説明

生分解性ポリマー組成物

本発明は、以下の成分(a)〜(f)及び/又は成分間の反応から形成される生成物を含む生分解性ポリマー組成物に関する:(a)1以上の生分解性ポリエステル;(b)多糖;(c)ペンダントカルボン酸基を有するポリマー;(d)エステル交換触媒;(e)ポリエポキシド;及び(f)脂肪酸ナトリウム塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には生分解性ポリマー組成物に関し、特に、本発明は多糖を含む生分解性ポリマー組成物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者廃棄物の処分は、多くの工業化国で重要な問題になっている。例えば、ヨーロッパおよび日本のような所では、埋立てに利用できる残された場所は比較的少ない。かなりの分量の消費者廃棄物がポリマー材料からなっており、埋め立てられるこのようなポリマー廃棄物を減らすためにポリマーリサイクル戦略を導入するための強調的な努力がなされてきた。
【0003】
しかしながら、ガラス、木材および金属などの他の材料と異なり、ポリマーのリサイクルは問題となり得る。例えば、ポリマーリサイクル技術は、典型的には、ポリマーを、それらの化学組成に従って分けることを必要とする。特に、様々な市販のポリマーの多様な系列のために、廃棄物の流れからポリマー材料をこのように分離することは、困難たり得る。さらに、多くのポリマーリサイクル技術は、ポリマーの物理的および機械的特性を低下させ得る溶融処理段階を含む。その結果、リサイクルされたポリマーはより劣る特性を有する傾向があり、このため、それらが採用され得る用途範囲が限定され得る。
【0004】
廃棄ポリマー材料のリサイクルに関連する問題とは別に、現在使用されている大部分のポリマーは石油に基づく生成物由来であるので、それらの長期間にわたる製造は持続可能でない。
【0005】
これらの問題に対応して、少なくとも一部は再生可能資源を用いて製造できる生分解性ポリマーの開発に向けられた研究が著しく増加している。従来のポリマーと異なり、生分解性ポリマーは一層容易に微生物の作用により分解されて、環境問題を、あるとしても、わずかしか生じない低分子量生成物を生成することができる。さらに、生分解の作用により、廃棄物の流れにおいてこのようなポリマーによって占められる嵩は、かなり低減される。
【0006】
生分解性ポリマーの分野における今日までの研究の多くは、多糖類などの天然に産するバイオポリマーを利用することに集中している。おそらく、この点で最も広く研究された多糖はデンプンである。デンプンは、容易に入手でき比較的安価な再生可能資源(すなわち、植物の産物)由来であるという点で、特に適切なバイオポリマーである。
【0007】
生分解性ポリマーの調製において、多糖は、典型的には、それを溶融混合することにより利用されるか、又はそれがポリエステル等の適切な生分解性熱可塑性ポリマーを用いて変性された形態のものである。例えば、生分解性ポリマー組成物は、ポリエステルをデンプン、化学的に変性されたデンプン及び/又は熱可塑性デンプン(TPS − デンプンをグリセロール等の可塑剤と溶融混合することにより形成される)と溶融混合することにより調製されうる。しかしながら、デンプン等の多糖は、典型的にそれと溶融混合される熱可塑性ポリマーに比べて、非常に親水性である。したがって、多糖と、他の熱可塑性ポリマーとの溶融混合は、典型的には、高い界面張力を有する多相形態を形成する結果となり、それは得られるポリマー組成物の物理的及び機械的特性によくない影響を与えうる。
【0008】
多糖を含む生分解性ポリマー組成物の物理的及び機械的特性を改善するために、かなりの研究が費やされてきた。例えば、ポリエステルが多糖と溶融混合される際に起こりうる相分離の程度を軽減するため、相の相溶化剤が用いられてきた。
【0009】
多糖を含む生分解性ポリマー組成物の物理的及び機械的特性において進展があったにもかかわらず、そのようなポリマー組成物は、一般的には、依然、石油由来ポリマーに比べて劣る物理的及び機械的特性を有するとされている。
【0010】
さらに、そのようなポリマー組成物はまた、処理時、特にそれらの製品(例えばフィルム又はシート)への変換時の、貧弱な処理時の挙動に苦しむ傾向がある。例えば、慣用的なポリエステルデンプンポリマー組成物は、典型的には、インフレーションフィルムの製造において貧弱な処理時の挙動を示す。特に、ポリマー組成物は、バブルの不安定、過剰なフィルムのブロッキング(即ち自己接着)、ポリマー溶融物のせん断感受性、ポリマー溶融物の熱劣化、揮発性物質の発生、貧弱な溶融強度、ポリマー溶融物の粘着性、及び狭い処理ウィンドウとなりがちである。そのような処理の問題は、一般的には、廃棄率を増加させ生産量を低下させる。
【0011】
そのような処理の問題に対処するための試みがなされてきた。例えば、より遅く穏やかな処理技術を適用し得、また、特殊な処理設備が開発されてきた。しかしながら、そのような方策は、スループットを低下させ、及び/又は製造処理のコストを追加する。
【0012】
したがって、多糖を含み、既存の組成物及び/又はそれらの製造方法に関連する1以上の欠点又は短所に対処又は緩和する新しい生分解性ポリマー組成物を開発するか、又は少なくともそのような組成物及びそれらの製造方法の有用な代替物を提供する余地が残されている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、以下の成分(a)〜(f)及び/又は成分間の反応から形成される生成物を含む生分解性ポリマー組成物を提供する:(a)1以上の生分解性ポリエステル;(b)多糖;(c)ペンダントカルボン酸基を有するポリマー;(d)エステル交換触媒;(e)ポリエポキシド;及び(f)脂肪酸ナトリウム塩。
【0014】
本発明によるポリマー組成物は、優れた生分解性並びに物理的及び機械的特性を示すのみならず、慣用の多糖を含む生分解性ポリマー組成物に比べて改善された処理の挙動をも示すことが見出された。
【0015】
本発明はまた、生分解性ポリマー組成物の調製方法を提供し、前記方法は、マスターバッチ、及び1以上の生分解性ポリエステル及びポリエポキシドを含む構成要素(A)を溶融混合することを含み、ここでマスターバッチは、1以上の生分解性ポリエステル、多糖、ペンダントカルボン酸基を有するポリマー、及びエステル交換触媒を含む構成要素(B)を溶融混合することにより形成されたものであり、ここで構成要素(A)及び/又は(B)は脂肪酸ナトリウム塩をさらに含む。
【0016】
本発明の方法のある態様において、マスターバッチは、唯一の多糖の供給源を提供し、それが他の構成要素と溶融混合され、生分解性ポリマー組成物を形成する。
【0017】
まず構成要素(B)を溶融混合することによりマスターバッチを調製し、続いてマスターバッチを構成要素(A)と溶融混合することにより、本発明による方法は、生分解性ポリマー組成物であってその構成成分の間の優れた相溶性を示すものを提供すると考えられる。
【0018】
理論に限定されることを望むものではないが、ペンダントカルボン酸基を有するポリマーが、マスターバッチの調製の間、多糖と生分解性ポリエステルとの間のエステル交換を容易にすると考えられる。マスターバッチ内のそのような成分は、ひいては、マスターバッチが構成要素(A)と溶融混合される際、相溶化剤として機能し、多相形態形成を低減すると考えられる。得られる生分解性ポリマー組成物の多相形態の低減は、組成物の優れた物理的及び機械的特性に貢献すると考えられる。
【0019】
理論に限定されることを望むものではないが、ポリエポキシド及び脂肪酸ナトリウム塩の使用は、物理的及び機械的特性のさらなる増加、及び/又は組成物の処理挙動における改善を促進すると考えられる。特に、ポリエポキシドは、溶融混合の間に反応し、それにより、溶融物中に存在する2以上のポリマー鎖をカップリングさせ、それにより組成物におけるポリマーの有効分子量を増加させると考えられる。脂肪酸ナトリウム塩は、ポリマー組成物から形成されるフィルム等の、処理された製品における実質的に均一な核生成及びスフェルライト形成を容易にすると考えられる。
【0020】
そのようなポリマー組成物における変換は、ひいては、ポリマー組成物の物理的及び機械的特性、及びその処理挙動の両方を増強すると考えられる。
【0021】
本発明によるポリマー組成物の優れた特性は、比較的高い多糖含量を有する組成物を用いて、有利に得ることができる。本発明のさらなる特徴は、以下に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によるポリマー組成物は生分解性である。当業者は、「生分解性」という用語が普遍的な定義をもたないことを理解するであろう。不確かさを避けるために、「ポリマー」、「ポリマー組成物」、または「多糖」および「ポリエステル」などの特定のポリマー材料に関連して本明細書において用いられる「生分解性」という用語は、EN 13432又はASTM 6400に特定される生分解性基準に適合する材料を表すものとする。即ち、コンポスト環境に置かれた時に、12週間以内にその90%が平均の大きさ2mm未満の粒子に崩壊し、そして、6ヶ月後にASTM 6400の場合その少なくとも60%が、又はEN13432の場合その少なくとも90%が、二酸化炭素及び/又は水に分解しているポリマー組成物は、生分解性であるとされる。ある態様において、本発明による生分解性ポリマー組成物は、EN 13432に規定されるより厳しい生分解性基準に適合するであろう。
【0023】
本発明において、組み合わされて生分解性ポリマー組成物をなす個々の成分は、それら自体としては、EN13432又はASTM6400において特定される生分解性基準に、適合してもしなくてもよい。しかしながら、少なくともいくつかの成分が、その基準に適合しなければならないこと、及び、構成要素は、組み合わされて、その基準に適合する本発明の組成物を提供することが、理解されるであろう。ある成分がかかる基準に適合しない場合、その成分は、組成物が全体として基準に適合することを妨げない量で用いられるであろう。
【0024】
本発明による生分解性ポリマー組成物は、成分(a)〜(f)及び/又は成分間の反応から形成される生成物を含む。以下により詳細に検討される通り、ポリマー組成物は、一般的には、溶融混合された生成物の形態で提供されるであろう。溶融混合された生成物の形成の過程で、成分(a)〜(f)の1以上が、化学反応を受け、それにより、反応生成物を形成すると考えられる。そのような反応生成物を明確に定義するのは困難たり得、従って、最も適切なそれらの呼び方は、単に「反応生成物」と呼ぶことであることを、当業者は、理解するであろう。例えば、ポリエポキシドは、1以上の生分解性ポリエステル(a)と反応し、その鎖カップリングを促進し、それによりポリエステルの分子量を有効に延長する。組成物内の全ての成分が反応を受け得るとは限らないので、組成物は、もとの成分及び成分の反応性生物の混合物を含みうる。
【0025】
本発明に用いうるポリエステルについては、生分解性である限り、特に限定は無い。適切な生分解性ポリエステルには、これらに限らないが、Union CarbideによってTone(商標)(例えば、Tone P−300、P−700、P−767およびP−787、それぞれ、約10,000、40,000、43,000および80,000の重量平均分子量を有する)の商用名で販売されているポリカプロラクトン(PCL)、または、PerstorfによってCAPA 6800およびCAPA FB100(それぞれ、80,000および100,000ダルトンの分子量を有する)の商用名で販売されているもの;CargillによってNatureworks(商標)PLAの商用名で販売されているポリ乳酸(PLA);Biomer(ドイツ)によってBiocycle(商標)またはBiomer(商標)の商用名で販売されているポリヒドロキシブチレート(PHB);昭和高分子(株)によってBionolle(商標)の商用名で販売されているポリエチレンサクシネート(PES)およびポリブチレンサクシネート(PBS)(例えば、Bionolle(商標)1001(PBS)およびBionelle(商標)6000(PES));SK Chemicals (韓国)からSkygreen(商標)SG 100の商用名で販売されているポリブチレンアジペート(PBA);ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)(PBAT)脂肪族/芳香族コポリエステル、例えば、BASF(ドイツ)によるEcoflex(商標)、またはIre Chemical Ltd(ソウル)によるEnPOL(商標)G8060およびEnPOL(商標)8000;Metabolix Inc.(米国)によるポリ(ヒドロキシブチレートバレレート)(PHBV);Eastman Chemicalsによって供給されるセルロースアセテートブチレート(CAB)およびセルロースアセテートプロピオネート(CAP);あるいはこれらの組合せが挙げられる。
【0026】
生分解性ポリマーは、一般的に、約5g/10分未満(190℃、2.16kgにて)のメルトフローインデックス(MFI)を有するであろう。例えば、MFIは、約4未満、約3未満又は約2g/10分未満となりうる(190℃、2.16kgにて)。
【0027】
本明細書で言及されるMFI値は、ASTM D 1238に従い、温度190℃において、ラム荷重2.16kgで決定されるものである。
【0028】
本発明で用いられる多糖は、溶融混合に供しうる多糖のいずれであってもよい。多糖は、一般的には、約1wt%未満、例えば約0.5wt%未満の含水量を有するであろう。適切な多糖は、デンプン、グリコーゲン、キトサン、セルロース及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0029】
本発明による使用に好ましい多糖はデンプンである。デンプンは、それが比較的安価であり、それが再生可能資源に由来し、それが容易に入手できるという点で、特に都合の良い多糖である。デンプンは、主として植物の種子、果実、塊茎、根茎及び茎の髄に見出され、基本的に、1−4炭素位のグルコシド結合によって連結された繰り返しグルコース基から作られるポリマーである。デンプンは、2つのタイプのα−D−グルコースポリマー:分子量約1×10の実質的に線状のポリマーであるアミロース;及び1×10オーダーの非常に大きな分子量を有する高度に分岐したポリマーであるアミロペクチンからなる。それぞれの繰り返しグルコース単位は、典型的には3つの有利ヒドロキシル基を有し、それにより、ポリマーに親水性の特性及び反応性の官能基を提供する。多くのデンプンは、20〜30%のアミロース及び70〜80%のアミロペクチンを含む。しかしながら、デンプンの起源に応じて、アミロースとアミロペクチンとの比は顕著に変わりうる。例えば、いくつかのトウモロコシ交配種は、100%アミロペクチンのデンプン(ワキシー(waxy)トウモロコシデンプン)又は50〜95%の範囲の漸進的に高くなるアミロース含量のデンプンを提供する。デンプンは、通常、約15wt%の含水量を有する。しかしながら、デンプンは、乾燥し、その含水量を1%未満に低減しうる。
【0030】
デンプンは、典型的には約15〜45%の範囲の結晶度を有する小さな顆粒として存在する。顆粒のサイズは、デンプンの起源に応じて変わり得る。例えば、トウモロコシデンプンは、典型的には約5〜40μmの範囲の粒子直径を有し、一方、ジャガイモデンプンは、典型的には約50〜100μmの範囲の粒子直径を有する。この「天然」の形態では、デンプンは溶融処理するのが困難であり得る。デンプンの溶融処理性を改善するために、デンプンは、当技術分野においてよく知られた手段によってTPSに変換され得る。こうして、TPSは、本発明により多糖として使用され得る。例えば、天然デンプンは、1以上の可塑剤、例えば、水、グリセロール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、クエン酸トリエチル(TEC)、ソルビトール、他の低分子量ポリエーテル化合物、及びこれらの組み合わせと溶融処理され得る。
【0031】
水は、TPSの製造のためには、優れた可塑剤である。しかしながら、その比較的低い沸点のため、TPS中の約1wt%超の水の存在は、溶融混合中の不所望な程度の水の揮発を引き起こし得る。さらに、過剰量の水の存在は、マスターバッチ又は生分解性ポリマー組成物の調製に際して、不所望な程度のポリエステル加水分解を起こしうる。
【0032】
一つの態様において、TPSの製造に用いられる可塑剤は、グリセロール及び/又はソルビトールを含む。
【0033】
可塑剤は、典型的には、可塑剤及び天然のデンプンの全質量に対して約5wt%から約50wt%の範囲の量で、例えば、約10wt%から約40wt%の範囲の量で、又は約15wt%から約40wt%の範囲の量で用いられる。
【0034】
グリセロール及びソルビトールの混合物の可塑剤が用いられる場合、それらは、重量比で約2:1から約3:1の範囲で存在することが好ましい。
【0035】
可塑剤が、本発明の生分解性ポリマー組成物中に存在する場合、それは、それ自体でEN 13432又はASTM 6400に特定される生分解性基準に適合してもよく、しなくてもよい。しかしながら、それは、いずれにせよ、本発明による生分解性ポリマー組成物がそのような基準に適合することを妨げない量で用いられるであろう。
【0036】
化学的に変性されたデンプンもまた、本発明により多糖として使用されうる。化学的に変性されたデンプンには、これらに限られないが、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、架橋デンプンまたはこのような化学変性の組合せ(例えば、エーテル化およびエステル化デンプン)が含まれる。典型的には、変性デンプンは、ポリマーのヒドロキシル基を1以上の試薬と反応させることにより調製される。反応の度合い(しばしば、置換度(DS)と呼ばれる)により、対応する天然デンプンに比べて、変性デンプンの物理化学的性質はかなり変わり得る。DSは天然デンプンで0と指定され、完全に置換された変性デンプンでは3までの範囲となり得る。置換基が疎水性の特性を有する場合、3に近いDSは、特性が比較的疎水性である変性デンプンを与え得る。このような変性デンプンは、天然デンプンに比べて、より容易に生分解性ポリエステルと溶融ブレンドできる。
【0037】
化学変性デンプンはまた、それを、本明細書において前に記載した可塑剤と溶融混合することによって、TPSに変換され得る。この場合、使用される可塑剤の前記の量は、変性デンプンの全質量に対するものとなるであろう。
【0038】
適切なエーテル化デンプンには、これらに限らないが、エチルおよび/またはプロピル基により置換されたものが含まれる。適切なエステル化デンプンには、これらに限らないが、アセチル、プロパノイルおよび/またはブタノイル基により置換されたものが含まれる。
【0039】
エーテル化デンプンは、当技術分野においてよく知られた技術、例えばデンプンを適切なアルキレンオキシドと反応させること、を用いて調製され得る。エステル化デンプンもまた、当技術分野においてよく知られた技術、例えば、デンプンを適切な無水物、カルボン酸または酸塩化物の試薬と反応させること、を用いて調製され得る。
【0040】
デンプンが多糖として用いられる場合、それは、その天然の形態、TPSの形態、化学変性デンプンであり得、あるいは、このようなデンプンの組合せが使用され得る。全ての場合において、デンプンの含水量は約1wt%未満、好ましくは約0.5wt%未満であることが好ましい。
【0041】
勿論、マスターバッチを調製するために用いられる溶融混合プロセスの間に、TPSを形成することもまた可能となるであろう。例えば、マスターバッチの製造方法は、天然デンプンおよび/または化学変性デンプン、可塑剤、生分解性ポリエステル、ペンダントカルボン酸基を有するポリマー、エステル交換触媒、及び任意に脂肪酸ナトリウム塩を溶融混合することを含み得る。
【0042】
TPSがマスターバッチの調製に用いられる、および/または、マスターバッチの調製において可塑剤自体がTPSをその場で形成するために用いられる場合、溶融混合プロセスの間の可塑剤の存在は、多糖の高度に非晶質の形態もしくは構造を破壊された形態の形成および/または保持をさらに促進すると考えられる。
【0043】
適切なデンプン材料の例としては、これらに限らないが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、ダイズデンプン、タピオカデンプン、高アミロースデンプンまたはこれらの組合せが挙げられる。
【0044】
ある態様において、デンプンはトウモロコシデンプンであり、他の態様において、トウモロコシデンプンは、Shanghai Denaturalization Starch Company(上海)によって供給されるもの(DS>0.08%、湿分含量<14%)などのトウモロコシデンプンアセテートである。
【0045】
組成物の多糖成分は、それ自体でEN 13432又はASTM 6400で特定される生分解性基準に適合してもよく、しなくてもよい。しかしながら、それは、いずれにせよ、本発明による生分解性ポリマー組成物がそのような基準に適合することを妨げない量で用いられるであろう。
【0046】
本明細書では、「ペンダントカルボン酸基」を有する生分解性ポリマーと言えば、カルボン酸基(即ち−COOH)がポリマーのポリマー骨格に沿って置換基として存在することを意味するものとする。酸基は、ポリマー骨格に直接結び付いているか、あるいは、例えばアルキレン基(例えばC〜Cアルキレン)などのスペーサー基によって骨格に結び付いていることもある。
【0047】
ある態様において、ペンダントカルボン酸基を有するポリマーは生分解性である。組成物のこのポリマー成分は、それ自体でEN 13432又はASTM 6400で特定される生分解性基準に適合してもよく、しなくてもよい。しかしながら、それは、いずれにせよ、本発明による生分解性ポリマー組成物がそのような基準に適合することを妨げない量で用いられるであろう。
【0048】
本発明により用いうる、適切なタイプのペンダントカルボン酸基を有するポリマーには、これらに限らないが、エチレンアクリル酸(EAA)コポリマー、ポリ(EAA−ビニルアルコール)(EAAVA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMA)、エチレン−メタクリル酸コポリマー(EMAA)、ポリ(アクリルアミド−アクリル酸)(PAAA)、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0049】
ペンダントカルボン酸基を有するポリマーは、通常、約15を超え、好ましくは約15から約50、より好ましくは約15から約20の範囲のメルトフローインデックス(MFI、2.16kgの荷重を用いて190℃で測定)を有するであろう。
【0050】
ペンダントカルボン酸基を有するポリマーは、通常、約7%を超え、好ましくは約9%以上の%酸価(ASTM D4094−00によって求められる)を有することとなる。
【0051】
本発明の生分解性ポリマー組成物はまた、エステル交換触媒を含む。適切なエステル交換触媒としては、これらに限らないが、水酸化ナトリウムおよび/またはカリウムなどのアルカリ金属水酸化物が挙げられる。用いられるタイプの触媒は、好ましくは、低生態毒性(ecotoxicity)を有する。したがって、アンチモン系エステル交換触媒は、通常、用いられないであろう。触媒は、溶液として、例えば、水溶液として供給され得る。
【0052】
組成物のエステル交換触媒成分は、それ自体でEN 13432又はASTM 6400で特定される生分解性基準に適合してもよく、しなくてもよい。しかしながら、それは、いずれにせよ、本発明による生分解性ポリマー組成物がそのような基準に適合することを妨げない量で用いられるであろう。
【0053】
本発明による生分解性ポリマー組成物はさらにポリエポキシドを含む。ポリエポキシドとは、分子あたり平均2以上のエポキシ基を有するモノマー性又はポリマー性の材料を意味する。前記2以上のエポキシ基が、組成物中に存在するポリマーの酸及び/又はアルコール基との反応に供されうるものであれば、エポキシ基のタイプは決定的ではない。しかしながら、近接したエポキシ基を含むポリエポキシドが、一般的に好ましい。
【0054】
組成物のポリエポキシド成分は、それ自体でEN 13432又はASTM 6400で特定される生分解性基準に適合してもよく、しなくてもよい。しかしながら、それは、いずれにせよ、本発明による生分解性ポリマー組成物がそのような基準に適合することを妨げない量で用いられるであろう。
【0055】
適切なポリエポキシドとしては、これらに限られないが、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ブタジエンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−カルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、4,4'−ジ(1,2−エポキシエチル)−ジフェニルエーテル、4,4’−(1,2−エポキシエチル)ビフェニル、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、フロログルシノールのジグリシジルエーテル、メチルフロログルシノールのジグリシジルエーテル、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)−シクロヘキサン−m−ジオキサン、及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)アジペート、N,N’−m−フェニレン−ビス(4,5−エポキシ−1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド)等のジエポキシド、及びp−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテル、1,3,5−トリ(1,2−エポキシエチル)ベンゼン、2,2’,4,4’−テトラグリシドキシベンゾフェノン、テトラグリシドキシテトラフェニルエタン、フェノール−ホルムアルデヒド ノボラックのポリグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリグリシジル(メタ)アクリレートのオリゴマー及び(コ)ポリマー等の、トリ−及びそれより高度のエポキシド、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
好ましいポリエポキシドは、グリシジルメタクリレート(GMA)の重合により形成されるものである。GMAは、単独重合するか、又は1以上の他のモノマーと共重合することができる。例えば、GMAに基づくポリエポキシドは、約7,000未満の分子量(Mw)を有し、一般式(I)を有する多官能スチレン−アクリルオリゴマーとしうる:
【0057】
【化1】

【0058】
但しR〜Rはそれぞれ独立にH及びアルキル(例えばC〜C12アルキル)から選択され、Rはアルキル基(例えばC〜C12アルキル)であり、且つx、y及びzはそれぞれ独立に1〜20の間の整数である。
【0059】
適切なGMA由来ポリエポキシドは、商業的に入手し得る。例えば、BASFによるJoncryl(登録商標) ADR−4368である。
【0060】
本発明による生分解性ポリマー組成物は、脂肪酸ナトリウム塩をも含む。脂肪酸ナトリウム塩とは、脂肪酸において、そのカルボン酸官能基が、そのナトリウム塩の形態であるものを意味する。脂肪酸とは、少なくとも10炭素原子の炭素鎖につながったカルボン酸を意味する。例えば、脂肪酸ナトリウム塩は、C10−45の脂肪酸ナトリウム塩としうる。脂肪酸ナトリウム塩は、異なる脂肪鎖長の混合物を含みうる。脂肪酸ナトリウム塩の脂肪鎖は飽和又は不飽和としうる。当該脂肪酸ナトリウム塩が由来しうる脂肪酸の特定の例としては、これらに限られないが、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)、及びメリシン酸(C30)を挙げることができ、分岐状のもの及びこれらの置換された誘導体を含む。好ましい脂肪酸ナトリウム塩はステアリン酸ナトリウムである。
【0061】
組成物における脂肪酸ナトリウムの使用は、ポリマー組成物から形成されたフィルム等の製品における、実質的に均一な核生成及びスフェルライト形成を促進すると考えられる。理論に限定されることを望むものではないが、脂肪酸ナトリウム塩に関連するナトリウムイオンが組成物内でポリエステルのカルボン酸基と反応し、ナトリウムカルボキシレート基を生成すると考えられる。ナトリウムカルボキシレート基は、組成物内で凝集し、核生成及びスフェルライト形成を促進すると考えられる。
【0062】
組成物の脂肪酸ナトリウム塩成分は、それ自体でEN 13432又はASTM 6400に特定される生分解性基準に適合してもよく、しなくてもよい。しかしながら、それは、いずれにせよ、本発明による生分解性ポリマー組成物がそのような基準に適合することを妨げない量で用いられるであろう。
【0063】
以下においてより詳細に検討される通り、本発明による生分解性ポリマー組成物は、1以上の他の成分をも含みうる。しかしながら、ポリマー組成物は、一般的には、全部で少なくとも約50wt%、例えば少なくとも約65wt%、少なくとも約75wt%、又は少なくとも約85wt%の上で述べた成分(a)〜(f)及び/又は、そのような成分間の反応から形成される生成物を有するであろう。
【0064】
生分解性ポリマー組成物は、一般的に、成分(a)〜(f)及び/又は成分間の反応から形成される生成物を、(a)〜(f)の全質量に対して、約20wt%から約80wt%の(a)、約2wt%から約60wt%の(b)、約0.3から約25wt%の(c)、約0.005から約0.475wt%の(d)、約0.1から約1wt%of(e)、及び約0.01から約0.5wt%の(f)の範囲で、且つ、これらの成分の全質量が、生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう含むであろう。
【0065】
いくつかの態様において、本発明により用いられる多糖(b)は、TPSの形態で存在しうる。その場合、生分解性ポリマー組成物はまた、1以上の可塑剤を、約25wt%までの量で含むであろう。
【0066】
ある態様において、生分解性ポリマー組成物は、成分(a)〜(f)及び/又は成分間の反応から形成される生成物を、(a)〜(f)の全質量及び可塑剤(存在する場合)に対して、約30wt%から約80wt%の(a)、約5wt%から約40wt%の(b)、約0.75wt%から約15wt%の(c)、約0.0075wt%から約0.3wt%の(d)、約0.1wt%から約0.7wt%の(e)、約0.025wt%から約0.3wt%の(f)、及び0wt%から約25wt%の可塑剤の範囲で、且つ、これらの成分の全質量が、生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう含む。
【0067】
さらなる態様において、生分解性ポリマー組成物は、成分(a)〜(f)及び/又は成分間の反応から形成される生成物を、(a)〜(f)の全質量及び可塑剤(存在する場合)に対して、約40wt%から約80wt%の(a)、約5wt%から約30wt%の(b)、約1wt%から約8wt%の(c)、約0.01wt%から約0.15wt%の(d)、約0.2wt%から約0.5wt%の(e)、約0.025wt%から約0.15wt%の(f)、及び0から約15wt%の可塑剤の範囲で、且つ、これらの成分の全質量が、生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう含む。
【0068】
本発明による生分解性ポリマー組成物は、一般的に、溶融混合された生成物の形態で提供されるであろう。
【0069】
本発明によれば、生分解性ポリマー組成物は、マスターバッチ、及び1以上の生分解性ポリエステル及びポリエポキシドを含む構成要素(A)を溶融混合することを含む方法により調製される。構成要素(A)は、任意に、さらに脂肪酸ナトリウム塩を含みうる。
【0070】
溶融混合は、当該分野においてよく知られた技術及び設備を用いて行いうる。例えば、溶融混合は、二軸押出機、一軸押出機、他の多軸押出機、又はFarell連続混合機等の連続押出設備を用いて達成しうる。溶融混合は、構成要素(A)とマスターバッチの間のよく混ざったブレンドが促進されるように、十分な時間、適切な温度で行われる。当業者は、溶融混合は、一般的には適切な温度範囲で実施されること、及びこの範囲は溶融混合される成分の特質に応じて変わるであろうことを理解するであろう。
【0071】
本発明により行われる溶融混合は、一般的には、溶融混合された成分間の反応を促進するであろう。したがって、この溶融混合のプロセスは、反応性溶融混合、例えば反応性押出とも記載しうる。
【0072】
一般的に、生分解性ポリマー組成物は、約10wt%から約95wt%のマスターバッチ、約5wt%から約90wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約0.1wt%から約1wt%のポリエポキシド、及び0wt%から約0.5wt%の脂肪酸ナトリウム塩(比率は、これらの成分の全部の量に対する比)を、(i)これらの成分の全質量が、得られる生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう、且つ(ii)得られる生分解性ポリマー組成物中の脂肪酸ナトリウム塩の全質量が、約0.01wt%から約0.5wt%の範囲であるよう、共に溶融混合することにより調製されるであろう。
【0073】
ある態様において、生分解性ポリマー組成物は、約10wt%から約90wt%のマスターバッチ、約5wt%から約85wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約0.1wt%から約1wt%のポリエポキシド、及び0wt%から約0.5wt%の脂肪酸ナトリウム塩(比率は、これらの成分の全部の量に対する比)を、(i)これらの成分の全質量が、得られる生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう、且つ(ii)得られる生分解性ポリマー組成物中の脂肪酸ナトリウム塩の全質量が、約0.01wt%から約0.5wt%の範囲であるよう、共に溶融混合することにより調製されるであろう。
【0074】
さらなるある態様において、生分解性ポリマー組成物は、約15wt%から約70wt%のマスターバッチ、約30wt%から約90wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約0.1wt%から約0.7wt%のポリエポキシド、及び0wt%から約0.3wt%の脂肪酸ナトリウム塩(比率は、これらの成分の全部の量に対する比)を、(i)これらの成分の全質量が、得られる生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう、且つ(ii)得られる生分解性ポリマー組成物中の脂肪酸ナトリウム塩の全質量が、約0.025wt%から約0.3wt%の範囲であるよう、共に溶融混合することにより調製される。
【0075】
別のある態様において、生分解性ポリマー組成物は、約15wt%から約65wt%のマスターバッチ、約30wt%から約80wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約0.1wt%から約0.7wt%のポリエポキシド、及び0wt%から約0.3wt%の脂肪酸ナトリウム塩(比率は、これらの成分の全部の量に対する比)を、(i)これらの成分の全質量が、得られる生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう、且つ(ii)得られる生分解性ポリマー組成物中の脂肪酸ナトリウム塩の全質量が、約0.025wt%から約0.3wt%の範囲であるよう、共に溶融混合することにより調製される。
【0076】
さらなるある態様において、生分解性ポリマー組成物は、約20wt%から約50wt%のマスターバッチ、約40wt%から約80wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約0.2wt%から約0.5wt%のポリエポキシド、及び0wt%から約0.15wt%の脂肪酸ナトリウム塩(比率は、これらの成分の全部の量に対する比)を、(i)これらの成分の全質量が、得られる生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう、且つ(ii)得られる生分解性ポリマー組成物中の脂肪酸ナトリウム塩の全質量が、約0.025wt%から約0.15wt%の範囲であるよう、共に溶融混合することにより調製される。
【0077】
さらなるある態様において、生分解性ポリマー組成物は、約20wt%から約50wt%のマスターバッチ、約40wt%から約75wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約0.2wt%から約0.5wt%のポリエポキシド、及び0wt%から約0.15wt%の脂肪酸ナトリウム塩(比率は、これらの成分の全部の量に対する比)を、(i)これらの成分の全質量が、得られる生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう、且つ(ii)得られる生分解性ポリマー組成物中の脂肪酸ナトリウム塩の全質量が、約0.025wt%から約0.15wt%の範囲であるよう、共に溶融混合することにより調製される。
【0078】
上に述べた構成要素(A)(即ち1以上の生分解性ポリエステル及びポリエポキシド、並びに存在する場合は脂肪酸ナトリウム塩)に加えて、マスターバッチは、1以上のさらなる成分、例えば多糖、可塑剤、及び/又は1以上の他の成分、例えば下に概説される添加剤と溶融混合されうる。そのような他の成分が組成物中に存在する場合、本明細書において定義される百分率値は、これらの成分を許容するために適宜調整されるであろうことが理解されるであろう。
【0079】
本明細書で用いられるとおり、「マスターバッチ」の文言は、本明細書に記載される、1以上の生分解性ポリエステル、多糖、ペンダントカルボン酸基を有するポリマー、エステル交換触媒、及び任意に脂肪酸ナトリウム塩を含む構成要素(B)の溶融混合により形成されたポリマー組成物を意味することが意図される。構成要素(B)は、1以上のさらなる成分、例えば下に概説される添加剤を含みうる。その場合、文言「マスターバッチ」の意図される意味は、勿論これらの他の成分を含むよう拡張されるであろう。
【0080】
マスターバッチは、それが構成要素(A)と溶融混合されるのに先立ち形成される。
【0081】
多糖を含むマスターバッチをまず形成し、それからそれを構成要素(A)と溶融混合することにより、得られる生分解性ポリマー組成物が、最小の溶融混合温度を用いて調製され得、一方でなお組成物中に存在する成分の良好な相溶化を達成しうることが見出された。
【0082】
「最小の溶融混合温度」という表現は、それが効果的に溶融混合されることを可能とするよう組成物を維持することができる一方で、組成物内の成分の熱劣化を最小化又は避けうる最低の温度又は温度範囲を意味する。最小溶融混合温度は、勿論、混合される材料に応じて変わることになり、これは、当業者により容易に決定することができる。
【0083】
最小溶融処理温度での組成物の調製を可能とすることが、組成物の成分の熱劣化を有利に最小化する。
【0084】
ある条件下で、溶融混合処理にベントするか又は真空を適用し、水等の揮発成分がポリマー溶融物から除去されることを許容することが望ましい場合がある。
【0085】
マスターバッチと構成要素(A)との溶融混合の間に、ポリエポキシドは、存在するポリマーのカルボン酸及び/又はアルコール基と反応すると考えられる。この反応は、ポリマー鎖をカップリングすることができ、それによりポリマーの有効分子量を増加させることができる。ポリマーの分子量の増加は、ひいては得られる生分解性ポリマー組成物の物理的及び機械的特性を増強すると考えられる。さらには、ポリマー組成物の分子量の増加は、その溶融処理特性、特に組成物からインフレーションフィルムを製造することに関連する溶融処理特性を改善すると考えられる。
【0086】
本発明の方法によれば、マスターバッチは、1以上の生分解性ポリエステル、多糖、ペンダントカルボン酸基を有するポリマー、エステル交換触媒、及び任意に脂肪酸ナトリウム塩を含む構成要素(B)を溶融混合することにより形成される。溶融混合は、上に概説された設備及び技術を用いて行いうる。
【0087】
マスターバッチは、調製しして将来の使用のために便利に貯蔵することができる。または、マスターバッチは、調製して、それからすぐに、生分解性ポリマー組成物の調製に用いられる溶融混合処理において構成要素(A)と合わせることができる。
【0088】
生分解性ポリマー組成物について上に述べたのと同様に、マスターバッチは、構成要素(B)及び/又はかかる構成要素間の反応から形成される生成物を含む。特に、マスターバッチを調製するのに用いられる溶融混合処理は、少なくともいくつかの多糖と、1以上の生分解性ポリエステルとの反応を促進すると考えられる。理論に限定されることを望むものではないが、多糖は、有る程度の、1以上の生分解性ポリエステルとのエステル交換を受けるであろうと考えられる。ペンダントカルボン酸基を有するポリマーもまた、そのような反応に関与しうる。したがって、マスターバッチは、構成要素(B)、任意に脂肪酸ナトリウム塩、及び/又はそのような構成要素間の反応から形成される生成物を含むものと表現されうる。
【0089】
理論に限定されることを望むものではないが、マスターバッチの調製に用いられるエステル交換触媒は、マスターバッチの構成要素が溶融混合され反応を受けうる温度である溶融処理温度を、触媒の不在下において同程度の反応を促進するのに要するであろう温度に比べて、低減する機能を提供すると考えられる。この触媒は「エステル交換」触媒と呼ばれるが、その一方で、溶融混合されマスターバッチを調製する構成要素の特質から、当業者は、他の反応、例えば縮合及びエステル交換の反応もまた起こりうることを理解するであろう。したがって、本明細書において「エステル交換」の文言が示すものは、エステル、アルコール及び酸基の間で起こりうる他の反応機構、例えばエステルの交換及び縮合の反応を包含するものとされる、と理解される。
【0090】
当業者はまた、多糖と、1以上の生分解性ポリエステル又はペンダントカルボン酸基を有するポリマーとのエステル交換は、典型的に、ブロックコポリマーを形成する結果となるであろうことを理解するであろう。ブロックコポリマーは、エステル交換を受けなかった多糖、生分解性ポリエステル、及びペンダントカルボン酸基を有するポリマーのいずれに対しても、相溶化剤として機能しうる。したがって、生分解性ポリエステル及び/又はペンダントカルボン酸基を有するポリマーとのエステル交換を受けるのが、多糖の一部のみか全てかにかかわらず、マスターバッチは、少なくともこれら3成分に関しては、比較的均質な組成物として存在すると考えられる。
【0091】
相溶化剤として、マスターバッチの調製の間に形成されたブロックコポリマーは、多糖と混和性の部分又は領域、及び生分解性ポリエステル及び/又はペンダントカルボン酸基を有するポリマーと混和性の部分または領域を含むと見ることができる。ブロックコポリマーは、したがって、マスターバッチ又はマスターバッチの使用により形成された生分解性ポリマー組成物の中に存在しうる非混和性の多糖及びポリエステルの相の間の界面張力を減少させるよう機能することができ、そしてこれらのカップリングを促進することができる。
【0092】
ペンダントカルボン酸基を有するポリマーの使用は、そのようなブロックコポリマーの形成を促進すると考えられ、それが、ひいては、本発明の生分解性ポリマー組成物の構成成分間の相溶性を改善すると考えられる。
【0093】
従ってマスターバッチは、高度に相溶化された混合物及び/又はその構成成分間の反応から形成される生成物を含むと考えられる。構成要素(A)をマスターバッチと溶融混合し、生分解性ポリマー組成物を提供することは、マスターバッチ中の成分(即ち構成要素(B))と構成要素(A)との単なる混合物を溶融混合するのに比べて、存在する全ての成分の高度の相溶化を促進することが見出されている。
【0094】
マスターバッチ又は生分解性ポリマー組成物自体の中に存在する成分の相溶化は、組成物を撮像することにより、及び/又は組成物の物理的及び機械的特性を測定することにより、実験的に容易に決定することができる。例えば、マスターバッチ又は生分解性ポリマー組成物を低温で冷凍し、粉砕し、続いて走査電子顕微鏡で観察して分散相と連続相との間の接着のレベルを評価することができる。
【0095】
一般的に、マスターバッチは、約5wt%から約50wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約20wt%から約70wt%の多糖、約3wt%から約30wt%のペンダントカルボン酸基を有するポリマー、約0.05wt%から約0.5wt%のエステル交換触媒、及び任意に0wt%から約0.53wt%の脂肪酸ナトリウム塩(比率は、これらの成分の全質量に対する比)を、これらの成分の全質量が、マスターバッチの全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう、共に溶融混合することにより、調製されるであろう。
【0096】
マスターバッチの多糖成分がTPSの形態となる場合、予め形成されたTPSを用いることもでき、または、TPSは便利に、マスターバッチを調製するプロセスの一部としてin situで、形成することもできる。TPSがマスターバッチの調製の間にin situ形成される場合、デンプン及び可塑剤の合計の質量に対して約5wt%から約50wt%の量の可塑剤が、他の構成要素と共に溶融混合されるであろう。用いられる場合、可塑剤は、一般的には約35wt%未満の量で、得られるマスターバッチ内に存在するであろう。
【0097】
ある態様において、マスターバッチは、約5wt%から約40wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約25wt%から約60wt%の多糖、約5wt%から約25wt%のペンダントカルボン酸基を有するポリマー、約0.05wt%から約0.4wt%のエステル交換触媒、0wt%から約0.375wt%の脂肪酸ナトリウム塩、及び0wt%から約35wt%の可塑剤(比率は、これらの成分の全質量に対する比)を、これらの成分の全質量が、マスターバッチの全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう、共に溶融混合することにより調製される。
【0098】
さらなるある態様において、マスターバッチは、約5wt%から約30wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約30wt%から約55wt%の多糖、約5wt%から約15wt%のペンダントカルボン酸基を有するポリマー、約0.05wt%から約0.30wt%のエステル交換触媒、0wt%から約0.3wt%の脂肪酸ナトリウム塩、及び0wt%から約30wt%の可塑剤(比率は、これらの成分の全質量に対する比)を、これらの成分の全質量が、マスターバッチの全質量の少なくとも約50wt%、約65wt%、約75wt%、又は約85wt%を占めるよう、共に溶融混合することにより調製されうる。
【0099】
生分解性ポリマー組成物の調製方法では、脂肪酸ナトリウム塩が、マスターバッチ内に存在し得、及び/又はマスターバッチと別の存在として溶融混合され得ることが理解されるであろう。その起源にかかわらず、本方法に従って用いられる脂肪酸ナトリウム塩の全部の量は、一般的には、約0.01wt%から約0.5wt%、及びある態様においては約0.025wt%から約0.3wt%、及びさらなるある態様においては約0.025wt%から約0.15wt%の範囲となるであろう。
【0100】
本発明に従って用いられる多糖がデンプンである場合、デンプンは、一般的にはTPSの形態となるであろう。本発明の方法によれば、TPSは、一般的にはマスターバッチの一部を形成することになり、マスターバッチはTPSを用いて調製され得、又は、TPSはマスターバッチの調製の間にその場で形成され得る。いずれの場合でも、マスターバッチは、一般的に、マスターバッチの全質量に対して約5wt%から約35wt%、約10wt%から約30wt%、又は約15wt%から約30wt%の可塑剤を含むであろう。
【0101】
ある態様において、マスターバッチは、生分解性ポリマー組成物を調製するのに用いられる多糖の唯一の供給源を提供する。マスターバッチにのみ多糖を入れることは、得られる生分解性ポリマーの、高度に相溶化された組成物を獲得する能力を最大化することが見出されている。このことは、ひいては、組成物に改善された物理的及び機械的特性を与えると考えられる。
【0102】
好ましさはより低いが、生分解性ポリマー組成物の調製方法は、マスターバッチ、及び多糖をさらに含む構成要素(A)を溶融混合することを含みうる。この場合、多糖は、一般的に、溶融混合される成分の全質量に対して約15wt%以下、約10wt%以下又は約5wt%以下の量で用いられるであろう。
【0103】
生分解性ポリマー組成物又は組成物の調製方法において用いられる構成要素はさらに、1以上の添加剤を、そのような添加剤がポリマー組成物の生分解性に有害な影響を与えない限りにおいて含みうる。添加剤は、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、タルク、クレー(例えば、モンモリロナイト)、二酸化チタン、および天然繊維(例えば、木材粉末、紙パルプおよび/または他のセルロース系材料)等のフィラー;顔料;静電防止剤;安定剤;追加のポリマー材料(例えばエチレンビニルアセテート(EVA));発泡剤;加工助剤(例えば、滑剤);流動性向上剤;抗老化(anti−retrogradation)添加剤;本明細書において前に記載の可塑剤;ならびに、ブロッキング防止剤(例えば、二酸化ケイ素)を含みうる。
【0104】
エチレンビニルアセテート等の追加のポリマー材料は、生分解性ポリマー組成物に含まれうる。当業者は、エチレンビニルアセテートはエチレン及び酢酸ビニルのコポリマーであることを理解するであろう。コポリマーにおける酢酸ビニル残基の重量百分率は約10wt%から約40wt%の範囲となり、残余はエチレン残基となるであろう。用いられる場合、エチレンビニルアセテート等の追加のポリマー材料は、一般的に、生分解性ポリマー組成物中、約0.5wt%から約4wt%の範囲の量で存在するであろう。エチレンビニルアセテート等の追加のポリマー材料は、一般的に、生分解性ポリマー組成物の調製に用いられるマスターバッチ組成物の一部を形成するであろう。この場合、マスターバッチは、約1wt%から約8wt%のポリマーを含むよう調製されうる。
【0105】
適切な滑剤は、これらに限らないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化ポリエチレン、オレアミド、ステアルアミドおよびエルカミドを含む。用いられる場合、滑剤は、一般的に、生分解性ポリマー組成物中、約0.2wt%から0.7wt%の範囲の量で存在するであろう。
【0106】
適切な流動性向上剤は、これらに限られないが、モノグリセリド、グルコース脂肪ジエチレングリコールジニトレート、およびSiben−60またはSiben−80の商用名で販売されている製品を含む。用いられる場合、流動性向上剤は、一般的に、生分解性ポリマー組成物中、約1wt%から約2wt%の範囲の量で存在するであろう。
【0107】
適切な抗老化添加剤は、これらに限られないが、グリセロールモノステアレート(GMS)等の蒸留モノグリセリドを含む。用いられる場合、抗老化添加剤は、一般的に、生分解性ポリマー組成物中、約0.5wt%から約4wt%の範囲の量で存在するであろう。蒸留モノグリセリド等の添加剤はまた、多糖の分散性及び安定化を助けると考えられる。
【0108】
用いられる場合、二酸化ケイ素等のブロッキング防止剤は、一般的には、生分解性ポリマー組成物中、約0.25wt%から0.5wt%の範囲の量で存在するであろう。
【0109】
本発明により調製される生分解性ポリマー組成物は、優れた物理的及び機械的特性を有し、且つ易生分解性である。かかる組成物は、押出、射出成形、及び熱成形等の慣用のポリマー変換技術を用いて、便利に加工されうる。かかる組成物は、パッケージング材料に変換されうるフィルム及びシートを製造するのに、特に適している。この場合、PCL、PBAT、PHBV、PES及びPBSが、生分解性ポリエステルとして好ましく用いられる。
【0110】
本発明はまた、本発明により調製された生分解性ポリマー組成物から形成されたシート又はフィルムを提供する。
【0111】
生分解性ポリマー組成物は、シート又はフィルム等の所望の製品に加工されうる何らかの適切な形態で提供されうる。一般的には、組成物はペレットの形態で提供されるであろう。
【0112】
本発明の形態は、以下の非限定的な実施例を参照して、さらに記載される。
【実施例】
【0113】
実施例1:マスターバッチの調製
1wt%未満の含水量を有する35kgの酢酸エステルデンプン(0.5のDS)、8.5kgのポリ(ブチレン アジペート/テレフタレート(PBAT)、14kgのグリセロール、6kgのソルビトール、1.2kgの蒸留モノグリセリド(GMS)、6kgのエチレンアクリル酸(EAA)(9%酸、メルトフローインデックス=20)、3kgのエチレンビニルアセテート(EVA)、0.2kgのステアリン酸ナトリウム、及び最低限の量の水に溶解した0.12kgの水酸化ナトリウムを、ZSK−65二軸押出機(L/D=48)中で溶融混合した。これらの成分の溶融混合に先立ち、固体材料を、高速ミキサー中でドライブレンドし、続いて液体材料を添加し、全ての成分を均一に分散させた。押出機の温度プロファイルは100℃/130℃/160℃/160℃/150℃/140℃に設定した。スクリューの回転速度は300rpmに設定した。押出の間、−0.06から−0.08barの真空を適用した。ポリマー溶融物をストランドとして押し出し、空気冷却し、ペレットに切断した。かかるマスターバッチは、190℃、2.16kgにおけるメルトフローインデックス>4g/10分、及び含水量<0.2wt%を有することを見出した。
【0114】
実施例2:生分解性ポリマー組成物の調製
30wt%の実施例1で調製されたマスターバッチ、52.7wt%のPBAT、7wt%のポリカプロラクトン(PCL)、3wt%のポリ乳酸(PLA)、2wt%のGMS、0.3wt%のポリエポキシド(Joncryl(登録商標)ADR−4368)及び5wt%のタルクからなる組成物を、まず、ドライブレンドし、次にZSK−65二軸押出機を用いて回転速度200rpmで溶融混合した。押出機の温度プロファイルは80℃/130℃/170℃/170℃/160℃/130℃に設定した。押出の間、−0.04から−0.05barの真空を適用した。得られた押出物を水で冷却し、ペレットに切断し、190℃、2.16kgにおけるメルトフローインデックス7g/10分を有することを見出した。
【0115】
実施例2により調製されたポリマー組成物は、以下に表示される処理条件を用いて、標準的なLDPEインフレーションフィルムのライン上で、20ミクロン厚のフィルムに膨らませた。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
バブル冷却は、弱いものから強いものへ徐々に変更した。約10〜15℃の冷気が、フィルムブロッキングの問題を避けるのに最もよく働いた。好ましい膨張比は、2.5:1から3.5:1の間であった。より高い膨張比は、バブルの不安定性の問題及びフィルム皺を起こし得る。設備の設計及びセットアップに応じて、15μm及び120μmの間のフィルム厚が、この組成物を用いて達成された。
【0119】
得られたフィルムはASTM D−882に従って試験され、>15MPaの破断引張強度、及び>600%の破断伸びを示すことが見出された。また、このフィルムはEN 13432の生分解性要件を完全に満たすことも見出された。
【0120】
対比として、BioCorp(商標)、EcoWorks(商標)、及びEco Film(商標)の商用名で販売される、対比の、商業的に入手可能な多糖/ポリエステル ポリマー組成物から形成された様々なフィルムは、ASTM D−882に従って試験された破断伸びが、〜400%しかないことが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)〜(f)及び/又は成分間の反応から形成される生成物を含む生分解性ポリマー組成物:(a)1以上の生分解性ポリエステル;(b)多糖;(c)ペンダントカルボン酸基を有するポリマー;(d)エステル交換触媒;(e)ポリエポキシド;及び(f)脂肪酸ナトリウム塩。
【請求項2】
前記1以上の生分解性ポリエステルが、独立に、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリヒドロキシブチレートバレレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記多糖が、デンプン、グリコーゲン、キトサン、セルロース及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記多糖がデンプンである、請求項3に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記デンプンが熱可塑性デンプン(TPS)の形態である、請求項4に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性デンプン(TPS)が、グリセロール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、クエン酸トリエチル(TEC)、ソルビトール及びこれらの組み合わせから選択される可塑剤を含む、請求項4に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記ペンダントカルボン酸基を有するポリマーが、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリ(エチレンアクリル酸−ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、エチレン−メタクリル酸コポリマー、ポリ(アクリルアミド−アクリル酸)及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項8】
前記ペンダントカルボン酸基を有するポリマーが、エチレンアクリル酸コポリマーである、請求項7に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項9】
前記エステル交換触媒が、アルカリ金属水酸化物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記ポリエポキシドが、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ブタジエンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−カルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、4,4'−ジ(1,2−エポキシエチル)−ジフェニルエーテル、4,4’−(1,2−エポキシエチル)ビフェニル、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、フロログルシノールのジグリシジルエーテル、メチルフロログルシノールのジグリシジルエーテル、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)−シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)アジペート、N,N’−m−フェニレン−ビス(4,5−エポキシ−1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド)、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテル、1,3,5−トリ(1,2−エポキシエチル)ベンゼン、2,2’,4,4’−テトラグリシドキシベンゾフェノン、テトラグリシドキシテトラフェニルエタン、フェノール−ホルムアルデヒド ノボラックのポリグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリグリシジル(メタ)アクリレートのオリゴマー及び(コ)ポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項11】
前記脂肪酸ナトリウム塩がステアリン酸ナトリウムである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項12】
前記組成物が、成分(a)〜(f)及び/又は成分間の反応により形成される生成物を、(a)〜(f)の全質量に対して、約20wt%から約80wt%の(a)、約2wt%から約60wt%の(b)、約0.3から約25wt%の(c)、約0.005から約0.475wt%の(d)、約0.1から約1wt%の(e)、及び約0.01から約0.5wt%の(f)の範囲で含み、且つ、これらの成分の全質量が、生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%を占める、請求項1〜11のいずれか1項に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記多糖が、グリセロール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、クエン酸トリエチル(TEC)、ソルビトール及びこれらの組み合わせから選択される可塑剤を含む熱可塑性デンプン(TPS)の形態であり、前記可塑剤が、組成物の全質量に対して約25wt%までの量で存在する、請求項10に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項14】
EN13432に記載の生分解性基準に適合する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の生分解性ポリマー組成物から形成されたフィルムのシート。
【請求項16】
生分解性ポリマー組成物の調製方法であって、前記方法は、マスターバッチ、及び1以上の生分解性ポリエステル及びポリエポキシドを含む構成要素(A)を共に溶融混合することを含み、前記マスターバッチは、1以上の生分解性ポリエステル、多糖、ペンダントカルボン酸基を有するポリマー、及びエステル交換触媒を含む構成要素(B)を共に溶融混合することにより形成されたものであり、構成要素(A)及び/又は(B)が、さらに脂肪酸ナトリウム塩を含む方法。
【請求項17】
前記マスターバッチが、生分解性ポリマー組成物を形成するために構成要素Aと溶融混合される多糖の唯一の供給源を提供する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生分解性ポリマー組成物が、約10wt%から約90wt%の前記マスターバッチ、約5wt%から約85wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約0.1wt%から約1wt%のポリエポキシド、及び0wt%から約0.5wt%の脂肪酸ナトリウム塩、但し割合はこれらの成分の全量に対する比、を共に溶融混合することにより調製され、且つ、(i)これらの成分の全質量が、得られる生分解性ポリマー組成物の全質量の少なくとも約50wt%を占め、且つ(ii)得られる生分解性ポリマー組成物における脂肪酸ナトリウム塩の全質量が、約0.01wt%から約0.5wt%の範囲である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記マスターバッチが、約5wt%から約50wt%の1以上の生分解性ポリエステル、約20wt%から約70wt%の多糖、約3wt%から約30wt%のペンダントカルボン酸基を有するポリマー、約0.05wt%から約0.5wt%のエステル交換触媒、及び0wt%から約0.53wt%の脂肪酸ナトリウム塩、但し割合はこれらの成分の全量に対する比、を共に溶融混合することにより調製され、且つこれらの成分の全質量が、マスターバッチの全質量の少なくとも約50wt%を占める、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1以上の生分解性ポリエステルが、独立に、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリヒドロキシブチレートバレレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、及びこれらの組み合わせから選択され、前記多糖がデンプンであり、前記ペンダントカルボン酸基を有するポリマーがエチレンアクリル酸コポリマーであり、前記エステル交換触媒がアルカリ金属水酸化物であり、前記ポリエポキシドが、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ブタジエンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−カルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、4,4'−ジ(1,2−エポキシエチル)−ジフェニルエーテル、4,4’−(1,2−エポキシエチル)ビフェニル、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、フロログルシノールのジグリシジルエーテル、メチルフロログルシノールのジグリシジルエーテル、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)−シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)アジペート、N,N’−m−フェニレン−ビス(4,5−エポキシ−1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド)、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテル、1,3,5−トリ(1,2−エポキシエチル)ベンゼン、2,2’,4,4’−テトラグリシドキシベンゾフェノン、テトラグリシドキシテトラフェニルエタン、フェノール−ホルムアルデヒド ノボラックのポリグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリグリシジル(メタ)アクリレートのオリゴマー及び(コ)ポリマー、及びこれらの組み合わせから選択され、且つ前記脂肪酸ナトリウム塩がステアリン酸ナトリウムである、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
生分解性ポリマー組成物の調製に使用するのに適するマスターバッチであって、以下の成分及び/又は成分間の反応から形成される生成物を含む、マスターバッチ:(a)1以上の生分解性ポリエステル;(b)多糖;(c)ペンダントカルボン酸基を有するポリマー;(d)エステル交換触媒;及び任意に(e)脂肪酸ナトリウム塩。

【公表番号】特表2012−507614(P2012−507614A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534970(P2011−534970)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001443
【国際公開番号】WO2010/051589
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511111334)トリスターノ プロプライエタリー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】TRISTANO PTY LTD
【住所又は居所原語表記】Suite 5−10,Level 5,Pacific Tower,737−741 Burwood Road,Hawthorn,Victoria 3122,Australia
【Fターム(参考)】