説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム、および、X線画像撮影装置

【課題】画像のランダムな場所に発生し、比較的幅が狭く、振幅の大きなスジ状の濃度ムラを除去することができるX線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、撮影された被写体および第1の方向に延びるスジ状の濃度ムラを含む元画像に対して、第1の方向と直交する第2の方向にフィルタ処理を行って高周波成分が抽出された第1の画像を生成する第1のフィルタ処理部と、第1の画像に対して、第2の方向に閾値判定を行って閾値よりも小さい画素値の画素が除去された第2の画像を生成する閾値判定部と、第2の画像に対して、第1の方向にフィルタ処理を行って低周波成分が抽出された第3の画像を生成する第2のフィルタ処理部と、元画像から第3の画像を減算することにより、元画像に含まれるスジ状の濃度ムラが補正された補正後の画像を生成する減算部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影された画像のランダムな場所に発生するスジ状(直線状)の濃度ムラ(アーチファクト、ノイズ成分)を除去する画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム、および、前述の画像処理装置を用いたX線画像撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被写体(被検者)にX線を照射し、被写体を透過したX線をX線検出器で検出して電気信号に変換し、変換した電気信号に基づいて被写体が撮影されたX線画像を生成するX線画像撮影装置が知られている。
【0003】
現在では、X線検出器として、受光したX線を電気信号に変換するフラットパネル型検出器(FPD(Flat Panel Detector))が利用されている。FPDを用いたX線画像撮影装置では、X線源から被写体にX線を照射し、被写体を透過したX線をFPDで検出して電気信号に変換し、FPDから被写体の画像データに相当する電気信号を読み出してX線画像が生成される。
【0004】
FPDは、X線画像の各画素に対応する複数のX線検出素子(光電変換素子)をマトリックス状に配列して構成されている。また、FPDは、図7に示すように、X線の受光面が行方向に対して複数のサブエリアに分割され、サブエリア毎にデータ読出回路が設けられている。つまり、各々のサブエリアには、X線画像の行方向の複数の画素から画像データを読み出すための複数の読出ライン(列)が含まれている。
【0005】
FPDから画像データの読み出しが行われる場合、FPDの各行を選択するための選択信号(ゲート信号)が1行ずつアクティブ状態とされるゲートスキャンが行われる。ゲートスキャンにより、FPDの行が1行ずつ選択され、1行分の画像データが各々の読出ラインおよびデータ読出回路を介して読み出される。また、全ての列について1行分の画像データの読み出しを繰り返すことで1画面分の画像データの読み出しが行われる。
【0006】
ところで、例えば、低湿環境において、FPDのデータ読出回路近辺で発生した静電気等に起因して、撮影されたX線画像(FPDから読み出されたX線画像の画像データ)に短いスジ状の濃度ムラが重畳される場合がある。
【0007】
このスジ状の濃度ムラは、FPDの、ある行をゲートスキャンした瞬間にのみ発生するなど(1ラインの横スジ)、撮影されたX線画像のランダムな場所に発生する。また、このランダムな場所に発生するスジ状の濃度ムラは、例えば、1〜3画素程度の幅の狭い高周波成分のものであるが、振幅(画素値)は非常に大きく、画像上では、被写体の関心領域上で真っ白になったり、真っ黒になるなど非常に目立って視認される。
【0008】
これに対し、フィルタ処理によりスジ状の濃度ムラを抽出して元画像から減算することにより、元画像からスジ状の濃度ムラを除去する処理が知られている。例えば、特許文献1には、グリッドを使用して撮影を行うことにより得られるグリッド像が記録された画像から、グリッドを除去する特性を有するフィルタを用いてグリッド像に起因するノイズを除去する技術が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、スジ状の濃度ムラの濃さによって除去する/しないを制御することで、単純なフィルタ処理で、発生するスジ状の濃度ムラを除去する処理が提案されている。この処理では、スジ状の濃度ムラと直交する方向の急激な変化を人体パターンとみなし、閾値に応じて、変化を緩やかにする前処理を施してから、フィルタ処理によりスジ成分を抽出し、これを元画像から引くことでスジ状の濃度ムラを除去している。
【0010】
なお、特許文献2では、閾値の設定によって、スジ状の濃度ムラの成分と線状画像情報成分との分離がなされ、閾値を超えるスジ状の濃度ムラは除去されない。つまり、閾値を超えるものは人体パターンとみなされている。しかし、特許文献2の閾値処理では、振幅の大きなスジ状の濃度ムラのみを除去することができず、無理に除去しようとして閾値を無限大にすると人体パターン(骨梁等)まで除去されてしまう。
【0011】
また、特許文献1,2が補正対象とするスジ状の濃度ムラは、例えば、10画素程度の比較的幅の広い低周波成分のものであり、前述のように、1〜3画素程度の比較的幅の狭い高周波成分のものを検出する場合には適していない。
【0012】
図8は、被写体とスジ状の濃度ムラについて、画素値と周波数との関係を表す概念図である。同図の縦軸は、被写体の画素値(スジ状の濃度ムラの振幅)、横軸は周波数を表す。同図に示すように、被写体は、その大部分が低周波成分(例えば、10画素以上の幅があるもの)であり、高周波成分(例えば、1〜3画素程度の幅のもの)は少ないと考えられる。
【0013】
従って、低周波成分のうち、画素値が大きいものの大部分は被写体であり、スジ状の濃度ムラの画素値は小さいのもが多いと考えられる。一方、高周波成分のうち、画素値が大きいものの大部分はスジ状の濃度ムラであり、被写体の画素値は小さいものが多いと考えられる。つまり、周波数が高くなるに従って、被写体の画素値は小さくなり、スジ状の濃度ムラの画素値は大きくなると考えられる。
【0014】
特許文献2は、このような前提に基づいて、低周波成分および高周波成分の全域にわたって閾値よりも小さいものをスジ状の濃度ムラ(低周波成分)として検出するものであり、高周波成分で高画素値のスジ状の濃度ムラを除去することは考慮されていない。
【0015】
また、スジ状の濃度ムラの発生箇所が固定されていれば、これを線欠陥としてあらかじめ抽出しておくことも考えられるが、ランダムな場所に発生する振幅の大きなスジ状の濃度ムラの場合は、撮影画像から直接スジ状の濃度ムラを抽出して除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−44645号公報
【特許文献2】特開2005−84902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、画像のランダムな場所に発生し、比較的幅が狭く、振幅の大きなスジ状の濃度ムラを除去することができる画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム、および、前述の画像処理装置を用いたX線画像撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、撮影された被写体および第1の方向に延びるスジ状の濃度ムラを含む元画像に対して、前記第1の方向と直交する第2の方向にフィルタ処理を行って高周波成分が抽出された第1の画像を生成する第1のフィルタ処理部と、
前記第1の画像に対して、前記第2の方向に閾値判定を行って該閾値よりも小さい画素値の画素が除去された第2の画像を生成する閾値判定部と、
前記第2の画像に対して、前記第1の方向にフィルタ処理を行って低周波成分が抽出された第3の画像を生成する第2のフィルタ処理部と、
前記元画像から前記第3の画像を減算することにより、前記元画像に含まれるスジ状の濃度ムラが補正された補正後の画像を生成する減算部とを備えていることを特徴とする画像処理装置を提供するものである。
【0019】
さらに、前記元画像を前記第1の方向に平均縮小した第4の画像を生成する平均縮小部と、
前記第3の画像を前記第1の方向に平均拡大した第5の画像を生成する平均拡大部とを備え、
前記第1のフィルタ処理部は、前記元画像の代わりに、前記平均縮小部によって生成された第4の画像に対してフィルタ処理を行い、かつ、前記減算部は、前記第3の画像の代わりに、前記平均拡大部によって生成された第5の画像を前記元画像から減算するものであることが好ましい。
【0020】
さらに、前記第1の画像に含まれる高周波成分の振幅を検出し、検出された高周波成分の振幅のうちの最大振幅の半値を前記閾値に設定する閾値設定部を備えていることが好ましい。
【0021】
もしくは、さらに、撮影条件を変えて撮影された複数の元画像から、それぞれの元画像に撮影された被写体の画素値およびスジ状の濃度ムラの画素値を検出し、前記被写体およびスジ状の濃度ムラの画素値の実績値に基づいて実験的に決定された、前記被写体およびスジ状の濃度ムラを区別することができる閾値が外部から設定される閾値設定部を備えていることが好ましい。
【0022】
また、前記閾値判定部は、前記閾値を超える点から前記スジ状の濃度ムラの第1の方向の前後で、所定の遡行画素数を超えない範囲で前記スジ状の濃度ムラが単調に変化する塊の画素は残し、それ以外の画素を除去するものであることが好ましい。
【0023】
また、前記第1のフィルタ処理部は、入力された画像に対して、メディアンフィルタを用いてフィルタ処理を行って第6の画像を生成し、前記入力された画像から前記第6の画像を減算することにより前記第1の画像を生成するものであることが好ましい。
【0024】
ここで、前記第1のフィルタ処理部は、前記第2の方向に対するスジ状の濃度ムラの画素数がNである場合、前記入力された画像に対して、(2N+1)画素のメディアンフィルタを用いてフィルタ処理を行うものであることが好ましい。
【0025】
もしくは、前記第1のフィルタ処理部は、入力された画像に対して、多段移動平均フィルタを用いてフィルタ処理を行って第6の画像を生成し、前記入力された画像から前記第6の画像を減算することにより前記第1の画像を生成するものであることが好ましい。
【0026】
また、前記第2のフィルタ処理部は、前記第2の画像に対して、メディアンフィルタを用いてフィルタ処理を行うものであることが好ましい。
【0027】
もしくは、前記第2のフィルタ処理部は、前記第2の画像に対して、多段移動平均フィルタを用いてフィルタ処理を行うものであることが好ましい。
【0028】
また、本発明は、被写体にX線を照射し、照射されたX線をFPDで検出して前記被写体のX線画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部から供給されたX線画像を前記元画像として前記スジ状の濃度ムラの補正処理を行う、上記のいずれかに記載の画像処理装置とを備えることを特徴とするX線画像撮影装置を提供する。
【0029】
また、本発明は、第1の方向に延びるスジ状の濃度ムラを含む元画像に対して、前記第1の方向と直交する第2の方向にフィルタ処理を行って高周波成分が抽出された第1の画像を生成し、
前記第1の画像に対して、前記第2の方向に閾値判定を行って該閾値よりも小さい画素が除去された第2の画像を生成し、
前記第2の画像に対して、前記第1の方向にフィルタ処理を行って低周波成分が抽出された第3の画像を生成し、
前記元画像から前記第3の画像を減算して前記スジ状の濃度ムラが補正された補正後の画像を生成することを特徴とする画像処理方法を提供する。
【0030】
ここで、前記元画像の代わりに、前記元画像を前記第1の方向に平均縮小した第4の画像に対してフィルタ処理を行って前記第1の画像を生成し、前記第3の画像の代わりに、前記第3の画像を前記第1の方向に平均拡大した第5の画像を前記元画像から減算して前記補正後の画像を生成することが好ましい。
【0031】
また、本発明は、第1の方向に延びるスジ状の濃度ムラを含む元画像に対して、前記第1の方向と直交する第2の方向にフィルタ処理を行って高周波成分が抽出された第1の画像を生成するステップと、
前記第1の画像に対して、前記第2の方向に閾値判定を行って該閾値よりも小さい画素が除去された第2の画像を生成し、
前記第2の画像に対して、前記第1の方向にフィルタ処理を行って低周波成分が抽出された第3の画像を生成するステップと、
前記元画像から前記第3の画像を減算して前記スジ状の濃度ムラが補正された補正後の画像を生成するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理方法を提供する。
【0032】
ここで、前記元画像の代わりに、前記元画像を前記第1の方向に平均縮小した第4の画像に対してフィルタ処理を行って前記第1の画像を生成するステップと、前記第3の画像の代わりに、前記第3の画像を前記第1の方向に平均拡大した第5の画像を前記元画像から減算して前記補正後の画像を生成するステップとをコンピュータに実行させることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、スジ状の濃度ムラと被写体とを区別するための所定の閾値を用いて、スジ状の濃度ムラと被写体との境界を明確化し、閾値を超えるもののみをスジ状の濃度ムラであると判定することにより、被写体を除去することなく、撮影された画像のランダムな場所に発生し、比較的幅が狭く、振幅の大きなスジ状の濃度ムラだけを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のX線画像撮影装置の構成を表す一実施形態のブロック概念図である。
【図2】図1に示す画像処理部の構成を表すブロック図である。
【図3】(A)〜(C)は、スジ状の濃度ムラの特性(プロファイル)を表すグラフである。
【図4】(A)〜(C)は、画像処理部の動作を説明する概念図である。
【図5】(D)〜(F)は、図4に続く画像処理部の動作を説明する概念図である。
【図6】(G)〜(I)は、図5に続く画像処理部の動作を説明する概念図である。
【図7】FPDの構成を表す概念図である。
【図8】被写体とスジ状の濃度ムラについて、画素値と周波数との関係を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム、および、X線画像撮影装置を詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明のX線画像撮影装置の構成を表す一実施形態のブロック概念図である。同図に示すX線画像撮影装置10は、被写体HにX線を照射し、被写体Hを透過したX線をPFDで検出して電気信号に変換し、変換した電気信号に基づいて、被写体Hが撮影されたX線画像を生成する。撮影装置10は、撮影部12と、画像処理部14と、出力部16と、指示入力部18と、制御部20とによって構成されている。
【0037】
指示入力部18は、撮影開始の指示、画像処理条件、出力指示等の各種の指示を入力するためのものである。指示入力部18からは、撮影開始の指示、画像処理条件、出力指示等を表す指示信号が出力される。
【0038】
制御部20は、指示入力部18から供給された指示信号に応じて、撮影装置10の動作を制御する部位である。制御部20は、例えば、撮影部12における撮影の制御、画像処理部14における画像処理の制御、出力部16における出力の制御等を行う。
【0039】
撮影部12は、制御部20の制御に従って、被写体HにX線を照射し、被写体Hを透過したX線をFPD28で検出することで被写体Hの撮影を行う部位である。撮影部12からは、被写体Hが撮影されたX線画像の画像データ(デジタル画像データ)が出力される。
【0040】
画像処理部14は、本発明の画像処理装置であり、制御部20の制御に従って、撮影部12から供給されたX線画像の画像データに対して、オフセット補正、残像補正、欠陥画素補正、本発明の画像処理方法に従うスジ状の濃度ムラ補正等を含む画像処理を行う部位である。画像処理部14は、例えば、コンピュータ上で動作する画像処理プログラム(ソフトウェア)によって構成される。画像処理部14からは、画像処理後のX線画像の画像データが出力される。
【0041】
出力部16は、制御部20の制御に従って、画像処理部14から供給された画像処理後のX線画像の画像データを出力する部位である。出力部16は、例えば、X線画像を画面上に表示するモニタ、X線画像をプリント出力するプリンタ、X線画像の画像データを記憶する記憶装置等である。
【0042】
続いて、撮影部12について説明する。
【0043】
撮影部12は、図1に示すように、X線源22と、撮影台24と、X線検出部26とを備えている。
【0044】
X線源22は、撮影時に、設定された強度のX線を設定された時間だけ照射(曝射)する。X線源22から照射されたX線は、撮影台24上の被写体Hを透過してX線検出部26に入射される。
【0045】
X線検出部26は、被写体Hを透過したX線を検出して電気信号(X線画像の画像データ)に変換するものであり、FPD28、A/D(アナログ/デジタル)変換器(図示省略)等を備えている。FPD28からは、被写体Hが撮影されたX線画像のデータ(アナログデータ)が出力され、これがA/D変換器によりA/D変換されて、変換後のX線画像の画像データ(デジタルデータ)が出力される。
【0046】
続いて、画像処理部14について説明する。
【0047】
図2は、図1に示す画像処理部の構成を表すブロック図である。同図に示す画像処理部14は、X線画像のランダムな場所に発生し、比較的幅が狭く、振幅の大きなスジ状の濃度ムラを補正する部分のみを表したものである。画像処理部14は、平均縮小部30と、第1のフィルタ処理部32と、閾値設定部34と、閾値判定部36と、第2のフィルタ処理部38と、平均拡大部40と、減算部42とを備えている。
【0048】
撮影部12から画像処理部14に供給されたX線画像(元画像)は平均縮小部30に入力される。元画像には、撮影された被写体Hおよび第1の方向(画像の横方向)に延びるスジ状の濃度ムラが含まれている。
【0049】
平均縮小部30は、元画像を横方向に平均縮小した第1の画像を生成する。平均縮小は、例えば、横方向の2画素を平均し、これを新たな画素の画素値とすることにより、元画像を横方向に1/2のサイズに縮小する処理である。
【0050】
元画像を横方向に平均縮小することにより、画像サイズを数分の1に縮小することができる。そのため、画像処理部14における処理の計算量を大幅に削減することができ、処理を高速化することができる。また、元画像を横方向に平均縮小することにより、その縮小率に応じて、スジ状の濃度ムラのうちの横方向の長さが補正対象となる所定の長さを満たさない短いスジをスジ候補から除外することができるという利点もある。
【0051】
続いて、第1のフィルタ処理部32は、平均縮小部30によって生成された第1の画像に対して、第1の方向と直交する第2の方向(画像の縦方向)にフィルタ処理を行って高周波成分が抽出された第2の画像を生成する。
【0052】
例えば、第1の画像に対して、メディアンフィルタを用いてフィルタ処理を行って第6の画像を生成し、第1の画像から第6の画像を減算することにより第2の画像を生成することができる。なお、縦方向に対するスジ状の濃度ムラの画素数がNである場合、第1の画像に対して、(2N+1)画素のメディアンフィルタを用いてフィルタ処理を行うことが望ましい。
【0053】
また、第1の画像に対して、移動平均の重みを画素ごとに変える多段移動平均フィルタを用いてフィルタ処理を行って第6の画像を生成し、第1の画像から第6の画像を減算することにより第2の画像を生成することもできる。
【0054】
ここで、スジ状の濃度ムラは、縦方向(幅方向)の画素数が1〜3画素程度であり、被写体Hと比べて高周波成分となる。従って、第1のフィルタ処理部32により縦方向にフィルタ処理を行って、第1の画像から高周波成分を抽出することにより、スジ状の濃度ムラを抽出することができる。なお、この時同時に、被写体Hの縦方向の高周波成分も第2の画像に含まれる。
【0055】
続いて、閾値設定部34は、元画像に撮影された被写体Hと、スジ状の濃度ムラとを区別するための閾値を設定するための部位である。
【0056】
閾値設定部34は、例えば、第1の画像に含まれる高周波成分の振幅を検出し、検出された複数の高周波成分の振幅のうちの最大振幅の半値を閾値として設定する。
【0057】
また、外部から指示入力部18介して閾値を閾値設定部34に設定することもできる。この場合、例えば、撮影条件を変えて撮影された複数の元画像から、それぞれの元画像に撮影された被写体Hの画素値と、スジ状の濃度ムラの振幅(画素値)とを検出し、両者の画素値の実績値に基づいて実験的に決定された、両者を区別することができる最適な閾値が閾値設定部34に設定される。
【0058】
続いて、閾値判定部36は、第1のフィルタ処理部32によって生成された第2の画像に対して、閾値設定部34から供給された閾値を用いて縦方向に閾値判定を行って閾値よりも小さい画素値の画素が除去された第3の画像を生成する。閾値判定により、第2の画像に含まれる被写体Hの縦方向の高周波成分が除去されるとともに、スジ状の濃度ムラのうちの閾値よりも小さい成分もノイズ(スジではない)とみなされ、除去される。
【0059】
ここで、図3(A)は、スジ状の濃度ムラの特性(プロファイル)を表すグラフである。このグラフの縦軸は、スジ状の濃度ムラの幅方向(縦方向)の振幅、横軸は、幅方向の位置(幅の広さ)を表す。このグラフに示す例のスジ状の濃度ムラは、閾値を超える2つのパルス状の波形になっている。同図では、スジ状の濃度ムラの振幅の所定位置に閾値が設定されている。また、スジ状の濃度ムラの閾値を超えない部分は、画素値=0(ゼロ)を中心としてプラス側ないしマイナス側にわずかに振れている。
【0060】
続いて、同図(B)は、特許文献2における前処理後のスジ状の濃度ムラの特性を表すグラフである。このグラフは、同図(A)に示すスジ状の濃度ムラに対して、特許文献2の前処理を施した後のスジ状の濃度ムラを表したものである。このグラフに示すように、特許文献2の前処理後のスジ状の濃度ムラは、振幅の閾値を超える部分が除去(画素値=0)されている。ただし、ある箇所で閾値を超えた場合、その画素の幅方向の前後で、ある遡行画素数を超えない範囲でスジ状の濃度ムラが単調に変化する塊全部の画素値が0とされる。
【0061】
同図(C)は、本実施形態における閾値判定処理後のスジ状の濃度ムラの特性を表すグラフである。このグラフは、同図(A)に示すスジ状の濃度ムラに対して、本実施形態における閾値判定処理を施した後のスジ状の濃度ムラを表したものである。このグラフに示すように、本実施形態の閾値判定処理後のスジ状の濃度ムラは、振幅の閾値よりも小さい部分が除去(画素値=0)されている。ただし、ある箇所で閾値を超えた場合、その画素の幅方向の前後で、ある遡行画素数を超えない範囲でスジ状の濃度ムラが単調に変化する塊全部の画素値はそのままの状態で残され、それ以外の部分の画素値が0とされる。
【0062】
被写体Hの部分は、高周波成分の高画素値のスジ状の濃度ムラと比べて振幅が小さいため、閾値を超えるもののみをスジ状の濃度ムラであると判定することにより、被写体Hを除去することなく、スジ状の濃度ムラだけを除去することができる。
【0063】
続いて、第2のフィルタ処理部38は、閾値判定部36によって生成された第3の画像に対して、例えば、メディアンフィルタまたは多段移動平均フィルタを用いて第1の方向にフィルタ処理を行って低周波成分が抽出された第4の画像を生成する。
【0064】
前述の平均縮小では、縮小率に応じて、スジ状の濃度ムラのうちの横方向の長さが補正対象となる所定の長さを満たさないものが除去されるが、第3の画像には、横方向の長さが補正対象となる所定の長さを満たさないものが残されている。第2のフィルタ処理部38は、フィルタのカットオフ周波数に応じて、横方向の長さが補正対象となる所定の長さに満たないものを除去し、補正対象となる所定の長さ以上のものだけを抽出する。
【0065】
なお、横方向において、被写体Hとスジ状の濃度ムラとの境界が急峻な場合、つまり、両者の境界がはっきりしている場合、多段移動平均フィルタを用いてフィルタ処理を行うと両者の境界がぼけてしまうので、メディアンフィルタを用いてフィルタ処理を行うことが望ましい。また、この場合には、同様の理由から、平均縮小の縮小率を小さくする、もしくは平均縮小を行わないことが望ましい。
【0066】
続いて、平均拡大部40は、第2のフィルタ処理部38によって生成された第4の画像を第1の方向に平均拡大した第5の画像を生成する。平均拡大は、平均縮小によって縮小された元画像に対応して、第4の画像を元画像のサイズに戻す処理であり、例えば、平均縮小によって元画像が横方向に1/2のサイズに縮小された場合、各画素を横方向に2倍することにより元画像のサイズに拡大する。
【0067】
最後に、減算部42は、元画像から、平均拡大部40によって生成された第5の画像、つまり、横方向に延びるスジ状の濃度ムラだけを含む画像を減算することにより、元画像に含まれるスジ状の濃度ムラが補正された補正後の画像を生成する。
【0068】
次に、本発明の画像処理方法に従って、画像処理部14において、スジ状の濃度ムラを補正する場合の動作を説明する。
【0069】
撮影部12から供給されたX線画像(元画像)は平均縮小部30に入力される。
まず、平均縮小部30により、図4(A)に示す元画像を横方向に1/2のサイズに平均縮小した第1の画像(同図(B)参照)が生成される。
【0070】
続いて、第1のフィルタ処理部32により、同図(B)に示す第1の画像に対して、縦方向にフィルタ処理を行って高周波成分が抽出され、横方向のスジ状の濃度ムラおよび被写体Hの縦方向の高周波成分を含む第2の画像(同図(C)参照)が生成される。
【0071】
続いて、閾値判定部36により、図4(C)に示す第2の画像に対して、閾値設定部34から供給された閾値を用いて縦方向に閾値判定を行って閾値よりも小さい画素値の画素が除去された第3の画像(図5(F)参照)が生成される。
【0072】
ここで、図5(D)に示すように、補正対象とする高周波成分の高画素値のスジ状の濃度ムラの振幅(画素値)は、被写体Hの画素値よりも大きい。同図(E)に示すように、閾値判定により、第2の画像に含まれる被写体Hの縦方向の高周波成分が除去されるとともに、スジ状の濃度ムラの閾値よりも小さい成分が除去される(図3(C)参照)。
【0073】
続いて、第2のフィルタ処理部38により、図5(F)に示す第3の画像に対して、横方向にフィルタ処理を行って低周波成分が抽出され、横方向のスジ状の濃度ムラのうちの補正対象となる所定の長さ以上のものだけを含む第4の画像(図6(G)参照)が生成される。
【0074】
続いて、平均拡大部40により、平均縮小部30によって1/2のサイズに縮小された元画像に対応して、図6(G)に示す第4の画像を元画像のサイズに戻すために、第4の画像を横方向に2倍に平均拡大した第5の画像(同図(H)参照)が生成される。なお、平均縮小および平均拡大は必須ではなく、縮小/拡大をせずに上記の処理を行うようにしてもよい。
【0075】
最後に、減算部42により、元画像から同図(H)に示す第5の画像、つまり、横方向に延びるスジ状の濃度ムラだけを含む画像を減算することにより、元画像に含まれるスジ状の濃度ムラが補正された補正後の画像(同図(I)参照)が生成される。
【0076】
上記のように、スジ状の濃度ムラと被写体Hとを区別するための所定の閾値を用いて、スジ状の濃度ムラと被写体Hとの境界を明確化し、閾値を超えるもののみをスジ状の濃度ムラであると判定することにより、被写体Hを除去することなく、撮影されたX線画像のランダムな場所に発生し、比較的幅が狭く、振幅の大きなスジ状の濃度ムラだけを除去することができる。
【0077】
次に、撮影装置10の動作を説明する。
【0078】
指示入力部18において、ユーザにより撮影条件が設定され、撮影指示が与えられると、被写体Hの撮影が開始される。撮影が開始されると、撮影部12において、X線源22から、撮影条件に応じて設定された強度のX線が設定された時間だけ照射される。照射されたX線は、撮影台24上の被写体Hを透過してX線検出部26のFPD28に入射され、被写体Hを透過したX線が電気信号(X線画像の画像データ)に変換される。
【0079】
続いて、FPD28から画像データ(アナログデータ)が読み出され、A/D変換器によりA/D変換が行われ、変換後の画像データ(デジタルデータ)が出力される。画像処理部14では、変換後のX線画像の画像データに対して、横方向のスジ状の濃度ムラの補正を含む画像処理が行われる。画像処理後のX線画像の画像データは出力部16に供給され、例えば、モニタ上に表示されたり、プリント出力されたりする。
【0080】
なお、本発明は、X線画像だけでなく、どのような画像に対しても適用可能である。また、本発明は、画像のランダムな場所に発生し、比較的幅が狭く、振幅の大きなスジ状の濃度ムラに対して好適なものであるが、これに限定されるものではない。また、横方向のスジ状の濃度ムラに適用する例を挙げて説明したが、縦方向のスジ状の濃度ムラに対しても同様に適用可能である。
【0081】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0082】
10 X線画像撮影装置
12 撮影部
14 画像処理部
16 出力部
18 指示入力部
20 制御部
22 X線源
24 撮影台
26 X線検出部
28 FPD
30 平均縮小部
32 第1のフィルタ処理部
34 閾値設定部
36 閾値判定部
38 第2のフィルタ処理部
40 平均拡大部
42 減算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影された被写体および第1の方向に延びるスジ状の濃度ムラを含む元画像に対して、前記第1の方向と直交する第2の方向にフィルタ処理を行って高周波成分が抽出された第1の画像を生成する第1のフィルタ処理部と、
前記第1の画像に対して、前記第2の方向に閾値判定を行って該閾値よりも小さい画素値の画素が除去された第2の画像を生成する閾値判定部と、
前記第2の画像に対して、前記第1の方向にフィルタ処理を行って低周波成分が抽出された第3の画像を生成する第2のフィルタ処理部と、
前記元画像から前記第3の画像を減算することにより、前記元画像に含まれるスジ状の濃度ムラが補正された補正後の画像を生成する減算部とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記元画像を前記第1の方向に平均縮小した第4の画像を生成する平均縮小部と、
前記第3の画像を前記第1の方向に平均拡大した第5の画像を生成する平均拡大部とを備え、
前記第1のフィルタ処理部は、前記元画像の代わりに、前記平均縮小部によって生成された第4の画像に対してフィルタ処理を行い、かつ、前記減算部は、前記第3の画像の代わりに、前記平均拡大部によって生成された第5の画像を前記元画像から減算するものであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
さらに、前記第1の画像に含まれる高周波成分の振幅を検出し、検出された高周波成分の振幅のうちの最大振幅の半値を前記閾値に設定する閾値設定部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
さらに、撮影条件を変えて撮影された複数の元画像から、それぞれの元画像に撮影された被写体の画素値およびスジ状の濃度ムラの画素値を検出し、前記被写体およびスジ状の濃度ムラの画素値の実績値に基づいて実験的に決定された、前記被写体およびスジ状の濃度ムラを区別することができる閾値が外部から設定される閾値設定部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記閾値判定部は、前記閾値を超える点から前記スジ状の濃度ムラの第1の方向の前後で、所定の遡行画素数を超えない範囲で前記スジ状の濃度ムラが単調に変化する塊の画素は残し、それ以外の画素を除去するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1のフィルタ処理部は、入力された画像に対して、メディアンフィルタを用いてフィルタ処理を行って第6の画像を生成し、前記入力された画像から前記第6の画像を減算することにより前記第1の画像を生成するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1のフィルタ処理部は、前記第2の方向に対するスジ状の濃度ムラの画素数がNである場合、前記入力された画像に対して、(2N+1)画素のメディアンフィルタを用いてフィルタ処理を行うものであることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1のフィルタ処理部は、入力された画像に対して、多段移動平均フィルタを用いてフィルタ処理を行って第6の画像を生成し、前記入力された画像から前記第6の画像を減算することにより前記第1の画像を生成するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第2のフィルタ処理部は、前記第2の画像に対して、メディアンフィルタを用いてフィルタ処理を行うものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第2のフィルタ処理部は、前記第2の画像に対して、多段移動平均フィルタを用いてフィルタ処理を行うものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
被写体にX線を照射し、照射されたX線をFPDで検出して前記被写体のX線画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部から供給されたX線画像を前記元画像として前記スジ状の濃度ムラの補正処理を行う、請求項1〜10のいずれかに記載の画像処理装置とを備えることを特徴とするX線画像撮影装置。
【請求項12】
第1の方向に延びるスジ状の濃度ムラを含む元画像に対して、前記第1の方向と直交する第2の方向にフィルタ処理を行って高周波成分が抽出された第1の画像を生成し、
前記第1の画像に対して、前記第2の方向に閾値判定を行って該閾値よりも小さい画素が除去された第2の画像を生成し、
前記第2の画像に対して、前記第1の方向にフィルタ処理を行って低周波成分が抽出された第3の画像を生成し、
前記元画像から前記第3の画像を減算して前記スジ状の濃度ムラが補正された補正後の画像を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
前記元画像の代わりに、前記元画像を前記第1の方向に平均縮小した第4の画像に対してフィルタ処理を行って前記第1の画像を生成し、前記第3の画像の代わりに、前記第3の画像を前記第1の方向に平均拡大した第5の画像を前記元画像から減算して前記補正後の画像を生成することを特徴とする請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項14】
第1の方向に延びるスジ状の濃度ムラを含む元画像に対して、前記第1の方向と直交する第2の方向にフィルタ処理を行って高周波成分が抽出された第1の画像を生成するステップと、
前記第1の画像に対して、前記第2の方向に閾値判定を行って該閾値よりも小さい画素が除去された第2の画像を生成し、
前記第2の画像に対して、前記第1の方向にフィルタ処理を行って低周波成分が抽出された第3の画像を生成するステップと、
前記元画像から前記第3の画像を減算して前記スジ状の濃度ムラが補正された補正後の画像を生成するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項15】
前記元画像の代わりに、前記元画像を前記第1の方向に平均縮小した第4の画像に対してフィルタ処理を行って前記第1の画像を生成するステップと、前記第3の画像の代わりに、前記第3の画像を前記第1の方向に平均拡大した第5の画像を前記元画像から減算して前記補正後の画像を生成するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする請求項14に記載の画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−76467(P2011−76467A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228698(P2009−228698)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】