物体を加工するシステム
【課題】被加工物表面にガスを供給して集束ビームで前記ガスを活性化させながら加工するとともに、加工の進行状況をモニタリングできる加工システムを提供する。
【解決手段】加工システム1は開口部19から排気される真空容器2内に電子ビーム8を発生させる電子源3、集光/偏向要素21、集束レンズ11、二次電子検出器17、およびスタック23とガス導管39と物質リザーバ41とからなるガス供給装置20を備え、第3導管部30からガスを物体33の表面33aに供給し電子ビームでガスを活性化させながらを物体に照射し、堆積またはアブレーションにより加工する。また、電子ビームを走査させ、物体から発生した二次電子を二次電子検出器で検出し電子顕微鏡画像を取得して、加工の進行状況をモニタリングする。
【解決手段】加工システム1は開口部19から排気される真空容器2内に電子ビーム8を発生させる電子源3、集光/偏向要素21、集束レンズ11、二次電子検出器17、およびスタック23とガス導管39と物質リザーバ41とからなるガス供給装置20を備え、第3導管部30からガスを物体33の表面33aに供給し電子ビームでガスを活性化させながらを物体に照射し、堆積またはアブレーションにより加工する。また、電子ビームを走査させ、物体から発生した二次電子を二次電子検出器で検出し電子顕微鏡画像を取得して、加工の進行状況をモニタリングする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体を加工するシステムに関する。
【0002】
具体的には、本発明は物体を加工するシステムであって、物体の表面の所定の場所に、堆積又はアブレーションを行うように設計されているシステムに関連する。更に具体的には、本発明はプレート構造によって形成されるガス供給装置を備える、物体表面を加工するためのシステムに関連する。
【背景技術】
【0003】
当該技術分野の状況では、被加工物体表面にガスを供給するためのガス供給システムや、物体表面の位置に活性化ビームを向けるための、ビーム源及びビーム光学系を備える加工システムが公知である。ガス供給装置は、特定のガスを物体表面の被加工部分に供給するように設計されている。活性化ビームは、電子ビーム、イオンビーム、又は、光子ビームであっても良く、物体表面の被加工位置に良好に集束させることができる。その部分に収束した、ガス供給装置より供給されたガス分子は、活性化ビームとの相互作用により、活性化されて、励起状態又は回転、オシレーション及び/又はバイブレーション状態に入り、化学反応性が変化する。従って、ラジカルも形成され得る。物体表面において吸収されたガス分子は、例えば、1次及び/又は2次電子などの、活性化ビームとの相互作用により活性化され、次いで、それら自身で反応するか(例えば、物体表面との相互作用によらない、分子の誘発分解)、又は、物体表面に存在する分子の元素と反応する。使用された反応ガスと、物体表面に存在する基材原子、元素または分子によっては、物体表面からの材料のアブレーションや、物体表面への材料の堆積に至ることがある。特に、電子ビームまたはイオンビームのような粒子ビームである、活性化ビームの焦点を精密に合わせることができるので、上記の方法は、微細構造の作成および加工において、特に有利に用いられ得る。
【0004】
例えば、独国特許出願公開第10208043号A1明細書より、物体表面におけるガス供給配列によって供給されるガスが、電子ビームによりアクティベートされ、材料のアブレーションおよび堆積をもたらすような、材料加工システムが公知である。よって、加工の進行は、電子顕微鏡画像の取得によってモニタリングできる。従って、ガスは、物体に対して横断方向にあるガス排管の端に配置されるガスノズルを経て供給される。従来のガス供給システムを、活性化ビームおよび/または分析ビームの光学系と組み合わせることは難しいことが明らかになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10208043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上述の課題を低減させるような加工システムを提供することである。具体的には、本発明の目的は、反応ガスが単独に反応するか、または、物体表面において、局所的にいくつかの反応ガスが相互に反応するか、物体表面といくつかの反応ガスが局所的に反応することを誘発できる材料加工システムであって、同時に、分析ビームを用いた加工状態の的確な分析が可能なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施例によれば、物体を加工するためのシステムは、物体にガスを供給するガス供給装置と、ガスを活性化させるための少なくとも一つの活性化ビームを生成するためのビーム源と、そして、物体に少なくとも一つの活性化ビームを向けるためのビーム光学系とを備えて提供される。従って、ガス供給装置は、活性化ビームのビーム方向に対して横断方向に延びる、平坦側面が隣接している複数のプレートのスタックを備え、そのプレートのスタックは、活性化ビームが物体に向かって横断することを可能にし、そして、そのプレートスタックは、少なくとも1つのガス吸気口と、被加工物体に一番近くなるように配置された、プレートスタックの平坦側面に配置された少なくとも1つのガス排気口を備える。従って、平坦側は実質的に平面であるか、または、他の実施形態においては、表面に凸部または凹部を構成していてもよい。
【0008】
ガス吸気口およびガス排気口は、スタック内に形成されたガス導管系により、相互に接続されており、そのガス導管系は活性化ビームの横断部から離れた位置から活性化ビームの横断部に近い位置に延びる、少なくとも1つの導管部を備える。実施形態において、この導管部は、ミキサー、弁、発熱体、冷却素子またはセンサのような、特別な素子を備え得る。
【0009】
従って、スタックのプレートは、ガスまたは不要なガス反応産物をプレートスタックと物体表面の間の空間から放出するように構成され得る。
【0010】
ガスを活性化させることは、ガスの、イオン化、励起状態の創出等を含む。一般的に、ガスは、プレートスタックに入る時よりも、より高いエネルギー状態に設定されている。従って、加熱素子を用いた加熱のような、プレ活性化も、プレートスタック内で行うことができる。活性化済みのガスは、活性化ビームとの相互作用のために、それ自体または物体表面の材料と化学反応して、表面を変形させることができる。この変形は、表面からの材料のアブレーションおよび/または表面への材料の堆積を含み、また、表面における電荷補償も含み得る。
【0011】
活性化ビームが光子ビーム、具体的には光線を含む場合には、ビーム光学系は、光学レンズ系、ミラーおよび回折素子を含み得る。活性化ビームが電荷粒子線、具体的には、イオンビームまたは電子ビームを含む場合には、ビーム光学系は電気偏光素子と、磁気および静電レンズを含み得る。
【0012】
プレートの平坦側とは、プレートの最大拡張の平面に広がるプレートの側面である。平坦側に対して実質的に直角の側面を、プレートの正面またはスタックの正面と称する。プレートは、平面で隣接し、相互に接続できる。接続は、ネジ、ボルトまたはピンのような、機械的接続素子によって行われ得る。また、接続は、溶接、ハンダ付け、焼結または溶融のような熱加工か、または、反対側の平坦面に塗布された接着剤またはウェーハボンディングによっても行われ得る。ウェーハボンディングの背景情報は、Taraschi Gらによる、文献「Strained Si, SiGe, and Ge on-insulator: review of wafer bonding fabrication techniques」、SOLID-STATE ELECTRONICS 48 (8), 1297-1305, 2004.に記載されている。
【0013】
活性化ビームは横断的に、特に、実質直角に、スタックを横断する。これにより、光子線は、光学的に透明な窓を横断することができる。粒子線は、スルーホールを通って横断できる。
【0014】
プレートスタック内部の導管部は、延在方向に沿って変化し得る異なる断面形状を有することができる。導管部は、その全長の一部または全体にわたって、円、半円、矩形または台形のような断面形状を有し得る。従って、ガス供給装置の導管部に沿う、導管の断面サイズおよび形状は、流れの技術的要件に従って設計される。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、導管部の長さとスタックの厚さの比率は4より大きく、特に10より大きい。スタックの厚みは、スタックを形成するプレートの平坦面に、実質的に垂直なスタックの正面の広がりである。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、スタックが、導管部を全長に渡って画定する第1プレートと第2プレートを備える。従って、導管部は、両プレート平坦面に実質的に平行に延びる。
【0017】
他の実施形態においては、スタックは3つの隣接するプレートによって形成されており、導管部は第1の隣接するプレートの組によって形成され、さらなる導管部は第2の隣接するプレートの組によって形成され、このとき、スタックの導管部は相互に接続されるか、または、別々のガス排気口に導かれる。このように、導管部は、異なるスタックのレベルにおいて形成され得る。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、ガス吸気口は、物体から最も遠くに配置されるスタックプレートの平坦面に配置される。これにより、ガスは、平坦側からスタックの導管系に供給され得る。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、ガス吸気口は、スタックの正面側に配列される。上述のように、スタックの正面は、スタックを形成するプレートの平坦面と実質的に直角をなして広がる、スタックの側面であると理解されよう。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は複数のガス吸気口を備え、物体に複数の異なるガスを供給できるようにする。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は、複数のガス排気口を備え、物体に複数の異なるガスを別々に供給できるようにする。従って、複合化学反応が物体表面で行われ、表面が加工できる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置はガス導管系を通じて、共通のガス吸気口に結合されている複数のガス排気口を備える。これにより、物体表面付近における、広範にわたるガス均一な分布が達成され得る。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、ビーム源は複数の活性化ビームを生成するために構成され、そして、ビーム光学系は、物体上の互いに離れた位置に複数の活性化ビームを向けるように構成されている。このように、同時に複数の場所を加工または検査することが可能である。ここで、ガス供給装置の1つの排気口に、複数の活性化ビームが照射されてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、ガス導管系を経て共通のガス吸気口に接続されている、ガス排気口の数は、活性化ビームの数と同等かそれ以上である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの活性化ビームが、電子ビーム、イオンビーム、光子ビームの少なくとも一つを含んでいる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのイオン検出器または光子検出器を備え、活性化ビームにより物体から放出されたイオンまたは光子を検出する。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、システムは、少なくとも1つの電子検出器を備え、活性化ビームにより物体から放出される電子を検出する。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、ビーム光学系は対物レンズを備え、物体上で活性化ビームの焦点を合わせる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、ビーム光学系はビーム偏光器を備え、活性化ビームが物体全体を走査できる。
【0030】
よって、本発明の実施形態に従うシステムは、走査型電子顕微鏡を含む。
【0031】
他の実施形態においては、システムは、イオンビーム装置を備え、集束したイオンビームを生成および指向的に偏光させ、また、イオンビームにより物体から放出された粒子または光子を検出する。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、物体表面の最も近くに配置されるか、その反対側に配置されているプレートスタックは、電気伝導性の表面を備え、また、その電気伝導性の表面は所定の電位に電気的に接続されている。よって、物体および/または荷電された粒子活性化ビームのビーム管とスタックとの間に、適切な電圧を印加し、検出器(特に、電子検出器)に到達する荷電粒子(特に、物体から放出された電子)を生じさせると、物体表面の探査が可能となる。これにより、画像化品質は、改善され得る。更に、画像化や加工を妨げる不要な荷電を予防できる。電気伝導性材料は、スタック内部または物体の被加工表面からは離れたスタックの側面に配置され、電源に電気的に接続され得る。
【0033】
加工システムは、ガス供給装置、ビーム源、ビーム光学系および検出器(特に、電子検出器)が配置されている、真空容器を含み得る。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、システムは、少なくとも1つのスタックのガス吸気口に通気的に接続されている、物質リザーバを少なくとも1つ備えている。従って、物質リザーバは、真空容器内に含まれ得る。しかし、実施形態に応じて、真空容器の外側でも配置され得る。また、1つまたは複数の、機械式、空気圧式または電気式の弁は、リザーバとガス排気口との間に備えられ得る。
【0035】
本発明の一実施形態では、物質リザーバは、前駆ガス、具体的にはオルガニル類(organyles)、金属オルガニル類、含酸素化合物、含窒素化合物、有機化合物、無機化合物、ハロゲン化物含有化合物またはこれらの組み合わせを含む。
【0036】
更に、物質リザーバは、フッ化タングステン、塩化アルミニウム、塩化チタン、フッ化チタン、無機金の前駆体または他の塩化金またはフッ化金を含み得る。
【0037】
本発明の一実施形態では、物質リザーバは、He、Ne、Ar、Xe、Krまたは/およびN2のような、パージガス(特に不活性ガス)を含む。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は、更に、プレートスタックにテンパリング装置を備え、ガス導管部に存在するガスを冷却および/または加熱する。このように、ガスは、物体表面に供給される前に、所望の温度とすることができる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は、少なくとも2つのガス吸気口と、更には、プレートスタックにミキサーを備え、少なくとも2つのガス吸気口を通ってガス導管部に入ってくる、2つの異なるガスを混合する。このように、物体表面の加工に適したガス混合物は、物体表面にガス混合物を供給する直前に提供され得る。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は、更に、ガス導管部に含まれるガス圧を測定するための圧力センサをプレートスタック内に備える。
【0041】
本発明の応用分野は、(ナノ)インプリントリソグラフィのためのスタンプの製造または加工にある。更に、応用分野は、半導体産業において集積回路を製造するための光学リソグラフィのマスクの加工にもある。従って、マスク構造は、照明光学系および対物レンズを用いて、感光レジストを塗布したウェーハにイメージングされる。これにより、マスク構造はウェーハ上へ縮小してイメージングされる。リソグラフィマスクは、概して、非常に微細な構造であり、従って、これに応じた微細なウェーハ構造を可能にして、完成品における高集積回路を実現する。従って、マスク構造の構造品質の高さが求められ、これは、インプリントリソグラフィについても同様である。この高い構造品質は、このようなリソグラフィマスクの従来の製造方法では達成できない。従って、リソグラフィマスクは、マスク構造に必須の構造品質をもたらすために後加工される。これにより、記載された加工システムが、有利に用いられる。そして、マスクは複数の高集積半導体部品を製造するために用いられる。将来的には、パイプコンダクトおよびカニューレを備える従来のガス供給システムを利用しない、物体加工のためのマルチ光線システムが期待される(例えば、マッパーリソグラフィ(Mapper-lithography))。
【0042】
本発明の材料加工システムは、有利には、リソグラフィのためのマスクを修理するために用いられ得る。これにより、2つの異なるビームタイプ、例えばイオンビームおよび電子ビームが生成され得る。特に、本発明の材料加工システムが、微細構造を「直接書込」するために用いられ得る。本発明のシステムによって、表面において、ナノメートル単位の広域微細構造が実現できる。有利には、反応ガスとして、材料の堆積または基板材料のエッジングをもたらす前駆物質または前駆体が、エネルギー粒子(光子、電子、イオン、分子、クラスター等)によって活性化される直前まで用いられ得る。よって、反応性のある前駆物質が、本発明のガス導管およびノズルシステムを経て基板表面に直接導かれる。反応ガスは、直接書込工程の間、制御されながら、供給、混合、分配され得る。このようにして実現される直接書込によって、三次元構造が製造できる。金属、更には絶縁物質が堆積できる。
【0043】
本発明によるガス供給システムは、微細構造技術に基づいて実施され得る。被加工物体の表面へのガス供給は、理想的には複数の位置で行われ、前駆物質の均一な分配を確実にする。
【0044】
本発明の加工システムは、ナノ構造の直接書込のためだけに用いられるのではなく、むしろ、表面変形、表面加工、既存のマイクロおよびナノ構造の変形のために利用できる。よって、複数の位置において前駆体物質を供給できる。異なる前駆体物質が供給されれば、物体表面で局所的に複合の化学加工を実行できる。ナノ構造の製造は、
・複数の金属化合物のうちの1つ、具体的には、非有機金属前駆体または金属オルガニル類(organyles)を供給して、それらを固体金属堆積物に分解する、
・さまざまな化合物の可分解オルガニル類(organyls)を、高含有の含酸素化合物と共に供給して、含酸素化合物を固体酸化堆積物に分解する、
・さまざまな化合物の可分解オルガニル類を高含有の含窒素化合物と共に供給して、含窒素化合物を亜硝酸堆積物に分解する、
・有機化合物類を供給して、それらを炭素堆積物に分解する、
・揮発性の無機または有機化合物類を供給して、それらの含有分子のうちの1つまたは複数を、局所的な堆積に分解する、
・含ハロゲン化合物類を供給して、それらを、基板材料を局所的にエッチングする、反応性ハロゲン成分に分解する、
・含酸素化合物類を供給して、酸素成分の局所的放出により、基板材料を局所的に酸化する、
・含窒素化合物類を供給して、窒素成分の局所的放出により、基板材料と窒素との局所的反応を誘発する、
・そして、揮発性の無機または有機合成物を供給して、資料表面と局所的に反応する際にそれらが分解する
等の、化学的工程により実行される、本発明の直接書込によって実施できる。
【0045】
本発明の材料加工システムによれば、物体の加工中に、物体表面においてほぼ均一なガス濃度が維持される。よって、圧力範囲は、例えば、10mbar〜10−6mbar、特に、10−3mbar〜10−5mbar、更に具体的には、約10−4mbarが主流である。
【0046】
ガス供給システムのプレートは、光学的に透明であるシリコンまたはシリコン酸化物であってもよい。その上に、導電層が装着されて、荷電粒子ビーム、特に、電子ビームが、活性化ビームまたは分析ビームとして用いられる場合に、適切な電位をガス供給装置に印加する。物体表面を加工する加工方法において、ガス供給システムの複数のガス排気口と物体表面との間に非層流ガスが発生するが、ガス供給システムの導管系内で層流ガスが生成され、ガスは分子ビームとしてふるまう。
【0047】
ガス供給装置のガス排気口は、スリット形、半月形、円形等のような様々な形状の横断面または長手方向断面を有し得る。ガス供給システム内のチャネルまたはパイプは、ガスの流れ方向に沿って、異なる幅または断面サイズを有し得る。本発明のガス供給システムのガス導管系において、物体を加工する操作の間の圧力は、0.01〜10mbar、具体的には0.1〜1mbarが一般的である。電子ビームまたは他の荷電粒子ビームを使用する場合、ガス供給装置は粒子ビームが横断するようにホールを備え、そのホールは、粒子ビームを用いて表面を操作する間の偏向範囲に対応し得るサイズを有する。
【0048】
本発明の加工システムは、リソグラフィのためのマスクを補修するために用いられ得るのみではなく、また、集積回路を補修するためにも用いられ得る。更に、本発明の加工システムは、(三次元または層状二次元の)スタンプであって、(反復)構造を有するものを製造するために利用でき、このスタンプは、基板にインプリント(ナノインプリント)して複数の微小反応管を製造することを可能にする。
【0049】
本発明の加工システムを用いて、いわゆる「ナノインプリントマスク」を製造することもできる。本出願は、生物工学的および薬学的進歩に特に関連する。また、ナノインプリントリソグラフィのテンプレートも、本発明のシステムを用いて加工できる。更に、カーボンナノチューブまたはシリコンナノワイヤも、本システムを用いて製造または加工できる。
【0050】
本発明の加工システムを用いて、基板においてチオール基が選択的に結合して金が堆積し得る。例えば、タンパク質のような生体分子はチオール基を有し、チオール基を介してそれらは、金堆積が施された基板に結合し得る。
【0051】
本発明のシステムを用いて製造される最小の金属構造は、電子光学系(プラズモニクス)用途にも適している。
【0052】
本発明のシステムは、添付の図面と関連して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例に従う、物体表面を加工するシステムの概略図を示す。
【図2】本発明の一実施例に従う加工システムの部分的概略図を示す。
【図3a】本発明の一実施例に従うガス供給装置の導管系の構造を示す。
【図3b】本発明の一実施例に従うガス供給装置の導管系の構造を示す。
【図4a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図4b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図4c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図5a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図5b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図5c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図6a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図6b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図6c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図7a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図7b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図7c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図8a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図8b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図8c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図9a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図9b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図9c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図10a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図10b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図10c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図11a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図11b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図11c】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図11d】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図11e】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図12a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図12b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図12c】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図13a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図13b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図14a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図14b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図14c】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図15a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図15b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図15c】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図15d】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図16a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図16b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、本発明の一実施例に従う、物体表面を加工するためのシステム1の断面図を示す。システム1は、開口部19を経て、図示しない真空ポンプシステムに接続される真空容器2を備える。真空容器2内に、軸15に沿う電子ビーム8を生成するための陰極として構成される電子源3が配置される。尚、システム1は、集光/偏光要素21を備え、電子ビーム8を集光または偏光する。
【0055】
電子ビーム8はビーム管5に囲まれており、そのビーム管には、例えば、+8kVほどの、高い陽電位が電極端子7および電圧源を経て印加され得る。ビーム管に印加された電位は、電子源3とビーム管5の間、および、物体33の表面33aに向かう電子を加速させる、ビーム管5の一部分内で、電場を発生させる。従って、物体33は、物体テーブル34において保持される。電子ビームは、軸15に沿って進み、物体33の表面33aのポイント35において衝突する。電子ビームを集束させるために、集束レンズ11は、電子ビーム8の周囲に環状に配置される。集束レンズ11は、磁気レンズおよび静電のイマージョンレンズの組合せである。従って、磁気レンズは、内部ポールピース10および外部ポールピース9を備えている。コイル13での電流によって、ポールピース9,10を通る電磁流が誘導によって生成され、磁場がアキシャルギャップ16の領域で発達する。この磁場が電子ビーム8を集束させる。
【0056】
反応ガスの供給時に、ビーム管5と電極版18との間に適切な電圧を印加することで、電子源3から放出されて、最初に、電子源とビーム管との間の電場によって加速された一次電子を、物体33の表面33aのポイント35における材料の堆積またはアブレーションに適した、約1keVの一次エネルギーまで減速できる。ビーム管5と電極板18の間に電圧を印加することに代えて、または、それに加えて、ビーム管5とガス供給装置20の間の電圧を電源に接続する電極端子36を用いて印加できる。従って、動作中は、電気引力場(electrical pulling field)が、物体33の表面33aとアキシャルギャップ16周囲のスペースの間で構築され、物体33の表面33aから生じた電子が電子検出器17に至ることを可能にする。
【0057】
加工位置35の周囲で、物体33の表面33aの表面部分を走査することによって、このレンズ内検出器17が、加工位置35の周囲の表面部分からの電子顕微鏡画像を取得して、加工の進行をモニタリングし、さらなる加工を行うか否か決定することを可能にする。
【0058】
本発明の加工システムの実施態様に従うガス供給装置は、プレートの最大拡張(プレートの平坦側の平面)の平面25において平面接続して、スタック23を形成する上プレート22および下プレート24を備える。スタック23は、電子ビーム8の軸15に対して、実質的に直角方向の平面に広がる。スタック23は、その中心に貫通孔47を呈し、それを通じて電子ビーム8が、電子源3から軸15に沿って、物体33の表面33aにおける衝突ポイント35に到達する。
【0059】
この実施形態の両プレート22および24は、金属、セラミック、ポリマー、または/および、半導体材料、特にSi、SiO2またはSi3N4を含む素材から製造される。図1は、側面図(正面図)の断面であり、両プレートを貫く、両プレートの平坦面に垂直な断面が図示されている。従って、最大限に拡張した平面は、図1に示した平面に対して垂直に広がる。
【0060】
上プレート22は、図1に示した断面領域の下側を示し、従って、スタック23において、第1導管部26(長手の、パイプ状の管9)は、上プレート22によって上から、下プレート24によって下から画定される。本明細書に記載した第1の導管部はパイプの形状をしており、従って図1において矩形領域として示されている。2つのプレートうち1つだけに、凹所を設け、凹所のないプレートをカバーとして凹所のあるプレートを閉じることで導管系を形成できる。さらに、2つ以上のプレートが、スタックを形成し、その内部でスタックの異なる段において異なる導管部が形成され、段の間の管に接続されるか、または、別々のガス排出口につながれる。
【0061】
スタック23の上プレート22は、さらに、通気的に第1導管部26と連通するガス吸気29を備えるガス吸気第2導管部28(ガス吸気口)を呈する。さらに、上プレート22は、ガス導管39が物質リザーバ41につながっているガス端末37を呈している。従って、物質リザーバ内の物質は、ガス導管39および第2導管部28を経て、スタック23内部のキャビティ26に、気体として到達する。ガス流を制御するために、バルブ43は、ガス端末37の近くに配置され、バルブは、図示しないバルブ制御装置に接続され、バルブを制御する。
【0062】
下プレート24は、ガス排気31を有する第3導管部30(ガス排気口)を呈する。第3導管部30の軸30’の、軸15からの距離はd1になる。上プレート22における、第2導管部28の軸28’の、軸15からの距離はd2になる。距離d2がd1より大きいことは、明らかである。第3導管部30は、ガス排気31を経て、第1導管部26に存在するガスを、物体33の表面33aに供給できるようにする。図1に示すように、ガス排気31は、物体33の表面33aの加工位置35付近に位置する。従って、物質リザーバ41に存在する物質は、ガス導管39、第2導管部28、第1導管部26、第3導管部30、および、ガス排気31を経て、材料の堆積または材料のアブレートのために、もしくは、電子ビームによって物体をアクティベートした後に、その表面における荷電を相殺するために、好適な方法で加工位置35に到達する。図1に示すガス供給装置20によって、物体表面において広く均一な反応ガス濃度がもたらされ、効果的な加工が可能となる。図2に、本発明に従う加工システムの、更なる実施形態1の部分断面図を示すが、ここでは図1に示した多くの構成要素は再度表示しない。これらの構造および機能は、図1や対応する説明から理解されよう。図1に示した実施形態に相当する構成要素には同じ参照番号に符号「a」を付して示す。
【0063】
加工システム1aは、ガス供給装置20aを備えている。ガス供給装置20aは、スタック23aを備え、これは、相互に積み重なる、3つのスタックしたプレート22a、27a、および24aで形成される。それぞれの平坦側部に、上プレート22aおよび中央プレート27aが接続され、また、中央プレート27aおよび下プレート24aが接続される。スタック23aと、プレート22a、27a、および24aは軸15に垂直な平面に、それぞれ広がる。図1と図2も、スタック23aを通る断面を示し、この断面は、プレート22a、27a、および24aの平坦面(最大拡張平面)に対して垂直な位置関係である。
【0064】
スタック23aは、内部に、軸15の両側に第1導管部26aを有する。従って、第1導管部26aは、上プレート22aによって上から、下プレート24aによって下から、それらの全長にわたって、それぞれ画定される。図2の断面平面においては、中央プレート27aが、この領域において、中央プレート27aの全厚にわたる開放領域を有する。従って、第1導管部26aは、この開放領域を、上プレート22aによって、上から閉じ、下プレート24aによって下から閉じることによって形成される。図1に示したガス供給装置20のように、ガス供給装置20aも、通気的に、ガス端末37aおよびガス導管39aを介してリザーバに接続されている、ガス吸気29aを有する第2導管部28a(ガス吸気口)を備える。従って、反応ガスは、第1導管部26aに導かれ得る。
【0065】
物体33の表面33aに反応ガスを供給するために、ガス供給装置20aは、さらに、ガス排気31aを有する第3導管部30a(ガス排気口)を備える。また、第3導管部30aと、軸15aの間の距離d1は、第2導管部28aと軸15の間の距離d2よりも小さい。従って、反応ガスは、軸15aから遠く離れた場所から、物体33の加工位置35に導かれ得る。従って、加工位置35において、反応ガスを局所的にアクティベートさせて、物体を加工できる。
【0066】
図3aおよび3bは、本発明に従うガス供給装置の更なる実施形態20bを示し、このとき、図3aでは、ガス供給装置20b(図1および2のような)の平坦側に対して垂直な断面を示し、図3bでは、軸15に沿った、ガス供給装置20bの下面図を示す。図3aおよび3bに示す、ガス供給装置20bは、上プレート22bと下プレート24bを備え、また、スタックの正面に配置された端末37bも備えている。この端末を経て、ガスは、上プレート22bおよび下プレート24bによって形成されたスタック23bの内部に備えられた第1導管部に供給され得る。6つの第3導管部30bに位置する、6つのガス排出31bを経て、ガスは、下プレート24bの下に位置する物体(図示しない)の表面に供給され得る。図3bは、第1導管部26bの形状を破線で平面図に示す。従って、この第1導管部26bは、1つのガス端末37bが6つの第3導管部30bに接続するように設計されている。
【0067】
図4a〜4c、5a〜5c、6a〜6c、7a〜7c、8a〜8c、9a〜9cおよび10a〜10cは、本願の実施態様に従う、ガス供給装置20d、・・・、20jの、第3導管部30d、・・・、30jについての様々な配置を示す。図4a、5a、6a、7a、8a、9aおよび10aは、上プレート22d、・・・、22jのそれぞれについての軸15に沿った、概略平面図を示し、および、図4c、5c、6c、7c、8c、9cは、下プレート24d、・・・、24jのそれぞれについての概略平面図を示す。図4b、5b、6b、7b、8b、9bおよび10bにおいて、ガス供給装置のプレートの平坦面の平面と直角をなす横断面は、それぞれ、図1、2および3の図に類似した図に示す。よって、図4bおよび5bは、それぞれ、矢印4bおよび5bで示す切断線従う、図4aおよび5aの断面図を示し、他のすべての断面は、それぞれの中間を通る直線に従う断面図を示す。図4a〜10cに示したガス供給装置のすべての実施形態は、それぞれ、上プレート22d、・・・、22jおよび下プレート24d、・・・、24jを備える。図9a〜9cおよび10a〜10cに示した実施形態は、それぞれ、下プレート24iおよび24jに続くプレートをさらに備え、第3導管部30iおよび30jをそれぞれ精密に構成できるようにする。
【0068】
図4a、5a、6a、7a、8a、9aおよび10aは、それぞれ、第2導管部28d、・・・、28jの断面図を示す。ここで示す実施形態において、それらは、円形形状を有する。必要に応じて、他の断面形状も選択され得る。図4b、5b、6b、7b、8b、9bおよび10bにおいては、第3導管部30d、・・・、30jの長手方向断面図がそれぞれ示される。このような、第3導管部30d、・・・、30jの長手方向断面図は、矩形、三角形、台形、半円のような規則的な形状、または、不規則な形状をとり得る。図4c、5c、6c、7c、8c、9cおよび10cには、第3導管部30d、・・・、30jの断面を示す。それらは、矩形、円形、楕円(elypse)形のような規則的な形状または不規則な形状をとり得る。第3導管部の横断面および/または長手方向断面図の形状の適切な選択によって、物体表面対する所望のガス供給特性が得られる。
【0069】
図11a〜11eは、本発明に従うガス供給装置を、それぞれ、異なる視点および異なる断面から見た場合の、更なる実施態様20kを示す。従って、図11aは、ガス供給装置20kを、軸15に沿う視線で見た平面図を示し、これは、ガス供給装置20kを形成するプレート20k、27k、および24kの平坦側から見た平面図であることを意味する。図11bおよび11cは、縦断面図を側方から見た図を示し、これは、ガス供給装置20kを、それぞれ図11aにおける矢印11bおよび11cによって示される破線に沿って切断し、対応する矢印の方向から見ることで得られる。図11dおよび11eは、縦断面図を側方から見た図を示し、これは、ガス供給装置20kを、それぞれ図11aにおける矢印11dおよび11eによって示される破線に沿って切断し、対応する矢印の方向から見ることで得られる。
【0070】
本実施形態において、ガス供給装置20kは、4つのスルーホール47k1、47k2、47k3および47k4を備え、これは電子ビーム81、82、83および84がガス供給装置20kを通過して、物体33の表面33aへ届くことを可能にする。ガス供給装置20kはさらに、複数の第3導管部30k1、・・・、30k10(ガス排気口)を備えている。従って、4つの第3導管部30kは、各スルーホール37k1、・・・、37k4の周囲に配置され、4つの加工位置に反応ガスを供給し、その反応ガスは、4つの電子ビーム81、・・・、84を用いて加工される。
【0071】
前述の実施形態とは対照的に、図11a〜11eに記載したガス供給装置20kにおいては、3つのプレート27k、22k、27kが備えられ、第1導管部は上プレート22kおよび中間プレート27kによって画定され、第4導管部26k4は、中間プレート27kおよび下プレート24kによって画定される(図11d参照)。このように、導管部26k1および26k4は、結果としてスタック23kの2つの異なるレベルに配置される。これらの2つの導管部26k1および26k4は、通気的に、上プレート22kの上平坦面に配置されているガス端末37k1および37k2にそれぞれ接続される。導管部26k1は第3導管部30k1、・・・、30k5に接続している、そして、導管部30k4は第3導管部30k6、・・・、30k10に接続している。このように、図11a〜11eに記載されたガス供給装置の実施形態20kを用いて、複数の位置で同時に物体被加工表面が加工でき、かつそれらの場所において、2つの異なるガスを同時に供給できる。このように複雑な、本発明に係るガス供給装置のガス導管系を用いて、物体33の表面33aの加工位置35において、2つの異なるガスが供給でき、バラエティーに富む加工方法が可能となる。
【0072】
図12a、12bおよび12cは、本発明によるガス供給装置の実施例20lを示す。図12aは、ガス供給装置20lの平坦側図を示し、すなわち、該装置の平面図を示す。図12bおよび12cは、ガス供給装置20lを、図12aにおいて矢印12bおよび12cで示す線でそれぞれ切断し、矢印の方向から見た場合のガス供給装置20lの断面図を示す。ガス供給装置20lは、一番上のプレート22l、上から2番目のプレート22l´、中間プレート27l、下から2番目のプレート24l´、そして、一番下のプレート24lを備え、それぞれの平坦面が隣接している。プレート22l、22l´、27l、24l´および24lにより形成されるガス供給措置20lのスタックの正面において、ガス端末37l1は最上面22lおよび上から二番目のプレート22l´の間に配置されて、第1のガスを供給する。第1のガスは、スタックの平坦面に対して平行に延びる導管部26l1に到達し、そこから、実質的にスタックの平坦面に対して垂直な、導管部26l3を経て、ミキサー50に達する。第1のガス端末37l1が、ガス供給装置20lのスタックの上から二番目のプレート22l´および中間プレート27lの間に配置されている、スタックの正面において、第2ガス端末37l2が第2のガスを供給するように配置されている。スタックの平坦側と実質的に平行に走る導管部26l4を経て、第2のガスがミキサー50に到達する。このミキサーは、第1のガスおよび第2のガスを混合するための受動素子であって、また、混合補助素子51および52により構成され、それらはそこを通過するガスを旋回および混合させる。例えば、素子51および52は、シーブまたはグリルによって形成される。第1のガスおよび第2のガスの混合によって得られたガス混合物は、最下プレート24lおよび下から2番目のプレート24l´の間に形成された導管部26l5に到達する。そこから、ガス混合物は、導管部30lに到達して、排気口31lからガス供給装置の外へ出て、図12bおよび12cに示したスタックの下に配置された物体に供給される。このように、図12a、12bおよび12cにおいて示した、本発明によるガス供給装置20lの実施形態は、混合物が物体表面に供給される前に、該装置内において2ガスを混合できる。更に、図12aにおいて、スルーホール47lは、2つのガス排気口21lの間にそれぞれ配置されており、電子ビームを横断させて、物体表面においてガス混合物をアクティベートできるようにする。スタックの平坦面に対して実質的に垂直に配置された、ガス供給装置20lのミキサー50が、スタック内のガス供給装置導管部において、両方のガスを混合させることに留意されたい。このようなミキサーは、垂直ミキサーとも称されている。
【0073】
図13aおよび13bは、本発明によるガス供給装置の実施形態20mを示す。図13aは、ガス供給装置20mの平面図を示し、図13bは、ガス供給装置20mを図13aにおいて矢印13bで示す線で切断して得られた断面を、矢印の方向から見た図を示す。ガス供給装置20mは、上プレート20m、中間プレート27mおよび下プレート24mを備えている。プレート22m、27mおよび24mによって形成されたスタックの正面においては、上プレート22mと中間プレート27mの間に第1ガスを供給するための第1ガス端末37m1が配置されている。供給された第1ガスは、スタックの平坦側に対して実質的に平行な導管部26m1およびスタックの平坦側に対して実質的に垂直な導管部26m3を経て、水平ミキサー54に到達する。ガス供給装置20mの、プレート22m、24mおよび27mにより形成されたスタックの、同じ正面側において、中間プレート27mと下プレート24mとの間にガス端末37m2が配置され、第2のガスを供給する。第2のガスは、スタックの平坦側と実質的に平行な導管部26m2を経て、水平ミキサー54に到達する。水平ミキサー54は、シーブ、グリル、および/または、第1のガスおよび第2のガスが互いに混合するための他の混合補助素子を含み得る。導管部30mを経て、ガス混合物は、ガス排出口31mからガス供給装置を出て、図13bのスタックの下に配置されている物体表面に供給される。図13aに図示するように、ガス供給装置20mは、更にスルーホール47mを備え、電子ビームがガス供給装置20mを貫通して物体表面でガス混合物を活性化できるようにする。従って、図13aおよび13bに示した、ガス供給装置の実施形態20mを用いて、水平ミキサーによって、ガス供給装置内の2つの異なるガスをスタックに平行な導管部内で混合して、ガス混合物を被加工物体の表面に供給できるようにする。
【0074】
図12a、12b、12cと、13aおよび13bに示した、ミキサー50および54は、2つのガスを混合するためのマイクロモーターのような能動素子を備えてもよい。
【0075】
図14a、14bおよび14cは、本発明に従うガス供給装置の実施形態20nを示す。図14aは、ガス供給装置20nを平坦側から見た図を示し、すなわち、平面図である。図14bおよび14cは、矢印14bおよび14cで示した線で切断した断面を、それぞれ矢印の方向から見た図を示す。ガス供給装置20nは、上プレート22n、中間プレート27nおよび下プレート24nによって形成されるプレートのスタックを備え、これらのプレートは、それぞれ平坦側で隣接している。ガス供給装置20nにおける、プレートスタックの正面に配置されたガス端末37nによって、ガスがガス供給装置20nに供給されて導管部26nに到達できるようにする。基本的には、導管部26nは、スタックを形成しているプレート22n、27nおよび24nの平坦側と平行して延びる。中間プレート27nに面して、上プレート22n内にセンサ56が配置され、その上プレート22nからは、電気端末58がガス供給装置から突き出している。電気端子58を経て、センサ56の測定信号は、外部コントローラに導かれ得る。センサは、上プレート22nおよび中間プレート27nの間に配置されたマイクロ機械式圧力センサであってもよい。例えば、センサの電極561は上プレート22nに配置されても良く、圧力センサのセンサ電極のような、センサの更なる電極562は、反応ガスが存在する導管部26nに当接できる。圧力センサ56を使用して、導管部26nに存在する反応ガスの圧力が測定できる。圧力センサに代えて、または、それに追加して、更なるガスフローセンサが、ガス供給装置26nの内部に配置されて、ガスフローを測定できる。決定したガス圧力またはガスフローが、物体加工の最適化のために、有利に活用できる。ガスは、被加工物体の表面に、導管部30nおよび排気口31nを経て供給され得る。
【0076】
図15a、15b、15c、および15dは、本発明に従うガス供給装置の実施形態20pを示す。ここでも、図15aは、ガス供給装置の平面図を示し、図15b、15cおよび15dは、矢印15b、15cおよび15dによって示される線に対応する断面図を示す。ガス供給装置20pの多くの素子は、前述したガス供給装置のそれらと類似するため、それらの詳細な説明は省略する。前述のガス供給装置の実施形態とは対照的に、ガス供給装置20pは、スルーホールの周囲に冷却液を留まらせるために、上プレート22pと中間プレート27pの間に配置させた、空間領域60(液体領域)を備える。図15aでは、平面図において、この空間領域60を細かい破線で示し、反応ガスを貯留するための導管部26pを粗い破線で示す。冷却手段端末61を経て、冷却手段が、空間領域60に満たされ得る。そこから中間プレート27pまたはその一部分を経て、空間領域60が冷却手段で満たされ、ガス端末37pを経たガスで満たされ得る導管部26pと、熱的接触する。このように、ガス供給装置に供給されたガスは、それが導管部30pおよびガス排気口31pを経てガス供給装置20pの外に出る前に、冷却され得る。このように、ガスは、物体33の加工位置35に供給されて電子ビーム8pによって活性化される前に、ガス供給装置20pを用いて冷却され得る。
【0077】
図16aおよび16bは、本発明に従うガス供給装置の実施形態20qを示す。ここでも、図16aは、ガス供給装置の平面図を示し、図16bは、ガス供給装置20qの、図16aに示した矢印16bによって定義される断面図を示す。ガス供給装置20qは、各平坦側部にそれぞれ隣接している、上プレート22q、中間プレート27qおよび下プレート24qを備えている。ガス供給装置20qは、ガス端末37qを備え、それを経てガス供給装置20qの導管部26qにガスを供給できる。前記に説明したガス供給装置とは対照的に、ガス供給装置20qは、上プレート22qに内蔵されたヒーター65を備え、該ヒーターは上プレート22qに隣接する中間プレート27qに直接接触する。本実施形態に示したヒーター65は、加熱コイルとして形成され、該ヒーターにおいては、外部コントローラから供給される加熱のための電気エネルギーが、端末66を経て供給される。ヒーター65は、中間プレート27qと熱的接触し、これにより、反応ガスを収容できる導管部26qとも熱的接触できる。ヒーター65から導管部26qに存在する反応ガスへの熱伝達によって、反応ガスは、ガス供給装置20qから導管部30qおよび放出口31qを経て、物体33の加工位置35付近に到達する前に、プレ活性化され得る。ここで、スルーホール47qを横断する電子ビームによって活性化して、加工位置35を加工することが可能となる。このように、ガス供給装置20qは、反応ガスを被加工物体表面に供給する直前に、プレートによって形成されたガス供給装置内部の熱エネルギーの供給により、反応ガスをプレ活性化することを可能にする。
【0078】
図12〜16に示した、ミキサー、圧力センサ、液体の空間領域およびヒーターは、独立または組み合わせて、本願に記載されたガス供給装置の他の実施形態にも備えられ得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は物体を加工するシステムに関する。
【0002】
具体的には、本発明は物体を加工するシステムであって、物体の表面の所定の場所に、堆積又はアブレーションを行うように設計されているシステムに関連する。更に具体的には、本発明はプレート構造によって形成されるガス供給装置を備える、物体表面を加工するためのシステムに関連する。
【背景技術】
【0003】
当該技術分野の状況では、被加工物体表面にガスを供給するためのガス供給システムや、物体表面の位置に活性化ビームを向けるための、ビーム源及びビーム光学系を備える加工システムが公知である。ガス供給装置は、特定のガスを物体表面の被加工部分に供給するように設計されている。活性化ビームは、電子ビーム、イオンビーム、又は、光子ビームであっても良く、物体表面の被加工位置に良好に集束させることができる。その部分に収束した、ガス供給装置より供給されたガス分子は、活性化ビームとの相互作用により、活性化されて、励起状態又は回転、オシレーション及び/又はバイブレーション状態に入り、化学反応性が変化する。従って、ラジカルも形成され得る。物体表面において吸収されたガス分子は、例えば、1次及び/又は2次電子などの、活性化ビームとの相互作用により活性化され、次いで、それら自身で反応するか(例えば、物体表面との相互作用によらない、分子の誘発分解)、又は、物体表面に存在する分子の元素と反応する。使用された反応ガスと、物体表面に存在する基材原子、元素または分子によっては、物体表面からの材料のアブレーションや、物体表面への材料の堆積に至ることがある。特に、電子ビームまたはイオンビームのような粒子ビームである、活性化ビームの焦点を精密に合わせることができるので、上記の方法は、微細構造の作成および加工において、特に有利に用いられ得る。
【0004】
例えば、独国特許出願公開第10208043号A1明細書より、物体表面におけるガス供給配列によって供給されるガスが、電子ビームによりアクティベートされ、材料のアブレーションおよび堆積をもたらすような、材料加工システムが公知である。よって、加工の進行は、電子顕微鏡画像の取得によってモニタリングできる。従って、ガスは、物体に対して横断方向にあるガス排管の端に配置されるガスノズルを経て供給される。従来のガス供給システムを、活性化ビームおよび/または分析ビームの光学系と組み合わせることは難しいことが明らかになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10208043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上述の課題を低減させるような加工システムを提供することである。具体的には、本発明の目的は、反応ガスが単独に反応するか、または、物体表面において、局所的にいくつかの反応ガスが相互に反応するか、物体表面といくつかの反応ガスが局所的に反応することを誘発できる材料加工システムであって、同時に、分析ビームを用いた加工状態の的確な分析が可能なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施例によれば、物体を加工するためのシステムは、物体にガスを供給するガス供給装置と、ガスを活性化させるための少なくとも一つの活性化ビームを生成するためのビーム源と、そして、物体に少なくとも一つの活性化ビームを向けるためのビーム光学系とを備えて提供される。従って、ガス供給装置は、活性化ビームのビーム方向に対して横断方向に延びる、平坦側面が隣接している複数のプレートのスタックを備え、そのプレートのスタックは、活性化ビームが物体に向かって横断することを可能にし、そして、そのプレートスタックは、少なくとも1つのガス吸気口と、被加工物体に一番近くなるように配置された、プレートスタックの平坦側面に配置された少なくとも1つのガス排気口を備える。従って、平坦側は実質的に平面であるか、または、他の実施形態においては、表面に凸部または凹部を構成していてもよい。
【0008】
ガス吸気口およびガス排気口は、スタック内に形成されたガス導管系により、相互に接続されており、そのガス導管系は活性化ビームの横断部から離れた位置から活性化ビームの横断部に近い位置に延びる、少なくとも1つの導管部を備える。実施形態において、この導管部は、ミキサー、弁、発熱体、冷却素子またはセンサのような、特別な素子を備え得る。
【0009】
従って、スタックのプレートは、ガスまたは不要なガス反応産物をプレートスタックと物体表面の間の空間から放出するように構成され得る。
【0010】
ガスを活性化させることは、ガスの、イオン化、励起状態の創出等を含む。一般的に、ガスは、プレートスタックに入る時よりも、より高いエネルギー状態に設定されている。従って、加熱素子を用いた加熱のような、プレ活性化も、プレートスタック内で行うことができる。活性化済みのガスは、活性化ビームとの相互作用のために、それ自体または物体表面の材料と化学反応して、表面を変形させることができる。この変形は、表面からの材料のアブレーションおよび/または表面への材料の堆積を含み、また、表面における電荷補償も含み得る。
【0011】
活性化ビームが光子ビーム、具体的には光線を含む場合には、ビーム光学系は、光学レンズ系、ミラーおよび回折素子を含み得る。活性化ビームが電荷粒子線、具体的には、イオンビームまたは電子ビームを含む場合には、ビーム光学系は電気偏光素子と、磁気および静電レンズを含み得る。
【0012】
プレートの平坦側とは、プレートの最大拡張の平面に広がるプレートの側面である。平坦側に対して実質的に直角の側面を、プレートの正面またはスタックの正面と称する。プレートは、平面で隣接し、相互に接続できる。接続は、ネジ、ボルトまたはピンのような、機械的接続素子によって行われ得る。また、接続は、溶接、ハンダ付け、焼結または溶融のような熱加工か、または、反対側の平坦面に塗布された接着剤またはウェーハボンディングによっても行われ得る。ウェーハボンディングの背景情報は、Taraschi Gらによる、文献「Strained Si, SiGe, and Ge on-insulator: review of wafer bonding fabrication techniques」、SOLID-STATE ELECTRONICS 48 (8), 1297-1305, 2004.に記載されている。
【0013】
活性化ビームは横断的に、特に、実質直角に、スタックを横断する。これにより、光子線は、光学的に透明な窓を横断することができる。粒子線は、スルーホールを通って横断できる。
【0014】
プレートスタック内部の導管部は、延在方向に沿って変化し得る異なる断面形状を有することができる。導管部は、その全長の一部または全体にわたって、円、半円、矩形または台形のような断面形状を有し得る。従って、ガス供給装置の導管部に沿う、導管の断面サイズおよび形状は、流れの技術的要件に従って設計される。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、導管部の長さとスタックの厚さの比率は4より大きく、特に10より大きい。スタックの厚みは、スタックを形成するプレートの平坦面に、実質的に垂直なスタックの正面の広がりである。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、スタックが、導管部を全長に渡って画定する第1プレートと第2プレートを備える。従って、導管部は、両プレート平坦面に実質的に平行に延びる。
【0017】
他の実施形態においては、スタックは3つの隣接するプレートによって形成されており、導管部は第1の隣接するプレートの組によって形成され、さらなる導管部は第2の隣接するプレートの組によって形成され、このとき、スタックの導管部は相互に接続されるか、または、別々のガス排気口に導かれる。このように、導管部は、異なるスタックのレベルにおいて形成され得る。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、ガス吸気口は、物体から最も遠くに配置されるスタックプレートの平坦面に配置される。これにより、ガスは、平坦側からスタックの導管系に供給され得る。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、ガス吸気口は、スタックの正面側に配列される。上述のように、スタックの正面は、スタックを形成するプレートの平坦面と実質的に直角をなして広がる、スタックの側面であると理解されよう。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は複数のガス吸気口を備え、物体に複数の異なるガスを供給できるようにする。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は、複数のガス排気口を備え、物体に複数の異なるガスを別々に供給できるようにする。従って、複合化学反応が物体表面で行われ、表面が加工できる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置はガス導管系を通じて、共通のガス吸気口に結合されている複数のガス排気口を備える。これにより、物体表面付近における、広範にわたるガス均一な分布が達成され得る。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、ビーム源は複数の活性化ビームを生成するために構成され、そして、ビーム光学系は、物体上の互いに離れた位置に複数の活性化ビームを向けるように構成されている。このように、同時に複数の場所を加工または検査することが可能である。ここで、ガス供給装置の1つの排気口に、複数の活性化ビームが照射されてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、ガス導管系を経て共通のガス吸気口に接続されている、ガス排気口の数は、活性化ビームの数と同等かそれ以上である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの活性化ビームが、電子ビーム、イオンビーム、光子ビームの少なくとも一つを含んでいる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのイオン検出器または光子検出器を備え、活性化ビームにより物体から放出されたイオンまたは光子を検出する。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、システムは、少なくとも1つの電子検出器を備え、活性化ビームにより物体から放出される電子を検出する。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、ビーム光学系は対物レンズを備え、物体上で活性化ビームの焦点を合わせる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、ビーム光学系はビーム偏光器を備え、活性化ビームが物体全体を走査できる。
【0030】
よって、本発明の実施形態に従うシステムは、走査型電子顕微鏡を含む。
【0031】
他の実施形態においては、システムは、イオンビーム装置を備え、集束したイオンビームを生成および指向的に偏光させ、また、イオンビームにより物体から放出された粒子または光子を検出する。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、物体表面の最も近くに配置されるか、その反対側に配置されているプレートスタックは、電気伝導性の表面を備え、また、その電気伝導性の表面は所定の電位に電気的に接続されている。よって、物体および/または荷電された粒子活性化ビームのビーム管とスタックとの間に、適切な電圧を印加し、検出器(特に、電子検出器)に到達する荷電粒子(特に、物体から放出された電子)を生じさせると、物体表面の探査が可能となる。これにより、画像化品質は、改善され得る。更に、画像化や加工を妨げる不要な荷電を予防できる。電気伝導性材料は、スタック内部または物体の被加工表面からは離れたスタックの側面に配置され、電源に電気的に接続され得る。
【0033】
加工システムは、ガス供給装置、ビーム源、ビーム光学系および検出器(特に、電子検出器)が配置されている、真空容器を含み得る。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、システムは、少なくとも1つのスタックのガス吸気口に通気的に接続されている、物質リザーバを少なくとも1つ備えている。従って、物質リザーバは、真空容器内に含まれ得る。しかし、実施形態に応じて、真空容器の外側でも配置され得る。また、1つまたは複数の、機械式、空気圧式または電気式の弁は、リザーバとガス排気口との間に備えられ得る。
【0035】
本発明の一実施形態では、物質リザーバは、前駆ガス、具体的にはオルガニル類(organyles)、金属オルガニル類、含酸素化合物、含窒素化合物、有機化合物、無機化合物、ハロゲン化物含有化合物またはこれらの組み合わせを含む。
【0036】
更に、物質リザーバは、フッ化タングステン、塩化アルミニウム、塩化チタン、フッ化チタン、無機金の前駆体または他の塩化金またはフッ化金を含み得る。
【0037】
本発明の一実施形態では、物質リザーバは、He、Ne、Ar、Xe、Krまたは/およびN2のような、パージガス(特に不活性ガス)を含む。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は、更に、プレートスタックにテンパリング装置を備え、ガス導管部に存在するガスを冷却および/または加熱する。このように、ガスは、物体表面に供給される前に、所望の温度とすることができる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は、少なくとも2つのガス吸気口と、更には、プレートスタックにミキサーを備え、少なくとも2つのガス吸気口を通ってガス導管部に入ってくる、2つの異なるガスを混合する。このように、物体表面の加工に適したガス混合物は、物体表面にガス混合物を供給する直前に提供され得る。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、ガス供給装置は、更に、ガス導管部に含まれるガス圧を測定するための圧力センサをプレートスタック内に備える。
【0041】
本発明の応用分野は、(ナノ)インプリントリソグラフィのためのスタンプの製造または加工にある。更に、応用分野は、半導体産業において集積回路を製造するための光学リソグラフィのマスクの加工にもある。従って、マスク構造は、照明光学系および対物レンズを用いて、感光レジストを塗布したウェーハにイメージングされる。これにより、マスク構造はウェーハ上へ縮小してイメージングされる。リソグラフィマスクは、概して、非常に微細な構造であり、従って、これに応じた微細なウェーハ構造を可能にして、完成品における高集積回路を実現する。従って、マスク構造の構造品質の高さが求められ、これは、インプリントリソグラフィについても同様である。この高い構造品質は、このようなリソグラフィマスクの従来の製造方法では達成できない。従って、リソグラフィマスクは、マスク構造に必須の構造品質をもたらすために後加工される。これにより、記載された加工システムが、有利に用いられる。そして、マスクは複数の高集積半導体部品を製造するために用いられる。将来的には、パイプコンダクトおよびカニューレを備える従来のガス供給システムを利用しない、物体加工のためのマルチ光線システムが期待される(例えば、マッパーリソグラフィ(Mapper-lithography))。
【0042】
本発明の材料加工システムは、有利には、リソグラフィのためのマスクを修理するために用いられ得る。これにより、2つの異なるビームタイプ、例えばイオンビームおよび電子ビームが生成され得る。特に、本発明の材料加工システムが、微細構造を「直接書込」するために用いられ得る。本発明のシステムによって、表面において、ナノメートル単位の広域微細構造が実現できる。有利には、反応ガスとして、材料の堆積または基板材料のエッジングをもたらす前駆物質または前駆体が、エネルギー粒子(光子、電子、イオン、分子、クラスター等)によって活性化される直前まで用いられ得る。よって、反応性のある前駆物質が、本発明のガス導管およびノズルシステムを経て基板表面に直接導かれる。反応ガスは、直接書込工程の間、制御されながら、供給、混合、分配され得る。このようにして実現される直接書込によって、三次元構造が製造できる。金属、更には絶縁物質が堆積できる。
【0043】
本発明によるガス供給システムは、微細構造技術に基づいて実施され得る。被加工物体の表面へのガス供給は、理想的には複数の位置で行われ、前駆物質の均一な分配を確実にする。
【0044】
本発明の加工システムは、ナノ構造の直接書込のためだけに用いられるのではなく、むしろ、表面変形、表面加工、既存のマイクロおよびナノ構造の変形のために利用できる。よって、複数の位置において前駆体物質を供給できる。異なる前駆体物質が供給されれば、物体表面で局所的に複合の化学加工を実行できる。ナノ構造の製造は、
・複数の金属化合物のうちの1つ、具体的には、非有機金属前駆体または金属オルガニル類(organyles)を供給して、それらを固体金属堆積物に分解する、
・さまざまな化合物の可分解オルガニル類(organyls)を、高含有の含酸素化合物と共に供給して、含酸素化合物を固体酸化堆積物に分解する、
・さまざまな化合物の可分解オルガニル類を高含有の含窒素化合物と共に供給して、含窒素化合物を亜硝酸堆積物に分解する、
・有機化合物類を供給して、それらを炭素堆積物に分解する、
・揮発性の無機または有機化合物類を供給して、それらの含有分子のうちの1つまたは複数を、局所的な堆積に分解する、
・含ハロゲン化合物類を供給して、それらを、基板材料を局所的にエッチングする、反応性ハロゲン成分に分解する、
・含酸素化合物類を供給して、酸素成分の局所的放出により、基板材料を局所的に酸化する、
・含窒素化合物類を供給して、窒素成分の局所的放出により、基板材料と窒素との局所的反応を誘発する、
・そして、揮発性の無機または有機合成物を供給して、資料表面と局所的に反応する際にそれらが分解する
等の、化学的工程により実行される、本発明の直接書込によって実施できる。
【0045】
本発明の材料加工システムによれば、物体の加工中に、物体表面においてほぼ均一なガス濃度が維持される。よって、圧力範囲は、例えば、10mbar〜10−6mbar、特に、10−3mbar〜10−5mbar、更に具体的には、約10−4mbarが主流である。
【0046】
ガス供給システムのプレートは、光学的に透明であるシリコンまたはシリコン酸化物であってもよい。その上に、導電層が装着されて、荷電粒子ビーム、特に、電子ビームが、活性化ビームまたは分析ビームとして用いられる場合に、適切な電位をガス供給装置に印加する。物体表面を加工する加工方法において、ガス供給システムの複数のガス排気口と物体表面との間に非層流ガスが発生するが、ガス供給システムの導管系内で層流ガスが生成され、ガスは分子ビームとしてふるまう。
【0047】
ガス供給装置のガス排気口は、スリット形、半月形、円形等のような様々な形状の横断面または長手方向断面を有し得る。ガス供給システム内のチャネルまたはパイプは、ガスの流れ方向に沿って、異なる幅または断面サイズを有し得る。本発明のガス供給システムのガス導管系において、物体を加工する操作の間の圧力は、0.01〜10mbar、具体的には0.1〜1mbarが一般的である。電子ビームまたは他の荷電粒子ビームを使用する場合、ガス供給装置は粒子ビームが横断するようにホールを備え、そのホールは、粒子ビームを用いて表面を操作する間の偏向範囲に対応し得るサイズを有する。
【0048】
本発明の加工システムは、リソグラフィのためのマスクを補修するために用いられ得るのみではなく、また、集積回路を補修するためにも用いられ得る。更に、本発明の加工システムは、(三次元または層状二次元の)スタンプであって、(反復)構造を有するものを製造するために利用でき、このスタンプは、基板にインプリント(ナノインプリント)して複数の微小反応管を製造することを可能にする。
【0049】
本発明の加工システムを用いて、いわゆる「ナノインプリントマスク」を製造することもできる。本出願は、生物工学的および薬学的進歩に特に関連する。また、ナノインプリントリソグラフィのテンプレートも、本発明のシステムを用いて加工できる。更に、カーボンナノチューブまたはシリコンナノワイヤも、本システムを用いて製造または加工できる。
【0050】
本発明の加工システムを用いて、基板においてチオール基が選択的に結合して金が堆積し得る。例えば、タンパク質のような生体分子はチオール基を有し、チオール基を介してそれらは、金堆積が施された基板に結合し得る。
【0051】
本発明のシステムを用いて製造される最小の金属構造は、電子光学系(プラズモニクス)用途にも適している。
【0052】
本発明のシステムは、添付の図面と関連して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例に従う、物体表面を加工するシステムの概略図を示す。
【図2】本発明の一実施例に従う加工システムの部分的概略図を示す。
【図3a】本発明の一実施例に従うガス供給装置の導管系の構造を示す。
【図3b】本発明の一実施例に従うガス供給装置の導管系の構造を示す。
【図4a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図4b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図4c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図5a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図5b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図5c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図6a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図6b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図6c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図7a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図7b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図7c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図8a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図8b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図8c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図9a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図9b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図9c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図10a】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図10b】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図10c】本発明の一実施例に従うガス供給装置のノズル構造を示す。
【図11a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図11b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図11c】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図11d】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図11e】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図12a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図12b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図12c】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図13a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図13b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図14a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図14b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図14c】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図15a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図15b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図15c】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図15d】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図16a】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【図16b】本発明に従うガス供給装置の一実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、本発明の一実施例に従う、物体表面を加工するためのシステム1の断面図を示す。システム1は、開口部19を経て、図示しない真空ポンプシステムに接続される真空容器2を備える。真空容器2内に、軸15に沿う電子ビーム8を生成するための陰極として構成される電子源3が配置される。尚、システム1は、集光/偏光要素21を備え、電子ビーム8を集光または偏光する。
【0055】
電子ビーム8はビーム管5に囲まれており、そのビーム管には、例えば、+8kVほどの、高い陽電位が電極端子7および電圧源を経て印加され得る。ビーム管に印加された電位は、電子源3とビーム管5の間、および、物体33の表面33aに向かう電子を加速させる、ビーム管5の一部分内で、電場を発生させる。従って、物体33は、物体テーブル34において保持される。電子ビームは、軸15に沿って進み、物体33の表面33aのポイント35において衝突する。電子ビームを集束させるために、集束レンズ11は、電子ビーム8の周囲に環状に配置される。集束レンズ11は、磁気レンズおよび静電のイマージョンレンズの組合せである。従って、磁気レンズは、内部ポールピース10および外部ポールピース9を備えている。コイル13での電流によって、ポールピース9,10を通る電磁流が誘導によって生成され、磁場がアキシャルギャップ16の領域で発達する。この磁場が電子ビーム8を集束させる。
【0056】
反応ガスの供給時に、ビーム管5と電極版18との間に適切な電圧を印加することで、電子源3から放出されて、最初に、電子源とビーム管との間の電場によって加速された一次電子を、物体33の表面33aのポイント35における材料の堆積またはアブレーションに適した、約1keVの一次エネルギーまで減速できる。ビーム管5と電極板18の間に電圧を印加することに代えて、または、それに加えて、ビーム管5とガス供給装置20の間の電圧を電源に接続する電極端子36を用いて印加できる。従って、動作中は、電気引力場(electrical pulling field)が、物体33の表面33aとアキシャルギャップ16周囲のスペースの間で構築され、物体33の表面33aから生じた電子が電子検出器17に至ることを可能にする。
【0057】
加工位置35の周囲で、物体33の表面33aの表面部分を走査することによって、このレンズ内検出器17が、加工位置35の周囲の表面部分からの電子顕微鏡画像を取得して、加工の進行をモニタリングし、さらなる加工を行うか否か決定することを可能にする。
【0058】
本発明の加工システムの実施態様に従うガス供給装置は、プレートの最大拡張(プレートの平坦側の平面)の平面25において平面接続して、スタック23を形成する上プレート22および下プレート24を備える。スタック23は、電子ビーム8の軸15に対して、実質的に直角方向の平面に広がる。スタック23は、その中心に貫通孔47を呈し、それを通じて電子ビーム8が、電子源3から軸15に沿って、物体33の表面33aにおける衝突ポイント35に到達する。
【0059】
この実施形態の両プレート22および24は、金属、セラミック、ポリマー、または/および、半導体材料、特にSi、SiO2またはSi3N4を含む素材から製造される。図1は、側面図(正面図)の断面であり、両プレートを貫く、両プレートの平坦面に垂直な断面が図示されている。従って、最大限に拡張した平面は、図1に示した平面に対して垂直に広がる。
【0060】
上プレート22は、図1に示した断面領域の下側を示し、従って、スタック23において、第1導管部26(長手の、パイプ状の管9)は、上プレート22によって上から、下プレート24によって下から画定される。本明細書に記載した第1の導管部はパイプの形状をしており、従って図1において矩形領域として示されている。2つのプレートうち1つだけに、凹所を設け、凹所のないプレートをカバーとして凹所のあるプレートを閉じることで導管系を形成できる。さらに、2つ以上のプレートが、スタックを形成し、その内部でスタックの異なる段において異なる導管部が形成され、段の間の管に接続されるか、または、別々のガス排出口につながれる。
【0061】
スタック23の上プレート22は、さらに、通気的に第1導管部26と連通するガス吸気29を備えるガス吸気第2導管部28(ガス吸気口)を呈する。さらに、上プレート22は、ガス導管39が物質リザーバ41につながっているガス端末37を呈している。従って、物質リザーバ内の物質は、ガス導管39および第2導管部28を経て、スタック23内部のキャビティ26に、気体として到達する。ガス流を制御するために、バルブ43は、ガス端末37の近くに配置され、バルブは、図示しないバルブ制御装置に接続され、バルブを制御する。
【0062】
下プレート24は、ガス排気31を有する第3導管部30(ガス排気口)を呈する。第3導管部30の軸30’の、軸15からの距離はd1になる。上プレート22における、第2導管部28の軸28’の、軸15からの距離はd2になる。距離d2がd1より大きいことは、明らかである。第3導管部30は、ガス排気31を経て、第1導管部26に存在するガスを、物体33の表面33aに供給できるようにする。図1に示すように、ガス排気31は、物体33の表面33aの加工位置35付近に位置する。従って、物質リザーバ41に存在する物質は、ガス導管39、第2導管部28、第1導管部26、第3導管部30、および、ガス排気31を経て、材料の堆積または材料のアブレートのために、もしくは、電子ビームによって物体をアクティベートした後に、その表面における荷電を相殺するために、好適な方法で加工位置35に到達する。図1に示すガス供給装置20によって、物体表面において広く均一な反応ガス濃度がもたらされ、効果的な加工が可能となる。図2に、本発明に従う加工システムの、更なる実施形態1の部分断面図を示すが、ここでは図1に示した多くの構成要素は再度表示しない。これらの構造および機能は、図1や対応する説明から理解されよう。図1に示した実施形態に相当する構成要素には同じ参照番号に符号「a」を付して示す。
【0063】
加工システム1aは、ガス供給装置20aを備えている。ガス供給装置20aは、スタック23aを備え、これは、相互に積み重なる、3つのスタックしたプレート22a、27a、および24aで形成される。それぞれの平坦側部に、上プレート22aおよび中央プレート27aが接続され、また、中央プレート27aおよび下プレート24aが接続される。スタック23aと、プレート22a、27a、および24aは軸15に垂直な平面に、それぞれ広がる。図1と図2も、スタック23aを通る断面を示し、この断面は、プレート22a、27a、および24aの平坦面(最大拡張平面)に対して垂直な位置関係である。
【0064】
スタック23aは、内部に、軸15の両側に第1導管部26aを有する。従って、第1導管部26aは、上プレート22aによって上から、下プレート24aによって下から、それらの全長にわたって、それぞれ画定される。図2の断面平面においては、中央プレート27aが、この領域において、中央プレート27aの全厚にわたる開放領域を有する。従って、第1導管部26aは、この開放領域を、上プレート22aによって、上から閉じ、下プレート24aによって下から閉じることによって形成される。図1に示したガス供給装置20のように、ガス供給装置20aも、通気的に、ガス端末37aおよびガス導管39aを介してリザーバに接続されている、ガス吸気29aを有する第2導管部28a(ガス吸気口)を備える。従って、反応ガスは、第1導管部26aに導かれ得る。
【0065】
物体33の表面33aに反応ガスを供給するために、ガス供給装置20aは、さらに、ガス排気31aを有する第3導管部30a(ガス排気口)を備える。また、第3導管部30aと、軸15aの間の距離d1は、第2導管部28aと軸15の間の距離d2よりも小さい。従って、反応ガスは、軸15aから遠く離れた場所から、物体33の加工位置35に導かれ得る。従って、加工位置35において、反応ガスを局所的にアクティベートさせて、物体を加工できる。
【0066】
図3aおよび3bは、本発明に従うガス供給装置の更なる実施形態20bを示し、このとき、図3aでは、ガス供給装置20b(図1および2のような)の平坦側に対して垂直な断面を示し、図3bでは、軸15に沿った、ガス供給装置20bの下面図を示す。図3aおよび3bに示す、ガス供給装置20bは、上プレート22bと下プレート24bを備え、また、スタックの正面に配置された端末37bも備えている。この端末を経て、ガスは、上プレート22bおよび下プレート24bによって形成されたスタック23bの内部に備えられた第1導管部に供給され得る。6つの第3導管部30bに位置する、6つのガス排出31bを経て、ガスは、下プレート24bの下に位置する物体(図示しない)の表面に供給され得る。図3bは、第1導管部26bの形状を破線で平面図に示す。従って、この第1導管部26bは、1つのガス端末37bが6つの第3導管部30bに接続するように設計されている。
【0067】
図4a〜4c、5a〜5c、6a〜6c、7a〜7c、8a〜8c、9a〜9cおよび10a〜10cは、本願の実施態様に従う、ガス供給装置20d、・・・、20jの、第3導管部30d、・・・、30jについての様々な配置を示す。図4a、5a、6a、7a、8a、9aおよび10aは、上プレート22d、・・・、22jのそれぞれについての軸15に沿った、概略平面図を示し、および、図4c、5c、6c、7c、8c、9cは、下プレート24d、・・・、24jのそれぞれについての概略平面図を示す。図4b、5b、6b、7b、8b、9bおよび10bにおいて、ガス供給装置のプレートの平坦面の平面と直角をなす横断面は、それぞれ、図1、2および3の図に類似した図に示す。よって、図4bおよび5bは、それぞれ、矢印4bおよび5bで示す切断線従う、図4aおよび5aの断面図を示し、他のすべての断面は、それぞれの中間を通る直線に従う断面図を示す。図4a〜10cに示したガス供給装置のすべての実施形態は、それぞれ、上プレート22d、・・・、22jおよび下プレート24d、・・・、24jを備える。図9a〜9cおよび10a〜10cに示した実施形態は、それぞれ、下プレート24iおよび24jに続くプレートをさらに備え、第3導管部30iおよび30jをそれぞれ精密に構成できるようにする。
【0068】
図4a、5a、6a、7a、8a、9aおよび10aは、それぞれ、第2導管部28d、・・・、28jの断面図を示す。ここで示す実施形態において、それらは、円形形状を有する。必要に応じて、他の断面形状も選択され得る。図4b、5b、6b、7b、8b、9bおよび10bにおいては、第3導管部30d、・・・、30jの長手方向断面図がそれぞれ示される。このような、第3導管部30d、・・・、30jの長手方向断面図は、矩形、三角形、台形、半円のような規則的な形状、または、不規則な形状をとり得る。図4c、5c、6c、7c、8c、9cおよび10cには、第3導管部30d、・・・、30jの断面を示す。それらは、矩形、円形、楕円(elypse)形のような規則的な形状または不規則な形状をとり得る。第3導管部の横断面および/または長手方向断面図の形状の適切な選択によって、物体表面対する所望のガス供給特性が得られる。
【0069】
図11a〜11eは、本発明に従うガス供給装置を、それぞれ、異なる視点および異なる断面から見た場合の、更なる実施態様20kを示す。従って、図11aは、ガス供給装置20kを、軸15に沿う視線で見た平面図を示し、これは、ガス供給装置20kを形成するプレート20k、27k、および24kの平坦側から見た平面図であることを意味する。図11bおよび11cは、縦断面図を側方から見た図を示し、これは、ガス供給装置20kを、それぞれ図11aにおける矢印11bおよび11cによって示される破線に沿って切断し、対応する矢印の方向から見ることで得られる。図11dおよび11eは、縦断面図を側方から見た図を示し、これは、ガス供給装置20kを、それぞれ図11aにおける矢印11dおよび11eによって示される破線に沿って切断し、対応する矢印の方向から見ることで得られる。
【0070】
本実施形態において、ガス供給装置20kは、4つのスルーホール47k1、47k2、47k3および47k4を備え、これは電子ビーム81、82、83および84がガス供給装置20kを通過して、物体33の表面33aへ届くことを可能にする。ガス供給装置20kはさらに、複数の第3導管部30k1、・・・、30k10(ガス排気口)を備えている。従って、4つの第3導管部30kは、各スルーホール37k1、・・・、37k4の周囲に配置され、4つの加工位置に反応ガスを供給し、その反応ガスは、4つの電子ビーム81、・・・、84を用いて加工される。
【0071】
前述の実施形態とは対照的に、図11a〜11eに記載したガス供給装置20kにおいては、3つのプレート27k、22k、27kが備えられ、第1導管部は上プレート22kおよび中間プレート27kによって画定され、第4導管部26k4は、中間プレート27kおよび下プレート24kによって画定される(図11d参照)。このように、導管部26k1および26k4は、結果としてスタック23kの2つの異なるレベルに配置される。これらの2つの導管部26k1および26k4は、通気的に、上プレート22kの上平坦面に配置されているガス端末37k1および37k2にそれぞれ接続される。導管部26k1は第3導管部30k1、・・・、30k5に接続している、そして、導管部30k4は第3導管部30k6、・・・、30k10に接続している。このように、図11a〜11eに記載されたガス供給装置の実施形態20kを用いて、複数の位置で同時に物体被加工表面が加工でき、かつそれらの場所において、2つの異なるガスを同時に供給できる。このように複雑な、本発明に係るガス供給装置のガス導管系を用いて、物体33の表面33aの加工位置35において、2つの異なるガスが供給でき、バラエティーに富む加工方法が可能となる。
【0072】
図12a、12bおよび12cは、本発明によるガス供給装置の実施例20lを示す。図12aは、ガス供給装置20lの平坦側図を示し、すなわち、該装置の平面図を示す。図12bおよび12cは、ガス供給装置20lを、図12aにおいて矢印12bおよび12cで示す線でそれぞれ切断し、矢印の方向から見た場合のガス供給装置20lの断面図を示す。ガス供給装置20lは、一番上のプレート22l、上から2番目のプレート22l´、中間プレート27l、下から2番目のプレート24l´、そして、一番下のプレート24lを備え、それぞれの平坦面が隣接している。プレート22l、22l´、27l、24l´および24lにより形成されるガス供給措置20lのスタックの正面において、ガス端末37l1は最上面22lおよび上から二番目のプレート22l´の間に配置されて、第1のガスを供給する。第1のガスは、スタックの平坦面に対して平行に延びる導管部26l1に到達し、そこから、実質的にスタックの平坦面に対して垂直な、導管部26l3を経て、ミキサー50に達する。第1のガス端末37l1が、ガス供給装置20lのスタックの上から二番目のプレート22l´および中間プレート27lの間に配置されている、スタックの正面において、第2ガス端末37l2が第2のガスを供給するように配置されている。スタックの平坦側と実質的に平行に走る導管部26l4を経て、第2のガスがミキサー50に到達する。このミキサーは、第1のガスおよび第2のガスを混合するための受動素子であって、また、混合補助素子51および52により構成され、それらはそこを通過するガスを旋回および混合させる。例えば、素子51および52は、シーブまたはグリルによって形成される。第1のガスおよび第2のガスの混合によって得られたガス混合物は、最下プレート24lおよび下から2番目のプレート24l´の間に形成された導管部26l5に到達する。そこから、ガス混合物は、導管部30lに到達して、排気口31lからガス供給装置の外へ出て、図12bおよび12cに示したスタックの下に配置された物体に供給される。このように、図12a、12bおよび12cにおいて示した、本発明によるガス供給装置20lの実施形態は、混合物が物体表面に供給される前に、該装置内において2ガスを混合できる。更に、図12aにおいて、スルーホール47lは、2つのガス排気口21lの間にそれぞれ配置されており、電子ビームを横断させて、物体表面においてガス混合物をアクティベートできるようにする。スタックの平坦面に対して実質的に垂直に配置された、ガス供給装置20lのミキサー50が、スタック内のガス供給装置導管部において、両方のガスを混合させることに留意されたい。このようなミキサーは、垂直ミキサーとも称されている。
【0073】
図13aおよび13bは、本発明によるガス供給装置の実施形態20mを示す。図13aは、ガス供給装置20mの平面図を示し、図13bは、ガス供給装置20mを図13aにおいて矢印13bで示す線で切断して得られた断面を、矢印の方向から見た図を示す。ガス供給装置20mは、上プレート20m、中間プレート27mおよび下プレート24mを備えている。プレート22m、27mおよび24mによって形成されたスタックの正面においては、上プレート22mと中間プレート27mの間に第1ガスを供給するための第1ガス端末37m1が配置されている。供給された第1ガスは、スタックの平坦側に対して実質的に平行な導管部26m1およびスタックの平坦側に対して実質的に垂直な導管部26m3を経て、水平ミキサー54に到達する。ガス供給装置20mの、プレート22m、24mおよび27mにより形成されたスタックの、同じ正面側において、中間プレート27mと下プレート24mとの間にガス端末37m2が配置され、第2のガスを供給する。第2のガスは、スタックの平坦側と実質的に平行な導管部26m2を経て、水平ミキサー54に到達する。水平ミキサー54は、シーブ、グリル、および/または、第1のガスおよび第2のガスが互いに混合するための他の混合補助素子を含み得る。導管部30mを経て、ガス混合物は、ガス排出口31mからガス供給装置を出て、図13bのスタックの下に配置されている物体表面に供給される。図13aに図示するように、ガス供給装置20mは、更にスルーホール47mを備え、電子ビームがガス供給装置20mを貫通して物体表面でガス混合物を活性化できるようにする。従って、図13aおよび13bに示した、ガス供給装置の実施形態20mを用いて、水平ミキサーによって、ガス供給装置内の2つの異なるガスをスタックに平行な導管部内で混合して、ガス混合物を被加工物体の表面に供給できるようにする。
【0074】
図12a、12b、12cと、13aおよび13bに示した、ミキサー50および54は、2つのガスを混合するためのマイクロモーターのような能動素子を備えてもよい。
【0075】
図14a、14bおよび14cは、本発明に従うガス供給装置の実施形態20nを示す。図14aは、ガス供給装置20nを平坦側から見た図を示し、すなわち、平面図である。図14bおよび14cは、矢印14bおよび14cで示した線で切断した断面を、それぞれ矢印の方向から見た図を示す。ガス供給装置20nは、上プレート22n、中間プレート27nおよび下プレート24nによって形成されるプレートのスタックを備え、これらのプレートは、それぞれ平坦側で隣接している。ガス供給装置20nにおける、プレートスタックの正面に配置されたガス端末37nによって、ガスがガス供給装置20nに供給されて導管部26nに到達できるようにする。基本的には、導管部26nは、スタックを形成しているプレート22n、27nおよび24nの平坦側と平行して延びる。中間プレート27nに面して、上プレート22n内にセンサ56が配置され、その上プレート22nからは、電気端末58がガス供給装置から突き出している。電気端子58を経て、センサ56の測定信号は、外部コントローラに導かれ得る。センサは、上プレート22nおよび中間プレート27nの間に配置されたマイクロ機械式圧力センサであってもよい。例えば、センサの電極561は上プレート22nに配置されても良く、圧力センサのセンサ電極のような、センサの更なる電極562は、反応ガスが存在する導管部26nに当接できる。圧力センサ56を使用して、導管部26nに存在する反応ガスの圧力が測定できる。圧力センサに代えて、または、それに追加して、更なるガスフローセンサが、ガス供給装置26nの内部に配置されて、ガスフローを測定できる。決定したガス圧力またはガスフローが、物体加工の最適化のために、有利に活用できる。ガスは、被加工物体の表面に、導管部30nおよび排気口31nを経て供給され得る。
【0076】
図15a、15b、15c、および15dは、本発明に従うガス供給装置の実施形態20pを示す。ここでも、図15aは、ガス供給装置の平面図を示し、図15b、15cおよび15dは、矢印15b、15cおよび15dによって示される線に対応する断面図を示す。ガス供給装置20pの多くの素子は、前述したガス供給装置のそれらと類似するため、それらの詳細な説明は省略する。前述のガス供給装置の実施形態とは対照的に、ガス供給装置20pは、スルーホールの周囲に冷却液を留まらせるために、上プレート22pと中間プレート27pの間に配置させた、空間領域60(液体領域)を備える。図15aでは、平面図において、この空間領域60を細かい破線で示し、反応ガスを貯留するための導管部26pを粗い破線で示す。冷却手段端末61を経て、冷却手段が、空間領域60に満たされ得る。そこから中間プレート27pまたはその一部分を経て、空間領域60が冷却手段で満たされ、ガス端末37pを経たガスで満たされ得る導管部26pと、熱的接触する。このように、ガス供給装置に供給されたガスは、それが導管部30pおよびガス排気口31pを経てガス供給装置20pの外に出る前に、冷却され得る。このように、ガスは、物体33の加工位置35に供給されて電子ビーム8pによって活性化される前に、ガス供給装置20pを用いて冷却され得る。
【0077】
図16aおよび16bは、本発明に従うガス供給装置の実施形態20qを示す。ここでも、図16aは、ガス供給装置の平面図を示し、図16bは、ガス供給装置20qの、図16aに示した矢印16bによって定義される断面図を示す。ガス供給装置20qは、各平坦側部にそれぞれ隣接している、上プレート22q、中間プレート27qおよび下プレート24qを備えている。ガス供給装置20qは、ガス端末37qを備え、それを経てガス供給装置20qの導管部26qにガスを供給できる。前記に説明したガス供給装置とは対照的に、ガス供給装置20qは、上プレート22qに内蔵されたヒーター65を備え、該ヒーターは上プレート22qに隣接する中間プレート27qに直接接触する。本実施形態に示したヒーター65は、加熱コイルとして形成され、該ヒーターにおいては、外部コントローラから供給される加熱のための電気エネルギーが、端末66を経て供給される。ヒーター65は、中間プレート27qと熱的接触し、これにより、反応ガスを収容できる導管部26qとも熱的接触できる。ヒーター65から導管部26qに存在する反応ガスへの熱伝達によって、反応ガスは、ガス供給装置20qから導管部30qおよび放出口31qを経て、物体33の加工位置35付近に到達する前に、プレ活性化され得る。ここで、スルーホール47qを横断する電子ビームによって活性化して、加工位置35を加工することが可能となる。このように、ガス供給装置20qは、反応ガスを被加工物体表面に供給する直前に、プレートによって形成されたガス供給装置内部の熱エネルギーの供給により、反応ガスをプレ活性化することを可能にする。
【0078】
図12〜16に示した、ミキサー、圧力センサ、液体の空間領域およびヒーターは、独立または組み合わせて、本願に記載されたガス供給装置の他の実施形態にも備えられ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を加工するためのシステムであって、該システムは、
前記物体にガスを供給するためのガス供給装置と、
少なくとも1つの活性化ビームを生成して、前記ガスを活性化するためのビーム源と、
前記少なくとも1つの活性化ビームを前記物体に向けるためのビーム光学系とを備え、
前記ガス供給装置は、前記活性化ビームのビーム方向に対して横断方向に延びる平坦側面で隣接している複数のプレートのスタックを備え、
該プレートスタックは、前記活性化ビームが前記物体に向かって横断することを可能にし、
前記プレートスタックは、少なくとも1つのガス吸気口と、前記物体に一番近くなるように配置された、前記スタックの前記プレートの平坦側面に配置された少なくとも1つのガス排気口を備え、
該ガス吸気口および該ガス排気口は、前記スタック内に形成されたガス導管系により、相互に接続されており、
前記ガス導管系は、活性化ビームの横断部から離れた位置から活性化ビームの横断部に近い位置に延びる、少なくとも1つの導管部を備えることを特徴とする
物体を加工するためのシステム。
【請求項2】
前記導管部の長さと前記スタックの厚さの比率が4より大きく、特に10より大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スタックが、前記導管部を全長にわたって画定する第1プレートと第2プレートを備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ガス吸気口が、前記物体から最も遠くに配置されている前記スタックのプレートの平坦面に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム
【請求項5】
前記ガス吸気口が、前記スタックの正面側に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ガス供給装置が、複数のガス吸気口を備え、前記物体に複数の異なるガスを供給する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ガス供給装置が、複数のガス排気口を備え、前記物体に複数の異なるガスを別々に供給する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ガス供給装置はガス導管系を通じて、共通のガス吸気口に結合されている複数のガス排気口を備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記ビーム源は複数の活性化ビームを生成するために構成され、そして、前記ビーム光学系は、前記物体上の互いに間隔をあけた位置に、前記複数の活性化ビームを向けるように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ガス導管系を経て前記共通のガス吸気口に接続されており、ガス排気口の数が、前記活性化ビームの数と同等かそれ以上である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの活性化ビームが、電子ビーム、イオンビーム、光子ビームの少なくとも一つを含んでいる、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも1つの検出器をさらに備え、前記活性化ビームにより前記物体から放出された粒子、具体的には電子を検出する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記ビーム光学系が、対物レンズを備え、前記物体上で前記活性化ビームの焦点を合わせる、請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ビーム光学系が、ビーム偏光器を備え、前記活性化ビームが前記物体全体を走査できる、請求項1〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記物体の最も近くに配置されている前記スタックのプレートが、電気伝導性表面を備え、該電気伝導性表面は所定の電位に電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記スタックの少なくとも1つのガス吸気口に通気的に接続されている物質リザーバをさらに備える、請求項1〜15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記物質リザーバは、前駆ガス、特に、オルガニル類、金属オルガニル類、含酸素化合物、含窒素化合物、有機化合物、無機化合物、ハロゲン化物含有化合物またはこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記物質リザーバは、パージガス、特に、He、Ne、Ar、Xe、Kr、N2のいずれか1つのような不活性ガスを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記ガス供給装置は、さらに、前記プレートスタック内部にテンパリング装置を備え、前記ガス導管部含まれるガスについて、冷却または加熱、あるいはその両方を行う、請求項1〜18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記ガス供給装置は、少なくとも2つのガス吸気口と、更には、前記プレートスタック内部にミキサーを備え、前記少なくとも2つのガス吸気口を通って前記ガス導管系に入ってくる、2つの異なるガスを混合する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記ガス供給装置は、更に、前記ガス導管系に含まれるガス圧を測定するための圧力センサを前記プレートスタック内に備える、請求項1〜20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項1】
物体を加工するためのシステムであって、該システムは、
前記物体にガスを供給するためのガス供給装置と、
少なくとも1つの活性化ビームを生成して、前記ガスを活性化するためのビーム源と、
前記少なくとも1つの活性化ビームを前記物体に向けるためのビーム光学系とを備え、
前記ガス供給装置は、前記活性化ビームのビーム方向に対して横断方向に延びる平坦側面で隣接している複数のプレートのスタックを備え、
該プレートスタックは、前記活性化ビームが前記物体に向かって横断することを可能にし、
前記プレートスタックは、少なくとも1つのガス吸気口と、前記物体に一番近くなるように配置された、前記スタックの前記プレートの平坦側面に配置された少なくとも1つのガス排気口を備え、
該ガス吸気口および該ガス排気口は、前記スタック内に形成されたガス導管系により、相互に接続されており、
前記ガス導管系は、活性化ビームの横断部から離れた位置から活性化ビームの横断部に近い位置に延びる、少なくとも1つの導管部を備えることを特徴とする
物体を加工するためのシステム。
【請求項2】
前記導管部の長さと前記スタックの厚さの比率が4より大きく、特に10より大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スタックが、前記導管部を全長にわたって画定する第1プレートと第2プレートを備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ガス吸気口が、前記物体から最も遠くに配置されている前記スタックのプレートの平坦面に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム
【請求項5】
前記ガス吸気口が、前記スタックの正面側に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ガス供給装置が、複数のガス吸気口を備え、前記物体に複数の異なるガスを供給する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ガス供給装置が、複数のガス排気口を備え、前記物体に複数の異なるガスを別々に供給する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ガス供給装置はガス導管系を通じて、共通のガス吸気口に結合されている複数のガス排気口を備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記ビーム源は複数の活性化ビームを生成するために構成され、そして、前記ビーム光学系は、前記物体上の互いに間隔をあけた位置に、前記複数の活性化ビームを向けるように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ガス導管系を経て前記共通のガス吸気口に接続されており、ガス排気口の数が、前記活性化ビームの数と同等かそれ以上である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの活性化ビームが、電子ビーム、イオンビーム、光子ビームの少なくとも一つを含んでいる、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも1つの検出器をさらに備え、前記活性化ビームにより前記物体から放出された粒子、具体的には電子を検出する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記ビーム光学系が、対物レンズを備え、前記物体上で前記活性化ビームの焦点を合わせる、請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ビーム光学系が、ビーム偏光器を備え、前記活性化ビームが前記物体全体を走査できる、請求項1〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記物体の最も近くに配置されている前記スタックのプレートが、電気伝導性表面を備え、該電気伝導性表面は所定の電位に電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記スタックの少なくとも1つのガス吸気口に通気的に接続されている物質リザーバをさらに備える、請求項1〜15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記物質リザーバは、前駆ガス、特に、オルガニル類、金属オルガニル類、含酸素化合物、含窒素化合物、有機化合物、無機化合物、ハロゲン化物含有化合物またはこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記物質リザーバは、パージガス、特に、He、Ne、Ar、Xe、Kr、N2のいずれか1つのような不活性ガスを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記ガス供給装置は、さらに、前記プレートスタック内部にテンパリング装置を備え、前記ガス導管部含まれるガスについて、冷却または加熱、あるいはその両方を行う、請求項1〜18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記ガス供給装置は、少なくとも2つのガス吸気口と、更には、前記プレートスタック内部にミキサーを備え、前記少なくとも2つのガス吸気口を通って前記ガス導管系に入ってくる、2つの異なるガスを混合する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記ガス供給装置は、更に、前記ガス導管系に含まれるガス圧を測定するための圧力センサを前記プレートスタック内に備える、請求項1〜20のいずれか1項に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図11e】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図15d】
【図16a】
【図16b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図11e】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図15d】
【図16a】
【図16b】
【公開番号】特開2009−187928(P2009−187928A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−290207(P2008−290207)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290207(P2008−290207)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】
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