画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
【課題】ボクセル・データからボリューム・レンダリングを行なって3次元画像を表示するときに、高周波成分を中心とする画像ノイズを確実に除去又は低減させるとともに観察上、重要な部位の情報は確実に確保し、その一方で、クリッピング処理に拠らずかつリアルタイム性を上げる。
【解決手段】ボリューム・レンダリングの投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置するボクセル・データの1次元データを指定する(ステップS1−S4)。この1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示す変化情報を演算し(ステップS5−S6)、この変化情報に応じて重み付け係数を演算し(ステップS7)、ボクセル・データと当該ボクセル・データの平滑化画像のデータとを重み付け係数を用いて相互に重み付け加算する(ステップS8−S10)。
【解決手段】ボリューム・レンダリングの投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置するボクセル・データの1次元データを指定する(ステップS1−S4)。この1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示す変化情報を演算し(ステップS5−S6)、この変化情報に応じて重み付け係数を演算し(ステップS7)、ボクセル・データと当該ボクセル・データの平滑化画像のデータとを重み付け係数を用いて相互に重み付け加算する(ステップS8−S10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル画像に存在するノイズ、いわゆる画像ノイズを低減させる画像処理装置及び画像処理方法に関し、とくに、3次元空間で収集された画像データ(ボクセル・データ)にボリューム・レンダリングと呼ばれる投影処理を施して新たな3次元画像を生成・表示する画像処理画像処理装置、画像処理方法、及び、画像装置に関する。
【0002】
なお、この画像装置には、医用画像診断装置(超音波診断装置、X線CT装置、MRI装置など)や工業用画像装置(超音波探傷装置、X線CT装置など)が含まれる。
【背景技術】
【0003】
近年の画像処理に関する技術の進歩には目覚しいものがあり、医用画像診断装置の分野においても同様である。この分野では、短時間で被験者の体内の3次元データを収集できる装置が、X線CT装置やMRI(磁気共鳴イメージング)装置の分野で数多く開発、製品化されている。加えて、近年、超音波ビームを機械的にあるいは電子的に操作することにより、3次元空間内のデータを収集する超音波診断装置も同様に登場してきており、3次元データをいかに有効に活用するかということに対する関心は高まっている。
【0004】
この医用画像診断装置で収集された3次元データには、種々の原因に因るノイズを含まれることが一般である。つまり、一般に、自然の事象から収集される画像には多様なノイズが混入している。このノイズは画像ノイズとして総称され、良質の画像を提供するには、この画像ノイズをいかにして除去又は低減させるかということが重要な技術的課題である。とくに、高周波成分を主成分とする画像ノイズが混入している場合、画像上に写り込んでいる、目的とする被写体である構造物(例えば、医用画像の場合には、骨部分など)の視認性や濃度分解能(例えば医用画像の場合、軟部組織内の腫瘍の検知)を著しく阻害することが多い。
【0005】
これらの医用画像診断装置の使用に際して、3次元的に得られたデータから必要な情報を効果的・効率的に提供するには、対象物の3次元表示が有効である。この3次元表示の代表的な手法にボリューム・レンダリング(Volume Rendering)があり、X線CT装置やMRI装置などにおいて広く用いられている。
【0006】
このVR処理は、収集した3次元画像データ、すなわちボクセル・データに対して操作者が指定した視線方向を元に実行される。ボリューム・レンダリングの投影面は、視線に対して直交するように位置する。視線方向を指定することで投影面が決まるから、この投影面上の各ピクセルから視線に平行な方向に光線が設定される。この光線上には、ボクセル・データを成す複数のボクセルのうちの多数のボクセルが位置する。これらのボクセルのボクセル値と操作者が設定するオパシティ曲線とを加味した累積加算値が演算され、この累積加算値の集合がボリューム・レンダリング画像となる。
【0007】
このように、ボリューム・レンダリングに要する処理は光線上に位置するボクセルのボクセル値の重み付き累積加算処理となるため、図17に模式的に示すように、3次元データ内に多くのノイズが含まれている場合、3次元画像の画質は大きく損なわれてしまう。同図において、符号OB1、OB2は観察したい対象物を、RAYはVR処理の投影面の各ピクセルから直角に伸びる光線を、Nはノイズをそれぞれ示す。特に、観察したい対象物OB1,OB2が深部に位置する場合や、対象物OB1,OB2の表面を強調するようなオパシティ曲線が設定された場合においては、かかる画質の劣化は著しい。
【0008】
そこで、このノイズの影響を除去するために、クリッピング処理をボリューム・レンダリングに併用することが多い。クリッピング処理とは、ボリューム・レンダリングを行う際、特定の領域のボクセルを削除する処理である。このクリッピング処理を図18に模式的に例示する。同図において、符号RGclipはクリッピングされた領域である。クリッピング処理は、本来、観察したい対象物の手前に位置する観察に邪魔な物体を削除するために用いられる処理であるが、このようにノイズの除去を目的として用いられることも多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したクリッピング処理は必ずしも万能ではない。例えば、収集された3次元データに多くの強いノイズが存在する場合、深部に位置する対象物を観察するには、より広い領域をクリッピングしなければならない。このとき、図18の符号RGdeleteで示す部分領域のように、本来は観察したい対象物OB1あるいはその一部であるに関わらず、クリッピング作業と共に削除されてしまうことが多々在る。
【0010】
ボリューム・レンダリング像などの再構成した3次元画像は、本来、3次元空間内に位置する対象物の位置関係を観察することが主要目的の一つであるので、クリッピング処理により観察したい対象物の全部又は部分が削除されてしまうことは、本来の画像価値を大きく損なうことになる。また、クリッピング処理により観察される視野範囲は狭められてしまうという問題もある。
【0011】
クリッピング処理によらずにノイズの影響を除くには、ボリューム・レンダリング処理を行う前に前処理としてボクセル・データに対して各種のノイズ除去処理を行う方法もある。このノイズ除去処理には、平滑化フィルタを作用させる手法、ノイズの統計的性質を利用して除去する方法、周波数空間上でゲイン調整する手法などがある。
【0012】
しかしながら、前処理としてノイズ除去処理を行う場合、ノイズ除去処理を完了するまでボリューム・レンダリングを開始することができない。このため、リアルタイム性を求められる装置の場合、前処理に起因する遅延が新たな不都合を伴う。超音波ビームを3次元的に走査する3次元超音波診断装置は、そのような高いリアルタイム性を求められる装置の一つである。
【0013】
さらに、リアルタイム性の低下は甘受するとした場合でも、上述した画像ノイズの低減法は、未だ十分なノイズ低減効果を得ていないという現状にある。例えば、平滑化フィルタを作用させる手法の場合、画像に含まれている高周波成分による画像ノイズを除去又は低減させることは可能であるが、構造物の境界などの高周波成分を多く含む領域も平滑化してしまうため、空間分解能が劣化する、すなわち平易には「ボケ」た画像になってしまうという、ノイズ除去効果とは相反する状況にあった。
【0014】
また、ノイズの統計的性質を利用して除去する方法の場合、ノイズの統計的性質を事前に知ることが難しい上に、リアルタイム処理が困難であった。さらに、周波数空間上でゲイン調整する手法の場合、ノイズのみを選択的に除去することが難しく、フィルタリング後の画像にアーチファクトを生じ易いという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は、上述した画像ノイズの除去処理に対する現状に鑑みてなされたもので、とくに、収集したボクセル・データからボリューム・レンダリングを行なって3次元画像を表示するときに、高周波成分を中心とする画像ノイズを確実に除去又は低減させるとともに構造物の境界などの高周波成分を多く含む、観察上、重要な部位の情報は確実に確保し、その一方で、クリッピング処理に拠らず且つリアルタイム性が求められる装置にも適用できる画像処理装置及び画像処理方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置によれば、デジタル値から成る3次元画像のボクセル・データに投影処理を施して3次元画像を生成する装置において、前記投影処理の投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置する前記ボクセル・データの1次元データを指定する指定手段と、この指定手段により指定された1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示すボクセル値変化情報を演算する変化情報演算手段と、前記ボクセル・データの平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、前記変化情報演算手段により演算されたボクセル値変化情報に応じて重み付け係数を演算する重み付け係数演算手段と、前記ボクセル・データ又は当該ボクセル・データに変調を加えたデータと前記平滑化画像のデータとを前記重み付け係数を用いて相互に重み付け加算する重み付け加算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、前述した目的を達成するため、本発明に係る画像処理方法によれば、デジタル値から成る3次元画像のボクセル・データに投影処理を施して3次元画像を生成する方法が提供される。この画像処理方法は、前記投影処理の投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置する前記ボクセル・データの1次元データを指定し、この指定された1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示すボクセル値変化情報を演算し、この演算されたボクセル値変化情報に応じて重み付け係数を演算し、前記ボクセル・データ又は当該ボクセル・データに変調を加えたデータと前記ボクセル・データの平滑化画像のデータとを前記重み付け係数を用いて相互に重み付け加算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る画像処理装置及び画像処理方法によれば、収集したボクセル・データからボリューム・レンダリングを行なって3次元画像を表示するときに、原画像としてのボクセル・データの1次元データから演算抽出したボクセル値変化情報に応じて求めた重み付け係数を用いて、1次元データ(又はこの1次元データに変調を加えたデータ)と平滑化画像のデータの何れか一方を局所的に強調した重み付け加算を行うことができ、この結果、高周波成分を中心とする画像ノイズを確実に除去又は低減させることができるとともに、構造物の境界などの高周波成分を多く含む、観察上、重要な部位の情報は確実に確保して、画像全体としてノイズが少なく且つ構造物などの観察対象物に対する視認性が優れた画像を提供することができ、その一方で、クリッピング処理に拠らずかつリアルタイム性を求められる医用画像診断装置にも適用できる画像処理装置及び画像処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の画像処理装置及び画像処理方法に係る1つの実施の形態を説明する。なお、この画像処理装置及び画像処理方法は、超音波診断システム(又は装置)により実施されている。
【0020】
図1に、本実施形態に係る超音波診断システムを示す。この超音波診断システムは、同図に示すように、超音波ビームを被検体内で3次元的に走査することにより3次元空間内のデータを収集する3次元超音波診断装置1と、この装置にネットワーク用の通信ケーブルNを介して双方向で通信可能に接続された、本発明に係る画像処理装置としての3次元画像処理用ワークステーション2とを備える。つまり、本実施形態に係るシステムによれば、ワークステーション2は超音波診断装置2に外部接続された構成を採っている。
【0021】
超音波診断装置1は、装置本体1A、操作卓1B、ディスプレイ1C、及び、装置本体1Aのスキャンユニット(図示せず)に接続されたプローブ1Dを備える。これにより、従来の3次元超音波診断装置と同様に、プローブ1Dを介して被検体の内部が3次元走査される。ここで、プローブ1Dは、2次元配列アレイ超音波プローブであって電子的に3次元走査を行なうものであってもよいし、1次元配列アレイ超音波プローブであって機械的に或いは手動により3次元走査を行なうものであってもよい。このため、3次元の画像データ、すなわちボクセル・データも収集される。この走査による反射超音波に基づく受信信号は、スキャンユニットにて検波されて画像データとしてデジタルスキャンコンバータ(図示せず)に送られる。スキャンコンバータは超音波走査のデータからボクセル・データに変換し、この変換された画像データを表示プロセッサ(図示せず)に送る。表示プロセッサは、受信したデータを用いて指定モードの画像をディスプレイ1Cに表示するようになっている。
【0022】
通信ケーブルNは、装置本体1Aにおけるスキャンコンバータ(図示せず)の出力端に接続されており、このスキャンコンバータによるスキャンコンバージョン後の画像データをワークステーション2に伝送可能になっている。ワークステーション2は、一例として、図2に示す構成を有しており、超音波診断装置1で収集された画像データを所望の態様で観察する専用端末と用いられている。このワークステーション2で行う観察に必要な処理には、本発明に独特のノイズ低減処理及び投影処理の代表格であるボリューム・レンダリングが含まれる。
【0023】
図2に示すワークステーション2は、コンピュータの機能を有するハードウエアを備え、このハードウエアにインストールしたプログラムに基づくソフトウエア処理によりノイズを著しく低減させた画像を提供する装置である。
【0024】
具体的には、このワークステーション10は、ネットワークNに接続されたインターフェース11と、このインターフェース11に接続されたバスBに繋がる種々のユニットとを備える。このユニットには、画像記憶装置12、ノイズ低減用の画像処理プロセッサ13、ROM14、RAM15、操作記16、及びモニタ17が含まれる。
【0025】
画像記憶装置12は、図示しないが、半導体メモリなどの短期記憶装置及びハードディスクなどの長期記憶装置を備える。超音波診断装置1により収集されたグレイレベルの3次元デジタル画像のデータ(ボクセル・データ)は、ネットワークN及びインターフェース11を介して画像記憶装置12の短期記憶装置に一時的に記憶された後、保管のために、長期記憶装置に転送される。この一時保管及び転送を繰り返して、全ボクセル・データが保管される。なお、この長期記憶装置には、画像処理プロセッサ13により処理された画像データも保管される。
【0026】
画像処理プロセッサ13は、その起動時に、ROM14に予め記憶させてある、本発明に係るノイズ低減用のプログラムをワークメモリに読み出し、かかるプログラムにしたがって画像ノイズを低減させるための処理を行いながら、ボリューム・レンダリングのための処理を行い、ボリューム・レンダリング画像(3次元画像)のデータを生成する。この処理は、後述する図3に大略、示すように実行され、本発明の主要な特徴を成すものである。ROM14は、予め与えられたノイズ低減用のプログラムを記憶している。
【0027】
RAM15は、画像処理プロセッサ13によりノイズ低減の処理の必要な一時記憶メモリとして使用される。操作器16はキーボード、マウスなどから成り、オペレータが所望の情報をワークステーション2に与えることができる。モニタ17は、画像処理プロセッサ13の制御の元で、ノイズ低減処理に関わる画像や情報を表示するようになっている。
【0028】
このため、画像処理プロセッサ13で生成されたボリューム・レンダリング画像などの3次元画像はモニタ17に表示され、ユーザに提示される。同時に、その画像データは画像記憶装置12のハードディスク等の長期記憶装置に保存される。
【0029】
なお、本発明に係る画像処理装置は、必ずしも、このような構成に限定されることなく、上述したワークステーション2の機能を超音波診断装置1の内部のハードウエア構成により実現してもよい。具体的には、スキャンコンバータにより、本発明に係る画像処理装置を一体に行うように設定してもよい。また、上述したワークステーション2と同等の機能を有する演算ユニットをスキャンコンバータと表示プロセッサとの間に介在させるようにしてもよい。
【0030】
また、かかる表示態様に代えて、ワークステーション2で生成されたボリューム・レンダリング像などの3次元画像のデータをネットワークNを介して超音波診断装置1に返送し、その画像データを同装置のディスプレイ1Cに表示させるとともに、同装置内の記憶装置に保存させるようにしてもよい。
【0031】
さらに、ワークステーション2はネットワークNを介して超音波診断装置1に接続されているとしたが、必ずしも、そのような接続環境に無くてもよく、ワークステーション2はスタンドアロン方式で構成されていてもよい。その場合には、例えば運搬可能な記憶装置を用いて、超音波診断装置により収集したボクセル・データがワークステーション2に供給される。
【0032】
さらに、このワークステーション2は、ソフトウエア処理により画像ノイズの低減及びボリューム・レンダリングを実行するように構成されているが、本発明に係る画像処理装置は、そのようなソフトウエア処理には必ずしも限定されるものでは無い。このワークステーション2は、論理回路などのデジタル回路を用いて処理するように構成してもよい。
【0033】
続いて、図3〜14を参照して、この本実施形態に係るワークステーション2により実行される、ボリューム・レンダリングと共に実行される画像ノイズの低減処理を説明する。
【0034】
なお、画像記憶装置12には、超音波診断装置1により、被検体内をBモードで3次元的にスキャンして収集された3次元の白黒(グレイスケール)のデジタル画像が事前に格納されているものとし、この3次元の画像データ、すなわちボクセル・データに、本発明に係る、ノイズ低減処理を含むボリューム・レンダリングを適用するものとする。
【0035】
最初に、ボリューム・レンダリングそのものについて説明する。
【0036】
図3は、3次元直交座標系のボクセル・データに平行投影のボリューム・レンダリングを実行するときの概念を示している。なお、このボリューム・レンダリングは、ここでは平行投影によるボリューム・レンダリングを例示しているが、本発明は必ずしもそのような平行投影のボリューム・レンダリングに限定されるものではない。ボリューム・レンダリングの投影法にも種々のものがあるが、その各光線上のボクセル・データ(1次元データ)に適用可能である。また、3次元データとしてのボクセル・データは必ずしも直交座標系のボクセル・データである必要はない。
【0037】
まず、3次元画像(ボリューム・レンダリング画像)を生成するために、操作者は、図3に示すようにボクセル・データに対して視線方向を設定する。このとき、ボリューム・レンダリングの投影面は視線に対して直交するように位置する。
【0038】
次に、投影面上の各ピクセルから視線に平行な方向に光線が設定される。各光線上には、複数のボクセルが位置する。ボリューム・レンダリング画像は、これらボクセルのボクセル値と操作者が設定するオパシティ曲線を加味した累積加算値として演算される。
【0039】
図4は、ワークステーション2により実行される、画像ノイズ低減を伴うボリューム・レンダリングの一連の処理の流れを示す。この処理は、概略的に言えば、デジタル画像の構造物の境界(エッジ)を検出する処理A、原画像としてのボクセル・データと平滑化画像のデータとの重み付け加算のための重み付け係数を演算する処理B、及び、演算された重み付け係数を用いて、かかる重み付け加算を実行する処理Cを含む。これを、処理A〜Cの別に順次説明する。
【0040】
(デジタル画像の構造物の境界を検出する処理A)
人間の視覚感度は、図5(a),(b)に示すように、視点からの角度θに従って漸減する感度特性を有する。また、視点からの距離L(図5(b)の横軸)に対して、角度θが小さい範囲であれば、人間の視覚感度は同じ形状の漸減的な感度特性で近似できる。人間の視覚の感度分布は当然、2次元的な分布を有するが、図5は特定の方向に沿った1次元的な感度分布を示している。本実施形態では、全ての方向に対して同じ感度分布を持っているものと仮定するが、方向によって異なる感度分布を有するとして以下の処理を行うこともできる。
【0041】
本実施形態では、図6に示すように、特性の異なる2つの視覚感度分布を用いて、デジタル画像上の「構造物の境界部分などの画素値の変化が大きい領域」を検出する。ただし、図6は感度特性グラフの形状を示すもので、縦軸(感度)の値は特に意味を持たない。また、「画素値の変化が大きい領域」とは、画像上の一定以上の範囲にわたって画素値の変化が存在する領域を指す(つまり、画像ノイズのような画素単位の画素値変化を含まないものとする)。
【0042】
具体的には、ワークステーション2では、画像処理プロセッサ16により、以下の処理が順次実行される。
【0043】
まず、画像処理プロセッサ16は、オペレータからの操作器16を経由して与えられる操作情報に基づいて、画像記憶装置12から所望のボクセル・データ(本実施形態では、グレイレベルの3次元デジタル画像のデータ:本発明の原画像に相当する)を読み出し、これをモニタ17に表示させる(ステップS1)。
【0044】
次いで、画像処理プロセッサ16は、ボリューム・レンダリングのための投影面、視線、及び、各光線を操作者からの操作情報に基づいて指定する(図3参照;ステップS2)。
【0045】
次いで、画像処理プロセッサ16は、図3に模式的に示したように投影面上のピクセルから発せられる光線上に位置してい複数のボクセルを特定又は生成する(ステップS3)。ただし、実際には、3次元的に収集されたデータは離散的にサンプリングされているので、光線上に中心を持つボクセルは少ない。そのような場合、補間処理を用いて周囲のボクセル・データから光線上のボクセルを生成する。この結果、図7に示すように、各光線上にボクセル・データが設定される。以下の説明では、必要に応じて、この1次元的に位置しているボクセル・データを単に「1次元データ」と呼ぶことにする。元のボクセル・データ(原画像)にノイズ成分が含まれている場合は、補間処理よって生成された1次元データにも同様のノイズ成分が含まれることになる。
【0046】
次いで、画像処理プロセッサ13は、予め定めたアルゴリズムに基づいて、或いは、操作者からの操作情報に応答して、1次元データに1次元のROI(関心領域)を設定する(ステップS4)。
【0047】
次に、このROIにより指定された範囲の1次元データに作用させるノイズ除去フィルタについて説明する。
【0048】
画像処理プロセッサ13は、互いに異なる2つのフィルタ係数(例えば、図8参照)を有した1次元の平滑化フィルタを、1次元データ上のROIで指定された同一区間に作用させる(ステップS5)この様子を図9に模式的に示す。上述の2種類の1次元画像フィルタをフィルタ1およびフィルタ2と呼ぶことにする。このフィルタ1,2のフィルタ係数は規格化されている。このフィルタ1,2による平滑化処理の結果Y1(m)及びY1(m)は、定量的には、
[数2]
フィルタ1の場合: Y1(m) = Σ{k1(i) × X(m−i)}
フィルタ2の場合: Y2(m) = Σ{k2(i) × X(m−i)}
X(m) : ボクセル値
k1(i) : フィルタ1のフィルタ係数(規格化後)
k2(i) : フィルタ2のフィルタ係数(規格化後)
として表される。
【0049】
さらに、同ROIを光線上で移動させて1つの光線上の全てのボクセル・データに対してフィルタ1,2による平滑化処理を繰り返す(ステップS5A)。また、この平滑化処理は光線全てのボクセル・データに対して繰り返される(ステップS5B)。
【0050】
次いで、画像処理プロセッサ13は、上述したフィルタ1,2の平滑化結果Y1及びY1を用いて、両者の差分値Zを演算する。つまり、
[数3]
Y1およびY2の差分値 S = Y1−Y2
Sの絶対値 Z = abs(S)
つまり、差分値Sは差分画像を成し、絶対値Zは絶対値画像を成すとともに、本発明のボクセル値変化情報に対応する。
【0051】
ここで、絶対値Zの意義を、1次元データのボクセル値との関係を示す図10を用いて説明する。1次元データが図10に示すようなボクセル値を持つものとすると、絶対値Z(又は差分値S)は、図10の中の区間iiおよび区間ivにあっては、区間i、iii、vにおける値よりも相対的に大きな値をとる。換言すると、絶対値Zは、物体等の境界部分などのボクセル値の変化が大きな部分で相対的に大きな値をとり、それ以外の部分では絶対値Zは相対的に小さな値をとる。一方、1次元データにノイズ成分(ノイズは主に高周波成分)が含まれていたとしても、2種類のフィルタ1,2は平滑化フィルタ(ローパス・フィルタ)であるため、絶対値Zに対するノイズ成分の影響は非常に小さい。つまり、上述のように、2種類の平滑用フィルタ1,2による平滑化結果の差分の絶対値Zを演算すると、上述の差分値S又はその絶対値Zは、構造物としての被検体の骨など、画素値の変化の大きい境界の輪郭情報を示すことができる。
【0052】
(重み付け係数を演算する処理B)
そこで、画像処理プロセッサ13は、後述する重み付け加算に用いる重み係数Aを演算する(ステップS7)。この重み係数Aは本発明の特徴事項の1つを示すものであるので、以下に詳述する。
【0053】
後述する原画像としてのボクセル・データと平滑化画像のデータとの重み付き加算において、このようなボクセル値の変化が大きな領域ではボクセル・データに対する重み付け加算の係数が大きくなり、一方、それ以外の領域では平滑化画像に対する重み付け係数の方が大きくなるように、重み付け係数が設定される。
【0054】
つまり、ボクセル・データに対する重み付け係数Aは、図11又は図12に示す関数を参照して設定される。
【0055】
この関数は、数式として予めROM14に記憶させておき、その都度、かかる数式に基づいて演算することで重み付け係数Aを求めてもよいし、図11又は図12に示す関数に従う重み係数Aの値そのものを予めROM14にデータテーブルとして保存しておき、このテーブルを参照することで重み係数Aを設定するようにしてもよい。
【0056】
図11は、絶対値Zを用いて重み付け係数Aを決めるときの重み付け関数を例示している。この重み付け関数は、絶対値Zに対して、
[数4]
0≦ Amin ≦ A ≦ Amax ≦1
の範囲で重み付け係数Aを与える。具体的には、この重み付け関数の場合、重み付け係数Aは、絶対値Zが増加するにつれて、その最小値A=Aminから徐々に増加し、絶対値Zの或るしきい値付近において、それまでの増加よりも急峻に増加し、その後、最大値A=Amaxまで再び徐々に増加するようになっている。
【0057】
これにより、原画像におけるボクセル値の変化が小さい部位に対しては小さめの重み付け係数Aを設定でき、一方、ボクセル値の変化が上記しきい値に相当する適度な値を示す近辺でその変化を強調するように急峻に変わる重み付け係数Aを設定できる。
【0058】
また、図12に示す重み付け関数は、差分値Sを用いて重み係数Aを決めるときのものであり、差分値Sの正負の領域それぞれに対して、
[数5]
0≦ Amin ≦ A ≦ Amax ≦1
の範囲で重み付け係数Aを与えることができる。この差分値Sを使用する重み付け関数の場合も、重み付け係数Aは、絶対値Zのときと同様に、差分値Sがその正負それぞれの範囲にて絶対値が大きくなるにつれて、その最小値A=Aminから徐々に増加し、あるしきい値付近において、それまでの増加よりも急峻に増加し、その後、最大値A=Amaxまで再び徐々に増加するようになっている。1次元データに対する重み係数Aを求めると、平滑化結果に対する重み係数は「1−A」として演算できる。
【0059】
ただし、この差分値Sを利用する場合、差分値Sの正負それぞれに領域で独立して重み付け関数を決めることができる。図12に例示する重み付け関数Aの場合、差分値Sの負の領域と正の領域とでは、重み付け係数の立ち上げの急峻さを違えている。つまり、負の領域の方がより小さな差分値S(絶対値)に敏感に重み係数Aを上げている。
【0060】
したがって、この場合も、差分値Sの正負の領域にそれぞれにおいて個別に、1次元データにおけるボクセル値の変化が小さい部位に対しては小さめの重み付け係数Aを設定でき、一方、1次元データの変化が上記しきい値に相当する適度な値を示す近辺でその変化を強調するように急峻に変わる重み付け係数Aを設定できる。
【0061】
なお、この重み付け関数は、上述した図11及び図12に示した以外にも、様々な設定の仕方が可能である。例えば、絶対値Zの例で言えば、Z=0の点からZ=所定値まで重み係数が直線的に、ステップ状に、或いはZ=0の点から直ぐに急峻に立ち上がり、その後になだらかに飽和するように増加させることもできる。また、Z=0の点からZ=所定値まで重み付け係数Aが一定値を採るように設定してもよい(つまり、これを図示すると、図11において重み係数A=一定値の直線となる)。このように、本発明に適用可能な重み付け関数は、差分値Sのときにはその絶対値が大きくなっても重み係数が減少せず、また絶対値Zのときにはその値が大きくなっても重み係数が少なくとも減少しないという、いわゆる「非減少関数」を満足するものであれば足りる。
【0062】
このように重み付け係数Aが決まると、画像処理プロセッサ13は原画像としてのボクセル・データと平滑化画像とを重み付け係数Aを用いて加算する「重み付け加算」の処理を含む工程に入る。
【0063】
(重み付け加算を実行する処理C)
具体的には、画像処理プロセッサ13は、まず、一例として、前述したフィルタ1により平滑化された画像を重み付け加算用の平滑化画像として流用すべく、その画像データを画像記憶装置12から読み出す(ステップS8)。なお、この重み付け加算用の平滑化画像としては、前述したフィルタ2により平滑化されていた画像であってもよいし、また、原画像から別個に平滑化されていた画像を用いてもよい。
【0064】
次いで、画像処理プロセッサ13は、重み付け加算を実行するために、原画像としてのボクセル・データを画像記憶装置12から読み出す(ステップS9)。
【0065】
これが済むと、画像処理プロセッサ13は、1次元データ上のボクセルm毎に、下記の重み付け加算を実行して、重み付け加算画像Wを演算する(ステップS10)。
[数6]
W(m) = A×X(m) + B×Xs(m)
X(m) : 元のボクセル・データ(1次元データ)
Xs(m) : 平滑化結果
A : 重み係数
B = 1−A
このように重み付け加算された画像Wは、画像記憶装置12に格納されるとともに、モニタ17に表示される(ステップS11)。
【0066】
図13に、画像処理プロセッサ13により実行される上述の処理を模式化して示す。
【0067】
このように、絶対値Zが大きな値をとるときは、物体の境界部分などのボクセル値の変化が大きな領域を示している。したがって、図14に示すように、絶対値Zの大きな領域にあっては元の1次元データ(原画像のデータ)の比重をより大きくし、絶対値Zの小さな領域(元来、ボクセル値の変化が小さな領域)にあっては平滑化結果の比重をより大きくする重み付き加算を行うことで、元の1次元データの信号成分を保持しつつ、ノイズ成分を除去できることになる。本実施形態に係るノイズ除去アルゴリズムにより、適応型のノイズ除去フィルタが適用される。
【0068】
さらに説明すると、前述した重み付け係数Aによって、原画像としてのボクセル・データに写り込んでいる、構造物の境界などの、ボクセル値の変化が大きな領域に対してはボクセル・データのボクセル値の比重を高め、それ以外の領域に対しては平滑化画像のボクセル値の比重を高めるという、局所毎に(つまり、ボクセル値の変化が大きい領域か、それ以外の領域かに応じて)、ボクセル値の強調度合いを調整した描出がなされる。これにより、高周波成分を多く含む領域では、高周波成分ができるだけ維持されるので、構造物の輪郭などに対して高い描出性が保持され、それ以外の領域では高周波成分を抑えることにより画像ノイズが低減又は除去され、全体として、構造物等の目的物の視認性に優れた画像を提供できる。
【0069】
ところで、上述の重み付け加算画像Wにおいて、構造物の境界付近は原画像としてのボクセル・データが強調されるので、この境界付近には画像ノイズが残る可能性がある。しかしながら、人間の知覚(視覚)は、画素値の変化が大きい構造物の境界などに、より強く反応するために、その近傍に画像ノイズが含まれていたとしても、相対的に知覚の反応強度は小さく、画像を観察する上では殆ど問題にならない。
【0070】
上述した実施形態は更に種々の形態に変形して実施することができる。その幾つかの変形例を以下に説明する。
【0071】
(第1の変形例)
この第1の変形例は、重み付け係数Aを演算する処理の簡略化に関する。
【0072】
上述した実施形態の場合、差分値S及びその絶対値Zを演算する際、フィルタ1とフィルタ2を別々に適用してそれぞれ平滑化画像を得た上で、その2つの平滑化画像の差分を演算するようにしていた。これに関して、下記のように予めフィルタ係数の差分を行っておけば、1回のフィルタ処理で差分値S及びその絶対値Zを演算することができ、処理を簡単化できる。
【0073】
[数7]
差分値 S(m) = Σ{k3(i) × X(m)}
フィルタ係数 k3(i) = k1(i) − k2(i)
【0074】
(第2の変形例)
この第2の変形例は、前述した重み付け加算を実現する構成に関する。すなわち、前述した実施形態は画像処理プロセッサ13によるソフトウエア処理により重み付け加算を行うとしたが、この変形例は、このソフトウエア処理に代えて、論理回路などのデジタル回路を用いたハード構成を採用することができる。
【0075】
(第3の変形例)
第3の変形例は、重み付け加算に直接用いる原画像の別の例に関する。
【0076】
前述した実施形態にあっては、重み付け加算に対象となる画像を原画像とその平滑化画像としていたが、このうちの原画像の代わりに、原画像の高周波成分を強調した画像を用いるようにしてもよい。
【0077】
これを実施する画像処理装置の構成を図15に示す。同図は、この画像処理装置20には、図示のように、入力した原画像X(m)の画像からその高周波成分が強調した画像Xe(m)(例えば、骨などの構造物の輪郭が強調された画像)が生成される(処理S30参照)。つまり、
[数8]
W(m) = A×Xe(m) + B×Xs(m)
Xe(m) : 元のボクセル・データに対して強調処理を施したデータ
Xs(m) : 平滑化結果
A : 重み係数
B = 1−A
の演算が行なわれ、高周波成分強調画像W(m)が得られる。この高周波成分強調画像W(m)は重み付け加算に用いられる。この強調画像W(m)と平滑化画像Xs(m)が上述の如く重み付け加算に処理に付される。
【0078】
これにより、重み付け加算画像においても、構造物の輪郭(エッジ)などの高周波成分の部分が強調され、画像の視認性は更に向上する。
【0079】
(第4の変形例)
上述したノイズ除去処理は光線上に(1次元的に)位置するボクセル・データに対して施されるので、ノイズ除去処理とボリューム・レンダリングはボクセル・データに対して図16に示すように直列に処理(処理ST1:ノイズ除去処理、及び、処理ST2:ボリューム・レンダリングの処理)を施すことができる。つまり、パイプライン処理を行って、演算量の軽減と演算の迅速化を図ることができる。
【0080】
さらに、前述した実施形態及び変形例において、本発明に係るノイズ除去処理をボリューム・レンダリングに適用する例で説明した。しかし、本発明に係るノイズ除去処理は、ボリューム・レンダリング以外にも適用可能で、例えば最大値投影処理や最小値投影処理にも適用することができる。一般化すると、本発明に係るノイズ除去処理は、投影処理によってボクセル・データから3次元画像を生成する処理に適用することができると定義することができる。
【0081】
また、ボクセル・データの収集機器として3次元超音波診断装置を例に説明したが、同機器は、X線CT装置やMRI装置などの場合でも同様の効果が得られる。
【0082】
なお、本発明は上述した実施形態及びその変形例に記載のものに限定されるものではなく、特許請求の範囲の請求項に記載された各発明の要旨を逸脱しない範囲で、更に適宜に変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の画像処理装置を実施した超音波診断システムの一実施形態の概略を示す構成図。
【図2】実施形態に係る超音波診断システムに画像処理装置として設けたワークステーションの概略構成を示す機能ブロック図。
【図3】実施形態で実施する投影処理としてボリューム・レンダリングの概要を説明する図。
【図4】ワークステーションに設けた画像処理プロセッサで実行されるノイズ除去処理の一例を示す概略フローチャート。
【図5】(a),(b)は人間の視覚感度を説明する図。
【図6】実施形態で適用するフィルタ係数が互いに異なる2つのフィルタの感度特性を概念的に説明する図。
【図7】ボリューム・レンダリングで扱うボクセル・データの1次元データと光線(レイ)との関係を説明する図。
【図8】実施形態で用いる2つのフィルタの特性を概念的に説明する図。
【図9】フィルタ係数が互いに異なる2つのフィルタをボクセル・データの1次元データに適用する様子を説明する図。
【図10】フィルタ係数が互いに異なる2つのフィルタをボクセル・データの1次元データに適用するときのボクセル値との関係を模式的に説明する図。
【図11】実施形態で採用可能な、2つのフィルタからの出力画像の間で演算される差分値の絶対値Zに対する重み付け関数の一例を定性的に示すグラフ。
【図12】実施形態で採用可能な、2つのフィルタからの出力画像の間で演算される差分値Sに対する重み付け関数の一例を定性的に示すグラフ。
【図13】実施形態で実施されるボクセル・データのノイズを低減させるための一連の処理を概念的に説明する図。
【図14】実施形態で実施されるボクセル・データのノイズ低減を概念的に説明する図。
【図15】変形例で実施されるボクセル・データのノイズを低減させるための一連の処理(高周波成分の強調処理を含む)を概念的に説明する図。
【図16】別の変形例に係るノイズ除去処理の例を示す概念図。
【図17】ボリューム・レンダリングの不都合を説明する図。
【図18】ボリューム・レンダリングの不都合を説明する図。
【符号の説明】
【0084】
10 画像処理装置としてのワークステーション
12 画像記憶装置
13 画像処理プロセッサ
14 ROM
15 RAM
16 操作器
17 モニタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル画像に存在するノイズ、いわゆる画像ノイズを低減させる画像処理装置及び画像処理方法に関し、とくに、3次元空間で収集された画像データ(ボクセル・データ)にボリューム・レンダリングと呼ばれる投影処理を施して新たな3次元画像を生成・表示する画像処理画像処理装置、画像処理方法、及び、画像装置に関する。
【0002】
なお、この画像装置には、医用画像診断装置(超音波診断装置、X線CT装置、MRI装置など)や工業用画像装置(超音波探傷装置、X線CT装置など)が含まれる。
【背景技術】
【0003】
近年の画像処理に関する技術の進歩には目覚しいものがあり、医用画像診断装置の分野においても同様である。この分野では、短時間で被験者の体内の3次元データを収集できる装置が、X線CT装置やMRI(磁気共鳴イメージング)装置の分野で数多く開発、製品化されている。加えて、近年、超音波ビームを機械的にあるいは電子的に操作することにより、3次元空間内のデータを収集する超音波診断装置も同様に登場してきており、3次元データをいかに有効に活用するかということに対する関心は高まっている。
【0004】
この医用画像診断装置で収集された3次元データには、種々の原因に因るノイズを含まれることが一般である。つまり、一般に、自然の事象から収集される画像には多様なノイズが混入している。このノイズは画像ノイズとして総称され、良質の画像を提供するには、この画像ノイズをいかにして除去又は低減させるかということが重要な技術的課題である。とくに、高周波成分を主成分とする画像ノイズが混入している場合、画像上に写り込んでいる、目的とする被写体である構造物(例えば、医用画像の場合には、骨部分など)の視認性や濃度分解能(例えば医用画像の場合、軟部組織内の腫瘍の検知)を著しく阻害することが多い。
【0005】
これらの医用画像診断装置の使用に際して、3次元的に得られたデータから必要な情報を効果的・効率的に提供するには、対象物の3次元表示が有効である。この3次元表示の代表的な手法にボリューム・レンダリング(Volume Rendering)があり、X線CT装置やMRI装置などにおいて広く用いられている。
【0006】
このVR処理は、収集した3次元画像データ、すなわちボクセル・データに対して操作者が指定した視線方向を元に実行される。ボリューム・レンダリングの投影面は、視線に対して直交するように位置する。視線方向を指定することで投影面が決まるから、この投影面上の各ピクセルから視線に平行な方向に光線が設定される。この光線上には、ボクセル・データを成す複数のボクセルのうちの多数のボクセルが位置する。これらのボクセルのボクセル値と操作者が設定するオパシティ曲線とを加味した累積加算値が演算され、この累積加算値の集合がボリューム・レンダリング画像となる。
【0007】
このように、ボリューム・レンダリングに要する処理は光線上に位置するボクセルのボクセル値の重み付き累積加算処理となるため、図17に模式的に示すように、3次元データ内に多くのノイズが含まれている場合、3次元画像の画質は大きく損なわれてしまう。同図において、符号OB1、OB2は観察したい対象物を、RAYはVR処理の投影面の各ピクセルから直角に伸びる光線を、Nはノイズをそれぞれ示す。特に、観察したい対象物OB1,OB2が深部に位置する場合や、対象物OB1,OB2の表面を強調するようなオパシティ曲線が設定された場合においては、かかる画質の劣化は著しい。
【0008】
そこで、このノイズの影響を除去するために、クリッピング処理をボリューム・レンダリングに併用することが多い。クリッピング処理とは、ボリューム・レンダリングを行う際、特定の領域のボクセルを削除する処理である。このクリッピング処理を図18に模式的に例示する。同図において、符号RGclipはクリッピングされた領域である。クリッピング処理は、本来、観察したい対象物の手前に位置する観察に邪魔な物体を削除するために用いられる処理であるが、このようにノイズの除去を目的として用いられることも多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したクリッピング処理は必ずしも万能ではない。例えば、収集された3次元データに多くの強いノイズが存在する場合、深部に位置する対象物を観察するには、より広い領域をクリッピングしなければならない。このとき、図18の符号RGdeleteで示す部分領域のように、本来は観察したい対象物OB1あるいはその一部であるに関わらず、クリッピング作業と共に削除されてしまうことが多々在る。
【0010】
ボリューム・レンダリング像などの再構成した3次元画像は、本来、3次元空間内に位置する対象物の位置関係を観察することが主要目的の一つであるので、クリッピング処理により観察したい対象物の全部又は部分が削除されてしまうことは、本来の画像価値を大きく損なうことになる。また、クリッピング処理により観察される視野範囲は狭められてしまうという問題もある。
【0011】
クリッピング処理によらずにノイズの影響を除くには、ボリューム・レンダリング処理を行う前に前処理としてボクセル・データに対して各種のノイズ除去処理を行う方法もある。このノイズ除去処理には、平滑化フィルタを作用させる手法、ノイズの統計的性質を利用して除去する方法、周波数空間上でゲイン調整する手法などがある。
【0012】
しかしながら、前処理としてノイズ除去処理を行う場合、ノイズ除去処理を完了するまでボリューム・レンダリングを開始することができない。このため、リアルタイム性を求められる装置の場合、前処理に起因する遅延が新たな不都合を伴う。超音波ビームを3次元的に走査する3次元超音波診断装置は、そのような高いリアルタイム性を求められる装置の一つである。
【0013】
さらに、リアルタイム性の低下は甘受するとした場合でも、上述した画像ノイズの低減法は、未だ十分なノイズ低減効果を得ていないという現状にある。例えば、平滑化フィルタを作用させる手法の場合、画像に含まれている高周波成分による画像ノイズを除去又は低減させることは可能であるが、構造物の境界などの高周波成分を多く含む領域も平滑化してしまうため、空間分解能が劣化する、すなわち平易には「ボケ」た画像になってしまうという、ノイズ除去効果とは相反する状況にあった。
【0014】
また、ノイズの統計的性質を利用して除去する方法の場合、ノイズの統計的性質を事前に知ることが難しい上に、リアルタイム処理が困難であった。さらに、周波数空間上でゲイン調整する手法の場合、ノイズのみを選択的に除去することが難しく、フィルタリング後の画像にアーチファクトを生じ易いという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は、上述した画像ノイズの除去処理に対する現状に鑑みてなされたもので、とくに、収集したボクセル・データからボリューム・レンダリングを行なって3次元画像を表示するときに、高周波成分を中心とする画像ノイズを確実に除去又は低減させるとともに構造物の境界などの高周波成分を多く含む、観察上、重要な部位の情報は確実に確保し、その一方で、クリッピング処理に拠らず且つリアルタイム性が求められる装置にも適用できる画像処理装置及び画像処理方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置によれば、デジタル値から成る3次元画像のボクセル・データに投影処理を施して3次元画像を生成する装置において、前記投影処理の投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置する前記ボクセル・データの1次元データを指定する指定手段と、この指定手段により指定された1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示すボクセル値変化情報を演算する変化情報演算手段と、前記ボクセル・データの平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、前記変化情報演算手段により演算されたボクセル値変化情報に応じて重み付け係数を演算する重み付け係数演算手段と、前記ボクセル・データ又は当該ボクセル・データに変調を加えたデータと前記平滑化画像のデータとを前記重み付け係数を用いて相互に重み付け加算する重み付け加算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、前述した目的を達成するため、本発明に係る画像処理方法によれば、デジタル値から成る3次元画像のボクセル・データに投影処理を施して3次元画像を生成する方法が提供される。この画像処理方法は、前記投影処理の投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置する前記ボクセル・データの1次元データを指定し、この指定された1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示すボクセル値変化情報を演算し、この演算されたボクセル値変化情報に応じて重み付け係数を演算し、前記ボクセル・データ又は当該ボクセル・データに変調を加えたデータと前記ボクセル・データの平滑化画像のデータとを前記重み付け係数を用いて相互に重み付け加算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る画像処理装置及び画像処理方法によれば、収集したボクセル・データからボリューム・レンダリングを行なって3次元画像を表示するときに、原画像としてのボクセル・データの1次元データから演算抽出したボクセル値変化情報に応じて求めた重み付け係数を用いて、1次元データ(又はこの1次元データに変調を加えたデータ)と平滑化画像のデータの何れか一方を局所的に強調した重み付け加算を行うことができ、この結果、高周波成分を中心とする画像ノイズを確実に除去又は低減させることができるとともに、構造物の境界などの高周波成分を多く含む、観察上、重要な部位の情報は確実に確保して、画像全体としてノイズが少なく且つ構造物などの観察対象物に対する視認性が優れた画像を提供することができ、その一方で、クリッピング処理に拠らずかつリアルタイム性を求められる医用画像診断装置にも適用できる画像処理装置及び画像処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の画像処理装置及び画像処理方法に係る1つの実施の形態を説明する。なお、この画像処理装置及び画像処理方法は、超音波診断システム(又は装置)により実施されている。
【0020】
図1に、本実施形態に係る超音波診断システムを示す。この超音波診断システムは、同図に示すように、超音波ビームを被検体内で3次元的に走査することにより3次元空間内のデータを収集する3次元超音波診断装置1と、この装置にネットワーク用の通信ケーブルNを介して双方向で通信可能に接続された、本発明に係る画像処理装置としての3次元画像処理用ワークステーション2とを備える。つまり、本実施形態に係るシステムによれば、ワークステーション2は超音波診断装置2に外部接続された構成を採っている。
【0021】
超音波診断装置1は、装置本体1A、操作卓1B、ディスプレイ1C、及び、装置本体1Aのスキャンユニット(図示せず)に接続されたプローブ1Dを備える。これにより、従来の3次元超音波診断装置と同様に、プローブ1Dを介して被検体の内部が3次元走査される。ここで、プローブ1Dは、2次元配列アレイ超音波プローブであって電子的に3次元走査を行なうものであってもよいし、1次元配列アレイ超音波プローブであって機械的に或いは手動により3次元走査を行なうものであってもよい。このため、3次元の画像データ、すなわちボクセル・データも収集される。この走査による反射超音波に基づく受信信号は、スキャンユニットにて検波されて画像データとしてデジタルスキャンコンバータ(図示せず)に送られる。スキャンコンバータは超音波走査のデータからボクセル・データに変換し、この変換された画像データを表示プロセッサ(図示せず)に送る。表示プロセッサは、受信したデータを用いて指定モードの画像をディスプレイ1Cに表示するようになっている。
【0022】
通信ケーブルNは、装置本体1Aにおけるスキャンコンバータ(図示せず)の出力端に接続されており、このスキャンコンバータによるスキャンコンバージョン後の画像データをワークステーション2に伝送可能になっている。ワークステーション2は、一例として、図2に示す構成を有しており、超音波診断装置1で収集された画像データを所望の態様で観察する専用端末と用いられている。このワークステーション2で行う観察に必要な処理には、本発明に独特のノイズ低減処理及び投影処理の代表格であるボリューム・レンダリングが含まれる。
【0023】
図2に示すワークステーション2は、コンピュータの機能を有するハードウエアを備え、このハードウエアにインストールしたプログラムに基づくソフトウエア処理によりノイズを著しく低減させた画像を提供する装置である。
【0024】
具体的には、このワークステーション10は、ネットワークNに接続されたインターフェース11と、このインターフェース11に接続されたバスBに繋がる種々のユニットとを備える。このユニットには、画像記憶装置12、ノイズ低減用の画像処理プロセッサ13、ROM14、RAM15、操作記16、及びモニタ17が含まれる。
【0025】
画像記憶装置12は、図示しないが、半導体メモリなどの短期記憶装置及びハードディスクなどの長期記憶装置を備える。超音波診断装置1により収集されたグレイレベルの3次元デジタル画像のデータ(ボクセル・データ)は、ネットワークN及びインターフェース11を介して画像記憶装置12の短期記憶装置に一時的に記憶された後、保管のために、長期記憶装置に転送される。この一時保管及び転送を繰り返して、全ボクセル・データが保管される。なお、この長期記憶装置には、画像処理プロセッサ13により処理された画像データも保管される。
【0026】
画像処理プロセッサ13は、その起動時に、ROM14に予め記憶させてある、本発明に係るノイズ低減用のプログラムをワークメモリに読み出し、かかるプログラムにしたがって画像ノイズを低減させるための処理を行いながら、ボリューム・レンダリングのための処理を行い、ボリューム・レンダリング画像(3次元画像)のデータを生成する。この処理は、後述する図3に大略、示すように実行され、本発明の主要な特徴を成すものである。ROM14は、予め与えられたノイズ低減用のプログラムを記憶している。
【0027】
RAM15は、画像処理プロセッサ13によりノイズ低減の処理の必要な一時記憶メモリとして使用される。操作器16はキーボード、マウスなどから成り、オペレータが所望の情報をワークステーション2に与えることができる。モニタ17は、画像処理プロセッサ13の制御の元で、ノイズ低減処理に関わる画像や情報を表示するようになっている。
【0028】
このため、画像処理プロセッサ13で生成されたボリューム・レンダリング画像などの3次元画像はモニタ17に表示され、ユーザに提示される。同時に、その画像データは画像記憶装置12のハードディスク等の長期記憶装置に保存される。
【0029】
なお、本発明に係る画像処理装置は、必ずしも、このような構成に限定されることなく、上述したワークステーション2の機能を超音波診断装置1の内部のハードウエア構成により実現してもよい。具体的には、スキャンコンバータにより、本発明に係る画像処理装置を一体に行うように設定してもよい。また、上述したワークステーション2と同等の機能を有する演算ユニットをスキャンコンバータと表示プロセッサとの間に介在させるようにしてもよい。
【0030】
また、かかる表示態様に代えて、ワークステーション2で生成されたボリューム・レンダリング像などの3次元画像のデータをネットワークNを介して超音波診断装置1に返送し、その画像データを同装置のディスプレイ1Cに表示させるとともに、同装置内の記憶装置に保存させるようにしてもよい。
【0031】
さらに、ワークステーション2はネットワークNを介して超音波診断装置1に接続されているとしたが、必ずしも、そのような接続環境に無くてもよく、ワークステーション2はスタンドアロン方式で構成されていてもよい。その場合には、例えば運搬可能な記憶装置を用いて、超音波診断装置により収集したボクセル・データがワークステーション2に供給される。
【0032】
さらに、このワークステーション2は、ソフトウエア処理により画像ノイズの低減及びボリューム・レンダリングを実行するように構成されているが、本発明に係る画像処理装置は、そのようなソフトウエア処理には必ずしも限定されるものでは無い。このワークステーション2は、論理回路などのデジタル回路を用いて処理するように構成してもよい。
【0033】
続いて、図3〜14を参照して、この本実施形態に係るワークステーション2により実行される、ボリューム・レンダリングと共に実行される画像ノイズの低減処理を説明する。
【0034】
なお、画像記憶装置12には、超音波診断装置1により、被検体内をBモードで3次元的にスキャンして収集された3次元の白黒(グレイスケール)のデジタル画像が事前に格納されているものとし、この3次元の画像データ、すなわちボクセル・データに、本発明に係る、ノイズ低減処理を含むボリューム・レンダリングを適用するものとする。
【0035】
最初に、ボリューム・レンダリングそのものについて説明する。
【0036】
図3は、3次元直交座標系のボクセル・データに平行投影のボリューム・レンダリングを実行するときの概念を示している。なお、このボリューム・レンダリングは、ここでは平行投影によるボリューム・レンダリングを例示しているが、本発明は必ずしもそのような平行投影のボリューム・レンダリングに限定されるものではない。ボリューム・レンダリングの投影法にも種々のものがあるが、その各光線上のボクセル・データ(1次元データ)に適用可能である。また、3次元データとしてのボクセル・データは必ずしも直交座標系のボクセル・データである必要はない。
【0037】
まず、3次元画像(ボリューム・レンダリング画像)を生成するために、操作者は、図3に示すようにボクセル・データに対して視線方向を設定する。このとき、ボリューム・レンダリングの投影面は視線に対して直交するように位置する。
【0038】
次に、投影面上の各ピクセルから視線に平行な方向に光線が設定される。各光線上には、複数のボクセルが位置する。ボリューム・レンダリング画像は、これらボクセルのボクセル値と操作者が設定するオパシティ曲線を加味した累積加算値として演算される。
【0039】
図4は、ワークステーション2により実行される、画像ノイズ低減を伴うボリューム・レンダリングの一連の処理の流れを示す。この処理は、概略的に言えば、デジタル画像の構造物の境界(エッジ)を検出する処理A、原画像としてのボクセル・データと平滑化画像のデータとの重み付け加算のための重み付け係数を演算する処理B、及び、演算された重み付け係数を用いて、かかる重み付け加算を実行する処理Cを含む。これを、処理A〜Cの別に順次説明する。
【0040】
(デジタル画像の構造物の境界を検出する処理A)
人間の視覚感度は、図5(a),(b)に示すように、視点からの角度θに従って漸減する感度特性を有する。また、視点からの距離L(図5(b)の横軸)に対して、角度θが小さい範囲であれば、人間の視覚感度は同じ形状の漸減的な感度特性で近似できる。人間の視覚の感度分布は当然、2次元的な分布を有するが、図5は特定の方向に沿った1次元的な感度分布を示している。本実施形態では、全ての方向に対して同じ感度分布を持っているものと仮定するが、方向によって異なる感度分布を有するとして以下の処理を行うこともできる。
【0041】
本実施形態では、図6に示すように、特性の異なる2つの視覚感度分布を用いて、デジタル画像上の「構造物の境界部分などの画素値の変化が大きい領域」を検出する。ただし、図6は感度特性グラフの形状を示すもので、縦軸(感度)の値は特に意味を持たない。また、「画素値の変化が大きい領域」とは、画像上の一定以上の範囲にわたって画素値の変化が存在する領域を指す(つまり、画像ノイズのような画素単位の画素値変化を含まないものとする)。
【0042】
具体的には、ワークステーション2では、画像処理プロセッサ16により、以下の処理が順次実行される。
【0043】
まず、画像処理プロセッサ16は、オペレータからの操作器16を経由して与えられる操作情報に基づいて、画像記憶装置12から所望のボクセル・データ(本実施形態では、グレイレベルの3次元デジタル画像のデータ:本発明の原画像に相当する)を読み出し、これをモニタ17に表示させる(ステップS1)。
【0044】
次いで、画像処理プロセッサ16は、ボリューム・レンダリングのための投影面、視線、及び、各光線を操作者からの操作情報に基づいて指定する(図3参照;ステップS2)。
【0045】
次いで、画像処理プロセッサ16は、図3に模式的に示したように投影面上のピクセルから発せられる光線上に位置してい複数のボクセルを特定又は生成する(ステップS3)。ただし、実際には、3次元的に収集されたデータは離散的にサンプリングされているので、光線上に中心を持つボクセルは少ない。そのような場合、補間処理を用いて周囲のボクセル・データから光線上のボクセルを生成する。この結果、図7に示すように、各光線上にボクセル・データが設定される。以下の説明では、必要に応じて、この1次元的に位置しているボクセル・データを単に「1次元データ」と呼ぶことにする。元のボクセル・データ(原画像)にノイズ成分が含まれている場合は、補間処理よって生成された1次元データにも同様のノイズ成分が含まれることになる。
【0046】
次いで、画像処理プロセッサ13は、予め定めたアルゴリズムに基づいて、或いは、操作者からの操作情報に応答して、1次元データに1次元のROI(関心領域)を設定する(ステップS4)。
【0047】
次に、このROIにより指定された範囲の1次元データに作用させるノイズ除去フィルタについて説明する。
【0048】
画像処理プロセッサ13は、互いに異なる2つのフィルタ係数(例えば、図8参照)を有した1次元の平滑化フィルタを、1次元データ上のROIで指定された同一区間に作用させる(ステップS5)この様子を図9に模式的に示す。上述の2種類の1次元画像フィルタをフィルタ1およびフィルタ2と呼ぶことにする。このフィルタ1,2のフィルタ係数は規格化されている。このフィルタ1,2による平滑化処理の結果Y1(m)及びY1(m)は、定量的には、
[数2]
フィルタ1の場合: Y1(m) = Σ{k1(i) × X(m−i)}
フィルタ2の場合: Y2(m) = Σ{k2(i) × X(m−i)}
X(m) : ボクセル値
k1(i) : フィルタ1のフィルタ係数(規格化後)
k2(i) : フィルタ2のフィルタ係数(規格化後)
として表される。
【0049】
さらに、同ROIを光線上で移動させて1つの光線上の全てのボクセル・データに対してフィルタ1,2による平滑化処理を繰り返す(ステップS5A)。また、この平滑化処理は光線全てのボクセル・データに対して繰り返される(ステップS5B)。
【0050】
次いで、画像処理プロセッサ13は、上述したフィルタ1,2の平滑化結果Y1及びY1を用いて、両者の差分値Zを演算する。つまり、
[数3]
Y1およびY2の差分値 S = Y1−Y2
Sの絶対値 Z = abs(S)
つまり、差分値Sは差分画像を成し、絶対値Zは絶対値画像を成すとともに、本発明のボクセル値変化情報に対応する。
【0051】
ここで、絶対値Zの意義を、1次元データのボクセル値との関係を示す図10を用いて説明する。1次元データが図10に示すようなボクセル値を持つものとすると、絶対値Z(又は差分値S)は、図10の中の区間iiおよび区間ivにあっては、区間i、iii、vにおける値よりも相対的に大きな値をとる。換言すると、絶対値Zは、物体等の境界部分などのボクセル値の変化が大きな部分で相対的に大きな値をとり、それ以外の部分では絶対値Zは相対的に小さな値をとる。一方、1次元データにノイズ成分(ノイズは主に高周波成分)が含まれていたとしても、2種類のフィルタ1,2は平滑化フィルタ(ローパス・フィルタ)であるため、絶対値Zに対するノイズ成分の影響は非常に小さい。つまり、上述のように、2種類の平滑用フィルタ1,2による平滑化結果の差分の絶対値Zを演算すると、上述の差分値S又はその絶対値Zは、構造物としての被検体の骨など、画素値の変化の大きい境界の輪郭情報を示すことができる。
【0052】
(重み付け係数を演算する処理B)
そこで、画像処理プロセッサ13は、後述する重み付け加算に用いる重み係数Aを演算する(ステップS7)。この重み係数Aは本発明の特徴事項の1つを示すものであるので、以下に詳述する。
【0053】
後述する原画像としてのボクセル・データと平滑化画像のデータとの重み付き加算において、このようなボクセル値の変化が大きな領域ではボクセル・データに対する重み付け加算の係数が大きくなり、一方、それ以外の領域では平滑化画像に対する重み付け係数の方が大きくなるように、重み付け係数が設定される。
【0054】
つまり、ボクセル・データに対する重み付け係数Aは、図11又は図12に示す関数を参照して設定される。
【0055】
この関数は、数式として予めROM14に記憶させておき、その都度、かかる数式に基づいて演算することで重み付け係数Aを求めてもよいし、図11又は図12に示す関数に従う重み係数Aの値そのものを予めROM14にデータテーブルとして保存しておき、このテーブルを参照することで重み係数Aを設定するようにしてもよい。
【0056】
図11は、絶対値Zを用いて重み付け係数Aを決めるときの重み付け関数を例示している。この重み付け関数は、絶対値Zに対して、
[数4]
0≦ Amin ≦ A ≦ Amax ≦1
の範囲で重み付け係数Aを与える。具体的には、この重み付け関数の場合、重み付け係数Aは、絶対値Zが増加するにつれて、その最小値A=Aminから徐々に増加し、絶対値Zの或るしきい値付近において、それまでの増加よりも急峻に増加し、その後、最大値A=Amaxまで再び徐々に増加するようになっている。
【0057】
これにより、原画像におけるボクセル値の変化が小さい部位に対しては小さめの重み付け係数Aを設定でき、一方、ボクセル値の変化が上記しきい値に相当する適度な値を示す近辺でその変化を強調するように急峻に変わる重み付け係数Aを設定できる。
【0058】
また、図12に示す重み付け関数は、差分値Sを用いて重み係数Aを決めるときのものであり、差分値Sの正負の領域それぞれに対して、
[数5]
0≦ Amin ≦ A ≦ Amax ≦1
の範囲で重み付け係数Aを与えることができる。この差分値Sを使用する重み付け関数の場合も、重み付け係数Aは、絶対値Zのときと同様に、差分値Sがその正負それぞれの範囲にて絶対値が大きくなるにつれて、その最小値A=Aminから徐々に増加し、あるしきい値付近において、それまでの増加よりも急峻に増加し、その後、最大値A=Amaxまで再び徐々に増加するようになっている。1次元データに対する重み係数Aを求めると、平滑化結果に対する重み係数は「1−A」として演算できる。
【0059】
ただし、この差分値Sを利用する場合、差分値Sの正負それぞれに領域で独立して重み付け関数を決めることができる。図12に例示する重み付け関数Aの場合、差分値Sの負の領域と正の領域とでは、重み付け係数の立ち上げの急峻さを違えている。つまり、負の領域の方がより小さな差分値S(絶対値)に敏感に重み係数Aを上げている。
【0060】
したがって、この場合も、差分値Sの正負の領域にそれぞれにおいて個別に、1次元データにおけるボクセル値の変化が小さい部位に対しては小さめの重み付け係数Aを設定でき、一方、1次元データの変化が上記しきい値に相当する適度な値を示す近辺でその変化を強調するように急峻に変わる重み付け係数Aを設定できる。
【0061】
なお、この重み付け関数は、上述した図11及び図12に示した以外にも、様々な設定の仕方が可能である。例えば、絶対値Zの例で言えば、Z=0の点からZ=所定値まで重み係数が直線的に、ステップ状に、或いはZ=0の点から直ぐに急峻に立ち上がり、その後になだらかに飽和するように増加させることもできる。また、Z=0の点からZ=所定値まで重み付け係数Aが一定値を採るように設定してもよい(つまり、これを図示すると、図11において重み係数A=一定値の直線となる)。このように、本発明に適用可能な重み付け関数は、差分値Sのときにはその絶対値が大きくなっても重み係数が減少せず、また絶対値Zのときにはその値が大きくなっても重み係数が少なくとも減少しないという、いわゆる「非減少関数」を満足するものであれば足りる。
【0062】
このように重み付け係数Aが決まると、画像処理プロセッサ13は原画像としてのボクセル・データと平滑化画像とを重み付け係数Aを用いて加算する「重み付け加算」の処理を含む工程に入る。
【0063】
(重み付け加算を実行する処理C)
具体的には、画像処理プロセッサ13は、まず、一例として、前述したフィルタ1により平滑化された画像を重み付け加算用の平滑化画像として流用すべく、その画像データを画像記憶装置12から読み出す(ステップS8)。なお、この重み付け加算用の平滑化画像としては、前述したフィルタ2により平滑化されていた画像であってもよいし、また、原画像から別個に平滑化されていた画像を用いてもよい。
【0064】
次いで、画像処理プロセッサ13は、重み付け加算を実行するために、原画像としてのボクセル・データを画像記憶装置12から読み出す(ステップS9)。
【0065】
これが済むと、画像処理プロセッサ13は、1次元データ上のボクセルm毎に、下記の重み付け加算を実行して、重み付け加算画像Wを演算する(ステップS10)。
[数6]
W(m) = A×X(m) + B×Xs(m)
X(m) : 元のボクセル・データ(1次元データ)
Xs(m) : 平滑化結果
A : 重み係数
B = 1−A
このように重み付け加算された画像Wは、画像記憶装置12に格納されるとともに、モニタ17に表示される(ステップS11)。
【0066】
図13に、画像処理プロセッサ13により実行される上述の処理を模式化して示す。
【0067】
このように、絶対値Zが大きな値をとるときは、物体の境界部分などのボクセル値の変化が大きな領域を示している。したがって、図14に示すように、絶対値Zの大きな領域にあっては元の1次元データ(原画像のデータ)の比重をより大きくし、絶対値Zの小さな領域(元来、ボクセル値の変化が小さな領域)にあっては平滑化結果の比重をより大きくする重み付き加算を行うことで、元の1次元データの信号成分を保持しつつ、ノイズ成分を除去できることになる。本実施形態に係るノイズ除去アルゴリズムにより、適応型のノイズ除去フィルタが適用される。
【0068】
さらに説明すると、前述した重み付け係数Aによって、原画像としてのボクセル・データに写り込んでいる、構造物の境界などの、ボクセル値の変化が大きな領域に対してはボクセル・データのボクセル値の比重を高め、それ以外の領域に対しては平滑化画像のボクセル値の比重を高めるという、局所毎に(つまり、ボクセル値の変化が大きい領域か、それ以外の領域かに応じて)、ボクセル値の強調度合いを調整した描出がなされる。これにより、高周波成分を多く含む領域では、高周波成分ができるだけ維持されるので、構造物の輪郭などに対して高い描出性が保持され、それ以外の領域では高周波成分を抑えることにより画像ノイズが低減又は除去され、全体として、構造物等の目的物の視認性に優れた画像を提供できる。
【0069】
ところで、上述の重み付け加算画像Wにおいて、構造物の境界付近は原画像としてのボクセル・データが強調されるので、この境界付近には画像ノイズが残る可能性がある。しかしながら、人間の知覚(視覚)は、画素値の変化が大きい構造物の境界などに、より強く反応するために、その近傍に画像ノイズが含まれていたとしても、相対的に知覚の反応強度は小さく、画像を観察する上では殆ど問題にならない。
【0070】
上述した実施形態は更に種々の形態に変形して実施することができる。その幾つかの変形例を以下に説明する。
【0071】
(第1の変形例)
この第1の変形例は、重み付け係数Aを演算する処理の簡略化に関する。
【0072】
上述した実施形態の場合、差分値S及びその絶対値Zを演算する際、フィルタ1とフィルタ2を別々に適用してそれぞれ平滑化画像を得た上で、その2つの平滑化画像の差分を演算するようにしていた。これに関して、下記のように予めフィルタ係数の差分を行っておけば、1回のフィルタ処理で差分値S及びその絶対値Zを演算することができ、処理を簡単化できる。
【0073】
[数7]
差分値 S(m) = Σ{k3(i) × X(m)}
フィルタ係数 k3(i) = k1(i) − k2(i)
【0074】
(第2の変形例)
この第2の変形例は、前述した重み付け加算を実現する構成に関する。すなわち、前述した実施形態は画像処理プロセッサ13によるソフトウエア処理により重み付け加算を行うとしたが、この変形例は、このソフトウエア処理に代えて、論理回路などのデジタル回路を用いたハード構成を採用することができる。
【0075】
(第3の変形例)
第3の変形例は、重み付け加算に直接用いる原画像の別の例に関する。
【0076】
前述した実施形態にあっては、重み付け加算に対象となる画像を原画像とその平滑化画像としていたが、このうちの原画像の代わりに、原画像の高周波成分を強調した画像を用いるようにしてもよい。
【0077】
これを実施する画像処理装置の構成を図15に示す。同図は、この画像処理装置20には、図示のように、入力した原画像X(m)の画像からその高周波成分が強調した画像Xe(m)(例えば、骨などの構造物の輪郭が強調された画像)が生成される(処理S30参照)。つまり、
[数8]
W(m) = A×Xe(m) + B×Xs(m)
Xe(m) : 元のボクセル・データに対して強調処理を施したデータ
Xs(m) : 平滑化結果
A : 重み係数
B = 1−A
の演算が行なわれ、高周波成分強調画像W(m)が得られる。この高周波成分強調画像W(m)は重み付け加算に用いられる。この強調画像W(m)と平滑化画像Xs(m)が上述の如く重み付け加算に処理に付される。
【0078】
これにより、重み付け加算画像においても、構造物の輪郭(エッジ)などの高周波成分の部分が強調され、画像の視認性は更に向上する。
【0079】
(第4の変形例)
上述したノイズ除去処理は光線上に(1次元的に)位置するボクセル・データに対して施されるので、ノイズ除去処理とボリューム・レンダリングはボクセル・データに対して図16に示すように直列に処理(処理ST1:ノイズ除去処理、及び、処理ST2:ボリューム・レンダリングの処理)を施すことができる。つまり、パイプライン処理を行って、演算量の軽減と演算の迅速化を図ることができる。
【0080】
さらに、前述した実施形態及び変形例において、本発明に係るノイズ除去処理をボリューム・レンダリングに適用する例で説明した。しかし、本発明に係るノイズ除去処理は、ボリューム・レンダリング以外にも適用可能で、例えば最大値投影処理や最小値投影処理にも適用することができる。一般化すると、本発明に係るノイズ除去処理は、投影処理によってボクセル・データから3次元画像を生成する処理に適用することができると定義することができる。
【0081】
また、ボクセル・データの収集機器として3次元超音波診断装置を例に説明したが、同機器は、X線CT装置やMRI装置などの場合でも同様の効果が得られる。
【0082】
なお、本発明は上述した実施形態及びその変形例に記載のものに限定されるものではなく、特許請求の範囲の請求項に記載された各発明の要旨を逸脱しない範囲で、更に適宜に変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の画像処理装置を実施した超音波診断システムの一実施形態の概略を示す構成図。
【図2】実施形態に係る超音波診断システムに画像処理装置として設けたワークステーションの概略構成を示す機能ブロック図。
【図3】実施形態で実施する投影処理としてボリューム・レンダリングの概要を説明する図。
【図4】ワークステーションに設けた画像処理プロセッサで実行されるノイズ除去処理の一例を示す概略フローチャート。
【図5】(a),(b)は人間の視覚感度を説明する図。
【図6】実施形態で適用するフィルタ係数が互いに異なる2つのフィルタの感度特性を概念的に説明する図。
【図7】ボリューム・レンダリングで扱うボクセル・データの1次元データと光線(レイ)との関係を説明する図。
【図8】実施形態で用いる2つのフィルタの特性を概念的に説明する図。
【図9】フィルタ係数が互いに異なる2つのフィルタをボクセル・データの1次元データに適用する様子を説明する図。
【図10】フィルタ係数が互いに異なる2つのフィルタをボクセル・データの1次元データに適用するときのボクセル値との関係を模式的に説明する図。
【図11】実施形態で採用可能な、2つのフィルタからの出力画像の間で演算される差分値の絶対値Zに対する重み付け関数の一例を定性的に示すグラフ。
【図12】実施形態で採用可能な、2つのフィルタからの出力画像の間で演算される差分値Sに対する重み付け関数の一例を定性的に示すグラフ。
【図13】実施形態で実施されるボクセル・データのノイズを低減させるための一連の処理を概念的に説明する図。
【図14】実施形態で実施されるボクセル・データのノイズ低減を概念的に説明する図。
【図15】変形例で実施されるボクセル・データのノイズを低減させるための一連の処理(高周波成分の強調処理を含む)を概念的に説明する図。
【図16】別の変形例に係るノイズ除去処理の例を示す概念図。
【図17】ボリューム・レンダリングの不都合を説明する図。
【図18】ボリューム・レンダリングの不都合を説明する図。
【符号の説明】
【0084】
10 画像処理装置としてのワークステーション
12 画像記憶装置
13 画像処理プロセッサ
14 ROM
15 RAM
16 操作器
17 モニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル値から成る3次元画像のボクセル・データに投影処理を施して3次元画像を生成する画像処理装置において、
前記投影処理の投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置する前記ボクセル・データの1次元データを指定する指定手段と、
この指定手段により指定された1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示すボクセル値変化情報を演算する変化情報演算手段と、
前記ボクセル・データの平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、
前記変化情報演算手段により演算されたボクセル値変化情報に応じて重み付け係数を演算する重み付け係数演算手段と、
前記ボクセル・データ又は当該ボクセル・データに変調を加えたデータと前記平滑化画像のデータとを前記重み付け係数を用いて相互に重み付け加算する重み付け加算手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記投影処理はボリューム・レンダリングであり、前記視線は前記投影面に直交し、且つ、前記光線は前記視線に平行であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記指定手段は、前記視線に平行に前記投影面上の複数のピクセルそれぞれから前記視線に平行に伸びる前記光線を、前記ボクセル値変化情報を演算する度に設定する手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記変化情報演算手段は、フィルタ係数が互いに異なる2つの平滑化フィルタを前記1次元のデータに個別に適用して平滑化処理された2つの出力画像を得るフィルタリング手段と、前記2つの出力画像同士を画素毎に相互に差分して前記ボクセル値変化情報としての差分値を得る差分手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記変化情報演算手段は、フィルタ係数が互いに異なる2つの平滑化フィルタを前記1次元のデータに個別に適用して平滑化処理された2つの出力画像を得るフィルタリング手段と、前記2つの出力画像同士を画素毎に相互に差分して差分画像を得る差分手段と、前記差分画像の画素毎に絶対値を演算して前記ボクセル値変化情報としての絶対値画像のデータを得る絶対値演算手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の画像処理装置において、
前記2つの平滑化フィルタのフィルタ係数は、前記1次元データにおける一定範囲毎の平均化されたボクセル値の空間的な変化が大きくなるにつれて前記差分演算により演算される差分値の絶対値が大きくなるように設定されたフィルタ係数であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の画像処理装置において、
前記平滑化画像生成手段は、前記フィルタリング手段により平滑化処理された2つの出力画像のうちの一方の画像を前記平滑化画像として流用するように構成された手段であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の画像処理装置において、
前記重み付け係数演算手段は、前記差分演算により演算される差分画像の画素値の絶対値に対して非減少関数で定義され且つ非負の値をとる重み付け係数を演算する手段であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記重み付け加算手段は、前記重み付け係数をA、前記1次元データのボクセル位置をm、前記1次元データ又は当該1次元データに基づくデータをX(m)、前記平滑化画像をXs(m)、及び前記重み付け加算を施した画像をW(m)としたとき、
[数1]
W(m)=A・X(m)+(1−A)・Xs(m)
の式より重み付け加算するように構成されたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記変化情報演算手段は、予め演算され且つ互いに異なるフィルタ係数の相互の差分値をフィルタ係数とするフィルタを前記1次元データに適用して処理されたデータのボクセル毎に絶対値を前記ボクセル値変化情報として演算するようにしたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記ボクセル・データの各ボクセルに対してボクセル値に応じた変調を施した画像を生成する変調画像生成手段を備え、
前記重み付け加算手段は、前記1次元データに基づくデータとして、前記変調画像生成手段により生成された画像のデータを用いる手段であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像処理装置において、
前記ボクセル・データに施す変調は、当該ボクセル・データの高周波成分を強調する変調であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記ボクセル・データはグレイレベルのデジタル画像であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
コンピュータを請求項1〜13の何れか一項に記載の手段として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
デジタル値から成る3次元画像のボクセル・データに投影処理を施して3次元画像を生成する画像処理方法において、
前記投影処理の投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置する前記ボクセル・データの1次元データを指定し、
この指定された1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示すボクセル値変化情報を演算し、
この演算されたボクセル値変化情報に応じて重み付け係数を演算し、
前記ボクセル・データ又は当該ボクセル・データに変調を加えたデータと前記ボクセル・データの平滑化画像のデータとを前記重み付け係数を用いて相互に重み付け加算することを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の画像処理方法において、
前記ボクセル値変化情報の演算の処理は、フィルタ係数が互いに異なる2つの平滑化フィルタを前記1次元のデータに個別に適用して平滑化処理された2つの出力画像を得るステップと、前記2つの出力画像同士を画素毎に相互に差分して前記ボクセル値変化情報としての差分値を得るステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項17】
請求項15に記載の画像処理方法において、
前記ボクセル値変化情報の演算の処理は、フィルタ係数が互いに異なる2つの平滑化フィルタを前記1次元のデータに個別に適用して平滑化処理された2つの出力画像を得るステップと、前記2つの出力画像同士を画素毎に相互に差分して前記ボクセル値変化情報としての差分値を得るステップと、前記差分画像の画素毎に絶対値を演算して前記ボクセル値変化情報としての絶対値画像のデータを得るステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の画像処理方法において、
前記2つの平滑化フィルタのフィルタ係数は、前記1次元データ又は当該1次元データに基づくデータのボクセル値の変化が大きくなるにつれて前記差分演算により演算される差分画像の画素値の絶対値が大きくなるように設定されたフィルタ係数であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項19】
請求項16〜18の何れか一項に記載の画像処理方法において、
前記重み付け係数の演算により、前記差分演算により演算される差分画像の画素値の絶対値に対して非減少関数で定義され且つ非負の値をとる重み付け係数を演算することを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
デジタル値から成る3次元画像のボクセル・データに投影処理を施して3次元画像を生成する画像処理装置において、
前記投影処理の投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置する前記ボクセル・データの1次元データを指定する指定手段と、
この指定手段により指定された1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示すボクセル値変化情報を演算する変化情報演算手段と、
前記ボクセル・データの平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、
前記変化情報演算手段により演算されたボクセル値変化情報に応じて重み付け係数を演算する重み付け係数演算手段と、
前記ボクセル・データ又は当該ボクセル・データに変調を加えたデータと前記平滑化画像のデータとを前記重み付け係数を用いて相互に重み付け加算する重み付け加算手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記投影処理はボリューム・レンダリングであり、前記視線は前記投影面に直交し、且つ、前記光線は前記視線に平行であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記指定手段は、前記視線に平行に前記投影面上の複数のピクセルそれぞれから前記視線に平行に伸びる前記光線を、前記ボクセル値変化情報を演算する度に設定する手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記変化情報演算手段は、フィルタ係数が互いに異なる2つの平滑化フィルタを前記1次元のデータに個別に適用して平滑化処理された2つの出力画像を得るフィルタリング手段と、前記2つの出力画像同士を画素毎に相互に差分して前記ボクセル値変化情報としての差分値を得る差分手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記変化情報演算手段は、フィルタ係数が互いに異なる2つの平滑化フィルタを前記1次元のデータに個別に適用して平滑化処理された2つの出力画像を得るフィルタリング手段と、前記2つの出力画像同士を画素毎に相互に差分して差分画像を得る差分手段と、前記差分画像の画素毎に絶対値を演算して前記ボクセル値変化情報としての絶対値画像のデータを得る絶対値演算手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の画像処理装置において、
前記2つの平滑化フィルタのフィルタ係数は、前記1次元データにおける一定範囲毎の平均化されたボクセル値の空間的な変化が大きくなるにつれて前記差分演算により演算される差分値の絶対値が大きくなるように設定されたフィルタ係数であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の画像処理装置において、
前記平滑化画像生成手段は、前記フィルタリング手段により平滑化処理された2つの出力画像のうちの一方の画像を前記平滑化画像として流用するように構成された手段であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の画像処理装置において、
前記重み付け係数演算手段は、前記差分演算により演算される差分画像の画素値の絶対値に対して非減少関数で定義され且つ非負の値をとる重み付け係数を演算する手段であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記重み付け加算手段は、前記重み付け係数をA、前記1次元データのボクセル位置をm、前記1次元データ又は当該1次元データに基づくデータをX(m)、前記平滑化画像をXs(m)、及び前記重み付け加算を施した画像をW(m)としたとき、
[数1]
W(m)=A・X(m)+(1−A)・Xs(m)
の式より重み付け加算するように構成されたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記変化情報演算手段は、予め演算され且つ互いに異なるフィルタ係数の相互の差分値をフィルタ係数とするフィルタを前記1次元データに適用して処理されたデータのボクセル毎に絶対値を前記ボクセル値変化情報として演算するようにしたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記ボクセル・データの各ボクセルに対してボクセル値に応じた変調を施した画像を生成する変調画像生成手段を備え、
前記重み付け加算手段は、前記1次元データに基づくデータとして、前記変調画像生成手段により生成された画像のデータを用いる手段であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像処理装置において、
前記ボクセル・データに施す変調は、当該ボクセル・データの高周波成分を強調する変調であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記ボクセル・データはグレイレベルのデジタル画像であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
コンピュータを請求項1〜13の何れか一項に記載の手段として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
デジタル値から成る3次元画像のボクセル・データに投影処理を施して3次元画像を生成する画像処理方法において、
前記投影処理の投影面からの視線に基づいて当該投影面上の複数のピクセルそれぞれから伸びる光線を設定したときに当該光線上に位置する前記ボクセル・データの1次元データを指定し、
この指定された1次元データのボクセル値の空間的な変化が大きくなるほど大きい絶対値を示すボクセル値変化情報を演算し、
この演算されたボクセル値変化情報に応じて重み付け係数を演算し、
前記ボクセル・データ又は当該ボクセル・データに変調を加えたデータと前記ボクセル・データの平滑化画像のデータとを前記重み付け係数を用いて相互に重み付け加算することを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の画像処理方法において、
前記ボクセル値変化情報の演算の処理は、フィルタ係数が互いに異なる2つの平滑化フィルタを前記1次元のデータに個別に適用して平滑化処理された2つの出力画像を得るステップと、前記2つの出力画像同士を画素毎に相互に差分して前記ボクセル値変化情報としての差分値を得るステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項17】
請求項15に記載の画像処理方法において、
前記ボクセル値変化情報の演算の処理は、フィルタ係数が互いに異なる2つの平滑化フィルタを前記1次元のデータに個別に適用して平滑化処理された2つの出力画像を得るステップと、前記2つの出力画像同士を画素毎に相互に差分して前記ボクセル値変化情報としての差分値を得るステップと、前記差分画像の画素毎に絶対値を演算して前記ボクセル値変化情報としての絶対値画像のデータを得るステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の画像処理方法において、
前記2つの平滑化フィルタのフィルタ係数は、前記1次元データ又は当該1次元データに基づくデータのボクセル値の変化が大きくなるにつれて前記差分演算により演算される差分画像の画素値の絶対値が大きくなるように設定されたフィルタ係数であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項19】
請求項16〜18の何れか一項に記載の画像処理方法において、
前記重み付け係数の演算により、前記差分演算により演算される差分画像の画素値の絶対値に対して非減少関数で定義され且つ非負の値をとる重み付け係数を演算することを特徴とする画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−51202(P2006−51202A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235352(P2004−235352)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]