説明

画像形成装置

【課題】
本発明の課題は、印刷時に現像ローラ上に付着するトナーのトナー電位の増加を抑え、現像ローラから感光体ドラムへの静電潜像とは関係のない移動を防止することにある。
【解決手段】
本発明は、現像部材に印加する電圧を電圧印加制御部で制御する、あるいは、像担持体の回転速度を速度制御部で制御することで、現像部材上の現像剤の電位の上昇を抑えることができる。これにより、像担持体に現像剤の一部が静電潜像とは関係なく移動することがなくなり、記録用紙の汚れを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式のプリンタや複写機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置は、帯電装置より均一に帯電された感光体ドラムの表面を露光装置に露光して静電潜像を形成し、現像装置により静電潜像を現像して感光体ドラム上にトナー画像を形成した後、トナー画像を媒体に転写して、定着する方式である。このような、画像形成装置において、感光体ドラムの回転が開始された直後の未帯電領域への現像を防止する目的で、現像ローラにトナーと逆極性の電圧を印加していた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平05−072878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような画像形成装置は、現像ローラにトナーと逆極性の電圧を印加した後、同極性の電圧を印加するように切り替えると、印刷時に現像ローラ上に付着するトナーの付着量が増加し、トナー電位が増加するため、増加したトナーが静電潜像とは関係なく感光体ドラム上に移動してしまう。そして、感光体ドラム上に移動したトナーが記録用紙に移動して、記録用紙を汚してしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実状に鑑み、印刷時に現像ローラ上に付着するトナーのトナー電位を抑え、現像ローラから感光体ドラムへの静電潜像とは関係のない移動を防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、帯電した表面を露光することによって形成される静電潜像を所定の極性に帯電させた現像剤によって現像し、回転する像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電部材と、前記帯電部材よりも前記像担持体の回転方向下流側に備えられ、前記現像剤を前記像担持体に付着させ、形成された前記静電潜像を現像する現像部材と、前記現像部材に前記現像剤を供給する供給部材と、前記現像部材に電圧を印加する現像部材電圧印加部と、前記供給部材に電圧を印加する供給部材電圧印加部と、前記現像部材電圧印加部による前記現像部材への電圧の印加、及び、前記供給部材電圧印加部による前記供給部材への電圧の印加を制御する電圧印加制御部とを有し、前記電圧印加制御部は、前記像担持体の回転が開始されて、前記帯電部材によって帯電された前記像担持体上の所定の箇所が前記現像部材に達してから、前記供給部材への電圧の印加が開始されるまで、画像形成時に前記現像部材電圧印加部が前記現像部材に印加する電圧と、前記供給部材電圧印加部が前記供給部材に印加する電圧との差分以下の電圧を前記現像部材に印加させるように、前記現像部材電圧印加部を制御することを特徴とする。
【0007】
本発明の画像形成装置によれば、像担持体上の所定の箇所が現像部材に達した後、供給部材への電圧の印加が開始されるまでの間、現像部材に画像形成時に印加する電圧と、供給部材に画像形成時に印加する電圧との差分以下の電圧を現像部材に現像部材電圧印加部が印加するように、電圧印加制御部で制御することで、現像部材上の現像剤の電位の増加が小さくなる。これにより、像担持体側に現像剤の一部が静電潜像とは関係なく移動することを防ぐことができ、現像剤が印刷媒体上に移ることが防止できる。
【0008】
また、本発明の画像形成装置は、帯電した表面を露光することによって形成される静電潜像を所定の極性に帯電させた現像剤によって現像し、回転する像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電部材と、前記帯電部材よりも前記像担持体の回転方向下流側に備えられ、前記現像剤を前記像担持体に付着させ、形成された前記静電潜像を現像する現像部材と、前記現像部材に前記現像剤を供給する供給部材と、前記現像部材に電圧を印加する現像部材電圧印加部と、前記供給部材に電圧を印加する供給部材電圧印加部と、前記像担持体の回転速度を制御する速度制御部とを有し、前記速度制御部は、前記像担持体の回転が開始されて、前記供給部材電圧印加部から電圧が印加された前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の所定の箇所が前記現像部材に達してから、所定の期間まで、画像形成時よりも遅い回転速度で回転させるように前記像担持体を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成装置によれば、現像部材に現像剤と同極性の電圧を印加してから、所定期間、像担持体を画像形成時の速度よりも遅い速度で駆動させ、所定期間経過後、画像形成時の速度とする。これにより、現像部材上の現像剤の電位の上昇を抑えることができる。したがって、像担持体に現像剤の一部が静電潜像とは関係なく移動することがなくなり、記録用紙の汚れを防ぐことができる。
【0010】
さらに、本発明の画像形成装置は、帯電した表面を露光することによって形成される静電潜像を所定の極性に帯電させた現像剤によって現像し、回転する像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電部材と、前記帯電部材よりも前記像担持体の回転方向下流側に備えられ、前記現像剤を前記像担持体に付着させ、形成された前記静電潜像を現像する現像部材と、前記現像部材に前記現像剤を供給する供給部材と、前記像担持体の表面に帯電した電位を除電する除電部と、前記現像部材に電圧を印加する現像部材電圧印加部と、前記供給部材に電圧を印加する供給部材電圧印加部と、前記除電部に電圧を印加する除電部電圧印加部と、前記現像部材電圧印加部による前記現像部材への電圧の印加、前記供給部材電圧印加部による前記供給部材への電圧の印加、及び、前記除電部電圧印加部による前記除電部への電圧の印加を制御する電圧印加制御部とを有し、前記電圧印加制御部は、前記帯電部材に印加する電圧を変える場合、前記除電部に電圧を印加しないように前記除電部電圧印加部を制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、帯電部材に印加する電圧を変えるクリーニング期間に除電部への電圧の印加を切ることで、像担持体の表面の電位を一定の値に保つことができる。したがって、現像部材から像担持体に現像剤が移動することを防ぐために、現像部材に現像剤と逆極性の電圧を印加する必要がなくなる。これにより、帯電部材のクリーニング期間の終了後、現像部材に現像剤と同極性の電圧を印加しても、現像部材上の現像剤の電位の上昇が抑えられ、像担持体に現像剤の一部が静電潜像とは関係なく移動することを防ぐことができ、記録用紙の汚れも防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、現像部材に印加する電圧を電圧印加制御部で制御する、あるいは、像担持体の回転速度を速度制御部で制御することで、現像部材上の現像剤の電位の上昇を抑えることができる。これにより、像担持体に現像剤の一部が静電潜像とは関係なく移動することがなくなり、記録用紙の汚れを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の画像形成装置は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお、特に断りがない限り、本発明において、電位、電圧の大小又は増減の関係は、電位、電圧の絶対値に対するものであるものとする。例えば、電圧が−100Vから−300Vになった場合、絶対値としては、電圧の絶対値が100から300になっているため、電圧が増加したと表すものとする。
【0014】
[実施の形態1]
画像形成装置は、図2に示すように、ロワーフレーム11内部に、複数のローラ12、13、14、15を備え、これらローラ12、13、14、15が配設された経路に沿って、記録媒体としての記録用紙を搬送する略S字状の用紙搬送経路16が形成される。この用紙搬送経路16の最上流端部には、記録用紙を収納する給紙カセット20及びこの給紙カセット20から記録用紙を繰り出す用紙繰り出し部21が設けられるとともに、用紙搬送経路16の最下流端部には、印刷されて排出された記録用紙を積載するスタッカ22が設けられる。
【0015】
また、画像形成装置は、用紙搬送経路16上であってローラ13の近傍に、記録用紙の厚さを検出信号に基づいて検出する厚さ検出部23と、給紙カセット20から繰り出された記録用紙を静電効果によって転写ベルト24に付着させて搬送する転写ベルトユニット25と、厚さ検出部23によって検出した記録用紙の厚さに応じて転写ローラ60の位置を変更する位置調整機構26とを備える。
【0016】
そして、画像形成装置は、転写ベルトユニット25と用紙搬送経路16を挟んで対向する位置に、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー画像を形成する4つの現像部30を備える。これら現像部30は、各色に対応するイメージドラム等を有する。現像部30は、イメージドラムに格納された感光体ドラム51上に静電潜像を形成し、その静電潜像をトナーによって現像してトナー画像とする。この現像部30によって現像された感光体ドラム51上のトナー画像は、転写ベルト24、転写ベルトユニット25、及び後述する転写ローラ60から構成される転写部によって記録用紙上に転写される。
【0017】
さらに、画像形成装置は、記録用紙上に形成されたトナー画像を記録用紙に定着させる定着部40を備える。この定着部40は、例えば、ヒータや加圧ローラ等を有し、熱と圧力とによって記録用紙上のトナー画像を定着させる。画像形成装置においては、このような定着部40によって記録用紙上に画像を定着させると、ローラ14、15の回転に応じて記録用紙を搬送して外部へと排紙させ、スタッカ22上に積載させる。
【0018】
このような画像形成装置において、現像部30は、それぞれ、より詳細には図3に示すように構成される。現像部30は、導電性支持体と光導電層によって構成される静電潜像担持体としての感光体ドラム51を有する。この感光体ドラム51は、例えば導電性支持体としてアルミニウムの金属パイプに、光導電層としての電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した有機感光体である。この感光体ドラム51は、速度制御部300により制御された回転速度で、導電性支持体を中心軸として回転可能に構成される。そして、感光体ドラム51は、その表面に電荷を蓄えることが可能に構成されるとともに、後述する露光部53によって露光されることで、その表面の電荷を除去することが可能に構成される。
【0019】
また、この感光体ドラム51の表面には、例えば金属シャフトと半導電性ゴム層によって構成された感光体ドラム51を帯電させる帯電部材としての帯電ローラ52が配設される。この帯電ローラ52は、一定の圧力で感光体ドラム51の表面に接触しており、感光体ドラム51と同方向に金属シャフトを中心軸として回転可能に構成される。そして、帯電ローラ52は、帯電部材電圧印加部としての電源201から所定の正電圧又は負電圧が印加され、感光体ドラム51に対して所定の正電圧又は負電圧を印加することにより、感光体ドラム51を帯電させる。
【0020】
さらに、感光体ドラム51の上方には、感光体ドラム51の表面に静電潜像を形成する露光部53が配設される。露光部53は、画像信号に対応した光を感光体ドラム51の表面に照射し、感光体ドラム51上に静電潜像を形成する。このような露光部53としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)アレイといわゆるセルフォックスレンズアレイ(商品名)とを組み合わせたものや、レーザと作像光学系とを組み合わせたもの等、任意のものを適用することができる。
【0021】
さらにまた、感光体ドラム51の周囲には、例えば金属シャフトと半導電ウレタンゴム材などで構成され、感光体ドラム51上に形成された静電潜像のトナーによる現像を行うための現像部材としての現像ローラ55が配設される。この現像ローラ55は、感光体ドラム51に一定の圧力で接触しており、感光体ドラム51と逆方向に金属シャフトを中心軸として回転可能に構成される。そして、この現像ローラ55は、現像部材電圧印加部としての電源202から所定の正電圧又は負電圧が印加されることにより、接触した感光体ドラム51上に露光部53によって形成された静電潜像をトナーによって現像する。
【0022】
また、この現像ローラ55には、トナー収納容器54に収納されたトナーを供給するための供給部材としての供給ローラ56が配設される。この供給ローラ56は、一定の圧力で現像ローラ55に接触しており、現像ローラ55と同方向に軸を中心として回転可能に構成される。そして、この供給ローラ56には、供給部材電圧印加部としての電源203から所定の正電圧又は負電圧が印加されることにより、付着したトナーを帯電させ、接触した現像ローラ55にトナーを供給する。
【0023】
さらに、この現像ローラ55には、供給ローラ56によって現像ローラ55に供給されたトナーを一定の厚さに規制するトナー規制部材106が配設される。このトナー規制部材106は、例えば厚さ0.08mmで長手方向の長さが現像ローラ55の幅に略一致する長手方向の一端が略L字状に折れ曲がった薄板で構成され、L字状に折れ曲がった箇所が一定の圧力で現像ローラ55に接触し、他端が図示しないフレームに固定されるように配置される。
【0024】
また、感光体ドラム51の周囲には、所定の弾性体からなるクリーニング装置108が配設される。このクリーニング装置108は、感光体ドラム51の表面に残存するトナーを掻き取るように、その一端が一定の圧力で感光体ドラム51の表面に接触する。
【0025】
このように構成される現像部30は、感光体ドラム51上に形成された静電潜像を現像する。この現像部30における感光体ドラム51の下方には、上述した転写ベルト24とともに、トナー画像を記録用紙上に転写する転写ローラ60が配設される。この転写ローラ60は、転写ベルト24の裏面と接触しており、転写ベルト24上に載置された記録用紙を感光体ドラム51と挟持した状態で、所定の正電圧又は負電圧が印加され、記録用紙上にトナーを転写する。
【0026】
イメージドラム部(以下、ID部と称する)100は、このような現像部30の感光体ドラム51、帯電ローラ52、現像ローラ55、供給ローラ56、トナー規制部材106、及び、クリーニング装置108により構成される。このID部100の感光体ドラム51、帯電ローラ52、現像ローラ55、及び、供給ローラ56の駆動は、速度制御部300で各部材所定の回転速度となるように制御される。
【0027】
また、帯電ローラ52に所定の正電圧又は負電圧を印加する電源201、現像ローラ55に所定の正電圧又は負電圧を印加する電源202、及び、供給ローラ56に所定の正電圧又は負電圧を印加する電源203は、電圧印加制御部400に接続されている。この電圧印加制御部400は、帯電ローラ52にトナーと同極性の電圧を印加するように電源201を制御する。また、電圧印加制御部400は、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧を印加するように電源202を制御する。さらに、電圧印加制御部400は、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧を印加するように電源203を制御する。
【0028】
以下に、上述のような構成を有する実施の形態1で説明する画像形成装置の動作について説明する。
【0029】
実施の形態1で説明する画像形成装置は、上述のように、感光体ドラム51に形成された静電潜像を現像して記録用紙に転写する画像を形成する。そして、感光体ドラム51上に形成されたトナー画像を記録用紙に転写し、転写されたトナー画像を定着させることで、記録用紙に画像を形成する。
【0030】
まず、速度制御部300の制御により、ID部100の感光体ドラム51、帯電ローラ52、現像ローラ55及び供給ローラ56が回転駆動すると、電圧印加制御部400は、帯電ローラ52にトナーと同極性で所定の電圧を印加するように、帯電ローラ52に接続されている電源201を制御する。そして、電源201からトナーと同極性の電圧が印加されることで帯電ローラ52が帯電し、帯電ローラ52と接触している感光体ドラム51表面が、帯電ローラ52と同方向に回転することで、トナーと同極性に帯電する。
【0031】
そして、図示しない書き込み制御部により出力された画像データに基づいて露光部53から例えばLED光やレーザ光が感光体ドラム51に照射され、感光体ドラム51の表面に画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0032】
電圧印加制御部400は、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧を印加するように、供給ローラ56に接続されている電源203を制御する。そして、電源203から電圧が印加されることで、供給ローラ56が帯電し、供給ローラ56の回転により、供給ローラ56に接触している現像ローラ55にトナーを供給する。
【0033】
供給ローラ56からトナーが供給された現像ローラ55は回転することで、現像ローラ55に接触しているトナー規制部材106により供給されたトナーの層を現像ローラ55の表面に形成する。現像ローラ55上に形成されるトナー層の層厚は、現像ローラ55に対するトナー規制部材106の押圧力などにより決定される。このトナー層が形成されるとき、現像ローラ55上のトナーとトナー規制部材106とが擦れ、その摩擦によってトナーが帯電する。
【0034】
電圧印加制御部400は、供給ローラ56に電位が印加され、感光体ドラム51に形成された静電潜像を現像する場合、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧を印加するように、現像ローラ55が接続されている電源202を制御する。そして、電源202から電圧が印加されることで、現像ローラ55がトナーと同極性に帯電し、現像ローラ55の回転により、静電潜像が形成された感光体ドラム51上に帯電したトナーを付着させる。トナーが付着することで、静電潜像が可視化されたトナー画像となる。
【0035】
トナー画像が形成された後、転写ローラ60に図示しない電源からトナーと逆極性の電圧が印加されることで、搬送されてくる記録用紙にトナー画像が転写される。転写後、感光体ドラム51上のトナーはクリーニング装置108によって除去される。転写されたトナー画像は、定着部40によって記録用紙上に定着し、スタッカ22に排出される。
【0036】
このように、画像を形成する画像形成装置について、図1及び図4を参照しながら説明する。図1は、実施の形態1で説明する画像形成装置のID部、各電源の印加タイミング、現像ローラとの接触位置における感光体ドラムの帯電電位、現像ローラ上のトナー電位の変化を示したタイムチャートであり、図4は、従来の画像形成装置のタイムチャートである。
【0037】
図4のように、従来、画像形成装置は、時刻t0において、速度制御部300の制御によってID部100が駆動することで、感光体ドラム51、帯電ローラ52、現像ローラ55、及び、供給ローラ56が回転する。このID部100の駆動と同時に電圧印加制御部400の制御によって、電源202は、現像ローラ55にトナーと逆極性の電圧(例えば+300V)を印加する。
【0038】
これは、ID部100が駆動した直後には感光体ドラム51が帯電ローラ52によって帯電していない領域(未帯電領域)があり、電圧印加制御部400は、この未帯電領域にトナーが付着することを防ぐために、現像ローラ55にトナーと逆極性の電圧を印加させるように電源202を制御する。トナーと逆極性の電圧が現像ローラ55に印加されることで、トナーが現像ローラ55に引き付けられ、感光体ドラム51の未帯電領域にトナーが付着しない。
【0039】
また、電圧印加制御部400は、時刻t0において、帯電ローラ52に電圧が印加されないように電源201を制御し、供給ローラ56に電圧が印加されないように電源202を制御する。
【0040】
ID部100の駆動が安定する時刻t1になると、電圧印加制御部400は、帯電ローラ52にトナーと同極性の電圧(例えば−1100V)を印加するように電源201を制御する。
【0041】
帯電ローラ52によって帯電した感光体ドラム51上の帯電ローラ52と接触した箇所が、感光体ドラム51の回転によって現像ローラ55に達する時刻t2になると、現像ローラ55における感光体ドラム51の電圧が図4のように上昇する。このとき、感光体ドラム51の帯電領域への現像を開始するために、電圧印加制御部400は、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧を印加するように電源202を制御する。また、電圧印加制御部400は、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧を印加するように電源203を制御する。
【0042】
時刻t2において、現像ローラ55に接続される電源202がトナーと同極性の電圧を印加するように切り替わり、供給ローラ56に接続される電源203からトナーと同極性の電圧が印加されると、現像ローラ55上に付着するトナーの量が増加する。これにより、図4のように、現像ローラ55上のトナー電位の最大値Vpが上昇する。このように上昇したトナー電位は、現像ローラ55の回転に従って、現像ローラ55上のトナーの付着量が減少し、現像ローラ55上のトナー電位が安定電位V0となるが、現像ローラ55上のトナー電位がV1よりも大きいうちに、記録用紙への印刷に対応する時刻t4に達してしまう。記録用紙への印刷が開始されてしまうと、現像ローラ55上のトナーの一部が形成された静電潜像とは関係なく感光体ドラム51側に移動してしまい、記録用紙に付着して汚れとなる。
【0043】
実施の形態1で説明する画像形成装置は、このような従来の問題を解決するものである。具体的に、画像形成装置は、図1のように、時刻t0において、速度制御部300の制御によってID部100が駆動し、感光体ドラム51、帯電ローラ52、現像ローラ55、及び、供給ローラ56が回転する。このID部100の駆動と同時に電圧印加制御部400の制御によって、電源202は、現像ローラ55にトナーと逆極性の電圧(例えば+300V)を印加する。また、電圧印加制御部400は、帯電ローラ52に電圧を印加しないように電源201を制御し、供給ローラ56に電圧を印加しないように電源203を制御する。
【0044】
ID部100の駆動が安定する時刻t1になると、電圧印加制御部400は、帯電ローラ52にトナーと同極性の電圧(例えば1100V)を印加するように電源201を制御する。
【0045】
帯電ローラ52によって帯電した感光体ドラム51上の帯電ローラ52と接触した所定の箇所が、感光体ドラム51の回転によって現像ローラ55に達する時刻t2になると、現像ローラ55における感光体ドラム51の電圧が図1のように上昇する。このとき、電圧印加制御部400は、電源202が現像ローラ55に印刷時に印加する電圧と、電源203が供給ローラに印刷時に印加する電圧との差分以下の電圧を現像ローラ55に印加するように電源202を制御する。例えば、図1のように、電圧印加制御部400は、+300Vの電圧を現像ローラ55に印加している電源202が、時刻t2に達することで、現像ローラ55に0Vの電圧を印加するように制御する。また、電圧印加制御部400は、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧を印加するように電源203を制御する。
【0046】
従来、時刻t2において、供給ローラ56に接続される電源203からトナーと同極性の電圧が印加されると、現像ローラ55上のトナー電位の最大値Vpが上昇する。一方、本発明の画像形成装置の場合、電源202が現像ローラ55に印刷時に印加する電圧と、電源203が供給ローラ56に印刷時に印加する電圧との差分以下(例えば0V)の電圧を現像ローラ55に印加するように、電圧印加制御部400が電源202を制御することで、図1のように、トナー電位の増加量が減少し、現像ローラ55上のトナー電位の最大値Vpが従来よりも減少する。
【0047】
そして、時刻t3において、供給ローラ56に電圧(例えば−350V)を印加させるように電圧印加制御部400が電源203を制御すると、感光体ドラム51の帯電領域への現像が開始されるために、電圧印加制御部400は、現像ローラ55に印刷時に印加する電圧と、供給ローラに印刷時に印加する電圧との差分以下の電圧よりも大きい、本来、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧(例えば−200V)を印加するように電源202を制御する。現像ローラ55と供給ローラ56とに印加される電圧が切り替わるが、従来(図4)のように、トナー電位が大きく増加することがなく、トナー電位の増加が減少傾向となる。
【0048】
そして、記録用紙への印刷に対応する時刻t4になると、現像ローラ55上のトナー電位がV1より小さくなり、安定電位V0に近づく。したがって、従来のように、トナーの一部が静電潜像とは関係なく感光体ドラム51側に移動することがなく、記録用紙の汚れもない。
【0049】
この電圧印加制御部400により、電源202が現像ローラ55に印刷時に印加する電圧と、電源203が供給ローラ56に印刷時に印加する電圧との差分以下の電圧を電源202が現像ローラ55に印加する期間(時刻t2から時刻t3)について図5を参照して説明する。図5は、電圧印加制御部で現像ローラに印加する電圧を0Vに制御した場合の現像ローラの回転数に対して現像ローラ上のトナー電位の変化を調べた結果である。横軸に現像ローラに0Vを印加している期間(時刻t2から時刻t3)の長さを現像ローラの回転数で示し、縦軸に現像ローラ上のトナー電位を示す。
【0050】
電源202が0Vの電圧を現像ローラ55に印加する期間が現像ローラ55の回転数で0周の場合、現像ローラ55上のトナー電位は、−250Vを越える。この場合、記録用紙は汚れてしまう。電源202が0Vの電圧を現像ローラ55に印加する期間が徐々に長くなると、現像ローラ55上のトナー電位が減少する。そして、現像ローラ55の回転数が2周で、現像ローラ55上のトナー電位が−110Vとなり、3周以上回転させることで現像ローラ55上のトナー電位が安定する。
【0051】
この結果から、電源202が0Vの電圧を現像ローラ55に印加する期間は、帯電ローラ52によって帯電した感光体ドラム51上の帯電ローラ52と接触した所定の箇所が現像ローラ55に達してから、現像ローラ55が少なくとも3周以上回転するまでとし、電圧印加制御部400は、その間、現像ローラ55に印刷時に印加する電圧と、供給ローラに印刷時に印加する電圧との差分以下の電圧を現像ローラ55に印加するように電源202を制御する。そして、電圧印加制御部400は、現像ローラ55が少なくとも3周以上回転した後、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧を印加するように電源203を制御する。このように、電圧印加制御部400が電源202、203を制御することで、現像ローラ55上のトナー電位が安定し、記録用紙を汚すことを防ぐことができる。
【0052】
実施の形態1では、電源202から現像ローラ55に印加する電圧を0Vとするように電圧印加制御部400で制御しているが、印刷時の現像ローラ55に印加される電圧と供給ローラ56印加する電圧との差分以下であればよい。例えば、印刷時に現像ローラ55に印加する電圧が−200Vで、印刷時に供給ローラ56に印加する電圧が−350Vである場合、その差分である150Vよりも小さい値であれば、同様の効果を得ることができる。
【0053】
実施の形態1で説明する画像形成装置は、電源202が現像ローラ55に印刷時に印加する電圧と、電源203が供給ローラ56に印刷時に印加する電圧との差分以下の電圧を現像ローラ55に電源202で印加するように電圧印加制御部400で制御することで、現像ローラ55上のトナー電位の増加が小さくなる。そして、感光体ドラム51側にトナーの一部が静電潜像とは関係なく移動することを防ぐことができ、記録用紙の汚れも防ぐことができる。
【0054】
[実施の形態2]
実施の形態2で説明する画像形成装置は、実施の形態1で説明した画像形成装置と同じ構成で、ID部100の感光体ドラム51、帯電ローラ52、現像ローラ55及び供給ローラ56の回転速度を変えて、現像ローラ55上のトナー電位の増加を小さくするものである。以下、実施の形態2で説明する画像形成装置について、図6乃至図8を参照しながら説明する。
【0055】
図6は、実施の形態2の画像形成装置における、画像形成装置のID部、各電源の印加タイミング、現像ローラとの接触位置における感光体ドラムの帯電電位、現像ローラ上のトナー電位、ID部の駆動速度の変化を示したタイムチャートである。
【0056】
実施の形態2で説明する画像形成装置は、時刻t0において、速度制御部300の制御により、ID部100が駆動し、感光体ドラム51、帯電ローラ52、現像ローラ55、及び、供給ローラ56が本来よりも遅い印刷速度A(例えば12PPM)で回転する。このID部100の駆動と同時に電圧印加制御部400の制御は、現像ローラ55にトナーと逆極性の電圧(例えば+300V)が印加されるように電源202を制御する。これにより、感光体ドラム51の未帯電領域が現像されるのを防止することができる。電圧印加制御部400は、帯電ローラ52に電圧を印加しないように電源201を制御し、供給ローラ56電圧を印加しないように電源203を制御する。
【0057】
ID部100の駆動が安定する時刻t1において、電圧印加制御部400は、帯電ローラ52にトナーと同極性の電圧(例えば1100V)を印加するように電源201を制御する。
【0058】
帯電ローラ52によって帯電した感光体ドラム51上の帯電ローラ52と接触した箇所が、感光体ドラム51の回転によって現像ローラ55に達する時刻t2になると、現像ローラ55における感光体ドラム51の電圧が図6のように上昇する。このとき、感光体ドラム51の帯電領域への現像を開始するために、電圧印加制御部400は、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧を印加するように電源202を制御する。また、電圧印加制御部400は、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧を印加するように電源203を制御する。
【0059】
時刻t2において、現像ローラ55に接続される電源202がトナーと同極性の電圧を印加するように切り替わり、供給ローラ56に接続される電源203からトナーと同極性の電圧が印加されると、現像ローラ55上に付着するトナーの量が増加し、現像ローラ55上のトナー電位が上昇しはじめる。
【0060】
そして、時刻t3において、速度制御部300は、ID部100の感光体ドラム51、帯電ローラ52、現像ローラ55、及び、供給ローラ56が、駆動速度Aよりも速い本来の印刷時の駆動速度Bで駆動するように制御する。これにより、現像ローラ55上のトナー電位の上昇が抑制され、記録用紙への印刷に対応する時刻t4には、現像ローラ55上のトナー電位がV1よりも小さくなり、安定電位V0に近づく。したがって、図4に示される従来のように、トナーの一部が静電潜像とは関係なく感光体ドラム51側に移動することがなく、記録用紙も汚れない。
【0061】
速度制御部300がID部100の駆動速度を変える期間とその速度について図7及び図8を参照して説明する。図7は、現像ローラ上のトナー電位の最大値Vpと印刷速度との関係を示した図である。印刷速度が26PPMの場合、トナー電位の最大値Vpは−260Vである。この状態で記録用紙への印刷に対応すると、トナーの一部が静電潜像とは関係なく感光体ドラム51側に移動し、記録用紙を汚してしまう。このトナー電位の最大値Vpは、図7のように、印刷速度が遅くなることで小さくなる。
【0062】
図8は、印刷速度12PPMの場合の現像ローラ上のトナー電位の最大値Vpと現像ローラの回転数との関係を示した図である。図8のように、現像ローラ55の回転数が多いほど現像ローラ55の値が小さくなることがわかる。これは、現像ローラ55の回転速度が遅くなるためである。
【0063】
現像ローラ55の回転数が多くなると、その分、印刷が行われるまでの時間が長くなる。印刷速度が12PPMの場合、図8のように、現像ローラ55を3周以上回転させることで、現像ローラ55上のトナー電位が安定する。したがって、実施の形態2の画像形成装置の場合、現像ローラ55を3周させることで印刷が行われるまでの時間とのバランスがとれる。
【0064】
この結果から、ID部100の駆動速度を変える期間は、帯電ローラ52によって帯電した感光体ドラム51上の帯電ローラ52と接触した所定の箇所が現像ローラ55に達してから、現像ローラ55が3周以上回転した時とし、速度制御部300は、その間のID部100の駆動速度Aを12PPMとなるように制御する。これにより、図6のように、現像ローラ55上のトナー電位の最大値VpがV1より大きい電位とならずに安定となり、現像ローラ55上に付着するトナーの量も安定となり、記録用紙を汚すことを防ぐことができる。
【0065】
実施の形態2で説明した画像形成装置は、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧を印加してから、所定時間、感光体ドラム51、帯電ローラ52、現像ローラ55、及び、供給ローラ56を印刷時の速度よりも遅い速度で駆動させ、所定時間経過後、印刷時の速度とする。これにより、現像ローラ55上のトナーのトナー電位の上昇を抑えることができる。したがって、感光体ドラム51にトナーの一部が静電潜像とは関係なく移動することがなくなり、記録用紙の汚れを防ぐことができる。
【0066】
[実施の形態3]
実施の形態3で説明する画像形成装置は、図9のように、実施の形態1で説明した画像形成装置のID部100に、除電部109をさらに加えた構成を有し、感光体ドラム51のクリーニング装置108によるクリーニング後に起こるトナー電位の上昇を抑制するものである。以下、実施の形態3で説明する画像形成装置について、図9乃至図11を参照しながら説明する。
【0067】
実施の形態3の画像形成装置のID部100にさらに加わる除電部109は、導電性の材料からなり、感光体ドラム51と非接触で、対向させて配設されている。この除電部109には、除電部電圧印加部としての電源204が接続され、電圧印加制御部400の制御により、電源204から除電部109に対して、除電用の電圧が印加される。除電用の電圧が印加された除電部109は、クリーニング装置108によってクリーニングされた感光体ドラム51を除電し、感光体ドラム51の表面電位を0Vにする。
【0068】
このように、除電部109がさらに加えられたID部100を有する実施の形態3で説明する画像形成装置は、実施の形態1で説明した画像形成装置と同様に動作する。そして、クリーニング装置108によるクリーニング後、電圧印加制御部400の制御によって電源204から除電部109に電圧が印加され、感光体ドラム51を除電する。
【0069】
記録用紙への印刷を繰り返し行う場合、クリーニング装置108で取り除ききれなかったトナー及びシリカは、電源201によってトナーと同極性の電圧が印加されている帯電ローラ52に付着してしまう。帯電ローラ52に多量のトナー、シリカが付着すると、帯電不良が発生し、感光体ドラム51が正規に帯電しなくなり、印刷不良を引き起こす。
【0070】
この印刷不良を防止するために、電圧印加制御部400は、印刷ジョブの終了時又は印刷中に、帯電ローラ52にトナーと同極性の電圧を印加する電源201を一端停止し、帯電ローラ52のクリーニングを行う。この期間を帯電ローラ52のクリーニング期間とする。
【0071】
以下、帯電ローラ52のクリーニング期間における、電圧印加制御部400の各電源201、202、203、204への制御について図10及び図11のタイムチャートを参照して説明する。図10は、従来の画像形成装置の帯電ローラのクリーニング期間におけるタイムチャートで、図11は、実施の形態3で説明する画像形成装置における帯電ローラのクリーニング期間におけるタイムチャートである。
【0072】
図10のように、印刷ジョブ終了時、又は、印刷中、時刻t0より帯電ローラ52のクリーニング期間に入る。このとき、速度制御部300の制御によってID部100は駆動している。
【0073】
クリーニング期間に入る時刻t0において、電圧印加制御部400は、帯電ローラ52にトナーと同極性の電圧を印加しないように電源201を制御する。このとき、電圧印加制御部400は、印刷中から引き続いて、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧、除電部109に除電用の電圧を印加するように、電源202、203、204を制御する。
【0074】
帯電ローラ52に電圧が印加されないようになることで、クリーニング装置108で取り除ききれずに、帯電ローラ52に付着したトナーやシリカは、感光体ドラム51側に移動し、帯電ローラ52をクリーニングする。このとき、帯電ローラ52には、電源201から帯電用の電圧が印加されていないため、感光体ドラム51の表面が帯電しない。そして、感光体ドラム51は、除電部109によって、除電されているため、感光体ドラム51の表面の電位は略0V(未帯電)となる。
【0075】
感光体ドラム51の未帯電の箇所が現像ローラ55の位置に達する時刻t1になると、現像ローラ55における感光体ドラム51の電圧が図10のように、略0Vに下降する。このとき、電圧印加制御部400は、トナーと同極性の電圧をトナーと逆極性の電圧に切り替えて印加するように、現像ローラ55に印加していた電源202を制御し、現像ローラ55にトナーと逆極性の電圧を印加させる。そして、電圧印加制御部400は、電圧を印加しないように、トナーと同極性の電圧を供給ローラ56に印加していた電源203を制御し、供給ローラ56に電圧を印加しないようにする。これにより、未帯電の感光体ドラム51の表面にトナーが移動することを防止することができる。
【0076】
所定の時間が経過し、時刻t2になると、電圧印加制御部400は、帯電ローラ52にトナーと同極性の電圧を印加するように電源201を制御する。これにより、感光体ドラム51の表面が帯電する。
【0077】
帯電ローラ52によって帯電し、感光体ドラム51の帯電ローラ52と接触する箇所が、感光体ドラム51の回転によって現像ローラ55に達する時刻t3になると、現像ローラ55における感光体ドラム51の電圧が上昇する。このとき、感光体ドラム51の帯電領域への現像を再度開始するために、電圧印加制御部400は、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧を印加するように電源202を制御する。また、電圧印加制御部400は、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧を印加するように電源203を制御する。
【0078】
このとき、実施の形態1と同様に、図10のように、現像ローラ55上のトナー電位の最大値Vpが上昇する。上昇したトナー電位は、現像ローラ55の回転に従って、現像ローラ55上のトナーの付着量が減少し、現像ローラ55上のトナー電位が安定電位V0となるが、現像ローラ55上のトナー電位がV1よりも大きいうちに、帯電ローラ52のクリーニング期間が終了し、記録用紙への印刷に対応する時刻t4に達してしまう。記録用紙への印刷が開始されることで、現像ローラ55上のトナーの一部が形成された静電潜像とは関係なく感光体ドラム51側に移動してしまい、記録用紙に付着して汚れとなる。
【0079】
実施の形態3で説明する画像形成装置は、このような従来の問題を解決するものである。具体的に、画像形成装置は、図10のように、印刷ジョブ終了時、又は、印刷中、時刻t0より帯電ローラ52のクリーニング期間に入る。このとき、速度制御部300の制御によってID部100は駆動している。
【0080】
クリーニング期間に入る時刻t0において、電圧印加制御部400は、まず、除電部109に除電用の電圧を印加しないように電源204を制御する。このとき、電圧印加制御部400は、印刷中から引き続いて、帯電ローラ52に、トナーと同極性の電圧、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧を印加するように、電源201、202、203を制御する。
【0081】
時刻t0で、感光体ドラム51の除電部109に相応する箇所が帯電ローラ52の位置に達する時刻t1になると、電圧印加制御部400は、帯電ローラ52にトナーと同極性の電圧を印加しないように電源201を制御する。
【0082】
帯電ローラ52に電圧を印加しないようにすることで、クリーニング装置108で取り除ききれずに、帯電ローラ52に付着したトナーやシリカは、感光体ドラム51側に移動し、帯電ローラ52をクリーニングする。このとき、帯電ローラ52には、電源201から帯電用の電圧が印加されていないため、感光体ドラム51の表面が帯電しない。ただし、時刻t0に、除電部109に除電用の電圧を印加しないように電源204が制御されている、感光体ドラム51の表面の電位は、0Vにはならず、バッシェン則に基づく一定の電位をもつ。
【0083】
時刻t1で、感光体ドラム51の帯電ローラ52と接触していた箇所が現像ローラ55の位置に達する時刻t2になると、現像ローラ55における感光体ドラム51の電圧が図11のように、バッシェン則に基づく一定の電位に下降する。電圧印加制御部400は、電源202が現像ローラ55に印刷時に印加する電圧と、電源203が供給ローラに印刷時に印加する電圧との差分以下(例えば0V)の電圧を現像ローラ55に印加するように電源202を制御する。そして、電圧印加制御部400は、供給ローラ56に印加していたトナーと同極性の電圧を電圧を印加しないように電源203を制御する。
【0084】
従来、電圧印加制御部400は、感光体ドラム51の電位が略0Vであるため、現像ローラ55にトナーと逆極性の電圧を印加するように電源202を制御して、現像ローラ55から感光体ドラム51へのトナーの移動を防止していた。しかしながら、図11のような実施の形態3で説明する画像形成装置の場合、感光体ドラム51は、バッシェン則に基づく一定の電位をもつため、現像ローラ55に例えば0Vの電圧を印加するように電源202を制御しても、現像ローラ55から感光体ドラム51にトナーが移動しない。これにより、感光体ドラム51へのトナーの移動が防止できるため、時刻t2において、電圧印加制御部400は、現像ローラ55に0Vを印加するように電源202を制御することができる。
【0085】
所定の時間が経過し、時刻t3になると、電圧印加制御部400は、除電部109に除電用の電圧を印加するように電源204を制御する。
【0086】
時刻t3で、感光体ドラム51の除電部109に相応する箇所が帯電ローラ52の位置に達する時刻t4になると、電圧印加制御部400は、帯電ローラ52にトナーと同極性の電圧を印加するように電源201を制御する。これにより、感光体ドラム51の表面が帯電する。
【0087】
帯電ローラ52によって帯電した感光体ドラム51上の帯電ローラ52と接触した箇所が、感光体ドラム51の回転によって現像ローラ55に達する時刻t5になると、現像ローラ55における感光体ドラム51の電圧が上昇する。このとき、感光体ドラム51の帯電領域への現像を再度開始するために、電圧印加制御部400は、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧を印加するように電源202を制御する。また、電圧印加制御部400は、供給ローラ56にトナーと同極性の電圧を印加するように電源203を制御する。
【0088】
時刻t5において、電圧印加制御部400は、現像ローラ55に印加する電圧を、現像ローラ55に印刷時に印加する電圧と、供給ローラに印刷時に印加する電圧との差分以下の電圧から、トナーと同極性の印刷時の電圧に切り替えるように電源202を制御する。このように、電圧印加制御部400は、現像ローラ55に印加する電圧をトナーと同極性の印刷時の電圧に変化させることで、図11のように、現像ローラ55上のトナー電位の上昇を抑え、トナー電位の最大値Vpが従来よりも減少する。
【0089】
そして、記録用紙への印刷に対応する時刻t6になると、現像ローラ55上のトナー電位がV1より小さくなり、安定電位V0に近づく。したがって、従来のように、トナーの一部が静電潜像とは関係なく感光体ドラム51側に移動することがなく、記録用紙も汚れない。
【0090】
このように、実施の形態3で説明する画像形成装置は、帯電ローラ52のクリーニング期間に除電部に除電用の電圧を印加しないことにより、感光体ドラム51の表面電位を一定の値に保つことができる。したがって、現像ローラ55から感光体ドラム51にトナーが移動することを防ぐために、現像ローラ55にトナーと逆極性の電圧を印加する必要がなくなる。これにより、帯電ローラ52のクリーニング期間の終了後、現像ローラ55にトナーと同極性の電圧を印加しても、トナー電位の上昇が抑えられ、感光体ドラム51側にトナーの一部が静電潜像とは関係なく移動することを防ぐことができ、記録用紙の汚れも防ぐことができる。
【0091】
本発明の画像形成装置は、プリンタを例示して説明したが、MFP(Multi Function Printer)、ファクシミリ、複写機でも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施の形態1の本発明の画像形成装置のタイムチャートを示す図である。
【図2】実施の形態1の本発明の画像形成装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1の本発明の画像形成装置のID部の構成図である。
【図4】実施の形態1で説明する従来の画像形成装置のタイムチャートを示す図である。
【図5】実施の形態1の本発明の画像形成装置における現像ローラの回転数とトナー電位との関係を示す図である。
【図6】実施の形態2で説明する画像形成装置のタイムチャートを示す図である。
【図7】実施の形態2で説明する画像形成装置における印刷速度とトナー電位との関係を示す図である。
【図8】実施の形態2で説明する画像形成装置における現像ローラの回転数とトナー電位との関係を示す図である。
【図9】実施の形態3の本発明の画像形成装置のID部の構成図である。
【図10】実施の形態3で説明する従来の画像形成装置のタイムチャートを示す図である。
【図11】実施の形態3の本発明の画像形成装置のタイムチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0093】
11 ロワーフレーム
12、13、14 ローラ
16 用紙搬送経路
20 給紙カセット
21 用紙繰り出し部
22 スタッカ
23 厚さ検出部
24 転写ベルト
25 転写ベルトユニット
26 位置調整機構
30 現像部
40 定着部
51 感光体ドラム
52 帯電ローラ
53 露光部
54 トナー収納容器
55 現像ローラ
56 供給ローラ
60 転写ローラ
100 ID部
106 トナー規制部材
108 クリーニング装置
109 除電部
300 速度制御部
400 電圧印加制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した表面を露光することによって形成される静電潜像を所定の極性に帯電させた現像剤によって現像し、回転する像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材よりも前記像担持体の回転方向下流側に備えられ、前記現像剤を前記像担持体に付着させ、形成された前記静電潜像を現像する現像部材と、
前記現像部材に前記現像剤を供給する供給部材と、
前記現像部材に電圧を印加する現像部材電圧印加部と、
前記供給部材に電圧を印加する供給部材電圧印加部と、
前記現像部材電圧印加部による前記現像部材への電圧の印加、及び、前記供給部材電圧印加部による前記供給部材への電圧の印加を制御する電圧印加制御部とを有し、
前記電圧印加制御部は、
前記像担持体の回転が開始されて、前記帯電部材によって帯電された前記像担持体上の所定の箇所が前記現像部材に達してから、前記供給部材への電圧の印加が開始されるまで、画像形成時に前記現像部材電圧印加部が前記現像部材に印加する電圧と、前記供給部材電圧印加部が前記供給部材に印加する電圧との差分以下の電圧を前記現像部材に印加させるように、前記現像部材電圧印加部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像部材は、軸を中心に回転するローラであり、
前記電圧印加制御部は、
前記所定の箇所が前記現像部材に達してから、前記現像部材が少なくとも3周以上回転した後、前記供給部材に電圧が印加されるように、前記現像部材電圧印加部及び前記供給部材電圧印加部を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
帯電した表面を露光することによって形成される静電潜像を所定の極性に帯電させた現像剤によって現像し、回転する像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材よりも前記像担持体の回転方向下流側に備えられ、前記現像剤を前記像担持体に付着させ、形成された前記静電潜像を現像する現像部材と、
前記現像部材に前記現像剤を供給する供給部材と、
前記現像部材に電圧を印加する現像部材電圧印加部と、
前記供給部材に電圧を印加する供給部材電圧印加部と、
前記像担持体の回転速度を制御する速度制御部とを有し、
前記速度制御部は、
前記像担持体の回転が開始されて、前記供給部材電圧印加部から電圧が印加された前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の所定の箇所が前記現像部材に達してから、所定の期間まで、画像形成時よりも遅い回転速度で回転させるように前記像担持体を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記速度制御部は、
前記所定の箇所が前記現像部材に達してから、前記像担持体が少なくとも3周以上回転するまで、画像形成時よりも遅い回転速度で回転させるように前記像担持体を制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
帯電した表面を露光することによって形成される静電潜像を所定の極性に帯電させた現像剤によって現像し、回転する像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材よりも前記像担持体の回転方向下流側に備えられ、前記現像剤を前記像担持体に付着させ、形成された前記静電潜像を現像する現像部材と、
前記現像部材に前記現像剤を供給する供給部材と、
前記像担持体の表面に帯電した電位を除電する除電部と、
前記現像部材に電圧を印加する現像部材電圧印加部と、
前記供給部材に電圧を印加する供給部材電圧印加部と、
前記除電部に電圧を印加する除電部電圧印加部と、
前記現像部材電圧印加部による前記現像部材への電圧の印加、前記供給部材電圧印加部による前記供給部材への電圧の印加、及び、前記除電部電圧印加部による前記除電部への電圧の印加を制御する電圧印加制御部とを有し、
前記電圧印加制御部は、
前記帯電部材に印加する電圧を変える場合、前記除電部に電圧を印加しないように前記除電部電圧印加部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記電圧印加制御部は、
前記帯電部材に印加する電圧を変える場合、画像形成時に前記現像部材電圧印加部が前記現像部材に印加する電圧と、前記供給部材電圧印加部が前記供給部材に印加する電圧との差分以下の電圧を前記現像部材に印加させるように前記現像部材電圧制御部を制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−83608(P2008−83608A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266223(P2006−266223)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】