説明

状態推定装置

【課題】状態推定装置において、移動体に加速度が加わっている場合であっても、乗員の状態を推定可能とすること。
【解決手段】状態推定処理では、加速度センサから取得した加速度から加速度変化量を、解析処理にて導出した脈波伝播速度からPTT変化量を導出する(S150)。予め用意された状態対応関係群の中から、乗員によって入力された分類情報に一致する分類情報を有した状態対応関係に、導出された加速度変化量及びPTT変化量を照合する(S160)。このとき、照合された加速度変化量及びPTT変化量に最も類似する情報からなる第1対応関係に対応付けられた血管硬さが、乗員の血管硬さ、ひいては乗員の状態として推定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載して用いられる状態推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両を運転する運転者から生体情報(主として、心拍数、以下、この心拍数を生体情報として説明する)を取得するセンサー群と、そのセンサー群にて取得した生体情報に基づいて運転者の状態(例えば、リラックスした状態であるか緊張した状態であるか)を推定する推定装置とを備えた状態推定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の状態推定装置における推定装置では、車両が安定しているとみなせる期間にセンサー群にて取得した生体情報を閾値として設定し、その設定された閾値よりも、車両の走行中に順次取得した生体情報が大きければ、運転者が緊張した状態であるものと推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−255520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の状態推定装置を搭載した車両が、加減速(例えば、発進と停止と)を繰り返す場合や曲路を走行する場合、その車両には、加速度が加わる。すると、当該車両の乗員の体液は、体内にて偏りが生じるため、センサー群にて取得される生体情報の精度が悪化する。
【0006】
このとき、特許文献1に記載の状態推定装置における推定装置では、精度が悪化した生体情報を運転者の状態推定に用いるため、その推定精度が悪化する。換言すれば、車両に加速度が加わっている場合、特許文献1に記載の状態推定装置では、乗員の状態を推定することが困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、状態推定装置において、移動体に加速度が加わっている場合であっても、乗員の状態を推定可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明(第1発明)は、移動体に搭載され、その移動体の乗員の状態を推定する状態推定装置に関するものである。
この第1発明の状態推定装置では、加速度情報生成手段が、移動体に加わっている加速度を取得して、その取得した加速度に関する情報(即ち、加速度情報)を生成し、脈波伝播情報生成手段が、乗員から計測した生体信号に従って導出される脈波伝播時間に関する情報(即ち、脈波伝播情報)を生成する。さらに、第1発明の状態推定装置では、硬化度対応関係から、状態推定手段が、加速度情報生成手段で生成された加速度情報、及び脈波伝播情報生成手段で生成した脈波伝播情報に基づいて、乗員の血管硬さを乗員の状態として推定する。なお、ここで言う硬化度対応関係とは、移動体に加わっている加速度に関する情報(即ち、加速度情報)と、その加速度情報が生成された際に生成された脈波伝播情報との組合せ毎に、人の血管硬さを対応付けた各対応関係である。
【0009】
ここで、図8は、本願発明の発明者が実施した実験の結果を模式的に示したものであり、移動体の進行方向に沿って同一の大きさの加速度が、異なる血管硬さを有した乗員に加わった場合における各乗員の脈波伝播時間(即ち、PTT)の変化を示した図である。
【0010】
この図8に示すように、本願発明の発明者は、実験によって、移動体(即ち、乗員)に加わる加速度が同一であっても、各乗員の血管硬さに応じて脈波伝播時間(即ち、PTT)が異なるという新たな知見を得た。
【0011】
この新たな知見に基づく第1発明の状態推定装置では、予め用意された硬化度対応関係群から、移動体に加速度が加わった際に生成された加速度情報及び脈波伝播情報に基づいて、乗員の血管硬さが推定される。よって、本発明の状態推定装置によれば、移動体に加速度が加わっている場合であっても、乗員の血管硬さを「乗員の状態」として推定することができる。
【0012】
そして、硬化度対応関係の組合せそれぞれに、人の特性を分類した分類情報が対応付けられている場合、第1発明の状態推定装置は、請求項2に記載のように、分類区分取得手段が、外部からの入力に従って、乗員の分類情報である分類区分を取得し、その取得した分類区分に一致する分類情報が対応付けられた硬化度対応関係から、状態推定手段が、乗員の血管硬さを推定するように構成されていても良い。
【0013】
このように構成された状態推定装置では、硬化度対応関係群の中から、状態が推定されるべき乗員の特性に合致する硬化度対応関係を抽出して、その抽出した硬化度対応関係を用いて乗員の血管硬さが推定される。この結果、本発明の状態推定装置によれば、推定精度をより向上させることができる。
【0014】
なお、ここで言う人の特性(即ち、分類情報)とは、人の性別や、年令、体重、身長、血管年齢、居住地域(例えば、温暖な地域であるのか寒冷な地域であるのか)、食前であるか食後であるか、起床してから現時点までの経過時間などである。
【0015】
ところで、上記特許文献1に記載された状態推定装置では、加速度が車両に加わっている場合、運転者の状態推定の精度が悪化するという問題があった。この問題を解決するために、状態推定装置において、加速度センサにて検出された加速度が、予め規定された規定値以上である場合に、状態推定の実行を禁止することが提案されている(特開2003−118421号)。
【0016】
このような提案がなされた(即ち、特開2003−118421号に記載された)状態推定装置(以下、従来提案装置と称す)では、加速度センサにて検出された加速度が規定値以上となると、状態推定が実行されない。このため、従来提案装置では、信号の多い都市部において車両が停止と発進とを繰り返す場合や、山間部などにおいて曲路が連続するような道路を車両が走行する場合には、状態推定がほとんど実行されなくなるという問題がある。
【0017】
そこで、加速度が加わっている場合であっても、状態推定を実行可能とすることを目的としてなされた本発明(第2発明)は、乗員の体調、疲労の度合い、ストレスの度合いを乗員の状態として推定する状態推定装置である。この第2発明の状態推定装置は、加速度情報生成手段が加速度情報を生成し、脈波伝播情報生成手段が脈波伝播情報を生成すると共に、状態推定手段が、状態情報対応関係から、それらの生成された加速度情報及び脈波伝播情報に基づいて、乗員の状態を推定するように構成されている。なお、ここで言う状態情報対応関係とは、少なくとも、加速度情報と脈波伝播情報との組合せ毎に、乗員の体調、疲労の度合い、ストレスの度合いのうち少なくとも一つが予め対応付けられた対応関係それぞれである。
【0018】
つまり、第2発明の状態推定装置は、体に負荷が加わると脈波伝播時間が変化するという事実と、本願発明の発明者が実験によって得た新たな知見とに基づくものである。その新たな知見とは、乗員に加わる加速度が大きいほど、その乗員の脈波伝播時間(即ち、PTT)も大きくなるというものである。
【0019】
換言すれば、乗員に加速度(即ち、負荷)が加わった時に生成される脈波伝播時間(PTT)が、その加速度が加わっていない時に生成されたPTTからの変化によって表される乗員の状態を、その時の加速度及びPTTと対応付けることで、移動体に加速度が加わっている場合であっても、乗員の状態を推定することができる。
【0020】
そして、状態情報対応関係それぞれに、分類情報が対応付けられている場合、第2発明の状態推定装置は、請求項4に記載のように、分類区分取得手段が、外部からの入力に従って、分類区分を取得し、その取得した分類区分に一致する分類情報と対応付けられた状態情報対応関係から、状態推定手段が対象状態を推定するように構成されていても良い。
【0021】
このように構成された状態推定装置では、状態情報対応関係群の中から、状態が推定されるべき乗員の特性に合致する状態情報対応関係を用いて対象状態が推定される。この結果、本発明の状態推定装置によれば、乗員の状態についての推定精度をより向上させることができる。
【0022】
さらに、上記目的を達成するためになされた本発明(第3発明)の状態推定装置では、加速度情報生成手段が、加速度情報を繰り返し生成し、脈波伝播情報生成手段が、脈波伝播時間を繰り返し生成する。これと共に、加速度情報が生成される毎、または脈波伝播情報が生成される毎に、状態対応情報生成手段が、少なくとも、それらの生成された加速度情報と脈波伝播情報とを対応付けた情報(即ち、状態対応情報)を、データを読み書き可能な記憶装置に記憶する。そして、状態推定手段が、記憶装置に記憶された状態対応情報の中で、現加速度情報に一致する加速度情報と対応付けられた脈波伝播情報と、現脈波伝播情報とを比較する対比処理の結果に基づいて、乗員の状態として推定する。
【0023】
つまり、第3発明の状態推定装置では、略同一の大きさの加速度が移動体に加わっている時に生成された脈波伝播時間同士を比較した結果、即ち、脈波伝播時間の変化傾向に従って、乗員の状態を推定している。
【0024】
したがって、第3発明のように構成された状態推定装置であっても、移動体に加速度が加わっている場合に、「乗員の状態」を推定することができる。
なお、第3発明の状態推定装置における乗員の状態とは、例えば、血管硬さの経年変化であっても良いし、乗員の体調や、疲労の度合い、ストレスの度合いなどであっても良い。
【0025】
さらに、第3発明の状態推定装置は、請求項6に記載のように、外部からの入力に従って、分類情報取得手段が分類情報を取得し、状態対応情報生成手段が、乗員分類を状態対応情報毎に対応付けて記憶装置に記憶し、状態推定手段が、分類情報取得手段で取得した分類情報と一致する乗員分類と対応付けられた状態対応情報を用いて対比処理を行うように構成されていても良い。ただし、乗員分類とは、分類情報取得手段にて取得した分類情報であり、乗員の特性を表すものである。
【0026】
このように構成された状態推定装置によれば、状態対応情報群の中から、状態が推定されるべき乗員の特性が合致する状態対応情報のみを用いて、乗員の状態が推定される。この結果、本発明の状態推定装置によれば、乗員の状態について、推定精度をより向上させることができる。
【0027】
なお、本発明の状態推定装置においては、請求項7に記載のように、加速度情報が、加速度の大きさそのものであり、脈波伝播情報が、その大きさの加速度が加わっている状況下での脈波伝播時間であっても良い。
【0028】
この場合、第1,第2発明(請求項1ないし請求項4)の状態推定装置にて用いる硬化度対応関係や状態情報対応関係は、加速度の大きさと、その大きさの加速度が移動体に加わった時の脈波伝播時間との組合せ毎に、血管硬さや対象状態が対応付けられたものとなる。さらに、第3発明(請求項5,6)の状態推定装置における状態対応情報は、加速度の大きさと、その大きさの加速度が移動体に加わった時の脈波伝播時間とが対応付けられたものとなる。
【0029】
ここで、図9は、本願発明の発明者が実施した実験の結果を模式的に示したものである。その実験とは、血管硬さが異なる乗員に、移動体の全幅方向に沿った加速度(図中:横G)が加わった場合における各乗員のPTT変化量を調べるものである。なお、ここでいうPTT変化量とは、単位時間当たりの脈波伝播時間(即ち、PTT)の変化量である。
【0030】
この図9に示すように、発明者が実施した実験により、PTT変化量は、血管硬さ(即ち、血管硬化度)が硬い乗員ほど、移動体に加速度が加わる前に比べて、加速度が加わっている時の方が大きくなるという知見が得られた。
【0031】
このため、本発明の状態推定装置においては、請求項8に記載のように、加速度情報が、規定時間における加速度の変化量であり、脈波伝播情報が、その変化量の加速度の変化が生じた時の脈波伝播時間の変化量であることが望ましい。
【0032】
このような加速度情報及び脈波伝播情報であれば、第1,第2発明(請求項1ないし請求項4)の状態推定装置にて用いる硬化度対応関係や状態情報対応関係は、加速度の変化量と、その変化量の加速度の変化が生じた時の脈波伝播時間の変化量との組合せ毎に、血管硬さや対象状態が対応付けられたものとなる。さらに、第3発明(請求項5,6)の状態推定装置における状態対応情報は、加速度の変化量と、その変化量の加速度の変化が生じたときの脈波伝播時間の変化量とが対応付けられたものとなる。
【0033】
これらの硬化度対応関係や状態情報対応関係、状態対応情報を用いる状態推定装置によれば、移動体に加わる加速度が変化中(例えば、移動体が加速中、減速中、もしくは旋回中)であっても、乗員の血管硬化度や対象状態など乗員の状態を推定することができる。
【0034】
なお、ここでいう規定時間とは、予め規定された時間長である。また、ここでいう設定時間は、規定時間と同一の時間長であっても良いし、規定時間とは異なる時間長であっても良い。
【0035】
そして、加速度情報が上述した(請求項7,8に記載した)ような情報である場合、請求項5に記載の状態推定装置における「現加速度情報に一致する加速度情報」とは、それら加速度情報同士の値が一致することに加えて、それら加速度同士の差分が予め規定された範囲内であることを含むものである。
【0036】
また、本発明(ここでは、請求項1〜請求項8)の状態推定装置は、請求項9に記載のように、機器制御手段が、状態推定手段での推定結果に基づいて、搭載機器を制御するように構成されていても良い。
【0037】
このよう(請求項9)に構成された状態推定装置において、搭載機器が、医療機関に設置された通信機器との間で情報通信を実行する通信機器である場合、機器制御手段が実行する機器制御は、請求項10に記載のように、医療機関に対して推定結果を送信するように通信機器を制御することでも良い。
【0038】
このような状態推定装置によれば、移動体に加速度が加わった際の乗員の状態(即ち、乗員の血管硬さや、乗員の体調、疲労の度合い、ストレスの度合い)を、医療機関に蓄積させることができる。この結果、医療機関での診察において用いられる情報の量が増加し、医師等は、診察時の判断をより正確にすることができる。
【0039】
また、請求項9に記載のように構成された状態推定装置において、搭載機器が、移動体を駆動または停止させるための機器群である場合、機器制御手段が実行する機器制御は、請求項11に記載のように、移動体が安全に運行されるように搭載機器を制御することでも良い。
【0040】
なお、本発明の状態推定装置における加速度情報生成手段は、請求項12に記載のように、移動体に搭載された加速度センサーから加速度を取得するように構成されていても良い。ただし、移動体がナビゲーション装置を搭載した車両である場合には、加速度情報生成手段は、その車両の現在位置及び現在位置における道路構造(例えば、道路の曲率)に基づいて、車両に加わる加速度を推定し、その推定した加速度を取得するように構成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】状態推定装置の概略構成を示したブロック図である。
【図2】車室内に配置された計測装置を示した図である。
【図3】ステアリングに設置された計測装置を示した図である。
【図4】加速度の変化量と脈波伝播時間の変化量と血管硬さとの関係を示した説明図である。
【図5】第1実施形態における状態推定処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図6】第2実施形態における状態推定処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図7】第2実施形態における運転者の状態推定の手法を示した説明図である。
【図8】血管硬さが異なる人物に加速度が加わった際の脈波伝播時間を模式的に示した説明図である。
【図9】加速度の変化量と脈波伝播時間の変化量と血管硬さとの関係を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1は、自動車に搭載される状態推定装置、及びその状態推定装置周辺の概略構成を示したブロック図である。なお、以下では、状態推定装置1が搭載された自動車を自車両と称す。
〈状態推定装置の構成について〉
図1に示すように、状態推定装置1は、運転者から生体信号を計測する計測装置20と、自車両に加わる加速度を少なくとも含む各種情報を取得するための情報取得装置群30とを備えている。さらに、状態推定装置1は、計測装置20で計測された生体信号を解析して生体情報を生成すると共に、その生成した生体情報、及び情報取得装置群30にて取得した各種情報に基づいて、運転者の状態を推定する制御装置10を備えている。
【0043】
この制御装置10には、公衆通信回線を介してデータ通信するための通信装置42と、自車両に搭載されたブレーキ機構を制御するブレーキ制御装置43とが接続されている。
そして、情報取得装置群30は、自車両に加わる加速度を検出するための加速度センサ31と、自車両の車速を検出するための速度センサ32と、自車両の現在位置を取得すると共に、自車両の走行予定経路等を案内するナビゲーション装置33とを備えている。
【0044】
このうち、加速度センサ31は、自車両に加わる3方向それぞれの(即ち、自車両の全長方向、車幅方向、車高方向)加速度を検出する周知の3軸加速度センサーである。
また、ナビゲーション装置33は、自車両の現在位置を検出する位置検出部35と、ユーザーからの各種指令を受け付ける操作スイッチ群36と、画像を表示する表示部37と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部38とを備えている。さらに、ナビゲーション装置33は、地図データ等の各種データを格納する記憶部39と、位置検出部35、及び操作スイッチ群36等の入力に従って、記憶部39、表示部37、及び音声出力部38等のナビゲーション装置33を構成する各部を制御する制御部40とを備えている。
【0045】
なお、位置検出部35は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信して、その受信信号を出力するGPS受信機(図示せず)や、自車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロセンサ(図示せず)、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサ(図示せず)等からなる周知のものである。
【0046】
また、通信装置42は、制御装置10からの指令に従って、一般通信回線(ここでは、無線通信)を介して、医療機関に設置された情報処理機器51との間で情報通信を実行するように構成されている。なお、情報処理機器51は、通信装置42から送信された情報を受信する通信機器(図示せず)と、その通信機器にて受信した情報を記憶すると共に、その受信した情報を加工する機能を有した周知の情報処理装置(図示せず)とを少なくとも備えている。
【0047】
さらに、ブレーキ制御装置43は、制御装置10からの指令に従って、自車両に搭載されたブレーキ機構を制御し、自車両の制動力を増減させるように構成されている。
次に、計測装置20は、心電を計測する心電センサ21と、脈波を計測する脈波センサ22とを備えている。
【0048】
ここで、図2は、車室内に配置された計測装置を示した説明図であり、図3は、自動車のステアリングに設置された計測装置20を示した説明図である。
この図2,3に示すように、心電センサ21は、自車両のステアリングSにおいて、右手で把持される部位、及び左手で把持される部位それぞれに埋め込まれた各一対の電極DR1,DR2,DL1,DL2を検出電極として、心電を計測するように構成されている。
【0049】
また、脈波センサ22は、ステアリングSにおいて、掌が接触する部位に内蔵され、血管の容積変化を光学的に検出する周知の光学式容積脈波計からなり、脈波を計測するように構成されている。
【0050】
つまり、計測装置20は、心電及び脈波を生体信号として計測して、その計測結果(即ち、サンプリング値)を制御装置10に出力するように構成されている。
〈制御装置の構成〉
ここで、図1へと戻り、制御装置10について説明する。
【0051】
この制御装置10は、電源を切断しても記憶内容を保持する必要のあるデータやプログラムを格納するROM11と、処理途中で一時的に生じたデータを格納するRAM12と、ROM11やRAM12に記憶された処理プログラムを実行するCPU13と、これらを接続するバスとを少なくとも備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。なお、マイクロコンピュータには、書き換え可能な不揮発性の記憶装置14(例えば、ハードディスクドライブやフラッシュEEPROM等)が接続されている。
【0052】
このうち、ROM11には、計測装置20で計測した生体信号から生体情報を生成する解析処理を実行すると共に、予め規定された状態対応関係から、運転者の状態を推定する状態推定処理をCPU13が実行するための処理プログラムが格納されている。
【0053】
そして、制御装置10が実行可能な解析処理として、心電センサ21で計測した心電、及び脈波センサ22で計測した脈波を解析することで、心電に対する脈波の遅れ時間を表す脈波伝播時間(いわゆるPTT)を導出するPTT解析処理が少なくとも含まれている。
【0054】
つまり、制御装置10は、解析処理を実行することで、脈波伝播時間を生体情報として生成する。なお、心電及び脈波から脈波伝播時間を導出する処理(即ち、PTT処理)は、周知の処理であるため、本実施形態における詳しい説明は省略する。
【0055】
また、状態推定処理にて用いられる状態対応関係は、発明者が予め実施した実験によって得られた知見に基づくものである。その実験とは、例えば、自車両が左方向に旋回して自車両に遠心力が加わる前の状態と、旋回中に遠心力が加っている状態との両方において、脈波伝搬時間を導出することなどである(以下、事前実験例と称す)。
【0056】
ここで、図4は、事前実験例の計測結果であり、血管硬さが異なる複数の人物に同一の大きさの遠心力が加わった場合の加速度(図中:横G)の変化量と脈波伝播時間の変化量と血管硬さとの関係を模式的に示した説明図である。この図4に示すように、各乗員の左手にて計測した脈波伝播時間の単位時間における変化量(図中:左PTT、以下、PTT変化量と称す)は、血管硬さが硬い乗員ほど、移動体に加速度が加わる前に比べて、加速度が加わった後の方が大きくなる。一方、各乗員の右手にて計測したPTT変化量(図中:右PTT)は、血管硬さが硬い乗員ほど、移動体に加速度が加わる前に比べて、加速度が加わっている時の方が小さくなる。
【0057】
つまり、実験によって得られた知見とは、血管硬さが異なる各乗員に同一の大きさの加速度が加わった場合、血管硬さが硬い乗員ほど、その乗員に加速度が加わる前に比べて、PTT変化量の変化は大きくなるというものである。
【0058】
したがって、状態対応関係それぞれには、人の特性を表す分類情報毎に、自車両に加わる加速度の変化量と、その変化量の加速度の変化が生じたときのPTT変化量との対応関係(以下、第1対応関係と称す)が用意されている。これと共に、状態対応関係では、第1対応関係それぞれに、各第1対応関係を満たす人(つまり、被験者)の血管硬さが予め対応付けられている。
【0059】
そして、このように対応付けられた状態対応関係は、記憶装置14に記憶されている。すなわち、複数の状態対応関係が記憶された記憶装置14は、データベースとして機能する。
【0060】
なお、ここでいう分類情報(即ち、人の特性)とは、具体的には、性別、年令、体重、身長、血管年齢、居住地域(例えば、温暖な地域であるのか寒冷な地域であるのか)、食前であるか食後であるか、起床してからPTTを導出するまでの経過時間のうち、少なくとも1つである。
〈状態推定処理について〉
次に、制御装置10(より正確には、CPU13)が実行する状態推定処理について説明する。
【0061】
ここで、図5は、本実施形態における状態推定処理の処理手順を示したフローチャートである。
この状態推定処理は、状態推定装置1が始動されると(本実施形態では、イグニッション信号が入力されると)起動されるものである。
【0062】
そして、状態推定処理は、起動されると、図5に示すように、まず、S110にて、ナビゲーション装置33の操作スイッチ群36を介して、予め指定された分類情報が入力されたか否かを判定する。その判定の結果、分類情報が入力されていなければ、入力されるまで待機し、分類情報が入力されると、S120へと進む。
【0063】
そのS120では、計測装置20にて左右両方の手から計測した心電、及び脈波それぞれを生体信号として取得する。続く、S130では、解析処理を実行して、左右それぞれの手に対して脈波伝播時間(PTT)を導出して、その導出した脈波伝播時間を記憶装置14に記憶する。さらに、S140では、加速度センサ31から加速度を取得して、その取得した加速度を記憶装置14に記憶する。
【0064】
続いて、S150では、今サイクルのS140にて取得された加速度と、前サイクルのS140にて取得された加速度とに基づいて、単位時間当たりの加速度の変化量(以下、加速度変化量と称す)を導出する。これと共に、S150では、今サイクルのS130にて導出された脈波伝播時間と、前サイクルのS130にて導出された脈波伝播時間とに基づいて、単位時間当たりの脈波伝播時間の変化量(以下、PTT変化量と称す)を導出する。
【0065】
なお、ここでいうサイクルとは、S120からS170の一連のステップである。そして、本実施形態では、該当するステップに進んだ際に実行されているサイクルを今サイクルと称し、今サイクルよりも一回前のサイクルを前サイクルと称している。
【0066】
さらに、S160では、記憶装置14に記憶されている状態対応関係から、S150にて導出した加速度変化量及びPTT変化量に基づいて、運転者の血管硬さを特定する。
本実施形態のS160では、具体的に、S110にて取得した分類情報に一致する分類情報が対応付けられた全ての第1対応関係を記憶装置14から読み出す。そして、その読み出した全ての第1対応関係に、S150にて導出した加速度変化量及びPTT変化量を照合する。その照合の結果、S150にて導出された加速度変化量及びPTT変化量に最も近い情報(即ち、加速度変化量及びPTT変化量)からなる第1対応関係に対応付けられた血管硬さを、運転者の血管硬さとして推定する。
【0067】
つまり、このS160を実行することで、運転者の血管硬さが運転者の状態として推定される。
続いて、S170では、S160にて推定した運転者の血管硬さを、通信装置42から情報処理機器51へと送信する推定結果利用処理を実行する。これにより、S160にて推定された運転者の状態が、医療機関に蓄積される。
【0068】
そして、その後、S120へと戻る。
つまり、本実施形態の状態推定処理では、予め用意された状態対応関係群の中から、乗員によって入力された分類情報に一致する分類情報を有した状態対応関係のみを抽出する。そして、その抽出した状態対応関係に、順次導出される加速度変化量及びPTT変化量を照合する。このとき、照合された加速度変化量及びPTT変化量に最も類似する情報からなる第1対応関係に対応付けられた血管硬さが、乗員の血管硬さ、ひいては乗員の状態として推定される。
[第1実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に記載された状態推定装置1によれば、移動体に加速度が加わっている場合であっても、乗員の血管硬さを「乗員の状態」として推定することができる。
【0069】
特に、本実施形態の状態推定処理では、乗員によって入力された分類情報に一致する分類情報を有した状態対応関係に、順次導出される加速度変化量及びPTT変化量を照合している。このため、本実施形態の状態推定装置1によれば、乗員の状態について、推定精度をより向上させることができる。
[第1実施形態と特許請求の範囲との対応関係]
次に、第1実施形態の記載と、特許請求の範囲の記載との関係を説明する。
【0070】
上記実施形態の状態推定処理におけるS140及びS150を実行することで得られる機能が、請求項1に係る発明の加速度情報生成手段に相当し、S130及びS150を実行することで得られる機能が、請求項1に係る発明の脈波伝播情報生成手段に相当する。さらに、状態推定処理におけるS160を実行することで得られる機能が、請求項1に係る発明の状態推定手段に相当し、S110を実行することで得られる機能が、請求項2に係る発明の分類区分取得手段に相当する。なお、上記実施形態の状態推定処理におけるS170を実行することで得られる機能が、請求項9に係る発明の機器制御手段に相当する。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0071】
本実施形態における状態推定装置は、第1実施形態に記載した状態推定装置とは、制御装置(より正確には、CPU)が実行する状態推定処理が異なるのみである。このため、第1実施形態と同様の構成については、同一な符合を付して説明を省略し、第1実施形態とは異なる状態推定処理を中心に説明する。
【0072】
本実施形態における状態推定処理は、運転者の血管の状態についての経年変化(以下、血管経年変化と称す)を、乗員の状態として推定するようになされたものである。このため、本実施形態における状態推定処理では、加速度及びPTTを、当該状態推定処理の過程で生成された状態対応情報に照合することがなされる。
【0073】
その状態対応情報は、加速度及びPTTが導出される毎に、それら導出された加速度と、PTTと、加速度及びPTTを導出した時刻と、予め取得した分類情報とが対応付けられた情報の集合体である。
【0074】
そして、この状態対応情報は、記憶装置14に記憶される。すなわち、複数の状態対応情報が記憶された記憶装置14は、データベースとして機能する。
〈状態推定処理〉
次に、制御装置10(より正確には、CPU13)が実行する状態推定処理について説明する。
【0075】
ここで、図6は、本実施形態における状態推定処理の処理手順を示したフローチャートである。
この状態推定処理は、状態推定装置1が始動されると(本実施形態では、イグニッション信号が入力されると)起動されるものである。
【0076】
そして、状態推定処理は、起動されると、図6に示すように、まず、S310にて、ナビゲーション装置33の操作スイッチ群36を介して、予め指定された分類情報が入力されたか否かを判定する。その判定の結果、分類情報が入力されていなければ、入力されるまで待機し、分類情報が入力されると、S320へと進む。
【0077】
そのS320では、計測装置20にて左右両方の手から計測した心電、及び脈波それぞれを生体信号として取得する。続く、S330では、解析処理を実行して、左右それぞれの手に対して脈波伝播時間(PTT)を導出する。さらに、S340では、加速度センサ31から加速度を取得する。
【0078】
そして、S360では、状態対応情報中に含まれている分類情報及び加速度の両方が、S310にて取得した分類情報及びS340にて取得した加速度と一致する状態対応情報(以下、一致対応情報と称す)が、記憶装置14に記憶されている状態対応情報の中に存在するか否かを判定する。その判定の結果、記憶装置14に記憶されている状態対応情報の中に一致対応情報が存在すれば、S370へと進む。なお、ここで言う加速度の一致とは、S340にて取得した加速度と状態対応情報中の加速度との差分が、0となることに加えて、予め規定された規定範囲内に収まることを含むものである。
【0079】
そのS370では、記憶装置14に記憶されている状態対応情報の中から、全ての一致対応情報を取得する。続くS380では、S370で取得した一致対応情報それぞれに含まれているPTT(以下、過去PTTと称す)に、S330にて導出したPTT(以下、現PTTと称す)を照合する。
【0080】
具体的に、本実施形態のS380では、予め規定された期間(例えば、現時点から半年前まで、半年前から一年前まで、一年前から一年半前まで等)毎に過去PTTの平均値を導出し、その導出された過去PTTの平均値、および現PTTの変化傾向を導出する。これにより、同一の加速度が加わった際のPTTの変化傾向が導出され、血管経年変化が乗員の状態として推定される。つまり、過去PTT及び現PTTが増加傾向にあれば、血管が硬化しており、図7に示すように、過去PTT及び現PTTが減少傾向にあれば、血管が軟化していることを表す。
【0081】
そして、S390では、S380にて推定した血管経年変化を、通信装置42から情報処理機器51へと送信する推定結果利用処理を実行する。これにより、S370にて推定された運転者の状態が、医療機関に蓄積される。その後、S400へと進む。
【0082】
なお、S360での判定の結果、一致対応情報が存在しない場合には、S370〜S390を実行することなく、S400へと進む。
そのS400では、S340にて取得した加速度と、S330にて導出したPTT(即ち、現PTT)と、それら加速度及びPTTを導出した時刻と、S310にて取得した分類情報とを対応付けて記憶装置14に記憶する。これにより、状態対応情報が生成される。
【0083】
そして、その後、S320へと戻る。
つまり、本実施形態の状態推定処理では、略同一の大きさの加速度が移動体に加わっている時に生成された脈波伝播時間同士を対比する。この対比の結果導出される脈波伝播時間の変化傾向、即ち、血管経年変化を、乗員の状態として推定している。
[第2実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態の状態推定装置によれば、自車両に加速度が加わっている場合であっても、血管経年変化を乗員の状態として推定することができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0084】
例えば、上記第1実施形態では、状態対応関係は、第1対応関係それぞれに血管硬さが対応付けられたものであったが、血管硬さに換えて、体調や、疲労の度合い、ストレスの度合いのうち少なくとも1つが、第1対応関係に対応付けられていても良い。
【0085】
このような状態対応関係を用いれば、乗員の状態として、運転者の体調や、疲労の度合い、ストレスの度合いを推定することができる。
また、第1実施形態における第1対応関係は、加速度の変化量と、その変化量の加速度が生じた際のPTT変化量とを対応付けたものであったが、第1対応関係は、加速度の大きさそのものと、その大きさの加速度が自車両に加わっている際のPTTの大きさそのものとが対応付けられたものでも良い。
【0086】
さらに、第1実施形態において、状態対応関係には、分類情報が含まれていたが、状態対応関係には、分類情報が含まれていなくともよい。
さらに、上記第2実施形態では、状態対応情報を記憶装置14に記憶していたが、この状態対応情報は、自車両の車外に設置した記憶装置に記憶されていても良い。ただし、この場合、第2実施形態における状態推定装置は、通信装置42を利用して状態対応情報を取得し、その取得した状態対応情報に含まれる過去PTTに現PTTを照合する必要がある。
【0087】
なお、上記第2実施形態における状態推定処理では、乗員の状態として、血管経年変化を推定したが、推定対象となる状態(即ち、乗員の状態)は、血管経年変化に限るものではない。例えば、過去PTTと現PTTとの変化率が、予め規定された閾値以上であれば、運転者の体調が急変しているものと推定しても良いし、運転者の疲労の度合いが急増したものと推定しても良い。
【0088】
前者の場合、PTTの変化率を導出するために用いられる過去PTTは、現時点から数時間前までに導出されたものであることが望ましい。また、後者の場合、PTTの変化率を導出するために用いられる過去PTTは、現時点から数週間前までに導出されたものであることが望ましい。つまり、記憶装置14に記憶されている情報の中で、乗員の状態を推定するために用いられる情報についての条件は、当該状態推定装置1にて推定すべき乗員の状態の種類によって適宜変更すれば良い。
【0089】
さらに、上記実施形態(ここでは、第1、及び第2実施形態)の状態推定処理における推定結果利用処理(S170,S390)では、状態推定処理にて推定された乗員の状態を、通信装置42から情報処理機器51へと送信していたが、推定結果利用処理にて実行される処理の内容は、これに限るものではない。例えば、推定結果利用処理の処理内容は、ナビゲーション装置33の表示部37及び音声出力部38から推定結果を出力して、乗員に自身の状態を報知することでも良いし、自車両を安全に走行させるようにブレーキ制御装置43を制御することでも良い。後者の場合、ナビゲーション装置33の記憶部39に記憶されている地図データ、及び位置検出部35にて検出した現在位置に基づいて、自車両を駐停車可能なスペース(例えば、サービスエリアや道の駅などの休憩施設の駐車場)に自車両を駐停車させるように自車両を制御してもよい。
【0090】
さらに、後者の場合、制御対象は、ブレーキ制御装置43に限るものではない。例えば、自車両に搭載された内燃機関などの動力源や、トランスミッションなどの動力伝導機構を制御しても良い。
【0091】
ところで、上記実施形態(ここでは、第1、及び第2実施形態)における制御装置10は、加速度センサ31にて検出した加速度を取得していたが、制御装置10が加速度を取得する方法は、これに限るものではない。例えば、制御装置10は、速度センサ32にて検出した自車両の車速を時間微分することで加速度を取得しても良いし、ナビゲーション装置33にて導出した自車両の現在位置、及びその現在位置における道路構造(例えば、道路の曲率)に基づいて、車両に加わる加速度を推定し、その推定した加速度を取得しても良い。
【0092】
なお、上記実施形態(ここでは、第1、及び第2実施形態)では、状態推定装置1は自動車に搭載されていたが、状態推定装置1が搭載される対象は、自動車に限るものではなく、例えば、航空機や、船舶でも良い。
[第2実施形態と特許請求の範囲との対応関係]
最後に、第2実施形態の記載と、特許請求の範囲の記載との関係を説明する。
【0093】
上記実施形態の状態推定処理におけるS340を実行することで得られる機能が、請求項5に係る発明の加速度情報生成手段に相当し、S130を実行することで得られる機能が、請求項5に係る発明の脈波伝播情報生成手段に相当する。さらに、状態推定処理におけるS360〜S380を実行することで得られる機能が、請求項5に係る発明の状態推定手段に相当し、S400を実行することで得られる機能が、請求項5に係る発明の状態対応情報生成手段に相当する。そして、状態推定処理におけるS310を実行することで得られる機能が、請求項6に係る発明の分類情報取得手段に相当し、S390を実行することで得られる機能が、請求項9に係る発明の機器制御手段に相当する。
【符号の説明】
【0094】
1…状態推定装置 10…制御装置 11…ROM 12…RAM 13…CPU 14…記憶装置 20…計測装置 21…心電センサ 22…脈波センサ 30…情報取得装置群 31…加速度センサ 33…ナビゲーション装置 35…位置検出部 36…操作スイッチ群 37…表示部 38…音声出力部 39…記憶部 40…制御部 42…通信装置 43…ブレーキ制御装置 51…情報処理機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、その移動体の乗員の状態を推定する状態推定装置であって、
前記移動体に加わっている加速度を取得し、その取得した加速度に関する情報である加速度情報を生成する加速度情報生成手段と、
前記乗員から計測した生体信号に従って導出される脈波伝播時間に関する情報である脈波伝播情報を生成する脈波伝播情報生成手段と、
少なくとも、前記加速度情報と前記脈波伝播情報との組合せ毎に、人の血管硬さが予め対応付けられた対応関係それぞれを硬化度対応関係とし、その硬化度対応関係から、前記加速度情報生成手段で生成された加速度情報、及び前記脈波伝播情報生成手段で生成した脈波伝播情報に基づいて、前記乗員の血管硬さを前記乗員の状態として推定する状態推定手段と
を備えることを特徴とする状態推定装置。
【請求項2】
前記硬化度対応関係それぞれには、人の特性を分類した分類情報が対応付けられており、
外部からの入力に従って、前記乗員の分類情報である分類区分を取得する分類区分取得手段を備え、
前記状態推定手段は、
前記分類区分取得手段で取得した分類区分に一致する前記分類情報が対応付けられた硬化度対応関係から、前記乗員の血管硬さを推定することを特徴とする請求項1に記載の状態推定装置。
【請求項3】
移動体に搭載され、その移動体の乗員の状態を推定する状態推定装置であって、
前記移動体に加わっている加速度を取得し、その取得した加速度に関する情報である加速度情報を生成する加速度情報生成手段と、
前記乗員から計測した生体信号に従って導出される脈波伝播時間に関する情報である脈波伝播情報を生成する脈波伝播情報生成手段と、
人の体調、疲労の度合い、ストレスの度合いのうちの少なくとも1つを対象状態とし、少なくとも、前記加速度情報と前記脈波伝播情報との組合せ毎に、前記対象状態が予め対応付けられた対応関係それぞれを状態情報対応関係とし、その状態情報対応関係から、前記加速度情報生成手段で生成した加速度情報、及び前記脈波伝播情報生成手段で生成した脈波伝播情報に基づいて、前記対象状態を前記乗員の状態として推定する状態推定手段と
を備えることを特徴とする状態推定装置。
【請求項4】
前記状態情報対応関係それぞれには、人の特性を分類した分類情報が対応付けられており、
外部からの入力に従って、前記乗員の分類情報である分類区分を取得する分類区分取得手段を備え、
前記状態推定手段は、
前記分類区分取得手段で取得した分類区分に一致する前記分類情報と対応付けられた状態情報対応関係から、前記対象状態を推定することを特徴とする請求項3に記載の状態推定装置。
【請求項5】
移動体に搭載され、その移動体の乗員の状態を推定する状態推定装置であって、
前記移動体に加わっている加速度を取得し、その取得した加速度に関する情報である加速度情報を繰り返し生成する加速度情報生成手段と、
前記乗員から計測した生体信号に従って導出される脈波伝播時間に関する情報である脈波伝播情報を繰り返し生成する脈波伝播情報生成手段と、
前記加速度情報生成手段にて加速度情報が生成される毎、または前記脈波伝播情報生成手段にて脈波伝播情報が生成される毎に、少なくとも、それらの生成された前記加速度情報と前記脈波伝播情報とを対応付けた情報である状態対応情報を、データを読み書き可能な記憶装置に記憶する状態対応情報生成手段と、
前記加速度情報生成手段で生成された最新の加速度情報を現加速度情報とし、前記脈波伝播情報生成手段で生成された最新の脈波伝播情報を現脈波伝播情報とし、前記記憶装置に記憶された状態対応情報の中で、前記現加速度情報に一致する前記加速度情報と対応付けられた前記脈波伝播情報と、前記現脈波伝播情報とを比較する対比処理の結果に基づいて、前記乗員の状態を推定する状態推定手段と
を備えることを特徴とする状態推定装置。
【請求項6】
外部からの入力に従って、人の特性を分類した情報である分類情報を取得する分類情報取得手段を備え、
前記状態対応情報生成手段は、
前記分類情報取得手段にて取得した分類情報を前記乗員の特性を表す乗員分類とし、その乗員分類を前記状態対応情報毎に対応付けて前記記憶装置に記憶し、
前記状態推定手段は、
前記分類情報取得手段で取得した分類情報と一致する前記乗員分類と対応付けられた状態対応情報を用いて前記対比処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の状態推定装置。
【請求項7】
前記加速度情報とは、前記加速度の大きさであり、
前記脈波伝播情報とは、前記加速度情報における大きさの加速度が前記移動体に加わっている状況下での前記脈波伝播時間そのものであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の状態推定装置。
【請求項8】
前記加速度情報とは、予め規定された時間長である規定時間における前記加速度の変化量であり、
前記脈波伝播情報とは、前記加速度情報における変化量の加速度の変化が生じた時の脈波伝播時間の変化量であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の状態推定装置。
【請求項9】
前記状態推定手段での推定結果に基づいて、前記移動体に搭載された機器である搭載機器を制御する機器制御を実行する機器制御手段
を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の状態推定装置。
【請求項10】
前記搭載機器とは、医療機関に設置された通信機器との間で情報通信を実行する通信機器であり、
前記機器制御手段は、
前記状態推定手段での推定結果を、前記医療機関に対して送信することを前記機器制御として実行することを特徴とする請求項9に記載の状態推定装置。
【請求項11】
前記搭載機器とは、前記移動体を駆動または停止させるための機器群であり、
前記機器制御手段は、
前記移動体が安全に運行されるように前記搭載機器を制御することを前記機器制御として実行することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の状態推定装置。
【請求項12】
前記加速度情報生成手段は、
前記移動体に搭載された加速度センサーから前記加速度を取得することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の状態推定装置。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−39767(P2011−39767A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186500(P2009−186500)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】