説明

物体の三次元の表面形状の評価方法及び評価装置並びに車両用窓ガラスの製造方法

【課題】本発明は、物体の三次元の表面形状の評価方法及び評価装置並びに車両用窓ガラスの製造方法に関し、物体の三次元の表面形状を評価するうえでその表面に形成される反射歪みの定量的な検出を可能にすることにある。
【解決手段】対象物体の三次元の表面形状のデータを取得させると共に、その取得された表面形状のデータの2次微分値を算出させる。また、対象物体に要求される三次元の仮想形状データを算出させると共に、その算出された仮想形状データの2次微分値を算出させる。そして、その算出された対象物体の三次元の表面形状の2次微分値と、仮想形状データの2次微分値との差を算出させ、その差に基づいて、対象物体の表面形状を評価させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の三次元の表面形状の評価方法及び評価装置並びに車両用窓ガラスの製造方法に係り、特に、例えば曲げ成形後のガラス板など表面反射を行う鏡面体などの表面形状を評価するうえで好適な評価方法及び評価装置並びに車両用窓ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の窓ガラス板などの対象物体の表面の三次元の形状の評価を行う際の評価方法としては、物体の表面に光が反射したときに生ずる反射歪みに関するものが知られている。反射歪みの評価としては、一般に検査される物体に適した明暗間隔を備えたストライプや格子パターンを投影して、その反射像から反射歪みを評価する方法が用いられており、例えば特許文献1にはガラス板などの透明な物体に特有な裏面反射の影響を排除して物体の表面形状を評価する方法が記載されている。
【0003】
また、反射歪みはマクロ的な反射歪み(いわゆる反りや曲り)、マクロ的な曲率や曲率の変化率と局所的な曲率及び曲率の変化率が異なることで生じる比較的局所的な反射歪み(凹凸など)に大別することができる。
【0004】
前述の局所的な反射歪みの中には、従来のストライプなどを対象物体に投影することによる反射歪みの評価方法において、ストライプの明暗間隔が間延びして見えるなど所定のパターンが反射により強調されて反射歪みとして認識される強調反射歪み(ハイライト歪みとも呼ばれる)と呼ばれる反射歪みがある。
【0005】
反射歪みを評価する方法としては、例えば、特許文献2には、被測定面について、CAD装置にあらかじめ記憶されているデータと、三次元形状測定装置によって実測されたデータとを対比して、マクロ的な歪みの要素だけを含んだ局面曲面を差し引くことにより、局所的変形を正確に認識する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−345383号公報
【特許文献2】特開2003−21510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、自動車のフロントガラスなどのガラス板は湾曲していることがあり、ストライプ等の反射像を用いて反射歪みを評価する方法では、光が照射されると、ストライプの明暗間隔が箇所によって異なるものとなることがある。また、光の反射像は、見る位置に応じて変化するので、ストライプの明暗間隔は見る位置によって異なるものとなる。このため、ガラス板の表面形状を評価するうえで理想的かつ汎用的な反射像の設定自体が困難であり、その結果として、実際の反射像と設計形状から得られる反射像とのずれ量の算出など、表面形状の評価を定量的に行うことは難しい。
【0008】
また、空間座標上の位置データを用いて、製品から実測された三次元の表面形状データと設計により要求される三次元の表面形状を表す仮想形状データとを対比して局所的な反射歪みを認識する方法は、人間が目視により判定する官能評価による反射歪みの位置と整合しないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、物体の三次元の表面に存在する反射歪み、特にハイライト歪み、を定量的に検出することを可能にするとともに、従来の官能評価との整合性が高い三次元の表面形状の評価方法及び評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、コンピュータを用いた物体の三次元の表面形状の評価方法であって、対象物体の三次元の表面形状のデータを取得するデータ取得ステップと、前記表面形状に要求される仮想形状データを算出する仮想形状データ算出ステップと、前記表面形状のデータの2次微分値を算出する取得データ2次微分ステップと、前記仮想形状データの2次微分値を算出する仮想形状データ2次微分ステップと、前記表面形状のデータの2次微分値と、前記仮想形状データの2次微分値との差を算出する差分算出ステップと、前記差に基づいて、前記対象物体の三次元の表面形状を評価する評価ステップと、を備える物体の三次元の表面形状の評価方法により達成される。
【0011】
また、上記の目的は、物体の三次元の表面形状を評価する装置であって、対象物体の三次元の表面形状のデータを取得するデータ取得手段と、前記表面形状に要求される仮想形状データを算出する仮想形状データ算出手段と、前記データ取得手段により取得される前記表面形状のデータの2次微分値を算出する取得データ2次微分手段と、前記仮想形状データ算出手段により算出される前記仮想形状データの2次微分値を算出する仮想形状データ2次微分手段と、前記取得データ2次微分手段により算出される前記表面形状のデータの2次微分値と、前記仮想形状データ2次微分手段により算出される前記仮想形状データの2次微分値との差を算出する差分算出手段と、前記差分算出手段により算出される前記差に基づいて、前記対象物体の三次元の表面形状を評価する評価手段と、を備える物体の三次元の表面形状の評価装置により達成される。
【0012】
これらの態様の発明においては、対象物体の三次元の表面形状のデータが取得されると共に、その対象物体の三次元の表面形状に要求される仮想形状データが算出される。そして、両者それぞれのデータ曲面上における各点の2次微分値が算出され、両2次微分値の差が算出され、その差に基づいて対象物体の表面形状が評価される。2次微分値は対象物体の表面における傾きの変化率であるので、実際の2次微分値と理想の2次微分値との差によれば、実際の対象物体の表面上の凹凸及びその凹凸の度合いを、理想のものと比較して把握することができる。従って、本発明によれば、物体の三次元の表面形状を評価するうえで、その表面に形成される反射歪み、特に、ハイライト歪み、を定量的に検出することができる。
【0013】
また、本発明においては、曲率の変化率成分である二次微分値の差が対比されるので、官能評価の結果と整合性の高い実用的な反射歪み(特にハイライト歪み)が検出される。すなわち、従来の評価方法で用いられている空間座標位置の値(零次微分値)や、空間座標位置の傾きの値(一次微分値)と、本発明の用いる空間座標位置の傾きの変化率(二次微分値)とが持つ極小点(極大点)及び変極点が異なること、及び、これらの中で空間座標の傾きの変化率(二次微分値)を用いて反射歪みを検出評価すると官能評価と高い整合性を示すことを見出した。その結果、これまで定量化が局所的な反射歪みの定量評価を実現した。
【0014】
ところで、上記した物体の三次元の表面形状の評価方法において、前記仮想形状データ算出ステップは、コンピュータに、前記仮想形状データとして、対象物体に要求されている仮想的な三次元の曲面又は対象物体に要求されている複数のモデルの三次元の表面形状のデータに基づく近似曲面を算出させることとしてもよい。
【0015】
この態様の発明においては、対象物体に要求される仮想形状データとして、仮想的な三次元の曲面又は複数のモデル形状データに基づく近似曲面が算出され、その曲面上における各点の2次微分値が算出される。そして、その2次微分値と三次元の表面形状のデータにおける各点の2次微分値との差が算出され、その差に基づいて対象物体の三次元の表面形状が評価される。従って、本発明によれば、対象物体の三次元の表面形状を評価するうえで、その表面に形成される、仮想的な三次元の曲面又は複数のモデル形状データに基づく近似曲面からの反射歪みを定量的に検出することができる。
【0016】
すなわち、これは、本発明がCADによる設計などによって作成保存される仮想形状データを用いた製品の形状品質の判定に利用可能であるのみでなく、複数の製品同士の形状品質を比較することや、理想的な形状のデータの入手が困難である旧型製品などとの形状品質と現在の製品の品質を比較することなどを可能にする。また、自社製品の設計品質検査業務の効率化ばかりでなく、設計データを持たない市場製品の形状データを定量化することも可能になる。
【0017】
また、上記した物体の三次元の表面形状の評価方法において、前記表面形状のデータ及び前記仮想形状データは、空間座標を含むデータであることとすればよい。つまり、本発明で検出可能な反射歪みとは、鏡面体などの表面の正反射率の高い物体で実際に正反射光によって視認される反射歪みだけに限定されない。つまり、表面の反射率の低い物体であって正反射光が視認できない様な物体においても、空間座標データがあればその反射歪みを定量化して検出することができる。
【0018】
この態様の発明においては、仮想形状データが空間座標を含むため、様々な方法で三次元の表面形状のデータの定量化が可能になるとともに、既存のCADデータ等の定量データとの互換性が高まる。
【0019】
また、上記した物体の三次元の表面形状の評価方法において、前記データ取得ステップは、前記対象物体の表面の各点の位置を測定する各点位置測定ステップと、前記各点の位置データに基づいて、前記対象物体の三次元の表面形状を得るために格子状のB−スプライン曲線を生成して点間補間を行う点間補間ステップと、を有することとしてもよい。
【0020】
この態様の発明においては、対象物体の三次元の表面の各点の位置が測定されると、その後、その測定位置データに基づいて格子状のB−スプライン曲線が生成されて各点間の補間が行われる。B−スプライン曲線を用いることにより、測定位置データのすべてを利用することが可能になり、格子点に欠損があってもこれを補完することができる。その結果、離散的な点情報であっても格子上の点を補完することにより格子状の表面形状のデータとして利用することが可能になる。
【0021】
このため、本発明によれば、点間補間後の三次元の表面形状のデータは、ポリゴン式やメッシュ式などを用いて点間補正を行った計算結果のデータよりもなめらかに接続されることとなる。また、測定対象である物体の三次元の表面形状における不連続な反射歪みを検出することが容易になる。また、なめらかに接続された点間補正後のデータを用いて二次微分値を算出すると不連続変曲部位の割り出しが可能になるとともに、不連続な反射歪みを数値化して検出し対比可能な三次元の表面形状の評価方法を提供することができる。
【0022】
さらに、5〜30mm程度の間隔のメッシュ状に格子を配置した場合、最近接のみではなく面上の対角線方向など各方向の隣接点との位置関係を利用して二次微分から理想に近い点間補正も可能になる。
【0023】
また、上記した物体の三次元の表面形状の評価方法において、前記対象物体が、入射光に対して正反射する面を有する鏡面体であることとしてもよい。
【0024】
この態様の発明においては、評価対象の物体が鏡面体であるので、物体の三次元の表面形状のデータを取得する際に、非接触の光学的手段(例えばエリアカメラやラインカメラなど)により物体の三次元の表面形状を定量化することが可能になる。
【0025】
また、上記した物体の三次元の表面形状の評価方法において、前記評価ステップは、前記鏡面体の三次元の表面形状を評価するうえで、前記差分算出ステップにおいて算出される、前記鏡面体の凹面における前記差と凸面における前記差とで重み付けを変化させることとしてもよい。
【0026】
この態様の発明においては、対象物体の実際の三次元の表面形状が仮想形状データの凸と反対方向に湾曲していないとき、仮想形状データの凸と同じ方向に湾曲しているときに比べて、その物体の表面形状の評価を良好側とすることができる。すなわち、官能鏡検査においては、同程度の二次微分値を持つひずみが凹形状か凸形状かによって品質上の評価が異なる場合があるが、本発明によれば、面体の凹面における前記差と凸面における前記差とで重み付けを変化させることによりその差を調整することができる。このため、本発明によれば、鏡面体の表面形状の評価を官能評価によるものに合致させることができる。
【0027】
ところで、上記した物体の三次元の表面形状の評価方法による評価結果をフィードバックして車両用窓ガラスとして用いられるガラス板の曲げ成形条件を変更する車両用窓ガラスの製造方法に適用することとしてもよい。
【0028】
この態様の発明においては、鏡面体としての車両用窓ガラスを曲げ成形するのに、上記した物体の三次元の表面形状の評価方法による評価結果がフィードバックされて、その曲げ成形条件が変更される。従って、本発明によれば、車両用窓ガラスを設計に合致した形状に容易に曲げ成形することができる。
【0029】
尚、上記した発明において、「仮想形状データ」には、曲率ゼロの平面を含むものとしてもよい。また、「鏡面」とは、入射光と面の法線方向とのなす角度と反射光と面の法線方向とのなす角度とが互いに等しくなるように反射する面のことである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、物体の三次元の表面形状を評価するうえでその表面に形成される反射歪み、特にハイライト歪み、を定量的に検出することが可能になる。また、三次元の表面形状と官能評価結果との局所的な反射歪みの評価の整合性に優れた三次元の表面形状品質の評価方法及び評価装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例である物体の三次元の表面形状の評価装置において鏡面体の表面形状を評価するうえで実行されるメインルーチンの一例のフローチャートである。
【図2】本実施例の評価装置の概念図である。
【図3】本実施例の評価装置においてCAD仮想形状データに対する曲面解析を行う際に実行されるサブルーチンの一例のフローチャートである。
【図4】本実施例の評価装置において汎用データに対する曲面解析を行う際に実行されるサブルーチンの一例のフローチャートである。
【図5】本実施例の評価装置を用いた評価方法によりある鏡面体の表面形状を評価した評価結果の一例を表した図である。
【図6】本実施例の評価装置を用いて表面形状を評価した図5(A)に示す鏡面体について、評価者が斜め上方から目視したときに感じた領域ブロックごとの反射歪み感を5段階評価で表した一例の図である。
【図7】本発明の変形例である評価装置の構成図である。
【図8】本発明の変形例である評価装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。尚、本願において反射歪みとは、評価対象物から正反射光が反射された時に顕在化して確認し易い歪みであるが、必ずしも反射光によって視認される歪みのみではなく、測定対象により反射光によっては視認し難い歪みであっても、同様の形状の局所的な変形(歪み)であればこれを含む。
【0033】
図2は、本発明の一実施例である物体の三次元の表面形状の評価装置10の概念図を示す。本実施例において、評価装置10は、ガラス板などの光を反射し得る鏡面体(評価対象の物体)12の表面形状を評価する装置である。
【0034】
尚、評価装置10による評価対象となる物体は、鏡面体12に限定されず、三次元の表面形状データが取得可能な物体であればよい。対象物体が鏡面体12であると、像を投影して反射像を光学的手段により測定して実測形状データを取得することができて好適である。本実施例では、鏡面体12がガラス板である場合について説明する。
【0035】
鏡面体12は、ケイ酸塩などを主成分とする無機ガラスを用いた強化ガラスや合わせガラスなどの自動車用ガラス板や建物用ガラス板などがもっとも好適である。また、例えばポリカーボネート類やポリスチレン類などのいわゆる有機透明樹脂材、アクリル樹脂などの有機ガラスにより構成される鏡面体にも好適に適用することができ、更に、以下に示す所定の反射率を持つ鏡面体であれば透明でない鏡面体であっても評価可能である。例えば、鏡面メッキ、鏡面ポリッシュ仕上げ及び光沢塗装をされた金属面などへも容易に適用することができる。
【0036】
鏡面体12の反射率は、表裏合わせて4%以上或いは表面のみで2%以上であり、好ましくは、表裏合わせて8%以上或いは表面のみで5%以上であり、さらに好ましくは、表裏合わせての反射率が10%以上であり或いは表面のみの反射率が8%以上であれば本発明によりその鏡面体12を好適に評価することができ、100%が最適である。
【0037】
鏡面体12は、平面板から成形工程で曲げ成形された湾曲形状からなり、その鏡面体12の所望湾曲形状は、一方向に凸となる形状である。尚、鏡面体12は、ある方向において連続的に曲率が変化する湾曲面すなわち複数の連続的な曲率を有してもよく、その場合、その湾曲面は、曲率の相対的に小さな或いはほとんど平らな浅曲げ部と、曲率の相対的に大きな深曲げ部と、からなる。また、この場合、鏡面体12は、上記した方向と直交する方向において曲率のあまり変化しない一定曲率又は断面直線に成形されていてもよい。鏡面体12は、成形工程で曲げ成形された後、検査・評価工程で載置台14上に載置される。
【0038】
評価装置10は、評価対象である鏡面体12の三次元の表面形状を測定する三次元測定機16を備えている。三次元測定機16は、載置台14上の鏡面体12へ向けて光を照射する光源18と、載置台14上の鏡面体12を反射した光源18からの光を受光する受光センサ20と、を有している。
【0039】
光源18は、鏡面体12の全面に、その鏡面体12の表面形状を評価するうえでその解析に要求される対象(検出すべき歪みの大きさ)に応じたストライプの明暗間隔(例えば20mmの等間隔)で光(例えばレーザ光)を照射する。この光の照射は、載置台14上の鏡面体12の表面の縦横それぞれに対して行われる。受光センサ20は、光源18から照射された光のうち載置台14上の鏡面体12で反射した光を受光するセンサであり、その鏡面体12の全面からの反射光を受光する。受光センサ20は、鏡面体12の表面全面に形成される光源18からの光のパターンを得ることが可能である。
【0040】
評価装置10は、マイクロコンピュータを主体に構成された演算部24を備えている。演算部24は、三次元測定機16に電気的に接続されている。受光センサ20の得た情報は、演算部24に供給される。演算部24は、受光センサ20から供給される鏡面体12の表面で反射した光の受光パターンに基づいて、その鏡面体12の三次元の表面形状を測定し、その三次元の表面形状に基づいて鏡面体12の表面形状を評価する。
【0041】
上記した評価装置10において、載置台14上に載置された評価対象の鏡面体12に対して、光源18から所定のストライプの明暗間隔で照射された光は、鏡面体12に照射されると、受光センサ20側から見て、鏡面体12の表面にその鏡面体12の表面形状に応じて明部と暗部とのストライプの幅と間隔とが変調されたパターンが現れる。すなわち、受光センサ20には、光源18から照射された光のうち鏡面体12を反射して入射される光が受光され、その鏡面体12の表面形状に応じた受光パターンが入射される。受光センサ20は、受光パターンの位置情報等を演算部24に供給する。演算部24は、受光センサ20からの受光パターンを処理して鏡面体12の表面形状を検査・評価する。
【0042】
ところで、本実施例において、鏡面体12は一方向に極端に曲がりなく連続して凸となる湾曲した湾曲形状を有することが要求されるが、製造段階においてその表面が波打つような歪みが生ずることがある。この歪みの検出は、光源18からその鏡面体12の表面へ向けて光を照射して、その表面に形成されたパターンを受光センサ20で受光し、その受光パターンの変化に基づいて実現することが可能である。
【0043】
しかし、上記の如く鏡面体12は湾曲しているので、光源18から所定のストライプの明暗間隔で光が照射されると、その表面に形成されるパターンでのストライプの幅及び間隔が箇所によって異なるものとなることがある。また、光の反射像は見る位置に応じて変化するので、鏡面体12の表面に形成されるパターンは受光センサ20の配置位置によって異なるものとなる。このため、鏡面体12の表面形状を評価するうえで理想的な反射像の設定自体は困難であり、その結果として、実際の反射像と設計形状から得られる反射像とのずれ量の算出など、表面形状の評価を定量的に行うことは難しい。
【0044】
そこで、本実施例の物体の三次元の表面形状の評価装置10においては、鏡面体12の表面に形成される反射歪みの定量的な検出を行い、その表面形状の定量的な評価を可能とすることとしている。
【0045】
以下、図1及び図3乃至図6を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
【0046】
図1は、本実施例の評価装置10において演算部24が鏡面体12の表面形状を評価するうえで実行されるメインルーチンの一例のフローチャートを示す。図3は、本実施例の評価装置10において演算部24がCAD仮想形状データ(仮想形状データ)に対する曲面解析を行う際に実行されるサブルーチンの一例のフローチャートを示す。図4は、本実施例の評価装置10において演算部24が汎用データに対する曲面解析を行う際に実行されるサブルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、汎用データとは、製造上許容される理想状態に近く認識できる歪みを含まない形状の複数の製品などから実測した三次元の表面形状データを指すものとする。
【0047】
また、図5は、本実施例の評価装置10を用いた上記の評価方法によりある鏡面体12の表面形状を評価した評価結果の一例を表した図を示す。尚、図5(A)には鏡面体12を斜め上方から見た際の斜視図を、図5(B)には図5(A)に示す鏡面体12でのX=0の断面位置における2次微分値の変化を、また、図5(C)には図5(A)に示す鏡面体12でのX=400の断面位置における2次微分値の変化を、それぞれ示す。尚、図5(B)及び(C)では、実測の2次微分値を実線で、また、2次微分値の近似曲線を破線で、それぞれ示す。更に、図6は、本実施例の評価装置10を用いて表面形状を評価した図5(A)に示す鏡面体12について、評価者が斜め上方から目視したときに感じた領域ブロックごとの反射歪み感を5段階評価で表した一例の図を示す。尚、図6には、複数の評価者の反射歪み感を集計して平均化した評価結果を示す。また、この反射歪み感は、数値が小さいほど反射歪みが大きいことを示し、数値が大きいほど反射歪みが小さいことを示す。
【0048】
本実施例の評価装置10において、演算部24は、載置台14上の鏡面体12の表面形状を評価するうえで、まず、三次元測定機16にて受光センサ20での受光パターンに基づいてその鏡面体12の三次元の表面形状を測定するための座標及び法線ベクトルを準備・設定する(ステップ100)。そして、三次元測定機16の受光センサ20にて得られる受光パターンに基づいて、載置台14上の鏡面体12の三次元の表面形状を実測して、その鏡面体12の表面の、格子(例えば20mm間隔の縦横メッシュ)ごとにおける座標を取得する(ステップ102)。
【0049】
演算部24は、上記ステップ102で測定された鏡面体12表面の格子ごとにおける座標の点を通るように、それらの点列を通る格子状のB−スプライン曲線を生成し、それらの点間を鏡面体12の三次元の表面形状として補間する処理を行う(ステップ104)。そして、その生成した格子状のB−スプライン曲線について縦及び横の双方の2次微分値を計算する(ステップ106)。尚、この2次微分値は、載置台14上にある鏡面体12の表面形状(具体的にはB−スプライン曲線)の傾きの変化率(すなわち、加速度成分)の度合いを表すこととなる。
【0050】
次に、演算部24は、鏡面体12の表面形状を評価するうえでの評価対象である載置台14上の鏡面体12に対して、設計上実現されるべき理想のCAD仮想形状データに対する曲面解析を行う必要があるか否かを判別する(ステップ108)。その結果、そのCAD仮想形状データに対する曲面解析を行う必要があると判別した場合は、次に、後述のステップ110の処理を実行する。一方、そのCAD仮想形状データに対する曲面解析を行う必要がないと判別した場合は、次に、後述のステップ112の処理を実行する。
【0051】
演算部24は、CAD仮想形状データに対する曲面解析を行うステップ110においては、図3に示すようにステップ150〜154の処理を実行する。まず、鏡面体12の表面形状を評価するうえでの評価対象である載置台14上の鏡面体12に対して設計上実現すべき理想のCAD仮想形状データを、記憶装置等から或いは入力により読み出すと共に、その読み出したCAD仮想形状データから理想鏡面体の格子(例えば20mm間隔の縦横メッシュ)ごとにおける座標を取り出す(ステップ150)。
【0052】
演算部24は、上記ステップ150で取り出された理想鏡面体表面の格子ごとにおける座標の点を通るように、それらの点列を通る格子状のB−スプライン曲線を生成し、それらの点間を理想鏡面体の三次元の表面形状として補間する処理を行う(ステップ152)。そして、その生成した格子状のB−スプライン曲線について縦及び横の双方の2次微分値を計算する(ステップ154)。尚、この2次微分値は、理想鏡面体の表面形状(具体的にはB−スプライン曲線)の傾きの変化率(すなわち、加速度成分)の度合いを表すこととなる。
【0053】
演算部24は、CAD仮想形状データに対する曲面解析を行い上記ステップ154において理想鏡面体についての2次微分値を計算した場合は、その理想鏡面体についての2次微分値と、上記ステップ106において計算した載置台14上の鏡面体12についての実際の2次微分値との差(理想CAD2次微分値)−(実2次微分値)を計算する(ステップ110)。
【0054】
一方、演算部24は、CAD仮想形状データに対する曲面解析を行わないステップ112においては、図4に示すようにステップ200〜204の処理を実行し、鏡面体12の表面形状を評価するうえでの評価対象である載置台14上の鏡面体12が製造上許容される汎用データに対する曲面解析を行う。具体的には、まず、鏡面体12が製造上許容される複数のモデル形状データ(例えば、実際に得られた複数の鏡面体12の実測データ)を準備する(ステップ200)。
【0055】
演算部24は、複数のモデル形状データを準備すると、次に、それら各モデルの三次元の表面に格子を設定し、格子の交差点上の各点について縦及び横の双方の2次微分値を計算する(ステップ202)。そして、それら各モデルの2次微分値に基づいて、各モデルに沿う2次微分値の漸変かつ連続的な近似曲面(例えば、指数関数で表される近似曲面)を算出する(ステップ204)。
【0056】
演算部24は、汎用データに対する曲面解析を行い上記ステップ204において複数のモデルに沿う近似曲面を算出した場合は、その近似曲面についての2次微分値と、上記ステップ106において計算した載置台14上の鏡面体12についての実際の2次微分値との差(近似曲面2次微分値)−(実2次微分値)を計算する(ステップ112)。
【0057】
演算部24は、このようにCAD仮想形状データに基づく理想鏡面体についての2次微分値又は複数のモデル形状データに基づく近似曲面についての2次微分値と、載置台14上の鏡面体12についての実際の2次微分値との差を計算する。
【0058】
次に、ステップ110とステップ112の計算結果が正か負かを判断する(ステップ111)。計算結果が負の場合は計算結果に係数Kをかけて計算結果の重みづけを行う(ステップ113)。このとき係数Kは1よりも小さな正の値とし、0.5以下が好ましく0.2以下がさらに好ましい。これにより官能検査における凹部と凸部に対する感受性の差を補正することができる。つまり、所望形状の凸側への歪みには鈍感で、凹側への歪みには敏感な官能検査の評価基準と計算結果による評価基準を整合させることが可能になる。
次に前述の差に基づいて載置台14上の鏡面体12の表面形状を評価する(ステップ114)。
【0059】
載置台14上の鏡面体12表面についての2次微分値の、CAD仮想形状データに基づく2次微分値或いは近似曲面に基づくものからの乖離が大きいほど、その鏡面体12の表面箇所にて反射歪みが大きいと判断できる。即ち、演算部24は、載置台14上の鏡面体12の表面形状について、上記した2つの2次微分値の差が大きいほど、生じている反射歪みが大きいとして低い評価を行い、一方、上記の差が小さいほど(ゼロに近いほど)、生じている反射歪みが小さいとして高い評価を行う。
【0060】
例えば、上記した評価方法によりある鏡面体12の表面形状を評価する際、図5(B)に示す如くX=0の断面位置におけるY方向の実測2次微分値が大きく上下に変化して、近似曲線に基づくものから大きく乖離することがある場合は、その大きな乖離箇所(例えば、Y=260付近やY=660付近)で大きな反射歪みが生じていると評価する。一方、図5(C)に示す如くX=400の断面位置におけるY方向の実測2次微分値があまり大きく上下に変化せず、近似曲線に基づくものからあまり大きく乖離しない場合は、大きな反射歪みは生じていないと評価する。
【0061】
このように、本実施例の評価装置10によれば、載置台14上の鏡面体12について得られる実測の三次元の表面形状の2次微分値を、CAD仮想形状データに基づく曲面或いは複数のモデル形状データに基づく近似曲面の2次微分値と比較することにより、その鏡面体12の表面形状を評価することができる。
【0062】
上記の2次微分値は実鏡面体(評価対象の三次元表面形状)12又は仮想形状データの表面における傾きの変化率であるので、上記した2次微分値同士の差によれば、実鏡面体12の表面上の凹凸とその凹凸の度合いとを、CAD仮想形状データに基づく理想鏡面体或いは複数のモデル形状データに基づく近似曲面と比較して把握することができる。
【0063】
また、本実施例によれば、B−スプライン曲線を用いた点間補間により、三次元の表面形状のデータは、ポリゴン式などの一般の形状解析方法を用いて点間補正を行った計算結果のものよりもなめらかに接続される。なめらかに接続された点間補正後のデータを用いて二次微分値を算出すると不連続変曲部位の割り出しが、より容易になるとともに、不連続な反射歪みを数値化して検出し対比可能にするとともに、官能評価結果に近く信頼性の高い三次元の表面形状の評価方法を提供できる。
【0064】
従って、本実施例の評価装置10によれば、反射光を用いて鏡面体12の表面形状を評価するうえで、その表面に形成される曲線連続性の途絶える反射歪みを定量的に検出することが可能となっている。
【0065】
尚、上記した本実施例の評価方法による評価結果は、人である評価者が載置台14上の鏡面体12を実際に目視したときに感じられる反射歪み感を例えば5段階で評価する官能評価試験の結果と極めて高い相関性があることが確認されている。なお、官能検査の基準は、5:歪みがほとんど認識できない水準、4:歪みは認識できるが目立たない水準、3:歪みが認識できるが使用上差し支えない水準、2:歪みが特定の条件で目立って認識される水準、1:著しい歪みが認識される水準とする。
【0066】
例えば、評価対象の鏡面体が図5(A)に示す鏡面体12と同じである場合、複数の評価者それぞれがその鏡面体12を実際に目視したときに、その鏡面体12上を区切った複数の領域ブロック毎に評価者が感じた反射歪み感が集計されて、領域ブロックごとの平均値が算出されると、図6に示す如き官能評価試験結果が得られる。この結果において、X=0の断面位置近傍の領域ブロックにおける反射歪み感は、Yの小さい方から大きい方へ向けて順に"2.5"、"4.1"、"2.0"であり、上記した図5(B)に示すX=0の断面位置における2次微分値の実測値の近似値からの乖離度合いに合致するものになると共に、X=400の断面位置近傍の領域ブロックにおける反射歪み感は、Yの小さい方から大きい方へ向けて順に"4.5"、"4.5"、"4.4"であり、上記した図5(C)に示すX=400の断面位置における2次微分値の実測値の近似値からの乖離度合いに合致するものになる。
【0067】
この点、評価対象である鏡面体12の領域ブロックごとの評価者による反射歪み感と、上記した表面形状の2次微分値の実測値と近似値との差との相関性は極めて高いことが確認されている。従って、本実施例の評価装置10においては、鏡面体12の表面形状の評価を精度よく行うことが可能となっている。
【0068】
また、本実施例においては、載置台14上の鏡面体12の表面形状を評価するのに、その鏡面体12についての三次元の表面形状の2次微分値を、CAD仮想形状データに基づいて設計上要求されていると判断される理想鏡面体或いは複数のモデル形状データに基づいて製造上要求されていると判断される近似曲面の2次微分値と比較する。CAD仮想形状データを用いる構成によれば、鏡面体12の、その鏡面体12に設計上要求される理想状態に対する評価を行うことができ、一方、複数のモデル形状データを用いる構成によれば、評価対象の鏡面体12に設計上要求されるCAD仮想形状データを用いることなく、その鏡面体12の、その鏡面体12に製造上許容される汎用状態に対する評価を行うことができる。
【0069】
ところで、図1は、鏡面体12の表面形状の評価方法のフローを示しているが、例えば鏡面体12が車両用窓ガラスである場合は、この評価方法による評価結果を用いてガラスの曲げ成形工程の製造条件を反射歪みが小さくなるように変更するフィードバックが適切なタイミングで可能である。その結果、車両用窓ガラスの曲げ成形工程において反射歪みを低減するような製造条件への変更が可能になり、より欠点の少ない車両用窓ガラスの製造が可能になる。
【0070】
尚、上記の実施例においては、演算部24が特許請求の範囲に記載した「コンピュータ」に相当している。また、演算部24が、図1に示すルーチン中ステップ102の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「データ取得ステップ」及び「データ取得手段」並びに「各点位置測定ステップ」が、ステップ104の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「データ取得ステップ」及び「データ取得手段」並びに「点間補間ステップ」が、図3に示すルーチン中ステップ150及び152又は図4に示すルーチン中ステップ200の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「仮想形状データ算出ステップ」及び「仮想形状データ算出手段」が、ステップ106の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「取得データ2次微分ステップ」及び「取得データ2次微分手段」が、ステップ154又はステップ202,204の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「仮想形状データ2次微分ステップ」及び「仮想形状データ2次微分手段」が、ステップ110又は112の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「差分算出ステップ」及び「差分算出手段」が、ステップ114の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「評価ステップ」及び「評価手段」が、それぞれ実現されている。
【0071】
ところで、上記の実施例においては、載置台14上の鏡面体12について得られる三次元の表面形状の2次微分値と、CAD仮想形状データに基づく曲面或いは複数のモデル形状データに基づく近似曲面の2次微分値との比較により、鏡面体12の表面形状の評価を行うが、両2次微分値の差の正負に応じて評価の重み付けを変化させることとしてもよい。
【0072】
すなわち、鏡面体12の所望形状は一方向に凸となる湾曲形状であるが、一般に、鏡面体12の三次元の表面形状が、その所望形状の凸と同じ方向に湾曲しているときと、その凸と反対方向に湾曲していないときとを比べると、上記した2次微分値の差の絶対値が同じである場合、反対方向に湾曲しているときの方が同じ方向に湾曲しているときの方に比べて反射歪みが大きいと官能評価されることが多い。従って、上記した2次微分値の差の正負に応じて、すなわち、鏡面体12の凸面における2次微分値の差と凹面における2次微分値の差とに応じて、鏡面体12の表面形状を評価するうえでの重み付けを変化させることとしてもよい。具体的には、その重み付けを、鏡面体12の三次元の表面形状が所望形状の凸と同じ方向に湾曲しているときは比較的良好側とし、一方、鏡面体12の三次元の表面形状が所望形状の凸と反対方向に湾曲していないときは比較的悪化側とする。
【0073】
従って、かかる変形例の構成によれば、鏡面体12の三次元の表面形状が所望形状の凸と反対方向に湾曲していないときは、所望形状の凸と同じ方向に湾曲しているときに比べて、その鏡面体12の表面形状の評価を良好側とすることができるので、鏡面体12の表面形状の評価を官能評価によるものに合致させることが可能となる。
【0074】
また、上記の実施例においては、載置台14上の鏡面体12についての実際の三次元の表面形状を得るのに、まず、光源18から鏡面体12へ向けて所定のストライプの明暗間隔で光を照射し、その鏡面体12の表面上の各格子点の座標を実測し、その後、各格子点間をB−スプライン曲線により補間するが、ライン状の光源から鏡面体12へ向けてライン状の光を照射し、隣り合うライン状のパターンからその鏡面体12の表面上の各点の座標を実測してもよい。また、及びCAD仮想形状データに基づく理想の三次元の表面形状を得るのに、その理想曲面の各格子点の座標を算出し、その後、各格子点間をB−スプライン曲線により補間するが、CAD仮想形状データに基づいてライン状の理想の曲面を得、その曲面上の各点の座標を算出してもよい。
【0075】
また、上記の実施例においては、鏡面体12の表面形状を評価するのに光源18及び受光センサ20を用いるが、検査対象である鏡面体12の曲率に応じて複数の受光センサ20や光源18を用いてもよい。また、光源18をレーザ点を照射する点光源としたが、鏡面体12の全面に光を照射する面光源とし、載置台14上の鏡面体12と光源18との間にその鏡面体12の表眼に所定の明暗パターンを形成するパターン形成部材を配設することとしてもよい。この場合、受光センサ20は、載置台14上の鏡面体12の全面を撮影可能なカメラを有してもよい。
【0076】
また、上記の実施例においては、鏡面体12の表面形状を評価するうえで対象となる反射歪みや欠点の大きさに応じた間隔で粗密にされたパターンが鏡面体12の表面に形成されるように、光源18から光を照射することが好ましい。また、上記の実施例においては、一定の明暗間隔を持ったストライプの光を照射して形状を測定することとしたが、形状を測定するために照射される光の形状として、メッシュ状に広がるパターンを持つ市松模様など、一定のパターンを持てばその繰り返し模様や明暗間隔などの様々な態様を適用してもよい。
【0077】
すなわち、上記した物体の三次元の表面形状の評価方法において、前記データ取得ステップは、コンピュータに、対象物体(鏡面体12)の三次元の表面形状を実測するうえで該対象物体へ向けて照射する光を、該対象物体の三次元の表面形状を評価するうえで対象となる局所歪みの大きさに応じた間隔で粗密にされたパターンが該対象物体の表面に形成されるように照射させることとしてもよい。
【0078】
これにより対象物体(鏡面体12)に向けて照射する光が、該対象物体の表面形状を評価するうえで対象となる局所歪みの大きさに応じた間隔で粗密にされたパターンが該対象物体の表面に形成されるように照射される。その結果、対象物体(鏡面体12)の表面形状を評価するうえで対象となる反射歪みを確実に検出し易くなる。
【0079】
更に、上記の実施例においては、三次元測定機16にて測定される鏡面体12表面の各点の隣同士の間隔が、鏡面体12の三次元の表面形状を評価するうえで対象となる反射歪みの大きさに応じた間隔に設定されることが好ましい。
【0080】
すなわち、上記した物体の三次元の表面形状の評価方法において、前記各点位置測定ステップにおいて測定される前記各点の隣同士の間隔は、対象物体(鏡面体12)の三次元の表面形状を評価するうえで対象となる歪みの大きさに応じた間隔に設定されることが好ましい。このため、対象物体(鏡面体12)の表面形状を評価するうえで対象となる局所歪みを容易に検出することができる。
【0081】
尚、上記の実施例においては、対象物体(鏡面体12)の三次元の表面形状を取得する手段として、光学式の三次元測定機16を用いるが、本発明はこれに限定されるものではなく、図7に示す如き接触式の三次元測定装置50や図8に示す如き非接触レーザ式の三次元測定装置70などを用いてもよい。
【0082】
図7に示した接触式三次元測定装置50においては、定盤52の上に評価対象の物体(鏡面体12)が載置される。物体12の表面は、三次元測定装置50に三次元XYZ座標上で移動可能に取り付けられたアーム54の先端に取り付けられた接触プローブまたは接触センサ56により所望のメッシュ間隔で測定・取得される。測定された物体12の表面の三次元XYZ座標データはデータ格納部(パソコンなど)58に保存される。データ格納部58に保存された三次元XYZ座標データは上記図4に示すフローチャートに従った方法で演算される。これにより、評価対象物体12の三次元の表面形状の二次微分値が算出される。
【0083】
また、図8に示したレーザ式三次元測定装置70は、レーザ光発振部72と評価対象物体12にて散乱したレーザ指示(レーザポイント)位置を受信するセンサ部74と、を備える。かかる構成においては、レーザ光発振部72とセンサ部74との位置関係並びにレーザ光の発振方向及び受信方向の情報に基づいて、三角測量の原理を利用して、対象物体12の表面の三次元座標を三次元測定装置70から見た相対位置情報として検知できる。また、レーザ三次元測定装置70は、車両ガラスのようにコンベア上で移動される物体12を測定する場合、受光角度を確保するためレーザ光発振部72及びセンサ部74を対象物体12の移動と共に移動させる場合がある。この場合は、対象物体12に対して不動の座標でレーザ光発振部72及びセンサ部74の位置を特定してその位置情報を合わせて用いる必要がある。その手段としては、レーザ式三次元測定装置70を、直交型3次元測定器にとりつけ、直交型3次元測定器から不動の座標情報を常に獲得する方法を用いることができる。また、多関節型3次元測定装置にレーザ三次元測定装置を取り付けてもよい。
【0084】
レーザ式三次元測定装置70にて対象物体12の三次元の表面形状を測定する場合、対象物体12が透明体であると、対象面での光の散乱が起きず測定が困難となる。この場合は、ガラス等の透明体に白色の粉末を塗るなどの処理を行い、光の正反射率を適正に制御することにより測定を行うことが可能になる。
【0085】
以後、物体12の表面の三次元XYZ座標データの測定・取得後のデータの処理は上記した接触式三次元測定装置50と同様である。
【符号の説明】
【0086】
10 評価装置
12 鏡面体
16 三次元測定機
18 光源
20 受光センサ
24 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いた物体の三次元の表面形状の評価方法であって、
対象物体の三次元の表面形状のデータを取得するデータ取得ステップと、
前記表面形状に要求される仮想形状データを算出する仮想形状データ算出ステップと、
前記表面形状のデータの2次微分値を算出する取得データ2次微分ステップと、
前記仮想形状データの2次微分値を算出する仮想形状データ2次微分ステップと、
前記表面形状のデータの2次微分値と、前記仮想形状データの2次微分値との差を算出する差分算出ステップと、
前記差に基づいて、前記対象物体の三次元の表面形状を評価する評価ステップと、
を備えることを特徴とする物体の三次元の表面形状の評価方法。
【請求項2】
前記仮想形状データ算出ステップは、コンピュータに、前記仮想形状データとして、前記対象物体に要求されている仮想的な三次元の曲面又は対象物体に要求されている複数のモデルの三次元の表面形状のデータに基づく近似曲面を算出させることを特徴とする請求項1記載の物体の三次元の表面形状の評価方法。
【請求項3】
前記表面形状のデータ及び前記仮想形状データは、空間座標を含むデータであることを特徴とする請求項1又は2記載の物体の三次元の表面形状の評価方法。
【請求項4】
前記データ取得ステップは、
前記対象物体の表面の各点の位置を測定する各点位置測定ステップと、
前記各点の位置データに基づいて、前記対象物体の三次元の表面形状を得るために格子状のB−スプライン曲線を生成して点間補間を行う点間補間ステップと、
を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の物体の三次元の表面形状の評価方法。
【請求項5】
前記対象物体が、入射光に対して正反射する面を有する鏡面体であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の物体の三次元の表面形状の評価方法。
【請求項6】
前記評価ステップは、前記鏡面体の三次元の表面形状を評価するうえで、前記差分算出ステップにおいて算出される、前記鏡面体の凹面における前記差と凸面における前記差とで重み付けを変化させることを特徴とする請求項5記載の物体の三次元の表面形状の評価方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項記載の物体の三次元の表面形状の評価方法による評価結果をフィードバックして車両用窓ガラスとして用いられるガラス板の曲げ成形条件を変更することを特徴とする車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項8】
物体の三次元の表面形状を評価する装置であって、
対象物体の三次元の表面形状のデータを取得するデータ取得手段と、
前記表面形状に要求される仮想形状データを算出する仮想形状データ算出手段と、
前記データ取得手段により取得される前記表面形状のデータの2次微分値を算出する取得データ2次微分手段と、
前記仮想形状データ算出手段により算出される前記仮想形状データの2次微分値を算出する仮想形状データ2次微分手段と、
前記取得データ2次微分手段により算出される前記表面形状のデータの2次微分値と、前記仮想形状データ2次微分手段により算出される前記仮想形状データの2次微分値との差を算出する差分算出手段と、
前記差分算出手段により算出される前記差に基づいて、前記対象物体の三次元の表面形状を評価する評価手段と、
を備えることを特徴とする物体の三次元の表面形状の評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−127936(P2011−127936A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284528(P2009−284528)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】