説明

現像装置および画像形成装置

【課題】駆動速度の切り換えなどの誤差要因が生じても、現像槽内の現像剤量の変動が少なく画像むらの生じないトリクル方式の現像装置を提供する。
【解決手段】現像ローラに現像剤を供給する第1搬送路551の現像搬送方向下流側に、第1搬送路551における供給スクリュー55とは逆の搬送力を付与する逆巻きスクリューを有する排出機構を設け、供給スクリュー55と逆巻きスクリューによって生じる現像剤圧力のバランスによって排出される現像剤の量が決定される現像装置において、第1搬送路551の下流側と第2搬送路541の上流側を連通する第1受渡部521の開口部に可撓性の弁部材524を付設して、当該開口部における流路抵抗を上記現像剤圧力に応じて変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および当該現像装置を備えた画像形成装置に関し、特に、2成分現像剤を用いたトリクル方式の現像装置において、現像槽内の現像剤量を安定させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置における現像装置として、トナー及びキャリアを含む現像剤を使用した2成分現像方式の現像装置が広く使用されている。
このような現像装置においては、長期間の使用により、キャリア表面に付着する汚れ(スペント)が増加し、そのためにトナーを帯電する能力が次第に劣化して、かぶりやトナー飛散などの問題が発生する。
【0003】
そこで、新規の現像剤を少しずつ現像装置内に補給するとともに、帯電性能の劣化した現像剤を少しずつ現像装置から排出することによって、劣化キャリアの増加を抑制する、いわゆるトリクル方式の現像装置が提案されている。
これによれば、新規現像剤の追加により生じる現像剤の嵩変動を利用して、余剰となった劣化キャリアが少しずつ排出されて新規キャリアに置換されるので、かぶりやトナー飛散が生じにくくなる。
【0004】
このような、トリクル方式現像装置の基本的な課題として、現像装置内の現像剤量(厳密にはキャリア量)を一定に保つということが重要である。
劣化キャリアの置換という目的以上に現像剤が過剰に排出されてしまうと、メンテナンスコストが不要に増加するだけで効率的ではないばかりか、現像剤の過剰排出は、現像装置内の現像剤量の一時的な減少ということにほかならず、現像剤量(現像剤の嵩)の不足を招来して、十分現像ローラへ現像剤を供給できず、画像むら等の弊害を生じるからである。
【0005】
そのため、従来からトリクル方式現像装置の現像剤量安定制御については様々な提案がなされてきた。
そのひとつとして、現像槽の一部、特に現像剤の想定嵩レベルを超えた高さの部分に現像剤排出用の開口部を設け、補給によって過剰となった現像剤の一部をオーバーフローさせて排出する構成が提案されている。
【0006】
しかし、電子写真方式の画像形成装置においては、用紙の種類や画質モード等によりプロセス全体の速度(システムスピード)を可変にして対応することが一般的であるため、現像装置の現像剤搬送速度も選択されたモードにより変化し、現像剤の循環速度が変化することにより部分的な現像剤の圧力変化・嵩変化が生じる。上記方式では、現像剤の排出を基本的には現像剤の嵩によりのみ行うため、駆動速度の変化に起因する圧力変動の影響を直接受けることになり現像剤量を一定に保つことが難しい。
【0007】
すなわち、オーバーフロー用の排出口は現像部の構成上、現像剤搬送スクリューが収納される搬送路の現像剤搬送方向下流側(以下、単に「下流側」という。)の端部に設けられる場合が多いが、このような場合には、高速駆動時には排出口での現像剤圧力が高まるため現像剤は、より多く排出されやすく、逆に低速駆動時には、排出口での現像剤圧力が低下するため現像剤は排出されにくくなる。
【0008】
その結果、高速駆動時と低速駆動時では現像槽内の安定現像剤量に大きな差を生じ、特に高速駆動時、あるいは高速駆動後の低速駆動時には現像槽内の現像剤量が不足して現像剤供給不良による画像むら発生の危険が増大する。
そこで、このような排出口高さによる現像剤のオーバーフローを利用した現像装置の不都合に対応するために、現像剤の嵩変化とともに現像剤の搬送圧力バランスを利用した構成が実用化されている。
【0009】
このような圧力バランス方式の現像装置では、排出口高さにより排出量を制限するのではなく、排出口手前に通常の現像剤循環搬送とは逆向きの搬送能力をもった搬送部材を形成して、逆向きの現像剤搬送圧力を生じさせることにより、通常の現像剤搬送圧力と逆向きの現像剤搬送圧力のバランスによって排出量をコントロールされることになる。
具体的には、通常の搬送スクリューの端部であって、現像ローラに対向しない部分(以下では、「スクリュー暗部」ということもある。)のうち下流側の部分に、逆巻きのスクリューを構成すると共に、搬送路の当該逆巻きスクリューよりさらに外側の部分に排出口を設ける。排出口自体は通常の現像剤嵩面に対して十分下の位置にあって排出量制限の機能はなく、逆巻きスクリューによる逆向きの現像剤圧力に逆らって逆巻きスクリューを乗り越えた現像剤が排出口からそのまま排出されるという構成が一般的である。
【0010】
この構成の利点は、現像剤の嵩変化だけではなく現像剤の圧力バランスによって現像剤の排出性を制御しているため、特に、現像装置の高速駆動時と低速駆動時においては通常搬送方向の現像剤圧力と逆向き搬送方向の現像剤圧力が同時に変化してそれらの圧力バランスの結果としての排出性が比較的安定して得られることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−48139号公報
【特許文献2】特開2005−221852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記圧力バランス方式の現像装置によっても、高速駆動時と低速駆動時の切り換えに起因する現像剤の排出量の変動が完全になくなるわけではない。
すなわち、たとえば高速駆動時には、通常の搬送スクリューによる順方向の搬送力と逆巻きスクリューによる逆方向の搬送力の双方が増加するが、通常は、順方向の搬送力の方が大きく設定されているので、高速駆動により逆方向の搬送力の増加量よりも順方向の搬送力の方が大きく増加して、両者の搬送圧力の差がひらき、高圧となった現像剤が必要以上に逆巻きスクリューを乗り越えて排出され、その排出量が低速駆動時によりも多くなる可能性があるからである。
【0013】
特に、近年の画像形成装置の小型化の要請に応えるため、現像装置自体も小さくする必要があり、そのため現像装置内の現像槽の容量を小さくせざるを得ない。そうするとわずかな現像剤の排出量の差が、現像ローラに面した供給搬送路内における現像剤の液面に大きく影響を与え、一時的な過多排出により現在剤の液面が下がり、現像ローラに必要な現像剤を供給できずに画像むらが発生するおそれは依然としてある。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、トリクル方式を用いる現像装置において、現像剤の排出量の変動を抑制することにより、現像装置内の現像剤量を安定させて画像むらの発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一つの局面は、第1搬送路に配された第1搬送手段と、第1搬送路に連通する第2搬送路に配された第2搬送手段とを有し、第1と第2の搬送路とからなる循環路内でキャリアとトナーを含む現像剤を循環させつつ、第1もしくは第2の搬送路に沿って配された現像ローラに現像剤を供給すると共に、第1搬送路の現像剤搬送方向下流側で分岐された排出路を介して現像剤の一部を排出する現像装置であって、前記第1搬送路の前記排出路との分岐部分における現像剤の圧力に応じて、第1搬送路の現像剤搬送方向下流側と第2搬送路の現像剤搬送方向上流側を連通する連通路を通過する単位時間当りの現像剤の量を変化させる現像剤通過量変更手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、現像剤通過量変更手段により、第1搬送路の前記排出路との分岐部分における現像剤の圧力に応じて、第1搬送路の現像剤搬送方向下流側と第2搬送路の現像剤搬送方向上流側を連通する連通路を通過する単位時間当りの現像剤の量を変化させられるので、分岐部分における現像剤の圧力変動を緩和することが可能となる。これにより現像剤の排出量の変動も緩和され、現像装置内の現像剤量が安定するため、画像むら等の弊害を防ぐことが可能となる。
【0017】
ここで、前記排出路には、前記第1搬送手段よりも搬送力が小さく、かつ、第1搬送手段による搬送方向と反対方向の搬送力を有する第3搬送手段が配設されることが望ましい。
また、ここで、前記現像剤通過量変更手段は、前記連通路の開口面積を変化させることにより単位時間当りの現像剤の通過量を変更するようにすることが望ましい。
【0018】
さらに、ここで、前記現像剤通過量変更手段は、前記連通路に、その連通路の開口の一部を塞ぐように立設された可撓性の弁部材であることが望ましい。
前記弁部材は、基端部側から先端側にいくに連れて徐々に厚みが小さくなっていくテーパー部を有するとしてもよい。
前記弁部材は、基端部側から先端側にいくに連れて、可撓性が大きくなる可撓性増大部
を備えているとしてもよい。
【0019】
前記弁部材が、発泡性の弾性部材もしくは樹脂フィルムで形成されてなるとしてもよい。
また、ここで、前記現像剤通過量変更手段は、前記連通路の開口部に設けられた軸支部に揺動自在に軸支された遮蔽部材であって、付勢手段により第1搬送路側に付勢されて前記連通路の開口の一部を塞ぐような姿勢で維持されており、前記分岐部分における現像剤の圧力が大きくなるに連れて、前記付勢手段による付勢力に抗して第2搬送路方向に倒れて前記開口面積が徐々に大きくなるように構成してもよい。
【0020】
また、前記現像剤通過量変更手段は、前記分岐部分における圧力変動を指標する情報を取得する取得手段と、前記連通路における開口の一部を遮蔽する遮蔽部材と、前記遮蔽部材を移動させて、前記連通部における開口面積を変化させる遮蔽部材移動手段と、前記取得した指標に基づき、前記遮蔽部材移動手段により遮蔽部材を移動させて前記連通路における開口面積を変化させる制御手段とを備えることとしてもよい。
また、本発明の他の局面として、上記現像装置を備えた画像形成装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】図1のプリンタにおける現像部の搬送路を上から見た模式的断面図である。
【図3】図2の現像部の第1搬送路と現像剤排出路との分岐部付近における構成を示す模式的断面図である。
【図4】(a)は、図2の現像部の第1搬送路の下流側のトリクル排出機構付近において、現像剤に加わる圧力の関係を模式的に示す図であり、(b)は、同トリクル排出機構付近における現像剤の流れを模式的に示す図である。
【図5】(a)は、本実施の形態に係る現像部における第1搬送路下流と第2搬送路上流を連通する第1受渡部の開口部の構成を示す図であり、(b)は、その従来構成を示す図であり、(c)は、(a)における第1受渡部の開口部の形状を示す図である。
【図6】(a)(b)はそれぞれ、本実施の形態および従来構成における第1受渡部の開口部の構成と安定現像剤量との関係の実験結果を示すグラフである。
【図7】(a)は、変形例に係る第1受渡部の開口部における弁部材の構成を示す図であり、(b)は、この変形例に係る第1受渡部の開口部の構成と安定現像剤量との関係の実験結果を示すグラフである。
【図8】別の変形例に係る第1受渡部の開口部における弁部材の構成を示す図である。
【図9】さらに別の変形例に係る第1受渡部の開口部の構成を示す図である。
【図10】図9の変形例における制御部の構成を示す図である。
【図11】図10の制御部で実行される流路抵抗調整処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る定着装置と当該定着装置を搭載した電子写真方式の画像形成装置の実施の形態について、モノクロのプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
(1)プリンタの全体構成
図1は、本実施の形態に係るプリンタ100の全体の構成を示す概略図である。
【0023】
同図に示すように、プリンタ100は、画像形成部10、給紙部20、定着部30および制御部200を備えている。
画像形成部10は、感光体ドラム1、クリーニング部2、帯電ローラ3、露光走査部4、現像部5、転写ローラ6などを備える。
当該画像形成部10において、感光体ドラム1の周面は、まず、クリーニング部2により清掃されて残留トナーが除去された後、帯電ローラ3で一様に帯電される。そして、露光走査部4から射出されたレーザ光Lによる露光走査を受けて感光体ドラム1の周面に静電潜像が形成される。
【0024】
感光体ドラム1の周面に形成された静電潜像は、後述するトリクル方式の現像部5からトナーの供給を受けて顕像化されトナー像が形成される。
一方、給紙部20から給紙されてきた記録シート(不図示)は、一点鎖線に沿って搬送され、タイミングローラ21によりタイミングを取って転写位置(感光体ドラム1と転写ローラ6が対向する位置)に送られ、上記感光体ドラム1に形成されたトナー像が、転写ローラ6により記録シート上に転写される。
【0025】
トナー像が転写された記録シートは、定着部30の定着ローラ31と加圧ローラ32間の定着ニップに通紙されて加熱圧着された後、排出ローラ38を介して図外の排紙トレイ上に排出される。
なお、上記画像形成部10において、帯電ローラ3の代わりに回転型又は固定型のブラシ式帯電装置やワイヤ放電式帯電装置を用いてもよい。また、転写ローラ6の代わりに、ワイヤ放電式転写装置なども使用できる。クリーニング部2は、図1では板状のブレードとして図示されているが、代わりに回転型又は固定型のブラシ式クリーニング装置などを使用してもよい。
【0026】
制御部200は、CPU、通信インターフェース、ROM、RAMなどからなり、CPUは、通信インターフェースを介して外部のクライアント端末からプリントジョブを受け付けると、ROMから所定のプログラムを読み出して上記画像形成部10、給紙部20、定着部30などを制御して円滑な画像形成動作を実行させる。
また、本実施の形態においては、制御部200は、ユーザにより選択された用紙の種類に応じて、システムスピードを変更して画像形成動作を制御できるようになっている。例えば、普通紙の場合には、高速駆動して画像形成するモード(高速モード)、厚紙やOHPシートの場合には、低速駆動で画像形成するモード(低速モード)を実行する。
(2)現像部5の構成
現像部5は、2成分現像剤を使用したトリクル方式のものであって、現像槽となる筺体51内に、攪拌スクリュー54、供給スクリュー55、現像ローラ57を紙面に垂直な方向にほぼ平行に配すると共に、筺体51の上方に現像剤補給タンク53、筺体の下方に排出トナー回収容器56を配してなる。
【0027】
現像剤補給タンク53には、非磁性トナー(以下、単に「トナー」という。)と、磁性キャリア(以下、単に「キャリア」という。)を含む2成分現像剤が収納されており、供給ローラ531を回転させることにより適量の現像剤が、現像剤供給口532を介して筺体51の第2搬送路541の上流側(紙面手前側)に供給される。
本実施の形態では、上記新規現像剤の供給制御は、第2搬送路541途中の底部に配された磁気センサ59(図2参照)によりトナー濃度を検出し、制御部200は、そのトナー濃度が所定の値以下となるときに供給ローラ531を駆動してあらかじめ決定された量の新規現像剤を供給するようにしている。
【0028】
当該補給用の新規現像剤のキャリア比は、好ましくは5乃至40重量%であり、より好ましくは10乃至30重量%である。
他方、第1搬送路551の下流側の端部に設けられた現像剤排出路513(図2参照)に設けられた現像剤排出口561を介して、少しずつ排出され排出トナー回収容器56に回収される。
【0029】
なお、上記現像剤補給タンク53や排出現像剤回収タンク56は必要に応じて交換可能なように構成される。
現像ローラ57は、円筒状の部材であり、感光体ドラム1と平行で、かつ、感光体12の外周面と所定の現像ギャップを介して配される。この現像ローラ57は、筺体51に回転可能に軸支された円筒状の現像スリーブ571の内部に、筺体51に対し回転しないように固定された磁石体572を配設してなる、いわゆるマグネットローラである。
【0030】
現像スリーブ571は、感光体ドラム1の回転方向と逆向き(カウンター方向に)回転駆動される。当該現像スリーブ571の上方には、現像スリーブ571の中心軸と平行に延設された規制板58が、所定の規制ギャップを介して現像スリーブ571に対向配置され、これにより現像スリーブ571の周面に付着する現像剤の層の厚みが規制されて過剰供給されないようになっている。
【0031】
現像ローラ57の内側にある磁石体572は、現像スリーブ571の周方向に沿って、N1、S2、N3、N2、SIの5イ固の磁極を有する。これらの磁極のうち、主磁極N1は、感光体ドラム1と対向するように配置されており、これによりキャリアを現像スリーブ571側に引き付け、トナーのみが感光体ドラム1方向に供給されるようにしている。
【0032】
図2は、上記現像部5の循環搬送路を上方から見たときの模式的な概略断面図である。
同図に示すように筺体51内には、現像ローラ57と平行に、供給スクリュー55と攪拌スクリュー54の2本のスクリューが配設されると共に、供給スクリュー55と攪拌スクリュー54の間には隔壁52が立設されて、これにより仕切られた空間が、第1搬送路551、第2搬送路541を構成する。第2搬送路541の底部には当該搬送路内の現像剤におけるトナー濃度を検出するための磁気センサ59が配されている。
【0033】
供給スクリュー55、攪拌スクリュー54は、シャフトに所定のピッチで螺旋状の羽根が形成されたスパイラルスクリューである。
隔壁52の、第1搬送路551、第2搬送路541の両暗部に位置する部分は、開口して、第1搬送路551と第2搬送路541のそれぞれを搬送されてきた現像剤を相手方の搬送路に受け渡すための第1受渡部521、第2受渡部522が形成される。
【0034】
また、第2搬送路541の上流側には、現像剤供給路511が延設されており、その上方に配された現像剤補給タンク53(図1)から現像剤供給口532を介して現像剤が供給される。
各供給スクリュー55、攪拌スクリュー54は、その搬送路内の現像剤が図の矢印の方向に搬送されるように不図示の駆動機構により回転駆動され、第1搬送路551の下流側暗部に到達した現像剤が第2受渡部522を介して第1搬送路541へ送り込まれ、第1搬送路541の下流側暗部に到達した現像剤が第1受渡部521を介して第2搬送路541に送り込まれる。その結果、現像剤が第1搬送路551と第2搬送路541からなる循環路を循環するように搬送され、現像剤が第1搬送路551を搬送される際に、当該第1搬送路551に面した現像ローラ57表面に現像剤が供給される。
【0035】
また、第1搬送路551の下流側への延長上には、現像剤の循環路から分岐するような形で現像剤排出路513が形成されている。
供給スクリュー55は、第1搬送絡551から第2搬送路541に向かう第1受渡部521及び第2搬送路541の下流側暗部に対応する位置において、スパイラルスクリューの螺旋の向きが他の部分とは逆向きで、かつ、羽根のピッチが第1搬送路551内における供給スクリュー55のピッチよりも小さな逆巻きスクリュー部552を有する。
【0036】
さらに現像剤排出路513内部には、供給スクリュー55と同じ方向であって供給スクリュー55よりもピッチの小さな排出スクリュー部553が、やはり、供給スクリュー55と同軸上に設けられている。
この現像剤排出路513、逆巻きスクリュー部552、排出スクリュー部553および現像剤回収口514(図1)によって、トリクル排出機構550が構成される。
【0037】
図3は、上記第1搬送路551と現像剤排出路513の分岐部Pを図2の矢印X方向から見たときの概略断面図である。
供給スクリュー55によって搬送された現像剤は、通常の状態では逆巻きスクリュー部552によって堰き止められることにより、そのほとんどが第1受渡部521(図2)を介して第2搬送路541側に搬送される。
【0038】
しかし、筺体51内における現像剤3の量が増えて現像槽内の液面が上昇すると、分岐部Pにおける液面がさらに盛り上がり、逆巻きスクリュー部552の堰き止め作用に抗し、図3の矢印Cのように現像剤が逆巻きスクリュー部552を乗り越えて隣接する現像剤排出路513内に溢出する。
現像剤排出路513内に溢出した余剰の現像剤は、排出スクリュー部553により現像剤回収口514まで搬送され、排出現像剤回収タンク56(図1)に回収(廃棄)される。
【0039】
図4(a)(b)は、上記トリクル排出機構550の構成および原理をより具体的な図を用いて説明するものであり、図4(a)は、分岐部P(すなわち、第2搬送路541の下流側であってトリクル排出機構550の手前部分)における第1受渡部521付近の現像剤に働く圧力の関係を示し、図4(b)は、同じく分岐部Pにおける第1受渡部521付近の現像剤の流れを示した図である。
【0040】
この分岐部Pにおいては、2つの現像剤搬送経路が存在する。第1の経路は、第1搬送路551から第1受渡部521を介して第2搬送路541に現像剤が移動する経路(主循環経路)であり(図4(b)の(ア)→(イ)→(エ))、第2の経路は、第1搬送路551からトリクル排出機構550を介して、現像槽外へ排出される経路(排出経路)である(図4(b)の(ア)→(ウ))。
【0041】
供給スクリュー55により搬送されてきた現像剤が、どれぐらいの割合で現像剤排出路513側に流れるかは、当該分岐点Pにおいて加えられる圧力の状態に左右される。
分岐部Pにおいては、図4(a)に示すように、現像剤に次のP1〜P3の圧力が加えられている。
P1:供給スクリュー55により、第1搬送路551下流側に搬送しようとして生じる圧力
P2:逆巻きスクリュー部552による逆搬送力により、現像剤が押し戻される際に生じる圧力
P3:第1受渡部521の開口部において、現像剤の通過を妨げようとする抵抗力(以下では、「流路抵抗」という。)
前述の通り、現像剤の多くは、第1受渡部521を介して第2搬送路541側に搬送されるが(主循環経路)、一部の現像剤が逆巻きスクリュー部552の押し戻し圧力P2に逆らって逆巻きスクリュー部552を乗り越え、現像剤回収口514を通じて現像槽外へ排出される(排出経路)。
【0042】
つまり、分岐部Pでは、上記P1、P2、P3の3種の圧力が働き、それらの圧力バランスにより排出経路と主循環経路へ流れる現像剤量が決定されるのである。
ここで、通常の非トリクル方式での現像剤循環の場合には、第1受渡部521の流路抵抗による圧力P3を極めて小さくなるよう設定されており、場合によっては逆に受渡し力を高めるためのパドル機構等を配置することもある。
【0043】
これは、第1受渡部521での受渡しが効率よく行われないと、P1、P2の両圧力によりスクリュー搬送方向下流端部に現像剤の滞留が生じて現像装置全体の現像剤量のバランスが崩れ、ひいては補給トナーの分散効率の低下や現像ローラヘの現像剤供給むらによる画像むらの発生等の弊害に繋がる可能性があるからである。
しかし、トリクル方式での現像剤循環の場合には、第1受渡部521の流路抵抗による圧力P3が小さすぎると、圧力P1、P2の現像剤圧力バランスによる排出量制御が各種誤差要因に対して不安定になる傾向があるため(後述の実験結果参照)、第1受渡部521の開口面積を適当に決定することによりある程度の流路抵抗を持たせることが望ましい。
【0044】
特に、供給スクリュー55下流の第1受渡部521に適当な流路抵抗を持たせ、かつ、攪拌スクリュー54下流の第2受渡部522では、流路抵抗を抑えて受渡し効率を高める構成にすることで、第2搬送路541よりも第1搬送路551に内在する現像剤量を相対的に多くすることができ、仮に一時的に現像剤量が低下した際にも、供給スクリュー55側の第1搬送路551内の現像剤量がある程度確保されるため、現像ローラヘの現像剤供給むらから画像むらの発生等の弊害が抑制されるという効果もあり、トリクル方式の現像装置には適した構成であるといえる。
(3)弁機構
ここで、本発明の作用の主眼は、供給スクリュー55の搬送方向下流暗部で現像剤に働く圧力のうち、順方向スクリューによる下流方向への圧力P1と、下流暗部壁面あるいは逆巻きスクリューによる押し戻し力P2とが各種誤差要因により変動する場合に、第1受渡部521における流路抵抗P3を調整して、これら3つの圧力P1〜P3間のバランスを一定の関係に保つことにより、排出経路と主循環経路に流れる現像剤の流量バランスを一定に保ち、その結果、各種の誤差要因に対して現像槽内の現像剤の量を許容範囲内に保つことにある。
【0045】
そのため、本実施の形態では、分岐点Pにおける現像剤圧力によって第1受渡部521の開口面積が自律的に変化して単位時間当りの現像剤流量を変更するようにしており、具体的には、第1受渡部521の開口部に分岐部Pにおける現像剤圧力に応じて開閉する弁機構を設ける構成としている。
図5(a)は、本実施の形態に係る弁機構の構成を示すための、図2のY−Y線における矢視断面図である。本図では、要部のみを示しており、現像ローラ57などの図示は省略している。
【0046】
また、図5(c)は、第1受渡部521を図2のX方向から見たときの形状を示すものである。
図5(a)に示すように、第1受渡部521の開口上部の仕切り壁523には、弁部材524が付設されている。
この弁部材524は、可撓性を有する材料、例えば、発泡性の弾性材料などからなる。本実施の形態では、発泡ウレタンの表面を樹脂フィルム(本例ではPETフィルム)でカバーしたものが使用されており、図5(c)に示すように、その長さが、第1受渡部521の開口部の上縁の幅Wとほぼ同じになっている。
【0047】
この弁部材524は、第1受渡部521の仕切り壁523に接着剤で固定されてもよいし、その他の方法、例えば、素材によっては、仕切り壁523にインサート成形するような形で一体的に形成することも可能である。
分岐点Pにおける現像剤圧力が高くなると、弁部材524は図5(a)の破線のように撓むので、第1受渡部521の開口面積が大きくなり、単時間当りの流量が大きくなるため、この部分での流路抵抗が減少し、分岐点Pにおける現像剤圧力の増加を緩和することができる。
【0048】
なお、図5(b)は、現像槽内の現像剤量安定性の比較実験のため使用された現像部における本実施の形態における第1受渡部521に相当する開口部の従来構成の例を示すものであって、図5(a)における弁部材524が形成されておらず、その開口面積は図5(a)において弁部材が変形していないときの開口面積とほぼ等しい。
(4)評価実験
上記2つの例について、駆動速度を低速と高速に切り換えて現像槽内に残存する現像材料の安定性について評価実験を行ったところ図6(a)(b)のように結果を得た。
【0049】
なお、本実験の条件は、以下の通りである。
・低速駆動時のシステムスピード:108mm/sec
・高速駆動時のシステムスピード:325mm/sec
・供給スクリュー55の高速駆動時の回転速度:500rpm
低速駆動時の回転速度:166rpm
・供給スクリュー55のピッチ:30mm
径:16mm
・逆巻きスクリュー部552のピッチ:5mm
巻数:2.5回
径:16mm
・第1受渡部521の開口高さH:15mm
・第1受渡部521の開口幅W:15mm
・弁部材524の高さh:5mm
・弁部材524の厚みd:1.5mm
・装置内温度:20℃、装置内湿度:50%
なお、本実験では、基本的に、普通紙を使用する高速駆動時において、現像槽内の現像剤安定量が、ほぼ設計通りの適量となるように、第1受渡部521の開口幅W、開口高Hさおよび弁部材524の高さh、およびその厚みdが実験により決定されて上記の値となっている。
【0050】
また、開口面積との関係を調べるため、第1受渡部521の開口幅および開口高さを、それぞれ上記の寸法を標準値とし、これを0.7倍、1.3倍に変化させて実験を繰り返した。
図6(a)は、図5(a)に示す本実施の形態の構成における実験結果を示し、図6(b)は、図5(b)の従来構成の場合における実験結果をそれぞれ示すグラフである。
【0051】
各グラフの横軸は、開口幅おおび開口高さを、上記標準値を「1」とした場合の比で示すものであって、例えば、「開口幅1.3」とは、開口高さを基準値のまま、開口幅のみを標準値の1.3倍に広げたことを示している。
また、縦軸は、現像槽内の安定現像剤量を、第1搬送路551内に残存する現像剤の一番望ましい量を「1」とした場合における比で示している。したがって、この数値が「1」に近いほど画像むらが発生しにくいと評価されることになる。
【0052】
まず、図6(b)に示す従来構成による実験結果を見ると、低速駆動時においては、分岐点Pにおける現像剤圧力が低下するため排出される現像剤が少なくなり、高速駆動時に比較して現像槽内の安定現像剤量が多くなっている。
これは低速駆動時での駆動回転数では、正方向スクリューによる下流方向への圧力P1と、逆巻きスクリューによる押し戻し力による現像剤圧力P2が小さく、現像剤は逆巻きスクリュー552を乗り越えて現像剤回収口514側へ向かう前に第1受渡部521の開口部から第2搬送路541側へ流れるのに対し、高速駆動時での駆動回転数では逆に分岐点Pにおける現像剤圧力が高くなるために逆巻きスクリュー552を乗り越えて現像剤回収口514側へ向かう現像剤量が相対的に多くなるからである。
【0053】
同グラフに示すように開口幅Wまたは開口高Hを1.3倍にして、第1受渡部521での開口部での現像剤に対する抵抗(流路抵抗)を小さくすると、安定現像剤量の変動幅はさらに顕著になる。
一方、本実施の形態のように、第1受渡部521の開口部に弁部材524を付設すると、図6(a)に示すように図6(b)の従来構成の結果に比較して、高速駆動時と低速駆動時のおける安定現像剤量の差が小さくなっていることが分かる。
【0054】
これは、高速駆動により分岐点Pにおける現像剤圧力が大きくなると、弁部材524が図5(a)の破線で示すように第2搬送路541側に撓んで、第1受渡部521における開口面積が増加して、その流路抵抗が減少するため、分岐部Pにおける現像剤圧力の増大が抑制される一方、低速駆動時において供給スクリュー55の搬送力が低下して分岐点Pにおける圧力が低下しようとすると、弁部材524の撓みが少なくなって、第1受渡部521の開口面積が減少して流路抵抗が増大するため当該現像剤圧力の低下を抑制するからである。
【0055】
つまり、高速回転時時には分岐点Pにおける現像剤圧力が高まるが、それに応じて開口部の弁部材524が変形して従来の同条件の時に比較して現像剤受渡し部の抵抗が小さくなるため、第1受渡部521を介して第2搬送路541側へ流れる現像剤量が増加して安定現像剤量が、図6(b)の場合に比べて増加する。
一方、低速回転時には現像剤圧力が低いため、弁部材524の変形は小さく、従来の図5(b)と同程度の開口面積となるので、この場合には安定現像剤量が、図6(b)の場合とほぼ同じになっている。
【0056】
その結果として、高速駆動と低速駆動における分岐点Pにおける現像剤圧力の変動幅が小さくなって排出される現像剤量が安定し、現像槽内の安定現像剤量の変動が抑制される。
なお、本実施の形態では、現像装置の駆動速度の変更を、現像剤圧力の誤差を招来する要因(誤差要因)として、それに対する現像剤量の安定性を示したが、上述のように本実施の形態は、現像剤圧力を利用して排出と循環を制御しているトリクル機構において一時的な現像剤圧力変動を緩和することで現像剤量を安定させる働きをするものであり、駆動速度以外の誤差要因、具体的にはトナー濃度やキャリアの劣化状態、使用環境等による現像剤の燃や流動性の変化、さらに装置に対する振動や傾斜、あるいは現像剤搬送時の現像剤脈動等の影響による一時的・部分的な現像剤の圧力変動に対しても同様に現像剤量安定化の効果がある。
【0057】
したがって、駆動速度が切り換え可能な画像形成装置でなくても、他の誤差要因が存在する以上、本実施の形態の適用があるものである。
(5)変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明の内容が、上記実施の形態に限定されないことは勿論である。
【0058】
特に、第1受渡部521における流路抵抗を調整する手段としては、分岐点Pにおける現像剤圧力に応じて、第1受渡部521の開口面積を変更する機能を持たせることができればどのような機構を採ってよく、例えば、以下のような変形例を考えることができる。
(5−1)図7(a)は、上記実施の形態における弁部材524の変形例として、基端部(仕切り部材523への固着部)から先端に行くほど幅が小さくなるテーパー部を有する形状を示すものである。
【0059】
本実施の形態では、厚さ0.05mmの樹脂フィルム(本例ではPETフィルム)を先端側から基端部に向けて枚数を増やしつつ重ね合わせて貼り付けることにより、先端側から基端部に向けて厚みが徐々に厚くなるようにしてテーパー形状としている点に特徴がある。
本変形例における弁部材524の高さと幅は、それぞれ、5mm、15mmであり、基端部の厚みは、0.5mmに設定されている。
【0060】
図7(b)は、このような変形例に係る弁部材524を使用して、上記と同じ実験を行ったときの実験結果を示すものである。
図7(b)と図6(a)の実験結果を比較しても分かるように、本変形例に係る弁部材524を使用した場合には、図5(a)の実施の形態の場合よりも、高速駆動時と低速駆動時における安定現像剤量の変動量がさらに小さくなっており、それだけ現像槽内に存する現像剤量の安定性が増し、より画像むらが生じにくい構成となっている。
【0061】
特に、弁部材524の先端部が細くなった分だけ、可撓性が増すので、高速駆動時における流路抵抗が図5(a)の場合よりも小さくなり、排出経路よりも循環経路に向かう現像剤の割合が増加し、図7(b)に示すように高速駆動時における安定現像剤量が多くなって、低速駆動時との差が小さくなっている。
したがって、高速駆動時において、上記安定現像剤量が、ほぼ「1」となるように第1受渡部521の開口部の幅W、高さH、および弁部材524の材質、寸法を設定しておくことにより、圧力変動に対して現像剤量の安定性の高い、より望ましい現像装置を得ることができる。
【0062】
また、本変形例によれば、上記のほかに次のような優れた効果を得ることができる。
すなわち、図7(a)のように基端部から先端に向けて厚みが徐々に小さくなるように形成されたテーパー状の弁部材524を使用すると、先端側が変形しやすので、分岐点Pにおける現像剤圧力が低い領域でも応答性がよく、反対に、現像剤圧力が高い領域では抵抗の変化は緩やかになり一定以上の高い圧力では実効的に飽和する。
【0063】
これにより、分岐点Pにおける現像剤の平均的な圧力が低い領域(現像剤量が少ない等)では、図5(a)のように弁部材524の可撓性の程度が先端から基部まで一律の厚みの場合に比べて、より第2搬送路541側へ現像剤が搬送され、反対に現像剤の平均的な圧力が高い領域(現像剤量が多い等)では、より積極的に排出側に現像剤が流れるように流れをコントロールすることができる。
【0064】
すなわち、本変形例によれば、駆動速度の変化などの誤差要因に起因する現像剤圧力の変動に対して弁部材524が的確に変形することで、現像槽内の現像剤量をより安定にすると共に、現像槽内の現像剤量が非常に多くなって分岐点Pにおける現像剤圧力が極端に高くなるような場合には、現像剤回収口514からの排出を促進して現像剤が筺体51から溢出するような事態を回避し、適正な現像剤量範囲への復帰を迅速に行うことができると共に、現像剤量が少なくて現像剤圧力が低い場合であっても、微妙な圧力変動に対して敏感に応答して変形することにより現像剤量の安定化により貢献することができる。
【0065】
このように流路抵抗調整手段として、テーパー部を有する弁部材524を使用することにより、種々の現像剤圧力の変動に対する流路抵抗の変化がより望ましいものとなり、第1受渡部521近傍の瞬間的な現像剤圧力変動があった場合にも、平均的な現像剤圧力領域に応じた排出性・循環性のコントロールが可能となり、それぞれの場合に応じてより安定的な現像剤量制御が可能となる。
【0066】
なお、上記テーパー部は、必ずしも弁部材524の高さ全体にわたる必要はなく、その高さの一部の範囲に形成されていたとしても、上記の効果をそれなりに得られる。
また、本変形例に係る弁部材524は、上述のように樹脂フィルムを重ねて図7(a)のようなテーパー形状に示したものに限らず、例えば、三角断面の弾性部材を使用したり、場合によっては、材質(弾性)の異なる複数の弾性体を高さ方向に貼り合せて、先端に行くほど変形しやすい構成としてもよい。
【0067】
すなわち、弁部材524の先端側に行くほど可撓性(弾性)が大きくなるような可撓性増大部をその高さ方向の一部でも有しておれば、上記のような効果を得られるものである。
(5−2)第1受渡部521における流路抵抗調整部材として可撓性の弁部材524を用いたが、図8のように仕切り部材523に軸支部523aを設け、これにシャッター部材525を揺動可能に軸支させ、引っ張りバネ526により第1搬送路551側に付勢するように構成してもよい。
【0068】
この場合、シャッター部材525が図の実線の位置(一番第1受渡部521の開口を塞ぐ位置)よりも第1搬送路551方向に傾かないように規制する手段が必要であり、本変形例では、軸支部材523aにピン523bが立設されている。
この場合でもシャッター部材525の高さ、引っ張りバネ526のバネ係数を適正に決定することで上記実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0069】
(5−3)上記のような可撓性の弁部材等を利用した自律的な流路抵抗調整以外にも、以下のような駆動機構を用いて流路抵抗を調整することも可能である。
(5−3−1)
特に、分岐部Pにおける圧力変動に一番大きな影響を与えるのは駆動速度の切り換えなので、この点にのみ着目すれば、第1受渡部521の流路抵抗調整機構として次のような変形例を考えることができる。
【0070】
図9は、本変形例における流路抵抗調整機構の構成を示す図である。
同図に示すように、本変形例では、仕切り部材523に板状のシャッター部材527を、第1受渡部521に向けて進退自在に取り付け、これを適当なアクチュエータ、例えば、ソレノイド528により、矢印方向に進退移動させることにより、第1受渡部521における開口面積を変化させて流路抵抗を変えるようにしている。
【0071】
すなわち、高速駆動の場合には、シャッター部材527を図の実線の第1の位置Q1まで後退させ、低速駆動の場合には、図の破線の第2の位置Q2まで進出させるように制御して、第1受渡部521の開口面積を変化させる。
図10は、この場合の制御部200の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、制御部200は、CPU201、通信I/F(インターフェース)部202、RAM203、ROM204などを有する。
【0072】
通信I/F部202は、外部のクライアント端末とLANを接続するためのLANカードやLANボードであり、LANを介してクライアント端末から送信されてくるプリントジョブのデータを受信してCPU201へ送る。
RAM203は、揮発性メモリであって、CPU201におけるプログラム実行時のワークエリアとなる。
【0073】
ROM204には、画像形成装置100における各部の動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。
CPU201は、取得した画像データに基づき、ROM204から必要なプログラムを読み出してタイミングを計りながら上記画像データ形成部10、給紙部20、定着部30の動作を統一的に制御し、画像形成動作を円滑に実行させると共に、ソレノイド528を駆動してシャッター部材527を進退させ、第1受渡部521における流路抵抗を変化させる。
【0074】
図11は、上記制御部200で実行される流路抵抗制御処理の内容を示すフローチャートであり、プリンタ100における全体の動作を制御するメインフローチャート(不図示)において、画像形成動作開始時にサブルーチンとして実行されるものである。
まず、設定されている画像形成のモードが高速モードかどうかについて判定する。本実施の形態では、例えば、普通紙にプリントするときは高速モード、厚紙やOHPシートにプリントするときは、低速モードとなるようにプログラムされており、給紙部20の給紙カセットごとに収納されている用紙の種類が登録され、ユーザが給紙口を選択する入力を受け付けて高速モードか低速モードかが制御部200で決定されるようになっている。もっとも、速度のモード自体の指定をユーザが直接入力できるようにしても構わない。
【0075】
もし、高速モードに設定されていれば(ステップS1:YES)、ステップS2において、高速駆動に対応すべくシャッター部材527を第1の位置Q1まで後退するようにソレノイド528を制御する。
もし、高速モードに設定されていなければ(ステップS1:NO)、低速モードが実行されることになるので、ステップS3において、低速駆動に対応すべくシャッター部材527を第2の位置Q2まで進出するようにソレノイド528を制御する。
【0076】
その後、メインフローチャートにリターンする。
(5−3−2)
上記(5−3ー1)の変形例においては、駆動速度に基づいてソレノイド528の動作を制御して流路抵抗を変更したが、例えば、公知の圧力センサを分岐部P付近の適当な位置に配して、この圧力センサからの出力に基づき、シャッター部材527の進退移動を制御するようにしてもよい。
【0077】
この変形例においては、例えば、カム機構、ねじ送り機構など、シャッター部材527の進退量を多段階もしくは連続して駆動できるようなアクチュエータが選択されることが望ましい。このようにすれば、速度モードのみならず、他の誤差要因も加味したより細やかな流路抵抗調整が行えるからである。
制御部の構成として、たとえば圧力センサの出力の一時的な変化量を検出し、当該変化量と、そのときの安定現像剤量が基準値に近くなるように予め実験により求められた第1受渡部521の開口面積との関係をテーブル化して、ROM内に格納しておき、CPUは、圧力センサの出力に基づき、上記テーブルを参照して、アクチュエータによりシャッター部材527を移動させて開口面積が最適になるよう制御すればよい。
【0078】
ここで、圧力センサの出力の一時的な変化量は、例えば、当該圧力センサ出力の一定周期でサンプリングして、その前回の検出値との差分、もしくは各サンプリング値を時間で微分することにより得ることができる。
(5−3−3)
その他、速度モードの切り換え以外の誤差要因による現像剤の圧力変動に対応して次のような変形例も実施可能である。
【0079】
例えば、装置のおかれている環境条件によって現像剤の流動性が変化し、これにより現像剤圧力が影響を受ける。具体的には、低温、低湿度であるほど現像剤の流動性がよく、現像剤圧力が低くなる傾向にあるのに対し、高温・高湿度となるほど、流動性が悪くなり現像剤圧力が高くなる傾向にある。
したがって、現像部の周囲の温度と湿度を測定する環境センサを設け、制御部200がこの環境センサの出力値に基づき、上記変形例で説明したような駆動機構により第1受渡部521の開口面積を制御するようにしてもよい。
【0080】
より具体的には、予め実験などにより、環境センサの出力と、現像剤圧力の変化との関係を求めておき、その圧力変動を緩和するための第1受渡部521の開口面積の望ましい大きさをテーブル化してROMに格納し、CPUが環境センサの出力に基づき、当該テーブルを参照してアクチュエータを駆動してシャッター部材527を移動させて第1受渡部521の開口面積を調整し、分岐部Pにおける圧力変動を抑制する。
【0081】
また、トナー濃度によって現像剤の嵩密度が変化し、これにより圧力変動も惹起されるので、磁気センサ59の出力値に基づいて、第1受渡部521の開口面積を変更して流路抵抗調整を行うようにすることもできる。
この場合でも予め実験などにより、磁気センサの出力と、現像剤圧力の変化との関係を求めておき、その圧力変動を緩和するための第1受渡部521の開口面積の望ましい大きさを、テーブル化してROMに格納し、CPUが環境センサの出力に基づき、当該テーブルを参照してアクチュエータを駆動して第1受渡部521の開口面積を調整し、分岐部Pにおける圧力変動を抑制する。
【0082】
さらには、現像部に対して加えられる振動、現像部の搬送経路の傾斜、現像剤搬送時の脈動などの影響によっても、一時的・部分的に現像剤の嵩や圧力が変化するので、より精確に分岐部Pにおける圧力変動を抑制するためには、それらを検知し、それらの検出値に対応して予め作成されたテーブルに基づいて流路抵抗の調整をするようにしても可能であろう。
【0083】
上述の通り、(5−3−1)〜(5−3−3)の変形例のように駆動速度や、圧力センサ、磁気センサ、環境センサなどの各種センサの出力を分岐部Pにおける圧力変動を指標する情報として取得し、駆動機構により強制的に第1受渡部521における開口面積を変化させる構成によっても、本発明の目的を達成することができる。もっとも、これらの例によれば、開口面積を変化させるため何らかの駆動機構や、あるいは、圧力変動を指標する値を取得するための何らかの検知手段および検知結果の演算処理制御手段も必要となることから装置の大型化・複雑化・高コスト化に繋がるおそれがある。
【0084】
この点、第1受渡部521に可撓性の弁部材524やシャッター部材525を設ける構成によれば、より簡易な構成により、分岐点Pにおける現像剤に働く圧力変動に対して直接的・自律的に流路抵抗を調整することができ、小型化、低コスト化の点で優れている。また、駆動速度の切り換え以外の一時的な誤差要因にも迅速に対応することができ、大変便利である。
(5−4)上記実施の形態においては、現像ローラ57に面した第1搬送路551の下流側にトリクル排出機構550を設けたが、場合によっては、第2搬送路541の下流側にトリクル排出機構550を設けて第2受渡部522における開口面積を制御して流路抵抗を調整するようにしても構わない。
(5−5)上記実施の形態では、逆巻きスクリュー部552を有するトリクル方式の現像装置の構成について述べたが、背景技術で説明したように逆巻きスクリュー部を有しておらず排出口の高さのみによってトナー排出量を制御する構成であっても、現像剤圧力の変化により排出量が変動したのであるから、これに本発明に係る第1受渡部521の開口部に流路抵抗調整機構(現像剤通過量変更手段)を具備させることにより、少なくとも従来よりは排出口前の圧力変動を抑制することが可能となり、現像槽内の現像剤量を安定させる効果が少なからず得られる。
(5−6)上記実施の形態では、モノクロプリンタについて説明したが、本発明はこれに限らず、トリクル方式の現像装置を備えている画像形成装置であれば、タンデム型のカラープリンタであってもよいし、複写機や、ファクシミリ装置、さらには、複写機やスキャナーやファックスといった複数の機能を有する複合機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、トリクル方式の現像装置における現像槽内の現像剤量の安定性を高め、画像むらを抑制する技術として好適である。
【符号の説明】
【0086】
1:感光体ドラム
2:クリーニング部
3:帯電ローラ
4:露光走査部
5:現像部
6:転写ローラ
10:画像形成部
20:給紙部
30:定着部
51:筺体
52:隔壁
53:現像剤補給タンク
54:攪拌スクリュー(第2搬送手段)
55:供給スクリュー(第1搬送手段)
56:排出現像剤回収タンク
57:現像ローラ
58:規制板
59:磁気センサ
511:現像剤供給路
513:現像剤排出路
514:現像剤回収口
521:第1受渡部
522:第2受渡部
524:弁部材
525、527:シャッター部材
526:引っ張りバネ
528:ソレノイド
531:供給ローラ
532:現像剤供給口
541:第2搬送路
551:第1搬送路
552:逆巻きスクリュー部(第3搬送手段)
553:排出スクリュー部
P:分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1搬送路に配された第1搬送手段と、第1搬送路に連通する第2搬送路に配された第2搬送手段とを有し、第1と第2の搬送路とからなる循環路内でキャリアとトナーを含む現像剤を循環させつつ、第1もしくは第2の搬送路に沿って配された現像ローラに現像剤を供給すると共に、第1搬送路の現像剤搬送方向下流側で分岐された排出路を介して現像剤の一部を排出する現像装置であって、
前記第1搬送路の前記排出路との分岐部分における現像剤の圧力に応じて、第1搬送路の現像剤搬送方向下流側と第2搬送路の現像剤搬送方向上流側を連通する連通路を通過する単位時間当りの現像剤の量を変化させる現像剤通過量変更手段を
備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記排出路には、前記第1搬送手段よりも搬送力が小さく、かつ、第1搬送手段による搬送方向と反対方向の搬送力を有する第3搬送手段が配設される
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤通過量変更手段は、前記連通路の開口面積を変化させることにより単位時間当りの現像剤の通過量を変更する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤通過量変更手段は、前記連通路に、その連通路の開口の一部を塞ぐように立設された可撓性の弁部材である
ことを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記弁部材は、基端部側から先端側にいくに連れて徐々に厚みが小さくなっていくテーパー部を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記弁部材は、基端部側から先端側にいくに連れて、可撓性が大きくなる可撓性増大部
を備えている
ことを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項7】
前記弁部材は、発泡性の弾性部材もしくは樹脂フィルムで形成されてなる
ことを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の現像装置。
【請求項8】
前記現像剤通過量変更手段は、前記連通路の開口部に設けられた軸支部に揺動自在に軸支された遮蔽部材であって、付勢手段により第1搬送路側に付勢されて前記連通路の開口の一部を塞ぐような姿勢で維持されており、前記分岐部分における現像剤の圧力が大きくなるに連れて、前記付勢手段による付勢力に抗して第2搬送路方向に倒れて前記開口面積が徐々に大きくなるように構成されてなる
ことを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項9】
前記現像剤通過量変更手段は、
前記分岐部分における圧力変動を指標する情報を取得する取得手段と、
前記連通路における開口の一部を遮蔽する遮蔽部材と、
前記遮蔽部材を移動させて、前記連通部における開口面積を変化させる遮蔽部材移動手段と、
前記取得した指標に基づき、前記遮蔽部材移動手段により遮蔽部材を移動させて前記連通路における開口面積を変化させる制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−203330(P2011−203330A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68229(P2010−68229)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】