説明

画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】形成されたトナー像の被転写材への転写に際して、トナー像の画像パターンに関らず高い転写効率で転写することができ、濃度不足や濃度ムラ、画像劣化のない、高品質な転写画像を得ることができる画像形成装置及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】転写前のトナー像をスコロトロンチャージャーを用いて除電するに際して、互いに付着量の異なる2種類のテスト用トナー像を形成して、スコロトロンチャージャによる電荷付与量を計測し、計測された電荷付与量がそれぞれ所定の範囲内となるように、スコロトロンチャージャの出力設定を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上の静電潜像を液体現像剤によって現像し、形成されたトナー像を中間転写体に一次転写し、複数色のトナー像を前記中間転写体上で重ね合わせ、被転写材上に転写する画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、像担持体表面の静電潜像を、トナー粒子を絶縁性キャリア液に分散させた液体現像剤で現像し、現像により形成されたトナー像を被転写材に転写して最終画像を得る画像形成装置が知られている。
【0003】
また、前記液体現像剤による現像により形成されたトナー像を中間転写体に一次転写し、中間転写体の表面に複数のトナー像を重ね合わせ、その後重ね合わせたトナー像を被転写材に一括転写して最終画像を得る画像形成装置も知られている。
【0004】
こういった液体現像装置を用いた湿式の画像形成装置は、乾式の画像形成装置では実現できない利点を有しており、近年その価値が見直されつつある。
【0005】
湿式画像形成装置の主な利点は、サブミクロンサイズの極めて微細なトナーを用いることができるため高画質を実現でき印刷並みの質感を得られること、比較的低温でトナーを用紙に定着できるため省エネルギーを実現できること、などである。特に、近年は画像形成装置の高速化に伴って、高粘度のキャリア液に、トナー粒子を高濃度に分散させた液体現像剤が使用される傾向にある。
【0006】
ここで、湿式画像形成装置における被転写材へのトナー像の転写は、一般的に、静電力による静電転写方式が用いられてきた。トナー粒子には予め電荷が付与されており、被転写材の裏面側に設けられた転写ローラにトナー粒子と反対極性の電圧を印加することで発生した静電気力によりトナー粒子が移動し、被転写材へのトナー像の転写が行われる。
【0007】
このような画像形成装置においては、感光体(像担持体)上のトナー像を高い転写効率で中間転写体上に転写して重ね合わせたり、中間転写体上で重ねあわされたトナー像を高い転写効率で紙(被転写材)上に2次転写するためには、転写されるトナーの荷電量を適切な値に調整する必要がある。
【0008】
通常は、現像時のトナー荷電量が比較的高い方が文字や細線などの微細パターンのきれいな画像が得られるため、現像前にトナーの荷電量を比較的高くする条件で使用する。
【0009】
しかしながらこの場合、現像されたトナーの荷電量は、転写での適切な値に比べると高めとなっており、そのため転写効率が悪化することがある。したがって、トナー像が転写されるまでの間に電荷を付与し、トナー荷電量を適度に低減(除電)させる技術が開発された。
【0010】
転写される前のトナー像に電荷を付与する手段としては、スコロトロンチャージャなどの帯電(除電)装置が用いられる。実際には、トナー電荷量を適切な値とするため、付与する電荷量を適切に調整する必要があり、様々な帯電量(除電量)の調整法が提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0011】
付与する電荷量を検知して調整するためには、帯電装置からトナー像を担持する像担持体や中間転写体側に流れ込む電流を計測したり、除電によるトナー像の表面電位の変化を計測したりする技術が用いられる。
【0012】
例えば、特許文献1には、電源から放電電極への電流値と放電電極からシールドへの電流値との差が出力基準値になるよう制御する方法が開示されている。
【0013】
また特許文献2には、テストパターンとしてのトナー像を作製し、表面電位計を用いて除電前後の像担持体上のトナー像の表面電位を計測して制御する方法が開示されている。
【0014】
さらに、特許文献3には、除電手段(放電電極)の対向電極に流れる除電電流を検知して放電電極への印加電圧を制御する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平7−311494号公報
【特許文献2】特開2006−126230号公報
【特許文献3】特開2006−243333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記特許文献記載の技術のみでは、トナー荷電量を適切に調整し、トナー像の画像パターンに関らず高い転写効率を得るという目的のためには不十分である。なぜなら、画像パターンの中には付着量の多い部分と少ない部分とがあり、これらをともに高い転写率で転写するためには、付着量の多い部分を適度に除電する一方、付着量の少ない部分については、不用意に除電され過ぎないように制御する必要があるからである。
【0016】
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、形成されたトナー像の被転写材への転写に際して、トナー像の画像パターンに関らず高い転写効率で転写することができ、濃度不足や濃度ムラ、画像劣化のない、高品質な転写画像を得ることができる画像形成装置及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0018】
1. 像担持体上の静電潜像を液体現像剤によって現像し、形成されたトナー像を中間転写体に一次転写し、複数色のトナー像を前記中間転写体上で重ね合わせ、被転写材上に二次転写してフルカラーの画像を得る画像形成装置において、前記静電潜像を現像する現像位置と前記トナー像を前記被転写材に転写する転写位置との間で、スコロトロンチャージャを用いて前記トナー像に電荷を付与する電荷付与手段と、前記電荷付与手段による電荷付与量を計測する計測手段と、前記計測手段により取得した電荷付与量に基づき、前記電荷付与手段の出力設定を調整する調整手段とを備え、前記調整手段は、予め形成された互いに付着量の異なる2種類のテスト用トナー像に対して、前記計測手段により取得された前記電荷付与手段による電荷付与量が、それぞれ所定の範囲内となるように、前記スコロトロンチャージャの出力設定を調整することを特徴とする画像形成装置。
【0019】
2. 前記調整手段は、前記スコロトロンチャージャのワイヤーの印加電圧とグリッド電圧との何れか、もしくは両方を変更することで電荷付与量を調整することを特徴とする1に記載の画像形成装置。
【0020】
3. 前記調整手段は、前記スコロトロンチャージャによる電荷付与量として、ワイヤへの供給電流から安定板及びグリッドに流れ込む電流を減じた電流値を求めることを特徴とする2に記載の画像形成装置。
【0021】
4. 前記2種類のテスト用トナー像は、単色のベタパターン画像及び複数色の重ね合わされたベタパターン画像であることを特徴とする2または3に記載の画像形成装置。
【0022】
5. 前記2種類のテスト用トナー像は、ベタパターン画像及び、細線もしくは網点パターン画像であることを特徴とする2または3に記載の画像形成装置。
【0023】
6. 前記電荷付与手段は、前記像担持体上のトナー像に電荷を付与する、ことを特徴とする1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0024】
7. 前記電荷付与手段は、前記中間転写体上のトナー像に電荷を付与する、ことを特徴とする1乃至6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0025】
8. 像担持体上の静電潜像を液体現像剤によって現像し、形成されたトナー像を中間転写体に一次転写し、複数色のトナー像を前記中間転写体上で重ね合わせ、被転写材上に二次転写してフルカラーの画像を得る画像形成方法において、前記静電潜像を現像する現像位置と前記トナー像を前記被転写材に転写する転写位置との間で、スコロトロンチャージャを用いて前記トナー像に電荷を付与する電荷付与工程と、前記スコロトロンチャージャによる電荷付与量に基づき、前記スコロトロンチャージャの出力設定を調整する調整工程とを備え、前記調整工程では、互いに付着量の異なる2種類のテスト用トナー像を形成して、前記スコロトロンチャージャによる電荷付与量を計測し、計測された電荷付与量がそれぞれ所定の範囲内となるように、前記スコロトロンチャージャの出力設定を調整することを特徴とする画像形成方法。
【0026】
9. 前記調整工程では、前記スコロトロンチャージャのワイヤーの印加電圧とグリッド電圧との何れか、もしくは両方を変更することで電荷付与量が調整されることを特徴とする8に記載の画像形成方法。
【0027】
10. 前記調整工程では、前記スコロトロンチャージャによる電荷付与量として、ワイヤへの供給電流から安定板及びグリッドに流れ込む電流を減じた電流値が求められることを特徴とする9に記載の画像形成方法。
【0028】
11. 前記2種類のテスト用トナー像は、単色のベタパターン画像及び複数色の重ね合わされたベタパターン画像であることを特徴とする9または10に記載の画像形成方法。
【0029】
12. 前記2種類のテスト用トナー像は、ベタパターン画像及び、細線もしくは網点パターン画像であることを特徴とする9または10に記載の画像形成方法。
【0030】
13. 前記電荷付与工程では、前記像担持体上のトナー像に電荷が付与される、ことを特徴とする8乃至12の何れか1項に記載の画像形成方法。
【0031】
14. 前記電荷付与工程では、前記中間転写体上のトナー像に電荷が付与される、ことを特徴とする8乃至13の何れか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法によれば、転写前のトナー像をスコロトロンチャージャを用いて除電するに際して、互いに付着量の異なる2種類のテスト用トナー像を形成して、スコロトロンチャージャによる電荷付与量を計測し、計測された電荷付与量がそれぞれ所定の範囲内となるように、スコロトロンチャージャの出力設定を調整することができる。
【0033】
これにより、高付着量部については十分に除電し、低付着量部についてはなるべく荷電量を維持するようにして、トナー像の画像パターンに関らず高い転写効率で転写することができ、濃度不足や濃度ムラ、画像劣化のない、高品質な転写画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0035】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0036】
像担持体としての感光体1の周囲には、矢印で示す回転方向に順に、帯電装置2、露光装置3、液体現像装置4Y、4M、4C、4K、中間転写体5、クリーニング装置6がそれぞれ配設され、前記中間転写体5の周囲には、スコロトロンチャージャ7及び転写ローラ8が配設されている。
【0037】
また、4組の液体現像装置4Y、4M、4C、4Kは、いずれも前記感光体1と離接可能に設けられ、それぞれ、図示しない液体現像剤貯蔵槽及び、表面に液体現像剤を担持し感光体1表面の静電潜像を現像する現像ローラ41とを備えている。
【0038】
ここで、液体現像装置4Yのトナーをイエロートナー、液体現像装置4Mのトナーをマゼンタトナー、液体現像装置4Cのトナーをシアントナー、液体現像装置4Kのトナーをブラックトナーとし、それぞれの液体現像装置において対応する各色のトナー像を形成して、中間転写体5の表面で重ね合わせ、その後被転写材9に一括転写することでフルカラー画像を形成することができる。
【0039】
また本画像形成装置は、被転写材9に転写前のトナー像に電荷を付与する電荷付与手段(スコロトロンチャージャ7)と、電荷付与手段による電荷付与の量を調整する調整手段とを備えているが、これらについては後で図2を参照して説明する。
【0040】
(画像形成装置の動作機能)
図1の画像形成装置の動作について、順を追って説明する。
【0041】
感光体1は矢印で示す方向に回転している。まず、感光体1の表面を帯電装置2により、所定の表面電位に一様に帯電し、その後、露光装置3により画像情報の露光を行い、感光体1の表面に静電潜像を形成する。
【0042】
次いで液体現像装置4Yを感光体1に対向させ、現像ローラ41の表面に担持された液体現像剤を感光体1に接触させて静電潜像を現像することで、感光体1の表面にイエローのトナー像が形成される。
【0043】
液体現像装置4Y、4M、4C、4Kで用いられる液体現像剤は、絶縁性キャリア液にトナー粒子を分散させたものであって、さらに荷電制御剤、分散剤等の機能付与剤を含有していてもよい。
【0044】
液体現像剤の濃度、粘度は特に限定されるものではないが、トナー粒子などの固形成分を10から50質量%の割合で分散させ、25℃における粘度が0.01Pa・sから10Pa・sの範囲にある高濃度で高粘度の液体現像剤を使用する場合に特に適している。
【0045】
トナー粒子は図示しないトナー荷電手段により予め正極性に帯電している。
【0046】
感光体1がさらに回転すると、表面のトナー像は、感光体1と中間転写体5が当接する一次転写領域に移動する。中間転写体5には図示しない電源により負極性の電圧が印加され、この印加電圧によって発生した電界でトナーが移動することで、感光体1の表面のトナー像が中間転写体5の表面に一次転写される。
【0047】
一次転写後、感光体1に残存する液体現像剤はクリーニング装置6により除去され、帯電装置2によって感光体1の表面は再び所定の表面電位に一様に帯電する。中間転写体5は、ドラム形状でもよいし、ベルト形状でもよい。
【0048】
続いて、感光体1の表面に再度静電潜像が形成され、液体現像装置4Mによって現像されて感光体1の表面にはマゼンタのトナー像が形成される。マゼンタのトナー像はその後中間転写体5の表面に一次転写され、中間転写体5の表面にはイエローのトナー像とマゼンタのトナー像が重ね合わされる。
【0049】
同様にして、液体現像装置4Cで現像されたシアンのトナー像と、液体現像装置4Kで現像されたブラックのトナー像も重ね合わされて、中間転写体5の表面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0050】
中間転写体5の表面に形成されたフルカラーのトナー像は、中間転写体5が矢印方向に回転することで、中間転写体5と被転写材9が当接する二次転写領域に移動する。
【0051】
二次転写領域では、被転写材9の裏面にある転写ローラ8によって中間転写体5と被転写材9との間に線圧が加えられながら、転写ローラ8には図示しない電源によって負極性の電圧が印加される。
【0052】
この電圧印加により、被転写材9の中間転写体5と向き合う表面も負極性の電位となり、被転写材9の表面電位と中間転写体5の表面電位との間の電位差により、トナー像は被転写材9の表面に引き付けられ、この状態で被転写材9が矢印方向に搬送されて二次転写領域を出ると被転写材9上へのトナー像の二次転写が完了する。
【0053】
トナー像が転写された被転写材9は定着装置10により定着処理がなされ、画像出力が完成する。
【0054】
(転写前トナーへの電荷付与機能構成について)
ところで本実施形態においては、中間転写体5の表面に転写されたトナー像は、被転写材9への転写に先立って、スコロトロンチャージャ7によって電荷が付与される。すなわち、スコロトロンチャージャ7は電荷付与手段として機能する。
【0055】
スコロトロン7による電荷の付与は、全てのトナー像が中間転写体5の表面に重ね合わされてフルカラーのトナー像が形成された後に一回付与するだけでも良いし、全てのトナー像が中間転写体5の表面に重ね合わされるまでの間に複数回に分けて付与してもよい。
【0056】
また本実施形態においては、被転写材9に転写されるトナー像のトナー付着量に応じて適切な電荷量が付与されるように、予めテスト用のトナー像を形成し、電荷付与量を計測して、スコロトロンチャージャ7の出力設定を調整する調整手段を備えている。
【0057】
これらの機能要素の構成について、図2を用いて以下に説明する。
【0058】
図2は図1の画像形成装置において、スコロトロンチャージャ7とその電荷付与量を調整するための機能構成要素とを示した図である。
【0059】
図2において、71はワイヤー(放電電極)であり、プラス帯電トナーを除電するためのマイナス電圧が印加され、マイナス電荷が放電される。72は安定板(ケーシング)であり、放電されたマイナス電荷の一部を吸収してワイヤー71からの放電を安定化させる。73はグリッドであり、適切な電圧印加によりワイヤ71から中間転写体5への流れ込み電流i3を制御する。
【0060】
11bはワイヤー71の電源であり、ワイヤー71に印加電圧vsを印加する。11aはワイヤー71から放電される電荷量、すなわち電源11bによりワイヤー71に流れ込む電流isを計測する電流計である。
【0061】
12aはワイヤ71から放電され、安定板72に流れ込んだ電荷量、すなわち安定板から流れ出る電流i2を計測する電流計である。
【0062】
13bはグリッド73の電源であり、グリッド73にグリッド電圧v1を印加する。13aはワイヤ71から放電され、グリッド73に流れ込む電荷量、すなわちグリッドから流れ出る電流i1を計測する電流計である。
【0063】
21は制御部であり、電流計11a、12a、13aからそれぞれ電流値is、i2、i1を取得する。各電流値から、中間転写体5への流れ込み電流i3=is−i1−i2を算出し、これを電荷付与量として、メモリ22に記憶している所定の電荷量範囲内であるかどうかを判定する。
【0064】
上記電流計11a、12a、13aは、電荷付与時の電流値を計測する計測手段として機能する。
【0065】
制御部21は、付着量の異なる2種類のテスト用トナー像に対して上記判定を行い、何れの電荷付与量もそれぞれの所定の電荷量範囲内になるように各電源11b、13bに印加電圧(vs、v1)の変更を指示し、スコロトロンチャージャ7の出力設定を調整する。
【0066】
このように制御部21は、被転写材9に転写されるトナー像のトナー付着量に応じて適切な電荷量が付与されるように調整する。すなわち、調整手段として機能する。
【0067】
スコロトロンチャージャによる電荷の付与と、調整手段による電荷付与量の調整動作についての詳細は後述する。
【0068】
なお、ここでは予め正極性に帯電させたトナー粒子を使用した実施形態について説明しているため、電荷付与手段7によって、負極性の電荷を付与するとしているが、予め負極性に電荷させたトナー粒子を使用した実施形態も可能であり、その場合は電荷付与手段7によって正極性の電荷を付与することで同じ効果を得ることができる。
【0069】
(トナー像に対する電荷付与量の調整理由と調整機構)
上記のように、被転写材9への転写前のトナー像にそのトナー量に応じた電荷を付与するための調整が必要な理由と機構について、以下に説明する。
【0070】
<電荷付与量の調整が必要な理由>
中間転写体5上のトナー像を高い転写効率で被転写材9上へ転写するためには、中間転写体5上のトナー像の単位面積当たりの電荷量(Q/S)に応じて適正な量の転写電流を転写ローラ8から中間転写体5に流れ込ませる必要がある。転写電流が多すぎても不足しても、転写効率は悪化する。
【0071】
通常、湿式画像形成装置では、現像時のトナー荷電量が比較的高いほうが文字や細線などの微細パターンのきれいな画像が得られるため、現像されたトナーの荷電量は転写での適切な値に比べて高めとなっている。したがって、トナーをすべて転写するのに必要な電流が大きくなり、転写部に流せる電流の限界以上になると転写効率が悪化する。
【0072】
この問題は特に部材の電気抵抗が高くなって電流が流れにくくなる低温低湿環境で起こりやすい。したがって、転写前のトナー像に電荷を付与して除電し、トナー荷電量が適度になるように調節することが望まれる。
【0073】
またこの電荷付与時においては、トナー付着量の多い部分はトナー荷電量が適切な値になるように除電するが、トナー付着量の少ない部分はなるべく除電しない(もとの荷電量を保持する)のが望ましい。なぜなら、トナー付着量の少ない部分は単位面積当たりの電荷量(Q/S)がもともと小さいので除電する必要がなく、逆に除電され過ぎてしまうと転写効率が悪化してしまうからである。
【0074】
したがって、トナー荷電量を適切に調整し、画像パターンに関らず高い転写効率を得るためには、単に電荷付与量を調整するのみならず、トナー付着量の多い部分はトナー荷電量が適切な値になるように除電するが、トナー付着量の少ない部分はなるべく除電しない、ように電荷付与量を調整する必要が生じてくる。
【0075】
トナー付着量の多い部分、すなわちトナー像の単位面積当たりの電荷量(Q/S)が大きい部分と、トナー付着量の少ない部分、すなわちトナー像の単位面積当たりの電荷量(Q/S)が小さい部分とで、電荷付与量が異なるような電荷付与手段の出力調整が必要となる。
【0076】
本実施形態では、電荷付与手段としてスコロトロンチャージャ7を用いて、単位面積当たりの電荷量(Q/S)の異なる2種類のテスト用トナー像に対する電荷付与量がそれぞれ異なる電荷量範囲内に入るように、印加電圧vsとグリッド電圧v1を調整する調整手段(制御部21)により、上記要請を実現している。
【0077】
<電荷付与量の調整機構>
電荷付与時のトナー像を担持する中間転写体5、あるいは感光体1等への流れ込み電流i3を、トナー像の付着量が大きい場合にも、小さい場合にも、それぞれに適した適切な値に調整することができ、それぞれに適したトナー除電量が得られることを以下に説明する。
【0078】
本実施形態では中間転写体5上のトナー像に対して電荷付与しているが、感光体1上のトナー像に電荷付与してもよい。現像によりトナー像が形成されてから、被転写材9に転写されるまでの任意の位置で電荷付与は行われ得る。電荷付与時にトナー像を担持している中間転写体5、あるいは感光体1などを、以下ではトナー像担持体と呼称し、説明する。
【0079】
図3は、スコロトロンチャージャ7により電荷付与したときの、トナー像担持体への流れ込み電流(図2のi3)と除電量、すなわちトナー像の単位面積当たりの電荷量(Q/S)の変化量ΔQ/Sとの関係を示すグラフである。
【0080】
図3に示すように、スコロトロンチャージャ7によるトナーの除電量ΔQ/Sは、チャージャ7からトナー像担持体(中間転写体5)に向けて流れ込む電流i3と対応関係がある。すなわち、チャージャ7からトナー像担持体に向けて流れ込む電流i3を適切に制御すれば、所望の除電が行われ、トナー荷電量を適切な所望の値にすることができる。
【0081】
流れ込み電流i3は、図2に示したように、スコロトロンチャージャ7の放電電極(ワイヤー71)に流れる電流isから、ケーシング(安定板72)に流れる電流i2およびグリッド電極73に流れる電流i1を減算することで算出できる。
【0082】
また、例えばトナー像担持体としてベルト状の中間転写体5を用いる場合には、その中間転写ベルトを介してスコロトロンチャージャ7の反対側に対向電極(不図示)を設置し、その対向電極に流れる電流を流れ込み電流i3として直接に測定することもできる。
【0083】
トナー像担持体への流れ込み電流i3の調整は、放電電極(ワイヤー71)への印加電圧vsもしくはグリッド電極73への印加電圧v1、あるいはその両方を調整することで可能である。
【0084】
図4に示すように、ワイヤー印加電圧vsを固定した場合、流れ込み電流i3は、トナー像担持体の表面電位vtとグリッド電位v1との差によって決まる。
【0085】
すなわち、トナー像担持体電位vtがグリッド電位v1に比べて低いときは流れ込み電流i3はほぼ0であるが、トナー像担持体電位vtがグリッド電位v1に等しくなる付近で立ち上がり始め、その後はトナー像担持体電位vtが高くなるにつれて流れ込み電流i3はほぼ直線的に増加する。
【0086】
図5(a)は、グリッド電圧v1を固定し、放電電極71への印加電圧vsを各種変えた場合の、トナー像担持体の電位vtに対する流れ込み電流i3の変化を示している。
【0087】
すなわち、トナー像担持体の電位vtがある値以上になると、トナー像担持体への流れ込み電流i3が発生し、トナー像担持体電位vtが大きくなるにつれて流れ込み電流i3も増加していくが、このときの傾き(立ち上がり角度A)は放電電極71への印加電圧vsによって調整できる。
【0088】
図5(b)は、逆に放電電極71への印加電圧vsを固定して、グリッド電圧v1を変えることで、流れ込み電流i3が発生する電位(立ち上がり電位B)がシフトすることを示す。
【0089】
これらは、放電電極71への印加電圧vsとグリッド電圧v1とをそれぞれ調整することで、流れ込み電流i3の立ち上がり角度Aと立ち上がり電位Bとをそれぞれ調整することができることを示している。
【0090】
なお、ここでいうトナー像担持体の表面電位vtは、トナー像担持体への印加電圧にトナーの荷電量による電位が足しあわされた、実際の電位である。したがって、トナー像担持体への印加電圧を変更するならば、それに応じてグリッド電位v1の設定も調整し直す必要がある。
【0091】
上記のように、流れ込み電流i3は、すなわち電荷付与量を示し、除電量ΔQ/Sを示す。放電電極71への印加電圧vsとグリッド電極73への印加電圧v1を用いて、流れ込み電流i3の立ち上がり角度Aと立ち上がり電位Bとを独立して調整できるのであれば、トナー像担持体の表面電位vt、すなわち電荷量Q/Sの大小に応じて適切な流れ込み電流i3、すなわち除電量を得られるように調整することができる。その調整方法について以下に述べる。
【0092】
既に述べたように、トナー付着量の多い部分はトナー荷電量が適切な値になるように除電し、トナー付着量が少ない部分はなるべく除電しないことが望ましい。
【0093】
トナー像担持体上のトナー像も含めた表面電位vtは、図6のグラフに示すようにトナー付着量が多いほど高くなる。そこで、トナー付着量の多い部分の電位に対しては立ち上がり電位Bよりも高くなるように、トナー付着量の少ない部分の電位に対しては立ち上がり電位Bよりも低くなるように、グリッド電圧v1を調整する。
【0094】
これにより、トナー付着量の多い部分に対しては流れ込み電流i3が発生し、トナー付着量の少ない部分に対しては流れ込み電流i3がほとんど発生しないようにすることができる。すなわち、トナー付着量の多い部分は除電され、トナー付着量の少ない部分はなるべく荷電を保持するようにすることができる。
【0095】
さらに放電電極71への印加電圧vsを調整すれば立ち上がり角度Aが変わるので、トナー付着量が多い部分への流れ込み電流i3を調整することができる。これにより、トナー付着量が多い部分の除電量を調整できる。
【0096】
こういったスコロトロンチャージャ7の出力の調整を自動的に行うために、付着量の異なる2つのテスト用トナー像を形成し、それぞれに対する流れ込み電流i3を測定する。これらに対する流れ込み電流i3が、それぞれに対して予め定められた所定の範囲に収まらない場合には、放電電極71やグリッド電極73への印加電圧(vs、v1)を変えて再びテスト用トナー像を形成して流れ込み電流i3を測定する。
【0097】
こういった処理を繰り返して、2つのテスト用トナー像に対する流れ込み電流i3がそれぞれの所定の範囲に収まるようにすることが可能である。
【0098】
なお、このようなスコロトロンチャージャ7の出力の調整は、チャージャ自身やトナー像像担持体、現像剤などを交換したときには行うことが望ましい。部材による物性のばらつきや組み付け位置のばらつきなどの影響を低減するためである。また、特に部材の交換がなくても、一定枚数ごとや一定のタイミング(装置の立ち上げ時など)において調整を行うことが望ましい。
【0099】
(トナー像に対する電荷付与量調整の処理手順)
図7には電荷付与量の調整、すなわちスコロトロンチャージャ7の出力設定の調整処理例のフローチャートを示す。図7を用いて調整処理の手順を説明する。
【0100】
なお、調整の基準となる所定の範囲については、付着量の少ないパターンのトナー像に対しては、電荷付与量としての流れ込み電流i3がi0以下とし、付着量の多いパターンのトナー像に対しては、流れ込み電流i3がimin以上、imax以下とした。
【0101】
2種類のトナー像については、その画像パターンが、例えばメモリ22に格納してあるものとする。以下の処理においては、必要時に制御部21が画像パターンを提供して本体制御部にテスト用トナー像の形成を連絡するものとする。
【0102】
以下、調整処理の手順を説明する。
【0103】
まず、付着量の少ないパターンのトナー像に対する第1の調整工程がある。
【0104】
ステップS1で付着量の少ないパターンのトナー像を形成し、これに対する流れ込み電流i3を測定する(電荷付与工程)。制御部21による流れ込み電流i3の算出については、既に述べたとおりである。
【0105】
次にステップS2で、流れ込み電流i3が所定の値(i0)を超えているかどうかを判定する。流れ込み電流i3が所定の値(i0)以下であれば(ステップS2;YES)、次のステップS4に進む(第2の調整工程へ)。
【0106】
流れ込み電流i3が所定の値(i0)を超えていれば(ステップS2;NO)、ステップS3を実行し、グリッド電圧v1を増加させる。そしてステップS1へ戻り、再び付着量の少ないパターンのトナー像を形成して流れ込み電流i3を測定する(電荷付与工程)。
【0107】
上記の処理が流れ込み電流i3が所定の値(i0)以下になるまで繰り返される。
【0108】
ステップS4からは、付着量の多いパターンのトナー像に対する第2の調整工程である。
【0109】
ステップS4では付着量の多いパターンのトナー像を形成し、ステップS1と同様に、これに対する流れ込み電流i3を測定する(電荷付与工程)。
【0110】
ステップS5では、流れ込み電流i3が所定の範囲上限値(imax)以下であるかどうかを判定する。流れ込み電流i3が所定の範囲上限値(imax)以下であれば(ステップS5;YES)、次のステップS7に進む。
【0111】
流れ込み電流i3が所定の範囲上限値(imax)を超えていれば(ステップS5;NO)、ステップS6を実行し、放電電極71(ワイヤー)への印加電圧vsを小さくする。そしてステップS4へ戻り、再び付着量の多いパターンのトナー像を形成して流れ込み電流i3を測定する(電荷付与工程)。
【0112】
ステップS7では、流れ込み電流i3が所定の範囲下限値(imin)以上であるかどうかを判定する。流れ込み電流i3が所定の範囲下限値(imin)以上であれば(ステップS7;YES)、調整は終了である。
【0113】
流れ込み電流i3が所定の範囲下限値(imin)未満であれば(ステップS7;NO)、ステップS8を実行し、放電電極71への印加電圧vsを大きくする。そしてステップS4へ戻り、再び付着量の多いパターンのトナー像を形成して流れ込み電流i3を測定する(電荷付与工程)。
【0114】
このようにして付着量の多いパターンのトナー像に対する流れ込み電流i3が所定の範囲内に収まれば調整を終了する。
【0115】
なお、第1の調整工程で付着量の少ないパターンのトナー像に対する流れ込み電流値i3が所定の値(i0)以下であっても、第2の調整工程で放電電極71への印加電圧vsを増加した場合に、付着量の少ないパターンのトナー像に対する流れ込み電流値i3がわずかながら増加して、所定の値(i0)を超えてしまう可能性がある。
【0116】
これに対しては、次の図8に示すようなフローチャートで対処可能である。
【0117】
図8には電荷付与量の調整、すなわちスコロトロンチャージャ7の出力設定の調整処理例2のフローチャートを示す。図7の調整処理例と異なるのは、第3の調整工程が加わっていることである。以下、第3の調整工程のみを説明する。
【0118】
ステップS7で、流れ込み電流i3が所定の範囲下限値(imin)以上であっても(ステップS7;YES)、調整は終了せず、ステップS9へ進む。
【0119】
ステップS9で、ステップS1と同様に付着量の少ないパターンのトナー像を形成し、これに対する流れ込み電流i3を測定する(電荷付与工程)。
【0120】
次にステップS10で、ステップS2と同様に流れ込み電流i3が所定の値(i0)を超えているかどうかを判定する。流れ込み電流i3が所定の値(i0)以下であれば(ステップS10;YES)、調整は終了である。
【0121】
流れ込み電流i3が所定の値(i0)を超えていれば(ステップS10;NO)、ステップS11を実行し、グリッド電圧v1を増加させる。そしてステップS1へ戻り、再び付着量の少ないパターンのトナー像を形成して流れ込み電流i3を測定する(電荷付与工程)。
【0122】
すなわち、第2の調整工程の後第3の調整工程でもう一度付着量の少ないパターンのトナー像に対する流れ込み電流i3を測定し、所定の値(i0)を超えていれば、グリッド電圧v1を増加させるとともに再び第1の調整工程に戻って上記調整処理を繰り返すことになる。第3の調整工程で所定の値(i0)以下になれば調整が終了することになる。
【0123】
以上のようにして、転写前のトナーをスコロトロンチャージャを用いて除電するに際して、互いに付着量の異なる2種類のテスト用トナー像を形成して、スコロトロンチャージャによる電荷付与量を計測し、計測された電荷付与量がそれぞれ所定の範囲内となるように、スコロトロンチャージャの出力設定を調整することができる。
【0124】
またそれにより、高付着量部については十分に除電し、低付着量部についてはなるべく荷電量を維持するようにして、画像パターンに関らず良好な転写性が得られるようにすることができる。すなわち、トナー像の画像パターンに関らず高い転写効率で転写することができ、濃度不足や濃度ムラ、画像劣化のない、高品質な転写画像を得ることができる。
【0125】
(別の実施形態について)
なお、ここまでの説明では、2次転写前にスコロトロンチャージャ7を設置して、中間転写体5上のトナー像に対して荷電調整する場合について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、図9に示すような中間転写体5に1次転写する前にスコロトロンチャージャ7を設置して、感光体1上のトナー像に対して荷電調整する場合についても適用できる。
【0126】
また、図1に示すように、1つの感光体1の周囲に4組の液体現像装置4Y、4M、4C、4Kを配設した構成の画像形成装置を例にとって説明してきたが、図10に示すような、ベルト状の中間転写体5の周囲に沿って4組の感光体1Y、1M、1C、1Kが配設され、それぞれの感光体が液体現像装置を1つずつ備えた構成の画像形成装置の場合にも同様の説明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0127】
(トナー像に対する電荷付与量調整処理の実施例)
まず設定した2種類の付着量の異なるテスト用トナー像に対して、電荷付与量調整の基準となる所定の範囲を具体的に設定し、実際にスコロトロンチャージャの出力調整処理を行ってみた実施例、及び行っていない比較例について説明する。
【0128】
<調整のための流れ込み電流に関する所定の範囲の設定>
流れ込み電流i3と転写効率との関係を明らかにし、適切な電流値の範囲を設定するために、図1に示す画像形成装置を用いて、実際に流れ込み電流i3を変えて転写効率を調べた。
【0129】
使用した液体現像剤は、樹脂に顔料を分散してなるトナーを不揮発性の絶縁性キャリアに分散したものであり、さらに少量の分散剤を添加してある。
【0130】
液体現像剤のトナーの割合は25質量%であり、25℃における粘度は0.1Pa・sの高粘度の液体現像剤である。トナーの体積平均粒径は2.5μmである。
【0131】
感光体1としてアモルファスシリコン感光体を用い、現像前のトナーにはコロトロンチャージャにより予めプラス荷電を与え、反転現像した。
【0132】
現像ローラ41は金属の芯金の周りに厚さ5mmのNBRゴム層を持つローラを用いた。ゴム層の体積抵抗率は1E7Ω・cm程度、ゴム硬度は40度である。現像ローラー41上の現像剤の付着量は4.5g/m2であり、トナー荷電用のコロトロンチャージャから現像ローラ41に流れ込む電流は0.06μA/cm2とした。
【0133】
中間転写体5として、金属の芯金の周りに厚さ3mmのポリウレタンのゴム層を持つローラを用いた。ゴム層の体積抵抗率は1E8Ω・cm程度、ゴム硬度は40度である。
【0134】
転写ローラ8として、金属の芯金の周りに厚さ5mmのポリウレタンのゴム層を持つローラを用いた。ゴム層の体積抵抗率は1E8Ω・cm程度、ゴム硬度は60度である。
【0135】
各ローラや感光体の奥行き(幅)方向の長さは約30cmである。中間転写体5への印加電圧は−300V、転写ローラ8への印加電圧は−1200Vとした。システム速度は400mm/sである。
【0136】
転写効率の評価は以下の条件で行った。
【0137】
1色もしくは2色重ねのベタ画像を出力し、感光体1上での現像、転写を経て、中間転写体5にテスト用トナー像として形成した。被転写材9への転写前のトナーの質量Aと、被転写材9への転写後に中間転写体5に残されたトナーの質量Bとを測定して、下式により転写効率を算出した。
【0138】
転写効率[%]=((A−B)/A)×100
テスト用トナー像は、付着量の少ないパターンとしてベタ1色のパターン画像を、付着量の多いパターンとしてベタ2色重ねのパターン画像を使用した。
【0139】
流れ込み電流i3は、放電電極71に流れる電流isからケーシング(安定板72)に流れる電流i2およびグリッド電極73に流れる電流i1を減算して求めた。
【0140】
ベタ1色のパターン画像とベタ2色重ねのパターン画像に対する流れ込み電流i3を変えたときの転写効率を、それぞれ表1、表2に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
表1の結果によれば、ベタ1色のパターンでは除電しなくても(流れ込み電流i3が0でも)トナー像は100%転写できるが、流れ込み電流i3を大きくしていくと、除電され過ぎてしまい転写できなくなる。すなわち、ベタ1色のパターンのトナー像に対する流れ込み電流i3は0.4μA/cm以下と設定するのが適切である。
【0144】
表2の結果によれば、ベタ2色のパターンのトナー像に対しては、除電なし(流れ込み電流i3が0)のときは90%しか転写できない。これはベタ2色のパターンのトナー像は1色のパターンに比べて単位面積当りの荷電量Q/Sが大きいために、転写電流が不足しているためである。
【0145】
そこで、流れ込み電流i3を大きくしていってトナーを除電すると、ベタ2色のパターンのトナー像でも100%転写できるようになる。さらに流れ込み電流i3を大きくすると、ベタ2色のパターンでも除電しすぎることになり、転写効率が悪化する。すなわち、ベタ2色重ねのパターンのトナー像に対する流れ込み電流i3は、0.4μA/cm〜0.8μA/cmの間に設定するのが適切である。
【0146】
なお、流れ込み電流i3が大きすぎるとトナーが除電され過ぎて転写効率が悪化するが、ベタ1色のパターンの方がベタ2色のパターンよりも転写効率が維持できる流れ込み電流i3の上限が低い。これは両者のトナー付着量の違いによる。すなわち、トナー付着量が少ないベタ1色のパターンの方が、同じ流れ込み電流i3でも単位質量あたりの荷電量は下がりやすい。
【0147】
上記では、付着量の少ないパターンとしてベタ1色のパターン画像を、付着量の多いパターンとしてベタ2色重ねのパターン画像をテスト用トナー像として使用した。しかし、テスト用トナー像のパターンはこれらに限定されるものではない。
【0148】
例えば、付着量の少ないパターンとして細線もしくは網点パターンの画像を、付着量の多いパターンとしてベタ1色のパターン画像を使用してもよい。通常形成して利用する画像の付着量レベルを考慮して、適切に設定すればよい。
【0149】
<実施例>
図1に示した画像形成装置を使用して、付着量の異なる2つのテスト用トナー像を形成して流れ込み電流i3を測定し、これらが所定の範囲に入るようにスコロトロンチャージャー7の出力を調整しながら画像出力を行った。
【0150】
付着量の少ないパターンとしてベタ1色のパターン画像、付着量の多いパターンとしてベタ2色重ねのパターン画像を出力し、トナー像を形成した。
【0151】
流れ込み電流i3の所定の範囲は、表1に基づいてほぼ100%の転写効率が維持できるように設定した。すなわち、ベタ1色のパターンは0.4μA/cm以下、ベタ2色のパターンは0.4μA/cm〜0.8μA/cmとした。
【0152】
図8に示したフローチャートに基づく自動的な除電量の調整を、装置立ち上げ時、画像出力1000枚ごと、および一定時間(2時間)以上画像出力がなかった場合に行った。その他の画像形成条件は表1の実験と同じである。
【0153】
このような条件で、数日間にわたって100K枚の耐久テストを行ったところ、濃度不足や濃度ムラ、画像劣化が見られず、常に安定して高品質な画像が得られた。
【0154】
<比較例>
実施例と同様の条件であるが、スコロトロンチャージャ7の出力の調整は最初に行う(このときの調整の仕方は実施例と同じ)のみであり、その後はスコロトロンチャージャ7の出力条件は固定して、調整を行わず、数日間にわたって100K枚の耐久テストを行った。
【0155】
その結果、出力画像の一部にスコロトロンチャージャ7の出力が不適切になったことによると思われる、濃度不足や濃度ムラ、画像劣化が見られ、高品質な画像が安定して得られなかった。
【0156】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法によれば、転写前のトナーをスコロトロンチャージャを用いて除電するに際して、互いに付着量の異なる2種類のテスト用トナー像を形成して、スコロトロンチャージャによる電荷付与量を計測し、計測された電荷付与量がそれぞれ所定の範囲内となるように、スコロトロンチャージャの出力設定を調整することができる。
【0157】
またそれにより、高付着量部については十分に除電し、低付着量部についてはなるべく荷電量を維持するようにして、画像パターンに関らず良好な転写性が得られるようにすることができる。すなわち、トナー像の画像パターンに関らず高い転写効率で転写することができ、濃度不足や濃度ムラ、画像劣化のない、高品質な転写画像を得ることができる。
【0158】
なお本発明の範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、それらの変更された形態もその範囲に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成例を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置におけるトナー像への電荷付与の制御に関する概略機能構成例を示す図である。
【図3】スコロトロンチャージャにより電荷付与したときの、流れ込み電流i3と除電量、すなわちQ/Sの変化量ΔQ/Sとの関係を示すグラフである。
【図4】トナー像担持体の表面電位vtとグリッド電位v1との差に対する流れ込み電流i3の関係を示すグラフである。
【図5】(a)放電電極への印加電圧vsを変えた場合の、トナー像担持体の電位vtに対する流れ込み電流i3の立ち上がり角度Aの変化を示すグラフ、及び(b)グリッド電圧v1を変えることで、流れ込み電流i3の立ち上がり電位Bがシフトすることを示すグラフである。
【図6】トナー像のトナー付着量とトナー像担持体の表面電位vtの関係を示すグラフである。
【図7】電荷付与量の調整、すなわちスコロトロンチャージャの出力設定の調整処理例(第1の調整工程、第2の調整工程)のフローチャートを示す。
【図8】電荷付与量の調整、すなわちスコロトロンチャージャの出力設定の調整処理例2(図7のフローに第3の調整工程が加わる)のフローチャートを示す。
【図9】本発明に係る画像形成装置の別の実施形態での概略構成例を示す図である。
【図10】本発明に係る画像形成装置のさらに別の実施形態での概略構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0160】
1、1Y、1M、1C、1K 感光体
2 帯電装置
3 露光装置
4、4Y、4M、4C、4K 液体現像装置
5 中間転写体
6 クリーニング装置
7 スコロトロンチャージャ(電荷付与手段)
8 転写ローラ
9 被転写材
10 定着装置
11a、12a、13a 電流計
11b、13b 電源
21 制御部(調整手段)
22 メモリ
41 現像ローラ
71 ワイヤー(放電電極)
72 ケーシング(安定板)
73 グリッド(グリッド電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上の静電潜像を液体現像剤によって現像し、形成されたトナー像を中間転写体に一次転写し、複数色のトナー像を前記中間転写体上で重ね合わせ、被転写材上に二次転写してフルカラーの画像を得る画像形成装置において、
前記静電潜像を現像する現像位置と前記トナー像を前記被転写材に転写する転写位置との間で、スコロトロンチャージャを用いて前記トナー像に電荷を付与する電荷付与手段と、
前記電荷付与手段による電荷付与量を計測する計測手段と、
前記計測手段により取得した電荷付与量に基づき、前記電荷付与手段の出力設定を調整する調整手段とを備え、
前記調整手段は、
予め形成された互いに付着量の異なる2種類のテスト用トナー像に対して、前記計測手段により取得された前記電荷付与手段による電荷付与量が、それぞれ所定の範囲内となるように、前記スコロトロンチャージャの出力設定を調整する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記スコロトロンチャージャのワイヤーの印加電圧とグリッド電圧との何れか、もしくは両方を変更することで電荷付与量を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記スコロトロンチャージャによる電荷付与量として、ワイヤへの供給電流から安定板及びグリッドに流れ込む電流を減じた電流値を求める
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記2種類のテスト用トナー像は、単色のベタパターン画像及び複数色の重ね合わされたベタパターン画像である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記2種類のテスト用トナー像は、ベタパターン画像及び、細線もしくは網点パターン画像である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電荷付与手段は、前記像担持体上のトナー像に電荷を付与する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記電荷付与手段は、前記中間転写体上のトナー像に電荷を付与する、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
像担持体上の静電潜像を液体現像剤によって現像し、形成されたトナー像を中間転写体に一次転写し、複数色のトナー像を前記中間転写体上で重ね合わせ、被転写材上に二次転写してフルカラーの画像を得る画像形成方法において、
前記静電潜像を現像する現像位置と前記トナー像を前記被転写材に転写する転写位置との間で、スコロトロンチャージャを用いて前記トナー像に電荷を付与する電荷付与工程と、
前記スコロトロンチャージャによる電荷付与量に基づき、前記スコロトロンチャージャの出力設定を調整する調整工程とを備え、
前記調整工程では、
互いに付着量の異なる2種類のテスト用トナー像を形成して、前記スコロトロンチャージャによる電荷付与量を計測し、計測された電荷付与量がそれぞれ所定の範囲内となるように、前記スコロトロンチャージャの出力設定を調整する
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
前記調整工程では、前記スコロトロンチャージャのワイヤーの印加電圧とグリッド電圧との何れか、もしくは両方を変更することで電荷付与量が調整される
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記調整工程では、前記スコロトロンチャージャによる電荷付与量として、ワイヤへの供給電流から安定板及びグリッドに流れ込む電流を減じた電流値が求められる
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記2種類のテスト用トナー像は、単色のベタパターン画像及び複数色の重ね合わされたベタパターン画像である
ことを特徴とする請求項9または10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記2種類のテスト用トナー像は、ベタパターン画像及び、細線もしくは網点パターン画像である
ことを特徴とする請求項9または10に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記電荷付与工程では、前記像担持体上のトナー像に電荷が付与される、
ことを特徴とする請求項8乃至12の何れか1項に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記電荷付与工程では、前記中間転写体上のトナー像に電荷が付与される、
ことを特徴とする請求項8乃至13の何れか1項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−109834(P2009−109834A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283265(P2007−283265)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】