説明

画像処理装置

【課題】実際の対象物と撮像手段との関係を確認する作業や、対象物と画像処理結果とを比較する作業を、モニタを用いることなく容易に行うことができるようにする。
【解決手段】撮像部1内に、LCD12を含む投光部11をCCD10と同軸になるように配備し、LCD12に表示された画像がCCD10の視野に向けて投影されるようにする。処理部2では、CCD10により生成された画像を用いてワークW0の欠陥Dを検出し、その欠陥を含む領域Rに対応する領域RPに周囲より明るい画像データが設定された投影用画像50を生成し、これを投影部11に与えて投影させる。この投影により、ワークW0の表面のうち、画像処理により欠陥として検出された範囲が、領域RPの投影像によるマーキングパターンMにより明示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産現場など、大きさや形状が統一された複数の物品を計測したり、その計測結果に基づき物品を検査する目的に用いられる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像処理装置として、1台のカメラにより生成された画像を用いた2次元の計測処理を行うものと、複数台のカメラにより生成されたステレオ画像を用いた3次元計測を行うものとがある。いずれのタイプの画像処理装置でも、使用に先立ち、対象物を正しく撮像することができるように、カメラの視野の範囲や光軸の方向を合わせる必要がある。
【0003】
従来のカメラの調整処理では、カメラにより生成された画像をモニタに表示し、モニタの表示と実際の対象物とを見比べながら、最適な撮像状態になるように、カメラの位置や姿勢を調整する。
【0004】
また、上記の調整が終了して装置が利用される場合にも、適宜、処理結果をモニタに表示することにより、ユーザの便宜を図るようにしている。この表示の従来例として、たとえば、特許文献1には、ステレオ画像中の特定の点や領域を対象にした3次元計測を実行し、その計測結果を計測対象物の全体像に対応づけて立体的に表示することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2に記載された発明では、目視検査を行う検査者に、CCDや視線検出用のセンサが設けられたヘッドマウントディスプレイを装着させる。さらに、特許文献2には、CCDにより生成された画像を目視用画像としてディスプレイに表示すると共に、視線センサにより検査者の視線が固定されたことが検出されたときの画像を処理して欠陥を検出し、その欠陥の位置を示す枠画像を目視用画像に重ねて表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−53147号公報
【特許文献2】特開2009−150866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、モニタに処理結果が表示される場合には、現場のユーザは、実際の対象物と表示とを見比べることによって、処理結果の適否などを確認する。しかし、モニタの設置場所が撮像が行われる場所から離れている場合には、その確認が困難になり、作業に支障をきたすおそれがある。
【0008】
特許文献2に記載された発明によれば、ユーザは、対象物の画像と画像処理結果とを容易に見比べることができるが、あくまでも画像の比較ができるだけであり、実物と画像処理の結果とを照合することにはならない。
【0009】
また、特許文献2に記載された発明では、ユーザが特殊な装置(ヘッドマウントディスプレイ)を装着する必要があるが、この方法が適用できるのは、特許文献2のように、ユーザが現場に拘束されることを前提とする場合である。生産ラインを流れる製品を対象にした自動検査や、ピッキングシステムにおける3次元計測処理など、ユーザが常時処理対象物を見続ける必要のない用途にまで、この方法を適用するのは困難である。
【0010】
本発明は、上記の問題点に着目し、実際の対象物と撮像手段との関係を確認する作業や、実際の対象物と画像処理結果とを比較する作業を、モニタを用いることなく、撮像が行われる現場で容易に行うことができるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、2次元の撮像素子を有する撮像手段と、撮像素子が生成した2次元画像(以下、「撮像画像」という。)を撮像手段から入力し、その入力画像を用いてあらかじめ定められた画像処理および計測処理を実行する画像処理手段とを具備する画像処理装置に適用される。
【0012】
本発明が適用された画像処理装置は、2次元のディジタル画像を表示するための表示素子を供え、この表示素子に表示された画像を撮像手段の視野に向けて投影する画像投影手段と、周囲と明るさまたは色が異なる画像データが設定された2次元パターンを含むディジタル画像を画像投影手段に与えて当該画像の投影処理を実行させる投影制御手段とを具備する。また、画像投影手段から投影される画像の結像面内における撮像素子の撮像対象範囲が、画像投影手段からの画像が投影される範囲に包含されるように、撮像手段と画像投影手段との関係が調整されると共に、2次元パターンが撮像対象領域内に投影される。
【0013】
上記の構成によれば、画像投影手段から投影される画像の結像面に対象物の表面がほぼ位置合わせされた状態になったとき、この対象物の表面に鮮明な画像を投影することが可能になる。また、撮像素子の撮像対象範囲内に周囲と明るさまたは色が異なる画像データが設定された2次元パターンが投影されるので、撮像素子により撮像される範囲に含まれる対象物の表面のうち、上記の2次元パターンが投影される箇所を当該パターンの投影像により明示することが可能になる。さらに、撮像素子の撮像対象範囲は投影される画像が結像する範囲に包含されているので、撮像対象範囲のいずれの位置にも上記の2次元パターンを投影することが可能になる。
【0014】
したがって、実物の対象物に対し、撮像手段の視野との関係を表すパターンを投影したり、撮像画像に対する処理により検出された部位を示すパターンを投影するなどの投影処理を行うことが可能になり、撮像画像をモニタの表示により確認する必要をなくすことができる。
【0015】
上記の画像処理装置の好ましい一実施態様では、投影制御手段は、画像処理手段の処理結果に基づき上記2次元パターンの画像データを設定する画素を決定して、画像投影手段に投影される画像を生成する。このようにすれば、たとえば、画像処理により所定の特徴を有する部位が検出された場合に、その検出範囲に対応する表示素子側の画素に輝度の高い画像データを設定して投影処理を行うことにより、実際の対象物の表面のうち画像処理により検出された範囲を明るい投影パターンにより明示することが可能になる。また検出される部位の位置、形状、大きさが種々に変動しても、容易に対応することが可能になる。
【0016】
他の好ましい実施態様による画像処理装置は、上記の2次元パターンを含む画像を登録するための画像登録手段を具備し、この画像登録手段に登録されている画像の1つを読み出して表示素子に表示させることにより、当該画像の投影処理を実行させる。
【0017】
上記の実施態様によれば、たとえば、撮像手段の視野の中心位置や計測対象範囲などを表す2次元パターンを含む画像を画像登録手段に登録しておくことにより、撮像手段の位置や光軸を合わせる作業を行う場合には、登録された画像を投影することにより、モニタの表示を確認することなく作業を行うことが可能になる。また、複数の画像を登録して、その中から作業に必要な画像をユーザに選択させたり、ユーザが自身の用途に応じて作成した画像を登録するなどすれば、利便性をより一層向上することができる。
【0018】
他の好ましい実施態様による画像処理装置では、撮像手段および画像投影手段は、同軸光学系を形成し、かつ同一の筐体の内部に収容される。また、画像投影手段から投影される画像の結像面内における撮像素子側の各画素に対応する各点に、表示素子の互いに異なる画素からの画像データが投影されるように、撮像手段と画像投影手段との関係が調整される。
【0019】
上記の構成によれば、撮像手段と画像投影手段との光軸が同軸に揃えられると共に、撮像素子と表示素子との画素の対応関係が明確にされているので、表示素子の各画素の中から、撮像対象範囲内の明示したい箇所への投影を行う画素を容易に特定して、投影用画像を設定することが可能になる。
【0020】
他の好ましい実施態様による画像処理装置では、画像投影手段は、撮像手段とは別体に形成されると共に、画像投影手段から投影される画像の結像面内における撮像素子側の各画素に対応する各点に、表示素子の互いに異なる画素からの画像データが投影されるように、撮像手段に対する関係が調整された状態で配備される。また画像処理手段は、撮像手段から入力された画像を用いて3次元計測処理を実行する。また投影制御手段は、画像処理手段の3次元計測処理の結果に基づく3次元情報を表示素子の表示面に透視変換し、その透視変換結果を用いて3次元計測結果を表す画素に2次元パターンの画像データが設定された画像を生成し、この画像を表示素子に表示させることにより当該画像を投影させる。
【0021】
なお、この実施態様においては、撮像手段を、複数の2次元カメラによるステレオカメラとして構成し、このステレオカメラを用いた3次元計測を行うのが望ましい。
【0022】
上記の実施態様の構成によれば、たとえば、3次元計測処理により取得した3次元情報に基づき、計測対象部位の輪郭形状を示す3次元パターンを生成して、これを表示素子の表面に透視変換することにより、表示素子から見た計測対象部位の輪郭形状を表す2次元パターンを得ることができる。したがって、この輪郭形状を表す2次元パターンを周囲より明るい画像データが設定されたパターンとした投影用画像を生成して投影すれば、ユーザは、投影された輪郭パターンと実際の対象物の輪郭線とを見比べて、3次元計測の結果の適否を認識することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、実際の対象物の撮像対象範囲内に投影される2次元パターンにより、撮像手段の視野と対象物との関係を確認したり、画像処理の結果と実際の対象物の状態とを比較することが可能になるので、ユーザは、モニタの表示を見なくとも、確認作業を容易に行うことが可能になる。また、撮像素子の撮像対象範囲内のどの場所にも、2次元パターンを投影することができ、パターンの形状や大きさも自由に設定することが可能であるので、利便性が高い装置を提供することができる。また、ユーザは、視認用の器具を装着する必要がなく、必要に応じて、実際の対象物を視覚により認識するだけで良いから、様々な用途の画像処理に利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明が適用される画像処理装置の構成例を示す図である。
【図2】撮像部の光学系の構成と処理部の機能ブロック図とを対応づけて示す図である。
【図3】ワークの欠陥に対する光学系の関係、および処理部が実行する処理手順とを対応づけて示す図である。
【図4】2個の撮像部の視点を位置合わせする場合の各撮像部の光学系とワークとの関係、および処理部が実行する処理手順を示す図である。
【図5】2個の撮像部の計測対象領域を位置合わせする場合の各撮像部の光学系とワークとの関係、および処理部が実行する処理手順とを対応づけて示す図である。
【図6】撮像部と投影部とが別体にされたタイプの画像処理装置の構成を示す図である。
【図7】図6の画像処理装置の光学系とワークとの関係、および処理部が実行する処理手順とを対応づけて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明が適用される画像処理装置の使用例を示す。
この実施例の画像処理装置は、生産現場において、完成した製品または製品の一部を構成する部品(この実施例では「ワークW0」として示す。)の表面に視認される傷や汚れ等の欠陥を検査する目的に用いられるもので、検査対象のワークW0の上方に配備された撮像部1と、コンピュータを含む処理部2とにより構成される。なお、処理部2には、必要に応じて、モニタや設定用の操作部(キーボード、マウスなど)が接続される(他の実施例でも同様である。)。
【0026】
処理部2は、図示しないワーク検出用のセンサからの検出信号により撮像位置へのワークW0の搬入を判別し、これに応じて撮像部1を駆動する。これにより撮像処理が実施され、処理部2に撮像画像が入力されると、処理部2では、この撮像画像に対して欠陥検出用の画像処理を実行する。この画像処理には、2値化、エッジ抽出など、欠陥の特徴を抽出するための処理と、抽出された特徴を計測する処理とが含まれる。
【0027】
さらに処理部2は、画像処理の結果に基づき欠陥の有無を判別し、その判別結果を図示しない外部装置に出力すると共に、後記する検査結果画像を生成する。
【0028】
さらに、この実施例の画像処理装置では、欠陥が検出されたときに、その検出部位や欠陥の状態を現場の作業者が容易に確認できるように、実際のワークW0の該当箇所に撮像部1から輝度の高い光を投光して、その箇所を明示するようにしている。
【0029】
図2は、上記画像処理装置の撮像部1の光学系の構成と処理部2の機能ブロック図とを対応づけて示したものである。この図2および次の図3では、表面に欠陥Dが生じているワークW0を示す。
図2に示すように、撮像部1には、レンズ14、CCD10、投影部11、およびハーフミラー15による同軸光学系が設けられる。このほか、図示していないが、撮像部1には、CCD10や投影部11を駆動するための回路や、画像信号の出力回路などが含まれる。
【0030】
投影部11には、液晶パネル(LCD)13およびバックライト用の光源14などが含まれる。LCD12は、CCD10と同じく、レンズ14の焦点位置に配備される。またこの実施例では、LCD12とCCD10とは、縦、横のサイズ(画素数)が同一で、解像度も等しいものとする。
【0031】
ワークW0の表面には、図示しない外部照明からの光が照射される。図2では、ワークW0の表面がレンズ14の合焦位置に合わせられているものとして、その表面の1点からの反射光の光路を一点鎖線により示す。この一点鎖線に示すように、ワークW0からレンズ14に入射した光はハーフミラー16を介してCCD10に導かれ、これを受光したCCD10によってワークWの表面状態を表す画像が生成される。
【0032】
投影部11では、光源13からのバックライト照明の下でLCD12に2次元画像が表示されたとき、この画像中の各画素からの光が、ハーフミラー15およびレンズ14を介してレンズ14の視野範囲内に投光される。これにより、LCD12に表示されている画像がワークW0の表面に投影される。
【0033】
処理部2には、撮像処理部21、検査実行部22、投影用画像生成部23、投影動作制御部24の機能が設定される。撮像処理部21は、CCD10を駆動し、生成された撮像画像を入力する。検査実行部22は、撮像処理部21から上記の撮像画像の供給を受け、欠陥検出のための画像処理や欠陥の有無を判別する処理を実行する。また外部機器に判別結果を出力する処理や、検査結果画像を生成する処理も、検査実行部22により実行される。
【0034】
投影用画像生成部23は、検査実行部22が欠陥Dを検出して検査結果画像を生成したことに応じて起動し、LCD12に表示させる投影用画像を生成する。投影動作制御部24は、投影用画像生成部23により生成された投影用画像を投影部11に出力し、上記した投影処理を行う。
【0035】
この実施例では、CCD10とLCD12とは、画素数や解像度が完全に一致し、レンズ14の焦点の位置に配備されているので、LCD12から投影される画像の結像面においては、CCD10の撮像対象範囲と、LCD12からの画像の投影範囲とは完全に一致する。すなわち、CCD10とLCD12との間では、同じ座標にある画素同士が対応する関係となる。よって、ワークの表面がレンズ14の合焦位置に合わせられている場合には、撮像画像中の座標(x,y)に現れるワークW0上の任意の点に対し、LCD12側の同一の座標(x,y)から画像データを投影することが可能になる。
【0036】
この実施例では、上記の光学系の特性を利用して、実際のワークW0のうちの画像処理により欠陥が検出された箇所に、輝度の高い色彩によるパターン画像(以下、これを「マーキングパターン」という。)が投影されるようにしている。この投影により、現場の作業者は、実際のワークの明るく照明された箇所を不良が検出された部位として視認することができるので、検査結果の適否や不良の程度を容易に確認することができる。
【0037】
図3は、撮像部1の光学系について、ワークW0の欠陥Dに対する光路を示すと共に、処理部2において実施される処理の概略手順のフローチャートを処理中に生成される画像の例に関連づけて示す。以下、この図を参照して、上記の処理部2および撮像部1において実行される処理を説明する。
【0038】
検査対象のワークW0が搬入されると、処理部2では、撮像処理部21によりCCD10を駆動して、生成された画像を入力し(ステップA)、検査実行部22による画像処理(計測処理や判別処理を含む。)を実行する(ステップB)。また、欠陥Dが検出された場合には、検査実行部22は、その検出結果を示す検査結果画像40を生成する。
【0039】
図3に示す検査結果画像40は、撮像画像をベースとするもので、画像中の欠陥D1を囲む範囲に矩形領域Rが設定されている。以下では、この領域Rを「検出領域R」という。
【0040】
投影用画像生成部23は、前記した光学系の特性に基づき、検査結果画像40中の検出領域Rと同じ範囲に輝度の高い色彩領域RP(たとえば赤色の領域)を設定し、その他の画素に暗色(たとえば黒色)を設定した投影用画像50を生成する(ステップC)。
投影動作制御部24は、この投影用画像50を投影部11に与えて、投影処理を実行させる(ステップD)。これにより、投影用画像50中の領域RP内の各画素からは、その領域RPに設定された色彩による光がワークW0に投光されるが、他の暗色が設定された画素からは殆ど光は投光されない。よって、実際のワークW0の検出領域Rに対応する範囲に、領域RPの投影像によるマーキングパターンMが投影されて、この範囲が明示される。このマーキングパターンMの投影範囲は、検査結果画像50中の検出領域R内に現れた箇所に相当する。したがって、マーキングパターンM内に実際の欠陥Dが含まれているならば、検査の結果は正しいということになる。
【0041】
上記の投影処理によれば、画像処理の結果に基づき、マーキングパターンMの位置や大きさを自由に変更することができるので、検出された欠陥の位置、大きさ、形状などが個々のワークW0によってばらついても、なんの問題もなく、実際のワークW0の表面に欠陥の検出範囲を明示することが可能になる。したがって、撮像が行われる現場付近にモニタが配備されていなくとも、作業者は検査の結果を支障なく確認することができる。
【0042】
なお、上記の実施例では、説明を簡単にするために、CCD10とLCD12とのサイズや解像度が統一されているものとしたが、これらが異なる場合でも、LCD12からの投影用画像の結像面内におけるCCD10の撮像対象範囲が投影用画像の結像範囲に包含され、かつ、この撮像対象範囲内のCCD10の各画素に対応する各点に、それぞれLCD12の互いに異なる画素からの画像データが投影される関係が成立していれば、CCD10とLCD12との間の画素の対応関係に基づき、上記と同様の投影処理を実施することができる。
【0043】
また、上記の投影処理は欠陥の検出結果を示す目的に限定されるものではない。たとえば、人手により実施される工程において、搬入されたワークを撮像して画像処理により作業対象部位を検出し、検出された対象部位にマーキングパターンを投影することも可能である。このような処理によれば、作業者は、作業対象部位を容易に認識して効率良く作業を行うことができる。
【0044】
さらに、上記構成の画像処理装置では、種々の2次元パターンを含む画像を生成して投影することができるので、図4および図5に示すように、本格的な使用の前に、撮像部1の視野や光軸の方向などを調整する作業に利用することができる。
【0045】
図4および図5の実施例では、図2,3の例より大きいワークW1を対象として、図1〜3の実施例と同様の構成の撮像部1を2つ使用して、ワークW1を異なる視点から撮像する。図4,5では、これらの撮像部1の構成を、図2,3と同じ数字にa,bを付けた符号により示すと共に、各撮像部1a,1bに対して処理部2が実行する処理手順を示すフローチャートと投影用画像とを対応づけている。
【0046】
また、図4,5には示していないが、各撮像部1a,1bは、同一の処理部2に接続され、処理部2において、各撮像部1a,1bから入力された撮像画像を用いた3次元計測処理、または画像毎に異なる内容の2次元の画像処理を実行する。また、この処理部2には、撮像部1a,1b毎に、図2に示した撮像処理部21、投影用画像生成部23、投影動作制御部24の機能が設定される。
【0047】
なお、装置の構成は上記に限らず、たとえば各撮像部1a,1bを、それぞれ別個の処理部2に接続して、処理部2,2間で通信を行いながら処理を行ったり、各処理部2,2から上位機器に処理結果を出力して、上位機器で各処理結果を二次加工することも可能である。
【0048】
図4の実施例では、ワークW1の表面の一点に各撮像部1a,1bの視野の中心点を合わせるために、投影機能を利用する。
【0049】
具体的に説明すると、この実施例では、撮像部1a,1b毎に、十字型のパターンPa,Pbを含む投影用画像51a,51bを生成し(ステップC1,C2)、これらの投影用画像を投影部12a,12bに与えて投影処理を行わせる(D1,D2)。各パターンPa,Pbの中心部(十字のクロス部分)は、CCD10a,10bの中心部の画素に対応し、いずれの投影用画像51a,51bとも、パターンPa,Pbの構成画素以外の画素に、背景色として暗色が設定される。また各投影用画像51a,51bにおけるパターンPa,Pbの形状や大きさは一致しているが、それぞれ色彩が異なる。たとえば、画像51aのパターンPaは赤色に設定され、画像52bのパターンPbは青色に設定される。
【0050】
上記によれば、それぞれの撮像部1a,1bの投影部11a,11bから上記の投影用画像51a,51bを投影することにより、ワークWの表面に対し、各パターンPa,Pbの投影像による十字型のマーキングパターンMa,Mbが投影される。これらのマーキングパターンMa,Mbは、それぞれ撮像部1a,1bの視野の中心部を表すことになるので、作業者は、各マーキングパターンMa,Mbの中心部が目標とする位置で合わせるように、各撮像部1a,1bの位置や姿勢を調整することにより、撮像部1a,1bの視点を合わせることができる。
【0051】
図5の実施例は、図4と同様のワークW1に対し、各撮像部1a,1bによる計測範囲を位置合わせする目的に投影機能を利用したものである。
この実施例でも、処理部2は、各撮像部1a,1bに対して図4の例と同様のステップC1,D1、ステップC2,D2を実行するが、この実施例では、撮像画像に設定される計測対象領域に対応する範囲に輝度の高い色彩による矩形パターンSa,Sbを設定した投影用画像52a,52bを生成する。さらに、この実施例でも、図4の例と同様に、各投影用画像52a,52bの矩形パターンSa,Sbにそれぞれ異なる色彩を設定する。
【0052】
上記の処理によれば、各投影部11a,11bから上記の投影用画像52a,52bを投影することにより、各矩形パターンSa,Sbの投影像Ta,Tbを、各撮像部1a,1bの計測対象領域を示すマーキングパターンとしてワークW1に投影することができる。これにより、作業者は、各色彩のマーキングパターンTa,Tbが重なる範囲ができるだけ広くなるように、撮像部の光軸の向きを調整することによって、最適な計測状態を設定することができる。
【0053】
なお、図5の実施例においては、ノイズなどの影響を考慮して、CCD10a,10bの外周部の画素により生成される画像データを計測対象から除外し、これに伴い、投影用画像52a,52bでも、矩形パターンSa,Sbの周囲に暗色領域を設定しているが、各撮像部1a,1bの視野に対応する範囲全体を明示したい場合には、投影用画像52a,52bの全ての画素に輝度の高い画像データを設定して投影を行ってもよい。
【0054】
つぎに、図4,5の実施例では、撮像画像に対する画像処理に基づかずに、あらかじめ登録された投影用画像を読み出して投影するものであるが、これらの実施例でも、投影処理中に撮像を行って、生成された撮像画像を処理し、その処理結果に基づき各投影用画像の状態を変更してもよい。
【0055】
たとえば、図5の実施例に関して説明すると、各投影用画像52a,52bが投影されている状態下で、CCD10a,10bのいずれかによる撮像を行って、撮像画像からマーキングパターンTa,Tbが重なる範囲を検出し、その重なり範囲の面積があらかじめ定めた基準値を超えたときに、各パターンSa,Sbの色彩を統一するような処理を行うことができる。このようにすれば、設定作業に不慣れな作業者でも、ワークW1に投影されたマーキングパターンTa,Tbの色彩が統一されるまで位置合わせ作業を行うことにより、撮像部1a,1bの関係を計測に最適な状態に設定することが可能になる。
【0056】
なお、上記図4,5の例では、2つの撮像部1a,1bの視点や計測対象領域を位置合わせする目的で投影機能を利用しているが、第1実施例のように単体の撮像部1を使用する場合にも、同様の投影処理を行うことにより、ワークに対する撮像部1の視点の位置や光軸方向を合わせる作業を支援することができる。
【0057】
また、上記では、図4および図5をそれぞれ別の実施例として説明したが、これらの実施例に適用された4種類の投影用画像51a,51b,52a,52bを含む複数種の投影用画像を処理部2に登録しておき、これらの投影用画像の中から、目的に応じた投影用画像を選択して投影処理に使用するようにしてもよい。さらに、ユーザが画像作成ソフトにより作成した画像を投影用画像として登録できるようにすれば、自由度が増し、撮像部1の位置合わせ以外の目的にも利用することができる。たとえば、ワークを手作業で計測対象位置に配置する場合に、撮像および画像処理が終了したことを作業者に報知する目的で、ワークの特定の場所にマーキングパターンを投影することができる。
【0058】
つぎに、図6は、投影部と撮像部とを分離させたタイプの画像処理装置の構成例を示す。この図6では、撮像部を100、投影部を110、処理部を200として示す。撮像部100には、CCD101やレンズ102など、撮像機能に関わる部材のみが配備され、投影部110には、LCD111,光源112,および投光用のレンズ113が設けられる。また、この実施例では、計測対象物の例として、立方体状のワークW2を示す。
【0059】
図6には示していないが、この実施例では、図中の撮像部100を含む複数台の撮像部が設けられる(以下、全ての撮像部に、図中の撮像部の符号100を適用する。)。処理部200は、各撮像部100から入力された撮像画像を用いた3次元計測処理を実行するもので、撮像処理部201、3次元計測処理部202、投影用画像生成部203、投影動作制御部204、キャリブレーション処理部205の機能が設定される。
【0060】
撮像処理部201は、各撮像部100のCCD101を同じタイミングで駆動し、各CCD101からの撮像画像を入力する。3次元計測処理部202は、これらの撮像画像を用いてワークW2に対する3次元計測処理を実行する。投影用画像生成部203は、この3次元計測処理の結果に基づいて、投影用画像を生成する。投影動作制御部204は、投影画像生成部203から投影用画像の提供を受けて、これを投影部110のLCD111に出力することにより、当該画像を撮像部100の視野に向けて投影させる。
【0061】
キャリブレーション処理部205は、計測処理に先立ち、キャリブレーション作業を行う作業者の指示に従って動作し、複数の撮像部100毎に、3次元計測用のパラメータを求めるキャリブレーション演算を実行し、この演算により導出されたパラメータを内部のメモリに登録する。さらにキャリブレーション処理部205では、投影部110のLCD111に対してもキャリブレーション演算を実行して、3次元計測により得た3次元座標に対応する画素を特定するのに必要なパラメータを求めるキャリブレーション演算を実行する。
【0062】
ここで、LCD110に対するキャリブレーション処理について、簡単に説明する。
この実施例の処理部200には、複数の特徴点が特定の規則に従って配列された構成のキャリブレーションパターンを示す投影用画像が登録されている。作業者は、各撮像部100に対するキャリブレーションが終了した後に、撮像対象位置にスクリーンを配置し、処理部2に対し、キャリブレーションパターンの投影用画像を読み出して投影部110に出力する旨を指示する操作を行う。この操作に応じて、投影用画像生成部203および投影動作制御部204が起動し、上記の投影用画像の読み出しや投影処理を実行する。このとき作業者は、各撮像部100の視野内に十分な数の特徴点が明瞭に現れるように、投影部110の位置や姿勢を調整する。
【0063】
上記の調整が完了すると、作業者は、処理部200に対し、キャリブレーション演算の実行を指示する操作を行う。この操作により、撮像処理部201,3次元計測処理部202、キャリブレーション処理部205の協働による処理が開始され、まず、各撮像部100からの画像を用いた3次元計測が実施され、各撮像部100の視野内に共通に含まれる複数の特徴点の3次元座標が計測される。キャリブレーション処理部205は、これらの3次元座標を元の投影用画像中の特徴点の座標と対応づけて、これらを用いて、3次元座標の計測値とLCD111上の2次元座標との関係を表すパラメータを導出する。導出されたパラメータは、内部のメモリに登録される。
【0064】
図7は、上記の登録処理が完了した画像処理装置において実行される処理の概要を、ワークW2に対する撮像部100の光学系の関係、および処理部200において実行される処理の手順を示すフローチャートなどにより示す。
【0065】
この実施例の処理部200では、まず、撮像処理部201が各撮像部100からの撮像画像を入力し(ステップA3)、3次元計測処理部202による3次元計測処理を実行する(ステップB3)。なお、図7の例では、この3次元計測により、ワークW2のエッジ部分の3次元座標が計測されるものとして、その計測結果を透視変換したものを撮像画像に合成した画像43を計測結果画像として作成する。処理部200にモニタが接続される場合には、この計測結果画像43はモニタに表示される。
【0066】
透視用画像生成部203は、上記の処理により求められた3次元座標を取得して、これらを、キャリブレーション処理により登録されたパラメータに基づき、LCD111の表示面に透視変換する。さらに、この透視変換により判明した各3次元座標の投影点に沿って輪郭パターンEPを設定し、この輪郭パターンEPを輝度の高い色彩により表した投影用画像53を生成する(ステップC3)。
【0067】
投影動作制御部204は、上記の処理により生成された投影用画像53を投影部110に与えて、投影処理を実行させる。これにより、上記の輪郭パターンEPによる投影像MEが3次元計測結果を示すマーキングパターンとしてワークW2に投影される。
【0068】
上記の処理により生成される投影用画像53中の輪郭パターンEPは、3次元計測により計測された各点を、投影部110のLCD111の位置から観察した状態を示すものである。したがって、3次元計測の結果が正しい場合には、輪郭パターンEPの投影により生じたマーキングパターンMEは、実際のワークW2の輪郭に沿う状態となるはずである。よって、作業者は、パターンEPの投影により生じたマーキングパターンが示す輪郭線と実際のワークの輪郭線とを見比べることにより、3次元計測の精度を確認することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,100 撮像部
2,200 処理部
10,101 CCD
11,110 投影部
12,111 LCD
23,203 投影画像生成部
24,204 投影動作制御部
22 検査実行部
202 3次元計測処理部
50,51a,51b,52a,52b,53 投影用画像
M,Ma,Mb,Ta,Tb,ME マーキングパターン
W0,W1,W2 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元の撮像素子を有する撮像手段と、前記撮像素子が生成した2次元画像を撮像手段から入力し、その入力画像を用いてあらかじめ定められた画像処理および計測処理を実行する画像処理手段とを具備する画像処理装置において、
2次元のディジタル画像を表示するための表示素子を備え、この表示素子に表示された画像を前記撮像手段の視野に向けて投影する画像投影手段と、
周囲と明るさまたは色が異なる画像データが設定された2次元パターンを含むディジタル画像を前記画像投影手段に与えて当該画像の投影処理を実行させる投影制御手段とを具備し、
前記画像投影手段から投影される画像の結像面内における前記撮像素子の撮像対象範囲が、前記画像投影手段からの画像が投影される範囲に包含されるように、撮像手段と画像投影手段との関係が調整されると共に、前記2次元パターンが前記撮像対象範囲内に投影される、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記投影制御手段は、前記画像処理手段の処理結果に基づき前記2次元パターンの画像データを設定する画素を決定して、前記画像投影手段に投影させる画像を生成する、請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項3】
前記投影制御手段は、前記2次元パターンを含む画像を登録するための画像登録手段を具備し、この画像登録手段に登録されている画像の1つを読み出して前記表示素子に表示させることにより、当該画像の投影処理を実行させる、請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項4】
前記撮像手段および前記画像投影手段は、同軸光学系を形成し、かつ同一の筐体の内部に収容されると共に、前記画像投影手段から投影される画像の結像面内における前記撮像素子側の各画素に対応する各点に、前記表示素子の互いに異なる画素からの画像データが投影されるように、前記撮像手段と前記画像投影手段との関係が調整されている、
請求項1〜3のいずれかに記載された画像処理装置。
【請求項5】
前記画像投影手段は、前記撮像手段とは別体に形成されると共に、前記画像投影手段から投影される画像の結像面内における前記撮像素子側の各画素に対応する各点に、前記表示素子の互いに異なる画素からの画像データが投影されるように、前記撮像手段に対する関係が調整された状態で配備され、
前記画像処理手段は、前記撮像手段から入力された画像を用いた3次元計測処理を実行し、
前記投影制御手段は、前記画像処理手段の3次元計測処理の結果に基づく3次元情報を前記表示素子の表示面に透視変換し、その透視変換結果を用いて前記3次元計測結果を表す画素に前記2次元パターンの画像データが設定された画像を生成し、この画像を前記表示素子に表示させることにより当該画像を投影させる、請求項1に記載された画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−191170(P2011−191170A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57347(P2010−57347)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【出願人】(507311533)株式会社ファクトリービジョンソリューションズ (3)
【Fターム(参考)】