説明

生体測定装置、生体測定方法、生体測定装置の制御プログラム、および、該制御プログラムを記録した記録媒体

【課題】測定目的に応じて、より精度の高い測定結果を導出する生体測定装置を実現する。
【解決手段】本発明の解析装置(生体測定装置)1は、生体から取得された生体信号情報を用いて、生体の状態を測定する生体測定装置であって、生体信号情報に基づいて得られる生体パラメータを少なくとも含む1以上のパラメータを用いて、生体の状態を示す測定結果情報を導出する指標算出部23と、自装置が測定可能な測定項目と、該測定項目の測定に用いるパラメータを指定するパラメータ指定情報とを対応付けて記憶する測定方法記憶部31とを備え、指標算出部23は、測定項目に対応する上記パラメータ指定情報によって指定されたパラメータを用いて、該測定項目の測定結果情報を導出することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の状態を測定する生体測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、センサを用いて生体をセンシングし、センサから得られた信号情報に基づいて、生体の状態を測定する技術が広く使われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ユーザの身体にセンサ(センサ装着用ヘッド)を装着し、該センサから得られる信号情報に基づいて、本体がユーザの複数のパラメータ(生体情報)を計測するという生体情報計測装置が開示されている。この生体情報計測装置は、装着されたセンサの装着部位を検出し、検出した装着部位にて計測可能なパラメータを選択したり、装着部位に応じて、センサから出力される信号情報の信号の増幅度を調節したりする。これにより、センサの装着部位や用途を限定することなく利用範囲の広い生体情報計測装置を実現している。
【0004】
また、特許文献2には、複数のワイヤレス生体情報センサモジュールを用いて、時間と場所を選ばずに継続的なパラメータ(生体情報)を検知・収集するワイヤレス生体情報検知システムが開示されている。このワイヤレス生体情報検知システムでは、収集したパラメータを、他のセンサモジュールからのパラメータと比較することにより、身体の異常の有無を評価・判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−102692号公報(2003年4月8日公開)
【特許文献2】特開2005−160983号公報(2005年6月23日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、装着部位に応じて測定不能だったパラメータを使わなかったり、得られた信号情報を装着部位に応じて補正したりするのみである。そのため、得られたパラメータの解析・認識処理を行うときに、情報が欠けたまま処理が行われたりするので、測定項目(測定の目的)に沿わず、精度の低い測定結果が出力されるという問題を生じる。測定結果が正確でなければ、最終的な判定がうまくいかない、あるいは、判定精度が低くなるという問題を招来することにもなる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、測定目的に応じて、適した方法で生体の状態を測定し、より精度の高い測定結果を導出する生体測定装置、生体測定方法、生体測定装置の制御プログラム、および、該制御プログラムを記録した記録媒体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生体測定装置は、上記課題を解決するために、生体から取得された生体信号情報を用いて、生体の状態を測定する生体測定装置であって、上記生体信号情報に基づいて得られる生体パラメータを少なくとも含む1以上のパラメータを用いて、生体の状態を示す測定結果情報を導出する測定結果導出手段と、自装置が測定可能な測定項目と、該測定項目の測定に用いるパラメータを指定するパラメータ指定情報とを対応付けて記憶する測定方法記憶部とを備え、上記測定結果導出手段は、測定項目に対応する上記パラメータ指定情報によって指定されたパラメータを用いて、該測定項目の測定結果情報を導出することを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、生体測定装置は、測定方法記憶部に、測定項目と、パラメータ指定情報とを対応付けて記憶している。測定項目とは、自装置が実施できる測定の目的(生体のどのような状態を測定するのか)を示す、いわば、測定の種類である。パラメータ指定情報とは、当該測定項目に係る測定を実施する際に、上記測定結果導出手段が測定結果情報を導出するために用いるパラメータを指定する情報である。
【0010】
そして、上記測定結果導出手段は、ある測定項目に係る測定を実施しようとするとき、その測定項目に対応付けられたパラメータ指定情報が指定するパラメータを用いて、生体の状態を示す測定結果情報を導出する。
【0011】
上記測定結果導出手段は、測定結果情報を導出するために、上記パラメータを1つ用いてもよいし、複数用いてもよいが、用いるパラメータの中には、生体から取得された生体信号情報に基づいて得られる生体パラメータが少なくとも含まれている。
【0012】
これにより、上記測定結果導出手段は、測定項目に対応付けられたパラメータを用いて測定結果情報を導出する。しかもそのパラメータには、生体の生体パラメータが必ず含まれている。したがって、測定の目的に応じて、目的に適ったパラメータを用いて生体の状態を測定するので、より精度の高い測定結果を導出することが可能となる。
【0013】
上記測定結果導出手段は、上記パラメータ指定情報によって指定された1以上のパラメータから、上記測定項目に係る生体の状態を示す指標を算出することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、測定項目に対応する測定結果が指標として出力される。このため、ユーザは、生体の状態を指標に基づいて平易に把握することができる。また、測定結果を指標で表すことで、ユーザは、測定結果についての分析、比較、管理などを容易に行うことができ、利便性が向上する。
【0015】
本発明の生体測定装置は、さらに、上記1以上のパラメータを用いて上記測定項目に対応する指標を算出するための指標算出規則を、指標ごとに記憶する指標算出規則記憶部を備え、上記指標算出規則は、各パラメータが上記指標の算出に与える影響の大きさに基づいて定められた、各パラメータに掛ける重み付けの情報を含み、上記測定結果導出手段は、上記指標算出規則に従って、上記1以上のパラメータのそれぞれに定められた重み付けを付加して上記指標を算出してもよい。
【0016】
本発明の生体測定装置は、さらに、各パラメータが上記指標の算出に与える影響の大きさを示すパラメータ属性を、上記指標ごとかつ上記パラメータごとに記憶するパラメータ属性記憶部を備え、上記指標算出規則に含まれる上記重み付けは、上記パラメータ属性が有するすべてまたは一部の情報と相関することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、各パラメータに付与される重み付けの値は、各パラメータが上記指標の算出に与える影響の大きさの違いを正確に反映したものとなる。よって、測定結果導出手段は、上記指標算出規則(重み付け)に従って、より精度よく指標を算出することが可能となる。
【0018】
本発明の生体測定装置は、さらに、当該生体測定装置に対してユーザから入力された、上記パラメータ属性を変更する指示にしたがって、上記パラメータ属性記憶部に記憶されたパラメータ属性を変更するパラメータ属性管理手段を備え、上記パラメータ属性管理手段は、上記パラメータ属性記憶部に記憶されたパラメータ属性の変更に伴い、上記指標算出規則に含まれる上記重み付けを変更することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、ユーザによってパラメータ属性が変更された場合に、その変更内容を、各パラメータに付与されている重み付けの値に反映することができる。よって、測定結果導出手段は、上記指標算出規則(重み付け)に従って、ユーザの意図どおりに、より精度よく指標を算出することが可能となる。
【0020】
上記測定方法記憶部は、さらに、上記測定項目ごとに、上記指標を繰り返し算出するタイミングを指定する反復測定指示情報を記憶し、上記測定結果導出手段は、上記反復測定指示情報が指定するタイミングにしたがって、反復して取得された生体信号情報に基づいて得られた生体パラメータを用いて指標を反復して算出することが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、生体測定装置は、測定方法記憶部において、パラメータ指定情報のほかに、さらに、反復測定指示情報を、上記測定項目に対応付けて記憶している。反復測定指示情報とは、指標の算出を定期的に実行する場合の実行間隔、実行回数、実行期間、実行時間などの、算出のタイミングを指定する情報である。
【0022】
測定の種類によっては、1回の指標の算出のみでは、生体の状態を正確に測定、判定できないものもある。そこで、指標の算出のタイミングを、測定項目ごとに、反復測定指示情報によって指定することにより、測定の目的に適った測定方法にて、生体の測定を実施するように、測定結果導出手段の動作を制御することができる。
【0023】
上記測定結果導出手段によって反復して算出された指標に基づいて、測定項目に係る生体の健康状態を評価する状態評価手段を備えていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、状態評価手段は、反復して算出された複数の指標を用いて、生体の健康状態を精度よく評価することが可能となる。
【0025】
上記状態評価手段は、上記測定結果導出手段によって所定の時点で算出された指標を、上記測定結果導出手段によって反復して算出された複数の指標と比較することにより、生体の上記所定の時点における健康状態を評価することが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、状態評価手段は、単発で実施された測定により得られた指標を、反復して実施された測定により得られた複数の指標と比較することによって、単発で測定が実施された時点での、生体の健康状態を評価する。
【0027】
これにより、上記時点での生体の健康状態を、過去の履歴に基づいて評価することが可能となり、より精度よい状態判定を実施することができる。
【0028】
上記測定方法記憶部は、上記パラメータ指定情報におけるパラメータを、測定に必須のパラメータと、測定に用いることが好ましい補助のパラメータとに区別して記憶することが好ましい。
【0029】
上記構成によれば、上記測定結果導出手段は、用いるパラメータを、必須のパラメータと、補助のパラメータとを区別することができる。上記測定結果導出手段は、すべてのパラメータがそろわなくても、必須のパラメータさえあれば、測定項目に適う、一定の精度を保った測定結果情報を導出する一方、補助のパラメータがある場合には、当該測定項目に適う、さらに、精度の高い測定結果情報を導出することができる。
【0030】
上記パラメータには、上述したとおり、上記生体の生理状態を反映した上記生体パラメータがあり、さらに、それとは別に、上記生体の体外の環境条件を反映した外的パラメータとがあってもよい。そして、上記測定方法記憶部は、上記パラメータ指定情報におけるパラメータを、上記生体パラメータと、上記外的パラメータとに区別して記憶してもよい。
【0031】
上記構成によれば、上記測定結果導出手段は、測定項目に対応するパラメータとして、上記生体パラメータ以外にも、上記外的パラメータを用いて測定結果情報を導出することができる。生体の状態は、生体の体外の環境条件が影響することもあるので、そのような状態を測定したい場合には、外的パラメータを用いることにより、さらに精度よく生体の状態を測定することが可能となる。
【0032】
上記外的パラメータは、上記生体から上記生体信号情報を取得する生体センサの仕様情報、上記生体センサの設置位置情報、上記生体に関する被検体情報、および、上記生体が置かれた測定環境に関する環境情報の少なくとも1つを含み、上記測定方法記憶部は、1以上の上記生体パラメータと1以上の上記外的パラメータとの組み合わせを上記パラメータ指定情報として上記測定項目に対応付けて記憶してもよい。
【0033】
上記構成によれば、上記測定結果導出手段は、生体パラメータに加えて、生体センサの仕様情報、上記生体センサの設置位置情報、上記生体に関する被検体情報、および、上記生体が置かれた測定環境に関する環境情報などの外的パラメータを用いて測定結果情報を導出する。つまり、上述のような外的要因が生体の状態に影響を与える場合でも、それらを考慮して、より正確な測定結果情報を導出することができる。したがって、さらに精度よく生体の状態を測定することが可能となる。
【0034】
上記生体パラメータには、生体の体内で生じる変化を示すパラメータと、生体の体外に現れる変化を示すパラメータとが含まれることが好ましい。
【0035】
生体の状態を測定する際に、上記生体の生理状態を反映した生体パラメータとしては、体内で生じる変化を示すパラメータが専ら用いられる。しかしながら、さらに、生体の体外に現れる変化を示すパラメータを用いることにより、生体の生理状態をさらに詳細に分析することが可能となり、生体の状態を正確に測定し、より精度よい測定結果情報を導出することが可能となる。
【0036】
体内で生じる変化を示すパラメータの一例としては、体内で発生する(臓器の)音の周波数や、経皮的動脈血酸素飽和度などが想定される。また、体外に現れる変化を示すパラメータの一例としては、生体の体動(加速度センサなどで測定される)などが想定される。
【0037】
上記測定結果導出手段が用いる、1つ以上の上記生体パラメータは、1つの生体信号情報の分析により得られるものであってよい。
【0038】
つまり、1つの生体信号情報から得られた複数種類の生体パラメータを用いて測定結果の導出が行われてもよい。
【0039】
上記測定結果導出手段が用いる、1つ以上の上記生体パラメータは、複数の生体信号情報の分析により得られるものであってよい。
【0040】
つまり、複数種類の生体信号情報から得られた複数種類の生体パラメータを用いて測定結果の導出が行われてもよい。
【0041】
上記生体測定装置は、上記生体から上記生体信号情報を取得する生体センサと通信する通信部を備えていてもよい。
【0042】
上記構成によれば、生体測定装置は、通信部を介して生体センサから生体信号情報を取得し、取得した生体信号情報から生体パラメータを得ることができる。
【0043】
あるいは、上記生体測定装置は、上記生体から上記生体信号情報を取得する生体センサに内蔵されていてもよい。
【0044】
上記構成によれば、生体測定装置は、生体センサに内蔵され、自装置が取得した生体信号情報から直接生体パラメータを得ることができる。
【0045】
本発明の生体測定方法は、上記課題を解決するために、生体から取得された生体信号情報を用いて、生体の状態を測定する生体測定装置における生体測定方法であって、上記生体測定装置には、該生体測定装置が測定可能な測定項目と、該測定項目の測定に用いる1以上のパラメータを指定するパラメータ指定情報とが対応付けて記憶されており、該パラメータ指定情報には、上記生体信号情報に基づいて得られる生体パラメータが少なくとも1つ指定されており、測定項目に対応する上記パラメータ指定情報によって指定されたパラメータを特定するステップと、上記特定するステップにて特定されたパラメータを用いて、上記測定項目に係る生体の状態を示す測定結果情報を導出するステップとを含むことを特徴としている。
【0046】
なお、上記生体測定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記生体測定装置をコンピュータにて実現させる生体測定装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0047】
本発明の生体測定装置は、上記課題を解決するために、生体から取得された生体信号情報を用いて、生体の状態を測定する生体測定装置であって、上記生体信号情報に基づいて得られる生体パラメータを少なくとも含む1以上のパラメータを用いて、生体の状態を示す測定結果情報を導出する測定結果導出手段と、自装置が測定可能な測定項目と、該測定項目の測定に用いるパラメータを指定するパラメータ指定情報とを対応付けて記憶する測定方法記憶部とを備え、上記測定結果導出手段は、測定項目に対応する上記パラメータ指定情報によって指定されたパラメータを用いて、該測定項目の測定結果情報を導出することを特徴としている。
【0048】
本発明の生体測定方法は、上記課題を解決するために、生体から取得された生体信号情報を用いて、生体の状態を測定する生体測定装置における生体測定方法であって、上記生体測定装置には、該生体測定装置が測定可能な測定項目と、該測定項目の測定に用いる1以上のパラメータを指定するパラメータ指定情報とが対応付けて記憶されており、該パラメータ指定情報には、上記生体信号情報に基づいて得られる生体パラメータが少なくとも1つ指定されており、測定項目に対応する上記パラメータ指定情報によって指定されたパラメータを特定するステップと、上記特定するステップにて特定されたパラメータを用いて、上記測定項目に係る生体の状態を示す測定結果情報を導出するステップとを含むことを特徴としている。
【0049】
したがって、測定目的に応じて、適した方法で生体の状態を測定し、より精度の高い測定結果を導出することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態における解析装置(生体測定装置)の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における生体測定システムの構成を示す概略図である。
【図3A】解析装置の測定方法記憶部に記憶される情報のデータ構造を示す図である。
【図3B】解析装置の測定方法記憶部に記憶される情報のデータ構造を示す図である。
【図4】解析装置が、生体測定処理の開始の指示を受けてから、当該処理の測定結果を出力するまでの、該解析装置における主要部材間のデータの流れを説明する図である。
【図5】(a)〜(d)は、無呼吸度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、無呼吸度の判定基準情報の具体例を示す図である。
【図6】(a)〜(d)は、睡眠深度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、睡眠深度の判定基準情報の具体例を示す図である。
【図7】(a)〜(d)は、喘息重症度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、喘息重症度の判定基準情報の具体例を示す図である。
【図8】(a)〜(d)は、心臓活動度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、心臓活動度の判定基準情報の具体例を示す図である。
【図9】(a)〜(d)は、消化器活動度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、消化器活動度の判定基準情報の具体例を示す図である。
【図10】(a)〜(d)は、循環器活動度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、循環器活動度の判定基準情報の具体例を示す図である。
【図11】(a)〜(d)は、咳重症度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、咳重症度の判定基準情報の具体例を示す図である。
【図12】測定項目「1:無呼吸度測定」について、解析装置が生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示す図である。
【図13】測定項目「2:睡眠状態測定」について、解析装置が生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示す図である。
【図14】測定項目「3:喘息測定」について、解析装置が生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示す図である。
【図15】測定項目「4:心臓モニタリング」について、解析装置が生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示す図である。
【図16】測定項目「5:消化器モニタリング」について、解析装置が生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示す図である。
【図17】測定項目「6:循環器モニタリング」について、解析装置が生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示す図である。
【図18】測定項目「7:咳モニタリング」について、解析装置が生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示す図である。
【図19】解析装置が実行する生体測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】被験者の状態の長期的な傾向を測定結果として表示した例を示す図である。
【図21】本発明の他の実施形態における解析装置(生体測定装置)の要部構成を示すブロック図である。
【図22】解析装置のパラメータ属性記憶部に記憶される情報のデータ構造を示す図である。
【図23】解析装置が生体測定処理を実行することによって得られた測定結果を、表示部に表示するときの表示画面の一例を示す図である。
【図24】ユーザが算出式を設計するための設計画面の一例を示す図である。
【図25】本発明のさらに他の実施形態における解析装置(生体測定装置)の測定方法記憶部に記憶される情報のデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
≪実施形態1≫
本発明の実施形態について、図面に基づいて説明すると以下の通りである。
【0052】
本発明の生体測定装置は、生体の状態をセンシングするセンサなどから生体信号情報を取得し、そこから得られるパラメータを用いて生体の様々な状態、症状を測定するものである。本実施形態では、生体測定装置の被検体となる生体の一例として、人間(以下、被験者と称する)の状態を、生体センサを用いてセンシングし、被験者の状態、症状を測定する。しかし、本発明の生体測定装置は、これに限定されず、人間以外の動物(例えば犬など)を被検体(生体)として扱い、動物の生体信号情報を取得して、動物の状態を測定することも可能である。
【0053】
本実施形態では、一例として、本発明の生体測定装置を、上記生体信号情報を取得する各種のセンサとは別体で設けられた、情報処理装置(パソコンなど)にて実現する場合について説明する。よって、本実施形態では、センサが取得した生体信号情報は、無線または有線の適宜の通信手段を介して生体測定装置に供給される。しかし、本発明の生体測定装置は、上記の構成に限定されず、上記センサ自体に内蔵して実現してもよい。
【0054】
〔生体測定システム〕
図2は、本発明の実施形態における生体測定システム100の構成を示す概略図である。本発明の生体測定システム100は、少なくとも、1以上の生体センサ(2〜6および8)と、解析装置(生体測定装置)1とを含む構成となっている。さらに、図2に示すとおり、生体測定システム100は、被験者の測定に関わる各種の情報を提供する情報提供装置7が含まれていてもよい。
【0055】
生体センサは、被験者の状態をセンシングして、検出した生体信号情報を解析装置1に供給するものである。生体センサは、少なくとも一つあればよいが、図2に示すように、複数設けられていてもかまわない。図2に示す例では、生体センサとしては、被験者が発する音を検出する音響センサ2(音響センサ2a、2b)と、被験者の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO)を測定するパルスオキシメータ3と、被験者の脈波を検出する脈波センサ4と、被験者の体温を測定する体温計5と、被験者の体の動き(体動)を検出する加速度センサ6とが設けられている。さらに、被験者の心臓の電気的な活動を検出する心電計8が生体センサとして設けられていてもよい。各種センサは、自装置にて検出した生体信号情報(音、SpO、脈波、体温、加速度、心電図など)を解析装置1に対して送信する。
【0056】
例えば、音響センサ2a、2bは、被験者の体に装着され、当該被験者が発する音を検出する密着型のマイクロフォンである。音響センサ2の表面には粘着剤層が設けられており、この粘着剤層によって音響センサ2が被験者の体表面に装着される。音響センサ2の装着位置は、目的の音が効果的に拾える箇所であればよく、例えば、被験者の呼吸音、咳音などを検出する音響センサ2aは気道付近に装着され、被験者の心音、心拍数などを検出する音響センサ2bは胸部左(被験者から見て)に装着される。
【0057】
音響センサ2aは、検出した呼吸音の音データを生体信号情報として解析装置1に送信する。音響センサ2bは、検出した心音の音データを生体信号情報として解析装置1に送信する。
【0058】
パルスオキシメータ3は、赤色光、赤外光をそれぞれ出射するLEDを備え、これらのLEDからの出射光が被験者の指先を透過した結果生じる透過光の光量に基づいて、動脈血中酸素飽和度を計測する。さらに、脈拍数を計測してもよい。パルスオキシメータ3は、計測したSpOと計測時間とを対応付けた測定データを生体信号情報として解析装置1に送信する。
【0059】
心電計8は、心臓の電気的な活動を検出するものである。本実施形態では、他の生体センサと同様に、心電計8は、被験者の安静時の状態(心電図)を短時間計測するのではなく、日常生活中の被験者の状態を連続的に計測する目的で使用される。したがって、心電計8としては、ホルター心電計を採用することが好ましい。ホルター心電計は、長時間(1日24時間、もしくはそれ以上)に亘って、連続的に被験者の日常生活中の心電図を計測することが可能である。心電計8は、被験者の体に装着する電極と計測器本体とから構成される。計測器本体は、各電極を制御し、各電極から得られた電気信号を分析し、心電図を作成する。さらに、本実施形態では、計測器本体は、解析装置1と通信する機能を有しており、作成した心電図のデータを生体信号情報として解析装置1に送信する。なお、心電計8は、被験者の日常生活に支障をきたさないように、小型かつ軽量で携帯性に優れた形状を有していることが好ましい。解析装置1は、心電計8から供給された心電図を分析して、心拍数、QRS幅、などの心臓の活動状態を表すパラメータを抽出することができる。
【0060】
解析装置1は、上記生体センサから取得した生体信号情報に基づいて、被験者の状態を測定するものである。解析装置1は、取得した生体信号情報から1または複数の、被験者に係る様々な情報を抽出する。そして、これらを、パラメータとして利用して生体測定処理にかけることにより、測定結果を得ることができる。
【0061】
本発明の解析装置1は、被験者のどのような状態を測定したいのかという測定の目的、すなわち、測定項目に応じて、上記生体測定処理に利用するパラメータを取捨選択することができる。このため、測定の目的に適った精度よい判定を実現することができる。
【0062】
さらに、解析装置1は、上記生体測定処理における測定結果の精度を向上させるために、生体センサ以外の装置(情報提供装置7など)から取得した外部取得情報、および、自装置に直接入力された手動入力情報からパラメータを抽出して利用することができる。
【0063】
ここで、上記生体センサの生体信号情報から得られるパラメータを「生体パラメータ」、また、上記外部取得情報または上記手動入力情報から得られるパラメータを「外的パラメータ」と称し、これらの用語は、両者を性質上区別する必要がある場合に用いる。
【0064】
生体パラメータは、被験者の生理状態を反映したものである。生体パラメータの具体例としては、例えば、音響センサ2が検出した音データ(生体信号情報)から取得される「音量」、「周波数」などが想定される。さらに、波形がパターン化される場合に、波形のパターンを分析することにより、波形の「有無」、「長短」、「回数」などが、生体パラメータとして抽出されてもよい。また、心電計8が検出した心電図(生体信号情報)からは、これには限定されないが、例えば、「心拍数」、「PP間隔」、「RR間隔」、「PQ時間」、「QRS幅」、「P波高さ」、「P波幅」、「S波高さ」、「S波幅」、「T波高さ」、「T波幅」などが、生体パラメータとして抽出されてもよい。
【0065】
外的パラメータは、上記生体パラメータが被験者の生理状態を反映したものであるのに対し、被験者の体外の環境条件を反映したものである。外的パラメータの具体例としては、例えば、生体センサの仕様情報(バージョン情報、どういった情報を検出できる機能を持つのか、など)、上記生体センサの設置位置情報(胸部、腹部、背中、気道付近など)、上記被験者に関する被験者(被検体)情報(被験者の年齢、性別、睡眠時間、直前の食事時間、運動量、過去の疾患履歴など)、および、上記被験者が置かれた測定環境(気温、気圧、湿度など)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0066】
解析装置1は、上記生体パラメータに、上記外的パラメータを適切に組み合わせて測定結果を導出することにより、測定の目的に適ったさらに精度よい判定を実現することが可能となる。以下では、この解析装置1の構成についてさらに詳細に説明する。
【0067】
〔解析装置1の構成〕
図1は、本発明の実施形態における解析装置1の要部構成を示すブロック図である。
【0068】
図1に示すとおり、本実施形態における解析装置1は、制御部10、記憶部11、無線通信部12、通信部13、入力操作部14および表示部15を備える構成となっている。
【0069】
無線通信部12は、生体測定システム100における各種生体センサと無線通信するものである。無線通信手段としては、Bluetooth(登録商標)通信、WiFi通信などの近距離無線通信手段を採用し、各種生体センサと直接近距離無線通信を行うことが想定される。あるいは、構内LANを構築し、これを介して各種生体センサと無線通信を行ってもよい。
【0070】
なお、解析装置1は、生体センサと有線による通信を行う場合には、無線通信部12を備えていなくてもよいが、各生体センサと解析装置1との通信を無線で実現することが好ましい。無線通信にすることで、生体センサの被験者への装着が平易になり、測定環境下における被験者の行動に対する制約が減り、被験者のストレスや負担を低減できるからである。
【0071】
通信部13は、広域通信網を介して外部の装置(情報提供装置7など)と通信を行うものである。例えば、通信部13は、インターネットなどを介して、情報提供装置7と情報の送受信を行う。特に、解析装置1は、生体測定処理に利用する外的パラメータを抽出するための外部取得情報を、通信部13を介して情報提供装置7から受信する。ここで、通信部13が取得する外部取得情報としては、特定の日の天気、気温、気圧、湿度や、利用する各生体センサの仕様情報などが想定される。例えば、仕様情報を参照することにより、解析装置1は、どの測定項目に応じてどの生体センサからのパラメータを利用するべきかを判断したり、あるいは、複数の生体センサを同時に利用するときの相性の良し悪しや、禁忌を把握したりすることができる。
【0072】
入力操作部14は、ユーザ(被験者自身あるいは測定を行う操作者を含む)が解析装置1に指示信号を入力するためのものである。入力操作部14は、複数のボタン(十字キー、決定キー、文字入力キーなど)で構成されるキーボード、マウス、タッチパネル、タッチセンサ、タッチペン、もしくは、音声入力部と音声認識部などの適宜の入力装置で構成される。本実施形態では、ユーザは、入力操作部14を用いて、これから開始する測定の目的(測定項目)の測定を行うのに必要な情報(手動入力情報)を解析装置1に直接入力する。例えば、入力操作部14を介して、被験者の年齢、性別、平均睡眠時間、測定日当日の睡眠時間、直近の食事時間、食事内容、運動量などの各パラメータが解析装置1に入力される。
【0073】
表示部15は、解析装置1が実行した生体測定処理の測定結果を表示したり、ユーザが解析装置1を操作するための操作画面をGUI(Graphical User Interface)画面として表示したりするものである。例えば、ユーザが、上述の各パラメータを入力するための入力画面を表示したり、ユーザが、測定項目を指定して測定の開始を指示するための操作画面を表示したり、実行した生体測定処理の測定結果を表す結果表示画面を表示したりする。表示部15は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)などの表示装置で構成される。
【0074】
制御部10は、解析装置1が備える各部を統括制御するものであり、機能ブロックとして、情報取得部20、パラメータ抽出部21、パラメータ選択部22、指標算出部23、状態判定部24、および、測定項目決定部25を備えている。これらの各機能ブロックは、CPU(central processing unit)が、ROM(read only memory)等で実現された記憶装置(記憶部11)に記憶されているプログラムを不図示のRAM(random access memory)等に読み出して実行することで実現できる。
【0075】
記憶部11は、制御部10が実行する(1)制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)制御部10が、解析装置1が有する各種機能を実行するためのアプリケーションプログラム、および、(4)該アプリケーションプログラムを実行するときに読み出す各種データを記憶するものである。特に、記憶部11は、解析装置1が実行する生体測定処理を実行する際に読み出す各種プログラム、データを記憶する。具体的には、記憶部11には、パラメータ記憶部30、測定方法記憶部31、指標算出規則記憶部32および指標記憶部33が含まれる。
【0076】
なお、解析装置1は、図示しない一時記憶部を備える。一時記憶部は、解析装置1が実行する各種処理の過程で、演算に使用するデータおよび演算結果等を一時的に記憶するいわゆるワーキングメモリであり、RAMなどで構成される。
【0077】
制御部10の情報取得部20は、生体測定処理に必要な各種情報を取得するものである。詳細には、情報取得部20は、無線通信部12を介して、生体センサから生体信号情報を取得する。また、情報取得部20は、通信部13を介して、情報提供装置7から外部取得情報を取得する。さらに、情報取得部20は、入力操作部14を介して自装置に入力された手動入力情報を取得する。例えば、情報取得部20は、被験者の呼吸音の音データを生体信号情報として音響センサ2aから取得する。
【0078】
さらに、情報取得部20は、解析装置1が生体測定処理を実行するときの測定項目が決定している場合に、各生体センサと通信を行って、上記測定項目の測定に必要な生体センサが通信可能な状態(アクティブな状態)にあるか否かを確認してもよい。
【0079】
パラメータ抽出部21は、情報取得部20によって取得された各種情報から、生体測定処理に用いるパラメータを抽出するものである。パラメータ抽出部21は、上記生体センサから取得された生体信号情報から生体パラメータを抽出し、外部から取得された外部取得情報、あるいは、自装置に入力された手動入力情報から外部パラメータを抽出する。
【0080】
本実施形態では、パラメータ抽出部21は、デフォルトで指定されているパラメータを、決まった生体信号情報から抽出するように構成されている。例えば、音データからは「音量」と「周波数」とを抽出するように構成されている。しかし、測定項目に応じて、別途のパラメータが必要になる場合には、測定方法記憶部31を参照し、測定方法記憶部31に記憶されている抽出方法にしたがって、別途のパラメータを取得する。例えば、別途のパラメータとは、「○分間に検出された周波数のうちの最大値」などであり、より複雑な分析手順を経て抽出されるパラメータである。パラメータ抽出部21は、抽出した各パラメータを、取得した生体信号情報あるいは生体センサに対応付けてパラメータ記憶部30に記憶する。
【0081】
測定項目決定部25は、解析装置1が実行しようとする生体測定処理の測定の目的、すなわち、測定項目を決定するものである。測定項目の決定方法は、いくつか考えられる。最も簡素な構成としては、解析装置1が測定可能な測定項目を、表示部15を介してユーザに提示し、入力操作部14を介してユーザに選択させる構成が考えられる。測定項目決定部25は、ユーザに指定された測定項目の情報を解析装置1の各部に伝達する。
【0082】
パラメータ選択部22は、ユーザによって指定された測定項目に応じて、該測定項目にかかる生体測定処理を実行するために必要なパラメータを選択するものである。パラメータ選択部22は、測定方法記憶部31に記憶されているパラメータ指定情報を参照し、指定された測定項目に合致するパラメータを選択する。
【0083】
パラメータ選択部22の動作については、測定方法記憶部31のデータ構造に基づいて、後に詳述する。
【0084】
指標算出部23は、パラメータ選択部22によって選択されたパラメータを利用して、指定された測定項目に対応する指標を算出するものである。指標算出部23は、指標算出規則記憶部32に記憶されている指標算出規則のうち、指定された測定項目に対応するものを読み出し、該指標算出規則にしたがって、指定された測定項目の指標を算出する。
【0085】
例えば、指定された測定項目が「無呼吸度測定」であれば、指標算出部23は、指標算出規則記憶部32に記憶されている「無呼吸度算出規則」にしたがって、指標「無呼吸度」を算出する。上記指標算出規則のデータ構造については後述する。
【0086】
指標算出部23は、算出した指標を指標記憶部33に記憶する。なお、この指標が、定期的な測定によって定期的に算出される場合には、指標は、測定日時と被験者情報(被検体情報)とに関連付けて蓄積されてもよい。
【0087】
状態判定部24は、指標算出部23によって算出された指標に基づいて、被験者の状態を判定するものである。判定基準情報が、指標算出規則記憶部32に記憶されており、状態判定部24は、判定基準情報のしたがって、算出された指標に基づいて被験者の状態を判定する。例えば、状態判定部24は、測定項目に係る被験者の状態を、「正常」、「要注意」、「異常」の3段階評価で判定する。
【0088】
指標算出部23および状態判定部24が出力する測定結果、すなわち、指標および被験者の状態判定結果は、表示部15に出力される。これにより、測定結果をユーザに分かり易く提示することが可能となる。
【0089】
パラメータ記憶部30は、パラメータ抽出部21によって抽出されたパラメータを記憶するものである。抽出されたパラメータは、パラメータ種別ごとに、解析装置1が識別可能なように管理される。パラメータ種別とは、例えば、「音量」、「周波数」などである。さらに、複数の被験者の測定を、複数の生体センサを用いて行う場合には、各パラメータは、被験者IDごと、生体センサIDごとに管理されることが望ましい。
【0090】
測定方法記憶部31は、生体測定処理に用いるパラメータの種別を、測定項目ごとに指定するパラメータ指定情報を記憶するものである。
【0091】
さらに、測定方法記憶部31は、同じ種類の生体センサでも、測定項目に応じて生体センサの装着位置が異なる場合には、測定項目ごと、かつ、生体センサの種別ごとに、装着位置指定情報を記憶しておいてもよい。これにより、解析装置1の各部は、測定項目が指定された場合に、生体センサが適切な位置に装着されていない、または、適切な位置に装着された生体センタと通信ができない、などのエラーを検知し対応することができる。
【0092】
さらに、測定方法記憶部31は、測定項目ごとに最終的に算出する指標を対応付けて記憶しておいてもよい。これにより、指標算出部23は、測定項目が指定されると、何の指標を算出すべきかを認識することができる。例えば、測定項目「無呼吸度測定」が指定された場合には、それに対応する指標「無呼吸度」を算出すると認識する。
【0093】
測定方法記憶部31に記憶されるデータのデータ構造については、図を参照しながら、後に詳述する。
【0094】
指標算出規則記憶部32は、指標を算出するための指標算出規則を測定項目ごとに記憶するものである。指標算出規則は、選択されたパラメータを用いて指標を算出するまでの全工程についてのアルゴリズムを示すものである。例えば、測定項目「無呼吸度測定」が指定された場合には、指標算出部23は、「無呼吸度算出規則」を指標算出規則記憶部32から読み出し、そこに示されるアルゴリズムにしたがって、指標「無呼吸度」を算出することができる。さらに、指標算出規則記憶部32には、測定項目ごとに、算出された指標に基づいて被験者の状態を判定するための判定基準情報が、対応付けて記憶されている。状態判定部24は、例えば、指標「無呼吸度」が算出されると、無呼吸度の判定基準情報を参照し、その判定基準にしたがって、測定項目「無呼吸度測定」に関する、被験者の状態を判定する。
【0095】
指標算出規則記憶部32に記憶されるデータのデータ構造については、図を参照しながら、後に詳述する。
【0096】
指標記憶部33は、指標算出部23が算出した指標を記憶するものである。指標の算出は、定期的に行われることが好ましく、また、算出された指標は、測定日時と被験者情報とに関連付けて記憶されることが好ましい。これにより、同じ被験者の同じ指標について、経時的変化を観察することが可能となり、より正確に被験者の状態(特に、正常か異常か)について判定することができる。
【0097】
〔測定方法記憶部31について〕
図3Aおよび図3Bは、測定方法記憶部31に記憶される情報のデータ構造を示す図である。特に、図3Aは、汎用的なパラメータに関するパラメータ指定情報と、装着位置指定情報と、対応する指標とについて、測定項目との対応関係を具体例を用いて示している。図3Bは、特殊なパラメータに関するパラメータ指定情報と、測定項目との対応関係を具体例を用いて示している。
【0098】
図3Aおよび図3Bに示すとおり、パラメータ指定情報として、測定項目ごとに、必須のパラメータ(以下、必須パラメータ)と、精度向上を目的とする補助的なパラメータ(補助パラメータ)とが対応付けられている。同図に示す例では、“○”が必須パラメータを示し、“□”が補助パラメータを示す。
【0099】
これにより、生体測定処理を実行する制御部10の各部(特に、パラメータ選択部22)は、測定項目決定部25によって測定項目が決定されると、その決定された測定項目に基づいて、開始する生体測定処理に必要なパラメータを把握することができる。
【0100】
例えば、測定項目「1:無呼吸度測定」の生体測定処理を実行する場合には、各部は、波形有無、音量、波形長短、波形数のパラメータが必須であり、任意でSpOおよび心拍数のパラメータを使用するということを認識できる。
【0101】
さらに、本実施形態では、生体センサ(特に、音響センサ2)は被験者の体のさまざまな位置に装着することが可能であるため、測定項目に適った精度よい測定を行うために、最適な装着位置が定まっていることが望ましい。そこで、図3Aに示すとおり、装着位置指定情報が、測定項目ごとに対応付けて記憶されている。
【0102】
例えば、図3Aに示す例では、気道に音響センサを装着することを必須とすることによって、気道付近から集音できる呼吸音について、必須パラメータ(波形有無、音量、波形長短、波形数)を得るということを、制御部10の各部が認識できる。
【0103】
さらに、図3Aに示すとおり、必要なパラメータを生体パラメータと外的パラメータとに分けて記憶しておくことにより、情報取得部20は、必要な情報を、生体センサから取得するべきか、情報提供装置7あるいはユーザ入力から取得するべきかを把握することができる。
【0104】
なお、本実施形態では、一例として、あらかじめ利用する生体センサが決まっており(図2)、これらの生体センサと、抽出できるパラメータとの対応関係をあらかじめ以下のように把握しているものとする。
【0105】
音響センサ2a(装着位置は任意、装着位置指定情報によって指定される)の生体信号情報からは、波形有無、音量、周波数、波形長短 、波形数のパラメータが抽出できる。音響センサ2aが左胸に装着されるときは、心拍数のパラメータを併せて抽出できてもよい。
【0106】
音響センサ2b(装着位置は左胸で固定)の生体信号情報からは、心拍数のパラメータが抽出できる。
【0107】
パルスオキシメータ3(装着位置は指先で固定)の生体信号情報からは、SpOのパラメータが抽出できる。さらに、脈拍数のパラメータが抽出されてもよい。
【0108】
脈波センサ4(装着位置は任意、装着位置指定情報によって指定される)の生体信号情報からは、脈波伝播速度、脈拍数のパラメータが抽出できる。
【0109】
体温計5(装着位置は任意、装着位置指定情報によって指定される)の生体信号情報からは、体温、体温変化のパラメータが抽出できる。
【0110】
加速度センサ6(装着位置は任意、装着位置指定情報によって指定される)の生体信号情報からは、体動のパラメータが抽出できる。
【0111】
以上のとおり、音響センサ2a以外のセンサについても、抽出したい目的のパラメータによって、装着位置が一意に定まらない場合には、装着位置指定情報によって最適な装着位置をあらかじめ定めておけばよい。つまり、装着位置指定情報は、図3Aに示す例に限定されない。
【0112】
上記構造によれば、解析装置1の情報取得部20は、測定項目が決定されたときに、その測定に必要なパラメータを把握し、どの生体センサから生体情報信号を取得するべきかを認識することができる。また、生体センサの正しい装着位置を認識し、ユーザに提示することができる。
【0113】
しかし、本発明の解析装置1の構成は、上記に限定されない。パラメータをどの生体センサから取得してくるのかなど、生体センタとパラメータとの対応関係を把握する必要がないユースケースでは、上記対応関係を定めておかずに、どの測定項目にはどのパラメータを使うかという、測定項目とパラメータとの対応関係のみを測定方法記憶部31において定めておいてもよい。これにより、解析装置1の構成を簡素化し、解析装置1の処理負荷を低減することができる。
【0114】
さらに、図3Aに示すとおり、測定方法記憶部31において、測定項目ごとに、その測定項目に関して算出できる指標の種類を対応付けて記憶しておいてもよい。これにより、指標算出部23は、測定項目が決定されたときに、どの指標を算出すべきかを認識することができる。
【0115】
図3Bに示すとおり、本実施形態では、特定の測定項目について利用するパラメータについて、抽出方法を詳細に規定した特殊なパラメータを、測定項目ごとに関連付けて記憶しておいてもよい。
【0116】
例えば、測定項目「3:喘息測定」では、パラメータ「波形有無」を生体測定処理に用いる。しかし、特定周波数100〜200Hzの波形に限定して、その波形有無をパラメータとして抽出する必要がある。
【0117】
このように、多数の測定項目で用いられる汎用的なパラメータ「波形有無」に対して、周波数を限定した特殊なパラメータ「特定周波数100〜200Hzの波形有無」を測定項目「3:喘息測定」に対応付けておく。
【0118】
上記構成によれば、パラメータ選択部22は、測定項目「3:喘息測定」の測定時には、特殊なパラメータ「特定周波数100〜200Hzの波形有無」が必要であると判断することができ、このパラメータが測定方法記憶部31に記憶されていない場合には、パラメータ抽出部21に対して、「特定周波数100〜200Hzの波形有無」を抽出するように要求することができる。
【0119】
パラメータ抽出部21は、図3Aおよび図3Bに挙げられる、必要と想定されるすべてのパラメータを一気に抽出する構成としてもよい。あるいは、汎用的なパラメータおよび特殊なパラメータをともに、パラメータ選択部22の要求に応じて抽出する構成としてもよい。
【0120】
しかしながら、上述のとおり、汎用性の高いパラメータ(図3Aに示すパラメータ)をデフォルトで抽出し、必要なときにパラメータ選択部22からの要求に応じて特殊なパラメータ(図3Bに示すパラメータ)を抽出する構成とすることが好ましい。
【0121】
上記構成によれば、抽出処理が無駄になる可能性が低い汎用的なパラメータについては、パラメータ選択部22がすぐにパラメータ記憶部30から取得することができる状態にしておくことができる。そして一方、特殊なパラメータについては、特定の測定項目でしか使われないので、必要に応じて抽出するため、抽出処理が無駄になることがない。
【0122】
これにより、解析装置1の処理負荷を低減しつつ、処理効率を向上させることが可能となる。
【0123】
〔データフロー〕
図4は、解析装置1が、生体測定処理の開始の指示を受けてから、当該処理の測定結果を出力するまでの、解析装置1における主要部材間のデータの流れを説明する図である。
【0124】
以下では、測定項目「1:無呼吸度測定」が選択されたケースを具体例として挙げて説明する。
【0125】
測定項目決定部25は、入力操作部14を介して生体測定処理の開始の指示を受け付けるとともに、ユーザが選択した測定項目の情報を受け付けて、測定項目を「1:無呼吸度測定」と決定する。測定項目決定部25は、決定した測定項目d1を、パラメータ選択部22と指標算出部23と状態判定部24とに伝達する。
【0126】
パラメータ選択部22は、測定方法記憶部31(図3Aおよび図3B)を参照し、伝達された測定項目d1に基づいて、必要なパラメータを特定し、特定したパラメータ、すなわち、波形(呼吸)有無d2、(呼吸)音量d3、波形(呼吸)長短d4、波形(呼吸)数d5、SpOd6、および、心拍数d7を、パラメータ記憶部30から取得して、指標算出部23に供給する。本実施形態では、(呼吸の)波形有無d2は、図3Bに示すとおり、「10秒以上呼吸が停止する回数」を示す。
このうち、SpOd6および心拍数d7は、任意の補助パラメータであるので、パラメータ記憶部30に記憶されていなければ、指標算出部23に供給されないこともある。
【0127】
指標算出部23は、伝達された測定項目d1に基づいて、指標算出規則記憶部32から、指標算出規則を読み出す。ここでは、無呼吸度算出規則d8を読み出す。無呼吸度算出規則d8には、上述のパラメータd2〜d7を用いて、無呼吸度を算出するためのアルゴリズムが示されている。指標算出部23は、無呼吸度算出規則d8にしたがって、パラメータd2〜d7を用いて、無呼吸度d9を算出する。
【0128】
状態判定部24は、指標算出規則記憶部32から、算出された指標の判定基準情報を読み出す。ここでは、算出された無呼吸度d9の判定基準情報d10を読み出す。判定基準情報d10は、無呼吸度d9に基づいて、被験者の無呼吸に関する状態を判定するための判定基準を示す情報である。状態判定部24は、判定基準情報d10にしたがって、無呼吸度d9に基づいて、被験者の無呼吸に関わる状態または症状が、正常か、要注意か、異常かを判定し、状態判定結果d11を出力する。
【0129】
無呼吸度d9と状態判定結果d11とを含む測定結果は、表示部15に出力され、表示される。これにより、ユーザは、指定した測定項目に係る測定結果を表示部15にて確認することができる。
【0130】
なお、解析装置1が生体センサに内蔵されている場合などにおいて、解析装置1が表示部15を備えていない場合には、無呼吸度d9などの複雑な情報を出力することができない。そこで、このような場合には、解析装置1が発光部を備え、緑、黄、赤など状態判定結果に応じて色分けした光を発光することにより状態判定結果d11を通知してもよい。あるいは、発光部を、点灯、消灯、点滅などのパターンを状態判定結果に応じて使い分ける構成としてもよい。あるいは、音声出力部を備え、音声、あるいは、効果音などを状態判定結果に応じて使い分けることにより、状態判定結果d11を通知してもよい。
【0131】
次に、無呼吸度算出規則d8および判定基準情報d10を記憶する指標算出規則記憶部32のデータ構造について、具体例を挙げてより詳細に説明する。
【0132】
〔指標算出規則記憶部32について〕
図5〜図11は、指標算出規則記憶部32に記憶される指標算出規則および判定基準情報のデータ構造を示す図である。図5〜図11の各図は、図3Aおよび図3Bに示された7つの測定項目それぞれに対応する指標算出規則および判定基準情報の具体例を示している。
【0133】
図5の(a)〜(d)は、無呼吸度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、無呼吸度の判定基準情報の具体例を示す図である。
【0134】
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時、一定以上頻繁に、無呼吸または低呼吸の状態に陥る症状のことである。無呼吸の状態と判断する目安としては、口、鼻の気流が10秒以上停止すること、低呼吸の状態と判断する目安としては、10秒以上換気量が50%以上低下することであると考えられる。
【0135】
このような無呼吸、低呼吸の状態を検出するためには、脳波、眼電図、頤筋筋電図による睡眠ステージ、口・鼻の気流、胸・腹部の動きによる呼吸パターン、パルスオキシメータによる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO)を分析することが考えられる。
【0136】
そこで、本実施形態では、無呼吸度の判定材料として、呼吸の有無(10秒以上呼吸が止まる回数)、呼吸音の音量、呼吸の長短(呼気と吸気の時間的長さ)、単位時間あたりの呼吸数、SpOのパラメータを用いることとした。本実施形態における「無呼吸度」は、値が高いほど、睡眠時無呼吸症候群である可能性が高いことを示す。なお、無呼吸度の判定に用いるパラメータの例は、一例であり、上述した例に限定されるものではない。例えば、さらに、脈拍数のパラメータを用いてもよい。
【0137】
図5の(a)に示すとおり、無呼吸度算出規則には、パラメータ選択部22から得られたそれぞれのパラメータが、正常値、要注意値、異常値のいずれであるかを3段階評価するための対応関係が含まれている。図5の(a)に示す例では、この対応関係をテーブル形式にて表すが、これは一例であって、本発明を限定する意図はない。
【0138】
パラメータごとに、3種類の閾値(IF値)が対応付けて記憶されており、その3種類のIF値は、それぞれ、正常、要注意、異常の3段階の評価結果(THEN値)に関連付けられている。すなわち、パラメータの値が、3つあるIF値のいずれの条件を満たすかによって、そのパラメータのTHEN値が決定する。
【0139】
例えば、パラメータ選択部22から供給された「10秒以上呼吸が停止する回数」を示す波形(呼吸)有無d2のパラメータが、「0回」の値を示す場合には、指標算出部23は、波形(呼吸)有無d2は、「正常」であると評価する(IF d2=0、THEN d2=正常)。同様に、指標算出部23は、供給されたd2〜d7のすべてのパラメータについて3段階評価を行う。
【0140】
なお、テーブルのIF値として格納される閾値は、同図に示す例に限定されず、医学的な根拠や経験に基づいて適宜の値が定められればよい。
【0141】
図5の(b)に示すとおり、無呼吸度算出規則には、3段階評価されたパラメータに評価に応じたスコアを付与するためのスコア情報が含まれている。図5の(b)に示す例では、スコア情報をテーブル形式にて表すが、これは一例であって、本発明を限定する意図はない。
【0142】
図5の(b)に示すスコア情報にしたがって、指標算出部23は、必須パラメータについては、「正常」と評価されたパラメータに0、「要注意」と評価されたパラメータに1、「異常」と評価されたパラメータに2のスコアを付与する。すなわち、本実施形態では、必須パラメータについて無呼吸に関する異常項目が多ければ多いほどスコアの合計が高くなる。補助パラメータについては、「正常」、「要注意」、「異常」のパラメータに対し、それぞれ、0、0、1のスコアを付与する。
【0143】
例えば、波形(呼吸)有無d2のパラメータが「正常」であると評価された場合には、波形(呼吸)有無d2のパラメータは必須であるので、スコア「0」を付与する。
【0144】
図5の(c)に示すとおり、無呼吸度算出規則には、パラメータごとに求められたスコアに対して付与する重み付け情報が含まれていてもよい。図5の(c)に示す例では、重み付け情報をテーブル形式にて表すが、これは一例であって、本発明を限定する意図はない。重み付けは、パラメータごとに対応付けて記憶される。重み付けの数値が大きいということは、そのパラメータが、当該指標を算出する上でより重要な、影響の大きい情報であるということを示す。
【0145】
図5の(c)に示す例では、無呼吸度を算出する上で、「10秒以上呼吸が停止する回数」を示す波形(呼吸)有無d2が、最も考慮されるべき重要な情報であるので、重み付けが「4」と定められている。これに対し、あまり重要でないパラメータ、波形(呼吸)数、SpO、心拍数については、重み付けを付与しない、すなわち、重み付けを「1」と定めてもよい。
【0146】
上述の「0」のスコアが付与された、波形(呼吸)有無d2のパラメータについては、「4」の重み付けを付与して、最終スコアが「0×4=0」となる。指標算出部23は、同様に、すべてのパラメータd2〜d7について、「スコア×重み付け値=最終スコア」を求める。
【0147】
図5の(d)に示すとおり、無呼吸度算出規則には、各パラメータのスコアに基づいて、指標「無呼吸度」を算出するための算出式が含まれている。図5の(d)の算出式は一例であって、本発明を限定する意図はない。
【0148】
図5の(d)に示す算出式にしたがって、指標算出部23は、上記パラメータd2〜d7の最終スコアを合計して、無呼吸度を算出する。
【0149】
さらに、指標算出規則記憶部32には、図5の(e)に示すとおり、指標「無呼吸度」に関して、被験者の状態を判定するための判定基準情報が記憶されている。図5の(e)に示す例では、判定基準情報をテーブル形式にて表すが、これは一例であって、本発明を限定する意図はない。
【0150】
図5の(e)に示すとおり、判定基準情報のテーブルにおいて、算出された無呼吸度の値に応じて、判定すべき状態判定結果が対応付けられている。状態判定部24は、図5の(e)に示す判定基準情報にしたがって、被験者の無呼吸に係る状態を判定する。例えば、無呼吸度が「3」と算出された場合には、状態判定部24は、当該被験者の無呼吸に係る状態は、「正常」であると判定する。
【0151】
なお、判定基準情報のテーブルには、この状態判定結果を表示する方法を規定する情報が対応付けられていてもよい。図5の(e)に示す例では、例えば、状態判定結果「正常」には、表示「緑」が対応付けられている。これは、状態判定結果を緑色の文字で表示したり、緑色のランプで通知したりすることを意味する。このように、状態判定結果が色分けして出力されることにより、ユーザは、より直感的に状態判定結果を理解することができる。
【0152】
図6の(a)〜(d)は、睡眠深度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、睡眠深度の判定基準情報の具体例を示す図である。本実施形態における「睡眠深度」は、値が高いほど、眠りが深いことを示す。図6の(a)〜(e)の各種情報に基づく、睡眠深度の算出手順、および、状態判定手順は、図6の(a)〜(e)に基づく手順と比較して、使用するパラメータや閾値が異なる以外は同様である。したがって、ここでは説明を繰り返さない。ただし、睡眠深度の判定では、異常の有無ではなく、眠りの浅さ、深さの判定が行われる。
【0153】
図7の(a)〜(d)は、喘息重症度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、喘息重症度の判定基準情報の具体例を示す図である。本実施形態における「喘息重症度」は、値が高いほど、喘息の症状が重いことを示す。図7の(a)〜(e)の各種情報に基づく、喘息重症度の算出手順、および、状態判定手順は、図5の(a)〜(e)に基づく手順と比較して、使用するパラメータや閾値が異なる以外は同様である。したがって、ここでは説明を繰り返さない。
【0154】
図8の(a)〜(d)は、心臓活動度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、心臓活動度の判定基準情報の具体例を示す図である。本実施形態における「心臓活動度」は、値が高いほど、心臓の活動が不安定で、異常であることを示す。図8の(a)〜(e)の各種情報に基づく、心臓活動度の算出手順、および、状態判定手順は、図5の(a)〜(e)に基づく手順と比較して、使用するパラメータや閾値が異なる以外は同様である。したがって、ここでは説明を繰り返さない。
【0155】
図9の(a)〜(d)は、消化器活動度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、消化器活動度の判定基準情報の具体例を示す図である。本実施形態における「消化器活動度」は、値が高いほど、消化器の活動が不安定で、異常であることを示す。図9の(a)〜(e)の各種情報に基づく、消化器活動度の算出手順、および、状態判定手順は、図5の(a)〜(e)に基づく手順と比較して、使用するパラメータや閾値が異なる以外は同様である。したがって、ここでは説明を繰り返さない。
【0156】
図10の(a)〜(d)は、循環器活動度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、循環器活動度の判定基準情報の具体例を示す図である。本実施形態における「循環器活動度」は、値が高いほど、循環器の活動が不安定で、異常であることを示す。図10の(a)〜(e)の各種情報に基づく、循環器活動度の算出手順、および、状態判定手順は、図5の(a)〜(e)に基づく手順と比較して、使用するパラメータや閾値が異なる以外は同様である。したがって、ここでは重複する説明を繰り返さない。
【0157】
なお、本実施形態では、循環器活動度を算出する上で、補助の外的パラメータとして、被験者の年齢を用いてもよい。循環器(特に血管)の健康状態は、年齢に大きく左右されるため、被験者の年齢を考慮することにより、被験者の年齢に適した状態判定を行うことができる。
【0158】
例えば、図10の(a)に示す、必須パラメータ「脈波(伝播速度)」のIF値(閾値)を、被験者の年齢に合わせて可変にすることが考えられる。より具体的には、例えば、図10の(a)に示す、正常のIF値「1200cm/s未満」、要注意のIF値「1200cm/s以上1400cm/s未満」、および、異常のIF値「1400cm/s以上」が、それぞれ、「被験者年齢=30歳未満」のIF値であるとすると、「被験者年齢=30歳以上40歳未満」である場合には、同図に示す上記IF値に「100」を加え、「被験者年齢=40歳以上50歳未満」である場合には、同図に示す上記IF値に「200」を加え、以降、被験者年齢が10歳上がるごとにさらに「200」ずつ数値を加算して、閾値を補正することが考えられる。つまり、被験者年齢が51歳の場合、正常のIF値「1600cm/s未満」が適用される。
【0159】
あるいは、例えば、図10の(c)に示すとおり、被験者の年齢に応じて、脈波(伝播速度)のパラメータの重み付け値を変更することにより、より精度よく循環器活動度を算出することができる。
【0160】
さらに、本実施形態では、循環器活動度を算出する場合と同じパラメータを用いて、別の指標「動脈硬化度」を算出してもよい。指標算出規則記憶部32には、動脈硬化度算出規則として、動脈硬化度の算出式が別途記憶されていてもよい。
【0161】
図11の(a)〜(d)は、咳重症度算出規則の具体例を示す図であり、(e)は、咳重症度の判定基準情報の具体例を示す図である。本実施形態における「咳重症度」は、値が高いほど、咳の症状が重く、異常である可能性が高いことを示す。図11の(a)〜(e)の各種情報に基づく、咳重症度の算出手順、および、状態判定手順は、図5の(a)〜(e)に基づく手順と比較して、使用するパラメータや閾値が異なる以外は同様である。したがって、ここでは重複する説明を繰り返さない。
【0162】
なお、本実施形態では、咳重症度を算出する上で、補助の外的パラメータとして、被験者の疾患履歴を用いてもよい。呼吸器系疾患の患者は特徴的な咳(特定の周波数の咳)を発することが多く、元々の呼吸器系疾患による咳の影響は、ここでは差し引かれなければならない。そこで、例えば、図11の(c)に示すとおり、被験者が呼吸器系疾患患者か否かに応じて、周波数のパラメータの重み付け値を変更することにより、より精度よく咳重症度を算出することができる。
【0163】
以上のとおり、指標算出部23は、測定項目に応じて選択されたパラメータを、測定項目に応じた指標算出規則にしたがって処理して指標を算出するので、測定項目に適った、より精度の高い生体測定処理を実施することが可能となる。
【0164】
〔測定結果表示例〕
図12〜図18は、解析装置1が生体測定処理を実行することによって得られた測定結果を、表示部15に表示するときの表示画面の一例を示す図である。
【0165】
図12は、解析装置1が、測定項目「1:無呼吸度測定」について生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示している。
【0166】
図12に示すとおり、測定結果として、少なくとも、指標算出部23が算出した指標(ここでは「無呼吸度d9」)と、状態判定部24が判定した状態判定結果d11とが表示される。無呼吸度d9および状態判定結果d11は、ユーザにとって分かりやすい形式で表示されることが好ましく、文章で表示されてもよいし、さまざまな形式のグラフによって表示されてもよい。例えば、図12に示すように、文章およびレーダーチャート形式で、測定結果を表示することができる。
【0167】
図12に示すレーダーチャートでは、算出された指標を中央上方向の軸にとり、指標の算出に利用したパラメータをその他の方向の軸にとって、中心を0、軸の外側を取り得る値の最大値として、各値に基づいて、軸上に点をプロットする。このとき、各値の3段階評価を分かりやすくするために、「正常」、「要注意」、「異常」の領域を予め当該レーダーチャートにプロットしておいてもよい。
【0168】
算出された指標は、値が小さいほど、すなわち、チャートの中心に近いほど「正常」であることを示すので、中心に最も近い領域Aが「正常」であり、中間の領域Bが「要注意」であり、外側の領域Cが、「異常」であることを示す。
【0169】
しかし、利用するパラメータによっては、中間値が「正常」であり、値が小さすぎても大きすぎても「要注意」または「異常」となる性質のものがある。このようなパラメータについては、中心に最も近い領域Aと、外側の領域Cとが「異常」を表し、中間の領域Bが「正常」を表すものとする。そして、領域Aと領域Bの境界付近、および、領域Aと領域Cとの境界付近が「要注意」を意味する。
【0170】
当然のことながら、各領域の境界位置は、指標の判定基準情報や、各パラメータのIF値によって変化するので、中心から境界位置までの長さは、軸ごとにばらついてもよい。また、指標と各パラメータとをプロットする軸は、すべて同一平面上になくてもよく、表示領域が広ければ、複数のレーダーチャートを作成し表示してもよい。
【0171】
さらに、全国平均値、理想値、同じ被験者の前回測定値などをプロットし、破線Dのように表示して、今回の測定結果(実線)と比較できるようにしてもよい。
【0172】
さらに、情報取得部20、パラメータ選択部22および指標算出部23は、測定方法記憶部31を参照したときに得た各種情報を表示部15に出力してもよい。例えば、図12に示す例では、情報取得部20は、測定項目「無呼吸度測定」の測定で使用した(通信した)生体センサの種別を示す情報120と、生体センサについて、装着位置指定情報によって装着位置が指定されていた場合に、該センサの装着位置を示す情報121とを表示する。パラメータ選択部22は、測定項目「無呼吸度測定」について、必須パラメータとして選択したパラメータの情報122と、補助パラメータとして選択したパラメータの情報123とを表示する。指標算出部23は、測定項目「無呼吸度測定」に対応する指標の情報124を表示する。
【0173】
図13は、解析装置1が、測定項目「2:睡眠状態測定」について生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示している。
【0174】
図14は、解析装置1が、測定項目「3:喘息測定」について生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示している。
【0175】
図15は、解析装置1が、測定項目「4:心臓モニタリング」について生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示している。
【0176】
図16は、解析装置1が、測定項目「5:消化器モニタリング」について生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示している。
【0177】
図17は、解析装置1が、測定項目「6:循環器モニタリング」について生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示している。本実施形態では、解析装置1の指標算出部23は、測定項目「6:循環器モニタリング」と同じパラメータを利用して、指標「動脈硬化度」を算出することができるので、切り替えボタン170を表示し、ユーザ操作に応じて、指標「動脈硬化度」に関するレーダーチャートに表示を切り替えてもよい。
【0178】
図18は、解析装置1が、測定項目「7:咳モニタリング」について生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示している。
【0179】
上記構成によれば、ユーザは、表示部15に表示された情報を確認して、選択した測定項目に係る測定結果を平易に把握することができる。
【0180】
次に、ユーザが測定開始を指示してから、上記のように測定結果が表示されるまでの、解析装置1が実施する生体測定処理に係る一連の工程について説明する。
【0181】
〔生体測定処理フロー〕
図19は、解析装置1が実行する生体測定処理の流れを示すフローチャートである。
【0182】
解析装置1に対して、入力操作部14を介して、被験者の測定を開始する旨の指示が入力されると(S1においてYES)、次に、測定項目決定部25は、「測定項目」の入力を受け付ける(S2)。例えば、ユーザが、測定項目「無呼吸度測定」を選択すると、測定項目決定部25は、開始する生体測定処理の測定項目を、「1:無呼吸度測定」と決定する。
【0183】
次に、情報取得部20は、測定方法記憶部31を参照し、決定された測定項目の測定を行うために必要なすべての生体センサが、アクティブであるか否かを確認する(S3)。上述の例では、図3Aのパラメータ指定情報および装着位置指定情報によれば、測定項目「1:無呼吸度測定」の生体測定処理を実施するためには、気道付近の波形有無、音量、波形長短および波形数が必須の生体パラメータであるということと、SpOおよび心拍数が補助パラメータであるということが分かる。そこで、情報取得部20は、気道付近に装着される音響センサ2a、左胸に装着される音響センサ2b、および、パルスオキシメータ3のうち、少なくとも、音響センサ2aがアクティブであるか否かを確認する。
【0184】
ここで、必須の生体センサが非アクティブである場合(S3においてNO)、情報取得部20は、表示部15を介して、生体センサが非アクティブであって測定不可能であることをユーザに通知することが好ましい(S4)。また、このとき、必要な生体センサの種類と、正しい装着位置(気道付近と左胸)とをユーザに分かり易い形で(例えば、図入りで)通知することがさらに好ましい。
【0185】
必要な生体センサがアクティブであることが確認されると(S3においてYES)、それらの各生体センサから、情報取得部20は、生体信号情報を取得する(S5)。上述の例では、情報取得部20は、少なくとも、音響センサ2aから気道付近の音データと、任意で、音響センサ2bから心音の音データと、パルスオキシメータ3からSpOの測定データとを取得する。
【0186】
さらに、情報取得部20は、情報提供装置7から外部取得情報(測定日の気候、気温、湿度、気圧など)と、入力操作部14を介して手動入力情報(被験者IDまたは被験者名、被験者の年齢、性別など)を必要に応じて取得してもよい(S6)。
【0187】
続いて、パラメータ抽出部21は、取得した生体信号情報から生体パラメータを抽出する(S7)。パラメータ抽出部21は、測定方法記憶部31を参照して、選択された測定項目「1:無呼吸度測定」で利用するパラメータだけを抽出してもよいし、図3Aに列挙されているパラメータのうち、抽出できるパラメータをすべて抽出しておいてもよい。さらに、パラメータ抽出部21は、上記外部取得情報および上記手動入力情報を取得した場合には、それらから外的パラメータを抽出する(S8)。パラメータ抽出部21は、抽出したパラメータをパラメータ記憶部30に記憶する。
【0188】
次に、パラメータ選択部22は、測定方法記憶部31(図3Aおよび図3B)を参照し、決定された測定項目について利用するパラメータをパラメータ記憶部30に記憶されたパラメータの中から選択する(S9)。上述の例では、パラメータ選択部22は、測定項目「1:無呼吸度測定」に対応付けられている、(気道の)波形有無、音量、波形長短、波形数、SpOおよび心拍数のパラメータを選択する。パラメータ選択部22は、必要なパラメータをすべてパラメータ記憶部30から取得できたら(S10においてYES)、それを指標算出部23に供給する(S11)。
【0189】
続いて、指標算出部23は、選択された測定項目に対応する指標算出規則を指標算出規則記憶部32から読み出し(S12)、その指標算出規則にしたがって、測定項目の指標を算出する(S13)。上述の例では、測定項目「1:無呼吸度測定」に対応する「無呼吸度算出規則」(例えば、図5の(a)〜(d))を読み出し、パラメータ選択部22から供給されたパラメータを用いて無呼吸度を算出する。算出された無呼吸度は、測定日や被験者IDなどとともに指標記憶部33に記憶される。
【0190】
さらに、状態判定部24は、算出された指標に基づいて、被験者の状態を判定する(S14)。状態判定部24は、選択された測定項目に対応する判定基準情報にしたがって判定を行う。上述の例では、測定項目「1:無呼吸度測定」に対応する判定基準情報(例えば、図5の(e))にしたがって、状態判定部24は、上記被験者の無呼吸度が、正常か、要注意か、異常かを判定する。
【0191】
指標算出部23は、算出した指標を、状態判定部24は、行った判定の結果を表示部15に出力する。表示部15は、測定結果を表示し、ユーザに提示する(S15)。測定結果とは、解析装置1が実行した、図19に示す生体測定処理の一連の工程の実行結果であり、少なくとも、算出された指標および状態の判定結果を含む。さらに、利用したパラメータの情報やどのような指標を算出したのかなどの付属の情報が測定結果に含まれていてもよい。測定結果の表示例は、図12〜図18に示したとおりである。
【0192】
一方、S10において、パラメータ選択部22は、パラメータ記憶部30に必要なパラメータがそろっていなければ(S10においてNO)、測定方法記憶部31に記憶されているパラメータ指定情報に基づいて、パラメータ抽出部21に対し、必要なパラメータの抽出を指示することが好ましい(S16)。例えば、図3Bのパラメータ指定情報によれば、「無呼吸度測定」には、波形有無に関しては、「10秒以上呼吸が停止する回数」のパラメータが必要になるので、これを抽出するように、パラメータ選択部22がパラメータ抽出部21に対して要求する。パラメータ抽出部21は、指示にしたがってパラメータを抽出し、パラメータ記憶部30に記憶してパラメータ選択部22に応答を返す。この方法によれば、解析装置1を、さまざまな測定項目に関して汎用性の高いパラメータはデフォルトで抽出する一方、特定の測定項目に関する特殊なパラメータは必要に応じて抽出する構成とすることができる。これにより、生体測定処理の処理負荷を低減し、処理効率を向上させることが可能となる。
【0193】
なお、上述の例では、生体信号情報の取得と、パラメータの抽出とを、生体測定処理の開始の指示を受けてから実施する場合について説明したが、パラメータ抽出までの工程、すなわち、S3〜S8の各工程は、開始の指示とは無関係に、事前に(さらには定期的に)実行され、パラメータ記憶部30には常に必要なパラメータが蓄積されている方法でもよい。
【0194】
〔変形例−長期指標推移に基づく判定〕
上述の説明では、生体測定システム100において、解析装置1は、1つの生体測定処理によって1つの指標を算出し、算出した1つの指標に基づいて被験者の状態を判定する構成であった。しかしながら、本発明の解析装置1の構成はこれに限定されない。
【0195】
例えば、解析装置1は、1つの測定項目について、日時を変えて複数回測定を行い(すなわち、生体パラメータを反復して取得し)、指標を複数回算出してもよい。そして、解析装置1は、複数回算出された指標の統計値、または、経時的変化率などを求めることにより、被験者の状態を判定してもよい。この構成によれば、単発の測定による被験者の一時的な状態だけでなく、被験者の状態の長期的な傾向を把握することが可能となり、測定項目に適ったより精度の高い測定を実現することができる。
【0196】
長期的な傾向を計測するために、本発明の解析装置1は、測定方法記憶部31において、測定項目ごとに、対応する指標を繰り返し算出するタイミングを指定する反復測定指示情報を関連付けて記憶している。
【0197】
ユーザがある測定項目を選択して、生体測定処理の開始を指示すると、図1に示す制御部10の各部は、測定方法記憶部31を参照し、測定項目決定部25によって決定された測定項目に対応付けられている反復測定指示情報を読み取り、測定のタイミングを認識する。反復測定指示情報は、例えば、「1日1回のペースで1ヶ月分の指標を算出する」など、定期的に測定する時間間隔や、定期的に測定を行う期間が指定されている。あるいは、測定を行う時間帯がより詳細に定められていてもよい。
【0198】
そして、制御部10の各部は、反復測定指示情報にしたがって、上述した生体測定処理を定期的に実行する。指標算出部23は、例えば、上述の例では、24時間に1回のペースで算出した指標を、被験者IDと測定日とに対応付けて指標記憶部33に31日間蓄積する。
【0199】
反復測定指示情報に定められた期間の指標が指標記憶部33に蓄積されると、状態判定部24は、蓄積された指標に基づいて、指示された測定項目に係る被験者の状態を判定する。上述の例では、1ヶ月分の指標が蓄積されており、状態判定部24は、これらの値を用いて被験者の状態を判定する。このときの指標の処理方法や判定基準情報が、測定項目ごとに指標算出規則記憶部32に記憶されていてもよい。
【0200】
状態判定部24が行う処理としては、例えば、指標の値を縦軸に、時間を横軸にとった2次元のグラフに、指標の値をプロットして指標の推移を分析したり、指標の平均値・最大値・最小値・分散などの統計値を算出したりすることが考えられる。状態判定部24は、例えば、そのようにして得られた分析結果を標準値と比較するなどして、測定項目に係る、被験者の状態の判定(例えば、正常、要注意、異常の判定)を行う。
【0201】
さらに、状態判定部24は、反復測定指示情報にしたがって過去に蓄積されている指標と、それ以降に単発で行われた生体測定処理によって得られた指標とを比較して、当該生体測定処理が実施された時点での被験者の最新の状態を判定してもよい。このように過去の値と比較することによって、現在の被験者の状態を精度よく判定することが可能となる。
【0202】
この場合、例えば、測定方法記憶部31において、過去のどの期間の指標を比較対照に用いるのか、最新の指標とどのように比較を行うのかなどの分析方法が、測定項目ごとに、記憶されていればよい。
【0203】
図20は、被験者の状態の長期的な傾向を測定結果として表示した例を示す図である。
【0204】
図20に示すとおり、表示部15には、状態判定部24によって作成された、上記の2次元のグラフが測定項目ごとに表示されてもよい。これにより、ユーザは、被験者の1ヶ月間の指標の推移を平易に把握することができる。また、1ヶ月間の指標の統計値に基づいて、1ヶ月分の総合的な被験者の状態判定結果を表示してもよい。これにより、ユーザは、被験者の状態の長期的な傾向を平易に把握することができる。
【0205】
なお、図20に示す2次元のグラフは、一例であって、これに限定されない。例えば、表示する横軸(時間)の範囲を必要に応じて変更できるようにしてもよい。例えば、計測期間を「1ヶ月」から「1年間」に変更することにより、1年間蓄積した被験者の指標に基づいて、1年間分の総合的な被験者の状態判定結果を表示することができる。図20に示すとおり、計測期間の選択肢ボタンを表示して、ユーザに選択されるようにすれば、ユーザは簡単な操作で計測期間を切り替えることができる。
【0206】
〔変形例−測定項目の特定〕
上述の説明では、解析装置1の測定項目決定部25は、入力操作部14を介してユーザから指定された測定項目を、これから実行する生体測定処理の目的となる測定項目として決定する構成であった。しかしながら、本発明の解析装置1の構成はこれに限定されない。
【0207】
例えば、アクティブな生体センサがいずれであるのかに応じて、測定項目決定部25が測定項目を特定したり、いくつかの候補に絞り込んでユーザに選択させたりするように、解析装置1を構成することができる。
【0208】
測定項目ごとに必要な生体センサの種別が決まっている。そこで、測定項目決定部25は、情報取得部20を介して、アクティブな生体センサを確認し、それらの生体センサからの生体信号情報を用いて実施できる測定の測定項目を特定する。ここで、測定項目が1つに特定できた場合は、測定項目決定部25は、その測定項目を、これから実行する生体測定処理の測定項目に決定する。一方、複数の測定項目が候補として残っている場合は、測定項目決定部25は、それらの測定項目のみを選択肢として表示部15に表示し、ユーザに選択させる。
【0209】
≪実施形態2≫
本発明の他の実施形態について、図21〜図24に基づいて説明すると以下のとおりである。なお、説明の便宜上、上述の実施形態にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、上述の実施形態と重複する内容については説明を省略する。
【0210】
上述の実施形態では、本発明の生体測定装置(解析装置1)は、図12〜図18の各図に示すとおり、パラメータの情報122およびパラメータの情報123によって、目的の測定項目に対応する指標を算出するためのパラメータの採否をユーザに通知するのみであった。
【0211】
しかし、実際、解析装置1の内部において、各パラメータが上記指標の算出に与える影響の大きさは、パラメータごとにばらついている。例えば、測定項目「無呼吸度測定」に対応する指標「無呼吸度」を算出する際には、図5の(b)および(c)の無呼吸度算出規則に示すとおり、パラメータ「波形有無」が「無呼吸度」の算出に与える影響が最も大きく、一方、パラメータ「心拍数」および「SpO」が「無呼吸度」の算出に与える影響は他のパラメータに比べて小さい。パラメータが「必須」か「補助」かによってスコアが変化するし、各パラメータによって重み付けの値が変化するからである。
【0212】
このように、指標を算出する上で、何のパラメータが重要視されるのかは区々であるので、測定結果をユーザに提示する際には、パラメータの採否だけではなく、指標が算出される際に、利用された各パラメータが与えた影響の大きさ(重要性)をユーザに明示することが好ましい。
【0213】
本実施形態では、解析装置1は、指標ごとに、算出時に利用する各パラメータが与える影響の大きさを、「優先度」などで表現してこれを「パラメータ属性」として管理し、各パラメータの「パラメータ属性」を、測定結果とともに通知する構成である。これにより、本実施形態に係る生体測定装置(解析装置1)は、より豊富な情報を有した測定結果をユーザに提供することが可能となり、ユーザの利便性を向上させるものである。
【0214】
〔解析装置1の構成〕
図21は、本実施形態における解析装置1の要部構成を示すブロック図である。
【0215】
本実施形態にかかる解析装置1は、図1に示す解析装置1と比較して以下の点で異なっている。第1に、記憶部11が、さらに、各パラメータのパラメータ属性を記憶するためのパラメータ属性記憶部34を有している点が異なる。第2に、解析装置1の制御部10が、機能ブロックとして、さらに、パラメータ属性管理部26を有している点が異なる。パラメータ属性管理部26は、パラメータ属性記憶部34に記憶されているパラメータ属性を管理するものである。
【0216】
なお、解析装置1は、心電計8と無線通信し、心電計8から被験者の心電図を取得してもよい。
【0217】
〔パラメータ属性記憶部34について〕
図22は、パラメータ属性記憶部34に記憶される情報のデータ構造を示す図である。
【0218】
本実施形態では、解析装置1のパラメータ属性管理部26は、指標の算出に与える影響の大きさを「パラメータ属性」として管理し、指標ごとの各パラメータのパラメータ属性をパラメータ属性記憶部34に記憶しておく。
【0219】
本実施形態では、パラメータ属性は、いくつかの要素によって構成される。図22に示すとおり、例えば、パラメータ属性は、「優先度」、「区分」、「重み付け」などの要素を含んでいる。さらに、パラメータ属性は、「信頼性」などの要素を含んでいてもよい。なお、図22に示すデータ構造は、一例であり、本発明のパラメータ属性のデータ構造を限定する意図はない。すなわち、指標の算出に与える影響の大きさ(パラメータ属性)は、上述した以外の別の要素によって、表現されてもよい。
【0220】
要素「区分」は、各パラメータを、「必須パラメータ」と「補助パラメータ」とに区別した場合に、いずれの区分に属するのかを示す情報である。例えば、図22に示す例では、測定項目「1:無呼吸度測定」において、指標「無呼吸度」を算出する際、パラメータ「波形有無」の区分は「必須」となっている。これは、指標「無呼吸度」を算出するためには、パラメータ「波形有無」は、必須のパラメータであることを示している。パラメータ属性管理部26は、要素「区分」が「必須」であるパラメータは、指標の算出に与える影響が大きく、「補助」であるパラメータは、指標の算出に与える影響が小さいと認識する。
【0221】
要素「重み付け」は、図5〜11の(c)に示すとおり、指標算出規則を構成する値である。具体的には、指標の算出式において、各々のパラメータについて得られたスコアの乗数となる。すなわち、パラメータ属性管理部26は、パラメータの「重み付け」の値が大きいほど、そのパラメータが指標の算出に与える影響は大きいと認識する。
【0222】
要素「信頼性」は、パラメータの値の確かさを示す情報である。「信頼性」の値が大きいほど、そのパラメータの値が正確である度合いが高いと考えられる。そのため、「信頼性」が高いパラメータが指標の算出に与える影響を大きくして、指標算出の精度を高めるべきであると考えられる。本実施形態では、「信頼性」の値は、予め決定されており固定されているものとする。なお、「信頼性」の値は、例えば、生体センサの精度などによって決定されればよい。例えば、装着環境、生活環境などによってノイズの影響を受け易い音響センサ2から得られるパラメータ「波形有無」、「音量」などについては、「信頼性」を低く見積もり、周囲からの影響が少ないパルスオキシメータ3から得られるパラメータ「SpO」については、「信頼性」を高く見積もることなどが考えられる。あるいは、パラメータ「心拍数」は、音響センサ2と心電計8との2つの生体センサから得られる生体信号情報に基づいて求められているため、より確かな値であることから、「信頼性」を高く見積もることが考えられる。
【0223】
要素「優先度」は、パラメータの指標の算出に与える影響の大きさを、直接的に表した値である。当然「優先度」が高いパラメータほど、指標の算出に与える影響が大きいパラメータであると理解される。パラメータ属性管理部26もこのように認識する。以上のように、パラメータの指標の算出に与える影響の大きさを直接的に要素「優先度」として表現し、ユーザに提示することにより、ユーザは、各パラメータの重要性を直感的に理解することが可能となる。
【0224】
本実施形態では、パラメータ属性管理部26は、要素「優先度」を、「高」、「中」、「低」の3段階で表現する。「優先度;高」は、指標の算出に利用される全パラメータの中で、その指標の算出に与える影響が最も大きい(重要な)パラメータを示し、「優先度:低」は、その指標の算出に与える影響が最も小さい(重要でない)パラメータを示す。
【0225】
また、本実施形態では、パラメータ属性管理部26は、要素「優先度」を、他の要素に基づく総合評価によって決定してもよい。図22に基づいて、指標「無呼吸度」について具体的に説明する。指標「無呼吸度」を算出する際に用いるパラメータの中で、要素「区分」が「必須」であり、要素「重み付け」の値が最も高いパラメータが、最も重要なパラメータであると考えられる。指標「無呼吸度」において、パラメータ「波形有無」がこれに該当する。したがって、パラメータ属性管理部26は、指標「無呼吸度」のパラメータ「波形有無」に対して、「優先度;高」を設定する。また、反対に、要素「区分」が「補助」であり、要素「重み付け」の値が最も低いパラメータが、最も重要でないパラメータであると考えられる。そこで、パラメータ属性管理部26は、指標「無呼吸度」のパラメータ「SpO」、「心拍数」に対して、「優先度;低」を設定する。そして、指標「無呼吸度」のその他のパラメータに「優先度;中」を設定する。なお、「優先度;高」および「優先度;低」のパラメータを一意に定める場合には、パラメータ属性管理部26は、さらに、要素「信頼性」を加味して、1つのパラメータを「優先度;高」または「優先度;低」に設定してもよい。例えば、パラメータ属性管理部26は、より信頼性が低い、パラメータ「SpO」のみを、指標「無呼吸度」における「優先度;低」に設定してもよい。
【0226】
なお、要素「優先度」は、上述の3段階評価に限定されず、ユーザに直感的に理解される形態であれば、別の形態で表現されてもよい。例えば、パラメータ属性管理部26は、重要なパラメータから順に、「1位」、「2位」、・・・と順位を「優先度」として付与してもよい。
【0227】
以上のようにして、パラメータ属性記憶部34に記憶されているパラメータ属性は、パラメータ属性管理部26によって管理され、常に、測定方法記憶部31に記憶されているパラメータ指定情報(図3A、図3B)と、指標算出規則記憶部32に記憶されている指標算出規則(図5〜図11)との間で整合性が保たれている。すなわち、パラメータ属性記憶部34に記憶されている各パラメータの要素「区分」または要素「重み付け」が変更された場合には、パラメータ属性管理部26は、パラメータ属性記憶部34に記憶されているパラメータ属性と整合するように、測定方法記憶部31のパラメータ指定情報、および、指標算出規則記憶部32の指標算出規則を更新する。
【0228】
図23は、本実施形態にかかる解析装置1が生体測定処理を実行することによって得られた測定結果を、表示部15に表示するときの表示画面の一例を示す図である。図23は、一例として、解析装置1が、測定項目「1:無呼吸度測定」について生体測定処理を実行したときに得られた測定結果を表示した例を示している。
【0229】
図23に示す測定結果は、図12に示す測定結果と比較して、以下の情報が付加されている。すなわち、指標「無呼吸度」の算出に利用したパラメータについての情報122および情報123は、パラメータの採否のみでなく、さらに、利用された各パラメータが指標の算出に与えた影響の大きさ(重要性)の情報を含んでいる。図23に示す例では、上記重要性は、一例として、各パラメータの要素「優先度」によってそのまま表現されている。
【0230】
解析装置1が測定項目「1:無呼吸度測定」の測定結果を表示するとき、パラメータ属性管理部26は、指標「無呼吸度」の算出に利用された各パラメータのパラメータ属性(ここでは、要素「優先度」)をパラメータ属性記憶部34から読み出し、図示しない表示制御部に供給する。上記表示制御部は、指標算出部23および状態判定部24から供給された算出結果および判定結果と、上記パラメータ属性とに基づいて、図23に示す測定結果画面を生成し、表示部15に表示する。
【0231】
本発明の解析装置1によれば、パラメータ属性管理部26が、算出時に利用する各パラメータが与える影響の大きさを「優先度」などのパラメータ属性で管理する。そして、指標が算出されたとき、その結果とともに、利用したパラメータの「優先度」を表示する。
【0232】
これにより、ユーザは、測定項目「1:無呼吸度測定」の測定結果を、容易に理解可能な指標である「無呼吸度」という値で得ることができるともに、この指標が算出される過程で、被験者の何のパラメータが重要視されたのかを要素「優先度」などを確認して容易に理解することができる。結果として、本実施形態に係る生体測定装置(解析装置1)は、より豊富な情報を有した測定結果をユーザに提供することが可能となり、ユーザの利便性を向上させるという効果を奏する。
【0233】
〔変形例−算出式の設計〕
上述の各実施形態において、パラメータ属性記憶部34に格納されている、指標ごとのパラメータおよびその各パラメータのパラメータ属性は、予め設定されて記憶されているものである。
【0234】
これに限定されず、パラメータ属性記憶部34に記憶されているパラメータおよびパラメータ属性は、ユーザが任意に設定して記憶させるものであってもよいし、一旦記憶させたパラメータおよびパラメータ属性をユーザが任意に変更できるものであってもよい。
【0235】
図24は、ユーザが算出式を設計するための設計画面の一例を示す図である。図24は、一例として、測定項目「1:無呼吸度測定」について、指標「無呼吸度」を算出するための算出式を設計するための画面を示す。
【0236】
ユーザは、表示部15に表示された設計画面を、入力操作部14を用いて操作する。そして、指標の算出に用いるパラメータを取捨選択したり、各パラメータのパラメータ属性を変更したりして、算出式の設計を行うことができる。図24は設計画面の一具体例であって、本発明の解析装置1の構成を限定する意図はない。
【0237】
図24を参照しながら、設計画面の操作方法を説明する。指標の算出に利用するパラメータの取捨選択は、各パラメータが一覧されているテーブルの行の削除ボタン90および追加ボタン91で行う。ユーザが、追加ボタン91を選択(マウスでクリックするなど)したときは、指標の算出に利用できるパラメータの一覧が表示され、新しいパラメータを容易に追加できるようになっている。算出に利用しないパラメータについては、不要なパラメータの行の削除ボタン90を選択して、利用するパラメータから除外することができる。
【0238】
そして、算出に利用するパラメータについて、ユーザは、各パラメータのパラメータ属性を編集することができる。例えば、ユーザが編集可能な要素のセルには、ドロップダウンフォームを設けることが考えられる。ユーザは、編集したい要素のセルを選択すると、リストボックス92を表示させることができる。リストボックス92には、その要素について設定可能な値が一覧表示される。ユーザは、その要素に設定したい値を選択して、所望の値をその要素に設定することができる。例えば、ユーザが、リストボックス92から「高」の値を選択すると、パラメータ「波形長短」の要素「優先度」は、「中」から「高」に変更される。
【0239】
なお、すべての要素が編集可能である必要は無い。要素「信頼性」は、そのパラメータを導出する生体センサの性質に依存するものであるからユーザが編集できないような構成であってもよい。また、要素「信頼性」は、設計画面において非表示であってもよい。あるいは、ユーザが編集できる要素を「区分」および「重み付け」だけとし、「優先度」は、パラメータ属性管理部26によって、「区分」および「重み付け」(あるいは、さらに「信頼性」)に基づいて、自動で求められる構成であってもよい。あるいは、反対に、ユーザが編集できる要素を「優先度」だけとし、パラメータ属性管理部26が、「優先度」に基づいて、「区分」および「重み付け」を調節する構成であってもよい。
【0240】
編集された後のパラメータおよびパラメータ属性に基づいて、新たに特定される算出式を、図24に示すようにユーザに提示してもよい。具体的には、ユーザが更新ボタン93を選択すると、パラメータ属性管理部26が、編集後のパラメータおよびパラメータ属性に基づいて新しい算出式を組み立てて、所定の領域に表示する。測定項目についてある程度の知識を有するユーザであれば、表示された算出式を確認しながら、より適切なパラメータ、および、パラメータ属性の設定をより容易に行うことができる。
【0241】
「保存して終了」のボタン94が選択されると、パラメータ属性管理部26は、新たに設定された設定されたパラメータおよびパラメータ属性をパラメータ属性記憶部34に記憶して内容を更新する。さらに、パラメータ属性管理部26は、更新後のパラメータ属性記憶部34の内容と整合するように、測定方法記憶部31に記憶されているパラメータ指定情報と、指標算出規則記憶部32に記憶されている指標算出規則とを更新する。
【0242】
≪実施形態3≫
本発明の他の実施形態について、図25に基づいて説明すると以下のとおりである。なお、説明の便宜上、上述の各実施形態にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、上述の各実施形態と重複する内容については説明を省略する。
【0243】
上述の各実施形態では、本発明の生体測定装置(解析装置1)が、生体センサ(2〜6および8)を採用して、具体的には、7つの測定項目、「1:無呼吸度測定」、「2:睡眠状態測定」、「3:喘息測定」、「4:心臓モニタリング」、「5:消化器モニタリング」、「6:循環器モニタリング」および「7:咳モニタリング」を測定することができる例について説明した。上述の各実施形態では、特に、測定項目「4:心臓モニタリング」について、解析装置1は、指標「心臓活動度」を算出し、3段階評価の測定結果を提供する構成であった。
【0244】
本実施形態にかかる解析装置1は、心電計8から取得される心電図に基づいて、測定項目「4:心臓モニタリング」に関し、さらに、詳細な測定を実施することができる構成である。具体的には、被験者の心臓の電気的活動を監視、分析して、様々な種類の心疾患の危険度を測定できる構成である。
【0245】
図25は、測定方法記憶部31に記憶される情報のデータ構造を示す図である。図25に示すとおり、測定方法記憶部31には、解析装置1が測定可能な測定項目ごとに、パラメータ指定情報と、装着位置指定情報と、対応する算出可能指標とが対応付けて記憶されている。
【0246】
パラメータ指定情報は、図3Aおよび図3Bに示すパラメータ指定情報と同様に、指標を算出するのに必要なパラメータを指定する情報である。例えば、解析装置1の指標算出部23が、測定項目「4−1:心疾患A」について、指標「心疾患A危険度」を算出する場合、指標算出部23が参照すべきパラメータは、「心拍数」、「RR間隔」、「PQ時間」、および、「P波高さ/幅」となる。これらの心臓に関する生体パラメータは、心電計8から供給される心電図より得られる生体パラメータである。
【0247】
つまり、測定項目決定部25が、目的の測定項目が、測定項目「4−1:心疾患A」であると決定した場合には、パラメータ選択部22は、上記パラメータ指定情報に基づいて、「心拍数」、「RR間隔」、「PQ時間」、および、「P波高さ/幅」を利用するパラメータとしてパラメータ記憶部30から選択する。
【0248】
なお、心電計8の各電極の装着位置が測定項目(診断したい心疾患)に応じて異なる場合には、測定項目ごとに装着位置指定情報を記憶しておいてもよい。本実施形態では、装着位置指定情報は、心電計8の各電極の装着位置パターン、つまり、誘導のタイプを特定する。これにより、解析装置1は、誘導のタイプ(電極装着位置のパターン)について、その異同を識別して、誘導タイプと紐付けて心電図を管理、分析し、目的の心疾患の危険度について、より精度の高い判定を行うことが可能となる。
【0249】
本実施形態では、指標算出規則記憶部32には、図示しないが、測定項目に対応する指標「心疾患A危険度」、「心疾患B危険度」、・・・ごとに、指標算出規則が記憶されている。
【0250】
指標算出部23は、指標算出規則記憶部32に記憶されている、目的の危険度を算出するための指標算出規則を読み出し、パラメータ選択部22によって選択された心電図から得られた生体パラメータを利用して指標(心疾患危険度)を算出する。
【0251】
状態判定部24は、算出された指標に基づいて、被験者の心疾患の危険度を評価し、その測定結果を表示部15に出力する。本実施形態においても、パラメータ属性管理部26は、利用したパラメータごとの優先度を上記測定結果とともに表示部15に表示してもよい。
【0252】
〔補足〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0253】
最後に、解析装置1の各ブロック、特に、情報取得部20、パラメータ抽出部21、パラメータ選択部22、指標算出部23、状態判定部24、測定項目決定部25、および、パラメータ属性管理部26は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0254】
すなわち、解析装置1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである解析装置1の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記解析装置1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0255】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0256】
また、解析装置1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0257】
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
【0258】
すなわち、本発明は、ユーザの身体情報を計測する身体情報計測手段と、前記計測手段(生体センサ2〜6、8)に対応する属性情報(計測対象、計測情報、計測手段の情報、計測手段の位置情報など)に基づいて、計測対象(測定項目)に対する指標を導出する導出手段を備えた身体情報測定装置である。
【0259】
また、上記身体情報測定装置において、前記属性情報(パラメータ)は、計測情報(身体情報)、計測手段の情報、装着位置情報を含むことが好ましい。
【0260】
また、前記属性情報は、前記計測対象に基づいて選択されるものである。
【0261】
また、前記属性情報は、前記指標の精度を向上させるための補助属性情報(補助パラメータ)を含むことが好ましい。
【0262】
また、前記身体情報測定装置は、前記計測対象に基づいて、前記属性情報(必須パラメータ)と前記補助属性情報を選択することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明は、被験者の状態を精度高く測定することができるため、医療機関における患者のモニタリング装置、または家庭における自己診断用の健康機器などに適用できる。
【符号の説明】
【0264】
1 解析装置(生体測定装置)
2a 音響センサ(生体センサ)
2b 音響センサ(生体センサ)
3 パルスオキシメータ(生体センサ)
4 脈波センサ(生体センサ)
5 体温計(生体センサ)
6 加速度センサ(生体センサ)
7 情報提供装置
8 心電計(生体センサ)
10 制御部
11 記憶部
12 無線通信部(通信部)
13 通信部(通信部)
14 入力操作部
15 表示部
20 情報取得部
21 パラメータ抽出部
22 パラメータ選択部
23 指標算出部(測定結果導出手段)
24 状態判定部(状態評価手段)
25 測定項目決定部
26 パラメータ属性管理部(パラメータ属性管理手段)
30 パラメータ記憶部
31 測定方法記憶部
32 指標算出規則記憶部
33 指標記憶部
34 パラメータ属性記憶部
100 生体測定システム
d1 測定項目
d2 波形有無
d3 音量
d4 波形長短
d5 波形数
d7 心拍数
d8 無呼吸度算出規則
d9 無呼吸度
d10 判定基準情報
d11 状態判定結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から取得された生体信号情報を用いて、生体の状態を測定する生体測定装置であって、
上記生体信号情報に基づいて得られる生体パラメータを少なくとも含む1以上のパラメータを用いて、生体の状態を示す測定結果情報を導出する測定結果導出手段と、
自装置が測定可能な測定項目と、該測定項目の測定に用いるパラメータを指定するパラメータ指定情報とを対応付けて記憶する測定方法記憶部とを備え、
上記測定結果導出手段は、
測定項目に対応する上記パラメータ指定情報によって指定されたパラメータを用いて、該測定項目の測定結果情報を導出することを特徴とする生体測定装置。
【請求項2】
上記測定結果導出手段は、
上記パラメータ指定情報によって指定された1以上のパラメータから、上記測定項目に係る生体の状態を示す指標を算出することを特徴とする請求項1に記載の生体測定装置。
【請求項3】
上記1以上のパラメータを用いて上記測定項目に対応する指標を算出するための指標算出規則を、指標ごとに記憶する指標算出規則記憶部を備え、
上記指標算出規則は、各パラメータが上記指標の算出に与える影響の大きさに基づいて定められた、各パラメータに掛ける重み付けの情報を含み、
上記測定結果導出手段は、
上記指標算出規則に従って、上記1以上のパラメータのそれぞれに定められた重み付けを付加して上記指標を算出することを特徴とする請求項2に記載の生体測定装置。
【請求項4】
各パラメータが上記指標の算出に与える影響の大きさを示すパラメータ属性を、上記指標ごとかつ上記パラメータごとに記憶するパラメータ属性記憶部を備え、
上記指標算出規則に含まれる上記重み付けは、上記パラメータ属性が有するすべてまたは一部の情報と相関することを特徴とする請求項3に記載の生体測定装置。
【請求項5】
当該生体測定装置に対してユーザから入力された、上記パラメータ属性を変更する指示にしたがって、上記パラメータ属性記憶部に記憶されたパラメータ属性を変更するパラメータ属性管理手段を備え、
上記パラメータ属性管理手段は、
上記パラメータ属性記憶部に記憶されたパラメータ属性の変更に伴い、上記指標算出規則に含まれる上記重み付けを変更することを特徴とする請求項4に記載の生体測定装置。
【請求項6】
上記測定方法記憶部は、さらに、
上記測定項目ごとに、上記指標を繰り返し算出するタイミングを指定する反復測定指示情報を記憶し、
上記測定結果導出手段は、
上記反復測定指示情報が指定するタイミングにしたがって、反復して取得された生体信号情報に基づいて得られた生体パラメータを用いて指標を反復して算出することを特徴とする請求項2から5までのいずれか1項に記載の生体測定装置。
【請求項7】
上記測定結果導出手段によって反復して算出された指標に基づいて、測定項目に係る生体の健康状態を評価する状態評価手段を備えていることを特徴とする請求項6に記載の生体測定装置。
【請求項8】
上記状態評価手段は、
上記測定結果導出手段によって所定の時点で算出された指標を、上記測定結果導出手段によって反復して算出された複数の指標と比較することにより、生体の上記所定の時点における健康状態を評価することを特徴とする請求項7に記載の生体測定装置。
【請求項9】
上記測定方法記憶部は、
上記パラメータ指定情報におけるパラメータを、測定に必須のパラメータと、測定に用いることが好ましい補助のパラメータとに区別して記憶することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の生体測定装置。
【請求項10】
上記パラメータには、上記生体の生理状態を反映した上記生体パラメータと、上記生体の体外の環境条件を反映した外的パラメータとがあり、
上記測定方法記憶部は、
上記パラメータ指定情報におけるパラメータを、上記生体パラメータと、上記外的パラメータとに区別して記憶することを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の生体測定装置。
【請求項11】
上記外的パラメータは、
上記生体から上記生体信号情報を取得する生体センサの仕様情報、上記生体センサの設置位置情報、上記生体に関する被検体情報、および、上記生体が置かれた測定環境に関する環境情報の少なくとも1つを含み、
上記測定方法記憶部は、
1以上の上記生体パラメータと1以上の上記外的パラメータとの組み合わせを上記パラメータ指定情報として上記測定項目に対応付けて記憶することを特徴とする請求項10に記載の生体測定装置。
【請求項12】
上記生体パラメータには、生体の体内で生じる変化を示すパラメータと、生体の体外に現れる変化を示すパラメータとが含まれることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の生体測定装置。
【請求項13】
上記測定結果導出手段が用いる、1つ以上の上記生体パラメータは、1つの生体信号情報の分析により得られることを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の生体測定装置。
【請求項14】
上記測定結果導出手段が用いる、1つ以上の上記生体パラメータは、複数の生体信号情報の分析により得られることを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の生体測定装置。
【請求項15】
上記生体から上記生体信号情報を取得する生体センサと通信する通信部を備えていることを特徴とする請求項1から14までのいずれか1項に記載の生体測定装置。
【請求項16】
当該生体測定装置は、上記生体から上記生体信号情報を取得する生体センサに内蔵されていることを特徴とする請求項1から14までのいずれか1項に記載の生体測定装置。
【請求項17】
生体から取得された生体信号情報を用いて、生体の状態を測定する生体測定装置における生体測定方法であって、
上記生体測定装置には、該生体測定装置が測定可能な測定項目と、該測定項目の測定に用いる1以上のパラメータを指定するパラメータ指定情報とが対応付けて記憶されており、該パラメータ指定情報には、上記生体信号情報に基づいて得られる生体パラメータが少なくとも1つ指定されており、
測定項目に対応する上記パラメータ指定情報によって指定されたパラメータを特定するステップと、
上記特定するステップにて特定されたパラメータを用いて、上記測定項目に係る生体の状態を示す測定結果情報を導出するステップとを含むことを特徴とする生体測定方法。
【請求項18】
コンピュータを、請求項1から16までのいずれか1項に記載の生体測定装置の各手段として機能させるための制御プログラム。
【請求項19】
請求項18に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−45373(P2012−45373A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144822(P2011−144822)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】