説明

画像形成システムおよびその色調整方法ならびにホストコンピュータ、プリンタおよびプログラムならびにカラーチャート

【課題】 特殊な環境なしに、安価なスキャナを利用して複数のプリンタ(デバイス)間でカラーマッチングの補正を行う画像形成システムを提供する。
【解決手段】 ホストコンピュータ12は、基準デバイス設定手段122と、相対色差算出手段123とを備え、特定のプリンタ16a〜16cの1つを基準デバイスとして設定し、複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートをスキャナが読取ったカラーチャートデータを受信し、基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、相対色差算出手段123が相対色差をそれぞれ算出し、該算出した相対色差データを各々のプリンタに送出し、各プリンタは、画像データを色変換するためのLUT162とLUT補正量算出手段163とを備え、ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量を算出しこれに基づいてLUTを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像形成システムおよびその色調整方法ならびにホストコンピュータ、プリンタおよびプログラムならびにカラーチャートに関するものであり、特に、特殊な環境なしに、安価なスキャナを利用して複数のプリンタ間でカラーマッチングの補正を行う画像形成システムおよびその色調整方法ならびにホストコンピュータ、プリンタおよびプログラムならびにカラーチャートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子技術の発展により、低価格で性能のよいカラー複写装置やカラー印刷装置が広く普及するようになってきている。これらの画像形成装置では、ホストコンピュータ上で作成または編集されたCG画像等のカラー画像をプリントする場合に、モニタ上に再現される色と、プリント出力の色とを一致させるカラーマッチング技術が提案されている。この技術は、カラープリンタやカラー複写機などの色再現特性に応じて補正した画像データをそのプリンタへ送って、モニタ上に再現された色と、プリント出力の色とを一致させるものである。
【0003】
このカラーマッチング技術は、図5に示すように、入力の色空間を色変換処理部1によってデバイスインデペンデント色空間(DIC)、例えば、LabあるいはsRGBなどの色空間に変換し、このDICを色変換処理部2によって、ルックアップテーブル3(LUT3)を参照してデバイスのCMYK値に変換し、更にγ補正部4で、CMYKの各色に対する濃度補正を行って印刷するものである。
【0004】
上記のカラーマッチング技術では、色変換部処理2におけるDICからデバイスのCMYK値への変換は非線型変換であるため、各デバイス(プリンタ)の色再現特性に応じたLUT3が使用されるが、ビジネスプリンタにおいて提供されるLUTは個々のデバイスに合わせ込んであるわけではないので、デバイス間でのバラツキが生じる。例え、デバイス間でバラツキを吸収するようにLUTを作成したとしても、デバイス毎の経時変化は個々に異なるため、時間が経過すれば各デバイス間で差が生じることになる。従って、同一モデルのデバイスであっても個々のデバイス毎に色再現に差が生じる。
【0005】
一方、このようなカラーマッチング技術において、デバイスの経時変化によるカラーマッチング特性の変化を補正する技術が下記の特許文献1(特開平9−69959号公報)に開示されている。すなわち、カラープリンタやカラー複写機などにおいては、気温や湿度などの外的要因や内的要因により色再現性が変動するので、これらの影響を排除して安定な色再現性を得るために、これら変動要因に応じた色補正情報を設定して色補正を行っている。この色補正情報の更新によりカラープリンタの色再現特性は変化することになり、更新前に作成または編集された画像データをプリント出力すると、カラーマッチング処理を施した色にもかかわらず、期待する色が得られないことがある。
【0006】
特許文献1に開示された画像処理装置は、このような問題を解決するために、画像生成装置から入力される画像データを画像形成装置に出力するための画像処理装置において、管理するカラーチャート情報に基づき、前記画像生成装置から要求された色情報を出力する第一の管理手段と、前記画像形成装置における色補正情報の更新情報を管理し、その更新情報を前記第一の管理手段が出力する色情報に付加する第二の管理手段とを設けたものである。すなわち、この画像処理装置において、画像記憶合成装置は、管理するカラーチャート情報に基づき、ホストコンピュータから要求された色情報を出力するが、その色情報に、ディジタルカラー複写機における色補正情報の更新情報を付加する。ホストコンピュータ上で稼働するカラーピッカーは、要求に対して得られた色情報を表示するとともに、その色情報に付加された更新情報に基づいて、ディジタルカラー複写機における色補正情報の更新を検出し表示するようになしたものである。
【0007】
また、スキャナ、プリンタ、パソコン、表示装置等で構成されているカラーマネジメントシステムでは、工場出荷時にスキャナ、プリンタ、及び表示装置が持っている個々の特性を盛り込んでデータ処理された基本ICCプロファイル(機器の特性が入っている情報データ)をパソコン内に収容し、システム全体としてのカラーマッチング処理がなされる場合もある。このようなシステムにおいては、しかしながら、システム内の機器の一部を変更すると工場出荷時に作成されたその機器の基準ICCプロファイルの条件が変わってしまい、カラーマッチングが崩れてしまう。従ってシステムのカラーマッチングを維持するためには、変えた機器を元に戻すか、又は機器の基準ICCプロファイルを作り直さねばならない為、手間とそれなりの設備(標準カラーチャート及びパソコンソフトのプロファイルメーカー)が必要となる。
【0008】
下記の特許文献2(特開平11−120337号公報)には、このような不都合を解消するカラーマネジメントシステムが開示されている。特許文献2に開示されたカラーマネジメントシステムは、例えば、スシステム内のスキャナを交換した場合、基準カラーチャートとスキャナから得られる基準RGBデータとスキャナRGBデータとを比較して得られるスキャナ補正データを使ってスキャナ用基準ICCプロファイルを補正するようになしたものである。また、システム内のプリンタを交換した場合、基準CMYKデータとプリンタから得られるプリントデータをカラースキャナに入力し、スキャンして得られるプリントスキャンRGBデータとスキャンRGBデータとを比較して得られるプリンタ補正データを使ってプリンタ用基準ICCプロファイルを補正するようになしたのである。
【0009】
【特許文献1】特開平9−69959号公報(図1)
【特許文献2】特開平11−120337号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前述のように低価格で性能のよいカラー複写装置やカラー印刷装置が広く普及するようになってきており、またネットワーク技術の発展により企業内ではネットワークに複数のプリンタを接続して使用するネットワークシステムが一般的になってきている。このようなネットワークシステムにおいては、先に述べたとおり、デバイス間の色再現特性にバラツキがあり、例え、ネットワークシステムを構築した時にデバイス間のバラツキを吸収できたとしても、その後の各デバイスの経時変化により、デバイス間のバラツキが生じることは避け難い。
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に開示された画像処理装置は、ホストコンピュータと画像処理装置との間でのカラーマッチングにおいて、画像処理装置の経時変化に伴うマッチングのずれを補正するものではあるが、複数のプリンタ間における色再現性のずれについて補正することはできない。また、上記特許文献2に開示されたカラーマネジメントシステムは、システムを構成する機器の変更があった場合のシステムとしてのカラーマッチングの設定を維持するものであり、特許文献1の場合と同様に、複数のプリンタ間における色再現性のずれを解消できない。このように特許文献1、特許文献2に開示された技術を適用しても、ネットワークに接続される複数のプリンタ間における色再現性を、特別な環境のないユーザが簡単に調整することができないという問題点が存在していた。
【0012】
本願の発明者は、前記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、各プリンタからカラーチャートを出力し、これを安価なスキャナで読取ってホストコンピュータに送り、ホストコンピュータで基準となるデバイスを任意に設定し、基準デバイスのカラーチャートと他のデバイスのカラーチャートから相対色差を算出して他のデバイスのLUTを補正して基準デバイスに合わせる技術を着想して本発明を完成するに至ったものである。これによって、ユーザ側で特別な設備やソフトウェアを使用せず、容易に、複数のデバイスの色再現性を合わせることができるようになり、デバイスの経時変化があった場合にも、再度この調整を行って対応することができるようになる。
【0013】
すなわち、本発明は、前記の問題点を解消することを課題とし、特殊な環境なしに、安価なスキャナを利用して複数のプリンタ間でカラーマッチングの補正を行う画像形成システムおよびその色調整システムならびにホストコンピュータ装置、プリンタおよびプログラムならびにカラーチャートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、ネットワークを介して接続されるホストコンピュータと複数のプリンタとスキャナとからなる画像形成システムにおいて、
前記ホストコンピュータは、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、
前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定し、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信し、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、該算出した相対色差データを各々のプリンタに送出し、
前記複数のプリンタは、画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備え、前記ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出し、LUTを補正することを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項2に係る発明は、ネットワークを介して接続されるホストコンピュータと複数のプリンタとスキャナとからなる画像形成システムの色調整方法において、
前記ホストコンピュータが、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、
前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定するステップと、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信するステップと、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、算出した相対色差データを各々のプリンタに送出するステップと、を含み、
前記複数のプリンタが、画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備え、前記ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出してLUTを補正するステップを含む、
ことを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項3に係る発明は、ネットワークを介して接続されるホストコンピュータと複数のプリンタとスキャナとからなる画像形成システムを構成するホストコンピュータ装置であって、
前記ホストコンピュータは、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、
前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定し、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信し、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、該算出した相対色差データを各々のプリンタに送出するようになしたことを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項4に係る発明は、ネットワークを介して接続されるホストコンピュータと複数のプリンタとスキャナとからなる画像形成システムを構成するプリンタであって、
基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定し、前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信し、基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、該算出した相対色差データを各々のプリンタに送出するホストコンピュータに接続されるプリンタが、
画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備え、前記ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出し、LUTを補正することを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項5に係る発明は、ネットワークを介して複数のプリンタおよびスキャナと接続され、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備えたコンピュータ装置に、
前記プリンタのうち特定のプリンタを基準デバイスとして前記基準デバイス設定手段によって設定する処理と、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信する処理と、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、算出した相対色差データを各々のプリンタに送出する処理と、
を実行させることを特徴とするプログラムである。
【0019】
また、本願の請求項6に係る発明は、ネットワークを介してホストコンピュータおよびスキャナと接続され、画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備えたプリンタ装置を構成するコンピュータに、
ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出してLUTを補正する処理を実行させることを特徴とするプログラムである。
【0020】
また、本願の請求項7に係る発明は、ホストコンピュータは、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、
前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定し、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信し、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、該算出した相対色差データを各々のプリンタに送出し、
前記複数のプリンタは、画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備え、前記ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出し、LUTを補正する画像形成システムに用いられるカラーチャートであって、該カラーチャートは、プリンタを識別するためのデバイス識別子を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明においては、各プリンタからカラーチャートを出力し、これをスキャナで読取ってホストコンピュータに送り、ホストコンピュータで基準となるデバイスを任意に設定し、基準デバイスのカラーチャートと他のデバイスのカラーチャートから相対色差を算出して他のデバイスのLUTを補正して基準デバイスに合わせるものであるから、ユーザは、特別な設備やソフトウェアを使用せず、安価なスキャナを利用して複数のプリンタ間でカラーマッチングの補正を行う画像形成システムを提供することができるようになる。また、複数のプリンタにおける経時変化に対しても、容易に各プリンタの色再現性を再調整することができるようになる。
【0022】
また、請求項2に係る発明においては、複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータをホストコンピュータが受信し、該ホストコンピュータで基準となるデバイスを任意に設定し、基準デバイスのカラーチャートと他のデバイスのカラーチャートから相対色差を算出して他のデバイスのLUTを補正して基準デバイスに合わせるものであるから、ユーザは、特別な設備やソフトウェアを使用せず、安価なスキャナを利用して複数のプリンタ間でカラーマッチングの補正を行う色調整方法を提供することができるようになる。
【0023】
また、請求項3に係る発明においては、請求項1の画像形成システム、請求項2の色調整方法を実現するためのホストコンピュータを提供することができ、ユーザは容易に複数のプリンタの色再現性を合わせることかできるようになる。
【0024】
また、請求項4に係る発明においては、請求項1の画像形成システム、請求項2の色調整方法を実現するためのプリンタを提供することができ、ユーザは容易に複数のプリンタの色再現性を合わせることかできるようになる。
【0025】
また、請求項5に係る発明においては、請求項2の色調整方法をホストコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することができ、ユーザは容易に複数のプリンタの色再現性を合わせることかできるようになる。
【0026】
また、請求項6に係る発明においては、請求項2の色調整方法をプリンタに実行させるためのプログラムを提供することができ、ユーザは容易に複数のプリンタの色再現性を合わせることかできるようになる。
【0027】
また、請求項7に係る発明においては、請求項1の画像形成システム、請求項2の色調整方法を実現するためにプリンタが出力するカラーチャートを提供することができ、ユーザは容易に複数のプリンタの色再現性を合わせることかできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る画像形成システムの構成を示すシステム構成図であり、図2は、本発明に係る画像形成システムを構成するホストコンピュータとプリンタの構成を示すブロック図である。図3は、本発明に係る画像形成システムで用いられるカラーチャートの概念を示す模式図であり、図4は、本発明に係る画像形成システムにおける色調整方法を実施する手順を示すフローチャートであり、(a)は、ホストコンピュータ12の処理手順を示すフローチャート、(b)は、プリンタ16b、16bの処理手順を示すフローチャートである。
【実施例】
【0029】
本発明の実施例にかかる画像形成システムは、図1に示すように、LAN(Local Area Network)などのネットワーク11に接続されたホストコンピュータ12とスキャナ14、ユーザのPC18とデバイスである複数のプリンタ16a〜16cから構成されている。図1においてユーザのPCは代表的に1台のみ示しているが、ネットワーク11には複数のPC18が接続され、プリンタ16a〜16cを共有して利用する。通常は、ユーザのPC18から任意のプリンタ16a〜16cを選んで印刷データを送り、印刷を行う。プリンタ16a〜16cは、プリンタ機能のみでもよく、スキャナやファクシミリ機能、メール送受信機能などを一体的に有する多機能プリンタ(MFP)であってもよい。
【0030】
この画像形成システムにおいて、複数のプリンタ16a〜16cにおける色再現性の調整を行う場合は、先ず各プリンタ16a〜16cからそれぞれカラーチャート20を印刷する。このカラーチャート20は、図3に示すように、カラーパッチ21が印刷されるとともに、当該カラーチャート20を出力したデバイスを識別するためのデバイス識別コード22等の識別子が印刷されるものであり、各プリンタ16a〜16cがこのカラーチャートを出力する場合に、各プリンタによって該当位置にデバイス識別コードとしてプリンタコードやプリンタIDを印刷する。このカラーチャート20は、デバイス識別コード22が印刷される以外は、一般的に使用されるカラーチャートと同様のものである。
【0031】
ホストコンピュータ12とプリンタ16a〜16cは、図2のブロック図に示す構成を備えている。すなわち、ホストコンピュータ12は、マイクロコンピュータにより構成された主制御部121によって制御される基準デバイス設定手段122、相対色差算出手段123、インタフェース部124を備えており、プリンタ16a〜16cは、マイクロコンピュータにより構成された主制御部161によって制御されるLUT補正量算出手段163、インタフェース部164、画像処理手段165、印刷部166を備え、また、色変換のためのLUT162を備えている。通常の印刷においては、インタフェース部164を介してユーザのPC18から送られた印刷データを受信すると、画像処理手段165が印刷データを画像処理し、LUT162を参照して色変換し、印刷部166でカラー画像の印刷が行われる。
【0032】
プリンタの色再現性の調整を行う場合、先ず、各プリンタ16a〜16cから出力されたカラーチャートは、スキャナ14で読取られ、ホストコンピュータ12に送られる。そしてホストコンピュータ12で基準とするデバイスを任意に設定しておき、基準デバイスのカラーチャートと他のデバイスのカラーチャートから相対色差を算出してそれぞれのデバイスに送り、各デバイスでは、ホストコンピュータ12から送られた相対色差に基づいて、それぞれが持つLUTを補正するLUT補正量を算出してLUTを補正することによって、各デバイスの色再現性を基準デバイスに合わせるように構成されている。
【0033】
すなわち、ホストコンピュータ12では、先ず、操作入力部(図示せず)からプリンタコードやプリンタIDを入力し、基準デバイス設定手段122によって基準デバイスを設定しておく。以下の説明は、プリンタ16aを基準デバイスとして設定したものとして進める。スキャナ14によって各プリンタ16a〜16cが出力したカラーチャート20が読取られ、そのデータがインタフェース部124を介してホストコンピュータ12によって受信されると、ホストコンピュータ12はカラーチャート20から読取られたデバイス識別コード22によって、基準デバイスとして設定したプリンタ16aが印刷したカラーチャート20を識別する。
【0034】
そしてホストコンピュータ12は、基準デバイスのカラーチャートと他のデバイス(プリンタ16b、プリンタ16c)が印刷したカラーチャートを比較し、相対色差算出手段123でそれぞれの相対色差を算出する。相対色差算出手段123で算出された基準デバイスと他のデバイスとの相対色差のデータは、インタフェース部124を介してそれぞれ該当するデバイス(プリンタ16b、プリンタ16c)に送られる。
【0035】
次に、プリンタ16b、プリンタ16cでは、ホストコンピュータ12から送られた相対色差情報がインタフェース部164を介して受信されると、LUT補正量算出手段163においてプリンタ自身が持っているLUT162を補正するためのLUT補正量を算出してLUT162を補正する。従って、プリンタ16b、プリンタ16cの色再現性は、基準デバイスであるプリンタ16aの色再現性と合ったものに調整される。
【0036】
図4は、以上のような調整の手順を示すフローチャートであり、(a)は、ホストコンピュータ12の処理手順を示すフローチャート、(b)は、プリンタ16b、16bの処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに基づいて、上記の調整の手順を詳細に説明する。
【0037】
ホストコンピュータ12は、先ず、ステップS10で、操作入力部(図示せず)からプリンタコードやプリンタIDを入力し、基準デバイス設定手段122によって基準デバイスを設定しておく。ここでは、先に述べたように、プリンタ16aを基準デバイスとして設定したものとして説明する。そして、ステップS11において、スキャナ14が読取った各プリンタ16a〜16cのカラーチャートのデータを受信する。
【0038】
次に、ホストコンピュータ12は、ステップS12において、基準デバイスのカラーチャート20のデータと他のデバイスであるプリンタ16bが印刷したカラーチャート20のデータを相対色差算出手段123で比較して相対色差を算出する。相対色差算出手段123で算出された基準デバイスとプリンタ16bとの相対色差のデータは、ステップS13でインタフェース部124を介してプリンタ16bに送信される。カラーチャート20の識別は、カラーチャート20に印刷されたデバイス識別コード22によって行う。
【0039】
ステップS14でホストコンピュータ12は、全てのプリンタについて相対色差の算出が終了したかを判定し、終了していなければ、ステップS12に戻り、次のプリンタ16cが印刷したカラーチャート20のデータと基準デバイスのデータに基づいて相対色差を算出し、ステップS13でプリンタ16cに相対色差のデータを送信する。ステップS14で全てのプリンタについての相対色差の算出が終了したと判定されるとホストコンピュータ12は処理を終了する。
【0040】
一方、プリンタ16b、16c、例えば、プリンタ16bは、ステップS20でホストコンピュータ12から相対色差のデータを受信すると、ステップS21においてLUT補正量算出手段163は、プリンタ16bが持っているLUT162を補正するLUT補正量を算出し、算出したLUT補正量に基づいてステップS22でLUT162を補正する。プリンタ16cにおいても同様の処理が行われる。
【0041】
これによって、基準デバイスとして設定されたプリンタ16aのカラーチャートと同じになるようにプリンタ16b、16cのLUTが補正され、各プリンタ16a〜16cの色再現性が同じ再現性を持つように調整できる。従って、ユーザは、特別な装置やソフトウェアを用いることなく、安価なスキャナを利用して容易に複数のプリンタの色再現性を合わせる作業を行うことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上詳細に説明したように、本発明に係る画像形成システムによれば、特別な設備やソフトウェアを使用せず、安価なスキャナを利用して複数のプリンタ間でカラーマッチングの補正を行う画像形成システムを提供することができるようになる。また、複数のプリンタにおける経時変化に対しても、容易に各プリンタの色再現性を再調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る画像形成システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成システムを構成するホストコンピュータとプリンタの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る画像形成システムで用いられるカラーチャートの概念を示す模式図である。
【図4】本発明に係る画像形成システムにおける色調整方法を実施する手順を示すフローチャートであり、(a)は、ホストコンピュータ12の処理手順を示すフローチャート、(b)は、プリンタ16b、16bの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】プリンタ等のデバイスにおける一般的な色補正方法を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
11・・・・ネットワーク
12・・・・ホストコンピュータ
121・・・主制御部
122・・・基準デバイス設定手段
123・・・相対色差算出手段
124・・・インタフェース部
14・・・・スキャナ
16a〜16c・・・・プリンタ
161・・・主制御部
162・・・LUT
163・・・LUT補正量算出手段
164・・・インタフェース部
165・・・画像処理手段
166・・・印刷部
18・・・・PC
20・・・・カラーチャート
21・・・・カラーパッチ
22・・・・デバイス識別コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続されるホストコンピュータと複数のプリンタとスキャナとからなる画像形成システムにおいて、
前記ホストコンピュータは、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、
前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定し、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカララャートデータを受信し、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、該算出した相対色差データを各々のプリンタに送出し、
前記複数のプリンタは、画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備え、前記ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出し、LUTを補正することを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
ネットワークを介して接続されるホストコンピュータと複数のプリンタとスキャナとからなる画像形成システムの色調整方法において、
前記ホストコンピュータが、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、
前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定するステップと、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信するステップと、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、算出した相対色差データを各々のプリンタに送出するステップと、を含み、
前記複数のプリンタが、画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備え、前記ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出してLUTを補正するステップを含む、
ことを特徴とする画像形成システムの色調整方法。
【請求項3】
ネットワークを介して接続されるホストコンピュータと複数のプリンタとスキャナとからなる画像形成システムを構成するホストコンピュータ装置であって、
前記ホストコンピュータは、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、
前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定し、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信し、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、該算出した相対色差データを各々のプリンタに送出するようになしたことを特徴とするホストコンピュータ。
【請求項4】
ネットワークを介して接続されるホストコンピュータと複数のプリンタとスキャナとからなる画像形成システムを構成するプリンタであって、
基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定し、前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信し、基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、該算出した相対色差データを各々のプリンタに送出するホストコンピュータに接続されるプリンタが、
画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備え、前記ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出し、LUTを補正することを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
ネットワークを介して複数のプリンタおよびスキャナと接続され、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備えたコンピュータ装置に、
前記プリンタのうち特定のプリンタを基準デバイスとして前記基準デバイス設定手段によって設定する処理と、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信する処理と、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、算出した相対色差データを各々のプリンタに送出する処理と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
ネットワークを介してホストコンピュータおよびスキャナと接続され、画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備えたプリンタ装置を構成するコンピュータに、
ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出してLUTを補正する処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
ホストコンピュータは、基準デバイス設定手段と、相対色差算出手段とを備え、
前記プリンタのうち特定のプリンタを前記基準デバイス設定手段によって基準デバイスとして設定し、
前記複数のプリンタがそれぞれ出力したカラーチャートを前記スキャナが読取ったカラーチャートデータを受信し、
基準デバイスのカラーチャートデータと他のプリンタのカラーチャートデータから、前記相対色差算出手段が基準デバイスと他のプリンタのカラーチャートの相対色差をそれぞれ算出し、該算出した相対色差データを各々のプリンタに送出し、
前記複数のプリンタは、画像データを色変換するためのLUTとLUT補正量算出手段とを備え、前記ホストコンピュータから送信された相対色差に基づいて、LUT補正量算出手段がLUT補正量を算出し、LUTを補正する画像形成システムに用いられるカラーチャートであって、該カラーチャートは、プリンタを識別するためのデバイス識別子を有することを特徴とするカラーチャート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−19911(P2006−19911A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194048(P2004−194048)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】