説明

物品認識装置における照明の設定値設定方法および物品認識装置

【解決手段】ボンディング装置を構成する物品認識装置は、基板のバンプに照明光を照射する第1照明と、該第1照明とは異なる角度から上記バンプに照明光を照射する第2照明と、上記バンプで反射した上記照明光の反射光を撮影する第1撮影手段とを備えている。上記第2照明の輝度を固定したまま、第1照明の輝度を変化させて(S3)、上記第1撮影手段が撮影した画像のうち、バンプが最も多く認識された画像を撮影した際における第1照明の輝度を記憶する(S7)。続いて第1照明の輝度を上記記憶した輝度で固定したまま、第2照明の輝度を変化させて(S9)、上記第1撮影手段が撮影した画像のうち、バンプが最も多く認識された画像を撮影した際における上記一方の照明の輝度を記憶する(S13)。
【効果】照明の設定値の設定を容易にかつ安定して行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品認識装置における照明の設定値設定方法および物品認識装置に関し、詳しくは物品に形成された突起に照明光を照射する第1、第2照明と、上記突起で反射した上記照明光の反射光を撮影する撮影手段とを備えた物品認識装置における照明の設定値設定方法および物品認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板などの物品にチップをボンディングするボンディング装置などには、物品の表面に形成された突起に照明光を照射する第1照明と、該第1照明とは異なる角度から上記突起に照明光を照射する第2照明と、上記突起で反射した上記照明光の反射光を撮影する撮影手段とを備えた物品認識装置が備えられている。
このような物品認識装置では、上記第1、第2照明が照射した照明光が上記突起で反射した反射光を上記撮影手段が撮影することで、上記突起の位置を認識し、これにより物品の位置や傾きを検出するようになっている(特許文献1)。
そして、上記撮影手段が撮影した画像から上記突起をより正確に認識するため、上記第1、第2照明が照射する照明光の輝度等の設定値を設定する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−89920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の物品認識装置では、上記第1、第2照明の設定値を作業者が目視等で設定しており、2つの照明の設定値を相互に調整する作業が煩雑である他、作業者によって設定値にばらつきが生じるという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明は設定値の設定を容易にかつ安定して行うことが可能な物品認識装置における照明の設定値設定方法および物品認識装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1の発明にかかる物品認識装置における照明の設定値設定方法は、物品の表面に形成された複数の突起に照明光を照射する第1照明と、該第1照明とは異なる角度から上記突起に照明光を照射する第2照明と、上記突起で反射した上記照明光の反射光を撮影する撮影手段とを備えた物品認識装置における照明の設定値設定方法であって
上記第1照明および第2照明のうち、いずれか一方の照明の設定値を固定したまま、いずれか他方の照明の設定値を変化させるとともに、上記撮影手段により異なる設定値で照射される照明光の下で物品を撮影し、
上記撮影手段が撮影した複数の画像のそれぞれから上記突起を認識して、突起が最も多く認識された画像を撮影した際における上記他方の照明の設定値を記憶し、
続いて上記他方の照明の設定値を所定の値に固定した状態で、上記一方の照明の設定値を変化させるとともに、上記撮影手段により異なる設定値で照射される照明光の下で物品を撮影し、
上記撮影手段が撮影した複数の画像のそれぞれから上記突起を認識して、突起が最も多く認識された画像を撮影した際における上記一方の照明の設定値を記憶し、
上記記憶した照明の設定値を、それぞれ上記第1照明および第2照明の設定値として設定することを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明にかかる物品認識装置における照明の設定値設定方法は、請求項1の発明において、上記第1照明および第2照明のうち、いずれか一方を上記撮影手段の撮影方向と同軸方向に照明光を照射する同軸照明とし、いずれか他方を上記撮影手段による撮影範囲の周囲から斜めに照明光を照射するリング照明とすることを特徴としている。
【0007】
請求項3の発明にかかる物品認識装置における照明の設定値設定方法は、請求項1または請求項2のいずれかの発明において、上記第1、第2照明における照明光の設定値が、当該照明光の輝度であることを特徴としている。
【0008】
そして請求項4の発明にかかる物品認識装置は、表面に複数の突起が形成された物品を支持する支持手段と、上記物品の突起に照明光を照射する第1照明と、該第1照明とは異なる角度から上記突起に照明光を照射する第2照明と、上記突起で反射した上記照明光の反射光を撮影する撮影手段と、当該撮影手段が撮影した画像から上記突起を認識する認識手段とを備えた物品認識装置において、
上記第1照明および第2照明が照射する照明光の設定値を変更する設定値変更手段と、これら第1照明および第2照明の設定値を記憶する設定値記憶手段とを設け、
上記設定値変更手段が第1、第2照明のうちいずれか一方の照明の設定値を固定したまま、いずれか他方の照明の設定値を変化させるとともに、上記撮影手段が異なる設定値で照射される照明光の下で物品を撮影し、
上記認識手段は撮影された複数の画像のそれぞれから上記突起を認識し、上記設定値記憶手段は突起が最も多く認識された画像を撮影した際における上記他方の照明の設定値を記憶し、
さらに上記設定値変更手段は、上記他方の照明の設定値を所定の値に固定した状態で、上記一方の照明の設定値を変化させるとともに、上記撮影手段が異なる設定値で照射される照明光の下で物品を撮影し、
上記認識手段は撮影された複数の画像のそれぞれから上記突起を認識し、上記設定値記憶手段は突起が最も多く認識された画像を撮影した際における上記一方の照明の設定値を記憶し、
上記設定値記憶手段が記憶した照明の設定値を、それぞれ上記第1照明および第2照明の設定値として設定することを特徴としている。
【0009】
請求項5の発明にかかる物品認識装置は、請求項4に記載の発明において、上記第1照明および第2照明のうち、いずれか一方を上記撮影手段の撮影方向と同軸方向に照明光を照射する同軸照明とし、いずれか他方を上記撮影手段による撮影範囲の周囲から斜めに照明光を照射するリング照明とすることを特徴としている。
【0010】
請求項6の発明にかかる物品認識装置は、請求項4または請求項5のいずれかに記載の発明において、上記第1、第2照明における照明光の設定値が、当該照明光の輝度であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記請求項1の発明によれば、第1照明および第2照明の照明光の設定値を自動的に設定することができるため、容易に設定が行えるととともに、作業者によるばらつきも発生せず、安定した設定値を設定することができる。
【0012】
上記請求項2の発明によれば、第1照明を同軸照明、第2照明をリング状照明とすることで、物品の突起をより正確に認識することができる。
【0013】
上記請求項3の発明によれば、第1、第2照明の輝度の設定を容易にかつ安定して設定することができる。
【0014】
上記請求項4の発明によれば、第1照明および第2照明の照明光の設定値を自動的に設定することができるため、容易に設定が行えるととともに、作業者によるばらつきも発生せず、安定した設定値を設定することができる。
【0015】
上記請求項5の発明によれば、第1照明を同軸照明、第2照明をリング状照明とすることで、物品の突起をより正確に認識することができる。
【0016】
上記請求項6の発明によれば、第1、第2照明の輝度の設定を容易にかつ安定して設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例にかかるボンディング装置を示す構成図
【図2】第1撮影手段、第1、第2照明の構成を示す側面図
【図3】第1、第2照明の設定値の設定方法を説明するフローチャート
【図4】第1照明の輝度を設定する際の、輝度とバンプの個数との関係を示したグラフ
【図5】第2照明の輝度を設定する際の、輝度とバンプの個数との関係を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図示実施例について説明すると、図1は物品としての基板1にチップ2をボンディングするボンディング装置3を示している。
上記基板1の表面およびチップ2の下面には、予め半田ボールをリフローして溶融させた突起としてのバンプ1a(図2参照、チップ2のバンプは図示せず)が所定の間隔で形成されており、上記基板1とチップ2とはこのバンプ1aの位置をあわせてボンディングされるようになっている。
上記ボンディング装置3は、上記基板1を支持する支持手段としての加工テーブル4と、加工テーブル4の上方に設けられて上記チップ2を保持するボンディングヘッド5と、該ボンディングヘッド5と一体的に設けられて上記基板1を撮影する第1撮影手段6と、上記加工テーブル4に設けられて上記ボンディングヘッド5に保持されたチップ2を撮影する第2撮影手段7とを備え、これらは制御手段8(図2参照)によって制御されるようになっている。
そして上記第1、第2撮影手段6,7には、それぞれ上記基板1またはチップ2に対して照明光を照射する第1照明9および第2照明10が設けられており、この2組の第1、第2撮影手段とこれらに設けた第1、第2照明9、10とは、それぞれ本発明にかかる物品認識装置を構成している。
【0019】
上記加工テーブル4はいわゆるX−Yテーブルとなっており、その上面には上記基板1を支持するボンディングステージ11と、該ボンディングステージ11に隣接した位置に設けられたフラックストレイ12とが設けられ、上記第2撮影手段7はこれらボンディングステージ11およびフラックストレイ12に隣接した位置に設けられている。
上記ボンディングヘッド5は、上記加工テーブル4の上方に架設されたフレーム13に昇降手段14を介して昇降可能に設けられており、ボンディングヘッド5の下端には上記チップ2を吸着保持する吸着ヘッド5aが設けられ、該吸着ヘッド5aにはチップ2を加熱する図示しないヒータが設けられている。
また上記吸着ヘッド5aは、吸着保持したチップ2を水平方向に回転させる図示しない回転手段により回転させるようになっており、該回転手段によって加工テーブル4上の基板1とチップ2との傾きを一致させるようになっている。
【0020】
図2は、上記物品認識装置を構成する上記第1撮影手段6および上記第1、第2照明9、10を説明する図となっている。
上記第1撮影手段6は上記昇降手段14によって上記ボンディングヘッドと一体的に昇降するようになっており、下方に位置する上記基板1を撮影すると、撮影した画像を上記制御手段8に送信するようになっている。
ここで制御手段8には、上記第1撮影手段6が撮影した画像を認識する認識手段8aと、第1、第2照明9、10の設定値を変更する設定値変更手段8bと、上記設定値を記憶する設定値記憶手段8cとが設けられている。
上記認識手段8aは、上記第1撮影手段6が撮影した画像から上記バンプ1aを認識し、複数のバンプ1aの中心位置から上記基板1の位置や傾きを認識するとともに、各バンプ1aの形状の良否も判定することが可能となっている。
なお撮影された画像からバンプ1aを認識する方法自体は従来公知なので詳細な説明は省略するが、例えば認識手段8aは撮影された画像から所定のしきい値の輝度の範囲で表示された画素の塊を検出し、この画素の塊の中から面積と真円度が正常な範囲のものを抽出して、これをバンプ1aとして認識するようになっている。
上記設定値変更手段8bは、上記第1、第2照明9、10の設定値として、これらが照射する照明光の輝度を変更するものとなっており、そのほかにも上記第1、第2照明9、10が照明光をパルス照射可能な構成である場合には、当該照明光のパルス間隔も設定値とすることができる。
上記設定値記憶手段8cは、後述する照明の設定値設定方法により設定した上記第1、第2照明9、10の設定値を記憶するようになっており、認識手段8aはこの記憶された設定値により上記ボンディング装置3によるボンディング動作を行うようになっている。
【0021】
上記第1照明9は、水平方向に照明光を照射する第1ランプ15と、該第1ランプ15から照射された照明光を第1撮影手段6の撮影方向と同軸方向に反射させるハーフミラー16とから構成されている。
上記構成により、上記第1照明9が照射する照明光は上記第1撮影手段6の撮影方向と同軸方向に照射されるため、上記基板1に形成されたバンプ1aにはその直上から照明光が照射されるようになっている。
その結果、上記第1照明9の照明光のうち、バンプ1aの頂部で直上に反射した反射光だけが第1撮影手段6によって撮影されることとなり、換言すると第1撮影手段6には第1照明9の照射光が点状の反射光となって撮影されるようになっている。
【0022】
上記第2照明10は第1撮影手段6による撮影範囲の周囲から斜めに照明光を照射するリング照明となっており、上記第1撮影手段6と一体的に移動可能に設けられた円環状のリング状部材17と、該リング状部材17に沿って円周状に配置された複数の第2ランプ18とから構成されている。
上記リング状部材17は、上記第1撮影手段6の撮影中心を囲繞するように設けられており、上記第1撮影手段6の撮影範囲に写らないよう、その径および位置が設定されている。
また各第2ランプ18は、上記バンプ1aに対して第1照明9の照明光とは異なる角度で照明光を照射するようになっており、上記リング状部材17にはその光軸が当該リング状部材17の中心軸を向くよう、斜め下方に向けて固定されている。
上記構成により、上記第2照明10が照射する照明光は上記基板1のバンプ1aに対して斜め上方から照射されるため、上記バンプ1aで反射した反射光のうち、上記第1撮影手段6に向けて反射したものだけが第1撮影手段6に撮影されることとなる。つまりバンプ1aの頂部で反射した反射光は第1撮影手段6に撮影されないようになっている。
さらに第2照明10はリング状に照明光を照射するため、上記バンプ1aの頂部を囲繞する部分で反射した反射光が上記第1撮影手段6に撮影されることとなり、換言すると第1撮影手段6には第2照明10の照射光がリング状の反射光となって撮影されるようになっている。
【0023】
上記第2撮影手段7は上記加工テーブル4に対して上方を向いた状態で固定され、該加工テーブル4によって上記ボンディングヘッド5が保持したチップ2の下方に移動するようになっている。
そして第2撮影手段7は上記チップ2を撮影してその画像を上記認識手段8aに送信し、認識手段8aでは撮影されたチップ2の画像から、当該チップ2の上記ボンディングヘッド5に対する位置や、傾きを認識するようになっている。
この第2撮影手段7に設けた第1、第2照明9、10も、上記第1撮影手段6に設けた第1、第2照明9、10と同様の構成を有しているため、詳細な説明については省略する。
【0024】
次に、上記構成を有するボンディング装置3の動作について説明する。
まず、図示しない基板供給手段が、上記加工テーブル4のボンディングステージ11上に基板1を載置し、一方図示しないチップ供給手段が上記ボンディングヘッド5の吸着ヘッド5aにチップ2を吸着保持させる。
上記加工テーブル4は上記ボンディングヘッド5に吸着保持されたチップ2の下方に上記第2撮影手段7を移動させ、第2撮影手段7はこのチップ2を下方から撮影して、その画像を認識手段8aに送信する。
その際、上記第2撮影手段7に設けた第1、第2照明9、10はチップ2の下面に形成されたバンプに照明光を照射し、認識手段8aは第2撮影手段7が撮影した画像から上記バンプを認識して、このチップ2の中心の位置および傾きを認識する。
続いて、加工テーブル4は上記フラックストレイ12をチップ2の下方に位置させ、その後昇降手段14がボンディングヘッド5ごとチップ2を下降させることにより、チップ2に形成されたバンプにフラックスを付着させる。
【0025】
次に、加工テーブル4は上記ボンディングステージ11に支持された基板1を上記第1撮影手段6の下方に移動させ、第1撮影手段6はこの基板1を上方から撮影して、その画像を認識手段8aに送信する。
その際、上記第1撮影手段6に設けた第1、第2照明9、10は基板1の表面に形成されたバンプ1aに照明光を照射し、また第1撮影手段6は基板1の全体ないし一部分だけを撮影する。
認識手段8aは、上記第1撮影手段6の撮影範囲に含まれる複数のバンプ1aを認識して、上記基板1のボンディングステージ11における位置および傾きを認識するとともに、バンプ1aの良否判定を行う。
次にボンディングヘッド5は吸着保持したチップ2を回転させて上記加工テーブル4に支持された基板1の傾きに一致させ、さらに上記加工テーブル4は基板1をボンディングヘッド5に吸着保持されたチップ2の下方に位置させる。
そして、ボンディングヘッド5は昇降手段14により下降して基板1のバンプ1aとチップ2のバンプとを当接させ、さらに上記ヒータにより加熱しつつ加圧することでバンプ1aを溶融させ、その後冷却固化させることでチップ2を基板1に固定する。
なお、このようなボンディング装置3によるボンディング作業自体は従来公知であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0026】
上記構成を有するボンディング装置3では、上記第1、第2撮影手段6,7のそれぞれに設けた第1、第2照明9、10が照明光を照射することにより、基板1やチップ2に形成されたバンプ1aを認識するようになっているが、そのためには上記第1、第2照明9、10の輝度を適切に調整する必要がある。
上述したように、第1撮影手段6に設けた第1照明9の照明光は、バンプ1aの頂部で反射した部分だけが反射光として第1撮影手段6に撮影され、第2照明10の照明光は上記頂部を囲繞するリング状の反射光として第1撮影手段6に撮影されるようになっている。
つまり第1撮影手段6は、上記第1照明9の反射光の周囲を第2照明10の反射光が囲繞した略円形の画像を撮影するようになっており、これら反射光の輝度に差があると、上記認識手段8aが撮影された画像からバンプ1aを認識する際に誤認識する恐れがある。
従来は、ボンディング装置3の作動前に、作業者が第1撮影手段6の撮影した画像をもとに、第1、第2照明9、10の輝度を手作業で調整するなどの調整方法が採用されていたが、2つの照明の輝度を適切に調整するには時間がかかるとともに、設定内容に個人差が生じることがある。
また、長時間の使用によって第1、第2照明9、10の照明光の輝度が下がってしまった場合に、これに気付かずに第1、第2照明9、10をそのまま使用することで誤検出が発生するなどの問題があった。
【0027】
このような問題に対処するため、本実施例では以下の設定値設定方法を用いることで、第1、第2照明9、10の輝度を自動的にかつ安定して調整することが可能となっている。
まず、この設定値設定方法を実施する際には、上記加工テーブル4のボンディングステージ11上に輝度調整用の基板1を載置するようになっており、この輝度調整用の基板1は予め基板1上に所定数のバンプ1aを高精度に形成したものであり、予め作業者等が顕微鏡等を用いて目視により検査を行ったものである。
以下、図3に示すフローチャートを用いて説明すると、まず上記設定値変更手段8bは上記第1、第2照明9、10の照明光の輝度を最小に設定して、それぞれの照明光を基板1に照射させる(S1)。
次に、第1撮影手段6は基板1のバンプ1aで反射した反射光を撮影し、上記認識手段8aはこの画像からバンプ1aを認識し、認識したバンプ1aの数を計測するとともに、バンプ1aの平均面積を算出する(S2)。
ただし、ここでは第1、第2照明9、10の輝度が最小となっているため、反射光は微弱であり、上記認識手段8aが画像から検出することが可能なバンプ1aの数は少なく、またバンプ1aの平均面積も狭いものとなっている。
【0028】
次に、上記設定値変更手段8bが第2照明10の輝度を固定したまま、第1照明9の輝度だけを少し増大させ(S3)、第1撮影手段6は、当該第1照明9の輝度を増大させた際の基板1を撮影し、認識手段8aは撮影された画像から再びバンプ1aの数および平均面積を測定する(S4)。
そして認識手段8aは、第1照明9の輝度を増大させた画像におけるバンプ1aの数を、直前に撮影した第1照明9の輝度が低い画像におけるバンプ1aの数と比較する(S5)。
ここで、第1照明9の輝度を増大させることで、上記バンプ1aで反射した反射光の輝度が増大するため、直前に撮影された画像に対して、撮影した画像から検出されるバンプ1aの数は多くなり、またバンプ1aの平均面積も広くなる。
このように、第1照明9の輝度を増大させた画像において、バンプ1aの数が増大していた場合、上記設定値変更手段8bは、再び第1照明9の輝度を少し増大させるとともに(S3)、上記認識手段8aが新たに撮影した画像から再びバンプ1aの数および平均面積を測定する(S4)。
このようにして第1照明9の輝度を徐々に増大させてゆくと、図4に示すように第1照明9の輝度が一定の輝度を超えた時点で、画像から検出されるバンプ1aの数が減少するようになっている。
なお、第1照明9の輝度を増大させた画像におけるバンプ1aの数が直前の画像におけるバンプ1aの数と同数だった場合も、上記設定値変更手段8bは第1照明9の輝度を少し増大させ(S3)、上記認識手段8aが新たに撮影した画像からバンプ1aの数および平均面積を測定する(S4)。
【0029】
一方、認識手段8aが第1照明9の輝度を増大させた画像におけるバンプ1aの数が、直前の画像におけるバンプ1aの数よりも減少していることを認識すると、認識手段8aは直前の画像、すなわちバンプ1aが最も多く認識された画像におけるバンプ1aの平均面積を、予め認識手段8aに登録された基準値と比較する(S6)。
バンプ1aの平均面積が上記基準値に適合している場合、上記設定値記憶手段8cは当該バンプ1aが最も多く認識された画像で設定された第1照明9の輝度を、ボンディング装置3の作動時における当該第1照明9の輝度として記憶する(S7)。
逆に、バンプ1aの平均面積が上記基準値から外れている場合には、異常があるものとして、認識手段8aは設定作業を停止して所要の警告を発生する(S8)。
例えば、輝度調整用の基板1上にバンプ1a以外の異物が存在し、この異物に反射した反射光を検出した場合、この異物を示す画像の面積が上記平均面積の基準値より外れていれば、認識手段8aはバンプ1a以外の異物を検出した蓋然性が高いものとして、異常があるものと判定する。
【0030】
このようにして上記第1照明9の輝度が上記設定値記憶手段8cに記憶されると、上記設定値変更手段8bは上記第1照明9の輝度を当該記憶された輝度に固定し、最小の輝度に設定されている第2照明10の輝度だけを少し増大させる(S9)。
第1撮影手段6は第2照明10の輝度が増大された際の基板1を撮影して、認識手段8aは撮影された画像からバンプ1aの数および平均面積を測定し(S10)、第2照明10の輝度を増大させた画像におけるバンプ1aの数と、直前に撮影した画像におけるバンプ1aの数とを比較する(S11)。
この後、上記第1照明9の輝度を記憶する際の動作と同様、輝度を増大させた画像におけるバンプ1aの数が増大していた場合、上記設定値変更手段8bは再び第2照明10の輝度を少しだけ増大させ(S9)、上記認識手段8aが新たに撮影した画像からバンプ1aの数および平均面積を測定する(S10)作業を繰り返す。
そして、図5に示すように第2照明10の輝度が一定の輝度を超えると、画像から検出されるバンプ1aの数が減少するため、このとき認識手段8aは第2照明10の輝度を増大させた画像の直前の画像、すなわちバンプ1aが最も多く認識された画像におけるバンプ1aの平均面積を、所定の基準値と比較する(S12)。
そしてバンプ1aの平均面積が上記基準値に適合している場合、上記設定値記憶手段8cは、上記バンプ1aが最も多く認識された画像において設定された第2照明10の輝度を、ボンディング装置3の作動時における当該第2照明10の輝度として記憶する(S13)。
つまり設定値記憶手段8cは、バンプ1aが最も多く認識された画像を撮影した際における第2照明10の輝度を記憶するようになっている。
逆に、バンプ1aの平均面積が上記基準値に対して外れている場合には、異常があるものとして、認識手段8aは設定作業を停止して所要の警告を発生する(S14)。
【0031】
このようにして、上記第1撮影手段6に設けた第1照明9および第2照明10の輝度を記憶すると、同じ作業を第2撮影手段7に設けた第1照明9および第2照明10についても行う。
この場合、ボンディングヘッド5には正確にバンプ1aの形成された輝度調整用のチップ2が吸着保持されるようになっている。
そして上述した照明の設定作業は、ボンディング装置3の作動直後における最初のチップ2を基板1に載置する直前のほか、ボンディング装置3を作動させてから所定時間が経過する毎に行ってもよく、また基板1やチップ2の製造ロットが変更された際にも行うことができる。
【0032】
なお上記実施例における照明の設定作業において、第1照明9および第2照明10の輝度を変化させる手順については、上記実施例の手順に限定されるものではない。
まず上記実施例では、第1照明9の輝度を記憶した後に第2照明の輝度を記憶する上記S9の手順において、上記第1照明9の輝度を記憶した輝度に固定して、第2照明10の輝度を変化させるようになっている。
これに対し、当該S9の手順において、上記第1照明9の輝度をその記憶した輝度に設定せず、予め設定した所定の輝度に設定し、この設定した輝度に固定して第2照明10の輝度を変化させ、第2照明10の輝度を記憶しても良い。
そしてボンディング装置3を作動させる際には、第1、第2照明9、10の輝度をそれぞれ記憶した輝度に設定すればよい。
【0033】
また上記実施例では、最初に第2照明10の輝度を固定して、第1照明9の輝度を徐々に変化させることで、第1照明9の輝度から記憶するようになっているが、その逆、つまり最初に第1照明9の輝度を固定して、第2照明10の輝度から記憶するようにしてもよい。
例えば上記基板1やチップ2によっては、最初に輝度を固定する照明の順序を入れ替えることで、上記バンプ1aの抽出が容易となることがあるからである。
【0034】
さらに上記実施例では、S3〜S5またはS9〜S11の手順において、徐々に第1、第2照明9、10の輝度を増大させ、そのつど第1撮影手段6が撮影を行い、直前に撮影された画像におけるバンプ1aの数との比較を行っている。
これに対し、輝度の異なる画像を予め複数撮影し、その後それらの画像の中から、最も多いバンプ1aを検出することができた画像を選択し、当該画像の撮影に使用した輝度を記憶するようにしても良い。
さらに、上記実施例では第1、第2照明9、10の輝度を最小に設定した状態から輝度を徐々に増大させるようになっているが、予め使用する輝度がおおよそ判明している場合には、この判明している輝度よりも低い輝度を最小の輝度として徐々に輝度を増大させるようにしてもよい。
このようにすることで、第1、第2照明9、10の輝度の設定時間を短縮することが可能となる。
【0035】
そして上記実施例では、第1照明9が上記第1撮影手段6の撮影方向と同軸の同軸照明となっており、第2照明10がリング照明となっているが、第1照明9をリング照明として第2照明10を同軸照明としてもよい。
ここで上記第2照明10で使用しているリング照明についても、ランプを同心円状に複数列設けることも、ランプを保持する保持部材を円形ではない例えば四角形とすることも可能である。
さらには、第1照明9および第2照明10については、バンプ1aに対する照明光の照射方向が異なれば、その他の構成を有していても良く、必ずしも同軸照明を設ける必要も、リング照明を設ける必要も無い。
【0036】
そして上記実施例ではボンディング装置3について説明したが、撮影手段と第1、第2照明9、10とを有する物品認識装置を有する装置であれば、例えば基板1に半田ボールを載置する半田ボール搭載装置に適用することもできる。
つまり半田ボール搭載装置が基板1に半田ボールを所定の配列で配置した後、基板1から突出している半田ボールに第1、第2照明9、10から照明光を照射し、半田ボールで反射した反射光を撮影手段で撮影するような場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 基板 1a バンプ
3 ボンディング装置 4 加工テーブル
5 ボンディングヘッド 6 第1撮影手段
7 第2撮影手段 8 制御手段
8a 認識手段 8b 設定値変更手段
8c 設定値記憶手段 9 第1照明
10 第2照明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の表面に形成された複数の突起に照明光を照射する第1照明と、該第1照明とは異なる角度から上記突起に照明光を照射する第2照明と、上記突起で反射した上記照明光の反射光を撮影する撮影手段とを備えた物品認識装置における照明の設定値設定方法であって
上記第1照明および第2照明のうち、いずれか一方の照明の設定値を固定したまま、いずれか他方の照明の設定値を変化させるとともに、上記撮影手段により異なる設定値で照射される照明光の下で物品を撮影し、
上記撮影手段が撮影した複数の画像のそれぞれから上記突起を認識して、突起が最も多く認識された画像を撮影した際における上記他方の照明の設定値を記憶し、
続いて上記他方の照明の設定値を所定の値に固定した状態で、上記一方の照明の設定値を変化させるとともに、上記撮影手段により異なる設定値で照射される照明光の下で物品を撮影し、
上記撮影手段が撮影した複数の画像のそれぞれから上記突起を認識して、突起が最も多く認識された画像を撮影した際における上記一方の照明の設定値を記憶し、
上記記憶した照明の設定値を、それぞれ上記第1照明および第2照明の設定値として設定することを特徴とする物品認識装置における照明の設定値設定方法。
【請求項2】
上記第1照明および第2照明のうち、いずれか一方を上記撮影手段の撮影方向と同軸方向に照明光を照射する同軸照明とし、いずれか他方を上記撮影手段による撮影範囲の周囲から斜めに照明光を照射するリング照明とすることを特徴とする請求項1に記載の物品認識装置における照明の設定値設定方法。
【請求項3】
上記第1、第2照明における照明光の設定値が、当該照明光の輝度であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の物品認識装置における照明の設定値設定方法。
【請求項4】
表面に複数の突起が形成された物品を支持する支持手段と、上記物品の突起に照明光を照射する第1照明と、該第1照明とは異なる角度から上記突起に照明光を照射する第2照明と、上記突起で反射した上記照明光の反射光を撮影する撮影手段と、当該撮影手段が撮影した画像から上記突起を認識する認識手段とを備えた物品認識装置において、
上記第1照明および第2照明が照射する照明光の設定値を変更する設定値変更手段と、これら第1照明および第2照明の設定値を記憶する設定値記憶手段とを設け、
上記設定値変更手段が第1、第2照明のうちいずれか一方の照明の設定値を固定したまま、いずれか他方の照明の設定値を変化させるとともに、上記撮影手段が異なる設定値で照射される照明光の下で物品を撮影し、
上記認識手段は撮影された複数の画像のそれぞれから上記突起を認識し、上記設定値記憶手段は突起が最も多く認識された画像を撮影した際における上記他方の照明の設定値を記憶し、
さらに上記設定値変更手段は、上記他方の照明の設定値を所定の値に固定した状態で、上記一方の照明の設定値を変化させるとともに、上記撮影手段が異なる設定値で照射される照明光の下で物品を撮影し、
上記認識手段は撮影された複数の画像のそれぞれから上記突起を認識し、上記設定値記憶手段は突起が最も多く認識された画像を撮影した際における上記一方の照明の設定値を記憶し、
上記設定値記憶手段が記憶した照明の設定値を、それぞれ上記第1照明および第2照明の設定値として設定することを特徴とする物品認識装置。
【請求項5】
上記第1照明および第2照明のうち、いずれか一方を上記撮影手段の撮影方向と同軸方向に照明光を照射する同軸照明とし、いずれか他方を上記撮影手段による撮影範囲の周囲から斜めに照明光を照射するリング照明とすることを特徴とする請求項4に記載の物品認識装置。
【請求項6】
上記第1、第2照明における照明光の設定値が、当該照明光の輝度であることを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の物品認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−57561(P2013−57561A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195169(P2011−195169)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】