7に示すように車両の傾斜などにより矢印の方向へフロート52が傾いたとする。第2弁部65は、湾曲した凸形状である被支持部66bがフロート52の平面である支持部55aにより1点支持されているので、ヤジロベーのようにバランスをとり、第1弁部61のシート部材64は、水平姿勢を維持する。
【0034】
(3)燃料遮断弁10の動作
次に、燃料遮断弁10の動作について説明する。図2に示すように、給油により燃料タンクFT内に燃料が供給されると、燃料タンクFT内の燃料液位の上昇につれて燃料タンクFT内の上部に溜まっていた燃料蒸気は、開口形成部材80の開口部86の導入通路85から、円筒部39の開口部39bから流通路39aを経て、流通孔38a,38bから弁室30S内に流入する。さらに、燃料蒸気は、弁室30Sから接続通路31b、蓋側通路42aを通じて、キャニスタ側へ逃がされる。そして、燃料タンクFT内の燃料液位が開口部86の位置(以下、この位置を「所定液位」と呼ぶ)FL1に達すると、燃料は開口部86を塞ぐことにより、燃料タンクFTのタンク内圧が上昇する。この状態では、タンク内圧と弁室30S内の圧力との差圧が大きくなり、液体燃料が導入通路85から、流通路39aを経て、流通孔38a,38bから弁室30Sに流れ込み、燃料液位が弁室30S内を上昇する。
【0035】
そして、図8に示すように、弁室30S内の燃料液位が高さh0に達すると、フロート52の浮力およびスプリング70の荷重による上方への力と、フロート機構50の自重による下方への力との釣り合いによって、前者が後者を上回りフロート機構50が一体になって上昇して、弁体60のシート部材64がシール部31cに着座して接続通路31bを閉じる。このとき、燃料注入管IP内に燃料が溜まり、給油ガンに燃料が触れると、オートストップを働かせる。これにより、燃料タンクFTへの給油の際等に、燃料タンクFTから燃料蒸気を逃がすとともに燃料が燃料タンクFT外へ流出するのを防止することができる。
【0036】
一方、燃料タンクFT内の燃料が消費されて、燃料液位が低下すると、フロート52は、その浮力を減少して下降する。フロート52の下降により、図9に示すように、フロート52の環状突部57と第2弁部65の係合爪66eとの係合を介して、フロート52は、第2弁部65を引き下げる。これにより、第2シール部66cは、シート部64cから離れて、接続孔64bを開く。接続孔64bの連通により第1弁部61の下方の圧力は、接続通路31bの付近と同じ圧力になる。そして、抜止爪66dと係合爪62gとの係合を介して、第2弁部65は第1弁部61も引き下げる。そして、第1弁部61が下降することで、シート部材64がシール部31cから離れて、接続通路31bが開かれる。このように、第2弁部65および第1弁部61による2段の弁構造により、再開弁特性の向上を促進するように機能する。このとき、シート部64cが第2シール部66cから離れて通路面積を小さくした接続孔64bが最初に連通するから、第1弁部61の下部の圧力が低減されて第1弁部61の閉弁方向の力が小さくなり、よって再開弁特性に優れている。
【0037】
(4)第1実施例の作用・効果
以上のように構成された本実施例によれば、給油により燃料タンク内の燃料液位が開口部86を完全に塞ぐ所定液位FL1を越えると、燃料タンクFTのタンク内圧が上昇するので、オートストップを働かせることができる。すなわち、本実施例は、弁室溶着されており、この開口形成部材80の下端である開口部86でもって満タン液位を定めることができる。燃料液位がフロートの作動完了位置まで上がって始めて満タンを検知する古いタイプの燃料遮断弁では、給油流量の変化によりその検知位置が早くなったり遅くなったりバラツキが大きかったが、本実施例によれば、開口形成部材80の下端である開口部86でもって満タン液位を定めることができることから、検知精度を高めることができる。
【0038】
また、本実施例によれば、前述したように、開口部86Bは、基部81から内径方向で下方に突出した斜辺部84の開口である。開口部86は内径方向に向けて前記所定液位FL1にまで突出しているため、上昇してきた燃料に対する開口部86を形成する斜辺部84の外周面の面積を大きくすることができる。
【0039】
図10は、燃料タンク内の燃料液位の上昇に従って、液面がどのように変化するかを示す説明図である。図中(a)に示すように、燃料の液面FFが次第に上昇してきて、図中(b)に示すように、燃料の液面FFが前述した所定液位FL1より少し下の液位FL2まで達したとする。燃料の液面FFは表面張力により盛り上がろうとするが、上記のように開口部86を形成する斜辺部84と燃料との間の接触面積が大きいと、図中(b)の状態となったとき、すなわち液面FFが上記液位FL2に達したときに、表面張力で盛り上がった部分FFaが広い面積で斜辺部84の外周面にくっつくことになる。このために、燃料液位が前記所定液位FL1に達するよりも前に、斜辺部84周りを表面張力で盛り上がった部分FFaで十分に閉塞することができる。したがって、開口部86が塞がれようとするその際に、真っ先に表面張力によって開口部86周辺の斜辺部84で閉塞されることになることから、弁室30S内への空気の巻き込みを防ぐことができる。この結果、弁室30Sに空気が侵入することを防止することができる。
【0040】
さらに、波立った燃料が開口部86に迫ってきた場合、斜辺部84が内径方向で下方に突出しているため、横から開口部86に向かってくる燃料が斜辺部84に当たり、空気を含んだ燃料の直接流入も防止する。
【0041】
この結果、弁室30S内に流入した燃料に多くの空気が混入することがないことから、燃料に混入した空気を原因としてフロート52に発生する浮力が低下して弁体60の作動が遅れることを防止することができる。したがって、接続通路31bから燃料が漏れ出ることを防止することができる。
【0042】
本発明において、斜辺部84の液面に対する角度については、所定角度以上の場合、液面に対する表面張力が働く接触面積が小さくなり、所定角度以下の場合、空気を含んだ横波の燃料の侵入を防止する効果が少なくなるため、所定角度2〜30°が好ましい。
【0043】
別の効果として、ケーシング20内に流入した燃料を排出する場合、下方に向かって斜辺部84は形成されているので、燃料が燃料タンクFT内に排出されやすい。
【実施例2】
【0044】
図11は、第2実施例にかかる円筒部39Bと開口形成部材80Bとの構成を示した断面図である。図11に記載していない構成に関しては、第1実施例と同様である。第2実施例では、円筒部39Bと開口形成部材80Bとが、溶着ではなくて係合構造にて
接合されている。
【0045】
円筒部39Bの開口端39Bbから所定角度(90°)の間隔で、下方に係合爪39Bcが4箇所形成されている。開口形成部材80Bは、導入通路85Bを形成するリング状の基部81Bと、内径方向で下方にむけて突出し、開口部86Bを形成する斜辺部84Bを有している。基部81Bには、係合孔87Bが4箇所設けられている。係合孔87Bに、係合爪39Bcが係合することで、底部材37Bと開口形成部材80Bが接合されている。係合爪39Bcに対応した上方で基部81Bが挿入できる程度の箇所に、位置決め突部39Bdが円筒部39Bに形成され、基部81Bの上方への移動を規制している。第2実施例は、上記で説明した第1実施例と同様の効果があるとともに、製造過程において、溶着工程などがなく、簡単に組付けることができる。
【実施例3】
【0046】
図12は、第3実施例にかかる円筒部39Cと開口形成部材80Cとの構成を示した断面図である。図12に記載していない構成に関しては、第1実施例と同様である。第3実施例では、開口形成部材80Cが底部材37Cの円筒部39Cの内周で接合されている。
【0047】
開口形成部材80Cは、導入通路85Cを形成するリング状の基部81Cと、内径方向で下方にむけて突出し、開口部86Cを形成する斜辺部84Cを有している。円筒部39Cは、開口端39Cbより内周で上方へ向けて段差を形成するように位置決め段部39Cfを形成している。基部81Cが、上記開口端39Cbの内周に摺接されるように収納され、上記位置決め段部39Cfに当接されることで位置決めされ、基部81Cと位置決め段部39Cfまた開口端39Cbが熱溶着され接合している。この構成により、底部材37Cの内部と開口形成部材80Cが溶着され、溶着面が外周側にないため、燃料の揺動などによる開口形成部材80Cの離脱などの可能性が少ない。
【0048】
また、円筒部39Cの開口端39Cbには、外周へ水平にフランジ部39Ceが形成されている。開口端39Cbの外周にフランジ部39Ce、内周に斜辺部84Cを備えることにより、液面に対する表面積が増え、より表面張力の効果で、燃料が開口端39Cbにひっつき、空気を含んだ燃料の流入を防止することができる。また、フランジ部39Ceは開口端39Cbに形成されているが、基部81Cから外周へむけて底部材37Cの外径より大きくして、フランジ部39Ceに代えることもできる。
【0049】
なお、この発明は上記実施例に限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
10…燃料遮断弁
20…ケーシング
30…ケーシング本体
30S…弁室
30a…開口
31…天井壁部
31a…通路形成突部
31b…接続通路
31c…シール部
32…側壁部
32a…第1連通孔
34…ケース側ガイド部
34a…下ガイドリブ
34b…上ガイドリブ
37…底部材
37B…底部材
37C…底部材
38…底板
38a,38b…流通孔
38c…スプリング支持部
39…円筒部
39B…円筒部
39C…円筒部
39a…流通路
39b…開口端
39Cb…開口端
39Bc…係合爪
39Bd…位置決め突部
39Ce…フランジ部
39Cf…位置決め段部
40…蓋体
41…蓋本体
42…管体部
42a…蓋側通路
43…フランジ
43a…内部溶着端
43b…外側溶着部
50…フロート機構
52…フロート
52a…スプリング収納間隙
53…第1フロート部
53a…第1フロート本体
53b…スプリング支持部
54…第2フロート部
54a…収納穴
54b…第2フロート本体
55…弁支持部
55a…支持部
56…支持突部
56a…支持面
57…環状突部
60…弁体
61…第1弁部
62…弁本体
62a…上面部
62b…側壁
62c…支持孔
62d…取付部
62e…通気孔
62f…ガイド部
62g…係合爪
64…シート部材
64a…シート部
64b…接続孔
64c…シート部
64d…取付部
65…第2弁部
66…第2弁本体
66a…ガイド部
66b…被支持部
66c…第2シール部
66d…抜止爪
66e…係合爪
68…スプリング
70…スプリング
80…開口形成部材
80B…開口形成部材
80C…開口形成部材
81…基部
81B…基部
81C…基部
82…接合部
83…位置決め筒部
84…斜辺部
84B…斜辺部
84C…斜辺部
85…導入通路
85B…導入通路
85C…導入通路
86…開口部
86B…開口部
86C…開口部
87B…係合孔
t1…水平距離
t2…半径
θ…角度
CP…キャニスタ連通管
FT…燃料タンク
CT…キャニスタ
IPa…注入口
FTa…タンク上壁
FTc…取付穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(FT)の上部に装着され、燃料タンク(FT)内と外部とを接続する接続通路(31b)を開閉することで燃料タンク(FT)と外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記燃料タンク(FT)内と上記接続通路(31b)とを連通する弁室(30S)を形成し、上記燃料タンク(FT)内の燃料液位が所定液位(FL1)に達したときに、上記弁室(30S)から上記燃料タンク(FT)内へ開く開口部(39b)を上記燃料液位でもって塞ぐことにより、上記燃料タンク(FT)内の圧力と上記弁室(30S)内の圧力との差圧を増大させるケーシング(20)と、
上記弁室(30S)に収納され、上記弁室(30S)内の燃料液位により浮力を増減して昇降するフロート(52)と、
上記フロート(52)が昇降することで上記接続通路(31b)を開閉する弁体(60)と
を備え、
上記ケーシング(20)は、上記弁室(30S)を形成するケーシング本体(30)と該ケーシング本体(30)の下部に設けられる底部材(37)と、該底部材(37)の下端の開口端(39b)に接合されている開口形成部材(80)と
を備え、
上記開口形成部材(80)は、上記開口端(39b)に装着される基部(81)と、前記所定液位に開口部(86)を形成するように該基部(81)から内径方向で下方に向けて水平面に対し角度θで突出した環状の斜辺部(84)と
を備え、
上記角度θは、0°<θ<30°であること
を特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記基部(81)は、上記開口端(39b)に溶着される接合部(82)と、上記開口部(86)の内周に摺接して位置決めされるように、該接合部(82)の内周から上方に突設された位置決め筒部(83)を有する、
燃料遮断弁。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記底部材(37B)は、上記開口端(39B)から、下方に向けて複数突設している係合爪(39Bc)と
を備え、
上記開口形成部材は(86B)は、上記係合爪(39Bc)が係合するように上記基部(81B)に係合孔(87B)を有する、
燃料遮断弁。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記底部材(37C)は、上記開口端(39Cb)より内周で上方へ向けて段差を形成するように位置決め段部(39Cf)と
を備え、
上記基部(81C)が、上記開口端(39Cb)の内周に摺接されるように収納され、上記位置決め段部(39Cf)に当接されることで位置決めされる
燃料遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−111108(P2011−111108A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271371(P2009−271371)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】